説明

発電プラントの負荷をスケジューリングするための方法および制御システム

本発明は、1つ以上の発電ユニットを有する発電プラントに対する負荷スケジューリングを最適化するための方法に関連する。方法は、発電ユニットのコンポーネントに関係するリスクインデックスに関して、発電ユニットのコンポーネントの動作状態を解析するステップと、発電ユニットのコンポーネントの状態を反映する目的関数を更新するステップと、目的関数を解いて、発電ユニットのスケジュールと、発電ユニットのコンポーネントの動作状態とを最適化するステップと、最適化された、スケジュールおよび動作状態において、発電ユニットを動作させるステップとを含む。発明は、発電ユニットを有する発電プラントの負荷をスケジューリングするための制御システムにも関連する。制御システムは、メンテナンススケジューリングを含む負荷スケジューリングを最適化するための、および、発電ユニットの処理を最適に制御するための、オプティマイザを具備する。

【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本開示は、発電プラントにおけるスケジューリングの領域に関連する。より詳細には、本開示は、発電プラントの負荷をスケジューリングすることに関連する。
【背景】
【0002】
最適化は、処理の制約を侵害することなくパラメータの指定されたセットを最適化するように、処理を制御する技術である。従来、発電プラントにおける最適化処理は、効率を上げ、可能性あるエミッションを低下させ、コストを低減させて、発電のためのシステムの利用可能性を最大化するために行われる。より良い性能のために、発電プラントにおいて別々に最適化できるいくつかのシステムが存在し、例えば、発電プラント中の機器の特定のコンポーネントをアップグレードすることは、結果として、より少ない燃料を消費することになる。また、発電プラントの全体的な効率に寄与する1つ以上の因子を最適化することにより、発電プラントの動作全体を最適化してもよい。
【0003】
典型的に、発電プラントにおける負荷スケジューリングを最適化して、動作コストを最小化することが望ましい。負荷スケジューリングを最適化するために、さまざまな従来技術が存在する。例えば、負荷スケジューリングは、負荷需要に基づいて、最適化されてもよく、すなわち、発電プラントは、負荷需要を満たすような方法でスケジューリングされている。別の例として、負荷スケジューリングはまた、予め定められたメンテナンススケジュールを満たすように最適化されてもよい。
【0004】
容易に理解できるように、負荷スケジューリングの動作は、コストとの関わり合いを持ち、負荷スケジューリングに関係するコストは、“負荷スケジューリングのコスト”と呼ばれる。負荷スケジューリングのコストは、機器の資本コスト、燃料コスト、薬品のコスト、予備機器およびパーツのコスト、ならびにメンテナンスコストから決定できる。発電プラントにとって、資本コストおよび燃料コストを除けば、メンテナンスコストはかなりの経費として考えられ、メンテナンススケジュールにおけるシフトは、負荷スケジューリングのコストにおいて著しい変化を有するかもしれない。
【0005】
機器のメンテナンススケジュールは、通常のインターバル、経過時間、または、実行時間メーターの読みに基づいていてもよい。それゆえ、メンテナンススケジュールにおける何らかの予見しないシフト、または、予め計画されたシフトに順応して、コストを最小化させることを望まれることが多い。さらに、発電プラントの動作コスト全体はまた、メンテナンススケジュールにおけるシフトにより変化する。メンテナンススケジュールは、発電プラントコンポーネントのスケジューリングされているメンテナンスからの結果としてのダウンタイムに、および、突然の故障および修復アクティビティによる、計画されていないもしくは強制的なシャットダウンに基づいている。計画されている、および、スケジューリングされているメンテナンスを有し、計画されていないメンテナンスを避けることが望ましい。それゆえ、メンテナンスアクティビティは、周期的に、ならびに、製造者により推奨されるかまたはオペレータの過去の経験に基づくかのいずれかで、できるだけ頻繁にスケジューリングされる。
【0006】
計画したメンテナンススケジュールを遅延させることは、計画していないメンテナンスと関係するコストとを増加させるかもしれない。メンテナンススケジュールの向上は、不必要なメンテナンスアクティビティおよびメンテナンスコストに影響を及ぼす。生産とともにメンテナンスのスケジューリングに対して、複数のスケジューリングツールが存在するが、これは、コンポーネントの実際の動作条件および状態に、または、考慮事項の下での動作に基づいていないことが多いことに留意すべきである。
【0007】
一般的に、発電プラントコンポーネントにより必要とされるメンテナンスアクションは、このようなスケジューリングツールに対する入力である電子表現の形態で、対応するメンテナンストリガにより通知される。メンテナンストリガにより、それらのツールは、時間期間に対する生産スケジューリングに加えて、メンテナンスアクションに対するスケジュールを見つけるだろう。このようなスケジューリングアプローチにおいて、使用する最適化技術は、コスト考慮にのみ基づいており、実際の動作条件とコンポーネントの状態とを含まない。
【0008】
向上した制御システムの出現により、および、このような制御システムで利用可能な増加した計算力により、最適化に対してより多くの特徴が含まれてきている。制御システムでは、最適化は、最適化モジュールにより、または、制御システムと既に一体化されているコンポーネントにより行われてもよく、あるいは、プラントからの利用可能な情報に基づいて、別々に行われてもよい。しかしながら、前者の手段を見つけること、すなわち、制御システムに既に埋め込まれている最適化モジュールを持つことが一般的である。ほとんどのケースでは、最適化モジュールは、最適な設定の評価に対して、統計または物理ベースのモデルアプローチ(第1原則モデル)を利用する。ニューラルネットワークまたはシンタックスに基づくもののような他のアプローチも実施してもよい。
【0009】
負荷スケジューリング動作のケースでは、最適化された出力値は、プラントを制御する制御装置に対するさまざまなセットポイントである。提供したセットポイントとは、全体的な意味で、プラントが要件(例示的な、負荷需要、動作コスト、効率、安全性および調整要件、メンテナンス要件等)を満たすように機能するものである。
【0010】
先に述べたように、ほとんどのケースでは、最適化は、統計的なアプローチまたは第1原則モデルベースのアプローチに基づいている。このようなアプローチでは、本質的に、プラントの、測定されたパラメータまたは推定されたパラメータの関数として、プラントのプロパティに関連する少なくとも1つの数学的表現が存在する。プラントのプロパティのいくつかの例は、ジェネレータ電力出力、ボイラーシステム発電、燃料利用、メンテナンススケジュール、プラント中の特定のユニットの年齢または耐用寿命等である。一般的に使用される数学的モデルは、プラント中の個々のユニットのパフォーマンスに関連し、または、プラントの調整された全体的な機能に対するものである。ほとんどのケースでは、パフォーマンスはコスト関数を含み、または、それらは、最適化問題の適切な公式により導出されてもよい。
【0011】
負荷スケジューリングおよびメンテナンスアクティビティの影響の特定の態様において、実際には、メンテナンスアクティビティは、発電プラント中の1つまたはいくつかのコンポーネントの故障の結果として実行される予見しないアクティビティであるかもしれないが、メンテナンスに対して定められた予め規定されているスケジュールを見つけることが一般的であることを認識するだろう。サービスに対して使用不可能である発電プラントのコストが非常に高いことから、発電プラントの設計は、通常ではない負荷またはシナリオに耐えるための十分な冗長性およびマージンを有するようにできている。さらに、発電プラントとともに存在する、プラントに対するメンテナンスまたはサービスアクティビティについての十分な一般知識またはヒストリーがあり、当業者は、メンテナンスアクティビティの結果として、いずれの種の負荷またはシナリオが、いずれのコンポーネントの故障、ならびに、関係するコストおよびダウンタイムを起こしやすいかを認識するだろう。この知識は、発電プラントに対する負荷をスケジューリングするために効率的に利用することができ、プラントの状態を考慮するメンテナンスアクティビティに対するスケジューリングを含む。
