説明

発電機

【課題】発電機と整流器の間に設けられ、電圧を上昇又は下降させたりするのに使用される単巻変圧器を不要とする発電機を提供する。
【解決手段】発電機のステータ巻線を、メイン巻線98a、98b、98c、及び、これに接続された二次巻線100a〜100i、を有する一体式単巻変圧器ユニットで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タービンエンジン、とりわけガスタービンエンジンは、燃焼タービンエンジンとしても知られており、エンジンを介して複数のタービンブレードへとから流れる燃焼ガスの流れからエネルギーを抽出する回転エンジンである。ガスタービンエンジンは、陸上および海での移動および電力生成に利用されてきたが、もっとも一般的にはヘリコプターを含めた飛行機などの航空用途で利用されている。飛行機では、ガスタービンエンジンは、航空機の推進力に利用される。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、2つ以上のスプールを有しており、すなわち全体の推進系推力の有意な部分を提供する低圧(LP)スプールと、1つまたは複数の圧縮機を駆動し、排出される生成物を船尾方向に誘導することによって、追加の推力を生成する高圧(HP)スプールが含まれる。3段スプールガスタービンエンジンは、第3の中間圧力(IP)スプールを含んでいる。
【0003】
またガスタービンエンジンは通常、発電機、始動機/発電機、永久磁石交流発電機(PM)、燃料ポンプおよび液圧式ポンプ、例えば推進力以外の航空機に必要な機能のための装備などいくつかの多様な付属機器に動力を供給する。例えば最近の航空機は、アビオニクス機器、モータおよび他の電気設備用に電力を必要とする。ガスタービンエンジンに結合した発電機は、エンジンの機械的動力を必要とされる電気エネルギーに変換して、付属機器に電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7813147号明細書
【発明の概要】
【0005】
異なる電圧階級で作動するシステムを相互に接続し、発電機の高調波成分および整流器の出力におけるリップルを減少させる目的で、単巻変圧器(ATU)が電力用途で使用されることが多い。航空機では、単巻変圧器は典型的には、発電機と整流器の間の電圧を上昇させたり下降させたりするのに使用される。ATUは、発電機から離れており、エンジンの重量および体積に加えられる。さらにATUは、強制的な液体冷却システムを必要とすることが多く、このようなシステムはエンジンに対してさらに重量および体積を追加する。
【0006】
一実施形態において、発電機は、3つのメイン巻線を有するステータと、この3つのメイン巻線のそれぞれに接続されて一体式単巻変圧器ユニットを形成する少なくとも2つの二次巻線と、3つのメイン巻線に接続された第1の組の導体と、少なくとも2つの二次巻線にそれぞれ接続された第2の組の導体とを含んでいる。
【0007】
別の実施形態において、ガスタービンエンジンは、3つのメイン巻線を有するステータと、この3つのメイン巻線のそれぞれに接続されて一体式単巻変圧器ユニットを形成する少なくとも2つの二次巻線と、3つのメイン巻線に接続された第1の組の導体と、少なくとも2つの二次巻線にそれぞれ接続された第2の組の導体とを含む発電機を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】航空機のためのガスタービンエンジンの概略断面図である。
【図2】図1のガスタービンエンジンの電力システム構造の概略的なブロック図であり、このシステム構造は、本発明の第1の実施形態による一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機を有する図である。
【図3】図2の電力システム構造の一体式単巻変圧器ユニット備えた発電機と、AC−DC電力変換器の電気回路図である。
【図4】図3からの一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機のステータ巻線の電気回路図である。
【図5】図4からのステータ巻線の巻線ベクトルの図である。
【図6】図1のガスタービンエンジンのための電力システム構造の概略ブロック図であり、このシステム構造が、本発明の第2の実施形態による一体式単巻変圧器ユニットを有する図である。
【図7】図6の電力システム構造の一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機と、AC−DC電力変換器の電気回路図である。
【図8】図3からの一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機のステータ巻線の電気回路図である。
【図9】図8からのステータ巻線の巻線ベクトルの図である。
【図10】図1のガスタービンエンジンのための電力システム構造の概略ブロック図であり、このシステム構造が、本発明の第3の実施形態による一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機を有する図である。
【図11】図10の電力システム構造の一体式単巻変圧器ユニットを備えた発電機と、AC−DC電力変換器の電気回路図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の記載される実施形態は一般に、機械的動力を電力に変換する発電機を対象としている。本発明の実施形態は、航空機エンジンからの電力生成に関して記載されており、より詳細にはタービンエンジンから、好ましくはガスタービンエンジンから電力を生成することができる少なくとも1つの発電機を有する電力システム構造に関して記載されている。しかしながら本発明は、これに限定するものではなく、航空機以外の用途、例えば他の移動用途、ならびに移動しない産業向け、商業向けおよび住宅向け用途における電力システム構造に対する一般的な用途を有することを理解されたい。
