説明

皮膚、特に顔の皮膚の艶の輝きを増強するためのリポクロマン−6の化粧品組成物における使用

【課題】皮膚、特に顔の皮膚の艶の輝きを増強及び/又は取り戻すために皮膚への局所塗布のための化粧品組成物の提供。更に、該化粧品組成物の有効量の問題となる皮膚の部分への塗布を含む、艶の輝きを増強及び/又は取り戻すための皮膚、特に顔の皮膚の美容ケアの方法の提供。
【解決手段】下記式(I)の構造を有するリポクロマン−6を有効成分として含有する組成物。リポクロマン−6の濃度が0.001重量%から5重量%の間の量を含有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、皮膚、特に顔の艶の輝きを増強するためのリポクロマン−6の化粧品組成物における使用に関する。
【0002】
リポクロマン−6は、式(I)の化合物である。
【0003】
【化1】

【0004】
それは、先行技術において抗酸化剤として、遊離ラジカルスカベンジャーとして、脂質過酸化阻害剤として及びペルオキシナイトライトによって誘導される障害に対しての細胞用の保護剤として記載されている。それは、化粧品組成物において抗老化剤として使用される。
【0005】
活性酸素種(ROS)は、全ての細胞成分、炭水化物、DNA、脂質及びタンパク質を酸化する能力を有し(Daviesら、J Biol Chem,1987,262(20):9895〜901;Halliwellら、Am J Clin Nutr,1993,57(5 Suppl):715S〜24S;discussion 24S〜25S;Stadtman,Methods Enzymol,1995,258:379〜93)、その変質を招く。
【0006】
このため細胞は、さまざまな酸化種に対して、それらの種の生成部位に対して、及びそれらの生物学的標的に対して特異的な抗酸化防御機構を発達させている。
【0007】
これらの機構は、一方でメラトニン、リポ酸、コエンザイムQ、メラニン、ビタミンC及びE、並びにグルタチオン(GSH)などの低分子量の化合物を用いる非酵素的抗酸化防御を含み、次にスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ペルオキレドキシン、スルフィレドキシン、及びチオレドキシン/チオレドキシン還元酵素系などの酵素的抗酸化防御を含む。
【0008】
タンパク質は、酸化変化の好適な標的である。酸化されたタンパク質は、分解されるか又は修復されるかのいずれかであり得る。酸化されたタンパク質の分解に関与する1つの主な系は、プロテアソームである(Davies、Biochimie;2001,83(3〜4):301〜10)。酸化されたタンパク質を修復するための唯一の系は、メチオニンスルホキシド還元酵素(Msr)系であり、メチオニンスルホキシドをメチオニンに還元することによって酸化過程を逆行させる。
【0009】
ヒトにおける必須アミノ酸、メチオニンは、生理的条件下で細胞の酸化種の大部分と非常に迅速に反応することから、「トラップ」又は「スカベンジャー」系とも称されるROSの解毒に対する優れた作用物質を構成する(H、OH・、ペルオキシナイトライト、クロラミン、次亜塩素酸(Levineら、Proc Natl Acad Sci USA 1996,93(26):15036〜40;Berlettら、J Biol Chem,1997,272(33):20313〜6;Tienら、Proc Natl Acad Sci USA 1999,96(14):7809〜14)。
【0010】
タンパク質のほとんどは、それらの一次配列に少なくとも1つのメチオニンを含有し、これらのメチオニンの酸化は、タンパク質の活性の減少を生じさせる。一例は、皮膚のレベルでエラスターゼ活性を阻害するタンパク質である。これは、この阻害タンパク質のアミノ酸の一次配列中のメチオニンの酸化がエラスチンの保護についてそれを無効にするためである。
【0011】
タンパク質中のメチオニンの酸化変化は、Msr(メチオニンスルホキシド還元酵素)系の一部を構成する酵素であるMsrA及びMsrBの作用によって可逆的に修復され得る。
【0012】
酵素MsrA及びMsrB(まとめてMrsと称される)は、身体組織の至る所に遍在する。それらの役割は、メチオニンを再び形成するために、メチオニンのメチオニンスルホキシド(Met−S(O))への最初の酸化反応を逆行させることである。これは、可逆的酸化の稀な現象の1つである。それらの活性部位の3次元構造は、対称的である。2つの酵素それぞれが、メチオニンスルホキシドのジアステレオマーの1つを特異的に認識する(S型はMsrA及びR型はMsrB)。したがってそれらの役割は、相補的ではあるが、非常に特異的である。
