発電機および駆動機の固定子
【課題】周方向に沿って配置された板状部材により構成される固定子コアの製造時の作業効率を高める技術を提供する。
【解決手段】固定子コア40は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材41〜46により構成されている。複数の板状部材41〜46は、径方向の長さが異なっており、周方向に沿って径方向の長さの順(長い順または短い順)に繰り返し配置されている。隣接する板状部材は、径方向外周側において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。また、径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。連結箇所では、突部(41A1、41A2、42A、43A1、43A2、44A、45A1、45A2、46A)が孔部(41B、42B1、42B2、43B、44B1、44B2、45B、46B1、46B2)に嵌め込まれている。
【解決手段】固定子コア40は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材41〜46により構成されている。複数の板状部材41〜46は、径方向の長さが異なっており、周方向に沿って径方向の長さの順(長い順または短い順)に繰り返し配置されている。隣接する板状部材は、径方向外周側において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。また、径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。連結箇所では、突部(41A1、41A2、42A、43A1、43A2、44A、45A1、45A2、46A)が孔部(41B、42B1、42B2、43B、44B1、44B2、45B、46B1、46B2)に嵌め込まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機あるいは駆動機の固定子に関し、特に、軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材により構成される固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機は、固定子と、固定子に対して移動可能に配置されている可動子を有している。固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられている固定子巻線を有している。固定子コアは、通常、積層された複数の磁性を有する板状部材により構成される。特に、往復動型の発電機や電動機では、軸線(固定子の中心線)の周りに周方向に沿って配置された(積層された)複数の板状部材により構成される固定子コアを有する固定子と、永久磁石が設けられている可動子コアを有する可動子が用いられている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されている固定子コアは、一方の面の外周側にスペーサ(突起)が形成されている複数の板状部材が、周方向に沿って配置されている。特許文献1に記載されている固定子コアは、スペーサによって、隣接する板状部材の間にくさび状の空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−322945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている固定子の固定子コアは、製造時に、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材が必要である。このため、製造時の作業効率がよくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を不要とすることができ、それによって、固定子コアの製造時の作業効率を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固定子は、複数の板状部材によって構成されている固定子コアを有している。複数の板状部材は、軸線の周りに周方向に沿って配置されている。固定子は、1つの固定子コアまたは複数の固定子コアによって構成される。板状部材としては、磁性を有する板状部材、典型的には、電磁鋼板が用いられる。なお、「軸線」は、固定子(固定子コア)の中心線を意味する。また、「周方向に沿って配置されている」という記載は、「周方向に沿って全周に配置されている(円に沿って配置されている)」構成や「周方向に沿った一部に配置されている(円弧に沿って配置されている)」構成を意味する。
本発明の固定子は、種々の型式の発電機あるいは駆動機の固定子として用いることができるが、好適には、往復動型の発電機あるいは駆動機の固定子として用いられる。なお、「駆動機」は、電動機を包含するものとして用いられている。
一つの発明の固定子では、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。さらに、径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。隣接して配置されている板状部材が径方向内周側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。連結箇所での連結方法としては、カシメによる連結方法や溶接による連結方法等の種々の連結方法を用いることができる。一つの発明の固定子は、高い剛性を有する。
「径方向外周側の領域」は、固定子(固定子コア)の径方向長さの中心より外周側の領域、好適には、固定子巻線が収容されるスロットより外周側の領域が対応する。「径方向内周側の連結箇所」と「径方向外周側の連結箇所」は、径方向に沿って相対的に離れている連結箇所を意味する。「径方向内周側の連結箇所」と「径方向外周側の連結箇所」の径方向に沿った間隔、「径方向内周側の連結箇所」および「径方向外周側の連結箇所」の数や位置は、複数の板状部材を、連結した状態で軸線の周りに周方向に沿って配置することができるように設定される。
好適には、「径方向内周側の連結箇所」は、少なくとも軸線方向中央部に設けられており、「径方向外周側の連結箇所」は、少なくとも軸線方向一方側の端部および軸線方向他方側の端部に設けられる。これにより、複数の板状部材を、連結した状態で周方向に沿って配置する際に、径方向外周側の連結箇所に作用する応力を分散させることができる。
他の発明の固定子では、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。さらに、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。隣接して配置されている板状部材が軸線方向一方側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、軸線方向他方側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。一方、隣接して配置されている板状部材が軸線方向他方側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、軸線方向一方側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。他の発明の固定子は、外径や内径を容易に変更することができる。
「径方向外周側の領域」は、固定子(固定子コア)の径方向長さの中心より外周側の領域、好適には、固定子巻線が収容されるスロットより外周側の領域が対応する。「軸線方向一方側」は、固定子(固定子コア)の軸線方向長さの中心より一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部付近の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、固定子(固定子コア)の軸線方向長さの中心より他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部付近の領域が対応する。「軸線方向一方側の連結箇所」と「軸線方向他方側の連結箇所」は、軸線方向に沿って相対的に離れている連結箇所を意味する。「軸線方向一方側の連結箇所」と「軸線方向他方側の連結箇所」の軸線方向に沿った間隔、「軸線方向一方側の連結箇所」および「軸線方向他方側の連結箇所」の数や位置は、複数の板状部材を、連結した状態で軸線の周りに周方向に沿って配置することができるように設定される。
板状部材の厚さや固定子の径方向長さ等によっては、所望の寸法を有する固定子を、径方向長さが同じ板状部材を用いて形成することができない場合がある。
一つの発明および他の発明の固定子の他の形態は、径方向長さが異なる複数の板状部材により構成される。本形態の固定子では、複数の板状部材は、径方向長さが長い順または短い順の一方の順に周方向に沿って繰り返し配置されている。さらに、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向長さが最も長い板状部材の径方向内側の縁部より径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されている。なお、径方向長さが長い順に繰り返し配置される場合には、径方向長さが最も長い板状部材から順に径方向長さが最も短い板状部材まで配置された後、径方向長さが最も長い板状部材が配置される。また、径方向長さが短い順に繰り返し配置される場合には、径方向長さが最も短い板状部材から順に径方向長さが最も長い板状部材まで配置された後、径方向長さが最も短い板状部材が配置される。
径方向長さが異なる複数の板状部材としては、例えば、径方向長さが異なる2種類の板状部材を用いることができる、あるいは、径方向長さが異なる3種類の板状部材を用いることができる。径方向長さがR1である第1の板状部材、径方向長さがR2(<R1)である第2の板状部材、径方向長さがR3(<R2)である3種類の板状部材を用いる場合には、好適には、第1の板状部材と第2の板状部材に、軸線方向に沿って、同じ形状(寸法)を有する切欠部が形成される。切欠部は、固定子巻線を収容するスロットを形成する。そして、第2の板状部材は、第2の板状部材の切欠部が第1の板状部材の切欠部に対向する位置に配置される。また、第3の板状部材は、第1の板状部材および第2の板状部材に形成されている切欠部より径方向外周側の領域において第1の板状部材および第2の板状部材と重なるように配置される。なお、第3の板状部材は、第1の板状部材および第2の板状部材の切欠部により形成されるスロットを阻害しないように形状および配置位置が設定される。
周方向に隣接して配置されている板状部材を連結する連結方法としては、突部と、突部が嵌め込まれる孔部を用いて連結する連結方法を用いるのが好ましい。突部と孔部を用いて連結する連結方法としては、典型的には、カシメによる連結方法が用いられる。
周方向に隣接して配置され、連結箇所で連結されている板状部材は、径方向外周側の縁部が揃えられていることが好ましい。
本発明は、前述した固定子を用いた駆動機または発電機として構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材用いることなく、複数の板状部材が周方向に沿って配置された固定子コアを有する固定子、さらには、このような固定子を用いた駆動機または発電機を製造することができる。これにより、製造時の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を発電装置として構成した実施の形態の断面図である。
【図2】隣接する板状部材の連結方法の一実施の形態を説明する図である。
【図3】図2において、矢印IIIの方向から見た図である。
【図4】図2において、矢印IVの方向から見た図である。
【図5】隣接する板状部材を一実施の形態の連結方法により連結して構成した固定子コアの斜視図である。
【図6】図5において、矢印VIの方向から見た図である。
【図7】隣接する板状部材の連結方法の他の実施の形態を説明する図である。
【図8】図7において、矢印VIIIの方向から見た図である。
【図9】図7において、矢印IXの方向から見た図である。
【図10】隣接する板状部材を他の実施の形態の連結方法により連結して構成した固定子コアの斜視図である。
【図11】図10において、矢印XIの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1には、本発明を往復動型発電機10として構成した実施の形態の断面図が示されている。なお、本明細書では、「同じ」という記載を、「略等しい」概念を含むものとして用いている。また、「軸線方向」は、固定子コアの中心線Oの方向(図1、図2の上下方向)を意味し、「径方向」は、固定子コアの中心線Oに直交する方向(図1、図2の左右方向)を意味するものとして用いている。
本実施の形態の往復動型発電機10は、固定子20と可動子80により構成されている。
