説明

登録装置、照合装置、認証方法及び認証プログラム

【課題】認証精度を向上させ得る登録装置、照合装置、認証方法及び認証プログラムを提案する。
【解決手段】所定の生体部位における生体識別対象として与えられた撮像対象が撮像された結果得られる画像信号に対して所定の処理を施して、当該画像信号における撮像対象の特徴部分を抽出し、特徴抽出手段により抽出された特徴部分をハフ変換して、当該ハフ変換により得られるパラメータ点から所定の抽出条件により複数の特徴パラメータ点を抽出すると共に、複数の特徴パラメータ点の角度成分に応じて、当該複数の特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべきか否かを判別するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、登録装置、照合装置、認証方法及び認証プログラムに関し、バイオメトリクス認証する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオメトリクス認証対象の1つとして血管がある。この血管をバイオメトリクス認証対象とする認証装置としては、指の撮像結果として得られる画像データに所定の処理をして2値化した後にハフ(Hough)変換するようになされたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この認証装置では、画像内の血管が直線性の高いことに着目し、当該画像内の血管をその直線としての長さに応じて抽出し得るハフ変換を採用することによって、認証精度を向上することができる。
【特許文献1】特開2005−115615公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがかかる認証装置では、指の代わりに大根等の根菜を適用したときに、根菜の内部に張り巡らされている道管、師管及び維管束等(以下、これを根内管と呼ぶ)が生体内の血管と似ていることに起因して、かかる根内管をバイオメトリクス認証対象として誤認識してしまい、その結果得られる不適切なパラメータを登録データとして又は登録データと照合すべきデータとして処理してしまうことが報告されている(松本 勉、“金融取引における生体認証について”、[online]、2005年4月15日、金融庁・第9回偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ、[2006年8月21日検索]、インターネット<URL:http://www.fsa.go.jp/singi/singi_fccsg/gaiyou/f-20050415-singi_fccsg/02.pdf>)。すなわち、かかる認証装置では、生体内の血管を模したパターンが得られる撮像対象(根菜、グミ、血管画像印刷物、人間の指の模型、等)を擬似指として適用されると、誤認識してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、認証精度を向上させ得る登録装置、照合装置、認証方法及び認証プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、登録装置であって、入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換するハフ変換手段と、ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する登録手段とを設けるようにした。
【0007】
従って、この登録装置では、ハフ変換の結果として得られるパラメータの角度成分が、規定された角度範囲に含まれているか否かに応じて、ハフ変換結果を生体情報として登録するか否かを判別できる。このため、指の血管に比して、血行方向に対して高角度の根内管が張り巡らされている根菜等の擬似指に応じた画像信号が入力された場合、この登録装置では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録するといったことが防止される。一方、生体部位としての指に応じた画像信号が入力された場合、この登録装置では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録する。かくして、この登録装置では、認証精度を向上させることが可能となる。
【0008】
また本発明は、照合装置であって、入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換するハフ変換手段と、ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、ハフ変換結果を、予め登録されている生体識別情報と照合する照合手段とを設けるようにした。
【0009】
従って、この照合装置では、ハフ変換の結果として得られるパラメータの角度成分が、規定された角度範囲に含まれているか否かに応じて、かかるハフ変換結果を、予め登録されている生体識別情報と照合するか否かを判別できる。このため、指の血管に比して、血行方向に対して高角度の根内管が張り巡らされている根菜等の擬似指に応じた画像信号が入力された場合、この照合装置では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、予め登録されている生体識別情報と照合するといったことが防止される。一方、生体部位としての指に応じた画像信号が入力された場合、この照合装置では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、予め登録されている生体識別情報と照合する。かくして、この照合装置では、認証精度を向上させることが可能となる。
【0010】
さらに本発明は、認証方法であって、入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する第1のステップと、輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換する第2のステップと、ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている生体識別情報と照合する第3のステップとを設けるようにした。
【0011】
従って、この認証方法では、ハフ変換の結果として得られるパラメータの角度成分が、規定された角度範囲に含まれているか否かに応じて、ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている生体識別情報と照合するか否かを判別できる。このため、指の血管に比して、血行方向に対して高角度の根内管が張り巡らされている根菜等の擬似指に応じた画像信号が入力された場合、この認証方法では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことが防止される。一方、生体部位としての指に応じた画像信号が入力された場合、この認証方法では、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合する。かくして、この認証方法では、認証精度を向上させることが可能となる。
【0012】
