説明

皮膚洗浄剤組成物

【課題】 泡量、泡質及び使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物の提供。
【解決手段】 次の成分(A)、(B):
(A)アニオン界面活性剤 3〜50質量%、
(B)スフィンゴシン類又はその塩 0.01〜3質量%、
及び(C)水を含有する皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡量、泡質及び使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤組成物においては、種々の界面活性剤を増泡剤として組合わせて用いたり、高分子化合物を増粘剤として用いることによって、洗浄剤組成物の泡量増大、泡質向上、増粘など、泡性能や使用感を向上させることが数多く検討されている。
【0003】
一方、スフィンゴシン類は、角質細胞間脂質に存在する脂質の一つであり、化粧料、皮膚外用剤等に多く使用されている。例えば、特許文献1には、スフィンゴ脂質を含有し、スキンローション、クリーム、石けん、ボディークレンザー、軟膏に用いられる、ニキビの予防及び治療を目的としたスフィンゴ脂質組成物が記載されているが、洗浄性能や使用感の向上を意図したものではない。
【0004】
また、特許文献2には、イオン性界面活性剤を用いたマイクロエマルションに、常温で固体又はペースト状の化合物(スフィンゴシン類等)を存在させることが開示されているが、洗浄剤としての用途は記載されていない。
【特許文献1】特開2002−212100号公報
【特許文献2】特開2001−157835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、泡量、泡質及び使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アニオン界面活性剤と、従来増泡剤や増粘剤としては用いられていなかったスフィンゴシン類とを組み合わせて用いることにより、意外にも、泡量、泡質及び使用感に優れた皮膚洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、次の成分(A)、(B):
(A)アニオン界面活性剤 3〜50質量%、
(B)スフィンゴシン類又はその塩 0.01〜3質量%、
及び(C)水を含有する皮膚洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、泡量、泡質及び使用感に優れたものである。また、成分(D)として、非イオン界面活性剤、高級脂肪酸及び高級アルコールから選ばれる成分を更に用いることにより、少なくとも一部がゲル又は液晶状態を呈し、マッサージ感等の使用感がより向上し、外観の美しい組成物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる成分(A)のアニオン界面活性剤としては、通常の洗浄剤組成物に用いるものであれば、特に制限されずに使用することができる。例えば、高級脂肪酸石けん、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩;N−アシル−L−グルタミン酸塩、N−アシルグリシン塩等のアシル化アミノ酸塩;N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルサルコシン塩等のN−アシル−N−アルキルアミノ酸塩;N−アシル−N−メチルタウリン塩、アシルイセチオン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルケニルコハク酸塩、アルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられる。
【0010】
これらのうち、高級脂肪酸石けん、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が、汎用性の点から好ましい。特に、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル塩が、弱酸性で皮膚刺激性の少ない洗浄剤組成物を設計する上で好ましい。これらリン酸エステル塩型アニオン界面活性剤は、モノアルキルリン酸エステル塩を主体とするのが好ましく、ジアルキルリン酸エステル塩との混合物であってもよい。
【0011】
各アニオン界面活性剤において、疎水部は炭素数6〜24のアルキル基又はアシル基であるのが好ましく、特に炭素数10〜22、更に炭素数12〜18のものが好ましい。また、ポリオキシアルキレン部を有するアニオン界面活性剤において、ポリオキシアルキレン部としては、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンが挙げられる。該ポリオキシアルキレン部の平均付加モル数は疎水部の種類にもよるが、一般に0.5〜5が好ましく、特に0.5〜3が好ましい。2種以上の付加モル数の混合物であっても良い。
【0012】
また、塩を構成するための対イオンとしては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属;アンモニア;低級アルカノールアミン(例えばモノ、ジ、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール);リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸などが挙げられる。特に、ナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、アルギニンが、汎用性の点から好ましい。
【0013】
具体的には、アルキルリン酸塩としては、ラウリルリン酸ナトリウム、ミリスチルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸カリウム、ミリスチルリン酸カリウム、セチルリン酸カリウム、アルキル(C11,13,15)リン酸カリウム、ラウリルリン酸トリエタノールアミン、ミリスチルリン酸トリエタノールアミン、セチルリン酸トリエタノールアミン、ラウリルリン酸アルギニン、ミリスチルリン酸アルギニン、2−ヘキシルデシルリン酸アルギニン等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩としては、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ミリスチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(2)ミリスチルエーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ミリスチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(3)ミリスチルエーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(2〜3)アルキル(C12,13)エーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2〜3)アルキル(C12,13)エーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(1〜3)アルキル(C11,13,15)エーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(1〜3)アルキル(C11,13,15)エーテルリン酸カリウム、ポリオキシエチレン(2)アルキル(C12〜15)エーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)アルキル(C12〜15)エーテルリン酸カリウム等が挙げられる。