【0012】
前述の議論を考慮して、発電プラントに対する負荷をスケジューリングし、制御システム中に存在する最適化モジュールを向上させて、メンテナンススケジューリングも引き受ける効率的な技術に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、適宜、1つ以上の発電ユニットを有する発電プラントに対する負荷スケジューリングを最適化するための方法を提供する。方法は、i)発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係する1つ以上のリスクインデックスを有する、発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態を解析するステップと、ii)発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの状態を反映する目的関数を更新するステップと、iii)目的関数を解いて、1つ以上の発電ユニットのスケジュールと、発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態とを最適化するステップと、iv)最適化された、スケジュールおよび動作状態において、1つ以上の発電ユニットを動作させるステップとを含む。
【0014】
方法の1つの態様にしたがうと、解析するステップは、予測範囲における、能力判定と、動作コスト判定とを含む。ここで述べた、負荷スケジューリングを最適化することは、1つ以上の発電ユニットに対する、生産スケジューリング、メンテナンススケジューリング、もしくは負荷、または、これらの組み合わせを含む。方法はまた、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに対するリスクインデックスを最適化することを含む。リスクインデックスを最適化することは、操作変数を適切に変化させることにより行われる。
【0015】
さらなる態様にしたがうと、方法は、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスに対してメンテナンストリガを延期することまたは早めることを含み、これは、コンポーネントの状態または負荷需要に基づく。本発明において参照する目的関数は、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの処理制御に対する少なくとも1項と、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスに関係する少なくとも1項とを含む。更新するステップは、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスを延期することもしくは早めることに関係するコストにより、目的関数を更新することを含む。
【0016】
本発明は、適宜、1つ以上の発電ユニットを有する発電プラントの負荷をスケジューリングする制御システムも提供する。制御システムは、メンテナンススケジューリングを含む負荷スケジューリングを最適化するための、および、1つ以上の発電ユニットの処理を最適に制御するための、単一の目的関数を有するオプティマイザを具備する。オプティマイザは、負荷スケジューリング最適化のために、プラントモデルコンポーネントと故障モデルコンポーネントとを利用する。
【0017】
システムのさらなる態様にしたがうと、オプティマイザは、発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係する1つ以上のリスクインデックスを有する、発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態を解析するスケジューラアナライザを備える。オプティマイザは、1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係するリスクインデックス、もしくは、需要予想、もしくは、新たな操作変数により影響を及ぼされる動作状態における改善、もしくは、予めスケジューリングされているメンテナンススケジュールに基づいて、メンテナンストリガにより引き起こされるメンテナンス、または、これらの組み合わせによるメンテナンスをスケジューリングすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、それにしたがってさまざまな例示的な実施形態を実現できる、発電プラントの負荷をスケジューリングするシステムのブロックダイヤグラムである。
【図2】図2は、1つの実施形態にしたがった、発電プラントの負荷をスケジューリングするオプティマイザのブロックダイヤグラムである。
【図3】図3は、1つの実施形態にしたがった、簡略化した一般的な化石燃料だき発電プラント(FFPP)のブロックダイヤグラムである。
【図4】図4は、例示的な需要予想プロフィールを示している。
【図5】図5は、1つの実施形態にしたがった、発電プラントの負荷をスケジューリングするための方法を説明している。
【詳細な説明】
【0019】
方法ステップおよびシステムコンポーネントは、図面中で通常のシンボルにより表示され、本開示の理解のために適切な特定の詳細のみを示していることに気付くだろう。さらに、当業者にとって容易に明らかであるだろう詳細は、開示されていないかもしれない。
【0020】
本開示の例示的な実施形態は、発電プラントの負荷をスケジューリングするための方法およびシステムを提供する。
【0021】
通常、発電プラントは、短期負荷スケジューリングと呼ばれる、数日から数週間までの変化する時間/予測範囲の期間の間、電力を生産するようにスケジューリングされる。発電プラントの生産スケジュールは、電力/蒸気要求と、発電プラントコンポーネントの利用可能性と、生産からのネット収入とに基づいて行われてきた。述べたように、オプティマイザは、需要を満たさないことに対するペナルティと、電力売上高の収入と、燃料消費と、エミッション低減と、コンポーネントの減価償却と、発電プラントに適切に負荷をかける、コンポーネントのスタートアップおよびシャットダウンとを含む、異なるコスト因子を使用する。最適な、生産、メンテナンススケジュールと、動作条件とを見つけて、最大の収入および効率を達成するために、これらのコスト因子に加えて、リスクインデックスと、その公称機能および耐用寿命に関して参照されるEOH(Equivalent Operating Hour)補償とに関する各コンポーネントの状態を考慮して算出される、各コンポーネントのメンテナンススケジュールに関係するコストも、オプティマイザは使用する。
【0022】
第1の態様にしたがうと、オプティマイザにより発電プラントの負荷をスケジューリングする方法は、1つ以上の入力を受け取ることを含み、1つ以上の入力は、発電プラントの複数の構成要素に関係している。方法は、1つ以上の入力に応答する、発電プラントの構成要素のうちの少なくとも1つのリスクインデックスを計算することを含む。方法は、リスクインデックスに基づいて負荷を決定することを含み、負荷は、発電プラントの出力電力に関係している。方法は、負荷に基づいて発電プラントを動作させることを含む。
【0023】
図1は、それにしたがってさまざまな実施形態を実現できる、発電プラントの負荷をスケジューリングするシステムのブロックダイヤグラムである。システムは、オプティマイザ105と、予想モジュール125と、ユーザ入力モジュール130と、プラントデータベース135と、プラント制御装置140と、発電プラント145とを備える。
【0024】
オプティマイザ105は、モデルコンポーネント110と、故障モデルコンポーネント120と、EOH補償モデルコンポーネント115と備える。オプティマイザ105は、予想モジュール125と、ユーザ入力モジュール130と、プラント制御装置140とから、および、プラントデータベース135から、1つ以上の入力を受け取る。
【0025】
システムは、時間期間にわたる、発電プラント145に対する負荷予想を提供する予想モジュール125を含む。負荷に対する需要は変動し続け、それゆえ、負荷需要を予想する必要性がある。予想モジュール125は、ユーザ入力データを使用して予想情報を提供し、または、統計的なモデルに基づく専用の予想モデル、もしくは、他の技術を備える。予想された負荷需要に基づく動作に対して、1つ以上のジェネレータを選択することができる。さらに、負荷需要に基づいて、ジェネレータをスイッチオフにすることにより、発電プラント145の動作コストを最小化することができる。予想された負荷需要は、さらに、発電プラント145の負荷をスケジューリングするためにオプティマイザ105に入力として送られる。