【0010】
図1は、航空機のためのガスタービンエンジン10の概略断面図である。エンジン10は、下流に連続して流れる関係において、ファン14を含むファン部分12と、ブースタまたは低圧(LP)圧縮機16と、高圧(HP)圧縮機18と、内燃部分20と、HPタービン22と、LPタービン24とを含んでいる。HPシャフトまたはスプール26が、HPタービン22をHP圧縮機18に駆動式に接続し、LPシャフトまたはスプール28が、LPタービン24をLP圧縮機16およびファン14に駆動式に接続する。HPタービン22は、ロータ30の周辺部に設置されたタービンブレード32を有するHPタービンロータ30を含む。ブレード32は、ブレードプラットフォーム34から半径方向外側のブレード先端36まで半径方向外向きに延在している。
【0011】
図2は、本発明の第1の実施形態による電力システム構造40の概略ブロック図である。システム構造40は、複数のエンジンシステムを含んでおり、少なくとも左側のエンジンシステム42と右側のエンジンシステム44とを含むように本明細書では示されている。左側と右側のエンジンシステム42、44は、ほぼ同一であるため、簡潔にするために、左側のエンジンシステム42のみを詳細に記載する。左側のエンジンシステム42は、図1に示されるガスタービンエンジン10のHPスプール26とLPスプール28を含むことができるが、システム構造40には、他のエンジンに対する用途もある。本明細書に示される左側のエンジンシステム42は、2つのスプール、すなわちHPスプール26とLPスプール28によって供給される機械的動力を利用する。しかしながらシステム構造40は、3つ以上のスプール、例えばHPスプールおよびLPスプールに加えて中間圧力スプールを有する3つのスプールのエンジンに実装することもできる。システム構造40はさらに、航空機の補助動力装置(APU)46と、外部電源(EPS)48を含むことができる。本明細書に示されるように、APU46およびEPS48はそれぞれ、DC出力50、52をそれぞれ有する。
【0012】
例示の実施形態において、左側のエンジンシステム42は、第1の単巻変圧器ユニット(ATU)と一体式発電機56と、第2のATUと一体式発電機58を含んでおり、第1の単巻変圧器ユニット(ATU)一体式発電機56は、本明細書ではATUと一体式始動機−発電機56として示され、HPスプール26によって供給される機械的動力から可変周波数(VF)AC電力を生成するように構成されており、第2のATU一体式発電機58は、LPスプール28によって供給される機械的動力から一定周波数(CF)AC電力を生成するように構成されている。
【0013】
ATU一体式始動機−発電機56は、電力生成部分60とATU部分62を含む。以下により詳細に説明するようにATU部分62は、電力生成部分60の電気巻線の動力変換に必要な電気巻線の一部を組み込むことによって、電力生成部分60と一体式になっている。これにより本質的に、電力生成部分60とATU部分62において巻線が重複することがなくなり、これは恐らく航空機の重量およびコスト削減につながる。
【0014】
HPスプール26は、HP駆動組立体によってATU一体式始動機−発電機56に作動式に結合させることができ、この組立体は、HPスプール26に機械的に結合された入力と、電力生成部分60に機械的に結合された出力を有する、HP駆動組立体の一実施形態は、付属のギアボックス64であり、この場合ATU一体式始動機−発電機56は、付属のギアボックス64に設置され、そこに結合させることができる。付属のギアボックス64の中で、動力を他のエンジン付属品に伝えることもできる。ATU一体式始動機−発電機56の電力生成部分60は、HPスプール26によって供給された機械的動力を電力に変換し、3相出力を有する電源66を形成する。ATU一体式始動機−発電機56のATU部分62は、電源66の3相出力を9相の電力出力68に変換する機能と、電源の電圧を上昇させる両方の機能がある。
【0015】
ATU一体式始動機−発電機56はまた、航空機に起動する機能を与える。あるいは左側のエンジンシステム42のHP側のATU一体式発電機56が、航空機に起動する機能を与えない発電機を備える場合もある。この場合、付属ギアボックス64に接続された別個の始動モータを設けることで、航空機に起動する機能を与えることができる。さらに左側のエンジンシステム42は、冗長度の方策を提供するために、HPスプール26から機械的動力を引き出す複数の発電機を含むことができる。
【0016】
ATU一体式発電機58は、電力生成部分70と、ATU部分72を含む。LPスプール28は、LP駆動組立体によって、ATU一体式発電機58に作動式に結合させることができ、この組立体は、LPスプール28に機械的に結合された入力と、電力生成部分70に機械的に結合された出力を有する。LP駆動組立体の一実施形態は、一定の速度の駆動装置(CSD)74であり、この装置によって、LPスプール28からの可変速度の入力を一定の速度に変換する。本明細書に示されるように、CSD74は、ATU一体式発電機58に機械的に結合することができ、一定の速度で電力生成部分70を駆動する。ATU一体式発電機58の電力生成部分70は、LPスプール28によって供給された機械的動力を電力に変換し、3相出力を有する電源76を形成する。ATU一体式発電機58のATU部分72は、電源76の3相出力を9相の電力出力78に変換する機能と、電源の電圧を上昇させる両方の機能がある。CSDがあることにより、電源66、76は、一定の周波数を有する。あるいはCSD74をなくすことで、VF電力出力を生成することもできる。
