説明

皮膚に固有の酵素に損傷を与える度合が低い界面活性剤系の使用

(1)アルキルエーテルスルフェート、(2)アルキルアミドプロピルベタイン、(3)アルキルポリグルコシド、エトキシル化トリグリセリドおよびクエン酸ポリグリコールエステルの塩から成る群から選択される別の界面活性剤から成る界面活性剤系を含有していて皮膚に固有の酵素に損傷を与える傾向が低い化粧および/または皮膚用体洗浄用製剤に加えてそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体または髪を洗っている時に皮膚に固有の酵素に損傷を与える度合を低くする目的でラウリルエーテルスルフェートとアルキルアミドプロピルベタインとさらなる界面活性剤の界面活性剤系を用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
定義
本明細書の目的で、皮膚に固有の酵素は、皮膚の表面または皮膚の表面近くに存在する酵素である。そのような酵素は、例えば加水分解酵素、例えばプロテアーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、スルファターゼおよびトランスグルタミナーゼなど、特にプロテアーゼ、例えば角質層のトリプシン酵素などであり得る。表1および2に、文献から公知の最も重要な「角質層酵素」を示す。
【0003】
【表1】

【0004】
【表2】

【0005】
アンモニアリアーゼはフィラグリン分解で重要な役割を果たす(非特許文献1)。ホスファターゼは、「角化エンベロープ」の形成に必須なトランスグルタミナーゼ(非特許文献2)と同様に、角質層の中で最も高い全体的活性を示す加水分解酵素である。
【0006】
本明細書の目的で、皮膚に固有の酵素の損傷は、その酵素が変性、阻害または化学的劣化によって不活性になる形態のいずれかを意味する。酵素が界面活性剤と接触すると結果として非常に頻繁に変性が起こる。非特許文献3では、界面活性剤が角質層の酸性ホスファターゼ(テープで剥ぎ取ることで得た)に対して示す影響をホスファターゼの活性を測定することで量化している。これに関連して、酵素活性の低下は酵素変性の結果としてもたらされることが確立された。さらなるデータを考慮に入れると、表面活性を示す皮膚酵素は大部分が界面活性剤に敏感であると仮定すべきである。
【0007】
公知の皮膚洗浄用製品には、例えばラウリルエーテルスルフェートとアルキルアミドプロピルベタインの混合物などが入っている。そのような製品を塗布すると皮膚に固有の酵素がある程度変性を起こすことで皮膚の損傷がもたらされる、と言うのは、そのような酵素は生理学的に重要な役割を保持しているからである。
【0008】
ラウリルエーテルスルフェートを9%以上含有しかつN−アシルアミノ酸を含有する洗浄活性製剤が特許文献1に開示されている。それらを塗布した時に特に皮膚表面に粘着して残存する界面活性剤の量は僅かであり、従って、界面活性剤を充填する結果としてもたらされる皮膚損傷に対抗するものである。本発明に従う界面活性剤組み合わせは開示されていない。
【0009】
アンモニウム塩もしくはアンモニウムイオンおよびR1R2R3C-CR4R5-NR6R7,[ここで、R1,R2 および R3 は、各々、H, OH,低級アルキル、ホスホリルオキシ、アリールであり、R4
および R5は、各々、 H, OH, 低級アルキル、ホスホリルオキシ、アリールであるか、或はR4と R5が一緒になってカルボニル基を形成しており、R6 および R7 は、各々、H, 低級アルキルであるか、或はR6 および R2 はアルキレン基であり、このアルキレン基はC原子を持つそれらと一緒に5員環を形成している]を含んで成るスキンコンディショナーが特許文献2に開示されている。他方、本発明に従う界面活性剤組み合わせは開示されていない。
【特許文献1】WO 2000/11124
【特許文献2】EP 1210933
【非特許文献1】Kuroda他、1979
【非特許文献2】Polakowska他、1991
【非特許文献3】Prottey他、1984
【発明の開示】
【0010】
(1)アルキルエーテルスルフェート、(2)アルキルアミドプロピルベタイン、(3)アルキルポリグルコシド、エトキシル化トリグリセリドおよびクエン酸アルキルポリグリコールエステルの塩から成る群から選択されるさらなる界面活性剤の界面活性剤系を含んで成っていて皮膚に固有の酵素に損傷を与える傾向が低い化粧および/または皮膚用体洗浄用製剤が従来技術の欠点を克服することを本分野の技術者が予測することができない様式で見いだした。そのような製剤またはこれの応用品を用いると、従来技術に比べて、皮膚の小片化が低下し、皮膚の粗さが低下し、皮膚の保湿が改善し、バリヤーの保全および機能が改善し、皮膚の保全および弾性が改善し、皮膚の生理機能が改善しかつ髪付属器の生理機能が改善する。
【0011】
本発明は、また、体または髪を洗っている時に皮膚に固有の酵素に損傷を与える度合を低くする目的で(1)アルキルエーテルスルフェート、(2)アルキルアミドプロピルベタイン、(3)アルキルポリグルコシド、エトキシル化トリグリセリドおよびクエン酸アルキルポリグリコールエステルスルホスクシネートの塩から成る群から選択されるさらなる界面活性剤の界面活性剤系を用いることも提供する。
【0012】
ここで、さらなる界面活性剤(3)の含有量を1重量%以上、好適には1.5重量%以上にするのが好ましい。また、前記アルキルエーテルスルフェートとさらなる界面活性剤の比率を10:0.5から10:5、特に好適には10:1から10:3、非常に特に好適には10:1.8から10:2.2にするのも好ましい。その結果として、頻繁にシャワーを浴た後でさえ、皮膚を回復させる酵素が保護されることで、皮膚の自然な平衡が支援される。また、ココイルグルタミン酸Naを本製剤に追加的に存在させるのも好適である。特に、PEG−7グリセリルココエート、ジナトリウムPEG−5ラウリルサイトレートスルホスクシネートまたはラウリルグルコシドを界面活性剤(3)として選択するのが好適である。
【0013】
アルキルポリグルコシドは構造式
【0014】
【化1】

