説明

発電システム

【課題】出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、不必要な電圧の発生を防ぐことで、幅広い用途に活用できる発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム10は、ステータに巻き上げられたステータコイル25bと直列に接続された出力用ソレノイドコイル31と、出力用ソレノイドコイル31と直列に接続され、出力用ソレノイドコイル31との間に負荷Lへ出力するための出力線が配線される制御用ソレノイドコイル32と、出力用ソレノイドコイル31および制御用ソレノイドコイル32の間に設けられたスイッチ33と、発電電圧を検出するセンサからの検出信号に応答してスイッチ33のON/OFFを制御するコントローラ50と備えている。出力用ソレノイドコイル31と制御用ソレノイドコイル32とは、互いが磁気的に結合されていると共に、それぞれがステータコイル25bの磁束と鎖交しないようにソレノイドユニット30として収納されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石式発電機の回転数が上がっても、負荷に対して過度な電圧の出力を抑えることができる発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石式発電機は、ロータに永久磁石を用いているので、構造が簡単で大きな発電電力を得ることができ、電磁石に流す電流が不要となるため高い効率を図ることができる。しかし、発電機の回転が変化すると電圧が大幅に変化してしまう。このような問題に対処した従来の発電システムが特許文献1として知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の永久磁石式発電機の制御装置は、ステータの出力コイルと制御コイルとの間に、制御コイルに接続された制御スイッチと、負荷に接続された出力スイッチとを設け、制御コイルの先端にソレノイドコイルが接続され、コントローラが出力コイルの発電電圧を検出するセンサの検出信号に応答して制御スイッチと出力スイッチとをON−OFF制御して発電電圧を所定の電圧に制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4227189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この特許文献1に記載の永久磁石式発電機の制御装置では、発電電圧が所定の電圧以上となったときに、出力電流の一部を制御コイルに流すことで、負荷への出力電圧が抑制されるという垂下特性を利用している。この場合、制御コイルとしては、出力インピーダンスを大きくするために巻数の大きなものが必要である。しかし、出力コイルと制御コイルとがステータとして巻き上げられているため、例えば、制御コイルの巻数が出力コイルのN倍とすれば、制御コイルに出力コイルのN倍の電圧が発生する。回路の電圧が高くなれば使用する部品の耐電圧を高くする必要があることからコストが増加する。従って、特許文献1に記載の永久磁石式発電機の制御装置では、自動車用発電機や風力用発電機として利用しにくい面がある。
【0006】
そこで本発明は、出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、不必要な電圧の発生を防ぐことで、幅広い用途に活用できる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発電システムは、永久磁石式発電機のハウジングに回転自在に支持されたロータシャフトと、前記ロータシャフトに固定され、かつ外周側に複数の永久磁石部材を取り付けたロータと、前記ロータの外側に配置され、発電機巻線が巻き上げられたステータと、前記発電機巻線と直列に接続された出力巻線と、前記出力巻線と直列に接続され、前記発電機巻線の磁束と鎖交しない位置に配置され、前記出力巻線との間に負荷へ出力するための出力線が配線された制御巻線と、少なくとも前記出力巻線と前記制御巻線との間に設けられた出力端子と、前記発電機巻線にて発生し、前記出力巻線を介して流れる電流の一部を前記制御巻線に流すためのスイッチと、前記出力巻線による発電電圧を検出するセンサからの検出信号に応答して前記発電電圧を予め設定された電圧に制御するように前記スイッチのON/OFFを制御して前記制御巻線に流れる電流量を制御するコントローラとを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の発電システムによれば、予め設定された電圧より高くなったときに、コントローラがセンサからの発電電圧の検出信号に応答してスイッチをONとすることで、出力巻線からの電流を出力線から負荷側へ流すだけでなく、制御巻線へも電流が流れるので出力電圧を抑制することができる。制御巻線は、ロータの磁束と鎖交しない位置に配置されているので、磁束の影響を受けることがないため、制御巻線から発電電圧が発生してしまうことが防止できる。従って、出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、過度な電流の発生を抑えることができる。