固定子20は、ベース部材11に取り付けられている。固定子20は、固定子コア30と、固定子コア30のスロット31に設けられている固定子巻線60を有している。固定子コア30は、軸線方向一方側(例えば、図1の上側)に配置される第1の固定子コア40と、軸線方向他方側(例えば、図1の下側)に配置される第2の固定子コア50に2分割されている。図1に示されている、軸線方向に沿った断面で見て、固定子コア30はC字形状を有しており、第1の固定子コア40は逆U字形状を有しており、第2の固定子コア50はU字形状を有している。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材により構成されている。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)は、複数の板状部材が軸線Oの周りに周方向に沿って積層された積層体と言うこともできる。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)を構成する板状部材としては、磁性を有する板状部材が用いられる。本実施の形態では、電磁鋼板が用いられている。
可動子80は、軸70と、可動子コア81と、永久磁石90を有している。軸70は、ベース部材11に設けられている軸受12に、軸線Oに沿って移動可能に取り付けられている。可動子コア81は、軸70に固定されており、永久磁石90が取り付けられている。永久磁石90は、固定子コア20(固定子巻線60が収容されているスロット31)と対向する箇所に配置されている。永久磁石90は、軸線Oに直交する方向(径方向)に着磁されている。これにより、永久磁石90が軸線方向に往復動すると、固定子巻線60に起電力が発生する。
【0009】
次に、固定子コア30の構成について説明する。本実施の形態では、固定子コア30は、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50に2分割されている。第1の固定子コア40と第2の固定子コア50は、軸線Oに沿った断面形状が線対称である。このため、以下では、第1の固定子コア40の構成を、図2〜4を参照して説明する。図2には、第1の固定子コア40を構成する板状部材と、隣接して配置される板状部材の連結方法が示されている。図3は、図2において、矢印IIIの方向から見た図である。また、図4は、図2において、矢印IVの方向から見た図である。
【0010】
第1の固定コア40は、径方向長さが異なる複数の板状部材により構成されている。板状部材としては、図2および図3に示されているように、径方向長さがR1である板状部材41(44)と、径方向長さがR2(<R1)である板状部材42(45)と、径方向長さがR3(<R2)である板状部材43(46)の3種類の板状部材が用いられている。なお、図2および図4において、左右方向が径方向であり、左側が径方向外周側であり、右側が径方向内周側である。
板状部材41(44)は、径方向外周側に配置される縁部(以下、「径方向外周側縁部」という)41a(44a)、径方向内周側に配置される縁部(以下、「径方向内周側縁部」という)41b(44b)を有している。また、径方向内周側縁部41b(44b)と平行に延びている縁部41c(44c)および41e(44e)と、径方向内周側縁部41b(44b)と直交する方向に延びている縁部41d(44d)を有している。また、縁部41f(44f)、41g(44g)を有している。縁部41c〜41e(44c〜44d)によって切欠部41h(44h)が形成されている。切欠部41h(44h)は、径方向内周側縁部41b(44b)と平行に形成されており、固定子巻線60を収容するスロット31を形成する。
板状部材42(45)は、径方向外周側縁部42a(45a)、径方向内周側縁部42b(45b)を有している。また、縁部42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)、42f(45f)、42g(45g)を有している。板状部材42(45)の縁部42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)によって、板状部材41(44)の切欠部41h(44h)と同じ形状(寸法)を有する切欠部42h(45h)が形成されている。切欠部42h(45h)は、径方向内周側縁部42b(45b)と平行に形成されており、固定子巻線60を収容するスロット31を形成する。
板状部材43(46)は、径方向外周側縁部43a(46a)と、径方向内周側縁部43b(46b)を有している。また、縁部43c(46c)を有している。
本実施の形態では、図4に示されているように、板状部材41〜46の径方向外周側縁部41a〜46a、縁部41c〜46c、縁部41f〜46fにより囲まれる部分の形状(寸法)は同じである。すなわち、径方向外周側縁部41a〜46aの長さは同じであり、縁部41c〜46cの長さは同じであり、縁部41f〜46fの長さは同じである。また、スロット31の開口を形成するために、縁部41f〜46fは、縁部41g、42g、44g、45gより軸線O(径方向内周側縁部41b、44b)の方向に沿って離れた位置に形成されている。
なお、切欠部41h(44h)、42h(45h)の形状は、図2および図4に示されている形状に限定されない。縁部41c(44c)、41d(44d)、41e(44e)、42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)、43c(46c)の形状は、切欠部41h(44h)、42h(45h)の形状に応じて変更される。また、板状部材43、46の形状は、切欠部41h、42h、44h、45hによって形成されるスロットの外形形状が阻害されないように設定される。
【0011】
本実施の形態では、板状部材41(44)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材42(45)または板状部材43(46)が本発明の「第2の板状部材」に対応する。あるいは、板状部材41(44)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材42(45)が本発明の「第2の板状部材」に対応し、板状部材43(46)が本発明の「第3の板状部材」に対応する。
【0012】
次に、第1の固定子コア40を形成する方法を説明する。
先ず、板状部材41〜46が積層された積層体を形成する。
板状部材41〜46は、プレス加工機により打ち抜かれた後、順次積層される。例えば、図2に示されているように、下方から上方に、径方向長さR1を有する板状部材41、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材42、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材43、径方向長さR1を有する板状部材44、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材45、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材46の順(径方向長さが長い順)に繰り返し積層される。勿論、この逆の順(径方向長さが短い順)に繰り返し積層してもよい。
この時、板状部材41〜46は、図4に示されているように、径方向外周側縁部41a〜46aが揃うように積層される。すなわち、板状部材41〜46の縁部41c〜46c(切欠部)より外周側の部分が重なるように積層される。
【0013】
また、板状部材41〜46には、径方向外周側の領域において、隣接する板状部材とカシメにより連結するための突部および孔部が形成される。突部および孔部は、好適には、打ち抜き加工時に形成される。本実施の形態では、板状部材41〜46の突部および孔部は、隣接する板状部材との径方向外周側での連結と径方向内周側での連結が、積層方向に沿って交互に行われるように形成される。
「径方向外周側の領域」は、固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)の径方向長さ(=径方向長さが最も長い板状部材41、44の径方向長さR1)の中心Qより外周側(図5参照)の領域が対応する。好適には、板状部材41〜46の縁部41c〜46cより外周側の領域(板状部材41〜46が重ねられている領域)が対応する。
【0014】
図2では、板状部材41には、下方に積層される板状部材46と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部41Bと、上方に積層される板状部材42と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部41A1および41A2が形成される。突部41A1および41A2は、それぞれ軸線方向一方側(図2では上側)および軸線方向他方側(図2では下側)に形成されている。凹部41Bは、軸線方向中央部に形成されている。
なお、「軸線方向一方側」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さL(図5参照)の中心Pより一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さLの中心Pより他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向中央部」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さLの中心Pの近傍の領域が対応する。
板状部材42には、下方に積層される板状部材41と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部42B1および42B2と、上方に積層される板状部材43と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部42Aが形成される。凹部42B1および42B2は、それぞれ軸線方向一方側(図2では上側)および軸線方向他方側(図2では下側)で、板状部材41の突部41A1および41A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材43には、下方に積層される板状部材42と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部43Bと、上方に積層される板状部材44と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部43A1および43A2が形成される。突部43A1および43A2は、それぞれ軸線方向一方側および軸線方向他方側に形成されている。凹部43Bは、軸線方向中央部で、板状部材42の突部42Aと対向する箇所に形成されている。
【0015】
同様にして、板状部材44には、下方に積層される板状部材43と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部44B1および44B2と、上方に積層される板状部材45と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部44Aが形成される。凹部44B1および44B2は、それぞれ板状部材43の突部43A1および43A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材45には、下方に積層される板状部材44と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部45Bと、上方に積層される板状部材46と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部45A1および45A2が形成される。凹部45Bは、板状部材44の突部44Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材46には、下方に積層される板状部材45と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部46B1および46B2と、上方に積層される板状部材41と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部46Aが形成される。凹部46B1および46B2は、それぞれ板状部材45の突部45A1および45A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材41〜46が、積層されているとともに、径方向外周側の連結箇所または径方向内周側の連結箇所で連結されている状態が図3に示されている。図3は、軸線方向一方側(図2の上側)から見た図である。
【0016】
