説明

皮膚の疾患におけるストレスの効果を減少する方法

ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少するための方法であって、真皮の細胞及び皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する組成物の個体に対する投与を含む方法を提供する。その様な方法における使用のための組成物、及び適切な組成物を同定するための試験方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の疾患における長期的な精神的なストレスの効果を減少する方法に関する。本発明は、その様な方法における使用のための化合物、及び適切な化合物を同定するための試験方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
長期間の研究を通して、日常の出来事に由来する神経内分泌のストレスは年齢相関的な疾患の重要な要素であることが明らかにされている。更に、消費者調査において、精神的なストレスは個人が非常に関心を有しているものであることが明らかにされている。このストレスの皮膚の外観における影響、及びその基礎にある生物学的機構は殆ど明らかにされていない。
【特許文献1】US 6,068,834
【特許文献2】US 6,068,834
【特許文献3】U.S. 4,663,157
【非特許文献1】Sagarin, Cosmetics, Science and Technology 2nd Edition, Vol. 1, pp. 32-43 (1972)
【非特許文献2】McCutcheon's Detergents and Emulsifiers, North American Edition, pages 317-324 (1986)
【非特許文献3】Mezei & Gulasekharam, Journal of Pharmaceutics and Pharmacology, Vol. 34 (1982), pp. 473-474
【非特許文献4】Mezei, M., "Liposomes as a Skin Drug Delivery System", Topics in Pharmaceutical Science (D. D. Breimer and P. Speiser, eds.), Elsevier Science Publishers B. V., New York, N. Y., 1985, pp. 345-358
【非特許文献5】Cosmetics, Science and Technology 2nd Edition (1972), Vol. 1, Chapter VIII, pages 189 et seq
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者は、慢性的なストレスの効果を模倣するモデルシステムを開発し、皮膚における慢性的なストレスの効果を研究するために当該システムを使用した。当該モデルを使用して、本発明者はグルココルチコイドを使用する皮膚の細胞の慢性的な処理のような慢性的なストレスが、急性的なストレスに対して好ましく応答する皮膚の能力における減少を引き起こすことを発見した。特に、本発明者は、慢性的にストレスを受けている細胞はマトリックス分解及びマトリックス合成(皮膚の修復及び維持に必要な過程)に必要なタンパク質を発現する能力が減少していることを発見した。換言すると、本発明者は、慢性的なストレスが皮膚の疾患に対して明らかな関連を有する真皮マトリックスの再構築の欠陥を引き起こすことを発見した。
【0004】
本発明者は、慢性的にストレスを受けている皮膚細胞が、皮膚の炎症反応に関与するタンパク質の発現における増大によって示されるように、急性的なストレスに対する過敏性において優位な増大を示すことも発見した。
【0005】
これらの発見は、皮膚の疾患における精神的に誘導されるストレスのような、神経内分泌を介するストレスの効果を減少する能力を有する化合物を同定するための試験方法を開発することを可能にした。当該試験方法を使用して、本発明者は急性的なストレスに対して反応する皮膚の細胞の能力における、慢性的なグルココルチコイドの曝露の有害な効果を減少する多くの薬剤を同定した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明はヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する方法であって、真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞における、グルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する組成物の個体に対する投与を含む方法を提供する。
【0007】
関連する態様では、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果の減少において使用する組成物の製造における、真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する化合物の使用を提供する。
【0008】
好ましくは、前記組成物は経口または局所的に投与される。
【0009】
好ましい実施態様では、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、前記組成物は皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第2の物質を含む。
【0010】
好ましくは、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、前記組成物は、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸(commipheric acid)、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む。
【0011】
第2の態様では、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、本発明は、皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第2の物質を含む組成物を提供する。
【0012】
関連する態様では、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、本発明は、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む組成物を提供する。
【0013】
好ましい実施態様では、前記組成物は栄養性サプリメントまたは化粧用組成物の形態において存在する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する能力を有する化合物を同定するための方法であって、
(i)候補化合物の非存在下で細胞が慢性的なストレスを受けることを引き起こすであろう条件及び時間において、グルココルチコイドレセプターアゴニストの存在下で候補化合物と真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞を接触させる工程;
(ii)前記細胞に急性的なストレスを与える工程;
(iii)炎症性細胞のリクルートのマーカーであって前記細胞が皮膚の炎症反応に関与する細胞であるマーカー、細胞におけるマトリックス分解のマーカーであって前記細胞が真皮の細胞であるマーカー、及び/または細胞におけるマトリックス合成のマーカーであって前記細胞が真皮の細胞であるマーカーから選択される1つ以上の細胞マーカーを分析する工程;及び
(iv)候補化合物が1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるか決定する工程
を含む方法を提供する。
【0015】
好ましくは、工程(iv)は候補化合物の非存在下における前記マーカーの状態と候補化合物の存在下における前記マーカーの状態との比較を含む。
【0016】
好ましくは、前記炎症性細胞のリクルートのマーカーはICAM-1及び/またはvCAM-1の発現レベルである。
【0017】
好ましくは、前記マトリックス分解のマーカーは、MMP-1、MMP-2、及び/またはMMP-9の発現レベルから選択される。
【0018】
好ましくは、前記マトリックス合成のマーカーは、プロコラーゲン-1、コラーゲンI、及び/またはコラーゲンIIIの発現レベルから選択される。
【0019】
本発明は、ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する組成物を生産する方法であって、
(i)候補化合物の非存在下で細胞が慢性的なストレスを受けることを引き起こすであろう条件及び時間において、グルココルチコイドレセプターアゴニストの存在下で候補化合物と真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞を接触させる工程;
(ii)前記細胞に急性的なストレスを与える工程;
(iii)炎症性細胞のリクルートのマーカーであって、前記細胞が皮膚の炎症反応に関与する細胞であるマーカー;細胞におけるマトリックス分解のマーカーであって、前記細胞が真皮の細胞であるマーカー;及び/または細胞におけるマトリックス合成のマーカーであって、前記細胞は真皮の細胞であるマーカーから選択される1つ以上の細胞マーカーを分析する工程;
(iv)候補化合物が1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるか決定する工程
(v)前記1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるものとして、(iv)において同定される候補化合物の選択の工程;及び
(vi)化粧品的または薬剤的に許容可能な担体または希釈剤と前記化合物との混合の工程
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
他に規定されない限り、ここで使用されるいずれの技術用語及び科学用語も、当業者によって一般的に解される場合と同様の意味を有する。
【0021】
試験方法
本発明の試験方法は、皮膚における慢性的なストレスの効果を改善する化合物を同定するために使用されて良い。in vitroのモデルは、グルココルチコイドのようなグルココルチコイド(GC)レセプターアゴニストを使用して慢性的にストレスを受けている真皮の細胞、皮膚の炎症反応に関与する細胞、またはそれらから由来する細胞の効果を減少または防止する能力に関して薬剤を試験する際に使用される。試験化合物の非存在下では、経時的なGCレセプターアゴニストに対する細胞の曝露は、酸化ストレスのような急性的なストレスに対する前記細胞の反応における有害な効果を有する。したがって、事前の処理に続いて前記細胞に急性的なストレスを受けさせ、重要なマーカー(特に、炎症/炎症性細胞のリクルートのマーカー、マトリックス合成のマーカー、及び/またはマトリックス分解のマーカー)の状態を測定することによって、前記GCレセプターアゴニストを介するストレスの効果を測定する。