【0017】
本明細書に示される実施形態は、左側のエンジンシステム42のLP側にある1つのATU一体式発電機58を使用するものとして記載されているが、本発明の別の実施形態は、複数のATU一体式発電機58を利用して、LPスプール28から機械的動力を引き出しAC電力を生成することで、冗長度の方策を提供する場合もある。さらに別個のATU一体式発電機58とCSD74が本明細書で考察されているが、CSD74とATU一体式発電機58を共通のユニットに組み合わせた一体式駆動発電機を代替として利用することもできる。
【0018】
ATU一体式始動機−発電機56からの電力出力68が、第1のAC/DC変換器に供給されて、AC電力出力68をDC電力出力80に変換する。例示のように、第1のAC/DC変換器は、第1の整流器デバイス82と、第1のフィルタ84とを含むことにより、AC電圧をDC電圧に変換し、第1の電気バス86に供給される前に電流を均等にすることができる。同様にATU一体式発電機58からの電力出力78は、第2のAC/DC変換器に供給されて、AC電力出力78をDC電力出力88に変換する。例示のように、第2のAC/DC変換器は、第2の整流器デバイス90と、第2のフィルタ92とを含むことにより、AC電圧をDC電圧に変換し、第2の電気バス94に供給される前に電流を均等にすることができる。
【0019】
モータ−始動機制御装置96が、第1の電気バス86からATU一体式始動機−発電機56に選択的に動力を供給することで、航空機の起動手順を開始する。モータ−始動機制御装置96をATU一体式始動機−生発電機56と一体式にすることで、図2に示されるように、モータ−始動機制御装置96をATU一体式始動機−発電機56の特定の場所に接続することによってエンジンを起動することができる。3相のモータ−始動機制御装置96が、3相の電源66に接続されることで、ATU一体式始動機−発電機56を3相の始動機として駆動させてエンジンを始動する。
【0020】
第1および第2の電気バス86、94は、DC電源を必要とする1つまたは負荷(図示せず)にDC電力を供給するように構成されている。第1および第2の電気バス86、94が選択的に接続されることで、HPスプール26とLPスプール28によって負荷を共有することができる。
【0021】
作動中、ガスタービンエンジン10が始動すると、HPT22がHPスプール26を回転させ、LPT24がLPスプールを回転させる。回転するHPスプール26によって付属のギアボックス64が駆動され、HPスプール26からATU一体式始動機−発電機56に機械的動力を伝える。ATU一体式始動機−発電機56は、HPスプール26によって供給された機械的動力を電力に変換し、DC電力出力80を生成する。回転するLPスプール28によってCSD74が駆動され、LPスプール28からの機械的動力をATU一体式発電機58に伝える。ATU一体式発電機58は、LPスプール28によって供給された機械的動力を電力に変換し、DC電力出力88を生成する。電力出力80、88はそれぞれ、DC電源を必要とする1つまたは複数の負荷(図示せず)にDC電力を供給するように構成された電気バス86、94に供給される。電力を消費する負荷のタイプによって、システム構造40によって抽出されるDC電力は、負荷に使用される前に別の処理を受ける場合もある。APU44およびEPS48のDC電力出力50、52もまた、電気バス86、94に供給することができる。
【0022】
左側のエンジンシステム42および右側エンジンシステム44、APU46およびEPS48は、必要に応じて航空機の様々な負荷にDC電力を供給することができる。左側のエンジンシステム42、右側エンジンシステム44、APU46およびEPS48の多様なDC出力は、適切なスイッチによって統合され、無瞬断切換(NBPT)を航空機に提供する。
【0023】
図3は、図2の電力システム構造40で使用するATU一体式始動機−発電機56と、第1のAC−DC電力変換器の電気回路図である。第1および第2のATU一体式発電機56、58と、AC−DC電力変換器は、HPスプール26およびLPスプール28の両方に関してほぼ同一であるため、簡潔にするために左側のエンジンシステム42のHP側のみを簡潔のため図3で詳細に記載する。
【0024】
ATU一体式始動機−発電機56は、3つのメインまたは一次巻線98aから98cと、9つの二次巻線100aから100iを備えたステータを有することができる。メイン巻線98aから98cはそれぞれ、共通の中点102に接続された中立末端と、3相出力電源66の1相出力106aから106cに接続されたタップ104aから104cを有する。各相出力106aから106cは、導線またはリードワイヤを介して3相のモータ−始動機制御装置96(図2)に供給される。二次巻線100aから100iは、関連する3つの組で、メイン巻線98aから98cにあるタップ104aから104cの1つに接続され、9相電力出力68を生成するように構成されている。例示の実施形態において、一次巻線98aから98cは、Y字状回路構成で配置されており、一体式ATUの全体の構成は星型結線構成である。あるいは一次巻線98aから98cは、デルタ結線構成であり、一体式ATUの全体の構成はデルタまたは拡張デルタ結線構成の場合もある。
【0025】
