説明

発電機界磁地絡検出装置

【課題】発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流を検出することにより無視できない発電機界磁巻線異常に発展する可能性をも排除できるようにする
【解決手段】発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に流れる電流iが所定値以上であることを検出するレベル判定手段9、電流が所定値以上であるとレベル判定手段が判定すると電流が所定値以上である時間を積算する積算手段10、及びこの積算手段の積算値が所定値以上になれば出力する出力手段11を備え、出力手段により発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流の何れをも検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば火力や原子力発電プラント等に適用される同期発電機等の発電機の界磁回路に間欠地絡事故が発生したことを検出する発電機界磁地絡検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三相交流電力系統に間欠地絡事故が発生したときに生じる該当電力系統の零相地絡電圧を検出する地絡検出装置は、例えば特許文献1に掲載されている。 特許文献1に掲載の三相交流電力系統における間欠地絡事故地絡検出装置では、三相交流電力系統の零相地絡電圧を検出する零相電圧検出用電圧変成器とこの零相電圧検出用電圧変成器の出力電圧をパルス信号に整形するパルス整形回路とを設け、このパルス整形回路の出力である複数のパルス信号の各々の継続時間を積算してその積算値が所定値なれば三相交流電力系統に間欠地絡事故が発生したものと判定されるが、あくまでも三相交流電力系統に間欠地絡事故が発生したときに生じる該電力系統の零相地絡電圧を零相電圧検出用電圧変成器により検出するものである。
【0003】
一方、発電機の界磁回路における地絡検出装置では、発電機界磁回路の負極側と大地との間に所定の直流電圧を抵抗を介して供給し、出力端に流れる電流の大きさを判定することにより地絡検出を実施しており、例えば特許文献2のように、発電機界磁回路の負極側と大地との間に直流電圧を供給して発電機界磁巻線と大地との間に流れる電流を計測して判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−139212公報(第1図,第2図及びその説明)
【特許文献2】特開平7−241027号公報(図1,図11及びその説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の発電機界磁回路の地絡検出装置では、発電機界磁回路の負極側と大地との間に直流電圧を供給して発電機界磁巻線と大地との間に流れる電流の瞬時のレベル判定または動作遅延回路を介して地絡検出するものである。
発電機界磁回路の負極側と大地との間に直流電圧を供給する検出回路構成とした場合、発電機界磁回路で起こりえる例えば界磁巻線の寿命、その他に起因して生じる間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に電流が流れる場合等の界磁回路で起こり得る間欠故障が生じるが、実運用においては一過性の電圧変動での誤検出を避けるため、動作遅延回路が設けられているのが一般的であるので、前述のような間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流に対しては検出ができないか、または検出した時点では、遅延時間が経過する以前に前記間欠故障を繰り返すことで無視できない発電機界磁巻線異常に発展する可能性があることも想定しておくことが好ましい。
【0006】
この発明は前述のような実情に鑑みてなされたものであり、発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び間欠的な前駆地絡現象等の間欠故障により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流を検出することにより無視できない発電機界磁巻線異常に発展する可能性をも排除できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る発電機界磁地絡検出装置は、発電機の界磁回路と大地との間に直流電圧を供給して発電機界磁巻線と大地との間に流れる電流に基づいて発電機界磁の地絡を検出する発電機界磁地絡検出装置において、前記電流が所定値以上であることを検出するレベル判定手段、前記電流が所定値以上であると前記レベル判定手段が判定すると前記電流が所定値以上である時間を積算する積算手段、及びこの積算手段の積算値が所定値以上になれば出力する出力手段を備え、前記出力手段により前記発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び前記間欠的な前駆地絡現象等の間欠故障により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流の何れをも検出するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、発電機の界磁回路と大地との間に直流電圧を供給して発電機界磁巻線と大地との間に流れる電流に基づいて発電機界磁の地絡を検出する発電機界磁地絡検出装置において、前記電流が所定値以上であることを検出するレベル判定手段、前記電流が所定値以上であると前記レベル判定手段が判定すると前記電流が所定値以上である時間を積算する積算手段、及びこの積算手段の積算値が所定値以上になれば出力する出力手段を備え、前記出力手段により前記発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び前記間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流の何れをも検出するので、発電機界磁の地絡を検出できると共に、無視できない発電機界磁巻線異常に発展する可能性をも排除できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、発電機の界磁回路及び発電機界磁地絡検出装置の一例を示す接続回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、図1の動作を説明する図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、図1の発電機界磁地絡検出装置の動作をフローチャートで例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1に基づいて説明する。
【0011】
図1において、発電機1の界磁巻線2、励磁回路3、励磁回路3と界磁巻線2間を接続するP(正極)側界磁回路4およびN(負極)側界磁回路5より発電機回路が構成され、この発電機回路の地絡を界磁地絡検出装置6が検出する。界磁地絡検出装置6では、直流電源7がN極側界磁回路5と大地Gdと間に直流電圧を供給し、電流入力変換回路8を経由して大地Gdに接続され、また、界磁地絡検出装置6には電流入力変換回路8の出力を判定するレベル判定回路からなるレベル判定手段(以下「レベル判定回路」と記す)9、積算回路からなる積算手段(以下「積算回路」と記す)10、及び出力リレーからなる出力手段(以下「出力リレー」と記す)11が設けられている。