さらに本発明は、認証プログラムであって、入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出することと、輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換することと、ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている生体識別情報と照合することとを実行させるようにした。
【0013】
従って、この認証プログラムでは、ハフ変換の結果として得られるパラメータの角度成分が、規定された角度範囲に含まれているか否かに応じて、ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている生体識別情報と照合するか否かを判別できる。このため、指の血管に比して、血行方向に対して高角度の根内管が張り巡らされている根菜等の擬似指に応じた画像信号が入力された場合、この認証プログラムでは、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことが防止される。一方、生体部位としての指に応じた画像信号が入力された場合、この認証プログラムでは、その画像信号から得られるハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合する。かくして、この認証プログラムでは、認証精度を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、複数の特徴パラメータ点を抽出したときに、その特徴パラメータ点の角度成分に応じて、かかる複数の特徴パラメータ点を登録対象とするか否かを判別するようにしたことにより、認証精度を向上させ得る登録装置、照合装置、認証方法及び認証プログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面について、本発明を適用した一実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態による認証装置の全体構成
図1において、第1の実施の形態による認証装置1の全体構成を示す。この認証装置1は、制御部10に対して、操作部11、血管撮像部12、フラッシュメモリ13、外部とデータを授受するインターフェース(以下、これを外部インターフェースと呼ぶ)14及び通知部15をそれぞれバス16を介して接続することにより構成される。
【0017】
制御部10は、認証装置1全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム及び設定情報が格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを含むマイクロコンピュータでなっている。
【0018】
この制御部10には、登録対象のユーザ(以下、これを登録者と呼ぶ)の血管を登録するモード(以下、これを血管登録モードと呼ぶ)の実行命令COM1又は登録者本人の有無を判定するモード(以下、これを認証モードと呼ぶ)の実行命令COM2が、ユーザ操作に応じて操作部11から与えられる。
【0019】
制御部10は、かかる実行命令COM1、COM2に基づいて実行すべきモードを決定し、この決定結果に対応するプログラムに基づいて、血管撮像部12、フラッシュメモリ13、外部インターフェース14及び通知部15を適宜制御することによって、血管登録モード又は認証モードを実行するようになされている。
【0020】
(1−2)血管登録モード
具体的に制御部10は、実行すべきモードとして血管登録モードを決定した場合、動作モードを血管登録モードに遷移し、血管撮像部12を制御する。
【0021】
この場合、血管撮像部12の駆動制御部12aは、この認証装置1における所定位置に配された指に対して近赤外光を照射する1又は2以上の近赤外光光源LSと、撮像カメラCMにおける例えばCCD(Charge Coupled Device)でなる撮像素子IDとを駆動制御する。
【0022】
この結果、血管撮像部12では、指に照射された近赤外光は、当該指の内方を反射及び散乱するようにして経由し、指の血管を投影する光(以下、これを血管投影光と呼ぶ)として、光学系OPや絞りDHを介して撮像素子IDに入射する。撮像素子IDは、この血管投影光を光電変換し、当該光電変換結果を画像信号S1として駆動制御部12aに出力する。
【0023】
ちなみに、指に照射される近赤外光は、実際には、当該指の表面で反射して撮像素子IDに入射するものもあるため、この撮像素子IDから出力される画像信号S1の画像は、指内方の血管だけではなく、指輪郭や指紋も含まれた状態となる。
【0024】
駆動制御部12aは、この画像の画素値に基づいて、指内方の血管に焦点が合うように光学系OPにおける光学レンズのレンズ位置を調整するとともに、撮像素子IDに入射する入射光量が適応量となるように絞りDHにおける絞り値を調整し、当該調整後に撮像素子IDから出力される画像信号S2を制御部10に供給する。
【0025】
制御部10は、この画像信号S2に対して所定の画像処理を施すことによって、当該画像における血管の特徴を抽出し、当該抽出した血管の特徴を、登録者を識別するための情報(以下、これを登録者識別データと呼ぶ)D1としてフラッシュメモリ13に記憶することにより登録する。
【0026】
このようにしてこの制御部10は、血管登録モードを実行することができるようになされている。
【0027】
(1−3)認証モード
一方、制御部10は、実行すべきモードとして認証モードを決定した場合には、認証モードに遷移し、上述の血管登録モードの場合と同様にして血管撮像部12を制御する。
【0028】
この場合、血管撮像部12は、近赤外光光源LS及び撮像素子IDを駆動制御するとともに、当該撮像素子IDから出力される画像信号S10に基づいて光学系OPにおける光学レンズのレンズ位置及び絞りDHの絞り値を調整し、当該調整後に撮像素子IDから出力される画像信号S20を制御部10に供給する。
【0029】
制御部10は、この画像信号S20に対して、上述の血管登録モードの場合と同一の画像処理を施すとともに、フラッシュメモリ13に登録された登録者識別データD1を読み出す。そして制御部10は、この画像処理により抽出された血管の特徴と、フラッシュメモリ13から読み出した登録者識別データD1の血管の特徴とに基づいて照合処理を実行し、当該照合の程度に応じて、このとき指を配したユーザが登録者(正規ユーザ)であるか否かを判定する。
【0030】
ここで、制御部10は、登録者であると判定したときには、外部インターフェース14に接続された動作処理装置(図示せず)に対して所定の動作を行わせる実行命令COM3を生成し、これを外部インターフェース14を介して動作処理装置に転送する。
【0031】
この外部インターフェース14に接続された動作処理装置の実施態様として、例えば閉錠状態にあるドアを採用した場合、制御部10は、開錠動作を行わせる実行命令COM3をドアに転送する。また他の動作処理装置の実施態様例として、複数の動作モードのうち一部の動作モードを制限した状態にあるコンピュータを採用した場合、制御部10は、その制限された動作モードを開放させる実行命令COM3をコンピュータに転送する。
【0032】