9相電力出力68は、導線108aから108iによって整流器デバイス82に送られる。導線108aから108iはリードワイヤであってよい。整流器デバイス82は、発電機56と一体式にされ、あるいはパッケージにされる、あるいは発電機56から切り離して設けることもできる。整流器デバイス82は、複数のダイオードを含む3つの整流器ブリッジを含むことができる。ダイオードの数は、ATU一体式始動機−発電機56の所望のパルス数に匹敵する。本明細書に示されるように、18個のダイオードがあるため、パルス数は18である。他の数のダイオード、例えば12、18、24または他の6の倍数などを使用することもできる。1つの好適なタイプのダイオードは、その高温性能により、炭化珪素(SiC)から作製される。ダイオード以外の整流器デバイスが使用される場合もある。
【0026】
例示のATU一体式始動機−発電機56はパルス数が18であるように示されているが、上記に述べたように始動機−発電機56は、他のパルス数になるように構成される場合もある。例えば3つの二次巻線の代わりに2つの二次巻線100を設けることにより、パルス数が12の発電機を設けることができる。別の例では、3つの二次巻線を設ける代わりに4つの二次巻線100を設けることにより、パルス数が24の発電機を設けることができる。
【0027】
例示のように、導線108a、108eおよび108iは、6つのダイオード112を有する第1の整流器ブリッジ110に接続され、導線108c、108dおよび108hは、6つのダイオード116を有する第2の整流器ブリッジ114に接続され、導線108b、108fおよび108gは、6つのダイオード120を有する第3整流器ブリッジ118に接続される。
【0028】
導線108a、108eおよび108iにおいて利用できる3相は、ダイオード112を有する第1の整流器ブリッジ110によって整流され、2つの第1の出力122aと122b間に第1のDC電圧を出力する。導線108c、108dおよび108hにおいて利用できる3相は、ダイオード116を有する第2の整流器ブリッジ114によって並行して整流され、2つの第2の出力124aと124b間に第2のDC電圧を出力する。導線108b、108fおよび108gにおいて利用できる3相も、ダイオード120を有する第3整流器ブリッジ118によって並行して整流され、2つの第3出力126aと126b間に第3DC電圧を出力する
各々の整流器ブリッジ110、114、118からの一方の出力122a、124aおよび126aは、第1の相間変圧器128に結合され、この変圧器が、出力122a、124aおよび126a間の瞬間的な電圧差を吸収する。各々の整流器ブリッジ110、114、118からの他方の出力122b、124bおよび126bは、第2の相間変圧器130に結合され、この変圧器が、出力122b、124bおよび126b間の瞬間的な電圧差を吸収する。第1の相間変圧器128および第2の相間変圧器130のコイルの接合点が、第1の出力132と、第2の出力134をそれぞれ形成し、これらの出力は、フィルタ84に接続される。
【0029】
図4は、図3によるATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線の電気回路図である。上記で考察したように各々のメイン巻線98aから98cは、共通の中点102からタップ104aから104cの1つに延びている。第1のメイン巻線98aにある二次巻線100aから100cはそれぞれ、タップ104aから端子A1、A2、A3まで延びている。第2のメイン巻線98bにある二次巻線100dから100fはそれぞれ、タップ104bから端子B1、B2、B3まで延びている。第3メイン巻線98cにある二次巻線100gから100iはそれぞれ、タップ104cから端子C1、C2、C3まで延びている。
【0030】
図5は、図4のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線の巻線ベクトル図である。この巻線ベクトル図を利用して、ATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線を設計することができる。ステータ巻線は、本明細書ではパルス数が18であるように示されているが、例えば12、18、24などの他の6の倍数のパルス数を有するように構成することもできる。
【0031】
ここから分かるように、ベクトル図は、起点である共通点Oから発する9つのメインベクトルA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3を含んでおり、この起点は、図4のステータ巻線の中点102に相当する。メインベクトルA1〜C3は、導線108aから108iによって図3の整流器デバイス82に送られる各相出力を表している。メインベクトルA1〜C3の大きさまたは長さVは、生成されるAC電圧を表しており、各々のメインベクトルA1〜C3の方向または配向は、生成されたAC電圧の0−360°の相を表している。本明細書に示されるように、メインベクトルA1〜C3は、同一の長さVであるが、角度αだけ相が異なる場合がある。メインベクトルA1〜C3がグループ分けされることで、メインベクトルA1、B1、C1は、1つの3相出力を表しており、メインベクトルA2、B2、C2は、別の3相出力を表し、メインベクトルA3、B3、C3は、他の3相出力を表している。
【0032】
メインベクトルA1、B1およびC1がそれぞれ、地点P(これは図4のタップ104a〜104cに相当する)から発する2つのサブベクトルX1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2を含むことで、他のメインベクトルA2、A3、B2、B3、C2、C3の1つと合流する。起点である共通点Oと地点P間の距離は、長さL1として表されている。地点PからメインベクトルA1までの距離は、長さL2として表されている。したがって、メインベクトルA1、よって他のメインベクトルA2、A3、B2、B3、C2、C3の長さVは、以下の関係式によって得られる。
【0033】
【数1】