【0013】
酸化されたタンパク質は、酸化されていないタンパク質とは異なる光学的性質を有する。円二色性の技術は、酸化されたタンパク質によって反射される光が、酸化されていないタンパク質によって反射されるものとは異なることを示している(Friguetら、Arch Biochem Biophys,1994,311:168〜73)。より疎水性になることから、それらは、より容易に凝集を生じ、且つ異常に相互に架橋する場合もある。
【0014】
酸化されたタンパク質とは別に、リポフスチンなどの蛍光化合物も細胞内に蓄積し得る(Brunkら、Free Radic Biol Med,2002,33:611〜9)。
【0015】
タンパク質及び脂質残基の酸化及び凝集から形成される蛍光色素、リポフスチンは、今日、細胞老化のマーカーであると見なされている(Termanら、Int J Biochem Cell Biol,2004,36:1400〜4)。
【0016】
結果として、酸化されたタンパク質及び/又はリポフスチンの蓄積は、皮膚レベルでの細胞周期の調節異常を生じさせ、その生得の、遺伝的に決定された色に変化を生じさせることによって皮膚及び、より具体的には皮膚の艶に、並びに観察者によるその視覚的認知に影響を有する場合がある。その時、艶は、「くすんだ」と称される。
【0017】
内因的、すなわち遺伝的に決定された、又は外因的、すなわちUVなどの外部要因によって生じるかにかかわらず、この変化は、皮膚の老化現象に関連し得る。その原因は、疾患、ストレス、喫煙又は細胞レベルでのタンパク質の酸化を誘導し得る任意の他の要因にもある場合がある。
【0018】
本発明の発明者らは、リポクロマン−6が、この分子で処置された皮膚細胞における酸化されたタンパク質の割合の低減を、タンパク質にそれらの機能を回復させるために、酵素MsrA及びMsrBをコードする遺伝子の発現を刺激することによってのみならず、酸化障害へのその可逆的修復活性を刺激することによっても生じさせることを驚くべきことに示している。
【0019】
皮膚への塗布のためのこれらの化粧品組成物におけるリポクロマン−6の使用は、したがって、細胞の適切な機能に有害な影響を与えるこれらの酸化されたタンパク質の蓄積によって生じた障害を限定でき、したがって、艶の改善に寄与する。
【0020】
リポクロマン−6の使用に由来する表皮細胞の機能の改善は、細胞再生の均一化、及び基低層から角質層に移動する角化細胞の分化の均一化も導く。角質層の細胞再生のこの均一化現象は、この角質層の表面をより均一的且つ滑らかにする。したがって入射光は、皮膚の(角質層によって形成された)表面によって、より良く反射され、観察者による、より高い輝度、より明るい皮膚の艶の視覚認知が生じる。
【0021】
したがって本発明は、第1に、艶の輝きを増強する目的のための、顔の皮膚の少なくとも一部分への塗布のための化粧品組成物中における活性剤としてのリポクロマン−6の使用を提供する。
【0022】
本発明は、皮膚、特に艶の変化が皮膚の老化に関連している部位の艶の輝きを増強及び/又は取り戻すための、身体又は顔の皮膚の少なくとも一部分への塗布のための化粧品組成物中の活性剤としてのリポクロマン−6の使用をさらに提供する。
【0023】
この新規使用の目的は、特に、前記組成物を塗布する顔の皮膚の艶の輝きを増強及び/又は取り戻すことである。
【0024】
本発明の他の目的は、皮膚の艶の輝きを増強及び/又は取り戻すための美容ケアの方法を提供することである。
【0025】
したがって、第1の本質的特徴により本発明は、皮膚、特に顔の皮膚の艶の輝きを増強及び/又は取り戻すための活性剤としてのリポクロマン−6の化粧品組成物における使用を提供する。
【0026】
本発明の有利な一実施形態により、この活性剤は、前記組成物の皮膚への塗布の後に、皮膚細胞における酸化されたタンパク質のレベルの低減を生じさせるのに十分な量で前記組成物中に含有される。
【0027】
本発明の他の有利な実施形態において、この活性剤は、タンパク質にそれらの機能を回復させるために、酵素、メチオニンスルホキシド還元酵素(Msr)をコードする遺伝子の発現及び/又はその酸化障害修復活性を刺激するのに十分な量で使用される。
【0028】
以下の実施例から明らかである通り、活性剤は、Msra及びMsrbの両方に作用し、特にMsrbに作用する。
【0029】
リポクロマン−6は、組成物の0.001重量%から5重量%の間、好ましくは0.01重量%から1重量%の間の濃度で化粧品組成物中に存在する。