なお、実施態様として2つ例を挙げたが、これらに限らず、他の実施態様も適宜選択することができる。また、第1の実施の形態では、動作処理装置を外部インターフェース14に接続するようにしたが、当該動作処理装置におけるソフトウェア乃至ハードウェアの構成をこの認証装置1に搭載するようにしてもよい。
【0033】
これに対して、制御部10は、登録者ではないと判定したときには、その旨を通知部15の表示部15aを介して表示するとともに、当該通知部15の音声出力部15bを介して音声出力することによって、当該登録者ではないと判定されたことを視覚的及び聴覚的に通知する。
【0034】
このようにしてこの制御部10は、認証モードを実行することができるようになされている。
【0035】
(1−4)画像処理の具体的な処理内容
次に、制御部10における画像処理の処理内容について説明する。この画像処理は、機能的には、図2に示すように、前処理部21、ハフ(Hough)変換部22、パラメータ抽出部23及び角度検出部24にそれぞれ分けることができる。以下、これら前処理部21、ハフ変換部22、パラメータ抽出部23及び角度検出部24について詳細に説明する。
【0036】
前処理部21は、血管撮像部12から供給される画像信号S2又はS20に対し、A/D(Analog/Digital)変換処理、ソーベルフィルタ処理等の所定の輪郭抽出処理、ガウシアンフィルタ処理等の所定の平滑化処理、2値化処理及び細線化処理を順次施して、画像信号S2又はS20に含まれるオブジェクトの特徴としての輪郭を抽出する。そして前処理部21は、この結果得られる画像データD21をハフ変換部22に送出する。
【0037】
ちなみに、血管撮像部12から供給される画像信号S2又はS20が、例えば生体部位としての「指」を撮像した結果得られた図3(A)に示すような画像であった場合、前処理部21がハフ変換部22に送出する画像データD21は、指の血管の輪郭を抽出した図4(A)のようなデータになる。一方、血管撮像部12から供給される画像信号S2又はS20が、例えば生体部位ではない「根菜(大根)」等の擬似指を撮像した結果得られた図3(B)に示すような画像であった場合、前処理部21がハフ変換部22に送出する画像データD21は、大根の根内管の輪郭を抽出した図4(B)のようなデータになる。
【0038】
ハフ変換部22は、画像データD21に対してハフ変換処理を施す。ここで、ハフ変換について、簡単に説明する。
【0039】
図5に示すように、x−y平面における直線lは、当該直線lに対する垂線のうち、基準位置としての原点を通る垂線をnとしたとき、基準方向としてのx軸と垂線nとのなす角度をθとし(基準方向をy軸として、y軸と直線lとのなす角度をθとしても同義)、原点から直線l及び垂線nの交点までの距離を|ρ|とすると、「(ρ,θ)」と表すことができる。
【0040】
ここで、このx−y平面に対するハフ変換は、次式
【0041】
ρ=xcosθ+ysinθ ……(1)
【0042】
と定義される。
【0043】
このハフ変換では、図5に示したx−y平面における直線l上の点P1(x,y)、点P2(x,y)及び点P3(x,y)が、図6に示すように、距離成分と角度成分とでなる仮想上のρ−θ平面における曲線C1(xcosθ+ysinθ)、C2(xcosθ+ysinθ)、C3(xcosθ+ysinθ)としてそれぞれ表される。
【0044】
このρ−θ平面上において、曲線C1、C2、C3は、交点Px(ρ,θ)で交わるが、当該交点Pxは、ハフ変換前のもとのx−y平面における直線lに相当する。すなわち、ハフ変換をすることで、x−y平面上の直線lが、その距離|ρ|及び角度θ毎に、ρ−θ平面上の点に変換される。
【0045】
また、このハフ変換では、x−y平面における直線l上にとり得る点(P1、P2、P3、・・・Pn・・・)が多い程、ρ−θ平面上にハフ変換される曲線(C1、C2、C3、・・・Cn・・・)が増え、その結果、交点Px(図6)で交わる曲線も増える関係にある。従って、x−y平面における直線lが長い程、当該直線上にとり得る点の数が増えることに起因して、ρ−θ平面上の直線lに対応する点に重なる曲線(C1、C2、C3、・・・Cn・・・)の数が増えることを示している。
【0046】
つまり、ρ−θ平面上にハフ変換された点は、ハフ変換前のx−y平面上での直線lの長さに応じて定量化されるということになる。
【0047】
ちなみに、x−y平面における直線lの長さとは、単純に線分としての長さを示すだけでなく、1本の直線上にとり得る点の合計長のことを指し示すものである。したがって、破線(点線)や、線の一部が欠損している複数の線分の場合には、その合計長となる。
【0048】
このようにハフ変換では、x−y平面上の直線lを、その「距離」、「角度」及び「長さ」という3つのパラメータで表現されるρ−θ平面上の点(以下、これをパラメータ点と呼ぶ)に変換するようになされている。そして、このハフ変換では、抽出条件の可変により、ハフ変換前のもとのx−y平面における所定長さ以上の直線成分を検出することが可能となる。
【0049】
さらに、このハフ変換では、x−y平面上の直線lを、その距離|ρ|及び角度θ毎にρ−θ平面上のパラメータ点に変換するようになされていることにより、ハフ変換される前の直線成分がx−y平面上で原点からどれだけの距離にどのような角度で存在したかを検出できる。
【0050】
具体例を図7により説明する。この図7では、サンプル画像IM1(図7(A))に対してハフ変換した画像IM4(図7(D))と、当該サンプル画像IM1を所定角度だけ回転移動させた画像IM2(図7(B))に対してハフ変換した画像IM5(図7(E))と、当該サンプル画像IM2を所定量だけ平行移動させた画像IM3(図7(C)に対してハフ変換した画像IM6(図7(F))とが示されている。
【0051】
この図7からも明らかなように、x−y平面上でのサンプル画像IM1を回転移動(図7(B))させた場合、ρ−θ平面上では、画像IM4をθ軸に沿って平行移動した状態となる(図7(E))。これに加え、x−y平面上でのサンプル画像IM2を平行移動(図7(C))させた場合、ρ−θ平面上では、画像IM4をρ軸に沿って平行移動した状態となる(図7(F))。したがってハフ変換では、ρ−θ平面での画像間の平行移動量の検出だけで、ハフ変換前のx−y平面で基の画像間の回転移動量及び平行移動量のいずれをも検出することが可能となる。
【0052】
以上のようにハフ変換では、x−y平面上の所定長さ以上の直線成分を、x−y平面上での画像間の回転移動量及び平行移動量のいずれをも考慮して検出し得る特性がある。
【0053】
ハフ変換部22は、このようなハフ変換処理の結果として得たパラメータ点を、データ(以下、これをパラメータデータと呼ぶ)D22としてパラメータ抽出部23に送出する。
【0054】
ちなみに、前処理部21から供給される画像データD21が図4(A)及び(B)に示すデータであった場合、ハフ変換部22は、図4(A)及び(B)に対してハフ変換処理を施し、当該ハフ変換処理結果として得られたパラメータ点を、図8(A)及び(B)に示すようなパラメータデータD22としてパラメータ抽出部23に送出する。
【0055】
ここで、図8(A)及び(B)における各パラメータ点は、ハフ変換前の画像データD21(図4(A)及び(B))における直線成分の長さに応じて定量化されている。この長さの定量化を具体的に言うと、例えば、ハフ変換前の直線成分に対応するパラメータ点で交わる曲線の数(図6)に応じて、値を累積するような処理である(以下、このようにして累積した値を累積値と呼ぶ)。この場合、図8(A)及び(B)における各パラメータ点は、累積値が大きいほど白濃度が大きく表示されるように設定されている。