【0014】
成分(A)のアニオン界面活性剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に3〜50質量%、特に5〜30質量%、更に10〜30質量%含有されるのが、十分な洗浄力及び泡立ちが得られ、取り扱いも容易であるので好ましい。
【0015】
本発明で用いる成分(B)のスフィンゴシン類としては、次の一般式(1)
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1はヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30の炭化水素基を示し;Yはメチレン基、メチン基又は酸素原子を示し;X1、X2、及びX3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方が水素原子であり、他方は存在しない。X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。);R2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のRは各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合であってもよいことを示す)
で表わされるものが挙げられる。
【0018】
式中、R1は、ヒドロキシル基、カルボニル基又はアミノ基が置換していてもよい、炭素数4〜30、好ましくはヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜22の炭化水素基である。特に、炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Y側末端にヒドロキシル基を持つ炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で、分岐鎖アルキル基の場合は分岐鎖がメチル分岐のもの等が好ましい。具体的には、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、1−ヒドロキシトリデシル基、1−ヒドロキシペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソステアリル基が好ましい。
【0019】
Yはメチレン基(CH2)、メチン基(CH)又は酸素原子のいずれかを示す。
1、X2、及びX3は、各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X4は水素原子、アセチル基、グリセリル基を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成する。特に、X1、X2、及びX3のうち0〜1個がヒドロキシル基で、残余が水素原子、及びX4が水素原子であるものが好ましい。なお、Yがメチン基のとき、X1とX2のいずれか一方のみが水素原子であり、他方は存在しない。また、X4がオキソ基を形成するとき、X3は存在しない。
【0020】
2及びR3は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基、ヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し、特にR3は水素原子であることが好ましい。
【0021】
2個又は3個のRは、各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基を示す。ここで炭化水素基に置換し得るヒドロキシアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のヒドロキシアルコキシ基が好ましい。またアルコキシ基としては炭素数1〜7の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が好ましい。Rとしては、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖アルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基及びアルコキシ基から選ばれる1〜6個の基が置換した総炭素数1〜8の炭化水素基が挙げられる。
【0022】
特に水素原子、又はメチル基、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個の基が置換していてもよいアルキル基が好ましい。
【0023】
一般式(1)で表わされるスフィンゴシン類としては、次の一般式(2)で表わされる天然由来のスフィンゴシン類若しくは同構造の合成物(以下、総称して天然型スフィンゴシンと記載する。)、又は一般式(3)で表わされる天然スフィンゴシン類似構造を有する擬似型スフィンゴシン類(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する。)が好ましい。
(I)一般式(2)で表わされる天然型スフィンゴシン。
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R11はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数7〜19の炭化水素基を示し;Y1はメチレン基又はメチン基を示し;X11、X12及びX13は各々独立して水素原子、ヒドロキシル基又はアセトキシ基を示し、X14は水素原子を示すか、隣接する酸素原子と一緒になってオキソ基を形成し(但し、Y1がメチン基のとき、X11とX12のいずれか一方が水素原子を示し、他方は存在しない。X14がオキソ基を形成するとき、X13は存在しない。);R12はヒドロキシメチル基又はアセトキシメチル基を示し;a個のR1は各々独立して水素原子又はアミジノ基であるか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜4の炭化水素基を示し;aは2又は3の数を示し;破線部は不飽和結合があってもよいことを示す)
【0026】
ここで、R11としては、炭素数7〜19の炭化水素基が好ましく、特に炭素数13〜15の直鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましい。aは2が好ましく、R1は各々独立して水素原子、又は炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基が好ましい。
【0027】
一般式(2)で表わされる天然型スフィンゴシンとしては、具体的には、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN−アルキル体(例えばN−メチル体)等が挙げられる。
これらのスフィンゴシンは天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(−)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでも良く、また、これらの混合物によるものでもよい。
特に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表わされるものが好ましい。
【0028】
【化3】

