説明

発電機能付き海水淡水化装置

【課題】太陽エネルギーにより水と電気の両方を同時に得ることができる発電機能付き海水淡水化装置を提供する。
【解決手段】ヘリオスタット4で反射した太陽光Lにより蒸気ボイラー2を加熱し、蒸気ボイラー2で発生した蒸気Bを発電機27のタービン26に供給して発電を行うと共に、発電機27のタービン26から排出された蒸気Bを熱源として海水Cを加熱して蒸気Dを発生させ、その蒸気Dをコンデンサ19で冷却して凝縮させることにより淡水Eを得ることができる。このように、太陽エネルギーを利用して、水と電気の両方を同時に得ることができる。海22から循環された冷たい海水Cを冷却液体として利用するため、蒸気B、Dを凝縮させためのエネルギーが少なくて済む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギーを利用した発電機能付き海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海水を淡水化する方法として蒸発法が知られている。従来は、蒸発用の熱源として、重油を燃焼させたボイラーを用いていたが、燃料コストが高いことと、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を大量に排出するため、近年では太陽エネルギーを利用した海水淡水化装置の提案がされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−86907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、太陽エネルギーにより海水の淡水化を行うだけで、同時に発電を行うことができなかった。離島や海外の一部の地域では、水だけでなく、電気の供給も十分でないため、太陽エネルギーにより、水と電気の両方を同時に得ることができる発電機能付き海水淡水化装置の提案が望まれている。
【0005】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、太陽エネルギーにより水と電気の両方を同時に得ることができる発電機能付き海水淡水化装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、一部に加熱面を有する蒸気ボイラーと、蒸気ボイラーの周辺の地上に設置されて太陽光を蒸気ボイラーの加熱面に向けて反射させる複数のヘリオスタットと、蒸気ボイラーからの蒸気が供給されて発電する発電機と、発電機から排出された蒸気を熱源として海水を加熱して蒸気を発生させる蒸気発生部と、冷却液体が循環されて蒸気発生部からの蒸気を凝縮させるコンデンサと、コンデンサで凝縮された淡水を溜める淡水タンクと、から成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、冷却液体が海から循環された海水であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、蒸気ボイラーが所定の高さに設置され且つ底面に加熱面を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、蒸気ボイラーの加熱面が内側に凹の湾曲面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ヘリオスタットで反射した太陽光により蒸気ボイラーを加熱し、蒸気ボイラーで発生した蒸気を発電機に供給して発電を行うと共に、発電機から排出された蒸気を熱源として海水を加熱して蒸気を発生させ、その蒸気をコンデンサで冷却して凝縮させることにより淡水を得ることができる。このように、太陽エネルギーを利用して、水と電気の両方を同時に得ることができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、海から循環された冷たい海水を冷却液体として利用するため、蒸気を凝縮させためのエネルギーが少なくて済む。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、蒸気ボイラーを所定の高さに設置し、蒸気ボイラーの底面を加熱面として、そこを太陽光により加熱するため、内部の水全体に熱が対流により伝わりやすく、太陽エネルギーにより効率的に大量の蒸気量を発生させることができる。大量の蒸気が発生すれば、その発生蒸気を利用して効果的な発電をすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、蒸気ボイラーの加熱面が内側に凹の湾曲面であるため、加熱面と太陽光とのなす角度が大きくなり、加熱面による太陽光の吸収性能が向上する。また、熱気が凹型の加熱面内に滞留するため、側面を加熱面とする場合に比べて、加熱面からの放熱が減少し、熱効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電機能付き海水淡水化装置を示す概略図。