【0026】
上記に加えて、発電プラント145の1つ以上の構成要素に対して、予め定められているメンテナンススケジュールを提供するためにも、予想モジュール125を使用する。予め定められているメンテナンススケジュールと、メンテナンスのタイプと、発電プラント145の1つ以上の構成要素のメンテナンススケジュールの期間/周期とは、オペレータの経験またはコンポーネント製造者の推奨に基づいている。時間期間にわたって予め定められているメンテナンススケジュールは、さらに、発電プラント145の1つ以上の構成要素のメンテナンスをスケジューリングするために、オプティマイザ105に入力として送られる。
【0027】
システムは、オプティマイザ105への複数のユーザ入力を受け取るユーザ入力モジュール130を含む。複数のユーザ入力は、これらには限定されないが、燃料のコストと、エミッションペナルティと、機器の耐用年数コストと、スペアユニット動作コストとを含む。ユーザ入力は、さらに、オプティマイザ105に入力として送られる。
【0028】
発電プラント145は、複数のユニットを備える。発電プラント145の複数のユニットとそれらの動作条件とに関連する情報は、プラントデータベース135中に記憶される。発電プラント145の複数のユニットの、動作ヒストリーと、現在のステータスと、製造詳細と、メンテナンススケジューリングもまた、プラントデータベース135中に記憶される。発電プラント145の複数のユニットに関係する情報はさらに、発電プラント145の負荷をスケジューリングするために、プラント制御装置140を通して、オプティマイザ105に入力として送られる。
【0029】
システムは、発電プラント145を備える。発電プラント145は、決定された負荷およびメンテナンスのスケジュールを、プラント制御装置140を通して受け取り、発電プラント145は、オプティマイザ105により決定された負荷に基づいて動作する。
【0030】
図2は、1つの実施形態にしたがって、発電プラント145の負荷をスケジューリングするオプティマイザ105のブロックダイヤグラムである。オプティマイザ105は、プラントモデルコンポーネント110と、スケジュールアナライザ113と、最適化ソルバーモジュール118とを備える。ここで述べたスケジュールアナライザ113は、EOH補償モデル115と、故障モデルコンポーネント120とを備える。1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに対して、負荷スケジュール(生産/メンテナンスのスケジュール)と、負荷値(セットポイント)とを提供する目的関数を解くのに必要とされる因子を、スケジュールアナライザ113は、さまざまなプラントパラメータ(例えば、測定された変数、プラントデータベース)を通して解析する。集合的に、スケジュールアナライザは、動作状態を解析すると言われる(処理効率およびコスト効率の双方に関して、その機能を効率的に実行するための、特定の発電ユニットの能力判定)。ここでは、能力判定は、リスク判定、需要判定を含み、リスク判定および需要判定に基づいて、メンテナンスのスケジュールの提案を含むメンテナンスの必要性も判定する。さらに、ここで上述したコスト態様は、メンテナンスコストを含む動作コストに関連する。
【0031】
1つ以上のユニットにより取り扱われる負荷スケジューリング問題の複数の操作値は、プラントモデルコンポーネント110および故障モデルコンポーネント120に入力として送り込むことができる。プラントモデルコンポーネント110および故障モデルコンポーネント120の双方は、プラント制御装置140と、プラントデータベース135と、予想モジュール125と、ユーザ入力モジュール130とを通して、発電プラント145から1つ以上の入力を受け取ることもできる。
【0032】
オプティマイザコンポーネント105は、最適化ソルバーモジュール118を備え、最適化ソルバーモジュール118は、1つ以上の入力を受け取ることに応答して、発電プラント145の目的/推定関数の最小化により、発電プラント145に対する最適な負荷スケジュールを見つけるために使用される。オプティマイザ105の最適化モジュール118により最小化されることになる目的/推定関数は、需要を満たしていないことに対するペナルティコストと、燃料消費による動作コストと、スタートアップコストと、シャットダウンコストと、エイジングコストと、エミッションコストと、メンテナンスコストとを含む。最適化ソルバーモジュール118は、発電プラント145に対する最適な負荷およびメンテナンスのスケジュールを見つけるために、よく知られている最大最小最適化技術を使用する。目的/推定関数を最小化する反復処理の間に、オプティマイザコンポーネント105の最適化モジュール118は、発電プラント145の1つ以上の構成要素のうちの、モデルコンポーネント110と故障モデルコンポーネント120とを使用する。この最適化処理は、最適化モジュールが、目的関数の値が最小化された最適な負荷スケジュールを見つけるまで継続する。
【0033】
故障モデルコンポーネント120は、プラントデータベース135から、操作された値と入力とを受け取る(データベースは、故障モデルコンポーネントによる計算に必要とされるプラントパラメータに関連する、現在の値とヒストリー情報との双方を有する)。故障モデルコンポーネント120は、その後、プラントデータベース135から受け取った、操作された値と1つ以上の入力とに基づいて、発電プラント145の構成要素のうちの少なくとも1つのリスクインデックスを計算する。発電プラントの1つ以上の構成要素に対するリスクインデックス値は、その後、故障モデルコンポーネント120からEOH補償モデル115にパスされる。EOH補償モデル115は、発電プラント145の1つ以上の構成要素の各リスクインデックス値に関係するコスト因子を有する。オプティマイザ105は、計算したリスクインデックス値に関係するコスト因子に基づいて、負荷およびメンテナンスのスケジュールを決定し、最良の利用可能な方法において、発電プラント145を動作させて(発電プラントに負荷をかけて)、需要を満たす。
【0034】
図3は、発電プラントを動作させるための最適な解を計算するオプティマイザ105を備える制御システムにより制御されている、簡略化した一般的な化石燃料だき発電プラント(FFPP)145のブロックダイヤグラム表示である。FFPPは、パラレルに実行している、3つのFFPPユニット150、155、160からなる。各FFPPユニットは、3つの主な機器、すなわち、ボイラー(B)165、電気ジェネレータ(G)175に機械的に結合されている蒸気タービン(ST)170を備える。動作の下で、一般的に、操作変数u1、u2、およびu3と呼ばれる蒸気負荷は、それぞれのボイラーに適用され、蒸気の形態で出力を生成させる。蒸気の形態での出力は、発電のために、電気ジェネレータに組み合わされている蒸気タービンに提供されるy11、y21、y31として示されている。ジェネレータからの電力出力は、y12、y22、y32として示されている。
【0035】
制御システム140を使用して、発電プラント145の異なる動作パラメータを監視および制御して、発電プラントが最適条件において確実に動作されるようにする。発電プラントの最適な実行のために、先に説明したように、重要な態様のうちの1つは、異なるFFPPユニット間での最適な負荷スケジューリングであり、最適な解に対する計算は、オプティマイザ105において行われる。
【0036】
例示的な実施形態では、負荷スケジューリング最適化問題の目的は、燃料コスト、スタートアップコスト、動作コスト、エミッションコスト、および耐用年数コストの最小化のような、異なる制約次第で、3つのFFPPユニット間で負荷をスケジューリングすることにより、電力需要を満たすことである。オプティマイザ105は、発電プラントから入力を受け取り、最適な負荷スケジューリングのために最適化技術を適用する。最適な解に基づいて、制御システム140は、発電プラント145中の異なるアクチュエータにコマンドを送り、処理パラメータを制御する。
【0037】
最適化に使用される目的関数は以下のようなものである。
【数1】

