説明

白血病の治療のための新規な治療のための使用

本発明は、白血病、特に骨髄性白血病を治療するための新規治療用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白血病、特に骨髄性白血病の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
白血病は、骨髄および血液の癌性疾患である。4つのタイプの白血病:慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病および急性リンパ性白血病が識別可能である。
【0003】
進行の速い急性型の骨髄性白血病は、AMLまたは急性骨髄性白血病と呼ばれる。進行が漸進的で攻撃性の低い慢性型の骨髄性白血病は、CMLまたは慢性骨髄性白血病と呼ばれる。これらは、正常に分化することができずに骨髄および血液中に蓄積する骨髄細胞のクローン増殖を特徴とする、骨髄のクローン性疾患である。
【0004】
米国癌協会の研究によれば、2006年には、11,930例のAMLの新たな症例および4,500例のCMLの新たな症例が米国において診断されると推定される。2002年から2006の期間にわたって、5年生存率はAMLについて20.4%、CMLについて42.3%である(Cancer Facts and Figures 2006年、American Cancer Society、www.leukemia−lymphoma.org/)。
【0005】
1976年のFrench−American−British(FAB)分類によれば、白血病が発生する細胞の種類によって、M0からM7と呼ばれるAMLの8つのサブタイプがある(Bennettら、1976年、「Proposals for the classification of the acute leukaemias.French−American−British(FAB)cooperative group」、Br J Haematol、33(4):451−8頁)。
【0006】
CMLに罹患している患者の約95%が、白血病細胞の9番染色体と22番染色体の間の遺伝子転座を有する。フィラデルフィア染色体(Ph1)として知られるこの異常は、すべてのタイプの白血球および血小板の増殖および未制御の増大を引き起こす。
【0007】
現在、数種の薬物が白血病の治療のために利用可能である。しかしながら、白血病に罹患している患者の治療戦略の改善のためまたは既知の治療法の代替療法の開発のための新しい治療用活性化合物がなお必要とされている(Ploら、Mol Pharmacol、2002年、62:304−312頁)。
【0008】
生成物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素が、WO2007/003765中に記載されている。その化学式を以下に示す。
【0009】
【化1】

【0010】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素の調製方法も記載されている。
【0011】
この化合物がインビトロの試験において細胞に対して顕著な抗腫瘍活性を示すことができるにもかかわらず、該化合物の組織分布、血清中の生成物量、薬物動態および代謝などの新しいパラメータが、インビボでの効果の獲得に関与し、インビトロ試験に基づいて予想可能なものではない。さらに、インビトロの抗腫瘍活性は常にインビボの活性を予測するものではないことが実証されている(Cancer Res.1988年10月1日;48(19):5447−54頁、Cancer Chemother Pharmacol.1996年、38:548−552頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2007/003765号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Cancer Facts and Figures 2006年、American Cancer Society、www.leukemia−lymphoma.org/
【非特許文献2】Bennettら、1976年、「Proposals for the classification of the acute leukaemias.French−American−British(FAB)cooperative group」、Br J Haematol、33(4):451−8頁
【非特許文献3】Ploら、Mol Pharmacol、2002年、62:304−312頁
【非特許文献4】Cancer Res.1988年10月1日;48(19):5447−54頁
【非特許文献5】Cancer Chemother Pharmacol.1996年、38:548−552頁
【発明の概要】
【0014】
インビボ試験により、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素が、ヒト白血病を有する動物において顕著なインビボの抗腫瘍活性を示すことが示された。
【0015】
本発明の目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用である。白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病などの白血病および様々な骨髄増殖性症候群を意味すると解される。
【0016】
特に、本発明は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、骨髄性白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用に関する。より特に、本発明は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用に関する。より特に、本発明は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用に関する。
【0017】
本発明の目的は、哺乳動物、特にヒトの治療のための上記利用に関する。
【0018】