【0022】
前記試験方法における使用に適切な細胞は2つのカテゴリーに分類される:それらは(1)炎症反応に関与する細胞、及び(2)真皮の細胞であろう。
【0023】
皮膚の炎症反応に関与する細胞は、内皮細胞、脂肪細胞、免疫担当細胞、肥満細胞、ランゲルハンス細胞、及び造血起源(haemopoietic origin)の細胞、例えばTリンパ球、マクロファージ、白血球、及び好中球、並びにそれら由来の細胞を含む。好ましい細胞は内皮細胞である。
【0024】
真皮の細胞は、真皮の濾胞細胞(真皮乳頭及び結合組織鞘)、真皮線維芽細胞、毛髪の濾胞ケラチノサイト及び濾胞メラノサイト、脂腺細胞のような脂腺の細胞、並びにそれら由来の細胞を含む。好ましい細胞は線維芽細胞及びメラノサイトである。細胞は一般的に哺乳動物由来である。
【0025】
好ましい細胞タイプは、炎症状態のマーカーの測定の際には内皮細胞を含み、マトリックス代謝回転のマーカーの測定の際には真皮線維芽細胞、より好ましくは新生児の真皮線維芽細胞を含む。
【0026】
他の好ましい細胞タイプは、毛髪の着色を提供する役割を担っているために、毛髪の濾胞メラノサイトである。したがって、これらの細胞は、毛髪の色の欠損/毛髪の白髪化における精神的なストレスの効果を減少するために使用され得る薬剤を同定するための本発明の試験方法において使用されて良い。
【0027】
細胞は、細胞培養において制限された数の継代のみ受けることができる初代細胞または不死化細胞株であって良い。用語「それら由来の」は、初代細胞培養物に由来する不死化細胞株を意味することが意図される。
【0028】
当業者によく知られた標準の細胞培養技術を使用して細胞を増殖及び継代する。典型的には、特定の細胞タイプに必要とされるような動物由来の血清生産物及び増殖因子を培養培地に添加する。
【0029】
前記試験方法の第1工程では、細胞は、GCレセプターに結合して活性化する1つ以上のグルココルチコイド(GC)レセプターアゴニスト、例えばグルココルチコイドを使用する事前の処理を受ける。GCレセプターアゴニストの具体的な例には、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、コルチゾール、プレドニゾロン、及びベタメタゾンが含まれる。
【0030】
1つ以上のGCレセプターアゴニストを使用する事前の処理では、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)のような他の化合物の投与に反応して、前記アゴニストが前記細胞によって生産されて良い。しかしながら、事前の処理は、in situにおいてグルココルチコイドを生産するための細胞の刺激よりも、GCレセプターアゴニストの培養培地に対する添加(すなわち直接的な処理)を含むことが好ましい。
【0031】
典型的に、前記GCレセプターアゴニストは1nMから10μMの濃度で培養培地に添加される。
【0032】
前記細胞は、好ましくは少なくとも2日間、より好ましくは少なくとも3日または4日、最も好ましくは少なくとも5日間GCレセプターアゴニストを使用して事前に処理される。典型的には、前記GCレセプターアゴニストは、慢性的なストレスの持続的な効果をよりよく模倣するであろうために定期的に投与される(例えば毎日)。
【0033】
目的として候補薬剤がGCレセプターアゴニストの効果に対してアンタゴニストとして働くことができるか決定すべきであるために、前記事前の処理の工程の間、一般的には開始の際に候補薬剤を培養培地に添加する。このことは、GCレセプターアゴニストが添加されるのとほぼ同時に簡易的に実施される。また、典型的には、前記候補薬剤または薬剤群は定期的に添加される(例えば毎日)。
【0034】
事前の処理に続いて、細胞は急性的なストレスを受けて、急性的なストレスに対する反応を決定される。急性的なストレスは、例えばホルボールミリステートアセテートを使用する酸化ストレス、化学的なストレスの他の形態、物理的なストレス、またはUV照射の様な電磁気的なストレスを含む。
【0035】
組織培養物の上清及び/または細胞ペレットを1つ以上の適切な時点で回収し、関心のあるマーカーの状態を決定するために試験する。例えば、核酸に基づく検出技術(例えばPCRまたはハイブリダイゼーション)、または免疫試験のようなタンパク質に基づく検出技術を使用して関心のある遺伝子の発現レベルを決定してよい。
【0036】
炎症状態の適切なマーカーは、ICAM-1及びvCAMのような細胞内の接着分子(ICAMs)を含む。マトリックス合成の適切なマーカーは、プロコラーゲン-1、コラーゲンI、及びコラーゲンIIIを含み、マトリックス分解の適切なマーカーは、MMP-1、MMP-2、及びMMP-9(マトリックスメタロプロテアーゼ)を含む。
【0037】
以下に記載の本発明の方法における使用に適切な薬剤は、好ましくは媒体のみの対照の少なくとも+20%または+10%の範囲内で、GCレセプターアゴニストのみの対照と比較して、炎症状態/炎症性細胞のリクルートのマーカーのレベルを減少するであろう。
【0038】
以下に記載の本発明の方法における使用に適切な薬剤は、好ましくは媒体のみの対照の少なくとも~50%または~20%の範囲内で、GCレセプターアゴニストのみの対照と比較して、マトリックス合成のマーカー及び/またはマトリックス分解のマーカーのレベルを増大するであろう。
【0039】
関心のあるマーカーの状態を試験するための適切な時点は、典型的には特定のマーカーに依存して異なるであろう。例えば、ICAM-1の発現は急性的なストレス後の3時間から7時間の間に少なくとも1回好ましく測定される。対照的に、MMP-1の発現は、急性的なストレス後の18時間から36時間の間に少なくとも1回好ましく測定される。
【0040】
候補化合物は、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト、PPAR-γレセプターアゴニスト、AP-1/NF-kBインヒビター、PXRアゴニスト、LXRアゴニスト、コルチゾールインヒビター、及びホスファターゼインヒビターを含んで良い。一般的には、コンビナトリアルライブラリー、ペプチド及びペプチド模倣体、規定の化学物質、及び天然物ライブラリーがGCを介する慢性的なストレスのインヒビターとしての活性のスクリーニングを受けて良い。
【0041】
本発明の方法における使用のための薬剤は、皮膚への直接的なグルココルチコイドの慢性的な効果を標的とすることが意図されている。したがって、試験薬剤が、事前の処理工程の間にGCレセプターアゴニストの効果に影響を与える代わりに、急性的なストレス処理工程の間に関心のある細胞マーカーの発現に直接的に影響を与えていないことを確認することが望ましい。例えば、このことはGCレセプターアゴニストの非存在下において事前の処理工程の間に試験薬剤を含ませる対照の使用によって達成される。
【0042】
皮膚における精神的ストレスの効果を減少する方法
本発明は、皮膚の細胞、または皮膚の炎症反応に関与する細胞のグルココルチコイドに対する慢性的な曝露が、皮膚が急性的なストレスに対処することを可能にする機構を破壊することの発見に基づく。この発見の意味は、皮膚の細胞におけるグルココルチコイドの有害な効果を妨害することが、ヒト及び他の動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少するであろうということである。このことが、続いて、皮膚の疾患における精神的なストレスの効果を減少または改善するであろう。
【0043】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する方法であって、皮膚におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスの効果を阻害する能力を有する組成物、特に酸化ストレス及び/またはUV曝露のような急性的なストレスに対する皮膚の反応におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスの効果を阻害する組成物の個体に対する投与を含む方法を提供する。本発明者は、皮膚におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスの効果が、皮膚のマトリックス代謝回転における減少と急性的なストレスに対する炎症反応における増大の両者を含むことを決定しているため、1つの好ましい実施態様では、前記組成物はこれら2つの異なる効果を減少することができる。このことは、単一の活性成分、または各効果を別々に標的とする2つの異なる成分を使用して良い。
【0044】
かくして、1つの好ましい実施態様では、前記組成物は、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する第2の物質を含む。好ましくは、前記皮膚の炎症反応に関与する細胞は内皮細胞である。好ましくは、前記真皮の細胞は線維芽細胞である。
【0045】
マトリックス代謝回転は順に2つの過程、マトリックス分解及びマトリックス合成に分類され得る。好ましくは、前記組成物は両者の過程における慢性的なGCを介するストレスの有害な効果を減少する物質を含む。
【0046】
他の態様では、本発明はヒトまたは動物の毛髪の色における精神的ストレスの効果を減少する方法であって、メラノサイトにおけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスの効果を阻害する組成物、特に急性的なストレスに対する細胞の反応におけるグルココルチコイドに誘導されるストレスの効果を阻害する組成物を個体に投与することを含む方法を提供する。
【0047】
局所的または全身的のような各種の経路(例えば経口的)によって、組成物を投与して良い。一日に3回から一週に2回の頻度で、組成物を典型的に投与する。
【0048】
組成物
本発明の組成物、及び本発明の方法における使用のための組成物は、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第2の物質を好ましく含む。
【0049】
その様な物質は、PPAR-γアゴニスト、AP-1/NF-kBインヒビター、PXRアゴニスト、LXRアゴニスト、コルチゾールインヒビター、及びホスファターゼインヒビターを含む。具体的な例には、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、クコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、及びボスヴェリア抽出物が含まれる。