【0038】
demは、予測範囲と呼ばれる時間期間にわたって、電気需要を満たしていないことに対するペナルティ関数である。
【数2】

【0039】
ここで、Kdem Elec(t)は、適切な重み係数であり、t=T,...,T+M−dtに対する、Ddem Elec(t)は、予測範囲M内での負荷需要の予想であり、yi2は、すべての‘n’個のユニットにより生成された電力である。図3を参照すると、n=3である。
【0040】
fuelは、FFPPに対するモデル中で、出力y11、y21、y31により表されている燃料消費に対するコストであり、したがって、燃料消費に対するトータルコストは、
【数3】

【0041】
により提供される。
【0042】
emissionは、発電プラントにより生産された汚染物質エミッション(NO、SOx、COx)を減少させる際に伴うコストであり、
【数4】

【0043】
により提供される。
ここで、ki emissionは、正の重み係数を表し、f(yi2(t))は、負荷とエミッション生産との間の非線形(non-liner)関数関係を表す。
【0044】
start, shutは、発電プラントの1つ以上の構成要素をスタート/シャットすることに対するコスト関数であり、
【数5】

【0045】
により提供される。
ここで、ki, start / shutは、正の重み係数を表し、uliは、ユニットの整数状態(オン/オフ)である。
【0046】
lifeは、負荷影響による資産減価償却を表しており、
【数6】

【0047】
のように、規定される。ここで、各コンポーネントの減価償却コストは、
【数7】

【0048】
のように、計算される。
【0049】
ここで、LoadおよびLoadbaseは、発電プラントの各コンポーネントそれぞれにかかる負荷、ベース負荷である。costEOH, compは、発電プラントの特定のコンポーネントに対するEOHごとのコストであり、dtは、サンプリング時間である。
【0050】
maintenance、発電プラントの1つ以上のコンポーネントに対するメンテナンスのコストは、以下のように規定される。
【数8】

【0051】
ここで、Cfixedは、発電プラントの異なるコンポーネントに対する固定メンテナンスコストの和である。Cmaintenance shiftは、予め定められているメンテナンススケジュールによる、発電プラントのコンポーネントの減価償却のコストである。これは、以下のように規定される。
【数9】

【0052】
ここで、
【数10】

【0053】
であり、Δtは、予め定められているスケジュールからのメンテナンススケジュールにおけるシフトである。
【0054】
Risk Indexは、故障モデルにより提供されるリスクインデックス値に対応する補償コストである。
【0055】
revenueは、電気エネルギーの売上高により取得した収入に対する項である。
【数11】