以上のようにして、板状部材41〜46が上下方向に順次積層され、隣接する板状部材41〜46が、積層方向に沿って、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所で交互に連結されている積層体が形成される。本実施の形態では、径方向長さが異なる3種類の板状部材が用いられ、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所が積層方向に交互に設けられるため、第1のグループM1の積層体と第2のグループM2の積層体が交互に積層されている。
【0017】
次に、板状部材41〜46が積層および連結されている積層体を用いて第1の固定子コア40を形成する。例えば、板状部材41〜46が図3に示されているように積層されて連結されている状態で、図6に示されているように、積層体を構成している板状部材41〜46のうち、径方向長さが最も長い板状部材41、44の径方向内周側縁部41b、44bが側面側で当接するように力を加える。この時、板状部材41〜46の径方向外周側縁部41a〜46aには、隣接する径方向外周側縁部との間の間隔を広げる応力が作用する。本実施の形態では、隣接する板状部材は、径方向外周側での連結と径方向内周側での連結が積層方向に交互に行われているため、この応力によって、径方向内周側で連結されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。本実施の形態では、図6に示されているように、径方向内周側で連結されている板状部材42と43の径方向外周側縁部の間の間隔、板状部材44と45の径方向外周側縁部の間の間隔、板状部材46と41の径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。これにより、図5に示されているように、板状部材41〜46は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置される。
本実施の形態では、第1の固定子コア40は、図5に示されているように、外周半径がR、径方向長さがR1(板状部材41、44の径方向長さ)、軸線方向長さがLである円筒形状の積層体として形成される。
なお、第1の固定子コア40を形成する際には、適宜の数の板状部材41〜46が上下方向に積層されて連結されている積層体を用いて、前記方法により、第1の固定子コア40の一部のブロックを形成し、このようなブロックを複数組み合わせて第1の固定子コア40を形成する方法を用いるのが好ましい。勿論、1回の処理で第1の固定子コア40を形成する方法を用いることもできる。
【0018】
同様の方法で、第2の固定子コア50を形成する。そして、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50を軸線O方向に沿って、それぞれの縁部41g、42g、44g、45gが当接するように配置することにより固定子コア30を形成する。なお、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50を軸線O方向に沿って配置する前に、固定子巻線90をスロット31に収納しておくのが好ましい。
【0019】
本実施の形態の第1の固定子コア40は、図5に示されているように、径方向の長さが異なる複数の板状部材41〜46が、軸線Oの周りに周方向に沿って径方向の長さの順に繰り返し配置されている。図5では、軸線Oの周りに反時計方向に沿って、径方向長さR1を有する板状部材41、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材42、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材43、径方向長さR1を有する板状部材44、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材45、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材46の順(径方向長さが長い順)に繰り返し配置されている。なお、図5では、軸線Oの周りに時計方向に沿って、径方向長さR3を有する板状部材46、径方向長さR2(>R3)を有する板状部材45、径方向長さR1(>R2)を有する板状部材44、径方向長さR3を有する板状部材43、径方向長さR2(>R3)を有する板状部材42、径方向長さR1(>R2)を有する板状部材41の順(径方向長さが短い順)に繰り返し配置されている。第1の固定子コア40では、板状部材41〜46が、周方向に沿って径方向の長さの順に配置されていればよく、時計方向であるか反時計方向であるかは問わない。なお、第1の固定子コア40を構成する板状部材の数は、径方向の長さが異なる板状部材の種類の数の倍数であるのが好ましいが、倍数でなくてもよい。
また、板状部材41〜46は、径方向外周側縁部41a〜46aが揃うように配置されている。
また、板状部材41〜46は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側で重なるように配置されている。
また、板状部材41〜46のうち周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所のいずれか一方の連結箇所で連結されている。さらに、隣接する板状部材の径方向外周側の連結と径方向内周側の連結は、周方向に沿って交互に行われている。本実施の形態では、隣接する板状部材の径方向外周側の連結と径方向内周側の連結は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側の領域で行われている。
これにより、本実施の形態の第1の固定子コア40は、従来例のように、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を用いる必要がない。したがって、固定子コア製造時の作業効率を高めることができる。また、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側の領域で連結されているため、周方向に隣接して配置されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔を狭くすることができ、第1の固定子コア40の積層密度が向上する。これにより、磁束の集中が防止され、磁束の集中による鉄損の増加を抑制することができる。
また、周方向に隣接して配置されている板状部材が、周方向に沿って交互に設けられている径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所で連結されていることにより、板状部材が高い強度で連結される。すなわち、板状部材それぞれの変形が抑制される。これにより、第1の固定子コア40の剛性を高めることができる。第1の固定子コア40の剛性が高くなると、第1の固定子コア40のねじれ(特に、軸線方向のねじれ)による寸法精度のバラツキを防止することができ、品質を向上させることができる。さらに、第1の固定子コア40の製作時の取り扱いが容易となる。
【0020】
以上の実施の形態では、周方向に隣接する板状部材を、径方向外周側の領域において、周方向外周側での連結と周方向内周側での連結を周方向に沿って交互に行ったが、周方向に隣接する板状部材の連結方法はこれに限定されない。周方向に隣接する板状部材を異なる方法で連結した他の実施の形態を以下に説明する。
以下に、図7〜9を参照して、第1の固定子コア140を形成する方法について説明する。
本実施の形態では、板状部材41〜46と同様の、径方向長さがR1である板状部材141(144)と、径方向長さがR2(<R1)である板状部材142(145)と、径方向長さがR3(<R2)である板状部材143(146)の3種類の板状部材が用いられている。
板状部材141〜146は、板状部材41〜46と同じ形状を有しており、連結方法のみが異なっている。したがって、以下では、板状部材141〜146の連結方法についてのみ説明する。
本実施の形態では、板状部材141(144)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材142(145)または板状部材143(146)が本発明の「第2の板状部材」に対応する。あるいは、板状部材141(144)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材142(145)が本発明の「第2の板状部材」に対応し、板状部材143(146)が本発明の「第3の板状部材」に対応する。
【0021】
第1の固定子コア140を形成する方法を説明する。
先ず、板状部材141〜146が積層された積層体を形成する。
板状部材141〜146は、プレス加工機によって打ち抜かれた後、順次積層される。例えば、図7に示されているように、下方から上方に、径方向長さR1を有する板状部材141、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材142、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材143、径方向長さR1を有する板状部材144、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材145、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材146の順(径方向長さが長い順)に積層される。また、径方向外周側縁部141a〜146aが揃うように積層される。すなわち、板状部材141〜146の縁部141c〜146c(切欠部141h、142h、144h、145h)より外周側で重なるように積層される。
なお、第1の固定子コア40と同様に、径方向長さが短い順に繰り返し積層してもよい。
【0022】
また、板状部材141〜146には、径方向外周側の領域において、周方向に隣接して配置されている板状部材とカシメにより連結するための突部および孔部が形成される。本実施の形態では、板状部材141〜146の突部および孔部は、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側での連結と軸線方向他方側での連結が、積層方向に沿って交互に行われるように形成される。
図7では、板状部材141には、下方に積層される板状部材146と軸線方向一方側(例えば、図7の上側)の連結箇所で連結するための凹部141Bと、上方に積層される板状部材142と軸線方向他方側(例えば、図7の下側)の連結箇所で連結するための突部141Aが形成される。
なお、「軸線方向一方側」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心より一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心より他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向中央部」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心の近傍の領域が対応する。
板状部材142には、下方に積層される板状部材141と軸線方向他方側(例えば、図7の下側)の連結箇所で連結するための凹部142Bと、上方に積層される板状部材143と軸線方向一方側(例えば、図7の上側)の連結箇所で連結するための突部142Aが形成される。凹部142Bは、板状部材141の突部141Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材143には、下方に積層される板状部材142と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための凹部143Bと、上方に積層される板状部材144と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための突部143Aが形成される。凹部143Bは、板状部材142の突部142Aと対向する箇所に形成されている。
【0023】
同様にして、板状部材144には、下方に積層される板状部材143と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための凹部144Bと、上方に積層される板状部材145と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための突部144Aが形成される。凹部144Bは、板状部材143の突部143Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材145には、下方に積層される板状部材144と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための凹部145Bと、上方に積層される板状部材146と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための突部145Aが形成される。凹部145Bは、板状部材144の突部144Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材146には、下方に積層される板状部材145と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための凹部146Bと、上方に積層される板状部材141と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための突部146Aが形成される。凹部146Bは、板状部材145の突部145Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材141〜146が、積層されているとともに、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所で連結されている状態が図8に示されている。図8は、図7を矢印VIII方向(図7の左側)から見た図である。
