説明

白色発光装置

【課題】点灯直後から一定時間経過後の色調変化が抑制された白色発光装置を提供すること。
【解決手段】紫外光または青色光を放出する発光素子12と、該発光素子12から放出される紫外光または青色光により励起されて発光し、混合色として白色光を得る蛍光体を含有する蛍光体層13と、該蛍光体層13の発光面側に配置され、または前記蛍光体層13中に分散され、透過率が変化するガラスからなる色調調整部14とを有する白色発光装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色発光装置に係り、特に点灯直後から一定時間経過後の色調変化が抑制された白色発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード素子を用いた発光装置の高輝度、白色化に伴い、照明、各種ディスプレイ、大型液晶TVのバックライト等にこのような白色発光装置が用いられている。白色発光装置は、例えばGaNにInが添加されたInGaNを発光層とする量子井戸構造の発光ダイオード素子を有しており、樹脂材料中にYAG蛍光体が分散含有された蛍光体層による封止が行われて構成されている。
【0003】
このような白色発光装置は、例えば以下のようにして白色光源として機能する。すなわち、発光ダイオード素子に直流電流を流すと、該発光ダイオード素子から青色光が放出される。一方、該青色光の一部によってYAG蛍光体が励起され、この蛍光体から黄色光(蛍光)が放出される。この青色光と黄色光とは補色関係にあり、これらが入り混じって人間の目に入り加法混色の原理により白色光として見える(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−296001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような白色発光装置については、点灯直後から一定時間経過後に白色光が青味を帯びることがある。すなわち、白色発光装置の使用により温度が上昇し、この温度上昇に伴って白色光が青味を帯びる。従来、このような色調変化を抑制するために、白色発光装置の放熱性を向上させて温度上昇を抑制することが検討されている。しかしながら、このような方法によっては、必ずしも十分に色調変化を抑制できない。また、より簡単な方法で色調変化を抑制することが求められている。本発明は、上記課題を解決するものであって、点灯直後から一定時間経過後の色調変化が抑制された白色発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の白色発光装置は、紫外光または青色光を放出する発光素子と、該発光素子から放出される紫外光または青色光により励起されて発光し、混合色として白色光を得る蛍光体を含有する蛍光体層と、該蛍光体層の発光面側に配置され、または該蛍光体層中に分散され、透過率が変化するガラスからなる色調調整部とを有することを特徴とする。
【0007】
このガラスは、例えば酸化物基準のモル%表示で、Biを20〜75%含有するビスマスガラスからなる。
【0008】
ビスマスガラスは、例えば酸化物基準のモル%表示で、Bi 20〜50%、B 15〜50%、SiO 0〜30%、TiO 0〜15%、TeO 0.1〜30%、P 0〜15%、Al 0〜10%、ZnO 0〜15%、Nb 0〜10%、Ta 0〜3%、を含有する。
【0009】
また、例えば酸化物基準のモル%表示で、Bi 25〜70%、B+SiO 5〜75%、CeO 0〜10%、Al 0〜20%、Ga 0〜20%、Al+Ga 0〜30%、ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%を含有する。
【0010】
さらに、例えば酸化物基準のモル%表示で、Bi 45〜75%、B 12〜45%、Ga 1〜20%、In 1〜20%、ZnO 0〜20%、BaO 0〜15%、SiO+Al+GeO 0〜15%、MgO+CaO+SrO 0〜15%、SnO+TeO+TiO+ZrO+Ta+Y+WO 0〜10%、CeO 0〜5%、Ga+In+ZnO 5%以上を含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の白色発光装置によれば、特に蛍光体層の発光面側に、または蛍光体層中に、透過率が変化するガラスからなる色調調整部を有することで、点灯直後からの白色光の色調変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の白色発光装置の一例を示す断面図。
【図2】従来の白色発光装置の色度変化の一例を示す図。
【図3】ビスマスガラス(ガラスA)の温度と透過率との関係を示す図。
【図4】ビスマスガラス(ガラスB)の温度と透過率との関係を示す図。
【図5】ビスマスガラス(ガラスC)の温度と透過率との関係を示す図。
【図6】ビスマスガラス(ガラスD)の温度と透過率との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の白色発光装置の一例を示す断面図である。
白色発光装置1は、例えば発光素子用基板11(以下、単に基板11という)と、この基板11に搭載される発光素子12と、この発光素子12から放出される光により励起されて混合色として白色光を得る蛍光体を含有する蛍光体層13と、この蛍光体層13の発光面側(図中、上側)に配置される色調調整部14とを有している。
【0015】