【0030】
第2の本質的特徴により、本発明は、艶の輝きを増強及び/又は取り戻すための、皮膚の、より具体的には顔の皮膚の美容ケアの方法に関する。この方法は、皮膚の艶の輝きを増強する及び/又は取り戻すための薬剤としてリポクロマン−6を含む化粧品組成物の有効量の、問題の皮膚の部分への塗布を含む。
【0031】
本発明の他の特徴及び有利点は、実施例及びこれらの実施例が参照する図に関連して示される、以下の詳細な記載において明らかになる。
【0032】
より正確には、図1、2(2aから2e)及び3は、それぞれ以下を表す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例2に関連して表され、リポクロマン−6のMsr活性への作用を表す。
【図2a】実施例3に関連して表され、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞の数を評価する画像分析のさまざまなステップ(図2a、2b、2c、2d、2e)を表す。
【図2b】実施例3に関連して表され、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞の数を評価する画像分析のさまざまなステップ(図2a、2b、2c、2d、2e)を表す。
【図2c】実施例3に関連して表され、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞の数を評価する画像分析のさまざまなステップ(図2a、2b、2c、2d、2e)を表す。
【図2d】実施例3に関連して表され、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞の数を評価する画像分析のさまざまなステップ(図2a、2b、2c、2d、2e)を表す。
【図2e】実施例3に関連して表され、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞の数を評価する画像分析のさまざまなステップ(図2a、2b、2c、2d、2e)を表す。
【図3】実施例3に関連して表され、表皮細胞中の酸化されたタンパク質の量へのリポクロマン6の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例1が、遺伝子Msra及びMsrbの発現でのリポクロマン−6の効果を明らかに示すこと、及び実施例2がメチオニンスルホキシド還元酵素の活性へのこの同じリポクロマン−6の効果を明らかに示すことは注目される。
【0035】
同様に実施例3は、リポクロマン−6の存在下でのタンパク質の酸化のレベルの低減を示す。
【0036】
リポクロマン−6のこれら全ての効果は、実施例4から6において例示される組成物で得られる艶の増強の優れた特性によって確認される。
【0037】
したがって、本発明の発明者らによって示された新たな特性は、皮膚、より具体的には顔の皮膚の艶の輝きの増強が望まれる部位での全ての塗布においてリポクロマン−6を使用する可能性をもたらす。
【実施例】
【0038】
実施例1:タンパク質MsrA及びMsrBをコードする遺伝子の発現でのリポクロマン−6の効果
タンパク質MsrA及びMsrBをコードする遺伝子の基礎発現でのリポクロマン−6の効果を定量的RT−PCR(リアルタイムPCR;RT−Q−PCR)の方法によって評価する。
【0039】
選択されたモデルは、in vitro培養された正常ヒト表皮角化細胞(NHK)である。
【0040】
最初に細胞毒性試験を角化細胞について実施する。
【0041】
MTT生存率検査の結果及び細胞層の観察は、検査の残り部分についての無細胞毒性濃度の選択を導く。
【0042】
装置及び方法
1.生物学的モデル
型:正常ヒト表皮角化細胞(NHK)
培養培地:SFM培地(Invitrogen)
上皮増殖因子(EGF)0.25ng/ml及び下垂体抽出物(PE)25μg/ml(EGF、PE、Invitrogen)
ゲンタマイシン25μg/ml(Sigma)
検査培地:EGF及びPEを含まないSFM培地(SFM−PE−EGF)
【0043】
2.検査生成物
リポクロマン−6:エタノール中10mg/ml保存溶液、検査培地に0.01mg/ml及び0.005mg/mlの濃度で希釈
【0044】
3.初期細胞毒性
96ウェルプレート
細胞/ウェル:SFM−PE−EGF培地中に15000NHK
評価パラメーター:MTT加水分解、形態学的観察
【0045】
4.培養及び処置