【0024】
以上のようにして、板状部材141〜146が上下方向に順次積層され、隣接する板状部材141〜146が、積層方向に沿って、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で交互に連結されている積層体が形成される。本実施の形態では、径方向長さが異なる3種類の板状部材が用いられ、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所が積層方向に交互に設けられるため、第1のグループM1の積層体と第2のグループM2の積層体が交互に積層されている。
【0025】
次に、板状部材141〜146が積層および連結されている積層体を用いて第1の固定子コア140を形成する。例えば、板状部材141〜146が図8に示されているように積層されて連結されている状態で、積層体を構成している板状部材141〜146のうち、径方向長さが最も長い板状部材141、144の径方向内周側縁部141b、144bが側面側で当接するように力を加える(図11参照)。この時、板状部材141〜146の径方向外周側縁部141a〜146aには、隣接する径方向外周側縁部との間の間隔を広げる応力が作用する。本実施の形態では、隣接する板状部材141〜146は、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所が積層方向に交互に設けられているため、この応力によって、軸線方向の連結箇所が設けられていない側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。本実施の形態では、図11に示されているように、板状部材141と142、板状部材143と144、板状部材145と146は、軸線方向一方側(図11の上側)に連結箇所が設けられていないため、軸線方向一方側の間隔が広くなる。一方、板状部材142と143、板状部材144と145、板状部材146と141は、軸線方向他方側(図11の下側)に連結箇所が設けられていないため、軸線方向他方側の間隔が広くなる。すなわち、径方向外周側から見て、隣接する板状部材の径方向外周側縁部が、周方向に沿ってV字状と逆V字状に交互に配置される。この場合、隣接する板状部材の径方向外周側縁の間の間隔は、周方向に沿って、軸線方向一方側と軸線方向他方側で交互に、均等に広くなる。これにより、図10に示されているように、板状部材141〜146は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置される。
本実施の形態では、第1の固定子コア140は、図10に示されているように、外周半径がR、径方向長さがR1(板状部材41、44の径方向長さ)、軸線方向長さがLである円筒形状の積層体として形成される。
なお、第1の固定子コア140を形成する際には、適宜の数の板状部材141〜146を上下方向に積層するとともに、隣接する板状部材を軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で交互に連結した積層体を用いて、前記方法により、第1の固定子コア140の一部のブロックを形成し、複数のブロックを組み合わせて第1の固定子コア140を形成する方法を用いるのが好ましい。
【0026】
本実施の形態の第1の固定子コア140は、図10に示されているように、径方向の長さが異なる複数の板状部材141〜146が、軸線Oの周りに周方向に沿って径方向の長さの順に繰り返し配置されている。図10では、軸線Oの周りに反時計方向に沿って、径方向長さが長い順に繰り返し配置されている。また、図10では、軸線Oの周りに時計方向に沿って、径方向長さが短い順に繰り返し配置されている。
また、板状部材141〜146は、径方向外周側縁部141a〜146aが揃うように配置されている。
また、板状部材141〜146は、径方向長さが最も長い板状部材141、144の径方向内周側縁141b、144bより径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されている。本実施の形態では、板状部材141〜146は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部141h、142h、144h、145hより径方向外周側で重なるように配置されている。
また、板状部材141〜146のうち周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所のいずれか一方の連結箇所で連結されている。さらに、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側の連結と軸線方向他方側の連結が、周方向に沿って交互に行われている。本実施の形態では、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側の連結と軸線方向他方側の連結は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部141h、142h、144h、145hより径方向外周側で行われている。
これにより、本実施の形態の第1の固定子コア140は、従来例のように、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を用いる必要がない。したがって、固定子コア製造時の作業効率を高めることができる。また、周方向に隣接して配置されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔が均等に開き、大きく開くことがない。したがって、第1の固定子コア140の積層密度が向上して磁束の集中が防止され、磁束の集中による鉄損の増加を抑制することができる。
また、周方向に隣接して配置されている板状部材が、周方向に沿って交互に設けられている軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で連結されていることにより、隣接する板状部材の、連結箇所が設けられていない側の径方向外周側縁部の間の間隔が広い範囲に亘って変更可能である。これにより、周方向に沿って交互に配置された複数の板状部材により構成される第1の固定子コア140の径方向内周側の径(内径)や径方向外周側の径(外形)を容易に変更することができる。
【0027】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、追加、削除が可能である。
断面形状がC字形状の固定子コアを用いたが、固定子コアとしては、種々の断面形状の固定子コアを用いることができる。また、第1の固定子コアおよび第2の固定子コアの断面形状(第1の固定子コアおよび第2の固定子コアを構成する板状部材の形状)は、固定子の断面形状に応じて適宜変更される。
また、固定子コアは、1つの固定子コアによって構成することもできるし、3以上の固定子コアによって構成することもできる。
また、軸線の周りに周方向全周に沿って配置された板状部材によって固定子コアを構成したが、周方向に沿った一部に配置された板状部材によって固定子コアを構成することもできる。
径方向長さが異なる3種類の板状部材により固定子コアを構成したが、固定子コアは、径方向長さが同じ板状部材(1種類の板状部材)、径方向長さが異なる2種類あるいは4種類以上の板状部材によって構成することもできる。径方向長さが異なる板状部材の種類の数や各板状部材の径方向長さは、板状部材の厚さや固定子コアの径方向長さ等に応じて選択される。
周方向に隣接して配置される板状部材を連結する方法として突部を孔部に嵌め込むカシメによる連結方法を用いたが、カシメ以外の方法で突部を孔部に嵌め込む連結方法や、他の公知の連結方法(例えば、溶接や接合)を用いることもできる。
隣接して配置される板状部材を連結する連結箇所の位置や数は、実施の形態で説明した位置や数に限定されない。
実施の形態では、本発明の固定子を往復動型の発電機の固定子として用いたが、回転型の発電機の固定子として用いることもできる。また、往復動型の電動機や回転型の電動機を含む種々の構成の駆動機の固定子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 発電機
11 ベース部材
12 軸受
20 固定子
30 固定子コア
31 スロット
40、140 第1の固定子コア
50 第2の固定子コア
60 固定子巻線
70 軸
80 可動子
81 可動子コア
90 永久磁石
41〜46、141〜146 電磁鋼板(板状部材)
41A1、41A2、42A、43A1、43A2、44A、45A1、45A2、46A、141A〜146A 突部
41B、42B1、42B2、43B、44B1、44B2、45B、46B1、46B2、141B〜146B 孔部
41a、42a、43a、44a、45a、46a、141a、142a、143a、144a、145a、146a 縁部(径方向外周側縁部)
41b、42b、43b、44b、45b、46b、141b、142b、143b、144b、145b、146b 縁部(径方向内周側縁部)
41c〜41g、42c〜42g、43c、43f、44c〜44g、45c〜45g、46c、46e、141c〜141g、142c〜142g、143c、143e、144c〜144g、145c〜145g、146c、146e 縁部
41h、42h、44h、45h、141h、142h、144h、145h 切欠部
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機あるいは駆動機の固定子に関し、特に、軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材により構成される固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機や電動機は、固定子と、固定子に対して移動可能に配置されている可動子を有している。固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられている固定子巻線を有している。固定子コアは、通常、積層された複数の磁性を有する板状部材により構成される。特に、往復動型の発電機や電動機では、軸線(固定子の中心線)の周りに周方向に沿って配置された(積層された)複数の板状部材により構成される固定子コアを有する固定子と、永久磁石が設けられている可動子コアを有する可動子が用いられている(特許文献1参照)。特許文献1に記載されている固定子コアは、一方の面の外周側にスペーサ(突起)が形成されている複数の板状部材が、周方向に沿って配置されている。特許文献1に記載されている固定子コアは、スペーサによって、隣接する板状部材の間にくさび状の空間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−322945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている固定子の固定子コアは、製造時に、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材が必要である。このため、製造時の作業効率がよくない。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を不要とすることができ、それによって、固定子コアの製造時の作業効率を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固定子は、複数の板状部材によって構成されている固定子コアを有している。複数の板状部材は、軸線の周りに周方向に沿って配置されている。固定子は、1つの固定子コアまたは複数の固定子コアによって構成される。板状部材としては、磁性を有する板状部材、典型的には、電磁鋼板が用いられる。なお、「軸線」は、固定子(固定子コア)の中心線を意味する。また、「周方向に沿って配置されている」という記載は、「周方向に沿って全周に配置されている(円に沿って配置されている)」構成や「周方向に沿った一部に配置されている(円弧に沿って配置されている)」構成を意味する。
本発明の固定子は、種々の型式の発電機あるいは駆動機の固定子として用いることができるが、好適には、往復動型の発電機あるいは駆動機の固定子として用いられる。なお、「駆動機」は、電動機を包含するものとして用いられている。