【0015】
で表されることを特徴とする。
【0016】
特にデシルポリグルコシドおよびラウリルポリグルコシドが好適であり、それらをCognisが商標名Plantacare2000 または Plantaren 2000 または Plantaren 1200の下で販売している。
【0017】
エトキシル化グリセロール脂肪酸エステル(エトキシル化トリグリセリド)はいろいろな用途の水性洗浄用製剤で用いられている。エトキシル化度が低いグリセロール脂肪酸エステル(EO 3−12)は、一般に、再脂化剤(refatting agents)として、皮膚が乾燥した後の触感を改善する働きをし、エトキシル化度が約30−50のグリセロール脂肪酸エステルは、非極性界面活性剤、例えば香油など用の溶解助長剤として働く。エトキシル化度が高いグリセロール脂肪酸エステルは増粘剤として用いられる。本発明に従い、エトキシル化トリグリセリドを有利にはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステル、特に好適にはPEG−10オリーブ油グリセリド、PEG−11アボカド油グリセリド、PEG−11ココアバターグリセリド、PEG−13ヒマワリ油グリセリド、PEG−15グリセリルイソステアレート、PEG−9ヤシ脂肪酸グリセリド、PEG−54水添ヒマシ油、PEG−7水添ヒマシ油、PEG−60水添ヒマシ油、ホホバ油エトキシレート(PEG−26ホホバ脂肪酸、PEG−26ホホバアルコール)、グリセレス−5ココエート、PEG−9ヤシ脂肪酸グリセリド、PEG−7グリセリルココエート、PEG−45パーム核油グリセリド、PEG−35ヒマシ油、オリーブ油PEG−7エステル、PEG−6カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG−10オリーブ油グリセリド、PEG−13ヒマワリ油グリセリド、PEG−7水添ヒマシ油、水添パーム核油グリセリドPEG−6エステル、PEG−20トウモロコシ油グリセリド、PEG−18グリセリルオレエート/ココエート、PEG−40水添ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−60水添ヒマシ油、PEG−60トウモロコシ油グリセリド、PEG−54水添ヒマシ油、PEG−45パーム核油グリセリド、PEG−35ヒマシ油、PEG−80グリセリルココエート、PEG−60アーモンド油グリセリド、PEG−60月見草グリセリド、PEG−200水添グリセリルパルメート、PEG−90グリセリルイソステアレートの群から選択する。
【0018】
好適なエトキシル化油は、エトキシル化度が3−15の油、特に好適にはPEG−7グリセリルココエートまたはPEG−9ココグリセリドであり、これらは名称Tegosoft GC(Goldschmidtの)、 Cetiol He(Cognisの)またはOxypon 401 (Zschimmer& Schwarzの)の下で商業的に入手可能である。モノ−もしくはポリエトキシル化グリセロール含有量
が>20%のエトキシル化トリグリセリドが非常に特に好適である。
【0019】
クエン酸アルキルポリグリコールエステルスルホスクシネートの塩
【0020】
【化2】