角化細胞を播種し、完全SFM培養培地中(24ウェルプレート)で24時間前培養し、次いでSFM−PE−EGF培地に入れる。
【0046】
コンフルエンスで、細胞を検査生成物で処置するか又はせず(対照)、24時間、37℃、5%COで培養する。各処置は、3回反復で実施する。次いで培養上清を回収し、細胞層をPBS溶液(Invitrogen)でリンスし、次いでトリ−リージェント(tri−reagent)(Sigma)300μlを加える。次にプレートを−80℃で凍結する。
【0047】
5.定量的RT−PCR(RT−Q−PCR)
遺伝子msra及びmsrbの発現を、各処置の細胞層から抽出するメッセンジャーRNA(mRNA)に基づいてRT−Q−PCRによって評価する。各処置について、RNAの抽出の前に試料3個を1つに合わせる。
【0048】
5.1.逆転写
手順の主なステップは以下の通り:
供給元の手順書に従ってトリ−リージェントを使用する全RNAの抽出
DNA−フリーシステム(DNA−free system)(Ambion)での処置による混入の可能性がある微量のDNAの除去
プライマーオリゴ(dT)及び酵素スーパースクリプトII(Superscript II)(Gibco)の存在下での逆転写反応の実行
PCR反応は、以下のプライマーを用いて実施する:
【0049】
【化2】

【0050】
本研究のための参照マーカーは、以下の遺伝子である:
【0051】
【表1】

【0052】
5.2.定量的PCR
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)反応を、ライトサイクラーシステム(Light Cycler system)(Roche Molecular Systems Inc.)で、供給元によって推奨される手順に従って定量的PCRにより実施する。正確に実施するために、この分析系は、さまざまなプライマーの分析条件の事前開発を必要とする。この系は、2つの主な要素から構成される:急速な熱伝達が可能である最適化されたサーモサイクラー、及びDNAに組み込まれた蛍光強度を継続的に測定する蛍光光度計(521nmで検出)。各試料についての反応混合物(最終10μl)は、以下の通り:
1/10に希釈したcDNA 2.5μl
使用された異なるマーカーのプライマー
酵素taq DNAポリメラーゼ、マーカーSYBR GreenI(伸長ステップの過程で二重鎖DNAに組み込まれるフルオロフォア)及びMgClを含有する反応混合物(Roche)
【0053】
5.3.Q−PCRの分析
増幅されたDNAへの蛍光の取り込みは、PCRサイクルの間、継続的に測定する。この系は、PCRサイクルの関数としての蛍光の測定曲線を作成し、したがって各マーカーについての相対発現値の評価を可能にする。サイクル数は、蛍光曲線の「出口」点に基づいて決定する。所与のマーカーの分析について、試料の出口が遅くなると(高いサイクル数)、mRNAの初期コピー数が低下する。相対発現(RE)値は、以下の式:
(1/2サイクル数)×10
に従って任意単位(AU)で表される。
【0054】
結果:遺伝子msra及びmsrbの発現でのリポクロマン−6の効果
【0055】
結果を表2及び3に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
結論:結果は、リポクロマン−6が、遺伝子msrbの発現に関してより強い誘導活性を示すことを、msraに関して測定された活性と比較して表している。この結果は、メチオニンスルホキシドのR型の還元における作用の特異性を述べている。
【0059】
実施例2:リポクロマン−6によるメチオニンスルホシド還元酵素(Msr)の活性の調節
装置及び方法
1.培地及び試薬
角化細胞培養
補充K−SFM:
L−グルタミンを含むケラチノサイト−SFM(ギブコ(Gibco)(登録商標)Invitrogen)
ケラチノサイト−SFM補充(ギブコ(登録商標)Invitrogen)
リン酸緩衝液(PBS)×10 pH7.2(Sigma−Aldrich)
ペニシリン−ストレプトマイシン(Sigma−Aldrich)
ジメチルスルホキシドDMSO(Sigma−Aldrich)
ウシ胎児血清(FBS)(ギブコ(登録商標)Invitrogen)
0.25%トリプシン−EDTA溶液(Sigma−Aldrich)
Bio−Radプロテインアッセイ試薬(BioRad)
ウシ血清アルブミン(Sigma−Aldrich)
DTTジチオスレイトール(Amersham−Biosciences)
セルリティック(CelLytic)(商標)M(Sigma−Aldrich)
酢酸エチル(VWR)