【0050】
更なる活性薬剤は、上記の本発明の試験方法を使用して同定され得る。特に、急性的なストレスに対する皮膚の炎症反応における慢性的なGCを介するストレスの効果を減少する活性薬剤は、炎症反応に関与する細胞を使用して、ICAM-1またはvCAMの発現のような炎症性細胞のリクルートのマーカーのための試験をする本発明の試験方法を使用して同定され得る。マトリックス代謝回転、すなわちマトリックス分解及び/またはマトリックス合成という皮膚の過程における慢性的なGCを介するストレスの効果を減少する活性薬剤は、真皮の細胞を使用して、MMP-1及び/またはプロコラーゲン-1の発現のようなマトリックス分解及び/またはマトリックス合成反応のマーカーのための試験をする本発明の試験方法を使用して同定され得る。
【0051】
1つの好ましい実施態様では、前記組成物は、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む。
【0052】
局所的な組成物
本発明の組成物は対象に局所的に投与されて良く、すなわち前記組成物を直接皮膚(頭皮を含む)の上に置くことによって、または皮膚(頭皮を含む)の上に広げることによって投与される。その様な組成物は、上記の安全且つ有効な量の活性的な物質または物質群を薬剤的に許容可能な局所的な担体と組み合わせることによって調製されて良い。
【0053】
本発明において有用な局所的な組成物は、広範囲にわたる各種の生産物のタイプに作製されて良い。これらの組成物は、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペースト、香水、ムース、及び化粧品を含むが、それらに限らない。これらの生産物のタイプは、溶液、エマルション、ゲル、真皮パッチ、及び固体を含むが、それらに限らない幾つかのタイプの担体システムを含んで良い。
【0054】
溶液として製剤化される本発明において有用な局所的な組成物は、薬剤的に許容可能な水性または有機性の溶剤を典型的に含む。用語「薬剤的に許容可能な水性の溶剤」及び「薬剤的に許容可能な有機性の溶剤」は、活性剤をその中に分散または溶解させることが可能であり、許容可能な安全な特性(例えば刺激特性及び鋭敏化の特性)を有する溶剤を意味する。適切な有機性の溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(200-600)、ポリプロピレングリコール(425-2025)、ポリビニルピロリジン、プロピレングリコール-14ブチルエーテル、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、イソプロパノール、ブタンジオール、及びそれらの混合物を含む。本発明において有用なこれらの溶液は、好ましくは約0.001%から約10%、より好ましくは約0.01%から約8%、更により好ましくは約0.1%から約5%、また更により好ましくは約0.5%から約3%の活性剤、及び好ましくは約50%から約99.99%、更に好ましくは約90%から約99%の許容可能な水性または有機性の溶剤を含有する。
【0055】
本発明において有用な局所的な組成物がエアゾールとして製剤化され、スプレーとして皮膚に適用される際には、圧縮不活性ガスを溶液組成物に添加して良い。
【0056】
局所的な組成物は、皮膚軟化剤(すなわち乾燥の防止または緩和、並びに皮膚の保護のために使用される物質)を含む溶液として製剤化されて良い。広範囲にわたる各種の適切な皮膚軟化剤は既知であり、ここで使用されて良い(Sagarin, Cosmetics, Science and Technology 2nd Edition, Vol. 1, pp. 32-43 (1972)参照)。その様な組成物は、約2%から約50%の局所的な薬剤的に許容可能な皮膚軟化剤を好ましく含む。
【0057】
前記担体がエマルションとして製剤化される際には、好ましくは約1%から約10%、より好ましくは約2%から約5%の担体システムが乳化剤を含む。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性であって良い。適切な乳化剤は、例えばMcCutcheon's Detergents and Emulsifiers, North American Edition, pages 317-324 (1986)に開示されている。
【0058】
油中水型及び水中油型といった、ローション及びクリームの様な単一のエマルションスキンケア調合剤は、化粧品業界においてよく知られている。その様なエマルションは活性剤の浸透力を安定化及び促進することができる。水中油中水型のような多相エマルション組成物も使用されて良い。一般的には、その様な単一または多相エマルションは必須な成分として水、皮膚軟化剤、及び乳化剤を含む。
【0059】
使用されて良い他のエマルション担体システムは、ミクロエマルション担体システムである。その様な系は約9%から約15%のスクアラン;約25%から約40%のシリコーン油;約8%から約20%の脂肪アルコール;約15%から約30%のポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸(商品名Tweenとして市販されている)または他の非イオン性のもの;及び約7%から約20%の水を含む。
【0060】
リポソーム性の製剤も使用されて良い。これらの製剤は活性剤を安定化し、よく浸透しない活性剤の輸送の改善も行う。その様な組成物は、Mezei & Gulasekharam, Journal of Pharmaceutics and Pharmacology, Vol. 34 (1982), pp. 473-474に記載の方法またはその変法によって、まず前記活性剤とジパルミトイルホスファリジルコリンのようなリン脂質、コレステロール、及び水の組み合わせによって調製され得る。リポソームの形成のために適切な組成物の上皮の脂質が、前記リン脂質と置き換わって良い。前記リポソーム調合剤は、次いで、上記の局所的な担体システムの1つ(例えばゲルまたは油中水型エマルション)に含まれて、リポソーム性の製剤を生産する。他の組成物、及び局所的に適用されるリポソームの化粧的/薬剤的な使用は、Mezei, M., "Liposomes as a Skin Drug Delivery System", Topics in Pharmaceutical Science (D. D. Breimer and P. Speiser, eds.), Elsevier Science Publishers B. V., New York, N. Y., 1985, pp. 345-358に記載されている。
【0061】
前記局所的な組成物がゲルまたは化粧用スティックとして製剤化される際には、その様な組成物は適切な量のクリームまたはローション製剤に対して上記に開示されているような増粘剤の添加によって製剤化されて良い。
【0062】
局所的な組成物はファンデーションのようなメークアップ生産物として製剤化されても良い。ファンデーションは、適当な量の増粘剤、顔料、及び香料を有する溶液またはローションに基づく。
【0063】
前記局所的な組成物は、上述の成分に加えて、技術が確立されているレベルで、局所的な組成物に従来使用されている広範囲にわたる各種の更なる油溶性の物質及び/または水溶性の物質を含有して良い。
【0064】
各種の水溶性の物質が前記組成物中に存在しても良い。これらの物質は、保湿剤、タンパク質及びポリペプチド、並びに保存剤を含む。更に、ここで有用である前記局所的な組成物は、染料、乳白剤(例えば二酸化チタン)、顔料、及び香料のような従来の化粧用アジュバントを含有して良い。
【0065】
本発明において有用である局所的な組成物は、安全且つ有効な量の浸透促進剤を含んでも良い。浸透促進剤の好ましい量は、組成物の約1%から約5%である。有用な浸透促進剤の例は、US 6,068,834に記載されている。他の従来のスキンケア生産物の添加物が前記組成物に含まれても良い。例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、加水分解物、サクラソウ油、ホホバ油、上皮増殖因子、ダイズサポニン、ムコポリサッカリド、及びそれらの混合物が使用されて良い。
【0066】
各種のビタミンが前記組成物中に含まれても良い。例えば、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB2、ビオチン、パントテン酸、ビタミンD、並びにそれらの混合物が使用されて良い。
【0067】
本発明の組成物中に1つ以上のサンスクリーン剤を含ませることは望ましい可能性がある。広範囲にわたる各種の従来のサンスクリーン剤が、例えば、Cosmetics, Science and Technology 2nd Edition (1972), Vol. 1, Chapter VIII, pages 189 et seqに開示されている。US 6,068,834も参照する。
【0068】
前記サンスクリーン剤は活性剤と適合しなければならない。前記組成物は、好ましくは約1%から約20%、より好ましくは約2%から約10%のサンスクリーン剤を含む。正確な量は選択されるサンスクリーン及び望まれる日焼け防止指数(SPF)によって異なるであろう。
【0069】
組成物の皮膚持続性を改善するため、特に水によって洗い落とされること、またはこすられて落とされることに対するそれらの耐久性を促進するために、薬剤が本発明の組成物のいずれかに対して添加されても良い。この利点を提供するであろう好ましい薬剤は、エチレンとアクリル酸のコポリマーである。このコポリマーを含む組成物は、U.S. 4,663,157に開示されている。
【0070】
本発明は、ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する方法に関する。その様な方法は、皮膚または皮膚の領域、例えば頭皮または顔面に対する安全且つ有効な量の本発明の組成物の投与を含む。活性薬剤の量及び適用の頻度は、皮膚の開始時の状態によって異なるであろう。
【0071】
毒性を有するレベル未満のいずれの投与量が使用されて良く、特定の投与形態、特に経口的な投与形態に関して、「投与量」は望まれる効果を提供するいずれの量でもあり、その量は適用の頻度のために十分に大きくて良い事が意図される、最大の有効量と関係なく適用される量であって良い。
【0072】
経口的な組成物中の安全且つ有効な量の活性剤が、一般的には一回の適用毎に皮膚1cm2当たり約1μgから約1mg、好ましくは一回の適用毎に皮膚1cm2当たり約2μgから約800μg、より好ましくは皮膚1cm2当たり約30μgから約700μg、最も好ましくは皮膚1cm2当たり約75μgから約250μgで適用される。適用の頻度は、典型的には、一日に約4回から一週間に約2回、より好ましくは一日に約3回から一日おきに約1回、より好ましくは一日に少なくとも2回の範囲である。