基板11は、例えば基板本体111と、この基板本体111の一方の主面側に設けられる反射枠体112とを有している。基板本体111は、例えば全体が板状であり、側面部を通して一方の主面側から他方の主面側に達するように一対の電極113が設けられている。この一対の電極113は、一方の主面側(図中、上側)の一部が発光素子12の搭載される搭載部114として機能する。また、他方の主面側(図中、下側)は、外部接続端子として機能する。
【0016】
反射枠体112は、発光素子12から水平方向に放出される光を反射して上面から効率よく取り出すために設けられており、搭載部114を取り囲むように枠状に設けられている。反射枠体112の内側は、例えば円形状であり、基板本体111に向かって縮径する形状とされている。なお、内側形状は、典型的には円形状であるが、必ずしもこのようなものに限定されるものではなく、例えば楕円形状、四角形状等であってもよい。
【0017】
発光素子12は、図示しない電極が一対のボンディングワイヤ15により一対の電極113とそれぞれ電気的に接続されている。そして、発光素子12、ボンディングワイヤ15を封止するように反射枠体112の内側に蛍光体層13が充填されている。そして、蛍光体層13を覆うように色調調整部14が設けられて白色発光装置1が構成されている。色調調整部14は、例えば円板状であり、外周部が反射枠体112の内側上面に係止されるように接着等により固定されている。
【0018】
発光素子12は図1に示されているワイヤボンディング15による電気的接続に限らず、フリップチップと呼ばれる基板11上に並んだ端子により電気的に接続しても良い。
【0019】
基板11、具体的には基板本体111、反射枠体112の素材、形態等は、必ずしも限定されるものではなく、例えばチタニア等の白色無機顔料を分散させた樹脂材料からなるもの、アルミナ等のセラミックス材料からなるもの、またはガラス中にセラミック粉末が分散含有されたガラスセラミックス材料からなるもののいずれであってもよい。また、基板11は、例えば基板本体111と反射枠体112とを別々に製造した後、これらを接着して一体化したものであってもよいし、また例えば基板本体111と反射枠体112とを一体に成形して製造したものであってもよい。
【0020】
発光素子12は、その発光により蛍光体層13に含有される蛍光体を励起して発光させ、混合色として白色光を得るものが挙げられる。このようなものとしては、波長が360〜480nmの紫外光または青色光を放出する発光ダイオード素子が挙げられ、具体的にはGaNにInを添加したInGaNを発光層とする量子井戸構造のInGaN系発光ダイオード素子等が例示される。本発明では、特に発光素子12として420〜480nmにピーク波長を有する青色光を放出する発光ダイオード素子を用いる場合に、点灯直後から一定時間経過後に白色光が青味を帯びる色調変化を効果的に抑制できる。
【0021】
蛍光体層13は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂材料中に蛍光体が分散含有されたものである。シリコーン樹脂は、特に耐光性、耐熱性に優れるために好ましい。蛍光体は、発光素子12から放出される紫外光または青色光により励起されて発光し、混合色として白色光を得ることができる。このようなものとしては、例えば発光素子12から放出される青色光により励起されて黄色光を放出し、発光素子12から放出される青色光と合わせて白色光を実現するものが挙げられる。また、例えば発光素子12から放出される紫外光により励起されて赤色光、緑色光、青色光等を放出し、これらの混合色として白色光を実現するものが挙げられる。このような蛍光体としては、例えばYAG蛍光体が挙げられる。なお、蛍光体層13としては、必ずしも樹脂材料中に蛍光体が分散含有されたものに限られるものではなく、例えばガラス材料中に蛍光体が分散して含有されるものであっても構わない。
【0022】
本発明の白色発光装置1は、このような蛍光体層13の発光面側(図中、上側)に、透過率が変化するガラス、例えば酸化物基準のモル%表示で、Biを20〜75%含有するビスマスガラスからなる色調調整部14を有することを特徴としている。この色調調整部14は、上記したように、例えば円板状であり、外周部が反射枠体112の内側上面に係止されるように接着等により固定される。
【0023】
なお、色調調整部14は、必ずしも反射枠体112の内側上面に係止される必要はなく、蛍光体層13の表面のみを覆うように設けられていてもよい。また、色調調整部14は、必ずしも蛍光体層13の表面全体を覆う必要はないが、通常、蛍光体層13の表面全体を覆うことが好ましい。
【0024】
色調調整部14の光の透過する少なくとも一方の面に光学多層膜を形成しても良い。光学多層膜は、例えば反射防止膜や一部の波長を反射させるダイクロイック多層膜などから要求される色調に応じて適宜選択や設計が可能である。
【0025】
透過率が変化するガラス、特にビスマスガラスからなる色調調整部14は、温度上昇とともに、波長が350〜500nmの範囲、特に380〜480nmの範囲の光吸収特性が上昇し、透過率が低下する。従って、温度上昇に伴って白色光が青味を帯びるものにこのような色調調整部14を設けることで、温度上昇に伴って増加する青色光を遮断し、結果として白色光が青味を帯びることを抑制できる。ここで、Biの含有量が20%以上の場合、十分な吸収特性が得られ、白色光が青味を帯びることを効果的に抑制できる。一方、Biの含有量が75%以下の場合、ガラス化が困難となることを効果的に抑制できる。