【0056】
ここで、Pi, Elec(t)は、販売のための電気エネルギーに対するコスト係数である。
【0057】
発電プラントの目的は、収入を最大化し、メンテナンスおよびペナルティのコストを最小化することである。これは、アクティブな生産に対する時間(生産スケジュール)に直接依存し、反対に、生産が、停止している、または、その最大出力ではないときには、メンテナンス時間(メンテナンススケジュール)に依存する。
【0058】
提案した公式では、メンテナンスを含むプラントアクティビティの動作は、実際の動作条件に基づいており、また、生産スケジュールおよびメンテナンスアクティビティに対する動作条件に影響を及ぼすことができる。発電プラントの1つ以上の構成要素のメンテナンスコストは、したがって、故障モデルコンポーネントとEOH補償モデルコンポーネントとを使用して、動作条件に基づいて決定される。
【0059】
故障モデルコンポーネントは、第1原則モデル(エイジングモデル)に基づくか、または、動作条件パラメータに関連する統計的な分布に基づく(ヒストリー/経験のデータ、規定されている動作条件の下での例外的な耐用年数に基づく。例えば、電気的エイジングに対して、電気ストレス値および動作時間)確率モデルに基づいている。故障モデルコンポーネントは、FMEA技術を使用して、異なる動作条件に対する故障の、重要度、発生、および検出に対する測定を含む。測定は、プラントの状態から導出され、しかも、プラントデータベースからの操作変数もしくはデータから導出されたスコアに関して、カテゴリ化あるいはコード化されているスコア(例えば、0ないし10の間のスコア)に関する。重要度測定は、故障により、生産スケジュールにどのくらい厳しく影響を及ぼすことになるかの推定である。1つの実施形態では、重要度は、複数の因子に依存して規定され、因子のそれぞれは、因子のそれぞれに関係する適切な重み関数により合計およびスケーリングされる。重要度に対する測定を取得するために、因子のいくつかの例を提供する。それらは、
a)メンテナンスに関連する動作時間。すなわち、重要度情報がそのためにコード化されているユニット内のコンポーネントが、メンテナンスのために既にコード化されている場合、重要度が高いと仮定される。メンテナンスに対する、予め規定されている、または、割り当てられているスケジュールに重要度測定が近づく場合、重要度測定は中間であり、重要度測定がメンテナンスから出たばかりのものである場合、重要度測定は低い。(高、中、および低は、それに関係する対応する数値スコアを持っていてもよい。)この因子は、プラントデータベースから取得される、コンポーネントに関係するヒストリー情報から自動的にコード化される。
【0060】
b)故障による、ダウンタイムへの影響。この因子は、プラントデータベースにおいて利用可能なサービスヒストリーに基づくか、または、コンポーネントに関係する当業者の判断に基づいて、コンポーネントに関係する重要性に基づいて、再びコード化されてもよい。影響がない場合、すなわち、信頼性を改善するスタンドバイコンポーネントが存在することを含む、何らかの理由で、コンポーネントの故障により、何らかの方法で、ユニットの機能が影響を受けない場合、スコアは、低いものとして考えられるかもしれず、生産に対して利用可能ではなくなったユニットに関係する影響に依存して、スコアは、高いまたは中間であると判断される。影響は、各コンポーネントに関係する予め規定されている関数である。
【0061】
c)プラントのコンポーネントに関係する代替に対するコストもまた、発電プラント中のさまざまなサービス可能/代替可能なコンポーネントの代替に対する相対コストに基づいて、コード化されてもよい。
【0062】
b)プラントユニット中のさまざまなコンポーネントに対する故障および修理の複雑性もまた、メンテナンスアクティビティに参加するのに必要な専門知識に基づいて、または/および、メンテナンスアクティビティ中に伴われる複雑さに基づいて、コード化されてもよい。
【0063】
別の実施形態では、重要度に対する因子は、発電プラント中のさまざまなコンポーネントに対する動作の領域のカテゴリ化から導出してもよい。ここで、リスクインデックス値の計算は、発電プラントの各コンポーネントに対する、動作の領域と、それらの初期条件と、MVに関係する減価償却レートとからの優先順位に基づいている。
【0064】
操作変数に関係して、発電プラントの1つ以上の構成要素に対する3つの異なる動作領域が規定されている。発電プラントの1つ以上の構成要素に対する動作の領域は、復元可能な領域と、代替可能な領域と、カタストロフィー領域とを含む。ユニットの動作条件を適切に調整することによって、特定のユニットのサービスの損失の結果となる著しい損失または何らかの突然の故障を招かない方法で、ユニットの条件を維持することができる領域として、復元可能な領域は規定されている。この領域は、低リスクインデックス値を持つと言われる。代替可能な領域は、中間リスクを規定する。ユニット、または、ユニット中の主要なコンポーネントが、製造者により定められた、または、その公称機能に対するヒストリー情報(経験)と故障とに基づいて推奨された、その推奨されるメンテナンス期間に近づいているという条件は、損失を生じさせる可能性があるが、サービスにおける小さな乱れにより、もしくは、結果として代替アクティビティが短時間で実行される故障により、コストの観点から管理可能であり、または、予備ユニットのアクティブ化により管理可能であることを、代替可能な領域は示している。カタストロフィー領域は、高いリスク値を規定し、ここで、メンテナンスアクティビティにおける遅延により、何らかの利益を得る可能性はもうない。すなわち、招かれた何らかの故障は、生産スケジュールに非常に大きな影響を及ぼすか、または、メンテナンスコストに非常に大きな影響を及ぼすかのいずれかである。動作領域情報は、コンポーネントの設計もしくは仕様と、プラントデータベース中で利用可能なサービスもしくは他のヒストリー情報とにより適切である、プラントエンジニアによって指定される値である。リスクレベルは、故障モデルコンポーネントにおいて重要度測定にコード化される。