【0073】
製薬組成物
本発明の組成物は、製薬組成物を生産するために、薬剤的に許容可能である担体または希釈剤と組み合わされて良い。その様な組成物における使用のために適切な、薬剤的に許容可能な希釈剤または担体は、製薬業の技術分野においてよく知られている。本発明の組成物は、典型的には、1から90重量%の活性剤、例えば1から50重量%の活性剤を含む。
【0074】
前記製薬組成物は、錠剤、ハードゼラチンカプセル、ソフトゼラチンカプセル、原末、及び薬剤のマイクロカプセルのような固形の投与形態からなってよい。あるいは、水性若しくは非水性の溶液、エマルション、または懸濁液のような液体の投与形態からなってよい。
【0075】
経口投与のための固形組成物は本発明の好ましい組成物である。本発明の固形組成物は、錠剤及びカプセルの形態のような単回投与の形態において好ましく調製される。錠剤は、トウモロコシデンプンのような崩壊剤、及びマグネシウムステアレートのような平滑剤の存在下で、カルシウムホスフェートのような不活性希釈剤と組み合わせて活性剤を混合し、既知の方法によって混合物を錠剤化することによって適切に調製されて良い。望まれるのであれば、その様な錠剤は既知の方法(例えばセルロースアセテートフタレートの使用)によって腸溶コーティングと共に提供されて良い。同様に、添加される賦形剤と組み合わせて、または組み合わせずに任意にビーズの形態において活性剤を含有するカプセル、例えばハードまたはソフトゼラチンカプセルが、従来の方法によって調製されて良く、望まれるのであれば、既知の様式における腸溶コーティングと共に提供される。前記錠剤は、本発明の化合物の調節された放出を与えるために、当業者に既知の様式において製剤化されて良い。
【0076】
本発明の製薬組成物の調節された放出の形態は、可溶性の顆粒のような、または溶解物で満たされている急速な放出のカプセルのような即時型放出の製剤、腸溶コーティング(例えばセルロースアセテートフタレート製のコーティング)と共に提供される錠剤のような遅延型放出の製剤、特に持続型放出の製剤を含む。多くのタイプの持続型放出の製剤が当業者に既知である。典型的には、前記活性を有する配合物は、放出を遅らせるコーティング(例えばセルロースエーテルとアクリレートのコポリマー)に包まれて良く、または例えばイオン交換樹脂ビーズのような小粒子に結合されて良い。あるいは、前記活性を有する配合物は、親水性のガム(例えばキサンタンガム)、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはポリサッカリド)、ワックス、または塑性物質のような放出を遅らせる薬剤を含むマトリックスに含まれて良い。
【0077】
前記活性を有する配合物は、2つの活性薬剤が別々に存在する状態である固形の投与形態に製剤化されて良い。例えば、前記投与形態は、前記活性薬剤を異なる層に含有する2層錠剤であって良い。各薬剤の最適な放出特性を提供するために、前記異なる層を製剤化して良い。
【0078】
例えば粘性を有する液体充填剤、液体ペースト状充填剤、またはチキソトロープ液体充填剤のような液体に満たされた組成物も経口投与のために適切である。溶解物に満たされた組成物は、前記活性を有する配合物と天然植物油脂肪酸の特定のエステル(例えば各種の放出を速度を提供するGattefosse社製のGelucire(登録商標))との混合によって得られて良い。適切には、溶解物に満たされたカプセルは、10から80%の活性剤、並びに20から90%の脂肪酸エステル賦形剤(1つ以上のポリオールエステル、及び天然植物油脂肪酸のトリグリセリドを含有する)を含む。
【0079】
好ましくは、経口液体組成物は1から10重量%の活性剤を1から50重量%の希釈剤と共に含み、その残部は滅菌水で構成される。任意に、前記組成物は懸濁剤、増粘剤、アルコールのような補助溶剤、及び/または保存剤を含有して良い。適切な希釈剤は、例えばソルビトール、キシリトール、またはスクロースのような甘味剤を含む。適切な懸濁剤または増粘剤はセルロースガム、寒天、または天然ガム、例えばキサンタンガムを含む。矯味剤または当業者に機知である他の味を隠す薬剤、例えばサッカリン、ナトリウムサッカリン、アセスルファムK、またはアスパルテームを添加して良い。
【0080】
非経口の投与に適切な本発明の組成物は、その様な投与のための既知の薬剤の形態と活性剤の組み合わせによって調製されて良く、例えば、生理食塩水のような適切な溶剤中における活性剤の滅菌懸濁液または滅菌溶液である。
【0081】
投与の好ましい方法は、経口、局所、及び非経口である(例えば、皮下注射、筋肉内注射、関節内注射、及びその類似の方法)。かくして、投与の特定の方法は、経口、経皮、粘膜、舌下、筋肉内、静脈内、腹膜内、及び皮下への投与、並びに局所的な投与を含むが、それらに限らない。最も好ましい適用の方法は局所または経口である。
【0082】
投与される化合物の量は、特に経口投与が使用される際に、製薬組成物に由来する化合物の生物学的利用能に依存する。典型的には、しかしながら、本発明の化合物は、約0.01mg/kg(体重)から約100mg/kg、好ましくは約0.1から約30mg/kg(体重)の量で投与される。前記製薬組成物の量はその製剤内の化合物の割合に依存し、これは一回の投与に必要とされる化合物の量、その安定性、放出特性、及び他の製薬パラメーターの関数である。
【0083】
注射剤投与の好ましい方法は、使用される特定の活性剤の可溶性及び安定性に依存する。
【0084】
記載される投与の経路及び投与量は、当業者がいずれの特定の患者および疾患のための最適な投与の経路及び投与量を容易に決定することができる誘導としてのみ意図される。
【0085】
全身投与の他の方法は、薬理学的に許容可能な担体の使用を必須に必要としない食品生産物中における前述の組成物のいずれかの投与を含む
【0086】
ここで使用される、用語「食品生産物」は、食品生産物自体と飲料の両者を含む。適切な食品生産物自体として、スプレッド、乳製品(ミルク及びヨーグルトを含む)、デザート、インスタント食品/スナック、朝食用シリアルとシリアルバー、料理済みの食料(ready-cook meal)、パン、並びにアイスクリーム、シャーベットとソルベ、及びヨーグルトアイスクリームのような氷菓子が挙げられる。食品生産物には、栄養補助食品/栄養性サプリメントが含まれる。適切な飲料として、茶、茶風味の飲料、コーヒー、ソフトドリンク(例えば、炭酸スカッシュなど)、及びフルーツジュースが挙げられる。
【0087】
それらが通常含む量より多い量の活性成分を含有するために、前記食品生産物には典型的に本発明の活性成分が添加される。
【0088】
ここで本発明は、単に実例であり制限するものではない以下の実施例に関連して更に記載されるであろう。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
内皮細胞の炎症状態における慢性的なストレスの効果
【0090】
実験アプローチの概要
内皮細胞の炎症状態における慢性的なストレスの影響を研究するために、in vitroモデルを開発した。
a.細胞を6-ウェル(9.5cm2)プレートにおいて増殖させる。
b.前記細胞に「慢性的なストレス」を与えるために、合成グルココルチコイド(デキサメタゾン)を使用する事前の処理を5日間、毎日実施する。
c.組織培養物の上清及び細胞ペレットを時点T0で回収する。
d.1μM ホルボールアセテートミリステート (PMA)を使用して前記細胞に酸化ストレスを与える。
e. 組織培養物の上清及び細胞ペレットをPMA処理後の6、24、及び48時間(各々T6、T24、及びT48)に回収した。
f.細胞傷害性の測定としてラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)、及びインターロイキン-6の合成に関して、全ての組織培養物の上清を試験した。
g.全ての細胞を計数し(Beckman Coulter Counter)、ペレットにし、ICAM-1(細胞内接着分子1)の発現に関して細胞溶解物を試験した。
【0091】
原料及び方法
内皮細胞の培養
ヘパリン、VEGF(血管内皮増殖因子)、ゲンタマイシンスルフェート、アスコルビン酸、HEGF(ヒト内皮増殖因子)、ヒドロコルチゾン、HFGF-B(ヒト線維芽細胞増殖因子B)、R3-IGF-1(ロング(long)Rインスリン様増殖因子1)、及びFBS(ウシ胎仔血清)を添加しているEGM-2(内皮増殖培地、Biowhittaker)中でHUVEC細胞(ヒト臍静脈内皮細胞、TCS Biologicals)を培養し、継代した。
【0092】
VEGF(血管内皮成長因子)、ゲンタマイシンスルフェート、アスコルビン酸、ヒドロコルチゾン、HFGF-B(ヒト線維芽細胞増殖因子B)、R3-IGF-1(ロングRインスリン様増殖因子1)、及びFBS(ウシ胎仔血清)を添加しているEGM-2 MV(微小血管内皮増殖培地、Biowhittaker)中でHMVEC-d細胞(ヒト真皮微小血管内皮細胞、Clonetics)を培養し、継代した。
【0093】
実験を開始する48時間前に1ウェルに2mlの完全培地中において~5000細胞/cm2の播種密度で、細胞を6-ウェル組織培養皿に常法に従って平板培養し、5%CO2中37℃でインキュベートした。
【0094】
試験溶液の添加
ヒドロコルチゾンを除く全添加物を含むEGM-2中において事前処理溶液及び試験溶液を調製した。
【0095】
1μMデキサメタゾン(合成グルココルチコイド、Sigma D8893)または1から100nM CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、Calbiochem 05-23-0050)を使用して、内皮細胞を5日間、毎日事前処理した。これに続いて、1μM PMA(Sigma P8139)を使用して24時間、細胞に酸化ストレスを与えた。
【0096】
事前処理の間に細胞に対してレセプターアンタゴニストを添加した。これらのアンタゴニストは、グルココルチコイドレセプターアンタゴニスト;2μMミフェプリストン(Sigma M8046)、並びに2つのCRHレセプターアンタゴニスト;200nMアストレシン(Sigma A4933)及び200nMα-へリックス状CRFペプチドアンタゴニスト(Sigma C2917)を含んだ。
【0097】
5日間、毎日0.1%エタノール媒体を使用する内皮細胞の事前処理、それに続いてPMAを、グルココルチコイドまたはCRHのいずれかと共に添加することによって、急性的なデキサメタゾン及び組換えCRHの効果も研究した。
【0098】
サンプルの回収及び細胞数