【0026】
本発明の白色発光装置1においては、このようなガラスからなる色調調整部14を有することにより、例えば点灯直後のJIS Z8701に規定される色度(x、y)と90分経過後の同色度(x、y)との差で表される色度差(Δx、Δy)がそれぞれ±0.002以内であることが好ましく、±0.001以内であることがより好ましく、±0.0005以内であることがさらに好ましい。
【0027】
色調調整部14となるガラスは、色調調整部14を有しない白色発光装置1の温度上昇および該温度上昇による色調変化に応じて、該色調変化が最も少なくなるように透過率が変化するものを適宜選択して用いることが好ましい。なお、透過率、およびその温度変化は、例えばビスマスガラスの場合、主としてBiの含有量により調整できる。
【0028】
具体的には、発光素子12、蛍光体層13(蛍光体)の種類、白色発光装置1の使用時の温度上昇等によっても異なるが、温度上昇により主として増加する波長、例えば波長420nmにおける30℃での透過率と110℃での透過率との差(30℃での透過率−110℃での透過率、以下単に透過率差という)が0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.5%以上であることがさらに好ましい。このようなものとすることで、色調変化を効果的に抑制できる。一方、透過率差は、25%程度もあれば十分であり、これを超えるとかえって別の色調変化が発生するおそれがあるために好ましくない。
【0029】
また、ガラスの厚さも、発光素子12、蛍光体層13(蛍光体)の種類、白色発光装置1の使用時の温度上昇等によって異なるが、例えば1μm以上が好ましい。このような厚さとすることで、色調変化を効果的に抑制できる。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。一方、厚さは6mm以下が好ましい。このような厚さとすることで、白色発光装置1の高さを抑制しつつ、色調変化を効果的に抑制できる。より好ましくは4mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。
【0030】
なお、上記色調調整部14となるガラスは、粉体にして蛍光体層13に分散させることで、蛍光体層13と一体化することもできる。その場合、使用するガラスの量は図1に示された色調調整部14として使用されるときと同等であることが好ましい。
【0031】
次に、色調調整部14に適用可能な第1〜第3のビスマスガラスについて説明する。
【0032】
第1のビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 20〜50%、B 15〜50%、SiO 0〜30%、TiO 0〜15%、TeO 0.1〜30%、P 0〜15%、Al 0〜10%、ZnO 0〜15%、Nb 0〜10%、Ta 0〜3%、を含有する。第1のビスマスガラスによれば、青色光の吸収は勿論のこと、熱膨張係数が小さいために熱衝撃等による成形不良を抑制でき、成型品の形状精度も向上できる。
【0033】
Biは必須成分であり、青色光の吸収特性を向上させる効果がある。含有量が20%未満であると、青色光の吸収特性が不十分となるおそれがある。好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。一方、含有量が50%を超えるとガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。
【0034】
は必須成分であり、ガラスを形成する主成分である。含有量が15%未満であると、ガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは18%以上、より好ましくは22%以上、さらに好ましくは28%以上である。一方、含有量が50%を超えると、ガラスの成形時に失透するおそれがある。含有量は、好ましくは44%以下、より好ましくは38%以下、さらに好ましくは32%以下である。
【0035】
SiOは必須成分ではないが、ガラスを形成する主成分となる。添加する場合はガラスの安定性等の点から30%以下である。好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0036】
ガラスの安定性等の点から、BおよびSiOの合計した含有量は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。一方、BおよびSiOの合計した含有量は、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは33%以下である。
【0037】
TiOは必須成分ではないが、ガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量は、好ましくは3%以上、より好ましくは6%以上、さらに好ましくは8%以上である。一方、含有量が15%を超えると、ガラスが不安定になるとともに、可視域の光透過特性が全体的に低下しやすい。好ましくは14%以下、より好ましくは13%以下、さらに好ましくは12%以下である。
【0038】