【0021】
は、好適には3−10のエトキシル化度xを有し、特に好適には、これの平均エトキシル化度は5である。好適には、R=ココイル、パルミトイルまたはラウリルである。特にジナトリウムPEG−5ラウリルサイトレートスルホスクシネートが好適であり、これをGoldschmidtが名称Rewopol SB CS 50の下で販売している。
【0022】
前記個々の成分の中の1つを省くと組成物全体が示すユニークな特性に悪影響が生じる。従って、本発明の実施では本発明に従う製剤に含める前記成分の全部が便宜上必要である。
【0023】
本発明に従う製剤にまた界面活性剤を含有させることも可能である。界面活性剤は、非極性の有機物を水に溶解させることを可能にする両親媒性物質である。それらは、親水性分子部分を少なくとも1個と疎水性分子部分を少なくとも1個有する特殊な分子構造を有する結果として、水の表面張力を低くし、皮膚を湿らせ、汚れの除去および溶解をより容易にし、濯ぎを容易にし、かつ望まれるならば泡を調節する。
【0024】
界面活性剤分子が有する親水性部分は大部分が極性官能基、例えば-COO-,-OSO32-, -SO3-などである一方、疎水性部分は一般に非極性炭化水素基である。界面活性剤は一般に親水性分子部分の種類および電荷に従って分類分けされる。ここでは、下記の4群を区別することができる:
・ アニオン性界面活性剤、
・ カチオン性界面活性剤、
・ 両性界面活性剤、および
・ 非イオン性界面活性剤。
【0025】
アニオン性界面活性剤は一般にカルボキシレート、スルフェートまたはスルホネート基を官能基として有する。それらは水溶液中で媒体が酸性もしくは中性の時に負に帯電している有機イオンを生じる。カチオン性界面活性剤は、ほとんど排他的に、第四級アンモニウム基が存在することで特徴づけられる。それらは水溶液中で媒体が酸性もしくは中性の時に正に帯電している有機イオンを生じる。両性界面活性剤はアニオン基とカチオン基の両方を含有し、従って、水溶液中でpHに応じてアニオン性もしくはカチオン性界面活性
剤の挙動を示す。それらは強酸性媒体中では正の電荷を持ちそしてアルカリ性媒体中では負の電荷を持つ。それとは対照的に、それらはpHが中性の範囲の時には双性イオンであり、以下に説明の目的で例として示す如くである:
RNH2+CH2CH2COOHX- (pH = 2の時) X- = いずれかのアニオン、例えば Cl-
RNH2+CH2CH2COO- (pH= 7の時)
RNHCH2CH2COO- (pH= 12の時) B+ = いずれかのカチオン、例えばNa+
【0026】
典型的の非イオン性界面活性剤はポリエーテル鎖である。非イオン性界面活性剤は水性媒体中でイオンを生じない。
【0027】
A. アニオン界面活性剤
有利に使用可能なアニオン性界面活性剤は、
アシルアミノ酸(およびこれらの塩)、例えば
1. アシルグルタメート、例えばナトリウムアシルグルタメート、ジ−TEA−パルミトイルアスパルテートおよびナトリウムカプリリック/カプリックグルタメート、
2. アシルペプチド、例えばパルミトイル−加水分解乳蛋白、ナトリウムココイル−加水分解大豆蛋白およびナトリウム/カリウムココイル−加水分解コラーゲン、
3. サルコシネート、例えばミリストイルサルコシン、TEA−ラウロイルサルコシネート、ナトリウムラウロイルサルコシネートおよびナトリウムココイルサルコシネート、4. タウレート、例えばナトリウムラウロイルタウレートおよびナトリウムメチルココイルタウレート、
5. アシルラクチレート、ラウロイルラクチレート、カプロイルラクチレート、
6. アラニネートなど、
カルボン酸および誘導体、例えば
1. カルボン酸、例えばラウリン酸、ステアリン酸アルミニウム、マグネシウムアルカノラートおよびウンデシレン酸亜鉛、
2. エステルカルボン酸、例えばカルシウムステアロイルラクチレート、ラウレス−6サイトレートおよびPEG−4ラウラミドカルボン酸ナトリウム、
3. エーテルカルボン酸、例えばラウレス−13カルボン酸ナトリウムおよびPEG−6コカミドカルボン酸ナトリウムなど、
燐酸エステルおよび塩、例えばDEA−オレス−10ホスフェートおよびジラウレス−4−ホスフェートなど、
スルホン酸および塩、例えば
1. アシルイセチオネート、例えばナトリウム/アンモニウムココイルイセチオネート、
2. アルキルアリールスルホネート、
3. アルキルスルホネート、例えばココモノグリセリド硫酸ナトリウム、C12−14−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ナトリウムラウリルスルホアセテートおよびPEG−3コカミド硫酸マグネシウム、
4. スルホスクシネート、例えばジオクチルナトリウムスルホスクシネート、ジナトリウムラウレススルホスクシネート、ジナトリウムラウリルスルホスクシネート、ジナトリウムウンデシレンアミド−MEAスルホスクシネートおよびPEG−5ラウリルサイトレートスルホスクシネートなど、および
硫酸エステル、例えば
1. アルキルエーテルスルフェート、例えばナトリウム、アンモニウム、マグネシウム、MIPA、TIPAラウレススルフェート、ナトリウムミレス(myreth)スルフェートおよびナトリウムC12−13パレス(pareth)スルフェート、