前記細胞が回収される前に細胞の形態における、いずれの変化も記録した。5日間の事前の処理時(T0)、PMAの添加後6時間及び24時間(T6及びT24)、並びにPMAの除去後24時間(T48)で組織培養物の上清と内皮細胞の両者を得た。全ての組織培養物の上清は-20℃で保存した。
【0099】
1mlのトリプシン/EDTA溶液(Invitrogen 25300-054)を各ウェルに添加し、細胞が剥がれるまで37℃でプレートをインキュベートした。アキュベット(accuvette)中で50μlのこの細胞の懸濁液を9.95mlのIsoton II(Beckman Coulter)に添加し、140μmの絞りでCoulter Particle Counter Z1中において0.5mlのこの懸濁液を2回計数した。
【0100】
10分間、微小遠心分離機において13000rpmで残存する950μlの最初の細胞懸濁液を遠心分離した。上清を廃棄し、500μlのDulbecco's PBSを使用して細胞ペレットを洗浄し、前述のように遠心分離した。前述のように上清を廃棄し、細胞を溶解するまで細胞ペレットを-20℃で保存した。ペレット毎の細胞数はCoulter Counterのデータから概算した。
【0101】
細胞傷害性試験(Promega)
Promega CytoTox 96非放射活性細胞傷害性試験を使用して細胞傷害性に関して、全ての組織培養物の上清を試験した。この試験は細胞の溶解において放出されるラクテートデヒドロゲナーゼ(LDH)を定量的に測定する、細胞の生存度の良好な目安である。50μlの組織培養上清または対照培地を96-ウェルマイクロタイタープレートの2つの全く同じウェルに添加した。50μlのCytoTox試薬をウェルに添加し、混合した。前記プレートを30分間、室温で暗所においてインキュベートした。この後、50μlの停止溶液を各ウェルに添加し、492nmにおけるプレートの吸光度を読み取った。対象培地の値の2倍より大きい吸光度を与えるいずれの試験サンプルも細胞傷害性であると解される。細胞傷害性のいずれかの兆候を示したサンプル由来の結果は含まれていない。
【0102】
細胞溶解物の調製
2.5×106の細胞数に対して1mlの細胞溶解緩衝液において30分間、氷上で全ての細胞ペレットを溶解した。前記溶解緩衝液は、pH7.6で1% NP-40、0.1% ナトリウムデオキシコレート、0.1% SDS、6mM塩化ナトリウム、及び0.05M Trisを含有した。プロテアーゼインヒビターカクテル(1000×;Sigma P8340)を溶解緩衝液1ml当たり10μlのレベルで使用の前に添加した。部分的に溶解された細胞ペレットをペレットペッスルを使用して完全に均一にし、不要な細胞の残骸を4℃、20,000g、20分間の遠心分離によって除去した。澄んだ細胞溶解物を必要時まで-80℃で凍結させた。
【0103】
総タンパク質量の試験(Pierce)
各細胞溶解物の総タンパク濃度をPierce BCAタンパク質試験キットを使用して測定した。0から1200μg/mlタンパク質の範囲の8つの標準溶液のセットを、提供されている2mg/ml BSA貯蔵溶液から調製した。10μlの標準溶液または細胞溶解物を平底96-ウェルマイクロタイタープレートの2つの全く同じウェルに添加した。キットの説明書に従って50部の試薬Aと1部の試薬Bから試薬溶液を調製した。マイクロタイタープレートの各ウェルに200μlの最終的な試薬を添加した。プレートを混合し、蓋をして、30分間37℃でインキュベートして、562nmにおける吸光度を読み取った。
【0104】
タンパク質の標準曲線が作図され、各細胞溶解物のタンパク質濃度を決定するために使用した。
【0105】
ICAM-1 ELISA (R&D Systems)
製造業者の説明書に従い、ヒトsICAM-1 DuoSet ELISA kit (R&D Systems DY720)を使用して、各細胞溶解物中のICAM-1タンパク質を概算した。
【0106】
捕捉抗体を4μg/mlの終濃度でPBSに希釈し、室温で一晩96-ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルをコーティングするために100μlを使用した。次いで、前記プレートを洗浄緩衝液を使用して3回洗浄した(0.05% Tween 20のPBS溶液)。300μlの妨害緩衝液(1% BSA、5% スクロース、及び0.05% ナトリウムアジドのPBS溶液)を各ウェルに添加し、プレートを一時間室温でインキュベートして、前述のように洗浄した。次いで各細胞溶解物を試薬希釈剤(1% BSAのPBS溶液)中に1/200に希釈し、抗体でコーティングしたプレートの2つの全く同じウェルに100μlを添加した。8つのICAM-1標準液を0から1000pg/mlの範囲の濃度で試薬希釈剤中において調製し、2つの全く同じ100μlの標準液をプレート上の適当なウェルに添加した。各プレートに標準液の別々のセットを決まって使用した。前記プレートを2時間室温でインキュベートして、更に洗浄した。100μlの検出抗体(100ng/mlの終濃度で希釈)を各ウェルに添加し、プレートを2時間室温でインキュベートした。前記プレートを前述のように洗浄した。試薬希釈剤中に1/200に希釈した100μlのストレプトアビジン-HRP複合体を各ウェルに添加し、プレートを20分間、暗所において、室温でインキュベートした。前記プレートを最後に洗浄し、100μlの基質溶液(色試薬Aと色試薬Bの1:1混合物、R&D Systems DY999)を各ウェルに添加した。暗所における20分間のインキュベート後、50μlの2N硫酸の添加によって発色を停止した。570nmにおける補正波長のセットと共に、前記プレートの吸光度を450nmで測定した。
【0107】
標準曲線は、ICAM-1濃度に対する平均吸光度をプロットし、回帰分析によって計算される最適な線であった。サンプル中のICAM-1の未知の濃度は、溶解物の希釈係数を考慮に入れて、この曲線から計算した。
【0108】
細胞数及び総タンパク質濃度における相違の正規化のために、総タンパク質1mgあたりのICAM-1のng単位で最終的な結果を表した。
【0109】
インターロイキン-6 ELISA (R&D Systems)
製造業者の説明書に従い、QuantiGlo Q6000ヒトIL-6試験(R&D Systems)を使用して、各組織培養物の上清のIL-6タンパク質濃度を試験した。
【0110】
0から3000pg/mlの範囲の濃度で較正希釈剤中において6つのIL-6標準液を調製した。50μlの試験希釈剤、及び150μlの組織培養物の上清または標準液を2つの全く同じウェルに添加した。前記プレートを水平軌道プレート振とう機上で2時間室温でインキュベートした後、洗浄緩衝液を使用して4回洗浄した。200μlのIL-6複合体を各ウェルに添加し、水平軌道プレート振とう機(~500rpm)上で3時間室温でインキュベートした。前記プレートを前述のように洗浄した。200μlの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを40分間、ベンチトップ上、室温でインキュベートした。1分間のラグタイム、1秒/ウェルの読み取り時間、加算モード、及び自動採光に設定されたルミノメーターを使用して各ウェルの相対的な光の単位(RLU)を決定した。
【0111】
標準曲線は、IL-6の濃度に対するRLUの平均値をプロットし、回帰分析によって計算される最適な線であった。全てのサンプルにおけるIL-6タンパク質の未知の濃度は、この曲線から概算した。
【0112】
結果
HUVECのICAM-1合成における慢性的な1μMグルココルチコイド処理に続く1μM PMAを使用する酸化ストレスの効果
慢性的なストレスを与えた内皮細胞に1μM PMAを使用して酸化ストレスを与え(原料及び方法の部における記載の様に)、細胞を所定の時点で回収し、ICAM-1の発現における変化を測定した(t0、t6、t24、及びt48)。この更なる急性的なストレス(24時間)は、皮膚に対する損傷及び/または傷害(例えばUV照射)の模倣として使用される。対照である未処理の細胞と直接的に比較した際に、ICAM-1合成及び分泌における有意に大きな誘導が認められた(図1参照)。更に、ICAM-1合成の誘導は酸化ストレスの事前にグルココルチコイド処理を受けていない細胞よりも、酸化ストレスの事前にグルココルチコイド処理を受けている細胞のほうが優位に大きかった。
【0113】
このICAM-1の誘導は、皮膚における炎症性細胞のリクルートのより高い程度を反映していると解される。
【0114】
これらの実験はHMVEC-d細胞を使用して繰り返した。同様の結果が得られた。
【0115】
1μM PMAを使用する酸化ストレス中のHUVECのICAM-1合成における急性的な1μMグルココルチコイド処理の効果
内皮細胞モデルにおいて「急性ストレス」の効果を試験した。必須に、媒体のみを使用して事前に処理されている(5日間)内皮細胞に対して、PMAの添加と同時に合成グルココルチコイドを添加した。急性的なGC処理はICAM-1発現の酸化ストレス後の誘導を効果的に抑制することで、内皮細胞における炎症状態を減少した。
【0116】
これらの実験はHMVEC-dを使用して繰り返した。同様の結果が得られた。
【0117】
HUVECの慢性的な1μMグルココルチコイド処理に続く1μM PMAを使用する酸化ストレスの間のICAM-1合成におけるGCレセプターアンタゴニスト(2μMミフェプリストン)の効果
慢性的なGC事前処理工程の間に細胞に対してGCレセプターアンタゴニスト(ミフェプリストン)を添加した際に、慢性的なGC処理を受けていない細胞で見られる程度以下まで、PMAを使用する処理後の酸化ストレスに誘導されるICAM-1の発現における増大の有意な減少が存在した(図3)。これらの結果は、ICAM-1の発現におけるストレスに誘導される増大がGCレセプターを介することを示す。
【0118】
これらの実験はHMVEC-d細胞を使用して繰り返した。同様の結果が得られた。
【0119】
1μM PMAを使用する酸化ストレス中のHUVECにおけるICAM-1合成への副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン処理の効果
ストレスは皮膚の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の強力な活性化を引き起こし、続いてPOMC及びそのペプチド誘導体の全てを介して、コルチコステロイドを誘導する。CRHは、皮膚における視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の誘導及び開始の調節に、重要で主要なペプチドの1つである。CRHを使用するHUVECの慢性的な処理が、慢性的なGC処理細胞において認められるICAM-1のレベルと同様の悪化を引き起こすかどうか試験した。
【0120】
5日間、毎日組換えCRHを内皮細胞に添加した。次いで、前述のように処理及び未処理の細胞の両者に酸化ストレスを与え、24時間にわたる各時点で細胞を回収した。