一つの発明の固定子では、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。さらに、径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。隣接して配置されている板状部材が径方向内周側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。連結箇所での連結方法としては、カシメによる連結方法や溶接による連結方法等の種々の連結方法を用いることができる。一つの発明の固定子は、高い剛性を有する。
「径方向外周側の領域」は、固定子(固定子コア)の径方向長さの中心より外周側の領域、好適には、固定子巻線が収容されるスロットより外周側の領域が対応する。「径方向内周側の連結箇所」と「径方向外周側の連結箇所」は、径方向に沿って相対的に離れている連結箇所を意味する。「径方向内周側の連結箇所」と「径方向外周側の連結箇所」の径方向に沿った間隔、「径方向内周側の連結箇所」および「径方向外周側の連結箇所」の数や位置は、複数の板状部材を、連結した状態で軸線の周りに周方向に沿って配置することができるように設定される。
好適には、「径方向内周側の連結箇所」は、少なくとも軸線方向中央部に設けられており、「径方向外周側の連結箇所」は、少なくとも軸線方向一方側の端部および軸線方向他方側の端部に設けられる。これにより、複数の板状部材を、連結した状態で周方向に沿って配置する際に、径方向外周側の連結箇所に作用する応力を分散させることができる。
他の発明の固定子では、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されている。さらに、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられている。隣接して配置されている板状部材が軸線方向一方側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、軸線方向他方側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。一方、隣接して配置されている板状部材が軸線方向他方側の連結箇所で連結されている場合には、隣接して配置されている板状部材を周方向に沿って配置すると、軸線方向一方側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広がる。他の発明の固定子は、外径や内径を容易に変更することができる。
「径方向外周側の領域」は、固定子(固定子コア)の径方向長さの中心より外周側の領域、好適には、固定子巻線が収容されるスロットより外周側の領域が対応する。「軸線方向一方側」は、固定子(固定子コア)の軸線方向長さの中心より一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部付近の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、固定子(固定子コア)の軸線方向長さの中心より他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部付近の領域が対応する。「軸線方向一方側の連結箇所」と「軸線方向他方側の連結箇所」は、軸線方向に沿って相対的に離れている連結箇所を意味する。「軸線方向一方側の連結箇所」と「軸線方向他方側の連結箇所」の軸線方向に沿った間隔、「軸線方向一方側の連結箇所」および「軸線方向他方側の連結箇所」の数や位置は、複数の板状部材を、連結した状態で軸線の周りに周方向に沿って配置することができるように設定される。
板状部材の厚さや固定子の径方向長さ等によっては、所望の寸法を有する固定子を、径方向長さが同じ板状部材を用いて形成することができない場合がある。
一つの発明および他の発明の固定子の他の形態は、径方向長さが異なる複数の板状部材により構成される。本形態の固定子では、複数の板状部材は、径方向長さが長い順または短い順の一方の順に周方向に沿って繰り返し配置されている。さらに、周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向長さが最も長い板状部材の径方向内側の縁部より径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されている。なお、径方向長さが長い順に繰り返し配置される場合には、径方向長さが最も長い板状部材から順に径方向長さが最も短い板状部材まで配置された後、径方向長さが最も長い板状部材が配置される。また、径方向長さが短い順に繰り返し配置される場合には、径方向長さが最も短い板状部材から順に径方向長さが最も長い板状部材まで配置された後、径方向長さが最も短い板状部材が配置される。
径方向長さが異なる複数の板状部材としては、例えば、径方向長さが異なる2種類の板状部材を用いることができる、あるいは、径方向長さが異なる3種類の板状部材を用いることができる。径方向長さがR1である第1の板状部材、径方向長さがR2(<R1)である第2の板状部材、径方向長さがR3(<R2)である3種類の板状部材を用いる場合には、好適には、第1の板状部材と第2の板状部材に、軸線方向に沿って、同じ形状(寸法)を有する切欠部が形成される。切欠部は、固定子巻線を収容するスロットを形成する。そして、第2の板状部材は、第2の板状部材の切欠部が第1の板状部材の切欠部に対向する位置に配置される。また、第3の板状部材は、第1の板状部材および第2の板状部材に形成されている切欠部より径方向外周側の領域において第1の板状部材および第2の板状部材と重なるように配置される。なお、第3の板状部材は、第1の板状部材および第2の板状部材の切欠部により形成されるスロットを阻害しないように形状および配置位置が設定される。
周方向に隣接して配置されている板状部材を連結する連結方法としては、突部と、突部が嵌め込まれる孔部を用いて連結する連結方法を用いるのが好ましい。突部と孔部を用いて連結する連結方法としては、典型的には、カシメによる連結方法が用いられる。
周方向に隣接して配置され、連結箇所で連結されている板状部材は、径方向外周側の縁部が揃えられていることが好ましい。
本発明は、前述した固定子を用いた駆動機または発電機として構成することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材用いることなく、複数の板状部材が周方向に沿って配置された固定子コアを有する固定子、さらには、このような固定子を用いた駆動機または発電機を製造することができる。これにより、製造時の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を発電装置として構成した実施の形態の断面図である。
【図2】隣接する板状部材の連結方法の一実施の形態を説明する図である。
【図3】図2において、矢印IIIの方向から見た図である。
【図4】図2において、矢印IVの方向から見た図である。
【図5】隣接する板状部材を一実施の形態の連結方法により連結して構成した固定子コアの斜視図である。
【図6】図5において、矢印VIの方向から見た図である。
【図7】隣接する板状部材の連結方法の他の実施の形態を説明する図である。
【図8】図7において、矢印VIIIの方向から見た図である。
【図9】図7において、矢印IXの方向から見た図である。
【図10】隣接する板状部材を他の実施の形態の連結方法により連結して構成した固定子コアの斜視図である。
【図11】図10において、矢印XIの方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1には、本発明を往復動型発電機10として構成した実施の形態の断面図が示されている。なお、本明細書では、「同じ」という記載を、「略等しい」概念を含むものとして用いている。また、「軸線方向」は、固定子コアの中心線Oの方向(図1、図2の上下方向)を意味し、「径方向」は、固定子コアの中心線Oに直交する方向(図1、図2の左右方向)を意味するものとして用いている。
本実施の形態の往復動型発電機10は、固定子20と可動子80により構成されている。
固定子20は、ベース部材11に取り付けられている。固定子20は、固定子コア30と、固定子コア30のスロット31に設けられている固定子巻線60を有している。固定子コア30は、軸線方向一方側(例えば、図1の上側)に配置される第1の固定子コア40と、軸線方向他方側(例えば、図1の下側)に配置される第2の固定子コア50に2分割されている。図1に示されている、軸線方向に沿った断面で見て、固定子コア30はC字形状を有しており、第1の固定子コア40は逆U字形状を有しており、第2の固定子コア50はU字形状を有している。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材により構成されている。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)は、複数の板状部材が軸線Oの周りに周方向に沿って積層された積層体と言うこともできる。固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)を構成する板状部材としては、磁性を有する板状部材が用いられる。本実施の形態では、電磁鋼板が用いられている。
可動子80は、軸70と、可動子コア81と、永久磁石90を有している。軸70は、ベース部材11に設けられている軸受12に、軸線Oに沿って移動可能に取り付けられている。可動子コア81は、軸70に固定されており、永久磁石90が取り付けられている。永久磁石90は、固定子コア20(固定子巻線60が収容されているスロット31)と対向する箇所に配置されている。永久磁石90は、軸線Oに直交する方向(径方向)に着磁されている。これにより、永久磁石90が軸線方向に往復動すると、固定子巻線60に起電力が発生する。
【0009】
次に、固定子コア30の構成について説明する。本実施の形態では、固定子コア30は、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50に2分割されている。第1の固定子コア40と第2の固定子コア50は、軸線Oに沿った断面形状が線対称である。このため、以下では、第1の固定子コア40の構成を、図2〜4を参照して説明する。図2には、第1の固定子コア40を構成する板状部材と、隣接して配置される板状部材の連結方法が示されている。図3は、図2において、矢印IIIの方向から見た図である。また、図4は、図2において、矢印IVの方向から見た図である。
【0010】
第1の固定コア40は、径方向長さが異なる複数の板状部材により構成されている。板状部材としては、図2および図3に示されているように、径方向長さがR1である板状部材41(44)と、径方向長さがR2(<R1)である板状部材42(45)と、径方向長さがR3(<R2)である板状部材43(46)の3種類の板状部材が用いられている。なお、図2および図4において、左右方向が径方向であり、左側が径方向外周側であり、右側が径方向内周側である。
板状部材41(44)は、径方向外周側に配置される縁部(以下、「径方向外周側縁部」という)41a(44a)、径方向内周側に配置される縁部(以下、「径方向内周側縁部」という)41b(44b)を有している。また、径方向内周側縁部41b(44b)と平行に延びている縁部41c(44c)および41e(44e)と、径方向内周側縁部41b(44b)と直交する方向に延びている縁部41d(44d)を有している。また、縁部41f(44f)、41g(44g)を有している。縁部41c〜41e(44c〜44d)によって切欠部41h(44h)が形成されている。切欠部41h(44h)は、径方向内周側縁部41b(44b)と平行に形成されており、固定子巻線60を収容するスロット31を形成する。
板状部材42(45)は、径方向外周側縁部42a(45a)、径方向内周側縁部42b(45b)を有している。また、縁部42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)、42f(45f)、42g(45g)を有している。板状部材42(45)の縁部42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)によって、板状部材41(44)の切欠部41h(44h)と同じ形状(寸法)を有する切欠部42h(45h)が形成されている。切欠部42h(45h)は、径方向内周側縁部42b(45b)と平行に形成されており、固定子巻線60を収容するスロット31を形成する。
板状部材43(46)は、径方向外周側縁部43a(46a)と、径方向内周側縁部43b(46b)を有している。また、縁部43c(46c)を有している。
本実施の形態では、図4に示されているように、板状部材41〜46の径方向外周側縁部41a〜46a、縁部41c〜46c、縁部41f〜46fにより囲まれる部分の形状(寸法)は同じである。すなわち、径方向外周側縁部41a〜46aの長さは同じであり、縁部41c〜46cの長さは同じであり、縁部41f〜46fの長さは同じである。また、スロット31の開口を形成するために、縁部41f〜46fは、縁部41g、42g、44g、45gより軸線O(径方向内周側縁部41b、44b)の方向に沿って離れた位置に形成されている。