【図2】発電機能付き海水淡水化装置を示す平面図。
【図3】ヘリオスタットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3は、本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0016】
この実施形態の発電機能付き海水淡水化装置には、発電に関するサイクルと、海水淡水化に関するサイクルが組み合わされている。まず、発電に関するサイクルを先に説明する。
【0017】
発電機能付き海水淡水化装置の中心には、地表から所定高さ(約10m)を有する4本のタワー1が立設されている。そのタワー1の上部には、金属製の蒸気ボイラー2が設置されている。
【0018】
蒸気ボイラー2は上部が圧力に耐えるようにドーム型になっており、底面は加熱面3として内側へ凸の湾曲面になっている。加熱面3には耐熱性の黒色塗装が施されている。
【0019】
蒸気ボイラー2の周囲の地上には、太陽Sを追尾しながら、太陽光Lを常に蒸気ボイラー2の加熱面3に向けて反射するヘリオスタット4が複数設置されている。ヘリオスタット4は、図2に示すように、蒸気ボイラー2の南側を除き、蒸気ボイラー2を中心にした放射状に複数設置されている。
【0020】
個々のヘリオスタット4は、図3に示すように、ベース部5に立設された支柱6の頂部に反射ミラー7を備えた構造になっている。反射ミラー7は多数の小ミラーから構成され、全体として凹面形状になっている。従って、ほぼ平行光である太陽光Lは反射ミラー7で反射されることにより、ターゲット(加熱面3)に向けて集光する太陽光Lとなる。反射ミラー7は支柱6の頂部に対して高度方向及び方位方向で回転自在になっている。反射ミラー7は、太陽Sを追尾して、太陽光Lの移動角度の概ね1/2ずつ回転して、常に太陽光Lを同じ方向へ反射し続ける。このような反射ミラー7の制御は、センサー方式で行っても良いし、コンピュータ方式で行っても良い。
【0021】
蒸気ボイラー2の内部には図示せぬセンサーにより一定の水Aが保持されている。蒸気ボイラー2の上部には空間が設けられており、そこに蒸気Bが溜まるようになっている。
【0022】
蒸気ボイラー2の近くには、タービン26と発電機27が設置されている。発電機27には電流制御部32が設けられ、一部の電力を自己使用することができると共に、残りの電気を他に供給することができる。図1では、タービン26と発電機27は高い位置に図示されているが、実際には地上高さに設置されている。蒸気ボイラー2の頂部からは供給パイプ28が延びており、タービン26に接続されている。また、タービン26からは戻しパイプ29が途中曲折した状態で長く延びており、最終的には蒸気ボイラー2の下部に接続されている。
【0023】
戻しパイプ29の一部は、一部にU字状に曲折した加熱部14が形成されている。また、戻しパイプ29の途中にはコンデンサ30とポンプ31も設けられている。コンデンサ30の一端には導入管35が接続され、他端には排出管36が接続されている。導入管35の先端は海22の中に設置され、ポンプ23により、フィルター24を介して海水Cをコンデンサ30内に導入することができる。排出管36も先端が海22側に突出しており、コンデンサ30を通過した海水Cを海22へ戻すことができる。
【0024】
次に、海水淡水化に関するサイクルを説明する。タービン26から排出された蒸気Bが通過する戻しパイプ29の加熱部14には、それを内部に含む形で蒸気発生部16が形成されている。蒸気発生部16は基本的に密閉された箱形状で、内部には海水Cが保持されている。戻しパイプ29の加熱部14は、蒸気発生部16に保持された海水Cの内部に位置した状態となる。蒸気発生部16には、注入管8と、排水管9があり、どちらにもバルブ10、11が設けられている。排水管9側のバルブ11は常時閉で、海水Cがバルブ11に達したときにバルブ11の高さまで海水Cを強制排出するようになっている。
【0025】
排水側のバルブ11の上部には塩分センサー12が設けられている。この塩分センサー12は海水Cの表面に浮かべる「浮き方式」で、海水Cの塩分濃度により、海水Cの表面における位置が浮力により変化するため、浮かんでいる位置が高い場合には、浮力大(塩分濃度大)と判断して、注入側のバルブ10に信号を出力して注入管8から海水Cを強制的に加熱容器2内に注入する。