【0121】
組換えCRHを使用する内皮細胞の慢性的な処理は、ICAM-1分泌における有意な増大を引き起こし、より高い程度の炎症を示した(データは示さない)。しかしながら、ICAM-1合成の増大は、CRH処理細胞よりもGC処理細胞において常により大きいようであった。
【0122】
CRH事前処理の工程中にCRHレセプターアンタゴニスト(アストレシン;α-へリックス状CRFペプチドアンタゴニスト)を含ませることは、CRHを使用して慢性的に処理された内皮細胞における、酸化ストレス後に増大されるICAM-1の誘導を部分的にのみ妨害した(データは示さない)。これらの細胞によって合成されるICAM-1のレベルは、5日間のCRHを使用する事前の処理後の酸化ストレスによるレベルの約半分まで減少した。驚いたことに、ICAM-1の合成はグルココルチコイドレセプターアンタゴニスト(ミフェプリストン)を使用して過去に認められたような基礎レベルまで戻らなかった。ミフェプリストンは、GCを使用して慢性的に処理された内皮細胞におけるPMAを使用する酸化ストレスによって誘導され増大されるICAM-1の分泌を完全に妨害した(図3参照)。この部分的な妨害の効果は、無効なレセプターアンタゴニストであるためという可能性があり、または、実際にはCRHレセプターがICAM-1の誘導に主に関与しているのではない可能性がある。組換えCRHはGCの刺激を介して、組み合わされたCRH/GC反応を引き起こす可能性がある。GCレセプターアンタゴニストの滴定は、これらのICAM-1レベルを更により抑制する可能性がある。
【0123】
ヒト臍静脈内皮細胞によるIL-6の発現の変化
媒体で処理された細胞と比較した際にGCで処理された慢性的にストレスを受けた内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレス後のインターロイキン-6の合成及び分泌における増大を認めた。媒体またはグルココルチコイドのみでは、IL-6の増大された分泌を誘導しなかった。
【0124】
考察
本発明者は、組換えグルココルチコイドの添加が、内皮細胞におけるPMAに刺激されるICAM-1の発現への新規な多岐にわたる効果を示すことを明示した。本発明者の結果は、内皮細胞におけるGCの慢性的な処理が、対照の未処理の細胞と比較して炎症状態を有意に増大する方法を初めて記載している。しかしながら、対照的にGCの急性的な投与は前記炎症状態を有意に抑制する。本発明者は、急性的及び慢性的なGC処理に対する内皮細胞の劇的に異なる反応は、皮膚内の増大する機能不全である局所的なHPA軸の生産によって引き起こされる可能性があると主張している。皮膚における炎症の典型的に高いレベルは、その全てが皮膚の疾患における悪化の一因となる可能性がある炎症性のサイトカイン及びプロテアーゼの生産及び刺激を引き起こす可能性がある。このメカニズムの仮説は、内皮細胞の急性的及び慢性的なCRH処理に続く同様な観察によって更に確認した。
【0125】
IL-6は、HPA軸の機能の調節に役立つ免疫系の多くの媒介物質の1つである。IL-6は、IL-1α及びTNF-αのカスケード様の生産の結果として通常は放出される。驚いたことに、本発明者はGC処理または未処理の内皮細胞の上清に、これらの炎症性のサイトカインを検出することができなかった(データは示さない)。投与量依存的な様式で、増大するCRHの分泌(及び最終的にはGCレベル)によって、免疫系がHPA軸の活性に影響を与えるのに役立つことはIL-6(このカスケードの最終生産物)の活性化を介している可能性があることを、本明細書に記載のデータは示している。本明細書において本発明者は、慢性的にGC処理した内皮細胞が、対照の未処理の細胞と比較してIL-6の有意に高いレベルを有することを明らかにした。このデータは、これらの慢性的なストレスを受けた内皮細胞は欠陥のあるHPA軸を有し、そこでのフィードバックループの応答度における変化がIL-6の下方調節を妨害する(GCとAP-1との間の相互作用を介して)であろうという本発明者の主張とも一致しているであろう。
【0126】
結論として本発明者は、この炎症のモデルが、慢性的な傷害に関連する皮膚の局所のHPA軸における変化の理解において非常に役立つであろうと解している。本発明者の進行中の研究は、慢性的なGC処理がGCレセプターレベルの下方調節を引き起こすことから、皮膚内における欠陥を有するフィードバックループを生産することを示している。本発明者は、実施例3に記載のような炎症性細胞のリクルートの誘導を軽減することができるか調べるために、続けてこのモデルにおける一連の栄養性サプリメントを試験している。
【0127】
(実施例2)
真皮のマトリックスの再構築における慢性的なストレスの効果
【0128】
皮膚の真皮のマトリックスの成分は必須に、エラスチン線維、コラーゲン線維、タンパク質ポリサッカリド、及び他の糖タンパク質からなる。結合組織のこの複合体は、細胞(線維芽細胞のような)が結合する可能性がある、真皮のための足場として機能している。この組織の主なタンパク質成分は、不均一な性質を有する線維性のタンパク質であるコラーゲンである。コラーゲンタイプIは皮膚における主要な構造タンパク質であり、その破壊は加齢した皮膚の外観の主な原因である。通常の原線維発生は、前駆体プロコラーゲンからコラーゲンへのタンパク質分解的な変換を含む、多数の翻訳後修飾を必要とする。そのため、概算されるプロコラーゲンIの量は、合成されるコラーゲンI分子の量を反映する。実際、損傷し加齢した皮膚の組織学的な特性は、圧縮され、硬化し、異常なコラーゲン線維の束を典型的に含む。若くて健康な皮膚は、この無秩序なマトリックスの密な硬い塊を分解及び除去する能力を保持する。
【0129】
そのため、マトリックス分解は真皮のマトリックスの再構築における重要な因子であり、マトリックスメタロプロテイナーゼ-1(MMP-1)のような真皮のプロテアーゼの放出は、凝集して無秩序なコラーゲン線維を皮膚から除去するのに役立つ可能性がある。前記MMP-1は、結合組織の分解に関与する25のメンバーを超える大きなファミリーである(Woessner, 1994, Ann N Y Acad Sci 732: 11-21に概説されている)。それらは、細胞外マトリックス及び基底膜の異なる高分子成分の分解を仲介するエンドペプチダーゼに構造的に関連し、4つの異なるサブファミリー;コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメリシン、及び膜MMPに分類され得る。ヒトの皮膚は広範囲にわたるMMPを発現するが、MMP-1(コラゲナーゼ)のみが天然の線維状コラーゲンを攻撃する能力を有することが示されている。更に、MMP-1はケラチノサイトと線維芽細胞の両者によって発現されることが示されており、そのため通常のコラーゲン代謝回転の維持、及び傷の治癒の間のマトリックスの再構築に主な役割を担う。
【0130】
更に、紫外線照射(UVR)に対する曝露もin vivoでヒトの皮膚においてMMP-1を誘導することが示されている。そのため、MMP-1は皮膚におけるコラーゲン分解の主要な発動因子であると長期間解されている。UVRはMMP-2(ゼラチナーゼA)及びMMP-9(ゼラチナーゼB)の両者(コラーゲン分解性の酵素によって生産される断片を更に分解する能力を有する酵素)を誘導することも示されている。そのため要約すると、MMP-1の放出は天然のコラーゲン線維をより小さい断片に切断するはずであり、次いでその断片は、ゼラチナーゼであるMMP-2及びMMP-9によって更に分解される可能性がある。MMPは、UVRに対して曝露された皮膚における結合組織の損傷の主要な媒介物質として振舞うと解されている。
【0131】
この研究では、皮膚における真皮のマトリックスの再構築への慢性的なストレスの効果をさらに理解するために、慢性的にグルココルチコイドで処理した初代ヒト真皮線維芽細胞における、PMAを使用する急性的なストレスに続く、真皮のマトリックス分解のマーカー(MMP-1)及び真皮のマトリックス合成のマーカー(プロコラーゲンI)における変化を測定した。実験方法は、試験される細胞が真皮線維芽細胞であり、プロコラーゲン-1、MMP-1、及びMMP-9の発現に関して細胞が試験されることを以外には、実施例1に記載の方法と同様である。
【0132】
原料及び方法(実施例1と異なる点)
真皮の細胞の培養
10% FBS(ウシ胎仔血清)を添加したDMEM(Gibco)において、初代ヒト真皮線維芽細胞を培養し、継代した。24時間、1ウェルあたり2mlの完全培地において~5000細胞/cm2の播種密度で、細胞を6-ウェル組織培養皿に常法に従って平板培養し、5%CO2中37℃でインキュベートした。処理の24時間前に培地を除去して、DMEM及び1% FBSにおいて細胞を増殖させた。
【0133】
試験溶液の添加
低血清含有DMEM(1%FBS)において、事前処理溶液及び試験溶液を調製した。1μMデキサメタゾン(合成グルココルチコイド;Sigma D8893)を使用して5日間毎日、真皮線維芽細胞を事前処理した。これに続き、1μM PMA (Sigma P8139)を使用して24時間、細胞に酸化ストレスを与えた。
【0134】
ヒト活性MMP-1及びMMP-9のELISA (R&D Systems)
製造業者の説明書に従って、ヒト活性MMP-1及びMMP-9 Fluorokine酵素キット(それぞれR&D Systems F1M00及びF9M00)を使用して、各細胞の上清におけるMMP-1及びMMP-9タンパク質を概算した。
【0135】
それぞれ0.39から12.5ng/ml、及び0.25から16ng/mlの範囲の濃度において、較正希釈剤中で6つのMMP-1及びMMP-9の標準液を調製した。100μlの試験希釈剤、及び150μlの組織培養物の上清または標準液を2つの全く同じウェルに添加した。水平軌道プレート振とう機状で3時間、室温でプレートをインキュベートし、洗浄緩衝液を使用して4回洗浄した。200μlのAPMAを各ウェルに添加し、プレートを加湿環境及び光から保護された状態で2時間、37℃でインキュベートした。プレートを前述のように洗浄した。各ウェルに200μlの基質溶液を添加し、プレートを加湿環境及び光から保護された状態で17-20時間、37℃でインキュベートした。1×20mSの積分時間、プレート速度(plate speed)~6に設定し;励起波長を320nmに設定し、放射波長を405nmに設定した蛍光プレートセットを使用して、各ウェルの相対蛍光単位(RFU)を決定した。
【0136】
標準曲線は、MMP-1及びMMP-9の濃度(それぞれ)に対して平均RFUをプロットして、回帰分析によって計算された最適な線である。全てのサンプルにおける活性MMP-1またはMMP-9タンパク質のいずれかの未知の濃度をこの曲線から概算した。
【0137】
プロコラーゲンI C-ペプチドEIAキット(Takara Bio Inc.)