なお、切欠部41h(44h)、42h(45h)の形状は、図2および図4に示されている形状に限定されない。縁部41c(44c)、41d(44d)、41e(44e)、42c(45c)、42d(45d)、42e(45e)、43c(46c)の形状は、切欠部41h(44h)、42h(45h)の形状に応じて変更される。また、板状部材43、46の形状は、切欠部41h、42h、44h、45hによって形成されるスロットの外形形状が阻害されないように設定される。
【0011】
本実施の形態では、板状部材41(44)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材42(45)または板状部材43(46)が本発明の「第2の板状部材」に対応する。あるいは、板状部材41(44)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材42(45)が本発明の「第2の板状部材」に対応し、板状部材43(46)が本発明の「第3の板状部材」に対応する。
【0012】
次に、第1の固定子コア40を形成する方法を説明する。
先ず、板状部材41〜46が積層された積層体を形成する。
板状部材41〜46は、プレス加工機により打ち抜かれた後、順次積層される。例えば、図2に示されているように、下方から上方に、径方向長さR1を有する板状部材41、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材42、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材43、径方向長さR1を有する板状部材44、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材45、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材46の順(径方向長さが長い順)に繰り返し積層される。勿論、この逆の順(径方向長さが短い順)に繰り返し積層してもよい。
この時、板状部材41〜46は、図4に示されているように、径方向外周側縁部41a〜46aが揃うように積層される。すなわち、板状部材41〜46の縁部41c〜46c(切欠部)より外周側の部分が重なるように積層される。
【0013】
また、板状部材41〜46には、径方向外周側の領域において、隣接する板状部材とカシメにより連結するための突部および孔部が形成される。突部および孔部は、好適には、打ち抜き加工時に形成される。本実施の形態では、板状部材41〜46の突部および孔部は、隣接する板状部材との径方向外周側での連結と径方向内周側での連結が、積層方向に沿って交互に行われるように形成される。
「径方向外周側の領域」は、固定子コア30(第1の固定子コア40および第2の固定子コア50)の径方向長さ(=径方向長さが最も長い板状部材41、44の径方向長さR1)の中心Qより外周側(図5参照)の領域が対応する。好適には、板状部材41〜46の縁部41c〜46cより外周側の領域(板状部材41〜46が重ねられている領域)が対応する。
【0014】
図2では、板状部材41には、下方に積層される板状部材46と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部41Bと、上方に積層される板状部材42と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部41A1および41A2が形成される。突部41A1および41A2は、それぞれ軸線方向一方側(図2では上側)および軸線方向他方側(図2では下側)に形成されている。凹部41Bは、軸線方向中央部に形成されている。
なお、「軸線方向一方側」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さL(図5参照)の中心Pより一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さLの中心Pより他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向中央部」は、第1の固定子コア40の軸線方向長さLの中心Pの近傍の領域が対応する。
板状部材42には、下方に積層される板状部材41と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部42B1および42B2と、上方に積層される板状部材43と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部42Aが形成される。凹部42B1および42B2は、それぞれ軸線方向一方側(図2では上側)および軸線方向他方側(図2では下側)で、板状部材41の突部41A1および41A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材43には、下方に積層される板状部材42と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部43Bと、上方に積層される板状部材44と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部43A1および43A2が形成される。突部43A1および43A2は、それぞれ軸線方向一方側および軸線方向他方側に形成されている。凹部43Bは、軸線方向中央部で、板状部材42の突部42Aと対向する箇所に形成されている。
【0015】
同様にして、板状部材44には、下方に積層される板状部材43と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部44B1および44B2と、上方に積層される板状部材45と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部44Aが形成される。凹部44B1および44B2は、それぞれ板状部材43の突部43A1および43A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材45には、下方に積層される板状部材44と径方向内周側の連結箇所で連結するための凹部45Bと、上方に積層される板状部材46と径方向外周側の連結箇所で連結するための突部45A1および45A2が形成される。凹部45Bは、板状部材44の突部44Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材46には、下方に積層される板状部材45と径方向外周側の連結箇所で連結するための凹部46B1および46B2と、上方に積層される板状部材41と径方向内周側の連結箇所で連結するための突部46Aが形成される。凹部46B1および46B2は、それぞれ板状部材45の突部45A1および45A2と対向する箇所に形成されている。
板状部材41〜46が、積層されているとともに、径方向外周側の連結箇所または径方向内周側の連結箇所で連結されている状態が図3に示されている。図3は、軸線方向一方側(図2の上側)から見た図である。
【0016】
以上のようにして、板状部材41〜46が上下方向に順次積層され、隣接する板状部材41〜46が、積層方向に沿って、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所で交互に連結されている積層体が形成される。本実施の形態では、径方向長さが異なる3種類の板状部材が用いられ、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所が積層方向に交互に設けられるため、第1のグループM1の積層体と第2のグループM2の積層体が交互に積層されている。
【0017】
次に、板状部材41〜46が積層および連結されている積層体を用いて第1の固定子コア40を形成する。例えば、板状部材41〜46が図3に示されているように積層されて連結されている状態で、図6に示されているように、積層体を構成している板状部材41〜46のうち、径方向長さが最も長い板状部材41、44の径方向内周側縁部41b、44bが側面側で当接するように力を加える。この時、板状部材41〜46の径方向外周側縁部41a〜46aには、隣接する径方向外周側縁部との間の間隔を広げる応力が作用する。本実施の形態では、隣接する板状部材は、径方向外周側での連結と径方向内周側での連結が積層方向に交互に行われているため、この応力によって、径方向内周側で連結されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。本実施の形態では、図6に示されているように、径方向内周側で連結されている板状部材42と43の径方向外周側縁部の間の間隔、板状部材44と45の径方向外周側縁部の間の間隔、板状部材46と41の径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。これにより、図5に示されているように、板状部材41〜46は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置される。
本実施の形態では、第1の固定子コア40は、図5に示されているように、外周半径がR、径方向長さがR1(板状部材41、44の径方向長さ)、軸線方向長さがLである円筒形状の積層体として形成される。
なお、第1の固定子コア40を形成する際には、適宜の数の板状部材41〜46が上下方向に積層されて連結されている積層体を用いて、前記方法により、第1の固定子コア40の一部のブロックを形成し、このようなブロックを複数組み合わせて第1の固定子コア40を形成する方法を用いるのが好ましい。勿論、1回の処理で第1の固定子コア40を形成する方法を用いることもできる。
【0018】
同様の方法で、第2の固定子コア50を形成する。そして、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50を軸線O方向に沿って、それぞれの縁部41g、42g、44g、45gが当接するように配置することにより固定子コア30を形成する。なお、第1の固定子コア40と第2の固定子コア50を軸線O方向に沿って配置する前に、固定子巻線90をスロット31に収納しておくのが好ましい。
【0019】
本実施の形態の第1の固定子コア40は、図5に示されているように、径方向の長さが異なる複数の板状部材41〜46が、軸線Oの周りに周方向に沿って径方向の長さの順に繰り返し配置されている。図5では、軸線Oの周りに反時計方向に沿って、径方向長さR1を有する板状部材41、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材42、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材43、径方向長さR1を有する板状部材44、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材45、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材46の順(径方向長さが長い順)に繰り返し配置されている。なお、図5では、軸線Oの周りに時計方向に沿って、径方向長さR3を有する板状部材46、径方向長さR2(>R3)を有する板状部材45、径方向長さR1(>R2)を有する板状部材44、径方向長さR3を有する板状部材43、径方向長さR2(>R3)を有する板状部材42、径方向長さR1(>R2)を有する板状部材41の順(径方向長さが短い順)に繰り返し配置されている。第1の固定子コア40では、板状部材41〜46が、周方向に沿って径方向の長さの順に配置されていればよく、時計方向であるか反時計方向であるかは問わない。なお、第1の固定子コア40を構成する板状部材の数は、径方向の長さが異なる板状部材の種類の数の倍数であるのが好ましいが、倍数でなくてもよい。
また、板状部材41〜46は、径方向外周側縁部41a〜46aが揃うように配置されている。
また、板状部材41〜46は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側で重なるように配置されている。
また、板状部材41〜46のうち周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側の領域において、径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所のいずれか一方の連結箇所で連結されている。さらに、隣接する板状部材の径方向外周側の連結と径方向内周側の連結は、周方向に沿って交互に行われている。本実施の形態では、隣接する板状部材の径方向外周側の連結と径方向内周側の連結は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側の領域で行われている。