【0029】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。
天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine) (SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。
【0030】
(II)一般式(3)で表わされる擬似型スフィンゴシン。
【0031】
【化4】

【0032】
(式中、R21はヒドロキシル基が置換していてもよい炭素数10〜22の炭化水素基を示し;X21は水素原子、アセチル基又はグリセリル基を示し;a個のR2は各々独立して水素原子又はアミジノ基を示すか、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルコキシ基及びアセトキシ基から選ばれる置換基を有していてもよい総炭素数1〜8の炭化水素基を示し、aは2又は3の数を示す)
【0033】
ここで、R21としては、炭素数14〜20のイソ分岐アルキル基が好ましく、特にイソステアリル基が好ましい。イソステアリル基は、動植物油由来の脂肪酸を用いたダイマー酸製造時の副生成物由来のイソステアルアルコールを原料油として得られるイソステアリル基が最も好ましい。
【0034】
2は、例えば水素原子;メチル、エチル、プロピル、2−エチルへキシル、イソプロピル等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基;ビニル、アリル等のアルケニル基;アミジノ基;ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル、2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシへキシル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル、2−メトキシエチル、1−メチル−2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、3−メトキシプロピル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシ、ヒドロキシアルコキシ及びアルコキシから選ばれる置換基を有する総炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
特に、aが2で、R2のいずれか1つが水素原子で、他方が2−ヒドロキシエチル、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルである2級アミンが好ましい。
【0035】
擬似型スフィンゴシンとしては、R21がイソステアリル基、X21は水素原子で、aが2で、R2のいずれか1つが水素原子、他方が2−ヒドロキシエチル基、1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル基、1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル基、又は2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基等のヒドロキシル基及びヒドロキシアルコキシ基から選ばれる1〜3個が置換したアルキル基であるものが好ましい。
擬似型スフィンゴシンの具体例としては、次の擬似型スフィンゴシン(i)〜(iv)が挙げられる。
【0036】
【化5】

【0037】
これら(i)〜(iv)において、長鎖アルキル基はイソステアリル基であり、メチル分岐を鎖上のどこかに有する。特に、(ii)の1−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−3−イソステアリルオキシー2−プロパノールが好ましい。
【0038】
成分(B)のスフィンゴシン類は、これらの無機酸、又は有機酸の塩の形で存在しても良い。無機酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、炭酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸;高級脂肪酸;コハク酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸等のジカルボン酸;グリコール酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、リンゴ酸、酒石酸等のオキシカルボン酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;モノアルキルリン酸;モノアルキル硫酸などが挙げられる。
【0039】
成分(B)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.01〜3質量%、特に0.01〜1質量%、更に0.05〜0.3質量%含有されるのが、目的とする泡量、泡質、使用感の効果を得ることができ、好ましい。
【0040】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、(C)水を17〜97質量%、特に30〜85質量%含有するのが、泡立ち、使用感などの点で好ましい。
【0041】
また、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、更に成分(D)として、非イオン界面活性剤、高級脂肪酸及び高級アルコールから選ばれる1種以上を含有することができる。この場合、泡量及び泡質に優れるとともに、安定なゲル又は液晶状態の組成物を得ることができる。このようなