説明

発電機、風力タービン、発電機の構成方法および風力タービンにおける発電機の使用

【課題】簡単な構成および小さいサイズを有し、風力タービン特に可変速風力タービンに特に適した発電機を提供する。
【解決手段】M個のロータ磁極片3と、磁界生成手段とを有するロータ2と、C個のステータコイル7が巻き付けられているステータ5と、ステータコイル7にそれぞれ接続されている複数のダイオード整流器11、11’、11’’を有する発電機−配電網インタフェースとを有する発電機1であって、ステータコイル7の個数Cは、ロータ磁極片3の個数Mよりも大きいものであるか、または、ロータ磁極片3の個数Mは、ステータコイル7の個数Cよりも大きいが、その整数倍ではない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機、特に風力タービンの発電機、およびかかる発電機を有する風力タービンに関する。本発明は、さらに、かかる発電機の構成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは電気に変換されて配電網に供給されるエネルギーの最初の源であり、配電網には発電機が電気的に接続される。風力エネルギーの電気エネルギーへの変換は、発電機、通常は交流誘導モータの駆動により風力タービンにおいて行われる。風力タービンにより生成された電力が配電網に供給されるとき、この電力は配電線の周波数たとえば、50Hzまたは60Hzに同期された一定の周波数を有する必要がある。これは発電機を一定の回転速度で駆動させることにより達成可能であるが、無段変速機が用いられない限り、これには一定速度で風力タービンが回転する必要がある。残念なことに、風力タービンの一定速度での動作は風の状態の変化によりそのエネルギー変換効率を制限してしまう。最適なエネルギー回収のためには、タービンの回転速度は風速に比例させる必要がある。
【0003】
風力タービンのエネルギー変換効率を向上する方法として、可変速の風力タービンが提案されている。変化する風の状態に応じてロータ速度を変化させることにより、広範囲の風速にわたって改善されたエネルギー回収が達成可能である。同様に重要なことに、突風により引き起こされるピーク時の機械的応力は、突風に応じて風力タービンの速度を上昇させることにより低減可能であり、それによって、風力タービンの発電機に達するトルクを制限することができる。突風により引き起こされたロータの運動エネルギーの増大は、短期間のエネルギー蓄積媒体として役立ち、さらにエネルギー変換を向上させる。しかし、かかる動作は応答性の高いトルク制御システムを必要とする。
【0004】
可変速の風力タービンは、エネルギー変換の向上および応力低減の観点から有利であるが、発電システムが定速の風力タービンと比べてより複雑となる。発電機は通常、定率ギア変速機を介して可変速モータに接続されているため、発電機により生成される電力は、周波数が変化することとなる。これには、発電機による可変周波数の交流出力電力を、配電網に供給するための一定周波数の交流電力に変換する必要がある。この変換は、周波数コンバータにより直接に、または、整流器による直流への中間的な変換およびインバータによる固定周波数の交流への再変換のいずれかによりおこなわれる。
【0005】
知られている現実の構成において、風力タービンにより生成されたエネルギーは、少なくとも交流/直流コンバータを有するコンバータシステム、直流キャパシタとこれに接続された配電網側の直流/交流コンバータ、そして最終的に配電網に供給され、このように処理された電力は適切な電圧レベルと周波数レベルとを有する。このような解決法では、風力タービンから生成されたエネルギーは種々の高価な装置を通す必要があるという事実から、生成される風力エネルギーの変換は不必要に高価なものとなる。さらに、信号処理の種々のレベルにもかかわらず、生成された電力は、配電網に供給される段において、望ましくない高調波歪み成分が含まれてしまう。
【0006】
たとえば、US5,083,039には、制御回路により制御される、多数のアクティブ整流器および多数のアクティブスイッチング装置を有する電力変換回路が記載されている。構成部品が多数であることから、コンバータシステムは非常に高価であり、これらのコストは配電網に供給されるエネルギーのコストに影響を与える。さらに、この変換回路において処理された電力は、望ましくない高調波歪み成分をやはり含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5,083,039
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、簡単な構成および小さいサイズを有し、風力タービン特に可変速風力タービンに特に適した発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、独立請求項に記載の発電機、本発明にかかる発電機を有する風力タービン、および、発電機の構成方法により解決される。
【0010】
本発明にかかる発電機は、M個のロータ磁極片と、磁界生成手段たとえば1つまたは複数の永久磁石とを有するロータと、C個のステータコイルが巻き付けられているステータと、を有する。通常、ステータコイルは複数のステータ極に巻き付けられているか、または、ステータ本体のスロット内またはステータ本体のセグメント内に設けられている。本発明によれば、発電機は、ステータコイルにそれぞれ接続されている複数のダイオード整流器を有する発電機−配電網インタフェースを有する。ここで、ダイオード整流器は複数の単純なダイオードにより構成されるいかなる整流器であってよい。本発明の第1の他の実施形態において、ステータコイルの個数Cは、ロータ磁極片の個数Mよりも大きいように選択される。第2の実施形態において、ロータ磁極片の個数Mはステータコイルの個数Cよりも大きいが、その整数倍ではない。
【0011】
本発明にかかる、ステータコイルとロータ磁極片との数値的比例を伴う協同的組み合わせにおいてダイオードを用いることにより、ロータの回転中に異なるステータコイルにおいて誘導された出力電圧を、確実に互いに対して時間的にシフトさせることができる。したがって、ダイオード整流器を介した異なるステータコイルの適切な並列接続により、直流リンクキャパシタであって、当該キャパシタから電力がインバータおよび/または他の適切な要素を介して配電網に送られる、直流リンクキャパシタに適した不可欠な直流電圧が生成可能である。
【0012】
ダイオード整流器の好適な使用により、当該分野において通常用いられている発電機側のコンバータを置き換えることができる。この発電機側のコンバータは、上述のように、生成された電力を配電網に送る間に望ましくない高調波を入れてしまう装置であるので、ダイオード整流器による置き換えによってすべての望ましくない高調波を排除することができる。さらに、ダイオード整流器は特に簡単な装置であり小さいものであるので、本発明の発電機は特にコスト効率よくかつ簡単なやり方で実現可能である。
【0013】
より簡単な構成であることによって、発電機の簡単な製造が可能となる。本発明にかかる発電機の構成方法は、
a)M個のロータ磁極片と、磁界生成手段とを有するロータを構成するステップと、
b)C個のステータコイルが巻き付けられているステータを構成するステップと、ここで、ステータコイルの個数Cは、ロータ磁極片の個数Mよりも大きいものであるか、
または、ロータ磁極片の個数Mはステータコイルの個数Cよりも大きいが、その整数倍ではなく、
c)ステータを、ロータ、および、ステータコイルにそれぞれ接続される複数のダイオード整流器を有する発電機−配電網インタフェースと集合させるステップと、
を有する。
【0014】
上述のように、本発明にかかる発電機は、風力タービン、特に可変速風力タービンに特に適している。
【0015】
本発明の特に有利な実施形態および特徴が、従属請求項および以下の詳細な説明により示される。ここで、発電機の構成方法は、発電機の従属請求項にしたがってさらに変わってもよい。従属請求項記載の特徴がさらに有利な実施形態となるよう組み合わされてもよい。
【0016】
風力タービン発電機は、一般に、そのステータ極の数Cとロータ磁極片の数Mとが等しいように、または、CがMの整数倍たとえば2M、3M等であるように構成されている。しかし、このような物理構成の発電機では、回転中に全てのロータ磁極片が対称的に同時にステータ極を通過するときにコギングトルクが生じ、ロータ極とステータ極とが半径方向に並んだ時点で磁力が最大となる。これは、機械の出力リプル、振動およびノイズに寄与する、知られている望ましくない効果である。
【0017】
したがって、本発明の好適な実施形態では、ステータコイルとロータ磁極片とは、ロータ磁極片の少なくとも一部が、回転中、非同期にステータコイルを通過するように、非対称な分布で配置されている。この条件は、たとえば、ロータ磁極片の個数Mがステータコイルの個数Cよりも大きいがその整数倍ではない上述の本発明の第2の実施形態において自動的に満たされる。ステータコイルの個数Cがロータ磁極片の個数Mよりも大きい、上述の第1の実施形態において、これは、(第2の実施形態におけるのと同様に)ステータコイルの個数Cがロータ磁極片の個数Mの整数倍ではないような数値関係を選択することにより、容易に実現可能である。
【0018】
本発明のこの実施形態によれば、回転中に全ての磁極片が対称的にステータ極を同時に通過することはないため、ロータ磁極片とステータ極との間の磁力は、ロータの回転中、基本的に「平均される」。したがって、コギングトルクの望ましくない影響は最少化され、機械の振動およびノイズは低減される。
【0019】
風力タービンの発電機により生成されるエネルギーが供給される通常の配電網は、多相である。したがって、本発明の好適な実施形態では、複数のステータコイルは、発電機が電気的に接続可能な、多相の配電網の異なる相に割り当てられている。換言すれば、ステータコイルは配電網の対応するコネクタに、発電機−配電網インタフェースを介して接続されており、発電機が配電網にリンクされたとき、各ステータコイルは配電網の相の1つに電気的に接続される。好適には、発電機は3相の発電機である。
【0020】
特に単純な、好適な実施形態では、各ステータコイルはそれ専用のダイオード整流器に接続されている。
【0021】
しかし、他の実施形態では、一群のステータコイルは、これらのステータが共通の相に割り当てられている場合には、共通のダイオード整流器を共有し、ロータの回転中、当該群の各コイルは経時的に同期した同一の電圧形状を保持する。この実施形態では、経時的に同期した同一の電圧形態を保持しない共通の相のステータコイルは全て、個別のダイオード整流器を有することとなる。この実施形態は、ステータが多数のステータコイルを有する場合に好ましく、配電網の特定の相に割り当てられたコイルは十分な数の群に分類され、同相に割り当てられた群の十分な整流パルスがロータの回転のために必要な一定電圧に重ねられる。
【0022】
いずれの場合においても、異相のステータコイルに割り当てられたダイオード整流器は、好適には、たとえば配電網の共通の中性点を共有する。
【0023】
上述のように、ダイオード整流器は、複数の単純なダイオードとは異なるやり方で構成可能である。ダイオード整流器回路についての非常に多くの設計が当該分野では知られている。通常、整流器回路は半波整流器または全波整流器に分けられる。両方の種類を本発明において用いることができる。
【0024】
たとえば、好適な一実施形態では、各ダイオード整流器は、通常4つのダイオードから構成されるブリッジ整流器から構成される。
【0025】
別の好適な実施形態では、各ダイオード整流器は、最大2つのダイオードから構成されている。整流器ブリッジの代わりに、各ステータコイルに1つまたは2つだけダイオードを加えることにより、整流器要素の数は最小に維持される。要素の数の少ない、この簡単な構成によって、発電機の全体のコストはさらに低いものとなる。
【0026】
小型で省空間の構成を実現するため、ダイオード整流器は好適にはステータ、たとえば、ステータの外表面またはステータ本体に設けられたキャビティ内またはステータ本体のセグメント内に設けられる。
【0027】
本発明の他の課題および特徴は、添付図面と共に考慮される以下の詳細な実施の形態から明らかとされる。しかし、図面は例示目的のためだけに記載されたものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】配電網に接続された風力タービンの概略図を示す。
【図2】本発明にかかる発電機の実施形態の概略図を示す。
【図3】本発明の実施形態にかかる整流器の構成を有する、3相発電機システムを示す。
【図4】図2にかかる発電機および図4にかかる1相の整流器の構成に関する、各出力電圧の効果を概略的に示す。
【図5】ダイオード整流器の第1の実施形態の回路図である。
【図6】ダイオード整流器の第2の実施形態の回路図である。
【図7】ダイオード整流器の第3の実施形態の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図面中、同様の参照番号は同様の要素を示している。図中の要素は必ずしも同じスケールではない。
【0030】
図1は、風力タービン20のエネルギー生成システムの基本的構成を概略的に示す。このような風力タービン20は、通常、大地、海底または他の適した支持体上に設置可能なタワー(図示せず)を有している。タワーの頂部には、ロータブレード22を有するハブ21を保持するナセル(図示せず)が設けられている。図1に概略的に示されているように、たとえば直結式発電機である発電機1は、風力タービン20のナセル内に設けられ、シャフト23またはドライブラインを介してハブ21に接続されている。当業者には明らかであるように、直結式発電機以外の発電機、たとえば、ギアボックスを介してハブ21に接続される発電機も可能である。
【0031】
ハブ21の回転により、永久磁石(PM)発電機1内のロータの回転が引き起こされ、図2乃至4にしたがって以下で説明される、発電機−配電網インタフェース10の、ステータに設けられた複数のダイオード整流器によって、PM発電機1のステータコイル内で誘起された出力電力が整流される。発電機−配電網インタフェース10は、発電機の整流電圧パルスの供給を受けるキャパシタ25を有する可変電圧直流リンク24と、定義された交番出力電圧を生成するインバータ26たとえば強制転流インバータと、をさらに有する。発電機−配電網インタフェース10のトランス27は、配電網30へのエネルギー供給のために、交番電圧を適切なピークレベルおよび周波数とする。
【0032】
図2は、図1にかかる構成において使用可能な、本発明の実施の形態にかかる直結式発電機1の構成を示す。発電機1は、ブラシレス発電機1であり、永久磁石ロータ2を有する。ロータ2はシャフト4に設けられており、N極とS極とが交互の、個数Mが18の磁極片3を有する。ロータ2は当該分野で知られている通常の方法で構成可能である。シャフト4はたとえば風力タービンのハブに直接接続されている。
【0033】
ロータ2は複数のステータセグメント6から構成される環状のステータ5により囲まれている。各ステータセグメント6は、スロットおよび中央極8を有する磁気ヨークと、スロット内の中央極8の周囲に巻き付けられたコイル7と、を有している。ヨークは、良好な磁束の導体となるよう、鉄等の強磁性材料から形成されている。図2に示す実施形態では、セグメントの数、すなわちステータコイル7の数Cは21である。したがって、ステータコイル7の数Cはロータ磁極片3の数Mより大きいが、その整数倍ではない。21個のステータコイル7は7つのステータコイル7の群に分けられており、各群は3相の配電網の特定の相に割り当てられている。
【0034】
図2から明らかなように、所定数のステータコイル7およびロータ磁極片3を用いることにより、ロータ磁極片3は回転中、全てが同期してステータコイル7を同時に通過することはできない。したがって、ステータ極とロータ磁極片3との間の磁力は、ロータの回転中、基本的に均一に分散されているかまたは平均化されている。このため、コギングトルクの望ましくない効果は最少化され、機械の振動およびノイズは低減される。発電機の分野の当業者にとっては知られているように、コギングトルクは磁石によるステータ極への引力から生じる望ましくないトルク成分である。この望ましくないトルクは振動およびノイズをもたらす。したがって、発電機中のコギングトルクは低減されることが望ましい。
【0035】
ステータコイル7およびロータ磁極片3の特定された数(それぞれ18個、21個)は、例示的なものに過ぎず、発電機の実際の構成においては、ステータコイル7およびロータ磁極片3の数はより大きいものであってよい。たとえば、ロータ磁極片3の数Mは好適には50〜150であり、ステータコイル7の数Cは好適には50〜200である。
【0036】
ステータは異なるやり方でも構成可能であり、たとえば、各スロットが複数の個別のコイルを収容する分数スロット巻きステータで構成可能である。たとえば、あるスロットは同相のコイルを収容し、他のスロットは2つの異なる相のコイルを収容する。また、発電機は(図2に示す構成に示されているような)内部ロータ、または、外部ロータのいずれかを有する。たとえば、新しい世代の風力タービン用の直結式発電機の多くは、外部ロータを有する発電機である。ステータコイルの数Cおよびロータ磁極片の数Cは、本発明に従って選択される。
【0037】
図2にかかる実施形態では、全てのステータコイル7はそれぞれ個別のダイオード整流器11、11’、11’’に接続されている。このダイオード整流器は、ロータ2の回転中に関連するコイル7に誘導される電圧を整流する。ダイオード整流器11、11’、11’’は、以下で図5〜7を参照して説明するように、複数の単純なダイオードを用いた異なるやり方でも構成可能である。
【0038】
図3において、ステータコイル7がどのように3相の配電網の相P、P、Pに接続されているかを示している。図中、ステータコイルには符号Sx,yが付されている。ここで、xは{1、2、3}のいずれかであり、配電網の相P、P、Pの番号を示している。また、yは{1、…、c}のいずれかであり、x番目の相に接続されているステータコイルの指標変数である。すなわち、S1,1は「相#1に接続されているステータコイル#1」を意味し、S2,1は「相#2に接続されているステータコイル#1」を意味し、他も同様である。したがって、相P、P、Pの1つに割り当てられているステータコイルの最大数cは全てのステータコイルの数Cを3で除したものである。
【0039】
図3に例示の回路において、ステータセグメントは中性点Nを共有しており、各ステータコイルSx,yは、自身のダイオード整流器11、11’、11’’を介して3つの相P、P、Pの1つに接続されている。
【0040】
ステータに設けられた、図2および3に示されているようなダイオード整流器11、11’、11’’を有するこのようなシステムを、同数のステータコイルとロータ磁極片とを有している従来技術にかかる発電機に用いた場合、永久磁石ロータの回転中に同時にステータコイルのそれぞれに電流が誘導される。結果として、1つの相に関して、経時的に同一形状を有する出力電圧パルスが各ステータコイルにより保持され、コイルが並列接続されているため、その相の電圧は結果として経時的にその波形を示すことになる。この信号は単純な直流リンクキャパシタへの印加には適していない。
【0041】
したがって、図2に示される本発明の実施の形態では、ステータコイルの数Cとロータ磁極片の数Mとは等しいものではなく、ステータコイルSx,yの数Cはロータ磁極片3の数Mよりも大きい。
【0042】
したがって、ロータ磁極片の全てが回転中、同時に対称にステータ極を通過することはない。1つの相に関して、異なるステータコイルから受け取られる出力電圧は互いに対して「時間的にシフトされている」。出力電圧の時間シフトの効果は相Pについて図4に概略的に示されている。上述のように、ロータ磁極片の数がステータコイルの数よりも大きいが、その整数倍ではない場合には、時間シフトの同じ効果が生じる。
【0043】
図4の左側に示されているようなダイオード整流器11、11’、11’’から受信される全てのパルスが、並列のダイオード整流器11、11’、11’’を介してステータコイルを接続することにより重畳される場合の、結果生じる整流電圧が1つの相Pについて図4の右側に示されている。位相Pに存在する電圧は基本的に一定であり、図1に示されるような配電網30への接続を容易とする直流リンクキャパシタに印加されるものに適している。
【0044】
図4中、ダイオード整流器11、11’、11’’からの出力パルスは基本的に方形波のパルスとして示されている。この形状は例示に過ぎない。実際の発電機では、ロータの回転中にコイルに沿って動いているロータ磁極片によってコイルに誘導される電圧は、経時的に正弦パルス形状を有する。したがって、ダイオード整流器11、11’、11’’から出力される整流パルスの形状は、このような切頭パルス形状の一連の連続に、より類似している。しかし、それにもかかわらず、ステータコイルおよびロータ磁極片の大きさおよび数が発電機の異なるコイルから生じる間欠パルスが適当な量互いに重なるように選択される場合には、これらのパルスは重畳されて基本的に一定の電圧を与える。
【0045】
各ステータコイルの出力に接続されている整流器11、11’、11’’によって、確実に、コイルからの入力が「高い」場合にだけ、上述のような基本的に正弦状の形状に通常従う電流が相P、P、Pに流れる。上述のように、ダイオード整流器11、11’、11’’は異なるやり方で構成可能である。
【0046】
図5は、ただ1つのダイオードD1を有する非常に単純なダイオード整流器の回路図を示す。ダイオードは一方向にしか電流を流さないので、入力交流波の半分のみが整流器11の出力に達する。したがって、これは基本的な半波整流器である。
【0047】
図5に示されるような半波整流器は非常に単純であるが、入力交流サイクルの半分しか用いられず、他の半分の利用可能な全エネルギーが捨てられるため、効率はあまり高いものではない。
【0048】
ステータコイルに誘導される電圧の他の半波も使用するためには、全波整流器を用いることができる。図6は4つのダイオードD、D、D、Dが用いられているブリッジ整流器の回路図を示している。このブリッジ整流器も同様に本発明においてダイオード整流器11’として使用することができる。
【0049】
図7は、本発明において用いることのできる第3のダイオード整流器11’’の回路図を示す。この構成では、ただ2つのダイオードD、Dが全波を用いるために必要である。このため、発電機−配電網インタフェースの共通の中性点はステータコイルの中心タップに接続される。このことは、たとえば図5または6にかかるダイオード整流器11、11’が用いられる他の場合と比べて、この構成のためにコイルをステータに設ける異なる方法が必要とされる場合があることを意味する。しかし、ダイオード整流器11’’は図6にかかるダイオード整流器よりも少ないダイオードを必要とするが、図5のダイオード整流器11についての場合と同様に半波のみの代わりに全波を用いる。
【0050】
図面中のダイオード整流器11、11’、11’’は好適な実施例に過ぎず、他のいかなるダイオード整流器も適切に使用可能であることに留意されたい。
【0051】
上記の実施例を参照して示されるように、本発明にかかる、ステータコイルに設けられるダイオード整流器を有する発電機は、当該分野において通常用いられている発電機側コンバータを必要無いものとする。この発電機側コンバータは、当該分野で知られている解決法に関連して説明したように、生成された電力を配電網に送る間に不所望の高調波を入れる装置であり、ダイオード整流器に置き換えることにより不所望の高調波は好適に排除される。さらに、ダイオード整流器は単純な構成の装置であるため、空間の経済性および構成の単純さが本発明の発電機について実現される。さらに、発電機がより簡単な構成であることは、発電機の製造を容易化する。
【0052】
本発明は、好適な実施形態および変形例の形で開示したが、多くのさらなる発明の修正および変形を本発明の範囲を逸脱することなく行うことができる。明確にするためであるが、本願全体における「1つの」、「ある」の使用は複数を除くものではなく、「有する」、「含む」、「から構成される」の記載は、他のステップまたは要素を排除するものではない。「ユニット」または「モジュール」は、特に言及しない限り、複数のユニットまたはモジュールを含みうる。
【符号の説明】
【0053】
1 発電機、 2 ロータ、 3 ロータ磁極片、 5 ステータ、 7 ステータコイル、 10 発電機−配電網インタフェース、 11、11’、11’’ ダイオード整流器、 20 風力タービン、 30 配電網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
M個のロータ磁極片(3)と、磁界生成手段とを有するロータ(2)と、
C個のステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)が巻き付けられているステータ(5)と、
前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)にそれぞれ接続されている複数のダイオード整流器(11、11’、11’’)を有する発電機−配電網インタフェースと、
を備える発電機であって、
前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)の個数Cは、前記ロータ磁極片(3)の個数Mよりも大きいものであるか、または、
前記ロータ磁極片(3)の個数Mは、前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)の個数Cよりも大きいが、その整数倍ではない、
ことを特徴とする発電機(1)。
【請求項2】
前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)および前記ロータ磁極片(3)は、前記ロータ磁極片(3)の少なくとも一部が、回転中、前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)を非同期に通過するように設けられている、請求項1記載の発電機。
【請求項3】
前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)の個数Cは、前記ロータ磁極片(3)の個数Mよりも大きいが、その整数倍ではない、請求項2記載の発電機。
【請求項4】
前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)は、前記発電機(1)が電気的に接続される多相の配電網の異なる相(P、P、P)に割り当てられる、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発電機。
【請求項5】
前記発電機(1)は3相の発電機(1)である、請求項4記載の発電機。
【請求項6】
一群の前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)は、当該ステータコイルが共通の1相に割り当てられている場合、共通の前記ダイオード整流器を共有しており、前記ロータ(2)の回転中、前記群における各前記ステータコイルは、経時的に同期した同一の電圧形状を保持する、請求項4または5記載の発電機。
【請求項7】
各前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)は、それぞれの前記ダイオード整流器(11、11’、11’’)に接続されている、請求項1乃至5のいずれか1項記載の発電機。
【請求項8】
前記ダイオード整流器(11、11’、11’’)は、共通の中性点(N)を共有している、請求項1乃至7のいずれか1項記載の発電機。
【請求項9】
各前記ダイオード整流器(11’)は、ブリッジ整流器(11’)から構成されている、請求項1乃至8のいずれか1項記載の発電機。
【請求項10】
各前記ダイオード整流器(11、11’’)は、最大2つのダイオード(D、D)から構成されている、請求項1乃至8のいずれか1項記載の発電機。
【請求項11】
前記ダイオード整流器(11、11’、11’’)は前記ステータ(5)に設けられている、請求項1乃至10のいずれか1項記載の発電機。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の発電機を備える風力タービン(20)。
【請求項13】
a)M個のロータ磁極片(3)と、磁界生成手段とを有するロータ(2)を構成するステップと、
b)C個のステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)が巻き付けられているステータ(5)を構成するステップと、ここで、前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)の個数Cは、前記ロータ磁極片(3)の個数Mよりも大きいものであるか、または、前記ロータ磁極片(3)の個数Mは前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)の個数Cよりも大きいが、その整数倍ではなく、
c)前記ステータ(5)を、前記ロータ(2)、および、前記ステータコイル(7、S1,1、S2,1、S3,1、S1,2、S2,2、…、S1,C、S2,C、S3,C)にそれぞれ接続されている複数のダイオード整流器(11、11’、11’’)を有する発電機−配電網インタフェースと集合させるステップと、
を備える、ことを特徴とする発電機(1)の構成方法。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項記載の発電機の風力タービン(20)における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−16269(P2012−16269A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143048(P2011−143048)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】