【0065】
コンポーネントの重要度レーティングに寄与するさまざまな因子が、コンポーネントとさまざまなコンポーネントとの役割/重要性とに依存して、適切に合計およびスケーリングされて、次に、発電プラントユニットに表示するために合計およびスケーリングされることが再反復される。
【0066】
発生データは、発電プラントユニット中の特定のコンポーネントの故障の確率のような因子に関係している。故障の確率は、発電プラントコンポーネントの動作条件/状態(例えば、累積ストレスレベルとこれらのストレスの累積の時間とに基づく、プラントユニット中のすべての主要なコンポーネントの故障の確率)にさらに関係している。確率値もまた、さまざまなコンポーネントに対して、低、中、および高としてコード化され、発電ユニットに対して表示するために合計されてスケーリングされる。危険にさらされているコンポーネント(中または高の確率値)に依存して、コンポーネントを故障させるリスクを最小化するために、オプティマイザにより、操作変数をそのように調整することができる。使用することができる別の因子は、故障の発生の頻度である。コンポーネントに故障の傾向がある場合、因子は、高いリスクを示す“高”としてコード化されてもよい。
【0067】
検出は、発電プラントユニットにおける動作中に、コンポーネントの故障につながる欠陥の増大をどれほど検出しやすいかを反映するのに使用される。制御システム中の欠陥を監視するための良い検出メカニズムを適所に持っていると、値は、コンポーネントに関係する低いリスクを示す“低”としてコード化されてもよい。突然現れる欠陥、または、複数のモードを持つ欠陥、または、(直接的にもしくは間接的に)監視されていない欠陥に対して、値は高くなるかもしれない。監視されている、または、監視することが可能な、欠陥または故障モードは、これらの欠陥が故障モードの知識に基づいているとして低いリスクを有し、故障ツリーは、(操作変数を通して制御される)動作条件を調整することにより制御可能であることを認識すべきである。コンポーネントに対して、欠陥が観測可能でない、または、推測する手段もしくは推定する手段が存在する場合、リスクは“中”として考えられる。
【0068】
故障モデルコンポーネントは、各発電プラントユニット/コンポーネントに対して、(プラントデータベース、操作変数(MV)、または測定された変数から導出された)動作状態に対応するリスクインデックスを計算する。発電プラントの1つ以上の構成要素のリスクインデックス値は、メンテナンスのスケジューリングのために考慮され、以下のようにさらにカテゴリ化されたスコア(リスクインデックスの値)を持つ。
【0069】
低いリスクインデックス:メンテナンススケジュールの必要なし。メンテナンススケジュールがコストに基づいて正しいものと認められる場合に、または、故障しやすいコンポーネントが、プラントに影響を及ぼさずに、もしくは、プラントへの最小限の影響で、簡単に置換できる性質をおびている場合に、延期することが許されてもよい。すなわち、リスクインデックスがプラントの動作に影響を及ぼさない。
【0070】
中間リスクインデックス:発電プラントのコンポーネントが、アイドルである、もしくは、生産スケジュールに向けてスケジューリングされていないとき、近い将来(予測範囲内)にそのようなスケジュールが予期される場合に、もしくは、リスクインデックス値が予測範囲内より低くなることが予期される場合に、メンテナンススケジュールは、遅延されるかもしれず、適応されるかもしれない。しかしながら、動作条件における変更は、リスクレベルを低減させるように、または、管理可能なリミット内にリスクを少なくとも維持するように提案している。例えば、プラントは、低減されたストレス条件で動作される(負担をかけすぎない、または、全能力未満で動作される)。動作条件における変更は、リスク値を中から低に低減させるために、すなわち、リスク復元の下にプラント/プラントのコンポーネントを有するために行われてもよい。
【0071】
より高いリスクインデックス:メンテナンススケジュールは、義務的なものである。メンテナンスに対する、即座の、または、近いうちのスケジュール。ここで、リスク下のコンポーネントは、通知を受けてすぐに、故障する可能性が高く、プラントの動作にシビアに影響を及ぼす、または、ダウンタイムに非常に影響を及ぼすことになる。
【0072】
このシステムから、メンテナンスは、予測範囲にわたる負荷需要予想を考慮する、システムの条件と、全体的な利益(コスト関数)の計上とに基づいて、スケジューリングされる。すなわち、システムの最適化は、いつメンテナンスを目指すべきかを決定する。これは、(システムの実際の条件を示す)リスクインデックスと、動作/メンテナンス/ペナルティのコストとの双方を参照する。高いリスクが見つかった場合に、オプティマイザがリスクインデックスを低減させるように試みるとき、新しいセットの操作変数が提供され、関係するEOH補償および他のコスト(エイジング、メンテナンス)は上昇する。
【0073】
故障モデルコンポーネント120により、発電プラント145の1つ以上の構成要素に対して計算されたリスクインデックス値は、EOH補償モデル115にパスされる。EOH補償モデル115は、発電プラント145の1つ以上の構成要素のリスクインデックス値の各カテゴリ(高/中/低)に関係する、対応するEOH補償コスト因子を提供する。EOH補償モデルは、発電プラントの各コンポーネントに対するルックアップテーブル(例えば、表1)に基づいている。ルックアップテーブルは、EOH補償値と、リスクインデックス値の各カテゴリに対応する、EOHごとのコストとを規定する。
【0074】
例として、発電プラント中のボイラーコンポーネントに対して、EOH補償モデルの使用を図示している。以下の表を、リスクインデックス値と、関係するEOH補償とを表すものとして考える。リスクインデックスに関係するコスト因子は、
【数12】