2. アルキルスルフェート、例えばナトリウム、アンモニウムおよびTEAラウリルスルフェートなど、
である。
【0028】
B. カチオン性界面活性剤
有利に使用可能なカチオン性界面活性剤は
1. アルキルアミン、
2. アルキルイミダゾール、
3. エトキシル化アミン、および
4. 第四級界面活性剤、
5. エステル第四級品(quats)、
である。
【0029】
第四級界面活性剤は、4個のアルキルおよび/またはアリール基と共有結合しているN原子を少なくとも1個含有する。これは、pHに関係なく正電荷をもたらす。アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタインおよびアルキルアミドプロピルヒドロキシスルファインが有利な第四級界面活性剤である。本発明の目的でカチオン性界面活性剤は好適にはまた第四級アンモニウム化合物、特にベンジルトリアルキルアンモニウムクロライドもしくはブロマイド、例えばベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライドなど、またアルキルトリアルキルアンモニウム塩、例えばセチルトリメチルアンモニウムクロライドもしくはブロマイド、アルキルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロライドもしくはブロマイド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライドもしくはブロマイド、アルキルアミドエチルトリメチルアンモニウムエーテルスルフェート、アルキルピリジニウム塩、例えばラウリル−もしくはセチルピリジニウムクロライド、カチオン性質を有するイミダゾリン誘導体および化合物、例えばアミンオキサイド、例えばアルキルジメチルアミンオキサイドまたはアルキルアミノエチルジメチルアミンオキサイドなどの群からも選択可能である。特に、セチルトリメチルアンモニウム塩を有利に用いる。
【0030】
C. 両性界面活性剤
有利に使用可能な両性界面活性剤は、
1. アシル/ジアルキルエチレンジアミン、例えばナトリウムアシルアンホアセテート、ジナトリウムアシルアンホジプロピオネート、アルキルアンホジ酢酸ジナトリウム、ナトリウムアシルアンホヒドロキシプロピルスルホネート、ジナトリウムアシルアンホジアセテートおよびナトリウムアシルアンホプロピオネート、
2. N−アルキルアミノ酸、例えばアミノプロピルアルキルグルタミド、アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミドジプロピオン酸ナトリウムおよびラウロアンホカルボキシグリシネートなど、
である。
【0031】
D. 非イオン性界面活性剤
有利に使用可能な非イオン性界面活性剤は、
1. アルコール、
2. アルカノールアミド、例えばコカミドMEA/DEA/MIPA、
3. アミンオキサイド、例えばココアミドプロピルアミンオキサイド、
4. カルボン酸にエチレンオキサイド、グリセロール、ソルビトールまたは他のアルコールによるエステル化を受けさせることで生じさせたエステル、
5. エーテル、例えばエトキシル化/プロポキシル化アルコール、エトキシル化/プロポキシル化エステル、エトキシル化/プロポキシル化グリセロールエステル、エトキシル化/プロポキシル化コレステロール、エトキシル化/プロポキシル化トリグリセリドエステル、エトキシル化/プロポキシル化ラノリン、エトキシル化/プロポキシル化ポリシロキサン、プロポキシル化POEエーテルおよびアルキルポリグリコシド、例えばラウリルグルコシド、デシルグルコシドおよびココグリコシド、
6. スクロースエステル、スクロースエーテル、
7. ポリグリセロールエステル、ジグリセロールエステル、モノグリセロールエステル、
8. メチルグルコースエステル、ヒドロキシ酸のエステルなど、
である。
【0032】
また、アニオン性および/または両性界面活性剤と1種以上の非イオン性界面活性剤の組み合わせの使用も有利である。
【0033】
本発明に従う洗浄用製剤を有利にはゲルの形態にし、これに1種以上のゲル形成剤および/またはヒドロコロイドを含有させる。
【0034】
「ヒドロコロイド」は、本質的により正確な名称「親水性コロイド」の技術的省略形である。ヒドロコロイドは、主に直鎖形態を有しかつ個々の分子の間の二次的および主要原子価結合を可能にすることで網状構造の形成を可能にする分子間相互作用力を有する高分子である。それらは時には水系中でゲルまたは粘性のある溶液を形成する水溶性の天然もしくは合成重合体である。それらは水分子との結合(水和)でか或は水をそれの網状高分子の中に吸収または封じ込めると同時に水の動きを制限することで水の粘度を高くする。そのような水溶性重合体は大きな群の化学的に非常に多様な天然および合成重合体に相当し、それらに共通の特徴は水もしくは水性媒体に溶解することにある。それには、そのような重合体が水に溶解するに充分な数で親水性基を有することとあまり架橋していないことが前提条件である。そのような親水性基は現実に非イオン性、アニオン性またはカチオン性、例えば下記の如くであり得る:
【0035】
【化3】