【0009】
前記出力巻線は、前記発電機巻線の磁束と鎖交しない位置に配置され、前記制御巻線と磁気的に結合されているのが望ましい。発電機巻線の磁束と鎖交しない位置に配置された出力巻線が制御巻線と磁気的に結合されていれば、相互インダクタンスの作用により、スイッチがOFFである場合に出力巻線の電圧降下に比べ、スイッチがONとなって制御巻線へ電流が流れたときの出力巻線の電圧降下の方が大きくなる。従って、小さな電流で大きな電圧降下を得ることができる。
【0010】
前記永久磁石式発電機は、三相交流発電機として前記発電巻線がスター結線され、前記出力巻線と前記制御巻線とは、前記発電巻線にそれぞれ直列接続され、前記制御巻線の端部は、短絡配線によるスター結線にそれぞれ接続され、前記発電巻線の中性点と、前記短絡配線による中性点とが、短絡接続されているのが望ましい。永久磁石式発電機が三相交流発電機であるときには、上記のように構成することができる。
【0011】
前記コントローラは、前記スイッチのON/OFFをPWM制御して電流量を調整するのが望ましい。コントローラがスイッチをPWM制御によりON/OFFすることで、制御巻線に流れる電流量を容易、かつ正確に制御することができる。
【0012】
更に、前記センサは、負荷に並列に接続され、発電電圧を検出信号として前記コントローラへ通知するものであると、負荷へ印加される電圧をコントローラへ正確に検出信号として通知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、制御巻線が磁束の影響を受けることがないため、制御巻線から発電電圧が発生してしまうことが防止できるので、発電電圧が出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、過度な電流の発生を抑えることができる。従って、本発明の発電システムは、幅広い用途に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る発電システムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示す発電システムの永久磁石式発電機を示す断面図である。
【図3】図1に示す発電システムを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態に係る発電システムについて、図面に基づいて説明する。図1に示すように発電システム10は、負荷Lに対して所定の電力を供給するものである。発電システム10は、発電機20と、ソレノイドユニット30と、整流器40と、コントローラ50とを備えている。
【0016】
発電機20は、三相交流を出力する。図2に示すように、発電機20は、フロントハウジング21aとリアハウジング21bから形成されたハウジング21に、ロータシャフト22が一対の軸受23を介して回転可能にそれぞれ支持されている。ロータシャフト22には、その一端部に、駆動源からの駆動力が入力する入力プーリ等の入力手段(図示せず)が設けられている。ロータシャフト22には、回転子であるロータ24が固定されている。
【0017】
ロータ24は、ロータシャフト22の外周に配設された透磁性部材24aと、透磁性部材24aの外周面に配置された複数の永久磁石片により形成された永久磁石部材24bと、永久磁石部材24bの外周面に固定された円筒状のスリーブ24cとを備えている。透磁性部材24aと永久磁石部材24bとの両端面には、端板24dがそれぞれ配置されている。端板24dは、ナット、フランジ等の固着手段でロータシャフト22に一体に固定されている。
【0018】
このロータ24の外周側には、ハウジング21に固定された固定子であるステータ25が配置されている。ステータ25は、ステータコア25aと、ステータコア25aに巻き上げられた発電巻線であるステータコイル25bとを備えている。
【0019】
ステータコイル25bは、ステータコア25aの櫛部間に形成されたスロット部に位置し、三相交流の中性点O1(図3参照)を始点として巻き上げられている。ステータコイル25bをステータコア25aに成形固定するためスロット部内に非磁性材が充填されている。
【0020】