【0012】
図1に例示の発電機の界磁地絡検出装置6は、発電機の界磁回路と大地との間に直流電圧を供給して発電機の界磁巻線2と大地Gdとの間に流れる電流iに基づいて発電機界磁の地絡を検出する発電機界磁地絡検出装置6において、前記電流iが所定値以上であることを検出するレベル判定回路(レベル判定手段)9、前記電流iが所定値以上であると前記レベル判定手段が判定すると前記電流が所定値以上である時間を積算する積算回路(積算手段)10、及びこの積算回路10の積算値が所定値以上になれば出力する出力リレー(出力手段)11を備え、前記出力リレー11により前記発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に連続的に流れる電流i及び前記間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に間欠的に流れる電流iの何れをも検出するものである。
また、前記発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に所定時間以上電流iが流れない場合は前記積算回路10の積算動作をリセットして前記積算値をゼロにするものである。
【0013】
次に動作について図2および図3によって説明する。
界磁巻線2の回路で地絡が発生すると、直流電源7により地絡点12を通じて電流入力変換回路8に地絡電流iが流れ、レベル判定回路9に伝達される。
具体的な動作は、以下のステップST1→ST2→ST3→ST4→ST5→ST6の順での処理、及びST7→ST8→ST9の順での処理により行われる。
【0014】
ステップST1:電流入力変換回路8が地絡電流iを計測する。
【0015】
ステップST2:レベル判定回路9では、電流入力変換回路8の出力を入力し、地絡電流iの大きさを判定し、設定値I以上(i≧I)であれば積算回路10へ出力する。
【0016】
ステップST3:積算回路10はレベル判定回路9の出力を入力し、地絡電流iが設定値I以上である時間tを積算する。
【0017】
ステップST4:地絡電流iの大きさが、設定値I以上(i≧I)となった場合は、地絡非発生連続継続時間をリセットし0とする。
【0018】
ステップST5:積算時間tが設定時間Tを超える(t>T)と、積算回路10の出力が出力リレー11に与えられる。
【0019】
ステップST6:出力リレー11は、積算回路10の出力を入力すると、外部に地絡検出通知信号を出力する。
前記t>Tではない場合は、前記ステップST1に戻る。
【0020】
ステップST7:積算回路10はレベル判定回路9の出力を入力し、地絡電流iが設定値I未満である時間tを積算する。
【0021】
ステップST8:前記ステップST2での処理の結果に基づき、地絡が発生しない状態が継続しているかどうか(t>Tであるかどうか)を判定する。なお、tは地絡非発生連続継続時間(変数)、Tは地絡非発生継続によるtgリセット時間(定数)である。
【0022】
ステップST9:ステップST8での判定結果、地絡が発生しない状態が継続していれば(t>Tであれば)、積算回路10での地絡継続の積算時間tをリセット(t=0)し、前記ステップST1に戻る。
【0023】
永久地絡のように前記電流iが連続的に流れる場合、前記i≧Iである時間tが連続で積算されてt>Tとなり、積算回路10を介して出力リレーに11で検出できる。
【0024】
前記発電機1の界磁巻線2の回路に、前記i≧Iとなる地絡電流iが間欠発生するような地絡(事故)等が発生した場合、たとえ途中でi<Iとなったとしても、T時間のあいだに繰返しi≧Iになり続ければ間欠発生の各地絡電流iの前記i≧Iである時間tが積算回路10で積算されて当該積算時間t=T0+T0+・・・が設定時間T以上になれば出力リレーに11にて出力することができる。
【0025】
なお、前記ステップST2〜ST5,ST7〜ST9の処理は、ソフトウエアによる処理としてもよい。
【0026】
前述の動作説明のように、この出願の発電機界磁地絡検出装置は、発電機の界磁回路と大地との間に直流電圧を供給して発電機の界磁巻線2と大地Gdとの間に流れる電流iに基づいて発電機界磁の地絡を検出する発電機界磁地絡検出装置6において、前記電流iが所定値以上であることを検出するレベル判定回路(レベル判定手段)9、前記電流iが所定値以上であると前記レベル判定手段が判定すると前記電流が所定値以上である時間を積算する積算回路(積算手段)10、及びこの積算回路10の積算値が所定値以上になれば出力する出力リレー(出力手段)11を備え、前記出力リレー11により前記発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に連続的に流れる電流i及び前記間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に間欠的に流れる電流iの何れをも検出するものであり、また、前記発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に所定時間以上電流iが流れない場合は前記積算回路10の積算動作をリセットして前記積算値をゼロにするものであることから、発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に連続的に流れる電流i及び間欠的な前駆地絡現象により発電機界磁巻線2と大地Gdとの間に間欠的に流れる電流iを検出することができ、発電機界磁の地絡を検出できると共に、無視できない発電機界磁巻線異常に発展する可能性をも排除することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 発電機、
2 界磁巻線、
3 励磁回路、
4 P(正極)側界磁回路、
5 N(負極)側界磁回路、
6 地絡検出装置、
7 直流電源、
8 電流入力変換回路、
9 レベル判定回路、
10 積算回路、
11 出力リレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の界磁回路と大地との間に直流電圧を供給して発電機界磁巻線と大地との間に流れる電流に基づいて発電機界磁の地絡を検出する発電機界磁地絡検出装置において、前記電流が所定値以上であることを検出するレベル判定手段、前記電流が所定値以上であると前記レベル判定手段が判定すると前記電流が所定値以上である時間を積算する積算手段、及びこの積算手段の積算値が所定値以上になれば出力する出力手段を備え、前記出力手段により前記発電機界磁巻線と大地との間に連続的に流れる電流及び前記間欠故障により前記発電機界磁巻線と大地との間に間欠的に流れる電流の何れをも検出することを特徴とする発電機界磁地絡検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電機界磁地絡検出装置において、前記発電機界磁巻線と大地との間に所定時間以上電流が流れない場合は前記積算手段の積算動作をリセットして前記積算値をゼロにすることを特徴とする発電機界磁地絡検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249498(P2012−249498A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121760(P2011−121760)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】