サブベクトルX2は、メインベクトルA1からメインベクトルA3まで一定の角度θ1で延びており、長さL3である。図5には示されていないが、他のサブベクトルX2、Y1、Y2、Z1、Z2もやはり長さL3であり、関連するメインベクトルからθ1に匹敵する一定の角度で伸びている。メインベクトルA1およびA3の末端は、距離dだけ隔てられており、長さL2およびL3と一緒に内角θ1、θ2およびθ3を画定する頂点を有する三角形を形成する。長さL1〜L3と、角度θ1およびαは、図3のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線を設計するように選択することができる。
【0034】
角度α、θ1、θ2およびθ3は、パルス数Nに左右され、その関係は以下の数式によって得られる。
【0035】
【数2】

【0036】
【数3】

【0037】
【数4】

この例では、N=18で、θ1=60°と仮定することができる。したがって角度α=20°で、角度θ3=80°で角度θ2=40°である。θ1の代わりに、θ2またはθ3が付与される場合もあることを理解されたい。
【0038】
長さL2、L3、dと、角度θ1、θ2およびθ3の関係は、正弦法則より知られている。
【0039】
【数5】

メインベクトルA1の末端からメインベクトルA3の末端の距離dは、以下の関係式によって得られる。
【0040】
【数6】

正弦法則を使用して、長さL2およびL3が以下の関係式によって得られる。
【0041】
【数7】

【0042】
【数8】

電圧Vと長さL1、L2の関係を使用して、長さL1を以下の関係式を使用して求めることができる。
【0043】
【数9】

したがって所望のパルス数N、所望の電圧Vおよび少なくとも1つの他の変数を知ることによって、図3のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のメインステータ巻線を設計することができる。この場合、他の所与の変数はθ1である。しかしながら別の変数、例えば異なる角度、または長さが代わりに付与される場合もあることを理解されよう。
【0044】
図6は、本発明の第2の実施形態による電力システム構造140の概略ブロック図である。システム構造140は、図2に示されるシステム構造40とほぼ同様であり得るため、同様の要素は、同一参照番号を使用して示されている。図6に示されるシステム構造140と、図2に示されるシステム構造40の1つの相違点は、両方のATU一体式発電機56、58に関して、ATU部分62、72が、3つの巻線を加える代わりに2つの二次巻線を加えることによって、電源66、76の3相出力を9相の電力出力142、144に変換するように機能することである。
【0045】
図7は、図6の電力システム構造140で使用するATU一体式始動機−発電機56と、第1のAC−DC電力変換器の電気回路図である。第1および第2のATU一体式発電機56、58と、AC−DC電力変換器は、HPスプール26およびLPスプール28の両方に関してほぼ同一であり得るため、簡潔にするために左側のエンジンシステム42のHP側のみを簡潔のため図7で詳細に記載する。
【0046】
ATU一体式始動機−発電機56は、関連する2つの組において、メイン巻線98aから98cにあるタップ104aから104cの1つに接続された6つの二次巻線146aから146fを有することができる。例示の実施形態において、一次巻線98aから98cは、Y字状回路構成で配置されており、一体式ATUの全体の構成はフォーク型結線構成である。あるいは一次巻線98aから98cは、デルタ結線構成で配置される場合もある。
【0047】
9相電力出力142は、導線148aから148fおよび150aから150cによって整流器デバイス82に送られる。導線148a、148cおよび148eは、第2の整流器ブリッジ114に接続され、導管148b、149d、148fは、第3整流器ブリッジ118に接続されている。導管150aから150cは、一次巻線98aから98cから延びており、第1の整流器ブリッジ110に接続されている。導管148aから148fおよび150aから150cはリードワイヤであってよい。残りの電力の整流およびフィルタリングは、図3に関して上記に記載したものと同様である。