これにより、本実施の形態の第1の固定子コア40は、従来例のように、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を用いる必要がない。したがって、固定子コア製造時の作業効率を高めることができる。また、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部41h、42h、44h、45hより径方向外周側の領域で連結されているため、周方向に隣接して配置されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔を狭くすることができ、第1の固定子コア40の積層密度が向上する。これにより、磁束の集中が防止され、磁束の集中による鉄損の増加を抑制することができる。
また、周方向に隣接して配置されている板状部材が、周方向に沿って交互に設けられている径方向外周側の連結箇所と径方向内周側の連結箇所で連結されていることにより、板状部材が高い強度で連結される。すなわち、板状部材それぞれの変形が抑制される。これにより、第1の固定子コア40の剛性を高めることができる。第1の固定子コア40の剛性が高くなると、第1の固定子コア40のねじれ(特に、軸線方向のねじれ)による寸法精度のバラツキを防止することができ、品質を向上させることができる。さらに、第1の固定子コア40の製作時の取り扱いが容易となる。
【0020】
以上の実施の形態では、周方向に隣接する板状部材を、径方向外周側の領域において、周方向外周側での連結と周方向内周側での連結を周方向に沿って交互に行ったが、周方向に隣接する板状部材の連結方法はこれに限定されない。周方向に隣接する板状部材を異なる方法で連結した他の実施の形態を以下に説明する。
以下に、図7〜9を参照して、第1の固定子コア140を形成する方法について説明する。
本実施の形態では、板状部材41〜46と同様の、径方向長さがR1である板状部材141(144)と、径方向長さがR2(<R1)である板状部材142(145)と、径方向長さがR3(<R2)である板状部材143(146)の3種類の板状部材が用いられている。
板状部材141〜146は、板状部材41〜46と同じ形状を有しており、連結方法のみが異なっている。したがって、以下では、板状部材141〜146の連結方法についてのみ説明する。
本実施の形態では、板状部材141(144)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材142(145)または板状部材143(146)が本発明の「第2の板状部材」に対応する。あるいは、板状部材141(144)が本発明の「第1の板状部材」に対応し、板状部材142(145)が本発明の「第2の板状部材」に対応し、板状部材143(146)が本発明の「第3の板状部材」に対応する。
【0021】
第1の固定子コア140を形成する方法を説明する。
先ず、板状部材141〜146が積層された積層体を形成する。
板状部材141〜146は、プレス加工機によって打ち抜かれた後、順次積層される。例えば、図7に示されているように、下方から上方に、径方向長さR1を有する板状部材141、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材142、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材143、径方向長さR1を有する板状部材144、径方向長さR2(<R1)を有する板状部材145、径方向長さR3(<R2)を有する板状部材146の順(径方向長さが長い順)に積層される。また、径方向外周側縁部141a〜146aが揃うように積層される。すなわち、板状部材141〜146の縁部141c〜146c(切欠部141h、142h、144h、145h)より外周側で重なるように積層される。
なお、第1の固定子コア40と同様に、径方向長さが短い順に繰り返し積層してもよい。
【0022】
また、板状部材141〜146には、径方向外周側の領域において、周方向に隣接して配置されている板状部材とカシメにより連結するための突部および孔部が形成される。本実施の形態では、板状部材141〜146の突部および孔部は、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側での連結と軸線方向他方側での連結が、積層方向に沿って交互に行われるように形成される。
図7では、板状部材141には、下方に積層される板状部材146と軸線方向一方側(例えば、図7の上側)の連結箇所で連結するための凹部141Bと、上方に積層される板状部材142と軸線方向他方側(例えば、図7の下側)の連結箇所で連結するための突部141Aが形成される。
なお、「軸線方向一方側」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心より一方側、好適には、一方側の縁部を含む一方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向他方側」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心より他方側、好適には、他方側の縁部を含む他方側の端部の近傍の領域が対応する。また、「軸線方向中央部」は、第1の固定子コア140の軸線方向長さの中心の近傍の領域が対応する。
板状部材142には、下方に積層される板状部材141と軸線方向他方側(例えば、図7の下側)の連結箇所で連結するための凹部142Bと、上方に積層される板状部材143と軸線方向一方側(例えば、図7の上側)の連結箇所で連結するための突部142Aが形成される。凹部142Bは、板状部材141の突部141Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材143には、下方に積層される板状部材142と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための凹部143Bと、上方に積層される板状部材144と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための突部143Aが形成される。凹部143Bは、板状部材142の突部142Aと対向する箇所に形成されている。
【0023】
同様にして、板状部材144には、下方に積層される板状部材143と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための凹部144Bと、上方に積層される板状部材145と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための突部144Aが形成される。凹部144Bは、板状部材143の突部143Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材145には、下方に積層される板状部材144と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための凹部145Bと、上方に積層される板状部材146と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための突部145Aが形成される。凹部145Bは、板状部材144の突部144Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材146には、下方に積層される板状部材145と軸線方向他方側の連結箇所で連結するための凹部146Bと、上方に積層される板状部材141と軸線方向一方側の連結箇所で連結するための突部146Aが形成される。凹部146Bは、板状部材145の突部145Aと対向する箇所に形成されている。
板状部材141〜146が、積層されているとともに、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所で連結されている状態が図8に示されている。図8は、図7を矢印VIII方向(図7の左側)から見た図である。
【0024】
以上のようにして、板状部材141〜146が上下方向に順次積層され、隣接する板状部材141〜146が、積層方向に沿って、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で交互に連結されている積層体が形成される。本実施の形態では、径方向長さが異なる3種類の板状部材が用いられ、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所が積層方向に交互に設けられるため、第1のグループM1の積層体と第2のグループM2の積層体が交互に積層されている。
【0025】
次に、板状部材141〜146が積層および連結されている積層体を用いて第1の固定子コア140を形成する。例えば、板状部材141〜146が図8に示されているように積層されて連結されている状態で、積層体を構成している板状部材141〜146のうち、径方向長さが最も長い板状部材141、144の径方向内周側縁部141b、144bが側面側で当接するように力を加える(図11参照)。この時、板状部材141〜146の径方向外周側縁部141a〜146aには、隣接する径方向外周側縁部との間の間隔を広げる応力が作用する。本実施の形態では、隣接する板状部材141〜146は、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所が積層方向に交互に設けられているため、この応力によって、軸線方向の連結箇所が設けられていない側において、径方向外周側縁部の間の間隔が広くなる。本実施の形態では、図11に示されているように、板状部材141と142、板状部材143と144、板状部材145と146は、軸線方向一方側(図11の上側)に連結箇所が設けられていないため、軸線方向一方側の間隔が広くなる。一方、板状部材142と143、板状部材144と145、板状部材146と141は、軸線方向他方側(図11の下側)に連結箇所が設けられていないため、軸線方向他方側の間隔が広くなる。すなわち、径方向外周側から見て、隣接する板状部材の径方向外周側縁部が、周方向に沿ってV字状と逆V字状に交互に配置される。この場合、隣接する板状部材の径方向外周側縁の間の間隔は、周方向に沿って、軸線方向一方側と軸線方向他方側で交互に、均等に広くなる。これにより、図10に示されているように、板状部材141〜146は、軸線Oの周りに周方向に沿って配置される。
本実施の形態では、第1の固定子コア140は、図10に示されているように、外周半径がR、径方向長さがR1(板状部材41、44の径方向長さ)、軸線方向長さがLである円筒形状の積層体として形成される。
なお、第1の固定子コア140を形成する際には、適宜の数の板状部材141〜146を上下方向に積層するとともに、隣接する板状部材を軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で交互に連結した積層体を用いて、前記方法により、第1の固定子コア140の一部のブロックを形成し、複数のブロックを組み合わせて第1の固定子コア140を形成する方法を用いるのが好ましい。
【0026】
本実施の形態の第1の固定子コア140は、図10に示されているように、径方向の長さが異なる複数の板状部材141〜146が、軸線Oの周りに周方向に沿って径方向の長さの順に繰り返し配置されている。図10では、軸線Oの周りに反時計方向に沿って、径方向長さが長い順に繰り返し配置されている。また、図10では、軸線Oの周りに時計方向に沿って、径方向長さが短い順に繰り返し配置されている。
また、板状部材141〜146は、径方向外周側縁部141a〜146aが揃うように配置されている。
また、板状部材141〜146は、径方向長さが最も長い板状部材141、144の径方向内周側縁141b、144bより径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されている。本実施の形態では、板状部材141〜146は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部141h、142h、144h、145hより径方向外周側で重なるように配置されている。
また、板状部材141〜146のうち周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所のいずれか一方の連結箇所で連結されている。さらに、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側の連結と軸線方向他方側の連結が、周方向に沿って交互に行われている。本実施の形態では、隣接して配置されている板状部材の軸線方向一方側の連結と軸線方向他方側の連結は、固定子巻線60が収容されるスロット31を形成する切欠部141h、142h、144h、145hより径方向外周側で行われている。