TeOは必須成分であり、光透過特性を全体的に高くし、またガラスを高屈折率化させる効果がある。含有量が0.1%未満であると、上記効果を十分に得ることができない。含有量は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上である。一方、含有量が30%を超えると、ガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは25%以下、より好ましくは23%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0039】
は必須成分ではないが、ガラスを形成する成分であり、また光透過特性を全体的に高くする成分である。光透過特性の観点などから、好ましくは0.1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは4%以上である。一方、含有量が15%を超えると、ガラスが不安定になるおそれがある。好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下である。
【0040】
Alは必須成分ではないが、ガラスを安定化させる効果がある。上記効果を得るために0.1%以上が好ましい。一方、含有量が10%を超えると光学特性が低下するおそれがある。含有量は、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0041】
ZnOは必須成分ではないが、ガラスを安定化させる効果がある。しかし、含有量が15%を超えると、分散が大きくなり、化学的耐久性も低下するおそれがある。好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0042】
第1のビスマスガラスは、光学特性を調整するための任意成分として、GeO、Ga、またはCeOを含有できる。また、光学特性を調整するために、LiO、NaO、KOを含有できる。しかし、これらの成分はガラスの熱膨張係数を大きくし、成形時の寸法精度を低下させるほか、光学特性も低下させることから、合計した含有量は、好ましくは6%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0043】
さらに、光学特性を調整するために、MgO、CaO、SrO、またはBaOを含有できる。しかし、これらの成分はガラスの熱膨張係数を大きくし、成形時の寸法精度を低下させるほか、光学特性も低下させることから、合計した含有量は、好ましくは1%以下、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0044】
また、光学特性を調整するために、Nb、WO、ZrO、Gd、La、またはYを含有できる。これらを含有させる場合には、含有量が少なすぎると光学特性を調整する効果がほとんど得られないことから、それぞれ単独で0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。一方、光透過性を重視する場合には、極力含有量を抑制することが好ましい。各成分はそれぞれ単独で10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。
【0045】
さらに、光学特性を調整するために、Ta、またはYbを含有させてもよい。これらを含有させる場合には、含有量が少なすぎると光学特性を調整する効果がほとんど得られないことから、それぞれ単独で0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、また3%以下が好ましい。
【0046】
成形温度の観点や環境面への影響等から、PbO、F、Asは実質的に含有させないことが好ましい。また、Sbは必須成分ではないが、ガラス溶融の際の清澄剤として含有できる。Sbを含有させる場合には、含有量は、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。一方、含有量は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。
【0047】
第2のビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 25〜70%、B+SiO 5〜75%、CeO 0〜10%、Al 0〜20%、Ga 0〜20%、Al+Ga 0〜30%、ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%を含有する。第2のビスマスガラスによれば青色光を効果的に吸収できる。なお、第2のビスマスガラスは、カドミウムおよび鉛を実質的に含有しないことが好ましい。カドミウムおよび鉛を含有する場合、これらの材料が赤色光を吸収しやすく、また環境上好ましくない。
【0048】
Biは必須成分であり、青色光の吸収特性を向上させる効果がある。含有量が25%未満であると、青色光の吸収特性が不十分となるおそれがある。好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上である。一方、含有量が70%を超える場合、ガラス化が困難になる。好ましくは63%以下、より好ましくは58%以下である。
【0049】
およびSiOはガラスを形成する主成分であり、いずれか一種を含有する必要がある。BおよびSiOの合計した含有量が5%未満ではガラス化が困難になり、また成形時に失透するおそれがある。好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは35%以上である。一方、BおよびSiOの合計した含有量が75%を超える場合、成形時に失透するおそれがある。好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。