【0056】
このようにしてハフ変換部22は、画像内の血管の直線性が高いことに着目し、ハフ変換することで、当該画像内における直線成分をその長さに応じてそれぞれ定量化できるようになされている。
【0057】
パラメータ抽出部23は、ハフ変換部22から供給されるパラメータデータD22のパラメータ点のうち、設定されている抽出閾値以上の累積値でなるパラメータ点を抽出する。そしてパラメータ抽出部23は、当該抽出したパラメータ点(以下、これを特徴パラメータ点と呼ぶ)に対して2値化処理を施し、これをデータ(以下、これを特徴パラメータデータと呼ぶ)D23として角度検出部24に送出する。
【0058】
ちなみに、ハフ変換部22から供給されるパラメータデータD22が図8(A)及び(B)の画像を示すデータであった場合、パラメータ抽出部23は、図8(A)及び(B)のパラメータ点から特徴パラメータ点を抽出して2値化し、その結果として得られた画像を、図9(A)及び(B)に示すような特徴パラメータデータD23として角度検出部24に送出する。
【0059】
パラメータ抽出部23は、このようにして、直線成分を示すパラメータ点のうち、ハフ変換前のx−y平面において所定長さ以上の直線成分であった特徴パラメータ点を抽出すると共に、当該抽出した特長パラメータ点の累積値を2値化するようになされている。
【0060】
角度検出部24は、パラメータ抽出部23から供給される特徴パラメータデータD23の特徴パラメータ点のうち、予め設定された上限角度「θth」から下限角度「−θth」までの範囲(以下、これを許容角度範囲と呼ぶ)よりも外側にある特徴パラメータ点を検出する。
【0061】
この許容角度範囲は、生体部位としての指の血管の直線性が、指の幅方向に比して長手方向(血行方向)に高いことに応じ、かかる指の長手方向を基準方向として規定されたものである。また、この許容角度範囲は、指の血管に比して長手方向及び幅方向に比較的満遍なく根内管が張り巡らされている根菜等の擬似指を撮像した場合に、指の幅方向に張り巡らされている(すなわち、基準方向に対して高角度の)根内管をハフ変換した結果得られる特徴パラメータ点が、この許容角度範囲から外れるようにも規定されている。
【0062】
ここで、許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に多い場合、このことは、画像信号S2又はS20が、擬似指を撮像した結果として得られたものであることを意味する。従って角度検出部24は、この許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に多い場合、血管登録モード又は認証モードを停止し、再登録又は再認証すべき旨を通知部15(図1)を介して通知する。この結果、角度検出部24では、指と誤認識した擬似指を生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合してしまうといったことを排除できる。
【0063】
これに対して、許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に少ない場合、このことは、画像信号S2又はS20が、生体部位としての指を撮像した結果得られたものであることを意味する。従って角度検出部24は、この許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に少ない場合、血管登録モード又は認証モードを継続する。
【0064】
すなわち、血管登録モードである場合、角度検出部24は、ハフ変換結果から抽出した特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて、登録用の登録者識別データD1(図2)として生成する。これに対し、認証モードである場合、角度検出部24は、ハフ変換結果から抽出した特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて、登録者識別データD1と照合すべき照合対象者の血管の特徴を表すデータ(以下、これを照合対象者特徴データと呼ぶ)Dx(図2)として、生成する。
【0065】
このようにして角度検出部24は、抽出した特徴パラメータ点のうち、許容角度範囲から外れている特長パラメータ点が統計学的に少ないか多いかに応じて、画像信号S2、S20の画像が、生体部位としての指を撮像した結果得られたものか、擬似指を撮像した結果として得られたものかを判別することができる。そして角度検出部24は、画像信号S2、S20の画像が、生体部位としての指を撮像した結果えられたものであった場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を、画像データD21に対応付けて登録対象または照合対象とする。また角度検出部24は、画像信号S2、S20の画像が、擬似指を撮像した結果として得られたものであった場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を、登録対象または照合対象から除外する。
【0066】
このように、制御部10は、血管登録モード又は認証モード時に画像処理を実行するようになされている。
【0067】
(1−5)第1の登録処理手順
次に、この制御部10における血管登録モード及び認証モードのうち、当該血管登録モードの第1の登録処理手順について、図10に示すフローチャートを用いて説明する。
【0068】
すなわち、制御部10は、操作部11(図1)から実行命令COM1が与えられると、この第1の登録処理手順RT1をステップSP0において開始し、続くステップSP1において、駆動制御部12a(図1)を介して血管撮像部12を制御し、当該血管撮像部12での撮像結果として得られる画像信号S2に対して前処理を施すことによって、2値画像の画像データD21(図2)を取得する。
【0069】
次いで、制御部10は、ステップSP2において、この画像データD21に対してハフ変換処理を施し、続くステップSP3において、当該ハフ変換処理結果として得られるパラメータ点のうち、設定された抽出閾値以上のパラメータ点を抽出して特徴パラメータ点とすると共に2値化し、次のステップSP4に移る。
【0070】
制御部10は、ステップSP4において、抽出した特徴パラメータ点のうち、許容角度範囲よりも外側の特徴パラメータ点を検出し、続くステップSP5において、当該検出した特徴パラメータ点が統計学的に少ないか否か(すなわち、特徴パラメータ点の個数が、特徴パラメータ点の総数に対して規定数未満であるか否か)を判定する。
【0071】
制御部10は、ステップSP5において、かかる検出した特徴パラメータ点の個数が規定数未満である場合には、生体部位としての指を撮像した結果得られた画像(画像信号S2)であると判断し、次のステップSP6において、特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて登録者識別データD1(図2)としてフラッシュメモリ13(図1)に記録するようにして登録した後、ステップSP7に移ってこの第1の登録処理手順RT1を終了する。なお、制御部10は、認証モードの場合には、このステップSP6において、特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて照合対象者特徴データDxとすると共に、予め登録されている登録者識別データD1をフラッシュメモリ13から読み出し、かかる照合対象者特徴データDxを登録者識別データD1と照合する。