コラーゲンIを前駆体分子であるプロコラーゲンIとして合成した。そのため遊離のプロペプチドの量は、合成されたコラーゲンIの量を化学量論的に反映する。プロコラーゲンタイプI C-ペプチド酵素免疫試験(EIA)キットは、プロコラーゲンタイプI C-ペプチド(PIP)の定量を可能にする。
【0138】
0から640ng/mlの範囲の濃度で、サンプル希釈剤中において8つのPIP標準液を調製した。100μlの抗体ペルオキシダーゼ複合体溶液、及び20μlの細胞溶解物(1μgのタンパク質)または標準液を2つの全く同じウェルに添加した。プレートに蓋をして3時間、37℃でインキュベートした後、400μlのPBSを使用して4回洗浄した。次いで100μlの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを15分間ベンチトップ上、室温でインキュベートした。この後に、100μlの停止溶液を各ウェルに添加し、プレートリーダーを使用して450nmで吸光度を測定した。
【0139】
標準曲線は、PIPの濃度に対して平均吸光度をプロットし、回帰分析によって計算された最適な線である。全てのサンプルにおけるPIPの未知の濃度をこの曲線から概算した。
【0140】
結果
新生児由来のヒト真皮線維芽細胞におけるMMP-1の発現の変化
慢性的にストレスを受けたヒト新生児の真皮線維芽細胞に1μM PMAを使用して酸化ストレスを与え(原料と方法の部に記載されているように)、MMP-1の発現における変化を測定するために所定の時点(T0、T6、T24、及びT48)で細胞を回収した。この更なる急性的なストレス(24時間のみ)は、皮膚に対する損傷及び/または傷害(UVRのような)の模倣として使用した。対照の未処理の細胞と直接的に比較した際に、MMP-1合成及び分泌の有意な抑制及び阻害を認めた(~60% @ T6;80% @ T24;70% @ T48)‐図5参照。
【0141】
このMMP-1の抑制は、皮膚の真皮マトリックス(特にコラーゲンタイプI線維)の分解における機能不全を反映しているようである。
【0142】
成人由来のヒト真皮線維芽細胞におけるMMP-1の発現の変化
慢性的にストレスを与えた成人の真皮線維芽細胞にも1μM PMAを使用して酸化ストレスを与え、MMP-1の発現における変化を測定するために所定の時点(T0、T6、T24、及びT48)で細胞を回収した。新生児由来の線維芽細胞と同様に、対照の未処理の細胞と直接的に比較した際のMMP-1合成の抑制及び阻害は明らかであった(~85% @ T6; 10% @ T24; 80% @ T48)‐図6参照。
【0143】
生活年齢の働きとして皮膚におけるMMP-1のレベルが増大することは既知であるため、GCで処理した新生児由来の線維芽細胞と比較して、GCで処理した成人由来の線維芽細胞において認められた活性MMP-1の有意に大きなレベルは驚くべきことではない(GCで処理した新生児の線維芽細胞において15ng/mlであるのに対して、GCで処理した成人の線維芽細胞において~25ng/ml)。更に、対照の未処理の成人の真皮線維芽細胞における活性MMP-1の総レベルはFlorokine MMP-1 ELISAにおけるモノクローナル抗体を飽和している可能性があることは明らかである(NB. これらの研究を通じて、~35ng/mlを超える[MMP-1]を示すELISAデータは存在しない)。
【0144】
これらの結果に従って、全ての以下の実験は新生児由来の線維芽細胞において実施した。
【0145】
新生児由来のヒト真皮線維芽細胞におけるMMP-9の発現の変化
MMP-9は、皮膚におけるMMP-1に産生されるコラーゲン断片を取り除くのに役立つ最も効果的なプロテアーゼの1つであることが過去に示されている。そのため、このモデルにおいてMMP-9合成における変化を測定した。MMP-1と同一のパターンが認められた:つまり、対照の未処理の細胞と直接的に比較した際に、慢性的にストレスを与えた真皮線維芽細胞においてMMP-9の合成及び分泌の有意な抑制及び阻害が検出された(図7)。MMP-9のレベルはMMP-1よりも有意に小さいことが明らかになったが、発現の同様のパターンは常に認められた。
【0146】
新生児由来のヒト真皮線維芽細胞におけるIL-6の発現の変化
本発明者は、PMAを使用する酸化ストレス後に、媒体で処理している細胞と比較した際の、GCで処理されて慢性的にストレスを受けている真皮線維芽細胞におけるインターロイキン-6の合成及び分泌の有意な阻害を認めた(T6及びT24で合成における~80%の減少(データは示していない))。
【0147】
新生児由来のヒト真皮線維芽細胞におけるプロコラーゲンIの合成の変化
皮膚の主要な構造的な成分であるタイプIコラーゲンはプロコラーゲンと称される前駆体分子として合成され、プロペプチドとして既知の大きな細胞外ドメインが酵素的に切断される。そのため本発明者は、この様にコラーゲンの合成レベルの変化を化学両論的に反映する、タイプIプロコラーゲンの変化を試験した。
【0148】
慢性的にストレスを与えた新生児由来のヒト線維芽細胞に1μM PMAを使用して酸化ストレスを与え、プロコラーゲン-1の発現の変化を測定するために所定の時点(T0、T6、T24、T48、及びT72)で細胞を回収した。対照の未処理の細胞と直接的に比較した際に、プロコラーゲン-1の合成の有意な阻害を認めた(特にT6で~50%)‐図8参照。
【0149】
このプロコラーゲン-1の合成の抑制は、皮膚における新しい真皮マトリックス線維の合成の機能不全を反映しているようである。
【0150】
考察
皮膚における慢性的なストレスの効果を決定するために、本発明者は真皮細胞にグルココルチコイド処理、それに続く急性的な酸化ストレスを受けさせ、MMP-1(皮膚の加齢に関連する最も重要な真皮のプロテアーゼの1つ)及びMMP-9(UVRの急性的な照射に続いて、皮膚において放出される重要なゼラチナーゼ)における変化を測定した。本発明者は、合成されるコラーゲンIの量の優れた指標であるプロコラーゲンタイプI C-ペプチドのレベルも測定した。本発明者の結果は、慢性的にストレスを受けている皮膚におけるマトリックスの除去(MMP-1、MMP-9)及び修復(プロコラーゲンI)の有意な阻害を初めて示す。かくして、マトリックス分解及びマトリックス合成の両者が抑制される。
【0151】
慢性的にストレスを受けている皮膚における炎症の優位な悪化を記載している本発明者の以前の結果と共に(実施例1参照)、これらのデータは、慢性的なストレスが結合組織の損傷に関して有意な役割を担うことを示す(変性したコラーゲン線維の弱められた除去及び異常な弾力繊維症によって)。
【0152】
結論として、これらの皮膚に関連するマーカーの同定は、マトリックスの再構築及び慢性的なストレスに関して、皮膚の疾患におけるストレスの効果を減少する治療の新しい経路を決定するための優れたin vitroモデルを提供する。本発明者は、皮膚の細胞における慢性的なグルココルチコイド曝露の有害な効果を抑制する薬剤を同定するためにこのモデルを使用しており、実施例3においてそれが記載されるであろう。
【0153】
(実施例3)
皮膚の細胞におけるグルココルチコイドを介する効果を抑制する薬剤の同定−炎症
【0154】
原料及び方法
事前処理時の間に細胞に対して表1に示される各種の試験薬剤を添加したこと以外は、実施例1における記載と同様の方法を使用した。
【0155】
表1:慢性的にストレスを受けているヒト臍静脈内皮細胞において試験される選択された薬剤の一覧
【0156】
【表1】

【0157】
各試験において、媒体の対照試験及びデキサメタゾンの対照試験が含まれた。
【0158】
コミフェリック酸の抽出の方法体系
330gのグッグル脂質を出発物質として使用して、128gの生産物(収率42.6%)を産生した。ガスクロマトグラフィーによって決定したところ、この生産物は28.2%コミフェリック酸を含有していた。分離にヘキサン/エチルアセテートの複数の比率を使用するシリカ処理によって、この生産物の100gを更に処理した。80/20 v/vのヘキサン/エチルアセテートを使用して750gのシリカ60カラムでシリカ処理を実施した。けん化されている生産物はこの混合物に完全には溶解しないであろうが、カラムに適用した。前記カラムは80/20の溶媒を添加した際には妨害されるが、60/40の比率の溶媒が通過した際にこの妨害が取り除かれる。
【0159】
60/40の画分の薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートは、70%の純度であることが既知の過去に産生されたコミフェリック酸を豊富に含む画分である標準物質で検出されたものよりも、コミフェリック酸のスポットと溶媒の最前部の間により高い濃度の成分(高溶出成分)が存在することを示した。50/50のサンプルはベースラインにより近い高レベルの成分(低溶出成分)を含有し、これは廃棄した。初めのシリカ処理からの全収量は60/40の溶媒において34.7g(14.7%)であり、50/50の溶媒において3.2%であった。
【0160】
初めのシリカ処理由来の60/40の抽出物を2回目のシリカ処理によって更に精製したが、今回は150gのシリカカラムを使用した。シリカカラム処理中に可溶性の問題には出会わなかった。前記サンプルを濃縮し、その画分を回収して分析した。TLCプレートは、60/40の画分が70%コミフェリック酸標準物質よりも更に高溶出物質を含有することを示した。これは、その除去が80/20の溶媒を必要とするためである。50/50の画分、及び更にカラムの残存物には、低溶出物質を含むことも示した。2回目のシリカ処理後には、カラムに添加された濃度の92%が回収された(60/40画分から23.5gまたは全体の10%、80/20の画分から8.3gまたは3.4%)。更に、60/40の画分をGCによって分析して77.9% コミフェリック酸が存在することが示され、80/20の画分には49% コミフェリック酸が存在することが示された。
【0161】
結果
5日間、合成グルココルチコイド(1μM デキサメタゾン)を使用して慢性的にストレスを与えられている内皮細胞に、1μM PMAを24時間使用して酸化ストレスを与えた。この間に、炎症反応の測定としてICAM-1合成を試験した。潜在的な活性剤(表1参照)を事前の処理時の間に前記細胞に添加した。
【0162】
LDHにおける有意な増大を示した薬剤(すなわち細胞傷害性である)のいずれも、この研究から除いた。これらの研究を通して、細胞の形態または細胞数における顕著な変化は認められなかった。
【0163】
結果を表2に示す。慢性的にストレスを受けている内皮細胞におけるICAM-1合成を抑制する薬剤について、以下においてより詳細に考察する。示される濃度でICAM-1の合成を抑制しない薬剤は、用量反応は実施されていないものとして、この工程において完全に考慮に入れなくて良いわけではない。この研究を通して、主に、最大、上部の濃度を使用した(毒性を示さない)。
【0164】
【表2】

【0165】
メビノリン:デキサメタゾンの存在下でHUVECに対してこの薬剤を常法に従って添加した際に、ICAM-1の発現における有意な阻害が認められた。ICAM-1の抑制されたレベルは対照の未処理の細胞とほぼ一致し、媒体のみを使用して事前に処理されている細胞においてPMAによって誘導されるレベルの直下である‐図9参照。
【0166】
シグリタゾン及びコミフェリック酸、両者のPPARγアゴニストは、デキサメタゾンを使用して慢性的に処理されている内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレスによって誘導されるICAM-1の増大される合成を阻害した。GC処理されている細胞によって分泌されるICAM-1のレベルは、媒体のみを使用して事前に処理されている細胞においてPMAによって誘導されるレベルまで殆ど戻った‐図10及び11参照。
【0167】
ジンセン、Rc及びRb1画分:両者の画分は、デキサメタゾンを使用して慢性的に処理されている内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレスによって誘導されるICAM-1の増大される合成を阻害した。ジンセノサイドRcはジンセンRb1よりも効果的であることが明らかになった‐データは示さない。
【0168】
クルクミン:このJNK/AP-1インヒビターは、デキサメタゾンを使用して慢性的に処理されている内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレスによって誘導されるICAM-1の増大される合成を阻害することが示された。処理された細胞によって分泌されるICAM-1のレベルは、媒体のみを使用して事前に処理されている細胞においてPMAによって誘導されるレベルまで殆ど戻った‐データは示さない。