本発明において、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、経口経路、静脈内経路、腹腔内経路さらにまたは腹腔内経路がその後に続く静脈内経路さらにまたは経口経路がその後に続く静脈内経路によって、被験動物に投与されうる。ヒトにおいて、従来の投与経路は静脈内経路および/または経口経路である。
【0019】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は静脈内経路による投与によって使用されることが意図される。
【0020】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は経口経路による投与によって使用されることが意図される。
【0021】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は静脈内経路および経口経路による投与によって使用されることが意図される。
【0022】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は静脈内経路による投与によって使用されることが意図される。
【0023】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は経口経路による投与によって使用されることが意図される。
【0024】
本発明の1つの目的は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用であり、ここで、該薬物は静脈内経路および経口経路による投与によって使用されることが意図される。
【0025】
本発明において、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は典型的に、医薬レベルで許容可能な組成物の形態での投与のために製剤される。これらの医薬組成物は、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素または該化合物の医薬として許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物の有効用量、ならびに少なくとも1種の医薬として許容可能な賦形剤を含有する。
【0026】
上記賦形剤は、当業者に知られた通常の賦形剤から、所望の医薬品形態および投与様式に応じて選ばれる。
【0027】
経口または静脈内投与のための本発明の医薬組成物において、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素または場合によりこの塩、溶媒和物もしくは水和物は、上記障害または疾患の予防または治療のために、従来の医薬賦形剤と混合されて単位投与量剤形で動物およびヒトに投与され得る。
【0028】
PEG400 22%/Solutol 5%/G5 73%製剤は、Kasumi1腫瘍を有するマウスの静脈内経路による治療のために好ましく使用される。
【0029】
Labrasol 21%/Solutol 5%/HCl 0.001N 74%製剤は、Kasumi1またはKG1腫瘍を有するマウスの経口経路による治療のために好ましく使用される。
【0030】
PEG400 22%/Solutol 5%/G5 73%製剤は、EOL−1腫瘍を有するマウスの腹腔内経路による治療のために好ましく使用される。
【0031】
PEG400 22%/Solutol 5%/G5 73%製剤は、CTV1腫瘍を有するマウスの腹腔内経路がその後に続く静脈内経路による治療のために好ましく使用される。
【0032】
DMSO 5%/Tween80 10%/HO 85%製剤は、KG1a腫瘍を有するマウスの経口経路によるまたは腹腔内経路がその後に続く静脈内経路によるさらにまたは経口経路がその後に続く静脈内経路による治療のために好ましく使用される。
【0033】
DMSO 5%/Tween80 10%/HO 85%製剤は、K562またはCMLT1腫瘍を有するマウスの腹腔内経路がその後に続く静脈内経路による治療のために好ましく使用される。
【0034】
DMSO 5%/Tween80 10%/HO 85%製剤は、KG1腫瘍を有するマウスの静脈内経路による治療のために好ましく使用される。
【0035】
適切な単位投与量剤形は、錠剤、ソフトもしくはハードジェルカプセル、散剤、顆粒および経口液剤または懸濁剤などの経口経路による形態および静脈内投与形態を含む。
【0036】
より高いまたはより低い投与量が適切である特別な場合もあり得る。かかる投与量は本発明の範囲外のものではない。通常の慣行によれば、各患者に適した投与量は投与様式、該患者の体重および応答に応じて、医者によって決定される。
【0037】
本発明による化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素による治療は、他の治療と同時に利用可能である。特に、本発明による化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、1つ(または複数)の抗癌有効成分、特に、
アルキルスルホネート(ブスルファン(busulfan))ダカルバジン(dacarbazine)、プロカルバジン(procarbazine)、クロレタジン(cloretazine)、ナイトロジェンマスタード(クロルメチン(chlormethine)、メルファラン(melphalan)、クロランブシル(chlorambucil)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イフォスファミド(ifosfamide))、カルムスチン(carmustine)、ロムスチン(lomustine)、セムスチン(semustine)、ストレプトゾシン(streptozocine)およびアルトレタミン(altretamine)などのニトロソ尿素などのアルキル化剤;
ビンクリスチン(vincristine)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビノレルビン(vinorelbine)およびビンデシン(vindesine)などの抗悪性腫瘍性アルカロイド;
パクリタキセル(paclitaxel)またはタキソテール(taxotere)などのタキサン;
アクチノマイシン(actinomycin)およびブレオマイシン(bleomycin)などの抗悪性腫瘍性抗生物質;