【0072】
一方、制御部10は、ステップSP5において、かかる検出した特徴パラメータ点の個数が規定数以上である場合には、擬似指を撮像した結果として得られた画像(画像信号S2)であると判断し、ステップSP7に移ってこの第1の登録処理手順RT1を終了する。
【0073】
このような第1の登録処理手順RT1に従って、制御部10は血管登録モードを実行することができるようになされている。
【0074】
(1−6)第1の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、この認証装置1は、指における血管が撮像された結果得られる画像信号S2又はS20(図2)に対して所定の前処理を施し、輪郭を抽出した後にハフ変換処理を施す。次いで、認証装置1は、このハフ変換処理結果として得られるパラメータ点に対して所定の抽出条件を設定することで特徴パラメータ点を抽出する。
【0075】
そして認証装置1は、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に少ない場合、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象とする。一方、認証装置1は、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に多い場合、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外する。
【0076】
従って、この認証装置1では、生体部位としての指を撮像し、画像信号S2又はS20の成分として指の血管の成分が与えられた場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を生体部位としての指を撮像した結果得られたものであると判定し、登録対象又は登録対象と照合すべき対象とする。
【0077】
一方、この認証装置1では、大根等の根菜でなる擬似指を撮像し、画像信号S2又はS20の成分として根菜の根内管の成分が与えられた場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を擬似指を撮像した結果得られたものであると判定し、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外する。かくしてこの認証装置1は、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に少ないか多いかに応じて、画像信号S2、S20の画像が、生体部位としての指を撮像した結果得られたものか、擬似指を撮像した結果として得られたものかを判別することができ、この結果、擬似指を撮像した結果として得られる特徴パラメータ点を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことから防止できる。
【0078】
これに加えて、この認証装置1では、ハフ変換結果を抽出して得られる特徴パラメータ点が、画像信号S2又はS20における画像内容の判別要素として用いられているだけでなく、登録すべき生体識別情報の構成要素としても用いられている。これにより、この認証装置1では、画像内容の判別と生体識別情報の生成とにおいて、それぞれの構成の一部を共用できるため、その構成を簡易化することができる。
【0079】
以上の構成によれば、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点が統計学的に少ないか多いかに応じ、画像信号S2又はS20の画像が、生体部位としての指を撮像した結果得られたものか、擬似指を撮像した結果として得られたものかを判別できるようにすると共に、擬似指を撮像した画像である場合に、そのとき抽出された特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにしたことにより、擬似指を撮像した結果として得られる特徴パラメータ点を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことから防止でき、かくして、認証精度を向上させた認証装置1を実現できる。
【0080】
(2)第2の実施の形態
(2−1)第2の実施の形態による認証装置の全体構成
図1との対応部分に同一符号を付して示す図11は、第2の実施の形態による認証装置51を示している。認証装置51は、制御部100の構成を除いて上述した第1の実施の形態の認証装置1と同様に構成されている。また、図2との対応部分に同一符号を付して示す図12は、制御部100の構成を示している。制御部100は、角度検出部124の構成を除いて上述した第1の実施の形態の制御部10と同様に構成されている。
【0081】
この第2の実施の形態の画像処理は、抽出された特徴パラメータ点の基準方向に対する角度の分布の偏りに応じて撮像時に指が傾いていたか否かを判別する点で、許容角度範囲から外れている特長パラメータ点が統計学的に少ないか多いかに応じて生体部位としての指と擬似指とを識別していた第1の実施の形態の画像処理とは、相違する。
【0082】
(2−2)画像処理の具体的な処理内容
制御部100の角度検出部124は、パラメータ抽出部23により特徴パラメータ点を抽出したとき、例えば許容角度範囲を等分してなる第1の角度範囲(この場合「−θth」から「0°」)と第2の角度範囲(この場合「0°」から「θth」)とに含まれる特徴パラメータ点をそれぞれカウントするようになされている(図9)。
【0083】
そして角度検出部124は、第1の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をPAとし、第2の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をPBとしたとき、一方を他方で除算してなる特徴パラメータ数の割合PA/PB(又はPB/PA)が1を中心とする所定の許容割合範囲に含まれているか否かを判別する。
【0084】
この許容割合範囲は、例えば、認証装置1の正面に立ったユーザから見て正面方向を基準方向としたとき、かかる基準方向に指の長手方向を向けて認証装置1に載置された指の血管の角度分布が、基準方向を中心として均等になることに応じて規定されたものである。また、この許容割合範囲は、例えば指を基準方向に対して傾けて撮像してしまった場合に、その結果得られる特徴パラメータ点の基準方向に対する分布の偏りを検出できるように設定されている。
【0085】
ここで、特徴パラメータ点の割合PA/PB(又はPB/PA)が許容割合範囲から外れる場合、このことは、画像信号S2又はS20が、基準方向に対して指が傾いた状態で撮像を行った結果得られた画像であることを意味する。従って角度検出部124は、特徴パラメータ点の割合PA/PB(又はPB/PA)が許容割合範囲から外れる場合、血管登録モード又は認証モードを停止し、指が傾いている旨を通知部15(図11)を介して通知する。この結果、角度検出部124では、傾いた状態で撮像した指を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合してしまうといったことを排除できる。