【0048】
例示のATU一体式始動機−発電機56は、パルス数が18であるように示されているが、始動機−発電機56は、他のパルス数になるように構成される場合もある。例えば2つの二次巻線の代わりに1つの二次巻線146を設けることにより、パルス数が12の発電機を設けることができる。別の例では、2つの二次巻線を設ける代わりに3つの二次巻線146を設けることにより、パルス数が24の発電機を設けることができる。
【0049】
図8は、図7によるATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線の電気回路図である。上記に考察したように、各々のメイン巻線98aから98cは、共通の中点102からタップ104aから104cまでの1つに延びている。第1のメイン巻線98aにある二次巻線146aおよび146bは、端子A1としても示されるタップ104aから端子A2およびA3までそれぞれ延びている。第2のメイン巻線98bにある二次巻線146cおよび146dは、端子B1として示されるタップ104bから端子B2およびB3までそれぞれ延びている。第3メイン巻線98cにある二次巻線146eおよび146fは、端子C1としても示されるタップ104cから端子C2およびC3までそれぞれ延びている。
【0050】
図9は、図8のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線の巻線ベクトル図である。この巻線ベクトル図を利用して、ATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線を設計することができる。ステータ巻線は、本明細書ではパルス数が18であるように示されているが、例えば12、18、24などの他の6の倍数のパルス数を有するように構成することもできる。
【0051】
ここから分かるように、ベルトル図は、起点である共通点Oから発する9つのメインベクトルA1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3を含んでおり、この起点は、図8のステータ巻線の中点102に相当する。メインベクトルA1〜C3は、導線148a〜fおよび150a〜cによって図7の整流器デバイス82に送られる各相出力を表している。メインベクトルA1〜C3の大きさまたは長さVは、生成されるAC電圧を表しており、各々のメインベクトルA1〜C3の方向または配向は、生成されたAC電圧の0−360°の相を表している。本明細書に示されるように、メインベクトルA1〜C3は、同一の長さVであるが、角度αだけ相が異なる場合がある。
【0052】
メインベクトルA1、B1およびC1がそれぞれ、地点E(これは図8のタップ104a〜104cに相当する)から発する2つのサブベクトルX1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2を含むことで、他のメインベクトルA2、A3、B2、B3、C2、C3の1つと合流する。起点である共通点Oと地点E間の距離は、長さL1として表されている。したがって、メインベクトルA1、よって他の全てのメインベクトルA2、A3、B2、B3、C2、C3は、以下の関係式によって得られる。
【0053】
【数10】

サブベクトルX2は、メインベクトルA1からメインベクトルA3まで一定の角度θで延びており、長さはL2である。図9には示されていないが、他のサブベクトルX2、Y1、Y2、Z1、Z2もやはり長さL2であり、関連するメインベクトルからθに匹敵する一定の角度で延びている。長さL1およびL2と、角度θおよびαは、図7のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のステータ巻線を設計するように選択することができる。
【0054】
角度θ1およびαは、パルス数Nに左右され、その関係は以下の数式によって得られる。
【0055】
【数11】