シグマ−フルオルハイ(Sigma−Fluor High)(Sigma−Aldrich)
N−アセチル−(H)−メチオニン−R,Sスルホキシド基質(Amersham−Biosciences)
【0060】
2.細胞培養
角化細胞は、健康な47歳の提供者の腹部由来の皮膚の移植片から得る。
【0061】
それらを完全KSFM培地(KSFMc)で37℃、5%COで培養し、次いで液体窒素中で凍結する。
【0062】
細胞の融解
細胞を融解する前に、水浴の温度を37℃に設定し、補充KSFM培養培地(K−SFM−S)を予熱する。凍結チューブを液体窒素から取り出し、37℃の水浴に融解するまで置き、次いで開ける前に70%エタノールで洗浄する。DMSOを除くために、細胞を滅菌的手順で回収し、予熱した培地10ml中に入れ、次いで転倒により再懸濁する。
【0063】
遠心分離を200g、5分間、4℃で実施する。上清を除き、細胞沈澱をK−SFM−S培養培地2mlに回収し、T75フラスコに入れ、それを培養培地で10mlにする。
【0064】
細胞を37℃、5%CO雰囲気で湿式インキュベーターに置く。培養培地を翌日交換する。
【0065】
細胞継代
コンフルエンスに達した細胞をトリプシンの作用ではく離し、計数し、T75培養フラスコ当たり細胞2.5×10個で再播種する。
【0066】
トリプシンでの細胞の処理
培地を出して除去する。細胞をPBS緩衝液2mlで洗浄し、それを出して除去する。洗浄を2回繰り返す。予熱した0.25%トリプシン−EDTA溶液 1mlを加え、PBS緩衝液で1/2に希釈する。フラスコを5%CO、37℃のインキュベーターに1から2分間置く。トリプシンの作用をK−SFM−S、50%(FBS)培地2mlの添加によって停止させる。
【0067】
細胞を200g、5分間、4℃で遠心分離する。上清を出し、細胞沈澱を培養培地4mlに回収する。細胞をChemometec(Bioblock)からのヌクレオカウンター(NucleoCounter)で計数し、T75フラスコ当たり細胞2.5×10個でK−SFM−S培養培地10ml中に播種する。細胞を培養物中で継代P3まで維持する。継代P3で、細胞を培養物中に一晩保持し、翌日に活性物での処置に使用する。
【0068】
3.リポクロマン−6での細胞の処置
リポクロマン−6溶液の調製
リポクロマン−6粉末(供給元:Lipotec)をまず無水エタノール20μlに希釈する。次いで保存溶液をK−SFM−S培地中に10mg/mlで調製する。
【0069】
リポクロマン−6希釈系列の調製
1mg/mlの中間溶液(20μlをK−SFM−S培地200μl中に希釈)をリポクロマン−6保存溶液から調製する。
【0070】
希釈は、1mg/mlの中間溶液に基づいてK−SFM−S培地中に実施する。
【0071】
リポクロマン−6濃度系列は以下の通り。
【0072】
【表4】

【0073】
リポクロマン−6での角化細胞の処置
培地を細胞フラスコ(継代P3)から出し、異なる希釈での活性物を含有する培地で置き換える。24時間の処置後、細胞をPBS緩衝液で洗浄し、次いでトリプシンで処理する。最後に細胞をChemometec(Bioblock)からのヌクレオカウンターで計数する。
【0074】
処置は、フラスコ当たり細胞3.2から3.7×10個で実施する。
【0075】
4.ブラッドフォード法によるプロテインアッセイ:
タンパク質抽出物の調製、細胞溶解
細胞を900g、10分間、4℃で遠心分離する。細胞沈澱をPBS緩衝液1mlに回収し、1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、次いで450g、5分間、4℃で遠心分離する。沈澱をセルリティック(商標)−M緩衝液150μlに回収する。次に細胞を5℃に温度設定した撹拌器で15分間インキュベートし、15分間、12000gで遠心分離する。タンパク質上清を新たなエッペンドルフチューブに移し、5℃に保つ。
【0076】
プロテインアッセイ
標準系列の調製
ウシ血清アルブミン(BSA)1mg/mlでの保存溶液
系列は、以下の表に従って調製する。
【0077】
【表5】

【0078】
試料の調製
タンパク質抽出物を1/10に希釈し、アッセイを10μlについて、水で100μlにして実施する。各チューブは、使用時に水で1/5に希釈するBio−Radプロテインアッセイ試薬(Bio−Rad)1mlと混合する。均一化及び外気温度、5分間のインキュベート後、試料の吸光度を595nmで分光光度計(Kontron Instrument)で測定する。
【0079】
5.Msr活性の測定