【0086】
これに対して、特徴パラメータ点の割合PA/PB(又はPB/PA)が許容割合範囲内にある場合、画像信号S2又はS20が、正しい方向(すなわち基準方向)で指を撮像した結果得られた画像であることを意味する。従って角度検出部124は、特徴パラメータ点の割合PA/PB(又はPB/PA)が許容割合範囲内にある場合、血管登録モード又は認証モードを継続する。
【0087】
すなわち、血管登録モードである場合、角度検出部124は、ハフ変換結果から抽出した特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて、登録用の登録者識別データD1(図12)として生成する。これに対し、認証モードである場合、角度検出部124は、ハフ変換結果から抽出した特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて、登録者識別データD1との照合用の照合対象者特徴データDx(図12)として、生成する。
【0088】
このようにして角度検出部124は、抽出した特徴パラメータ点の基準方向に対する角度の分布の偏りに応じて、画像信号S2、S20の画像が、基準方向に対して正しい方向で指を撮像した結果得られた画像であるか否かを判別することができる。そして角度検出部124は、画像信号S2、S20の画像が、正しい方向で指を撮像した結果として得られたものであった場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を、画像データD21に対応付けて登録対象または照合対象とする。また角度検出部124は、画像信号S2、S20の画像が、指が傾いた状態で撮像を行った結果得られた画像であった場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を、登録対象または照合対象から除外する。
【0089】
このように、制御部100は、血管登録モード又は認証モード時に画像処理を実行するようになされている。
【0090】
(2−3)第2の登録処理手順
次に、この制御部100における血管登録モード及び認証モードのうち、当該血管登録モードの第2の登録処理手順について、図13に示すフローチャートを用いて説明する。
【0091】
すなわち、制御部100は、操作部11(図11)から実行命令COM1が与えられると、この第2の登録処理手順RT2をステップSP10において開始し、続くステップSP11において、駆動制御部12a(図11)を介して血管撮像部12を制御し、当該血管撮像部12での撮像結果として得られる画像信号S2に対して前処理を施すことによって、2値画像の画像データD21(図12)を取得する。
【0092】
次いで、制御部100は、ステップSP12において、この画像データD21に対してハフ変換処理を施し、続くステップSP13において、当該ハフ変換処理結果として得られるパラメータ点のうち、設定された抽出閾値以上のパラメータ点を抽出することで特徴パラメータ点とし、次のステップSP14に移る。
【0093】
制御部100は、ステップSP14において、抽出した特徴パラメータ点のうち、第1の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をカウントすると共に、続くステップSP15において、抽出した特徴パラメータ点のうち、第2の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をカウントし、次のステップSP16において、特徴パラメータ点の割合が許容割合範囲内であるか否かを判定する。
【0094】
制御部100は、かかる特徴パラメータ点の割合が許容割合範囲内である場合には、正しい方向で指を撮像したと判断し、次のステップSP17において、特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて登録者識別データD1(図12)として登録した後、ステップSP18に移ってこの第2の登録処理手順RT2を終了する。なお、制御部100は、認証モードの場合には、このステップSP17において、特徴パラメータ点を画像データD21に対応付けて照合対象者特徴データDxとすると共に、予め登録されている登録者識別データD1をフラッシュメモリ13(図11)から読み出し、かかる照合対象者特徴データDxを登録者識別データD1と照合する。
【0095】
一方、制御部100は、かかる特徴パラメータ点の割合が許容割合範囲から外れる場合には、基準方向に対して傾いた状態で指を撮像したと判断し、ステップSP18に移ってこの第2の登録処理手順RT2を終了する。
【0096】
このような第2の登録処理手順RT2によって、制御部100は血管登録モードを実行することができるようになされている。
【0097】
(2−4)第2の実施の形態の動作及び効果
以上の構成において、この認証装置51は、抽出した特徴パラメータ点の基準方向に対する分布が偏っているとき、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外する。
【0098】
従って、この認証装置51では、基準方向に対して正しい方向で指を撮像し、画像信号S2又はS20の成分として、正しい方向で撮像された指の血管の成分が与えられた場合、その結果として得られる特徴パラメータ点を、正しい方向で撮像されたものであると判定し、登録対象又は登録対象と照合すべき対象とする。
【0099】
一方、この認証装置51では、基準方向に対して傾いた状態で指を撮像し、画像信号S2又はS20の成分として、傾いた状態で撮像された指の血管の成分が与えられたときには、その結果として得られる特徴パラメータ点を、傾いた状態で撮像されたものであると判定し、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外する。かくしてこの認証装置51は、特徴パラメータ点の角度成分の分布が基準方向に対して偏っているか否かに応じて、画像信号S2又はS20が、基準方向に対して正しい方向で指を撮像したものであるか否かを判定でき、この結果、傾いた指を撮像した結果として得られる特徴パラメータ点を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことから防止できる。
【0100】
これに加えて、この認証装置51では、ハフ変換結果を抽出して得られる特徴パラメータ点が、画像信号S2又はS20における画像内容の判別要素として用いられているだけでなく、登録すべき生体識別情報の構成要素としても用いられている。これにより、この認証装置51は、画像内容の判別と、生体識別情報の生成との構成の一部を共用できるため、その構成を簡易化することができる。
【0101】