【0056】
【数12】

この例では、N=18であると仮定することができる。したがって角度α=20°で、角度θ=80°である。
【0057】
末端地点EからメインベクトルA3の末端までの長さL2は、以下の関係式から得られる。
【0058】
【数13】

したがって所望のパルス数N、所望の電圧Vを知ることによって、図3のATU一体式始動機−発電機56のATU部分62のメインステータ巻線を設計することができる。
【0059】
図10は、本発明の第3の実施形態による電力システム構造160の概略ブロック図である。システム構造160は、図2に示されるシステム構造40とほぼ同様であり得るため、同様の要素は、同一参照番号を使用して示されている。図10に示されるシステム構造160と、図2に示されるシステム構造40の1つの相違点は、ATU部分62が、9相電力出力68の他にACバス164に供給されるAC電力出力162を含むことである。
【0060】
図11は、図10の電力システム構造160で使用するATU一体式始動機−発電機56と第1のAC−DC電力変換器の電気回路図である。ATU一体式始動機−発電機56は、図3に示される第1の実施形態のATU一体式始動機−発電機56とほぼ同様であり得るが、例外は、メイン巻線98aから98cに追加の二次巻線166aから166cが設けられていることである。追加の二次巻線166aから166cは、3相出力電源66の1相出力106aから106cに接続されたタップ104aから104cの1つによって接続することができる。各相出力106aから106cは、3相モータ−始動機制御装置96(図10)に供給される。AC電力出力162は、整流器デバイス82によってDCに変換されずに、導線168aから168cによって巻線166aから166cからACバス164(図10)に送られる。導線168aから168cはリードワイヤであってよい。DC電力の残りの整流およびフィルタリングは、図3に関して上記に記載したものと同様である。
【0061】
本明細書に開示されるシステム構造は、航空機用の一体式ATU発電機を提供する。記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができる1つの利点は、従来のパルス数の大きなATUをなくすことができ、それと等価なものが少なくとも1つの発電機に組み込まれ、この発電機が、整流器デバイスに接続されることで、高調波成分の少ないDC出力を生成する点である。このような構成は、エンジンの重量を有意に削減し、エンジン構成要素の冷却を簡素化することができる。一体式ATU発電機を設けることで、航空機における別個のATUに必要な空間をなくすこともできる。
【0062】
記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができる別の利点は、ATU一体式始動機−発電機56が3相モータ−始動機制御装置96の利用を脅かすことがない点であり、これはモータ−始動機制御装置96が、ATU一体式始動機−発電機56のATU部分62において3相電源66が9相電力出力に変換されないうちに、3相電源66に接続されるためである。
【0063】
記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができる別の利点は、ガスタービンエンジン10の両方のスプール26、28からDC電力を抽出することができる点である。またHPスプール26およびLPスプール28から引き出した電力を絶え間なく制御することによって、ガスタービンエンジン10の作業効率も上がる。HPスプール26およびLPスプール28から引き出されたDC電力に加えて、APU46およびEPS48からのDC出力50、52を統合して無瞬断切換(NBPT)を実現することもできる。
【0064】
記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができる別の利点は、このシステム構造が、一定レベルの余剰のDC電力生成を提供する点であり、これはDC電力を、ガスタービンエンジン10のLPスプール28ならびにHPスプール26から引き出すことができるためである。2つのスプール26、28から電力を引き出すことにより、DC電力の余剰量を上げることになり、そのためスプール26、28の片方あるいは発電機42、44の片方が故障した場合でも、DC電力は、残りの作動するスプール26、28および発電機42、44から変わらず抽出される。
【0065】
記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができるさらに別の利点は、エンスト問題を避けることであり、この問題は典型的には、HPスプール26とLPスプール28の間でDC負荷を共有することにより航空機の下降モードにおいて遭遇する。LPスプールならびにHPスプールから電力を引き出すことができることにより、航空機が下降する際に、エンストのリスクが生じることなく、より低い毎分回転数で飛行することが可能になり、これにより航空機の燃料効率を維持することができる。
【0066】