アッセイの原理
Msr活性を、基質N−アセチル−(H)−メチオニン−(R,S)スルホキシドを使用することによって、25mM Tris−HCl pH7.5、10mM MgCl、15mM DTTを含有する反応混合物30μl中、37℃でタンパク質抽出物について測定する。反応は、1N HCl 500μlの添加によって停止させる。反応の生成物は、酢酸エチル1.2mlで抽出する。
【0080】
手順
所要量のタンパク質を取り、氷中に保存した2mlエッペンドルフチューブ中で、水で20.8μlの反応容量にする。0.75μlの25mM Tris−HCl、pH7.5+3μlの10mM MgCl+0.45μlの15mM DTT、続いて、水中に1/100に希釈した放射活性基質5μlを加える。チューブを撹拌し、37℃で30分間から2時間、酵素の動力学的状態に応じてインキュベートする。反応を1N HCl 500μlで停止させる。反応の生成物を酢酸エチル1.2mlで抽出し、チューブを乳濁液が得られるまで1分間撹拌する。
【0081】
外気温度での15000g、5分間の遠心分離に続いて、上部の有機層1mlを取り、シンチレーションバイアル中で計数し、シグマフルオルシンチラント(Sigma Fluor scintillant)2mlと混合する。
【0082】
6.動力学的状態の決定
Msr活性のアッセイを各点について3回反復で実施し、2回繰り返す。アッセイの状態は、以下の通り:タンパク質30μg、37℃、90分間インキュベート。
【0083】
結果
Msr活性におけるリポクロマン−6の作用を図1に示す。
【0084】
結論
培養中のヒト角化細胞へのリポクロマン−6の添加は、これらの細胞のMsr活性を刺激する。0.05%の用量で、活性は、44%まで増大する。
【0085】
実施例3:表皮細胞の酸化されたタンパク質含有量でのリポクロマン−6の効果
装置及び方法
1.細胞培養
細胞操作は、層流フード下の滅菌条件で実施する。
【0086】
2名の異なる提供者(以下、KHN002及びKHN9726と表示)で採取を実施するヒト皮膚から単離する正常ヒト角化細胞(NHK)をT75フラスコ、完全KSFM培地(KSFMc)(Invitrogen GIBCO)中で、37℃、5%COで培養し、8ウェル ラブ−テック II培養系(Nalge Nunc International)で1ウェル当たり細胞20000個で播種する。
【0087】
2.処置
48時間培養後、細胞を処置溶液(以下を参照)で処置する。
【0088】
リポクロマン−6保存溶液の調製
0.004%重量/容量リポクロマン−6溶液を調製する(溶液A)。
【0089】
これは、リポクロマン−6粉末(供給元:Lipotec)20mgをエタノール2mlに溶解する(10mg/ml溶液)ことによって行われる。溶液Aを得るために、この溶液を(保存溶液40μlをKSFm培地10mlに)希釈する。
【0090】
処置溶液の調製
処置溶液は、リポクロマン−6の正確な百分率を得るために、KSFMc培地中に上記で調製した溶液Aを希釈することによって調製する。
処置は、細胞型当たり3ウェル実施する。
対照:KSFMc
溶媒対照:KSFMc培地中のエタノールの0.1%溶液
0.001%リポクロマン
0.002%リポクロマン
【0091】
3.酸化されたタンパク質の免疫染色
48時間の処置後、KSFMcを出す。細胞をリン酸緩衝液(PBS)(PBS錠、Invitrogen GIBCO)でリンスし、次いでホルマリン(中性緩衝10%ホルマリン溶液、Sigma)で10分間、外気温度で固定する。PBSでのリンス後、培養容器を0.1%トライトン(triton)溶液(トライトンX−100、Sigma)で10分間満たし、次いでPBSでリンスする。
【0092】
次に培養容器を分解し、スライドをエタノール/硫酸混合物(98.5ml/1.5ml)中の2,4−ジニトロフェニルヒドラジンの溶液(DNPH(Fluka)300mg)中に30分間浸漬する。
【0093】
DNPHは、酸化されたタンパク質のカルボニル基と以下の反応に従って反応する:
【0094】
【化3】

【0095】
スライドをPBSでリンスする。次に細胞を1%BSA/PBS溶液(10g/l)で30分間、外気温度で覆う。
【0096】
酸化されたタンパク質に固定化されたジニトロフェニル(DNP)基は、抗DNP一次抗体によって認識される。
【0097】