【0050】
また、SiOを含有させることで、化学的安定性を向上できる。すなわち、耐湿性を向上させ、ヤケに対して強いガラスを得ることができる。このため、BおよびSiOにおいては、SiOを含有させることが好ましい。SiOの含有量は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上である。
【0051】
CeOは必須ではないが、ガラス組成中のBiが溶融ガラス中に金属ビスマスとして析出してガラスの透過率を低下させることを抑制する効果を有している。このため、CeOは10%以下の範囲で含有させることが好ましい。10%を超える場合、ガラス化が困難となるおそれがある。好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下である。また、金属ビスマスの析出を抑制する観点から、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
【0052】
一方、CeOを含有させた場合、黄色またはオレンジ色の着色が強くなり、600nm以上の帯域の波長における光の透過率を低下させてしまう場合がある。このため、高い光の透過率が要求される場合には0.15%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0053】
Alは必須ではないが、成形時の失透を抑制する効果があり、20%以下の範囲で含有できる。20%を超える場合、失透により600nm以上の帯域の波長における光の透過率が低下するおそれがある。含有量は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは2%以上である。
【0054】
Gaは必須ではないが、成形時の失透を抑制する効果があり、20%以下の範囲で含有できる。20%を超える場合、失透により600nm以上の帯域の波長における光の透過率が低下するおそれがある。好ましくは18%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。一方、成形時の失透を抑制する観点から、好ましくは0.1%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましく2%以上である。
【0055】
AlおよびGaの合計した含有量は30%以下である。合計した含有量が30%を超える場合、失透により600nm以上の帯域の波長における光の透過率が低下するおそれがある。好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下である。一方、成形時の失透を抑制する観点から、好ましくは2%以上、より好ましくは4%以上である。
【0056】
ZnO、TeO、BaO、WOはいずれも必須成分ではないが、屈折率、熱膨張係数等の物性値を調整するため、またガラス化を容易にするために、合計で40%以下の範囲で含有してもよい。これらの合計した含有量は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0057】
第2のビスマスガラスは、本発明の効果を損なわない限度において、上記以外の成分を合計で10%以下の範囲で含有できる。例えば、成形時の失透を抑制するために、またはガラス化を容易にするために、BeO、MgO、CaO、SrO、LiO、NaO、KO、CsO、La、TiO、GeO、ZrO、In等を含有できる。
【0058】
なお、LiO、NaO、KO等のアルカリ金属成分を多く含むと結晶化により失透性が低下しやすく、またガラス成形が困難になるおそれがある。また、アルカリ金属成分を含むことにより屈折率が低下する傾向がある。これらの合計した含有量は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下、実質的には含有しないことが好ましい。
【0059】
第3のビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 45〜75%、B 12〜45%、Ga 1〜20%、In 1〜20%、ZnO 0〜20%、BaO 0〜15%、SiO+Al+GeO 0〜15%、MgO+CaO+SrO 0〜15%、SnO+TeO+TiO+ZrO+Ta+Y+WO 0〜10%、CeO 0〜5%、Ga+In+ZnO 5%以上を含有する。第3のビスマスガラスによれば、成形時の熱処理による結晶化を抑制でき、熱的安定性に優れる。
【0060】
Biは必須成分であり、青色光の吸収特性を向上させる効果がある。含有量が45%未満であると、青色光の吸収特性が不十分となるおそれがある。一方、含有量が75%を超える場合、ガラス化が困難になる。
【0061】
はガラスを形成する主成分であり必須である。含有量が12%未満であると、ガラス化が困難になる。一方、45%を超えると、ガラスの成形時に失透するおそれがある。
【0062】
Gaは成形時の失透を抑制するために含有される。1%未満であると、上記効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、20%を超える場合、失透により600nm以上の帯域の波長における光の透過率が低下するおそれがある。
【0063】