【0036】
化粧および皮膚科学的に関連したヒドロコロイドの群は下記の如く分類分け可能である:
天然の有機化合物、例えば寒天、カラギーン、トラガカント、アラビアゴム、アルギネート、ペクチン、ポリオース、グアー粉、カロブ豆粉、澱粉、デキストリン、ゼラチン、カゼインなど、
修飾を受けた天然の有機物質、例えばカルボキシメチルセルロースおよび他のセルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなど、
完全に合成の有機化合物、例えばポリアクリル酸およびポリメタアクリル酸化合物、ビニル重合体、ポリカルボン酸、ポリエーテル、ポリイミン、ポリアミドなど、
無機化合物、例えばポリケイ酸、粘土材料、例えばモントモリロナイト、ゼオライト、シリカなど。
【0037】
本発明に従う好適なヒドロコロイドは、例えばメチルセルロース(これはセルロースのメチルエーテルを指す目的で用いられる用語である)などである。それらは下記の構造式
【0038】
【化4】

【0039】
で表されることを特徴とする。
【0040】
本発明の目的で特にセルロース混合エーテルが有利であり、それらは一般に同様にメチルセルロースとも呼ばれ、それらは主にメチル基を含有する以外に追加的に2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピルまたは2−ヒドロキシブチル基も含有する。特に(ヒドロキシプロピル)メチルセルロースが好適であり、これらは例えばDow Chemical Comp.から商標名Methocel E4Mの下で入手可能である。
【0041】
本発明に従い、また、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、即ちセルロースのグリコール酸エーテルのナトリウム塩も有利であり、この場合、構造式I中のRは水素および/またはCH2-COONaであり得る。特にAqualonから商標名Natrosol Plus 330 CSの下で入手可能なナトリウムカルボキシメチルセルロースが好適であり、これはまたセルロースゴムとも呼ばれる。
【0042】
本発明の目的で、また、キサンタン(CAS No. 11138-66-2)(これはまたキサンタンゴムとも呼ばれる)も好適であり、これはアニオン性のヘテロ多糖であり、これの製造は一般にトウモロコシ糖の発酵で行われ、これはカリウム塩として単離される。それをキサントモナス・カムペストリス(Xanthomonascampestris)および他の数種の種が嫌気条件下で産生し、これの分子量は2x10から24x10である。キサンタンはグルコースがβ−1,4−結合している鎖(セルロース)と側鎖で構成されている。そのサブグループの構造はグルコース、マンノース、グルクロン酸、アセテートおよびピルベートで構成されている。キサンタンは1番目の細菌性アニオン性ヘテロ多糖に与えられた名称である。それをキサントモナス・カムペストリスおよび他の数種の種が嫌気条件下で産生し、これの分子量は2−15 10である。キサンタンはグルコースがβ−1,4−結合している鎖(セルロース)と側鎖で構成されている。そのサブグループの構造はグルコース、マンノース、グルクロン酸、アセテートおよびピルベートで構成されている。キサンタンの粘度はピルベート単位の数で決まる。キサンタンは2日間のバッチ培養で生産され、使用された炭水化物が基になった収率は70−90%である。ここでは、25−30g/lの収率を達成する。その培養物を死滅させた後、沈澱を例えば2−プロパノールなどを用いて起こさせることで処理を行う。次に、キサンタンを乾燥させた後、粉砕する。
【0043】
本発明の目的で用いるに有利なゲル形成剤はまたカラギーン、即ち北大西洋の紅藻[これは紅藻類(Chondrus crispusおよびGigartina stell
ata)に属する]に由来する寒天の構造に類似した構造を有するゲル形成抽出液である。
【0044】
カラギーンの名前はしばしば乾燥した藻製品で用いられ、そしてカラギーナンの名前はそれの抽出液で用いられる。前記藻の熱水抽出液から沈澱させたカラギーンは無色から砂色の粉末であり、それの分子量は100000−800000の範囲でありかつスルフェート含有量は約25%である。カラギーンは温水に非常に容易に溶解し、それを冷却すると、水含有量が95−98%であってもチキソトロピーゲルを生じる。そのゲルの強度はカラギーンの二重螺旋構造によってもたらされる。カラギーナンの場合には、下記の3主成分の間で区別される:ゲルを形成するκ−画分はD−ガラクトース−4−スルフェートと3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトースで構成されていて、それらは交互に1,3および1,4位でグリコシド結合している(対照的に寒天は3,6−アンヒドロ−α−L−ガラクトースを含有する)。ゲル化しないλ−画分は1,3−グリコシド結合しているD−ガラクトース−2−スルフェートと1,4−結合しているD−ガラクトース−2,6−ジスルフェート基で構成されており、これは冷水に易溶である。1,3結合のD−ガラクトース−4−スルフェートと1,4結合の3,6−アンヒドロ−α−D−ガラクトース−2−スルフェートで構成されているι−カラギーナンは水溶性かつまたゲル形成の両方である。他の種類のカラギーンも同様に下記のギリシャ文字を付けて呼ばれる: α, β, γ, μ, ν, ξ, π, ω, χ 。存在するカチオンの種類(K+, NH4+, Na+, Mg2+, Ca2+)もまたカラギーンの溶解性に影響を与える。
【0045】
ポリアクリレートも同様に本発明の目的で有利に用いるゲル化剤である。本発明に従う有利なポリアクリレートは、アクリレート−アクリル酸アルキル共重合体、特にいわゆるカルボマーまたはカルボポール[Carbopol(商標)は実際にNOVEON Inc.の登録商標である]の群から選択したそれらである。本発明に従う有利なアクリレート−アクリル酸アルキル共重合体は特に下記の構造で表されることを特徴とする:
【0046】
【化5】