これにより、本実施の形態の第1の固定子コア140は、従来例のように、複数の板状部材が周方向に沿って配置された状態に仮保持するための保持部材を用いる必要がない。したがって、固定子コア製造時の作業効率を高めることができる。また、周方向に隣接して配置されている板状部材の径方向外周側縁部の間の間隔が均等に開き、大きく開くことがない。したがって、第1の固定子コア140の積層密度が向上して磁束の集中が防止され、磁束の集中による鉄損の増加を抑制することができる。
また、周方向に隣接して配置されている板状部材が、周方向に沿って交互に設けられている軸線方向一方側の連結箇所と軸線方向他方側の連結箇所で連結されていることにより、隣接する板状部材の、連結箇所が設けられていない側の径方向外周側縁部の間の間隔が広い範囲に亘って変更可能である。これにより、周方向に沿って交互に配置された複数の板状部材により構成される第1の固定子コア140の径方向内周側の径(内径)や径方向外周側の径(外形)を容易に変更することができる。
【0027】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、追加、削除が可能である。
断面形状がC字形状の固定子コアを用いたが、固定子コアとしては、種々の断面形状の固定子コアを用いることができる。また、第1の固定子コアおよび第2の固定子コアの断面形状(第1の固定子コアおよび第2の固定子コアを構成する板状部材の形状)は、固定子の断面形状に応じて適宜変更される。
また、固定子コアは、1つの固定子コアによって構成することもできるし、3以上の固定子コアによって構成することもできる。
また、軸線の周りに周方向全周に沿って配置された板状部材によって固定子コアを構成したが、周方向に沿った一部に配置された板状部材によって固定子コアを構成することもできる。
径方向長さが異なる3種類の板状部材により固定子コアを構成したが、固定子コアは、径方向長さが同じ板状部材(1種類の板状部材)、径方向長さが異なる2種類あるいは4種類以上の板状部材によって構成することもできる。径方向長さが異なる板状部材の種類の数や各板状部材の径方向長さは、板状部材の厚さや固定子コアの径方向長さ等に応じて選択される。
周方向に隣接して配置される板状部材を連結する方法として突部を孔部に嵌め込むカシメによる連結方法を用いたが、カシメ以外の方法で突部を孔部に嵌め込む連結方法や、他の公知の連結方法(例えば、溶接や接合)を用いることもできる。
隣接して配置される板状部材を連結する連結箇所の位置や数は、実施の形態で説明した位置や数に限定されない。
実施の形態では、本発明の固定子を往復動型の発電機の固定子として用いたが、回転型の発電機の固定子として用いることもできる。また、往復動型の電動機や回転型の電動機を含む種々の構成の駆動機の固定子として用いることもできる。
【符号の説明】
【0028】
10 発電機
11 ベース部材
12 軸受
20 固定子
30 固定子コア
31 スロット
40、140 第1の固定子コア
50 第2の固定子コア
60 固定子巻線
70 軸
80 可動子
81 可動子コア
90 永久磁石
41〜46、141〜146 電磁鋼板(板状部材)
41A1、41A2、42A、43A1、43A2、44A、45A1、45A2、46A、141A〜146A 突部
41B、42B1、42B2、43B、44B1、44B2、45B、46B1、46B2、141B〜146B 孔部
41a、42a、43a、44a、45a、46a、141a、142a、143a、144a、145a、146a 縁部(径方向外周側縁部)
41b、42b、43b、44b、45b、46b、141b、142b、143b、144b、145b、146b 縁部(径方向内周側縁部)
41c〜41g、42c〜42g、43c、43f、44c〜44g、45c〜45g、46c、46e、141c〜141g、142c〜142g、143c、143e、144c〜144g、145c〜145g、146c、146e 縁部
41h、42h、44h、45h、141h、142h、144h、145h 切欠部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材によって構成される固定子コアを有する固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されており、
前記径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子であって、
前記径方向内周側の連結箇所は、少なくとも軸線方向中央部に設けられた連結箇所を含んでおり、前記径方向外周側の連結箇所は、少なくとも軸線方向一方側の端部に設けられた連結箇所と軸線方向他方側の端部に設けられた連結箇所を含んでいることを特徴とする固定子。
【請求項3】
軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材によって構成される固定子コアを有する固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されており、
前記軸線方向一方側の連結箇所と前記軸線方向他方側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする固定子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固定子であって、
径方向長さが異なる複数の板状部材を備え、
前記複数の板状部材は、径方向長さが長い順または短い順の一方の順に周方向に沿って繰り返し配置されており、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向長さが最も長い板状部材の径方向内周側縁部より径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されていることを特徴とする固定子。
【請求項5】
請求項4に記載の固定子であって、
前記径方向長さが異なる複数の板状部材として、第1の径方向長さを有する第1の板状部材と、前記第1の径方向長さより短い第2の径方向長さを有する第2の板状部材が用いられていることを特徴とする固定子。
【請求項6】
請求項4に記載の固定子であって、
前記径方向長さが異なる複数の板状部材として、第1の径方向長さを有する第1の板状部材と、前記第1の径方向長さより短い第2の径方向長さを有する第2の板状部材と、前記第2の径方向長さより短い第3の径方向長さを有する第3の板状部材が用いられていることを特徴とする固定子。
【請求項7】
請求項6に記載の固定子であって、
前記第1の板状部材には、軸線方向に沿って切欠部が形成されており、
前記第2の板状部材には、軸線方向に沿って、前記第1の板状部材に形成されている切欠部と同じ形状を有する切欠部が形成されており、
前記第2の板状部材は、前記第2の板状部材の切欠部が前記第1の板状部材の切欠部に対向するように配置されており、
前記第3の板状部材は、前記第1の板状部材および前記第2の板状部材に形成されている切欠部より径方向外周側において前記第1の板状部材および前記第2の板状部材と重なるように配置されていることを特徴とする固定子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、突部と、突部が嵌め込まれる孔部によって連結されていることを特徴とする固定子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の固定子であって、
周方向に隣接して配置され、前記連結箇所で連結されている板状部材は、径方向外周側縁部が揃えられていることを特徴とする固定子。
【請求項10】
固定子巻線が設けられている固定子コアを有する固定子と、前記固定子に対して移動可能に設けられている可動子を備える駆動機であって、前記固定子として請求項1〜9のいずれかに記載の固定子が用いられていることを特徴とする駆動機。
【請求項11】
固定子巻線が設けられている固定子コアを有する固定子と、前記固定子に対して移動可能に設けられている可動子を備える発電機であって、前記固定子として請求項1〜9のいずれかに記載の固定子が用いられていることを特徴とする発電機。
【請求項1】
軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材によって構成される固定子コアを有する固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、径方向内周側の連結箇所または径方向外周側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されており、
前記径方向内周側の連結箇所と径方向外周側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の固定子であって、
前記径方向内周側の連結箇所は、少なくとも軸線方向中央部に設けられた連結箇所を含んでおり、前記径方向外周側の連結箇所は、少なくとも軸線方向一方側の端部に設けられた連結箇所と軸線方向他方側の端部に設けられた連結箇所を含んでいることを特徴とする固定子。
【請求項3】
軸線の周りに周方向に沿って配置された複数の板状部材によって構成される固定子コアを有する固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向外周側において、軸線方向一方側の連結箇所または軸線方向他方側の連結箇所のいずれかの連結箇所で連結されており、
前記軸線方向一方側の連結箇所と前記軸線方向他方側の連結箇所は、周方向に沿って交互に設けられていることを特徴とする固定子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の固定子であって、
径方向長さが異なる複数の板状部材を備え、
前記複数の板状部材は、径方向長さが長い順または短い順の一方の順に周方向に沿って繰り返し配置されており、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、径方向長さが最も長い板状部材の径方向内周側縁部より径方向外周側に離れた箇所で重なるように配置されていることを特徴とする固定子。
【請求項5】
請求項4に記載の固定子であって、
前記径方向長さが異なる複数の板状部材として、第1の径方向長さを有する第1の板状部材と、前記第1の径方向長さより短い第2の径方向長さを有する第2の板状部材が用いられていることを特徴とする固定子。
【請求項6】
請求項4に記載の固定子であって、
前記径方向長さが異なる複数の板状部材として、第1の径方向長さを有する第1の板状部材と、前記第1の径方向長さより短い第2の径方向長さを有する第2の板状部材と、前記第2の径方向長さより短い第3の径方向長さを有する第3の板状部材が用いられていることを特徴とする固定子。
【請求項7】
請求項6に記載の固定子であって、
前記第1の板状部材には、軸線方向に沿って切欠部が形成されており、
前記第2の板状部材には、軸線方向に沿って、前記第1の板状部材に形成されている切欠部と同じ形状を有する切欠部が形成されており、
前記第2の板状部材は、前記第2の板状部材の切欠部が前記第1の板状部材の切欠部に対向するように配置されており、
前記第3の板状部材は、前記第1の板状部材および前記第2の板状部材に形成されている切欠部より径方向外周側において前記第1の板状部材および前記第2の板状部材と重なるように配置されていることを特徴とする固定子。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の固定子であって、
周方向に隣接して配置されている板状部材は、突部と、突部が嵌め込まれる孔部によって連結されていることを特徴とする固定子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の固定子であって、
周方向に隣接して配置され、前記連結箇所で連結されている板状部材は、径方向外周側縁部が揃えられていることを特徴とする固定子。
【請求項10】
固定子巻線が設けられている固定子コアを有する固定子と、前記固定子に対して移動可能に設けられている可動子を備える駆動機であって、前記固定子として請求項1〜9のいずれかに記載の固定子が用いられていることを特徴とする駆動機。
【請求項11】
固定子巻線が設けられている固定子コアを有する固定子と、前記固定子に対して移動可能に設けられている可動子を備える発電機であって、前記固定子として請求項1〜9のいずれかに記載の固定子が用いられていることを特徴とする発電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−147270(P2011−147270A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6013(P2010−6013)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000100872)アイチエレック株式会社 (58)
【出願人】(000144038)株式会社三井ハイテック (300)
【Fターム(参考)】
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