3つのソレノイドユニット30のそれぞれには、出力巻線である出力用ソレノイドコイル31と、制御巻線である制御用ソレノイドコイル32と、スイッチ33とが設けられている。制御用ソレノイドコイル32は、出力用ソレノイドコイル31より巻数が少ないコイルである。
【0021】
出力用ソレノイドコイル31の一端側は、発電機20のステータコイル25bのそれぞれに、配線a1〜a3により直列接続されている。出力用ソレノイドコイル31の他端側は、スイッチ33の一端側が接続されていると共に、出力線である配線b1〜b3により整流器40と接続されている。スイッチ33の他端側は、制御用ソレノイドコイル32の一端側が接続されている。制御用ソレノイドコイル32の他端側は、短絡線である配線c1〜c3によりスター結線により短絡接続されている。そして、配線c1〜3によるスター結線の中性点O2は、ステータコイル25bの中性点O1と配線dにより接続されている。
【0022】
出力用ソレノイドコイル31は、ソレノイドユニット30にそれぞれ収納されているため、ロータ24とは磁束と鎖交していない。また、制御用ソレノイドコイル32は、同様に、ソレノイドユニット30にそれぞれ収納されているため、ロータ24の磁束と鎖交しないだけでなく、出力用ソレノイドコイル31と磁気的に結合される位置に配置されている。例えば、円形状(楕円状を含む)に形成されたコアに、出力用ソレノイドコイル31と、制御用ソレノイドコイル32とを、それぞれ巻き付けることにより磁気的に結合させることができ、コンパクトに配置できる。また、出力用ソレノイドコイル31と制御用ソレノイドコイル32とをコアに重ね合わせて巻き付けるようにしてもよい。更に、出力用ソレノイドコイル31と制御用ソレノイドコイル32とを一次巻線および二次巻線としたトランスとしてもよい。
【0023】
整流器40は、配線b1〜b3により入力される三相交流U,V,W相を全波整流して負荷Lに供給するもので、2本の直列接続されたダイオード41を3つ並列接続されている。この整流器40には、センサとして機能する電圧比較器42が負荷Lと並列接続され、電圧比較器42の出力がコントローラ50へ配線eにより接続されている。
【0024】
コントローラ50は、電圧比較器42からの発電電圧の検出信号に基づいて、スイッチ33の開閉(ON/OFF)をPWM制御する機能を備えている。
【0025】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る発電システムの動作について、図面に基づいて説明する。なお、始動前では、コントローラ50は、それぞれのスイッチ33を開放状態としている。
【0026】
発電機20は、駆動源からの駆動力によりロータシャフト22が回転することで、それぞれのステータコイル25bに発電電流が発生する。この発電電流は、ステータコイル25bから出力用ソレノイドコイル31へ流れる。そして発電電流は、出力用ソレノイドコイル31から整流器40へ、そして負荷Lへ流れる。
【0027】
ロータ24の回転数が上がっていくと発電電圧が上昇するが、電圧比較器42からの発電電圧の検出信号と、予め設定された電圧(第1の閾値電圧)とを比較していたコントローラ50が、所定の電圧より高くなったと判定すると、スイッチ33をONとする。
そうすることで、出力用ソレノイドコイル31からの電流を出力線である配線b1〜b3により整流器40を介して負荷Lへ流すだけでなく、制御用ソレノイドコイル32へも電流が流れるので出力電圧を抑制することができる。
【0028】
制御用ソレノイドコイル32は、ステータコイル25bの磁束と鎖交しない位置となるソレノイドユニット30に収納されているので、ステータコイル25bからの磁束の影響を受けることがないため、制御用ソレノイドコイル32にスイッチ33をONして電流を流しても、制御用ソレノイドコイル32から発電電圧が発生してしまうことが防止できる。従って、配線b1〜b3により整流器40に印加され、整流器40により整流されて負荷Lに印加される出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、過度な電流の発生を抑えることができる。
【0029】
また、出力用ソレノイドコイル31は、ステータコイル25bの磁束と鎖交しない位置に配置され、制御用ソレノイドコイル32と磁気的に結合されているため、相互インダクタンスの作用により、スイッチ33がOFFである場合に、出力用ソレノイドコイル31の電圧降下に比べ、スイッチ33がONとなって制御用ソレノイドコイル32へ電流が流れたときの出力用ソレノイドコイル31の電圧降下の方が大きくなる。従って、小さな電流で大きな電圧降下を得ることができる。
また、ステータコイル25bに、出力用ソレノイドコイルと制御用ソレノイドコイルとが磁気的結合している場合と比較して、本実施の形態に係る制御用ソレノイドコイル32を巻数の少ないものとすることができる。従って、スイッチ33をONして制御用ソレノイドコイル32へ電流を流した場合でも、発電機20に対して大きな負荷とならない。