【0026】
蒸気発生部16の内部の海水Cの上部には空間部13が形成されている。この空間部13は海水Cの水分が蒸発した蒸気Dが溜まるところである。
【0027】
この空間部13内に蛇行管形状のコンデンサ19が、平面視でほぼ空間部13の広さの範囲内にわたって縦横に形成されている。コンデンサ19の下側には、蒸気Dの導入口33を残した状態で、淡水Eを貯留する受け皿状の淡水タンク15が形成されている。淡水タンク15の底面は傾斜しており、その低い位置に開閉自在な取水口34が形成されている。
【0028】
空間部13の導入口33とは反対側の壁部には、排気管17が形成されている。排気管17の先端にはファン18が設けられ、空間部13内のエアーを外部へ排出するようになっている。
【0029】
そして、コンデンサ19の一端には、前記発電側のコンデンサ30と同様に、導入管20が接続され、他端には排出管21が接続されている。導入管20の先端は海22の中に設置され、発電側と共用のポンプ23により海水Cを前記コンデンサ19内に導入することができる。排出管21も先端が発電側と同じように海22側に突出しており、コンデンサ19を通過した海水Cを海22へ戻すことができる。
【0030】
前記排出管36の途中には合流管25が設けられ、図示省略されているが前記蒸気発生部16の排水管9が接続され、蒸気発生部16から強制排出された塩分濃度の高い海水aを、コンデンサ30を通過した海水Cと共に海22へ戻すことができる。
【0031】
更に、蒸気発生部16へ海水Cを注入する注入管8の反対側の端部は、排出管21の合流管25よりも手前位置に接続されている。従って、蒸気発生部16に注入される海水Cはコンデンサ19を通過したものである。
【0032】
尚、加熱部14や蒸気発生部16等は、図1及び図2では、加熱容器2の南側の近い位置に設置されているように図示されているが、実際には、ヘリオスタット4への太陽光Lの入光を邪魔しないように、ある程度、南側の離れた位置に設置されている。
【0033】
次に、この実施形態の作用を説明する。
【0034】
まず、発電に関するサイクルの作用を説明する。太陽光Lは複数のヘリオスタット4により、地表から所定の高さに位置づけられた蒸気ボイラー2の底面の加熱面3に集光される。各ヘリオスタット4で反射された太陽光Lは、湾曲状(一種のドーム形)となった加熱面3の中央部から遠い方の面に当てる。そうすると、太陽光Lと加熱面3とのなす角度が大きくなり、太陽光Lは加熱面3の表面で反射されることなく確実に吸収され、熱効率が高まる。
【0035】
また、ヘリオスタット4からの太陽光Lを、それぞれ加熱面3の遠い方の面に当てることにより、太陽光Lは加熱面3に対して分散された状態で当たることになる。加熱面3の一部のみが部分的に高温にならず、加熱面3の全体が高温になるため、この点も熱効率向上に寄与している。
【0036】
更に、加熱面3が湾曲状で、熱気が加熱面3内に滞留するため、側面を加熱面とする場合に比べて、加熱面3からの放熱が減少し、熱効率が向上する。
【0037】
加熱面3に黒色塗装を施していることも、太陽光Lの吸収を良くしている。このように、太陽光Lは蒸気ボイラー2の加熱面3において効率良く熱に変換される。
【0038】
蒸気ボイラー2の底面である加熱面3が太陽光Lにより加熱されるため、内部の水Aの全体に対流により熱が伝わりやすく、水Aが効果的に沸騰して、大量の蒸気Bを発生させることができる。
【0039】
蒸気ボイラー2で発生した蒸気Bは、供給パイプ28を介してタービン26に送られ、タービン26を回転させる。タービン26が回転すると、一体的に連結された発電機27も回転して電気を発生させる。発電機27で発生した電気は、電流制御部32を介して、ポンプ23、31やファン18等に自己使用されると共に、他へも供給される。
【0040】
タービン26に供給されて、仕事が終了した蒸気Bは、戻しパイプ29を介して蒸気ボイラー2に戻されるが、その途中にコンデンサ30が設けられているため、そこで冷却されて蒸気Bから水Aにされ、水Aの状態で元の蒸気ボイラー2に戻される。以上の工程を繰り返すことにより、発電機27から電気を発生し続けることができる。
【0041】
次に、海水淡水化に関するサイクルの作用を説明する。発電の過程で、タービン26から排出されてコンデンサ30に至る前の蒸気Bはまだ熱く、戻しパイプ29の加熱部14は温度が高い。従って、この加熱部14により、蒸気発生部16内の海水Cは加熱される。蒸気発生部16の空間部13が排気管17のファン18により吸引されているため、空間部13の気圧が大気圧よりも若干低くなっている。そのため、蒸気発生部16内の海水Cの水分が蒸発しやすい状態になっている。