記載されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実践する際に達成することができるさらに別の利点は、ACおよびDC電力の両方をガスタービンエンジン10から抽出することができる点である。本明細書に記載される本発明の第3の実施形態はとりわけ、両方のタイプの電力に対してエアフレーマーアクセス権を与えるシステム構造を提供しており、これによりエアフレーマーは、航空機における特定の用途のためにいずれかのタイプの電力を選択することができる
この書面による記述は、最適な態様を含めたいくつかの例を利用して本発明を開示し、また当業者が本発明を実施することができるようにしており、これには、いずれかのデバイスまたはシステムを作成する、および使用する、ならびに任意の採用された方法を実施することが含まれる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者が思い付く他の例を含むことができる。このような他の例は、それらが、特許請求の範囲の文字通りの言い回しと差異のない構造上の要素を有する場合、あるいは他の例が、特許請求の範囲の文字通りの言い回しとわずかに差異のある等価な構造上の要素を含んでいる場合、特許請求の範囲の範囲内にあることを意味する。
【符号の説明】
【0067】
10 ガスタービンエンジン
12 ファン部分
14 ファン
16 LPC
18 HPC
20 内燃部分
22 HPT
24 LPT
26 HPスプール
28 LPスプール
30 HPTロータ
32 ブレード
34 ブレードプラットフォーム
36 ブレード先端
40 電力システム構造
42 左側のエンジンシステム
44 右側のエンジンシステム
46 補助動力装置(APU)
48 外部電源(EPS)
50 DC出力(APU)
52 DC出力(EPS)
54 APU始動機−発電機
56 ATU一体式始動機−発電機(HP)
58 ATU一体式発電機(LP)
60 電力生成部分
62 ATU部分
64 付属のギアボックス
66 3相出力電源
68 9相電力出力
70 電力生成部分
72 ATU部分
74 一定速度の駆動装置(CSD)
76 3相出力電源
78 9相電力出力
80 DC電力出力
82 第1の整流デバイス
84 第1のフィルタ
86 第1の電気バス
88 DC電力出力
90 第2の整流デバイス
92 第2のフィルタ
94 第2の電気バス
96 モータ−始動機制御装置
98a〜98c 一次巻線
100a〜100i 二次巻線
102 中点
104a〜104c タップ
106a〜106c 相出力
108a〜108i 導線
110 第1の整流ブリッジ
112 第1のダイオード
114 第2の整流ブリッジ
116 第2のダイオード
118 第3の整流ブリッジ
120 第3のダイオード
122a〜122b 第1の出力
124a〜124b 第2の出力
126a〜126b 第3の出力
128 第1の相間変圧器
130 第2の相間変圧器
132 第1の出力
134 第2の出力
140 システム構造
142 電力出力
144 電力出力
146a〜146f 二次巻線
148a〜148f 導線
150a〜150c 導線
160 システム構造
162 AC電力出力
164 ACバス
166a〜166c 二次巻線
168a〜168c 導線
A1〜A3 メインベクトル
X1〜Z2 サブベクトル
O 起点
P 地点
L1 長さ
L2 長さ
L3 長さ
d 距離
α 角度
θ1 角度
θ2 角度
θ3 角度
E 末端地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つのメイン巻線を有するステータと、
前記3つのメイン巻線のそれぞれに接続されて一体式単巻変圧器ユニットを形成する少なくとも2つの二次巻線と、
前記3つのメイン巻線に接続された第1の組の導体と、
前記少なくとも2つの二次巻線のそれぞれに接続された第2の組の導体と
を備える発電機。
【請求項2】
前記少なくとも2つの二次巻線が、3つの二次巻線を備える、請求項1記載の発電機。
【請求項3】
前記3つの二次巻線が互いにデルタ結線構成で接続される、請求項2記載の発電機。
【請求項4】
前記3つのメイン巻線が互いにY字状回路構成で接続される、請求項1記載の発電機。
【請求項5】
前記3つのメイン巻線が互いにデルタ結線構成で接続される、請求項1記載の発電機。
【請求項6】
前記一体式単巻変圧器ユニットが、6の倍数のパルスを伝えるように構成される、請求項1記載の発電機。
【請求項7】
前記一体式単巻変圧器ユニットが、12、18および24のパルス数のうちの1つを有する、請求項1記載の発電機。
【請求項8】
前記第1の組の導体にそれぞれ接続された第3の組の導体をさらに備える、請求項1記載の発電機。
【請求項9】
前記3つのメイン巻線のそれぞれに接続され、バスにAC電力を送るように構成された1つの追加の巻線をさらに備える、請求項1記載の発電機。
【請求項10】
請求項1の発電機を備えるガスタービンエンジン。
【請求項11】
前記発電機が、前記ガスタービンエンジンのスプールに作動可能に結合されたロータをさらに備える、請求項10記載のガスタービンエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−85458(P2013−85458A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−220938(P2012−220938)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】