ミトキサントロン(mitoxantrone)などの挿入剤;
抗悪性腫瘍性代謝拮抗剤:葉酸アンタゴニスト、メトトレキセート;プリン合成阻害剤;メルカプトプリンおよび6−チオグアニンなどのプリンアナログ;ピリミジン合成阻害剤、アロマターゼ阻害剤、カペシタビン(capecitabine)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、シタラビン(cytarabine)およびシトシンアラビノシドなどのピリミジンアナログ;ブレキナール(brequinar)およびネララビン(nelarabine);
イリノテカン(irinotecan)、エキサテカン(exatecan)、トポテカン(topotecan)、テニポシド(teniposide)、カンプトセチン(camptothecin)またはエトポシド(etoposide)などのトポイソメラーゼ阻害剤;
タモキシフェン(tamoxifen)を含む、抗癌ホルモンアゴニストおよびアンタゴニスト;
イマチニブ(imatinib)、ニロチニブ(nilotinib)、およびダサチニブ(dasatinib)、ミダウストリン(midaustorin)、ソラフェニブ(sorafenib)、レスタウルチニブ(lestaurtinib)およびタンヅチニブ(tandutinib)などのキナーゼ阻害剤;
成長因子阻害剤;
ペントサンポリスルフェート、コルチコステロイド、プレドニゾン(prednisone)およびデキサメタゾン(dexamethasone)などの抗炎症剤;
セプレン(ceplene)(ヒスタミン二塩酸塩);
ダウノルビシン(daunorubicin)、エピルビシン(epirubicin)、ピラルビシン(pirarubicin)、イダルビシン(idarubicin)、ゾルビシン(zorubicin)、アクラルビシン(aclarubicin)、アナマイシン(annamycin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、マイトマイシン(mitomycin)およびメスラマイシン(methramycin)などのアントラサイクリン;
抗癌金属錯体、プラチナ錯体、シスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)およびサトラプラチン(satraplatin);
アルファインターフェロン;
トリフェニルチオホスホラミド;
抗血管新生薬;
サリドマイド;
ティピファニブ(tipifarnib)などのファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤;
MG98などのDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤;
ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)およびHuM 195などの免疫療法アジュバント;
CT388−IL3などの生物療法剤;
GTI−2040などのアンチセンス作用物質;
ワクチン
などの抗腫瘍化合物と共に投与されることができる。
【0038】
より特に、本発明による化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、アントラサイクリンファミリーの1つまたは複数の化合物と共に投与されることができる。
【0039】
より特に、本発明による化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、ダウノルビシンと共にまたはシトシンアラビノシドと共にまたは特にダウノルビシンおよびシトシンアラビノシドと共に投与されることができる。
【0040】
本発明によれば、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、上記の病理のうちの1つにおいて有用な1つまたは複数の他の有効成分、例えば制吐剤、鎮痛剤、抗炎症剤または抗悪液質剤と共に投与されることもできる。
【0041】
本発明の化合物を放射線治療と組み合わせることも可能である。
【0042】
これらの治療は、同時に、別個に、連続的に、および/または時間をあけて投与され得る。治療は、治療される患者に応じて医師によって適合させられる。
【0043】
本発明において、生成物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、白血病の治療を可能とする投与計画にしたがって投与される。投与計画は投与経路に依存し、そして患者の身体特性に依存して異なる。この目的に適した投与計画は、異常な細胞増殖に起因する障害の治療のための治療有効性を示すものを含む。生成物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素は、目的の治療効果を得るために必要なだけ頻繁に投与され得る。
【0044】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素の白血病に対する有効性は、本発明を例解する以下の実施例におけるように実験によって決定され得る。
【実施例】
【0045】
材料および方法
(Charles River、Lyon、Franceにより提供された)Scid CB−17マウスを使用する。無作為化の時点で、動物は平均体重20−22gであり、6から9週齢である。
【0046】
完全に環境順化させるために、実験の少なくとも1カ月前に動物を受け入れる。健康な動物のみが実験に使用されることを確実にするために、腫瘍の埋め込みおよび無作為化の前日に動物の健康を検査する。すべての汚染を回避するために空気が継続的にろ過される滅菌室内のフィルタリングフード付きIII型マクロロン(macrolon)ケージ中に動物を入れる(ケージあたり最大8匹のマウス)。部屋の滅菌性を月に1回チェックする。ケージを、使用前に121℃で滅菌し、週に2回交換する。部屋の温度を22℃に、相対湿度を60±10%に維持する。動物を自然の光サイクル条件下におく。水は121℃で30分滅菌する。水の摂取を毎日視覚的に追跡し、ボトルを週に2回交換する。食餌および水は自由に与える。木屑は121℃で30分滅菌し、週に2回交換する。
【0047】