【0042】
発生した蒸気Dは導入口33からコンデンサ19側に導かれる。前述のように、導入口33の反対側から排気管17のファン18により吸引されているため、導入口33からコンデンサ19側へ向けての蒸気Dの移動は促進される。
【0043】
蒸気Dはコンデンサ19に接することにより、そこで熱交換されて凝縮され、淡水(蒸留水)Eとなる。コンデンサ19との接触により凝縮された淡水Eは、そのまま淡水タンク15内に落下して貯留される。
【0044】
蒸気発生部16内の海水Cは水分を蒸発させることにより、塩分濃度が上昇するが、予め設定された濃度より濃くなった場合には、塩分センサー12が検知して、注入管8のバルブ10を開き、排出管21からコンデンサ19を通過しただけの新鮮な海水Cを蒸気発生部16内に注入する。注入管8から蒸気発生部16に注入される海水Cは、コンデンサ19内で蒸気Dと熱交換することにより比較的温かくなっているため、蒸気発生部16内に導入された後も少ない熱エネルギーで蒸発させることができ、熱効率が良い。
【0045】
蒸気発生部16内への新鮮な海水Cの導入は、蒸気発生部16内の海水Cの塩分濃度が所定濃度に達するまで行われる。その過程で、排出側のバルブ11の高さよりもオーバーフローする高濃度の海水Cはバルブ11により排水管9から強制排出される。強制排出された高濃度の海水aは、排水管9から図示せぬ配管を介した後、合流管25から排出管36に合流し、コンデンサ30を通過した海水Cと一緒に海22に戻される。
【0046】
以上説明したように、この実施形態によれば、太陽エネルギーにより、発電と海水淡水化の両方を同時に行うことができる。
【0047】
また、蒸気B、Dを発生させるための熱エネルギーは太陽光Lから得て、蒸気B、Dを凝縮するための冷却エネルギーは、海22からの海水Cから得るため、ほとんど自然エネルギーで済む。化石燃料に起因したエネルギーの使用は、ポンプ23、31やファン18等で使用する電力など、ほんの僅かで済む。しかも、その電力は、自身で発電したものを利用するため、離島など電力供給網がない場所にも設置することができる。
【0048】
尚、以上の実施形態では、コンデンサ19、30を海水Cにより冷却する例を示したが、冷水循環機やクーリングタワーで冷却した冷水を循環しても良い。
【符号の説明】
【0049】
2 蒸気ボイラー
3 加熱面
4 ヘリオスタット
9 発電機
14 加熱部
15 淡水タンク
16 蒸気発生部
19 コンデンサ
27 発電機
28 供給パイプ
29 戻しパイプ
30 コンデンサ
a 濃縮された海水
A 水
B 蒸気(発電側)
C 海水
D 蒸気(海水淡水化側)
E 淡水
L 太陽光
S 太陽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に加熱面を有する蒸気ボイラーと、蒸気ボイラーの周辺の地上に設置されて太陽光を蒸気ボイラーの加熱面に向けて反射させる複数のヘリオスタットと、蒸気ボイラーからの蒸気が供給されて発電する発電機と、発電機から排出された蒸気を熱源として海水を加熱して蒸気を発生させる蒸気発生部と、冷却液体が循環されて蒸気発生部からの蒸気を凝縮させるコンデンサと、コンデンサで凝縮された淡水を溜める淡水タンクと、から成ることを特徴とする発電機能付き海水淡水化装置。
【請求項2】
冷却液体が海から循環された海水であることを特徴とする請求項1記載の発電機能付き海水淡水化装置。
【請求項3】
蒸気ボイラーが所定の高さに設置され且つ底面に加熱面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の発電機能付き海水淡水化装置。
【請求項4】
蒸気ボイラーの加熱面が内側に凹の湾曲面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発電機能付き海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−279893(P2010−279893A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134782(P2009−134782)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390013033)三鷹光器株式会社 (114)
【Fターム(参考)】