以上の構成によれば、抽出した特徴パラメータ点の基準方向に対する角度の分布の偏りに応じ、画像信号S2又はS20が、基準方向に対して正しい方向で指を撮像した画像であるか否かを判定できるようにすると共に、基準方向に対して傾いた指を撮像した結果得られた画像である場合に、そのとき抽出された特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにしたことにより、傾いた状態の指を撮像した結果として得られる特徴パラメータ点を、生体識別情報として登録する又は生体識別情報として予め登録してある登録情報と照合するといったことから防止でき、かくして、認証精度を向上させた認証装置51を実現できる。
【0102】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、生体部位として、指を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば掌、足指、腕、目又は腕等を適用するようにしてもよい。
【0103】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、生体識別対象として、血管を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば指紋、口紋、虹彩又は神経等を適用するようにしてもよい。因みに、神経を適用する場合には、例えば神経に特異的なマーカを体内に注入し、当該マーカを撮像するようにすれば、上述の実施の形態と同様にして神経を生体識別対象とすることができる。
【0104】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、画像信号における生体識別対象のオブジェクトの輪郭部分を抽出する輪郭抽出手段として、A/D変換処理、輪郭抽出処理、平滑化処理、2値化処理及び細線化処理を順次施すようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら処理の一部を省略する若しくは入れ替える、又は、これら処理に対して新たな処理を加えるようにしてもよい。ちなみに、これら処理の順序についても適宜変更することができる。
【0105】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、撮像機能、照合機能及び登録機能を有する認証装置1及び51を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該機能ごとに単体の装置に分けた態様で適用する等、用途等に応じて種々の態様で適用することができる。
【0106】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、特徴パラメータ点に画像データD21を対応付けて登録者識別データD1および照合対象者特徴データDxとするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、最終的に登録者識別データD1および照合対象者特徴データDxとするのは、特徴パラメータ点や画像データD21、パラメータデータD22、特徴パラメータデータD23、のいずれか単独でも良いし、選択して複数組み合わせる(すなわち対応付ける)ようにしても良い。
【0107】
さらに上述の第1の実施の形態においては、擬似指として大根等の根菜を適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、生体内の血管パターンと似た画像データが得られる撮像対象であれば、グミや血管画像印刷物、人間の指の模型等、この他多くの種類の擬似指を適用した場合でも、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0108】
さらに上述の第1実施の形態においては、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点の個数が統計学的に多いとき、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにしたが、本発明はこれに限らず、特徴パラメータ点のうち、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点の個数が規定数以上である場合や、特徴パラメータ点のうち、所定の許容角度範囲よりも外側に存在する特徴パラメータ点の割合が所定以上である場合に、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにしても良い。また、許容角度範囲及び基準方向の設定次第では、許容角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の個数が規定数以上であるとき(又は、特徴パラメータ点の割合が所定以上であるとき)、当該特徴パラメータ点を、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにすることもできる。
【0109】
さらに上述の第2の実施の形態においては、第1の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をPAとし、第2の角度範囲に含まれる特徴パラメータ点の数をPBとしたとき、一方を他方で除算してなる特徴パラメータ点の割合PA/PB(又はPB/PA)が1を中心とする所定の許容割合範囲に含まれているか否かを判別するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば、特徴パラメータ点の総数PPでPA又はPBを除算してなる割合としてのPA/PP又はPB/PPが、所定の許容割合範囲に含まれているか否かを判別するように、特徴パラメータ点の偏りを示すことができれば、その割合の算出方法については限定しない。
【0110】
さらに上述の第2の実施の形態においては、基準方向に対して傾いた状態で指を撮像し、画像信号S2又はS20の成分として、傾いた状態で撮像された指の血管の成分が与えられたときに、角度検出部124は、その結果として得られる特徴パラメータ点を、傾いて撮像したものであると判定し、登録対象又は登録対象と照合すべき対象から除外するようにしたが、本発明はこれに限らず、指が傾いていることの検出に用いるようにしても良い。そして、角度検出部124により指が傾いていることを検出した場合には、得られた特徴パラメータ点がρ−θ平面上で基準方向を中心として均等に分布するように制御部100で補正することで、ユーザに対し指の認証を再度行わせること無く、血管登録モード又は認証モードを継続することができる。また、かかる指が傾いていることの検出を第1の実施の形態に加えることで、更なる効果を得ることができる。
【0111】
具体的には、上述の第1の実施の形態の第1の登録処理手順(図10)において、ステップSP3とステップSP4との間に、角度検出部24による指の傾きの検出ステップと、指が傾いていたときに制御部10で補正するステップとを加えることで実現できる。この場合認証装置1では、ユーザが指を傾けて撮像してしまったことに起因して、その結果として得られる特徴パラメータ点がステップSP4において許容抽出角度範囲から外れてしまうことを未然に防止することができる。かくして認証装置1では、認証精度を更に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、バイオメトリクス認証する分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】第1の実施の形態による認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態の制御部における画像処理の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図3】撮像画像を示す略線図である。