【0075】
として計算される。
【表1】

【0076】
例えば、(仮に)発電プラントのボイラーが0.8の高リスク値で動作しており、CostEOH=100$である場合に、関係するコスト因子は、CRiskIndex=50*100=5000$として計算される。このコスト因子は、目的関数Jに加えられることになる。目的関数(J)を最小化する処理において、オプティマイザコンポーネントは、発電プラント中のそのようなコンポーネントに対するメンテナンスアクティビティをスケジューリングすることにより、高リスクインデックス値に関係するそのようなコスト因子を避けるように試みる。
【0077】
発電プラントの最適な負荷スケジューリングを見つけるときに、オプティマイザは、常に、より厳しくない条件/復元可能な領域においてユニットを動作させるように試みる。ユニットが、代替可能領域下に入る場合、オプティマイザは、中から低にリスク値を低減させるために、操作変数値を低減させるように試みる。同様に、任意のケースでは、任意のユニットが、カタストロフィー領域下に入る場合、オプティマイザは、近い将来に、リスクレベルが低減されることが予測されない場合に、対応するユニットに対するメンテナンスをスケジューリングするように試みる。スケジュールアナライザは、プラントモデルを使用し、予測範囲においてプラント条件をシミュレートするのを助けて、リスクが予測範囲内に下がることが予見されるか否かを見つける。
【0078】
さらに、規定された動作領域に対する、初期の開始ポイント、すなわち、累積されたストレスとそれらのストレスの適用の時間とに関連するサービス情報は、発電プラント動作ヒストリーから導出される。
【0079】
発電プラントの機器の減価償却/エイジングは、発電プラントの動作条件に密接に関係している。述べたように、操作変数は、(故障モデルにおける発生スコアを適切に取得するためにコード化された)故障値の確率に関連しており、また、減価償却レートの計算内である。例えば、機器に重く負荷がかかる場合に、減価償却のレートは増加する。重要度レーティングを参照すると、減価償却レートの値もまた変化する。予め定められているメンテナンススケジュールにおける遅延は、増加した減価償却レートと、関係するコスト因子とにつながるかもしれない。しかしながら、同時に、予め定められているメンテナンススケジュール後の期間までのような設定時間から、減価償却レートを管理することによって、遅延したメンテナンスを成し遂げるような方法で、操作変数を設定することにより、何らかの有用なトレードオフが存在する場合に、オプティマイザは、操作変数に対してそのような設定でプラントを動作させる可能性が高い。このようなケースでは、メンテナンススケジュールを遅延させることができ、全体的な利益に対してオプティマイザにより推奨された負荷による生産のために、ユニットをスケジューリングすることができる。
【0080】
1つの実施形態では、メンテナンスアクティビティは、リスクレベルと負荷予想とに基づいて、ルックアップテーブル(表2)中で規定されているようにスケジューリングされる。コラム負荷予想は、相対的に分類された情報を有する。ここで、他のユニットによって負荷要件が容易に満たされるとき、予想に基づく負荷要件は、“低”としてカテゴリ化される。公称レベルで維持することにより、または、公称レベルを超えたユニットの出力においてわずかに増加させることにより、より少ない損失で他のユニットによって負荷要件が満たされるとき、負荷予想値は“中”である。メンテナンスに対して問題になっているユニットの参加なしで負荷要件を満たすことができないとき、負荷予想値は“高”である。
【0081】
初期条件として、発電プラントの1つ以上の構成要素に対する予め定められているメンテナンススケジュール(仮に、毎Tmの期間の後に、発電プラントの特定のコンポーネントのメンテナンスがスケジューリングされていなくてはならないとする)は、予想モジュールから取得され、メンテナンスアクティビティをスケジューリングするための初期条件としてオプティマイザにより使用される。任意の時間tにおいて、次のメンテナンスの時間は、(Tm-t)である。
【0082】
システムは、能力判定、動作コスト判定、および、メンテナンススケジュールにおけるシフトに基づいて、予測範囲において負荷スケジュールを最適化することになる。リスクレベルおよびEOH補償が考慮される。時間(Tm-t)において、リスクインデックス値が生産スケジューリングに対して受け入れ可能である場合、ユニットは、生産のためにスケジューリングされる。万が一、リスクレベルが、メンテナンスをスケジューリングすることを推奨するようなものである場合、システムは、操作変数を適切に変化させることにより、改善に対してテストし、リスクレベルが改善されることが予期される条件を生じさせる。システムはまた、プラントモデルコンポーネントを使用して、改善に対するテストのための手段として、シミュレーションを採用してもよい。
【0083】
新たな操作変数による、シミュレーションテストにおいて、または、時間(Δt)におけるテストにおいて、予想または実際のリスクインデックス値が依然として高い場合(リスクインデックス値における大幅な低減なし)、システムは、予め構成されている時間(例えば、ランプダウン+ΔT、ここで、ΔTは、他のユニットに調整させる、または、オペレータからの必要な同意を有するリアクション時間)内に、メンテナンスに行くように、コンポーネント/ユニットを促す/強制する。
【0084】
改善テストの間に、新たな操作変数(MV)によりプラントを実行することから、予想または実際のリスク値が低減されている場合に(システムにおける著しい改善)、メンテナンスは、(Tm-t)において実行されず、Tm+mΔtの新たなメンテナンススケジュールが予想モジュール中に記録される。
【0085】
シミュレーションアクティビティはオプション的であり、1つの実施形態中のオプティマイザは、改善に対して決定するためのシミュレーションテストなしで説明されてもよい。しかしながら、最低でも、メンテナンススケジュールを変えることにより、コスト利益があることを示す十分な解析があってもよく、これらの解析は、スケジュールアナライザにより行われてもよい。さらに、また、コストに基づく目的関数を有し、メンテナンススケジュール中で必要なシフトを最適に決定することを含む、米国特許第6,999,829号において提供されたようなよく知られている手順を使用するコストベースのみのメンテナンススケジュールに対して、スケジュールアナライザを使用して、mΔtによる延期の代わりに、最適なシフトを示してもよい。
【0086】
メンテナンススケジュールの延期により、目的関数は、メンテナンスが実行されるときまで、減価償却コストの高い値を考慮する必要があることにも留意すべきである。この因子は、メンテナンスコストの根拠となる部分としての追加項として、目的関数中に追加される。
【0087】
図3を参照して、以下の例により最適化の方法を簡単に説明する。ユニット1、2、および3は同一であると仮定したい。ユニット1、2、および3の最大負荷送電容量は、それぞれ、60MW、60MW、および50MWであると考える。図4で示されているように、典型的な需要予想プロフィールは、予測範囲にわたる、生産およびメンテナンスアクティビティの双方の最適スケジュールをデモンストレーションしていると仮定する。
【0088】
3つすべてのユニット(ユニット1、2、3)は、時間t1までに、120MWの総需要を満たすために、40MWずつを生産するように最適にスケジューリングされている。時間t1の後、需要プロフィールは、図4の410から推測されるように、160MWに変化する。ユニット3の最大負荷送電容量は、440から推測できるように50MWのみであるので、ユニット3は、50MWを生産するようにオプティマイザによりスケジューリングされる。残りの110MWは、ユニット1および2の間で共有される。
【0089】
420から、時間t1とt2との間には、Tmとして示されている、ユニット1に対する予め定められているメンテナンストリガが存在するように見える。スケジュールアナライザおよび最適化ソルバーモジュールは、ユニット1の負荷スケジューリング/メンテナンススケジューリングに関係するさまざまな因子を推定して考慮する。この例では、Tm辺りのポイントにおいて、ユニット1に対するリスクインデックスは、中である。リスクインデックスと高需要とに対する中リスク値は、リスクの低減に対する早急な必要性、および、同時に需要を満たすことを推奨している。この例では、ユニット1に対して、最適なコストの面で負荷が最適であり、リスクを低減させてもよいとして、50MWの値でオプティマイザがタイムアップすることが示されている。50MWに対応して、リスクを低減させる新たなセットポイントがユニット1に対して送られる。需要を満たし、50MWにおいてユニット1の機能を有するために、ユニット2は、430から推測されるように、55MWから60MWまで増やすようにスケジューリングされる。オプティマイザは、予測範囲内のΔtにおける改善に対してチェックし、オプティマイザは、ユニット1におけるリスクが予測範囲内のΔtで確かに低に低減したことを見つける。したがって、ユニット1のメンテナンスアクティビティは、Tm+Δtまで延期される。オプティマイザは、ユニット1に対するメンテナンススケジュールのための適切な時間をTm+Δtとして記録する。ここでΔtは、予測範囲内の時間であり、Tmからのメンテナンススケジュールにおけるシフトである。
【0090】
スケジュールTm+Δtのすぐ後に需要予想が下がり、需要は、ユニット2およびユニット3によって満たすのに十分低くなる。需要が低いことから、たとえユニット1のリスクインデックスが低くとも、ユニット1は、Tm+Δtにおいてメンテナンスのために扱われる。時間t2において、ユニット2および3は、50MWの総需要を引き受けるようにスケジューリングされる。
【表2】