【0047】
ここで、R’は長鎖アルキル基であり、そしてxおよびyは、個々の共重合用単量体の個々の化学量論的比率を表す数を示す。
【0048】
本発明に従い、特に、商標名Carbopol(R) 1382, Carbopol(R) 981 および Carbopol(R)5984の下で入手可能であり、NOVEON Inc.からAqua SF-1として入手可能でありかつInternational SpecialtyProducts Corp. から Aculyn(R) 33として入手可能なアクリレート共重合体および/またはアクリレート−アクリル酸アルキル共重合体が好適である。
【0049】
また、アクリル酸C10−30−アルキルとアクリル酸、メタアクリル酸またはこれらのエステルの中の1種以上の単量体から作られた共重合体にスクロースのアリルエーテルもしくはペンタエリスリトールのアリルエーテルによる架橋を受けさせたものも有利である。
【0050】
INCI 名 「アクリレート/C10-30 アルキルアクリレートクロスポリマー」を持つ化合物
が有利である。特にNOVEON Inc.から商標名Pemulen TR1および PemulenTR2 の下で入手可能なそれらが有利である。
【0051】
また、INCI名「アクリレート/C12-24 パレス-25 アクリレート共重合体」(3V Inc.から商標名Synthalen(R) W2000の下で入手可能)、INCI名「アクリレート/ステアレス−20メタアクリレート共重合体」(InternationalSpecialty Products Corp.から商標名Aculyn(R) 22 の下で入手可能)、INCI 名「アクリレート/ステアレス−20 イタコネート共重合体」(National Starch から商標名Structure 2001(R) の下で入手可能)、INCI 名「アクリレート/アミノアクリレート/C10-30アルキルPEG-20 イタコネート共重合体」(National Starch から商標名Structure Plus(R)の下で入手可能)を持つ化合物および同様な重合体も有利である。
【0052】
完成化粧もしくは皮膚用製剤中の1種以上のヒドロコロイドの総量を有利には本製剤の総重量を基準にして1.5重量%未満、好適には0.1から1.0重量%の範囲になるように選択する。
【0053】
本発明の目的で、本化粧もしくは皮膚用の洗浄用乳液に入れる1種以上のポリアクリレートの含有量を0.5から4重量%、非常に特に有利には0.7から2重量%の範囲から選択するのが特に有利であり、ここで、前記重量パーセントは各場合とも本製剤の総重量が基になっている。
【0054】
また、本発明に従う製剤に錯化剤を添加するのも有利である。そのような錯化剤を有利にはエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、およびこれのアニオン、ニトリロトリ酢酸(NTA)およびこれのアニオン、ヒドロキシエチレンジアミノトリ酢酸(HOEDTA)およびこれのアニオン、ジエチレンアミノペンタ酢酸(DPTA)およびこれのアニオン、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸(CDTA)およびこれのアニオン、イミノジこはく酸テトラナトリウム、エチレンジアミンジこはく酸トリナトリウムから成る群から選択する。
【0055】
加うるに、本化粧用洗浄用組成物にコンディショニング助剤(conditioning auxiliaries)を本製剤の総重量を基準にして例えば0.001から10重量%の量で存在させてもよい。好適なコンディショニング助剤には、髪手入れ特性を改善するカチオン性重合体が含まれる。それらには、ヒドロキシセルロースとトリメチルアンモニウム置換エポキシドを基に合成されたカチオン性セルロース誘導体が含まれる。そのような界面活性剤はポリクオタニウム−10の名称で知られており、例えばUnion
Carbide CooperationからJR 400として商業的に入手可能である。
【0056】
さらなる物質:例えばカチオン性多糖、特に修飾を受けたグアー誘導体(名称JAGUAR C13Sの下で公知であり、Meyhallが販売);(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩が基になったホモ重合体および共重合体(AlliedColloids から入手可能な商標名Salcare SC92 または Salcare SC95);塩化ジアリルジメチルアンモニウム単量体が基になった重合体、例えばホモ重合体としてのポリクオタニウム−6(商標名SalcareSC30)およびアクリルアミドとの共重合体としてのポリクオタニウム−7(商標名Salcare SC10の下);アクリル酸、メタアクリレートおよび塩化メタアクリルアミドプロピルトリモニウムとの共重合体としてのポリクオタニウム−47(Calgonの商標名Merquat2001N);ビニルピロリドンとビニルメチルイミダゾリウム塩の共重合体、例えばBASFからLuviquat Careとして入手可能なポリクオタニウム−44;ビニルピロリドンとジメチルアミノプロピルメタアクリルアミドとアルキルジメチルアミノプロピルメタアクリルアミドアンモニウム塩のターポリマー(ISPの商標名StylezeW-20の下)。
【0057】
食品技術で認可されている防腐剤を本発明に従って有利に用いることができ、それらを以下にE番号を付けて挙げる。
【0058】
【表3】