化合物の最初の投与の前日に、腫瘍を有する動物を数個の群に分類する。触知可能であるまたは所定の重量を有する2つの腫瘍を有する動物のみを選び、治療群および対照群に無作為に分配する。各群は5から10匹のマウスからなる。試験の開始時に、腫瘍の埋め込み日、腫瘍のタイプ、被験化合物および投与様式を示すカードで各ケージを標識する。
【0048】
腫瘍の埋め込みは、以下のように実施する:ドナーマウスから腫瘍を摘出した後、腫瘍を直径2から3mmの断片に分割し、リン酸緩衝生理食塩水中に入れ、適合した外套針によって両側に埋め込む。
【0049】
抗腫瘍活性の測定
腫瘍の体積およびその重量への変換は、以下の式:mgで表した重量=(a×b)/2により推定される(ここで、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長さおよび幅(mm)である。)。腫瘍をノギスで週に2回測定する。以下の表において、Pは治療開始時の腫瘍重量を示す。
【0050】
抗腫瘍活性の推定のための2つのパラメータ:死滅細胞のlog10(Log cell kill)およびT/Cを使用する。
【0051】
−死滅細胞のlog10の計算=(T−C)/3.32×Td(ここで、(T−C)は腫瘍成長の遅れであり、そしてTdは(日数で表した)腫瘍体積(および重量)倍増時間である。Tは、治療群における所定の値(例えば1000mg)に達するまでの時間の日数で表した中央値であり、Cは、対照群における同一の値に達するまで時間の日数で表した中央値である。)0.7を超える死滅細胞のlog10値は、分子の抗腫瘍活性の指標である。2.8を超える死滅細胞のlog10値は、分子の非常に高い抗腫瘍活性の指標である(J Liangら、Invest New Drugs、2005年;23(3):213−24頁)。
【0052】
−T/Cの計算:対照群の腫瘍がおよそ1000mg(群の中央値)に達したときに、治療群および対照群を評価する。次いで、各治療群の腫瘍重量の中央値を測定する。パーセントで表したT/C値((治療群の腫瘍重量/対照群の腫瘍重量)×100)は、抗腫瘍効果の指標である:42%以下のT/C値は、米国国立癌研究所(American National Cancer Institute)(NCI)による抗腫瘍活性の指標である。10%未満のT/C値は、非常に高い抗腫瘍活性を表す。
【0053】
−最後の投与後の長期間もはや腫瘍を示さず(TFS=腫瘍消失生存)、治癒したと考えられるマウスの数も分子の活性のパラメータを構成することができる。
【0054】
−被験化合物の毒性の評価:化合物と関係のある20%以上の体重減少または任意の致死の出現は、過度の毒性を有する治療であると考える。
【0055】
実施例として、化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素によって得られた結果を以下の表1から7に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【0062】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用。
【請求項2】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素またはこの水和物、塩もしくは溶媒和物の、骨髄性白血病の治療を目的とする薬物の調製のための利用。
【請求項3】
AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項2に記載の利用。
【請求項4】
静脈内経路による投与によって使用されることが意図される、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項3に記載の利用。
【請求項5】
経口経路による投与によって使用されることが意図される、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項3に記載の利用。
【請求項6】
静脈内経路および経口経路による投与によって使用されることが意図される、AML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項3に記載の利用。
【請求項7】
CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項2に記載の利用。
【請求項8】
静脈内経路による投与によって使用されることが意図される、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項7に記載の利用。
【請求項9】
経口経路による投与によって使用されることが意図される、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項7に記載の利用。
【請求項10】
静脈内経路および経口経路による投与によって使用されることが意図される、CML型の白血病の治療を目的とする薬物の調製のための、請求項7に記載の利用。
【請求項11】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素がアントラサイクリンファミリーの1つまたは複数の化合物と共に投与可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の利用。
【請求項12】
化合物N−[2−(2,1,3−ベンゾチアジアゾール−5−イルアミノ)−6−(2,6−ジクロロフェニル)ピリド[2,3−d]ピリミジン−7−イル]−N’−(1,1−ジメチルエチル)−尿素が、ダウノルビシンと共にまたはシトシンアラビノシドと共にまたは特にダウノルビシンおよびシトシンアラビノシドと共に投与し得ることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の利用。

【公表番号】特表2010−514743(P2010−514743A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543501(P2009−543501)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002171
【国際公開番号】WO2008/102075
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】