【0091】
mは、メンテナンスに対するスケジュールであり;“m”は、予め定められている数であり;Δtは、予測範囲内の時間である。
【0092】
図5は、本発明のある実施形態にしたがった、発電プラントに対する、負荷スケジューリングを最適化するための方法を説明している。ここで参照する発電プラントは、1つ以上のそのコンポーネントを有する1つ以上の発電ユニットを備える。
【0093】
ここでの負荷スケジューリングの最適化は、生産スケジューリング、メンテナンススケジューリング、または発電ユニット対する負荷、および、これらに類するものを含む。これには、ここに上述したような操作変数を変更することにより行うことができる、発電ユニットのコンポーネントに対するリスクインデックスの最適化も含む。負荷スケジューリングの最適化は、発電ユニットのコンポーネントのメンテナンスに対するメンテナンストリガを延期するまたは早めることも含めることができ、これは、コンポーネントの負荷需要または状態に基づく。
【0094】
ステップ505は、発電ユニットのコンポーネントの動作状態を解析することを指す。発電ユニットは、発電ユニットの1つ以上のコンポーネントに関係する1つ以上のリスクインデックスを有する。解析するステップは、予測範囲における、能力判定と、動作コスト判定と、そこでのメンテナンススケジュールにおけるシフトとを含む。
【0095】
ステップ510は、発電ユニットの1つ以上のコンポーネントの状態を反映する、目的関数の更新を含む。ここで述べる目的関数は、コンポーネントの処理制御のための少なくとも1項と、コンポーネントのメンテナンスに関係する少なくとも1項とを含む。また、目的関数を更新するステップは、発電ユニットのコンポーネントのメンテナンスを延期することもしくは早めることに関係するコストに関しての更新、または、ここでのコンポーネントの減価償却もしくは劣化を考慮する、コンポーネントのライフサイクルに関係するコストに関しての更新を含む。
【0096】
ステップ515では、ステップ520に描写されているように、発電ユニットのスケジュールと、発電ユニットのコンポーネントの動作状態とを最適化するために、目的関数を解く。
【0097】
ステップ525は、発電プラントを動作させるステップを指す。これは、最適化なスケジュールおよびその動作状態において、発電ユニットを動作させることに関する参照を有する。
【0098】
発電プラントにおける発電ユニットの1つ以上のコンポーネントに対する特定のスケジュールもしくは動作状態を特定することによる、適切なユーザインターフェースを通した入力によって直接的に、または、スケジュールアナライザもしくは予想モジュールに関連する特定のパラメータ/変数を操作することによって間接的に、オペレータ/ユーザが負荷スケジューリング(例えば、メンテナンススケジューリング)または動作状態をオーバーライドさせることを可能にする手段を、制御システムが提供することにも留意すべきである。
【0099】
ここで、本発明の特定の特徴を図示し、説明してきたが、当業者にとって多くの修正および変更が行われるだろう。それゆえ、添付した特許請求の範囲は、本発明の本来の精神内に収まるすべてのそのような修正および変更をカバーすることを意図していることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の発電ユニットを有する発電プラントに対する負荷スケジューリングを最適化するための方法において、
発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係する1つ以上のリスクインデックスを有する、前記発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態を解析することと、
前記発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの状態を反映する少なくとも1つの目的関数を更新することと、
1つ以上の目的関数を解いて、前記1つ以上の発電ユニットのスケジュールと、前記発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態とを最適化することと、
最適化された、スケジュールおよび動作状態において、前記1つ以上の発電ユニットを動作させることとを含む方法。
【請求項2】
前記解析するステップは、予測範囲における、能力判定と、動作コスト判定と、メンテナンススケジュールにおけるシフトとを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記負荷スケジューリングを最適化することは、1つ以上の発電ユニットに対する、生産スケジューリング、メンテナンススケジューリング、もしくは負荷、または、これらの組み合わせを含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記負荷スケジューリングを最適化することは、操作変数を適切に変化させることにより、前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに対するリスクインデックスを最適化することを含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記負荷スケジューリングを最適化することは、前記コンポーネントの状態または負荷需要に基づいて、前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスに対してメンテナンストリガを延期することまたは早めることを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記目的関数は、前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの処理制御に対する少なくとも1項、または、前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスに関係する少なくとも1項、または、これらの組み合わせを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記更新することは、a)前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのメンテナンスを延期することもしくは早めることに関係するコスト、あるいは、b)前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントのライフサイクルに関係するコスト、あるいは、a)およびb)のそれらの組み合わせにより、前記目的関数を更新することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の発電ユニットを有する発電プラントの負荷をスケジューリングする制御システムにおいて、
メンテナンススケジューリングを含む負荷スケジューリングを最適化するための、および、前記1つ以上の発電ユニットの処理を最適に制御するための、少なくとも1つの目的関数を有するオプティマイザを具備し、前記オプティマイザは、負荷スケジューリング最適化のために、プラントモデルコンポーネントと故障モデルコンポーネントとを利用する制御システム。
【請求項9】
前記オプティマイザは、前記発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係する1つ以上のリスクインデックスを有する、前記発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントの動作状態を解析するスケジューラアナライザを備える請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記オプティマイザは、前記1つ以上の発電ユニットのうちの1つ以上のコンポーネントに関係するリスクインデックス、もしくは、需要予想、もしくは、新たな操作変数により影響を及ぼされる動作状態における改善、もしくは、予めスケジューリングされているメンテナンススケジュールに基づいて、メンテナンストリガにより引き起こされるメンテナンス、または、ユーザインターフェースを通してユーザにより引き起こされるメンテナンス、または、これらの組み合わせによるメンテナンスをスケジューリングすることが可能である請求項8記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−516671(P2013−516671A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546512(P2012−546512)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001106
【国際公開番号】WO2011/080548
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(594075499)アーベーベー・リサーチ・リミテッド (89)
【氏名又は名称原語表記】ABB RESEARCH LTD.
【Fターム(参考)】