Inは必須であり、成形時の失透を抑制するために、またガラス化を容易にするために含有される。含有量が1%未満であると、上記効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、含有量が20%を超えると、失透により600nm以上の帯域の波長における光の透過率が低下するおそれがある。含有量は、好ましくは2%以上である。また、含有量は、好ましくは13%以下である。
【0064】
ZnOは必須ではないが、屈折率、熱膨張係数等の物性値を調整するため、またガラス化を容易にする効果を有する。含有量が20%を超えると、ガラス溶解時にかえって結晶が析出しやすくなりガラスの透過率が低下するおそれがある。好ましくは18%以下である。ZnOを含有する場合、その含有量は1%以上が好ましい。
【0065】
Ga、In、およびZnOの合計した含有量は5%以上である。含有量が5%未満であると、上記した効果を十分に得ることができないおそれがある。Ga、In、およびZnOの合計した含有量は、好ましくは7%以上、より好ましくは9%以上である。
【0066】
BaOは必須ではないが、ガラス化を容易にするために15%まで含有してもよい。含有量が15%を超えると、ガラス溶解時にかえって結晶が析出しやすくなるおそれがある。好ましくは10%以下、より好ましくは6%以下である。BaOを含有する場合、その含有量は1%以上が好ましい。
【0067】
SiO、AlおよびGeOはいずれも必須ではないが、Tgを高くするため、膨張係数を調整するために合計で15%までの範囲で含有してもよい。15%を超えると、ガラス溶解時に結晶が析出しやすくなおそれがある。好ましくは10%以下である。
【0068】
MgO、CaOおよびSrOはいずれも必須ではないが、ガラス化を容易にするために合計で15%までの範囲で含有してもよい。15%を超えると、ガラス溶解時に結晶が析出しやすくなるおそれがある。好ましくは10%以下である。
【0069】
SnO、TeO、TiO、ZrO、Ta、Y、WOはいずれも必須ではないが、屈折率等の物性値調整するために合計で10%までの範囲で含有してもよい。合計で10%を超えると、ガラス溶解時に結晶が析出しやすくなるおそれがある。好ましくは5%以下である。
【0070】
CeOは必須ではないが、ガラス組成中のBiがガラス溶融中に還元されて金属ビスマスとして析出しガラスの透明性を低下させることを抑制するために5%まで含有してもよい。5%を超えると、ガラス化が困難になり、または黄色もしくはオレンジ色の着色が強くなってガラスの透過率が低下するおそれがある。好ましくは3%以下である。
【0071】
CeOを含有する場合、その含有量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。なお、上記着色によるガラスの透過率の低下を避けたい場合、CeOの含有量は0.15%以下が好ましく、0.1%以下がより好ましい。
【0072】
第3のビスマスガラスは、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分の含有量の合計は、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。また、第3のビスマスガラスは、本質的に上記成分からなることがより好ましい。
【0073】
第3のビスマスガラスとしては、例えばBi 55%超75%以下、B 12〜20%、Ga 3〜18%、In 2〜13%、ZnO 0〜13%、BaO 0〜3%、SiO+Al+GeO 0〜6%、MgO+CaO+SrO 0〜10%、SnO+TeO+TiO+ZrO+Ta+Y+WO 0〜5%、CeO 0.1〜1%を含有するものが好ましい。
【0074】
また、例えばBi 55%超75%以下、B 20%超45%以下、In 2〜13%、ZnO 0〜18%、BaO 0〜6%、SiO+Al+GeO 0〜10%、MgO+CaO+SrO 0〜10%、SnO+TeO+TiO+ZrO+Ta+Y+WO 0〜5%、CeO 0.1〜3%を含有するものが好ましい。
【0075】
図2は、従来の白色発光装置における点灯直後から90分経過後までの白色光の色度変化の一例を示したものである。ここで、図中右側が点灯直後の色度であり、10分間隔で90分間の測定結果をプロットしている。従来の白色発光装置については、時間の経過とともに色度座標におけるx値が低下し、白色光が青味を帯びてくる。なお、このときの表面温度は、例えば100℃程度である。
【0076】
図3〜6は、色調調整部14となるビスマスガラス(ガラスA〜D)の30〜110℃における透過率を示したものである。ここで、透過率は、厚さ2mmのビスマスガラスについて、分光光度計(Ocean Optics製、HR2000)を用いて波長380〜780nmの範囲で測定した。図3〜5のガラスA〜Cは、少なくとも第1のビスマスガラスの組成範囲を満たすものであり、図6のガラスDは、少なくとも第2のビスマスガラスの組成範囲を満たすものである。
【0077】
ガラスAは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 35.9%、B 31.4%、TiO 8.3%、TeO 18.1%、P 4.7%、ZnO 1.7%を含有する。ガラスBは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 42.9%、B 42.9%、TeO 9.5%、P 4.8%を含有する。ガラスCは、Bi 47.1%、B 34.2%、TiO 1.9%、TeO 5.8%、P 8.8%、Nb 1.2%、Ta 1.0%を含有する。ガラスDは、Bi 37.0%、B 25.0%、SiO 15.0%、TiO 3.0%、TeO 15.0%、ZnO 5.0%を含有する。