【図4】入力画像を示す略線図である。
【図5】x−y平面状における直線の表現の説明に供する略線図である。
【図6】ρ−θ平面上における点の表現の説明に供する略線図である。
【図7】サンプル画像と、そのハフ変換後の画像を示す略線図である。
【図8】ハフ変換後の画像を示す略線図である。
【図9】パラメータ抽出後の画像を示す略線図である。
【図10】第1の登録処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第1の実施の形態による認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【図12】第1の実施の形態の制御部における画像処理の処理内容を示す機能ブロック図である。
【図13】第2の登録処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0114】
1、51……認証装置、10、100……制御部、11……操作部、12……血管撮像部12a……駆動制御部、13……フラッシュメモリ、14……外部インターフェース、15……通知部、15a……表示部、15b……音声出力部、21……前処理部、22……ハフ変換部、23……パターン抽出部、24、124……角度検出部、LS……近赤外光光源、CM……撮像カメラ、OP……光学系、DH……絞り、ID……撮像素子、RT1……第1の登録処理手順、RT2……第2の登録処理手順。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
上記輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換するハフ変換手段と、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する登録手段と
を具えることを特徴とする登録装置。
【請求項2】
上記登録手段は、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分が、所定の上限角度として設定された第1の閾値から所定の下限角度として設定された第2の閾値までの角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、上記生体識別情報として登録する
ことを特徴とする請求項1に記載の登録装置。
【請求項3】
上記登録手段は、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分の分布が、上記基準方向に対して均等である場合に、上記ハフ変換結果を、上記生体識別情報として登録する
ことを特徴とする請求項1に記載の登録装置。
【請求項4】
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分の分布が上記基準方向に対して偏っているときに、上記パラメータの上記角度成分の分布が上記基準方向に対して均等になるように、上記ハフ変換結果を補正する補正手段
を具え、
上記登録手段は、
上記補正手段により補正された上記ハフ変換結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、補正された上記ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する
ことを特徴とする請求項1に記載の登録装置。
【請求項5】
入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する輪郭抽出手段と、
上記輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換するハフ変換手段と、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、予め登録されている生体識別情報と照合する照合手段と
を具えることを特徴とする照合装置。
【請求項6】
上記照合手段は、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分が、所定の上限角度として設定された第1の閾値から所定の下限角度として設定された第2の閾値までの角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、予め登録されている上記生体識別情報と照合する
ことを特徴とする請求項5に記載の照合装置。
【請求項7】
上記照合手段は、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分の分布が、上記基準方向に対して均等である場合に、上記ハフ変換結果を、予め登録されている上記生体識別情報と照合する
ことを特徴とする請求項5に記載の照合装置。
【請求項8】
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られる上記パラメータの上記角度成分の分布が上記基準方向に対して偏っているときに、上記パラメータの上記角度成分の分布が上記基準方向に対して均等になるように、上記ハフ変換結果を補正する補正手段
を具え、
上記照合手段は、
上記補正手段により補正された上記ハフ変換結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、補正された上記ハフ変換結果を、予め登録されている上記生体識別情報と照合する
ことを特徴とする請求項5に記載の照合装置。
【請求項9】
入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出する第1のステップと、
上記輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換する第2のステップと、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている上記生体識別情報と照合する第3のステップと
を具えることを特徴とする認証方法。
【請求項10】
コンピュータに対して、
入力される画像信号に対して所定の処理を施し、当該画像信号に含まれるオブジェクトの輪郭を抽出すること、
上記輪郭が抽出された結果得られる画像データをハフ変換すること、
上記ハフ変換手段によるハフ変換の結果として得られるパラメータのうち、基準方向と上記輪郭とのなす角度を示す角度成分が、直線性を有する生体部位として規定された角度範囲に含まれる場合に、上記ハフ変換結果を、生体識別情報として登録する又は予め登録されている上記生体識別情報と照合すること
を実行させることを特徴とする認証プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−102607(P2008−102607A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282743(P2006−282743)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】