【0059】
本発明に従い、また、化粧品に通常の防腐剤または防腐助剤、即ちジブロモジシアノブタン(2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタロジニトリル)、ブチルカルバミン酸3−ヨード−2−プロピニル、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、イミダゾリジニル尿素、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−クロロアセトアミド、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、DMDMヒダントイン、IPBC(ホルムアルデヒド供与体)も適切である。
【0060】
また、フェニルヒドロキシアルキルエーテル、特にフェノキシエタノールの名称の下で公知の化合物もこれが数多くの微生物に対して殺菌および殺カビ効果を有することを考慮して防腐剤として適切である。
【0061】
本発明に従う調剤に他の抗菌剤を混合することも同様に適切である。有利な物質は、例えば2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル(Irgasan
)、1,6−ジ(4−クロロフェニルビグアニド)ヘキサン(クロルヘキシジン)、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、第四級アンモニウム化合物、クローブの油、ミント油、タイムの油、クエン酸トリエチル、ファルネゾール(3,7,11−トリメチル−2,6,10−ドデカトリエン−1−オール)、および特許公開明細書 DE-37 40 186, DE-39 38 140, DE-42 04 321, DE-42 29 707, DE-43 09 372, DE-44 11 664, DE-195 41 967, DE-195 43 695, DE-195 43 696, DE-195 47 160, DE-196 02 108, DE-196 02 110, DE-196 02 111, DE-196 31 003, DE-196 31 004 および DE-196 34 019 および 特許明細書 DE-42 29 737, DE-42 37 081, DE-43 24 219, DE-44 29 467, DE-44 23 410 および DE-195 16 705 に記述されている活性材料もしくは活性材料組み合わせである。炭酸水素ナトリウムもまた有利に使用可能である。
【0062】
それにも拘らず、特定のケースでは上述した濃度データは若干過剰であるか或は若干不足している可能性があるが、いずれにせよ、本発明に従う製剤を得ることができる。そのような製剤に適した成分は非常に多種多様であることを考慮に入れると、それは本分野の技術者にとって予想外なことではなく、その結果として、本分野の技術者はそのような過剰分または不足分は本発明の本質から逸脱するものではないことを認識するであろう。
【0063】
以下に示す実施例は本発明を限定することなく本発明を説明することを意図するものである。本実施例に示す数値は個々の製剤の総重量を基準にした重量パーセントである。
【実施例】
【0064】
【表4】