【0078】
図3〜6から明らかなように、組成によっても若干異なるがビスマスガラスは波長が380〜480nmの帯域で温度が上昇するにつれて透過率が低下する。また、概して、Biの含有量が少なくなると、全体的にグラフが高波長側に移動し、高波長側の透過率差(30℃での透過率−110℃での透過率)が大きくなり、低波長側の透過率差が小さくなる。
【0079】
なお、このときの波長420nmにおける透過率差はいずれも10%以上である。また、波長400〜435nmの帯域で透過率差はいずれも3%以上であり、波長402〜430nmの帯域で透過率差はいずれも5%以上であり、波長405〜420nmの帯域で透過率差はいずれも10%以上である。さらに、透過率差の最大値は24.4である。また、480nmを超える帯域で、30℃での透過率、110℃での透過率のいずれも70%以上である。
【0080】
このように、ビスマスガラスによれば、温度上昇に伴う青色光の増加を該温度上昇による透過率変化によって抑制できる。従って、このようなビスマスガラスからなる色調調整部14を蛍光体層13の発光面側等に配置することで、白色発光装置1の点灯直後からの色調変化、特に青味を帯びることを抑制できる。
【0081】
本発明の白色発光装置1は、透過率が変化するガラスからなる色調調整部14を設けることを除き、基本的に従来の白色発光装置と同様にして製造できる。また、色調調整部14、すなわちビスマスガラスは、溶融法、ゾルゲル法、スパッタリング法、CVD法等の気相法等によって製造できる。
【0082】
なお、色調調整部14は、例えば基板11等とは別に円板状等のものを作製しておき、基板11または蛍光体層13に公知の接着剤を用いて接着等を行うことにより固定してもよいし、蛍光体層13上に直接形成してもよい。すなわち、基板11に発光素子12を搭載し、蛍光体層13による封止を行った後、この蛍光体層13を覆うように予め作製した色調調整部14を公知の接着剤を用いて接着等を行うことにより固定してもよいし、また蛍光体層13による封止が行われた基板11に色調調整部14を直接形成してもよい。
【0083】
本発明の白色発光装置1によれば、透過率が変化するガラスからなる色調調整部14を設けることで、点灯直後から一定時間経過後においても白色光が青味を帯びる色調変化を抑制できる。このため、例えば液晶ディスプレイ等のバックライト、小型情報端末の操作ボタンにおける発光部、自動車用もしくは装飾用の照明、その他の光源として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0084】
1…白色発光装置、11…発光素子用基板、111…基板本体、112…反射枠体、113…電極、114…搭載部、12…発光素子、13…蛍光体層、14…色調調整部、15…ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光または青色光を放出する発光素子と、
前記発光素子から放出される紫外光または青色光により励起されて混合色として白色光を得る蛍光体を含有する蛍光体層と、
前記蛍光体層の発光面側に配置され、または前記蛍光体層中に分散され、透過率が変化するガラスからなる色調調整部と
を有することを特徴とする白色発光装置。
【請求項2】
前記ガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Biを20〜75%含有するビスマスガラスからなることを特徴とする請求項1記載の白色発光装置。
【請求項3】
前記ビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 20〜50%、B 15〜50%、SiO 0〜30%、TiO 0〜15%、TeO 0.1〜30%、P 0〜15%、Al 0〜10%、ZnO 0〜15%、Nb 0〜10%、Ta 0〜3%、を含有することを特徴とする請求項2記載の白色発光装置。
【請求項4】
前記ビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 25〜70%、B+SiO 5〜75%、CeO 0〜10%、Al 0〜20%、Ga 0〜20%、Al+Ga 0〜30%、ZnO+TeO+BaO+WO 0〜40%を含有することを特徴とする請求項2記載の白色発光装置。
【請求項5】
前記ビスマスガラスは、酸化物基準のモル%表示で、Bi 45〜75%、B 12〜45%、Ga 1〜20%、In 1〜20%、ZnO 0〜20%、BaO 0〜15%、SiO+Al+GeO 0〜15%、MgO+CaO+SrO 0〜15%、SnO+TeO+TiO+ZrO+Ta+Y+WO 0〜10%、CeO 0〜5%、Ga+In+ZnO 5%以上を含有することを特徴とする請求項2記載の白色発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−124250(P2012−124250A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272371(P2010−272371)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】