この目的のために、第1ステップで、スライドを、1%BSA/PBS溶液中に1/500に希釈した一次抗体(マウスモノクローナル抗DNP抗体、Sigma)の溶液で覆い、オーブン中で60分間、外気温度でインキュベートし、次いで0.1%ツイーン(Tween)−PBS溶液(ツイーン20、Merck)でリンスする。第2ステップで、細胞を1%BSA/PBS溶液中の二次抗体溶液(アレクサフルオロ(Alexafluor)546ヤギ抗マウス、Invitrogen)で覆い、遮光して60分間インキュベートする。スライドを、次にPBS−ツイーンで、次いでPBSでリンスする。
【0098】
第3ステップで、水性封入剤(フルオレッセントマウンティングメディウム(fluorescent mounting medium)、DAKO)を数滴スライドに乗せ、次に4℃、暗所で保存する。
【0099】
4.共焦点顕微鏡での画像の取得
レーザーシャープ2000ソフトウェア(LaserSharp 2000 software)(BioRad)を用いて共焦点顕微鏡(Zeissからのアキシオプランマイクロスコープ(Axioplan microscope)及びBioRadからのクリプトン−アルゴンレーザー)によって写真を作成する。各条件について、写真3枚を×40レンズで、同一の取得パラメーター(ゲイン、絞り)に従って作成する。
【0100】
蛍光色素の励起波長は、546nmであり、発光波長は、573nmである。
【0101】
実際に、546nmの励起蛍光を細胞に共焦点レーザーによって当てる。酸化されたタンパク質を示す蛍光色素アレクサフルオロ546は、特定のフィルターによって回収され、且つ観察できる573nmに蛍光を発光する。したがって測定される蛍光は、酸化されたタンパク質の量に直接比例する。
【0102】
5.画像分析
写真は、ライカQWin(Leica QWin)画像分析ソフトウェアを用いて分析する。プログラムは、酸化されたタンパク質のレベル及び細胞数を評価するためのDNPH染色の定量を可能にする。
【0103】
プログラムは、酸化されたタンパク質の蛍光染色を検出する。可能な限り代表的な(数、大きさ、細胞密度、標識の強度)検出域を画定する。画定した領域中の酸化されたタンパク質の蛍光を測定し、同領域の細胞を細胞核を数えることによって計数する(図2a、2b、2c、2d及び2eを参照されたい)。
工程は、順に以下のステップを含む:
分析する画像を開く(図2a)
酸化されたタンパク質の染色の検出(図2b)
検出域の追跡(図2c)及び染色域の減算(図2d)
細胞の照合(図2e)。
【0104】
結果
酸化されたタンパク質でのリポクロマン−6の効果を、2つの型の正常ヒト角化細胞(NHK)について測定する。これは、画像処理システムを使用して、酸化されたタンパク質の染色の表面積、測定領域の表面積及び測定表面積中の細胞数を推定することによって行う。
【0105】
1.統計的方法
欠測データ、外れ値
基数が「/n=5」と示される、欠測値又は応答の欠如の場合以外は、これらの反応したヒト(n=6)に基づいて百分率を算出する。対応のある検定については、1つの対象に欠測値がある場合は、その対象を分析から外す。ディクソン検定を外れ値を決定するために使用する。
【0106】
統計的検定の有意性の程度
統計的分析を誤差リスクα=5%で実行する。
pは、検定の有意性を示す:
*p≦0.05の場合→S(有意)、pの値を角括弧内に記す。
*0.05≦p≦0.10の場合→Slim(境界有意)、pの値を角括弧内に記す。
*p>0.10の場合→NS(有意でない)、pの値は、記さない。
【0107】
定性データの分析
定性的課題の分散ソーティングは、総数を記録するステップ及び次いで他の可能な反応の頻度(百分率として表す)を算出するステップを含む。χ検定を百分率を比較するために使用する。
【0108】
定量データの分析
最初に記述的分析を実施する。分散分析(ANOVA)を要素のモダリティーの手法(means)を比較するために使用する。スチューデント検定を使用する場合、「T」によって示す。
【0109】
ソフトウェア
ウィンドウズNT(Windows NT)でのスタットグラフィックスプラスセンチュリオンパッケージ(Statgraphics Plus Centurion package)及びユニウィン6.0(Uniwin 6.0)。
【0110】
2.皮膚細胞の酸化されたタンパク質含有量でのリポクロマン−6での処置の効果
両側検査(対照/溶媒対照)を使用する溶媒対照を除いて、片側検査を有意性を算出するために使用する。
【0111】
【表6】

【0112】
リポクロマン−6溶液で処置した細胞における酸化されたタンパク質の割合を図3に示す。
【0113】
結論