【0065】
【表5】

【0066】
【表6】

【0067】
【表7】

【0068】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に固有の酵素に損傷を与える傾向が低い化粧および/または皮膚用体洗浄用製剤であって、
(1)アルキルエーテルスルフェート、
(2)アルキルアミドプロピルベタイン、
(3)アルキルポリグルコシド、エトキシル化トリグリセリドおよびクエン酸アルキルポリグリコールエステルの塩から成る群から選択されるさらなる界面活性剤、
の界面活性剤系を含んで成る製剤。
【請求項2】
体または髪を洗っている時に皮膚に固有の酵素の損傷を低減するための
(1)アルキルエーテルスルフェート、
(2)アルキルアミドプロピルベタイン、
(3)アルキルポリグルコシド、エトキシル化トリグリセリドおよびクエン酸アルキルポリグリコールエステルスルホスクシネートの塩から成る群から選択されるさらなる界面活性剤、
の界面活性剤系の使用。
【請求項3】
さらなる界面活性剤(3)の含有量が1重量%以上、好適には1.5重量%以上であることを特徴とする前請求項の1項記載の製剤もしくは使用。
【請求項4】
前記アルキルエーテルスルフェートとさらなる界面活性剤の比率が10:0.5から10:5、特に好適には10:1から10:3、非常に特に好適には10:1.8から10:2.2であることを特徴とする前請求項の1項記載の製剤もしくは使用。
【請求項5】
ココイルグルタミン酸Naが追加的に存在することを特徴とする前請求項の1項記載の製剤もしくは使用。
【請求項6】
選択する界面活性剤(3)がPEG−7グリセリルココエート、ジナトリウムPEG−5ラウリルサイトレートスルホスクシネートまたはラウリルグルコシドであることを特徴とする前請求項の1項記載の製剤もしくは使用。

【公表番号】特表2007−511579(P2007−511579A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540421(P2006−540421)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052577
【国際公開番号】WO2005/048971
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(591010376)バイヤースドルフ・アクチエンゲゼルシヤフト (20)
【氏名又は名称原語表記】BEIERSDORF AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】