【0169】
22-(R)-ヒドロキシコレステロール:このオキシステロールLXRリガンドは、デキサメタゾンを使用して慢性的に処理されている内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレスによって誘導されるICAM-1の増大される合成の優位な阻害を示した。処理された細胞によって分泌されるICAM-1のレベルは、媒体のみを使用して事前に処理されている細胞においてPMAによって誘導されるレベルまで殆ど戻った‐図12参照。
【0170】
オカダ酸:このポリエーテル海洋天然産物は効果的なセリン及びスレオニンホスファターゼインヒビターである。この研究では、デキサメタゾンの存在下においてオカダ酸を添加し、デキサメタゾンを使用して慢性的に処理されている内皮細胞において、PMAを使用する酸化ストレスによって誘導されるICAM-1の増大される合成の有意な阻害を認めた。処理された細胞によって分泌されるICAM-1のレベルは、媒体のみを使用して事前に処理されている細胞においてPMAによって誘導されるレベルまで殆ど戻った‐図13参照。
【0171】
考察
この研究における最も効果的な治療剤は、抗炎症特性と共に、多くの核オーファン受容体(PXR、LXR、PPAR-γ)のアクチベーターの分泌を含んでいる。更に、重要な転写因子(NF-κB及びAP-1のような)を活性的に抑制する栄養化合物がICAM-1の発現の良好な抑制剤であることが明らかになった。このin vitroスクリーニングモデルにおいて使用される1つの他の最後の種類の阻害薬剤は、ポリエーテル海洋天然産物である、セリン及びスレオニン様ホスファターゼを阻害することが示されているオカダ酸である。この種類の作用を介する活性的な阻害は、転写的に活性的なグルココルチコイドのストレスに誘導される蓄積を妨害するための治療の新しい経路を提供する可能性がある。
【0172】
(実施例4)
皮膚の細胞におけるグルココルチコイドを介する効果を抑制する薬剤の同定‐マトリックスの再構築
【0173】
事前の処理時の間に細胞に各種の試験化合物を添加した以外には、実施例2の記載と同様の方法を使用した。
【0174】
クコ抽出物の方法体系
乾燥した粉末状の植物性の物質(~10g)を円筒ろ紙に置き、200mlのアセトンをその容器に添加して装置を過熱した。この溶液を沸騰石と共に16時間還流し、次いで窒素雰囲気下でアセトンを蒸発した。最終的な残渣を窒素雰囲気下で-20℃において保存した。
【0175】
結果
シグリタゾン、アクチビン(Powerherbs, Power Health Product Ltd., York, UK)、シイタケ抽出物(Bio-Support, Worcester, UK)、クコ抽出物(K. Hunter, Unilever Research Colworth, UK‐上記参照)、ボスヴェリア抽出物(Alchem International Ltd., New Delhi, India)、クルクミン、コミフェリック酸、ジンセンRb1画分、及びジンセンRc画分のいずれにおいても、PMAに誘導される急性的なストレス後のMMP-1及びプロコラーゲンの発現レベルにおけるグルココルチコイドの効果の阻害が見られた。
【0176】
上述の個々の部分に言及される本発明の各種の特性及び実施態様は、必要な変更を加えて他の部分に適当なものとして適用される。従って、1つの部分で特定された特性は、適当なものとして他の部分で特定された特性と一致する可能性がある。
【0177】
本明細書における上述の文献は参照することにより組み込まれる。本発明の記載される方法及び生産物の各種の変形例及び変更例は、本発明の範囲を逸脱すること無く、当業者に明らかである。本発明は特定の好ましい実施態様に関して記載されているが、特許請求の範囲の発明はその様な特定の実施態様に過度に制限されるべきで無いことが理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである本発明を実施するための記載の方法の各種の変形例が、添付の特許請求の範囲の内に意図される。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図2】図2は、HMVEC-d細胞におけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図3】図3は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図4】図4は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図5】図4は、ヒト新生児の真皮線維芽細胞におけるMMP-1の発現レベルを示す図である。
【図6】図5は、ヒト成人由来の真皮線維芽細胞におけるMMP-1の発現レベルを示す図である。
【図7】図6は、ヒト新生児の真皮線維芽細胞におけるMMP-9の発現レベルを示す図である。
【図8】図8は、ヒト新生児の真皮線維芽細胞におけるプロコラーゲン-1の発現レベルを示す図である。
【図9】図9は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図10】図10は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図11】図11は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図12】図12は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。
【図13】図13は、HUVECにおけるICAM-1の発現レベルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果の減少に使用するための組成物の製造における、真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する組成物の使用。
【請求項2】
前記組成物が経口的に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が局所的に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第2の物質を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記組成物が、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質、並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する方法であって、真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する組成物の個体に対する投与を含む方法。
【請求項7】
前記組成物が経口的に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が局所的に投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、皮膚の炎症反応に関与する細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第1の物質、及び真皮の細胞におけるグルココルチコイドに誘導される慢性的なストレスを阻害する能力を有する第2の物質を含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む組成物。
【請求項12】
第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む栄養性サプリメント。
【請求項13】
第1の物質と第2の物質が異なるという条件で、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、22-OH-コレステロール、シグリタゾン、メビノリン、コミフェリック酸、オカダ酸、甘草抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第1の物質;並びにクコ抽出物、シイタケ抽出物、アクチビン、ジンセンRb1、ジンセンRc、クルクミン、シグリタゾン、コミフェリック酸、ボスヴェリア抽出物、及びそれらの混合物からなる群より選択される第2の物質を含む、またはそれらが追加される化粧用組成物。
【請求項14】
ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する能力を有する化合物を同定するための方法であって、
(i)候補化合物の非存在下で細胞が慢性的なストレスを受けることを引き起こすであろう条件及び時間において、グルココルチコイドレセプターアゴニストの存在下で候補化合物と真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞を接触させる工程;
(ii)前記細胞に急性的なストレスを与える工程;
(iii)炎症性細胞のリクルートのマーカーであって前記細胞が皮膚の炎症反応に関与する細胞であるマーカー、細胞におけるマトリックス分解のマーカーであって前記細胞が真皮の細胞であるマーカー、及び/または細胞におけるマトリックス合成のマーカーであって前記細胞が真皮の細胞であるマーカーから選択される1つ以上の細胞マーカーを分析する工程;及び
(iv)候補化合物が1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるか決定する工程
を含む方法。
【請求項15】
前記工程(iv)が、候補化合物の非存在下における前記マーカーの状態と候補化合物の存在下における前記マーカーの状態とを比較する工程を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炎症性細胞のリクルートのマーカーがICAM-1の発現レベルである、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記マトリックス分解のマーカーがMMP-1及び/またはMMP-9の発現レベルである、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マトリックス合成のマーカーがプロコラーゲン-1の発現レベルである、請求項14から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記急性的なストレスが酸化ストレスである、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(i)における時間が少なくとも4日である、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ヒトまたは動物の皮膚における精神的ストレスの効果を減少する組成物を生産する方法であって、
(i)候補化合物の非存在下で細胞が慢性的なストレスを受けることを引き起こすであろう条件及び時間において、グルココルチコイドレセプターアゴニストの存在下で候補化合物と真皮の細胞または皮膚の炎症反応に関与する細胞を接触させる工程;
(ii)前記細胞に急性的なストレスを与える工程;
(iii)炎症性細胞のリクルートのマーカーであって、前記細胞が皮膚の炎症反応に関与する細胞であるマーカー;細胞におけるマトリックス分解のマーカーであって、前記細胞が真皮の細胞であるマーカー;及び/または細胞におけるマトリックス合成のマーカーであって、前記細胞は真皮の細胞であるマーカーから選択される1つ以上の細胞マーカーを分析する工程;
(iv)候補化合物が1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるか決定する工程
(v)前記1つ以上の細胞マーカーの状態に影響を与えるものとして、(iv)において同定される候補化合物の選択の工程;及び
(vi)化粧品的または薬剤的に許容可能な担体または希釈剤と前記化合物との混合の工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−514668(P2007−514668A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544271(P2006−544271)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013869
【国際公開番号】WO2005/058314
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】