【0030】
発電機20の回転数が低減し、負荷Lへの電力が不足するようであれば、電圧比較器42からの発電電圧の検出信号と、予め設定された電圧とを比較していたコントローラ50が、スイッチ33をONとした所定の電圧より低く設定された電圧(第2の閾値電圧)より低くなったと判定すると、スイッチ33をOFFとする。コントローラ50は、このようにスイッチ33のON/OFFをPWM制御により調整して、負荷Lへの出力電圧を一定に保つ。
【0031】
このように、発電システム10は、出力電圧を所定の電圧に保ちつつ、過度な電流の発生を抑えることができる。また、発電システム10は、小さな電流で大きな電圧降下を得ることができるので、出力用ソレノイドコイル31や制御用ソレノイドコイル32、スイッチ33など、低い耐電圧の部品を使用することができる。従って、部品のコストを抑制することができ、小型化を図ることができる。また、発電機20に対して制御用ソレノイドコイル32が不必要な負荷とならない。
よって、本実施の形態に係る発電システム10は、自動車用発電機や風力用発電機など幅広い用途に活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の発電システムは、自動車用発電機や風力用発電機など、永久磁石式発電機が用いられる用途に幅広く活用できる。
【符号の説明】
【0033】
10 発電システム
20 発電機
21 ハウジング
21a フロントハウジング
21b リアハウジング
22 ロータシャフト
23 軸受
24 ロータ
24a 透磁性部材
24b 永久磁石部材
24c スリーブ
24d 端板
25 ステータ
25a ステータコア
25b ステータコイル
30 ソレノイドユニット
31 出力用ソレノイドコイル
32 制御用ソレノイドコイル
33 スイッチ
40 整流器
41 ダイオード
42 電圧比較器
50 コントローラ
a1〜a3,b1〜b3,c1〜c3,d,e 配線
O1,O2 中性点
L 負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石式発電機のハウジングに回転自在に支持されたロータシャフトと、
前記ロータシャフトに固定され、かつ外周側に複数の永久磁石部材を取り付けたロータと、
前記ロータの外側に配置され、発電機巻線が巻き上げられたステータと、
前記発電機巻線と直列に接続された出力巻線と、
前記出力巻線と直列に接続され、前記発電機巻線の磁束と鎖交しない位置に配置され、前記出力巻線との間に負荷へ出力するための出力線が配線された制御巻線と、
前記発電機巻線にて発生し、前記出力巻線を介して流れる電流の一部を前記制御巻線に流すためのスイッチと、
前記出力巻線による発電電圧を検出するセンサからの検出信号に応答して前記発電電圧を予め設定された電圧に制御するように前記スイッチのON/OFFを制御して前記制御巻線に流れる電流量を制御するコントローラとを備えたことを特徴とする発電システム。
【請求項2】
前記出力巻線は、前記発電機巻線の磁束と鎖交しない位置に配置され、前記制御巻線と磁気的に結合されている請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記永久磁石式発電機は、三相交流発電機として前記発電巻線がスター結線され、
前記出力巻線と前記制御巻線とは、前記発電巻線にそれぞれ直列接続され、
前記制御巻線の端部は、短絡配線によるスター結線にそれぞれ接続され、
前記発電巻線の中性点と、前記短絡配線による中性点とが、短絡接続されている請求項1または2記載の発電システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記スイッチのON/OFFをPWM制御して電流量を調整する請求項1から3のいずれかの項に記載の発電システム。
【請求項5】
前記センサは、負荷に並列に接続され、発電電圧を検出信号として前記コントローラへ通知するものである請求項1から4のいずれかの項に記載の発電システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−244654(P2011−244654A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116519(P2010−116519)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510140434)PMジェネテック株式会社 (1)
【出願人】(000192903)神奈川県 (65)
【Fターム(参考)】