タンパク質の酸化でのリポクロマン−6の顕著な効果が、各検査について観察される。リポクロマン−6の濃度が増大すると、標識された酸化されたタンパク質の表面積が低下する。したがって、酸化されたタンパク質の割合は、どちらか一方のリポクロマン−6溶液での処置後に有意に減少する(リポクロマン−6の0.001%又は0.002%溶液についてそれぞれ−19.43%及び−48.97%)。
【0114】
以下の表は、リポクロマン−6での処置の有効性の有意性を対照と比較して区別する。
【0115】
【表7】

【0116】
実施例4−艶の明るさを高めるしわ取りデイクリーム
組成物は、リポクロマン−6を含む水中油型乳剤である(組成物の重量と比較した重量で示す%):
リポクロマン−6 0.05
センテラ・アジアティカ抽出物 0.5
ステアレス−21 2.5
ステアリン酸グリセリル 1.1
ステアリルアルコール 5
トリカプリン酸グリセロール/カプリル酸 11.5
ブチレングリコール 3
グリセロール 2
保存剤 0.5
香料濃縮物 0.5
UVフィルター 7.5
水 qs100
クリームは、顔に、好ましくは朝に塗布する。
【0117】
実施例5−リポクロマン−6を含む「ラジアンスショット」ローション
化粧品組成物は、ローションである(組成物の重量と比較した重量で示す%):
リポクロマン−6 0.05
ブチレングリコール 3
EDTA 0.1
可溶化剤 1
香料濃縮物 0.3
エタノール 5
UVフィルター 0.1
水 qs100
例えば一日の終わりの夜に、顔に塗布する場合にローションは、顔の輝きを取り戻す。
【0118】
実施例6−リポクロマン−6を含む化粧用パウダー
化粧品組成物は、固めた粉末である(組成物の重量と比較した重量で示す%):
リポクロマン−6 0.05
保湿活性物(グリセロール) 2.4
粘着剤 3.5
UVフィルター 18
質感剤 49
結合剤 16
香料濃縮物 0.1
保存剤 0.6
色素 6
賦形剤(タルク、マイカ) qs100
顔に塗布される場合にパウダーは、着色効果を与え、顔の輝きを取り戻す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポクロマン−6を含むことを特徴とする化粧用薬剤。
【請求項2】
皮膚の艶の輝きを増強若しくは取り戻す又はその両方のためのものであることを特徴とする、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記活性剤が、前記組成物の皮膚への塗布後に皮膚細胞中の酸化されたタンパク質の割合の低減を生じるのに十分な量で使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記活性剤が、メチオニンスルホキシド還元酵素(Msr)をコードする遺伝子の発現及び/又はタンパク質の機能性を回復させるためのメチオニンスルホキシド還元酵素の酸化障害修復活性を刺激するのに十分な量で使用されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項5】
前記活性剤が顔の皮膚の美容ケアのためのものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の化粧用薬剤を美容用に活性な薬剤の1つとして含むことを特徴とする、化粧品組成物。
【請求項7】
前記活性剤が、前記組成物の皮膚への塗布後に皮膚細胞中の酸化されたタンパク質の割合の低減を生じるのに十分な量で前記組成物中に存在することを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化粧品組成物のリポクロマン−6濃度が、組成物の0.001重量%から5重量%の間であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
前記化粧品組成物のリポクロマン−6濃度が、組成物の0.01重量%から1重量%の間であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の組成物。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−43077(P2010−43077A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−177961(P2009−177961)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
2.WINDOWS
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】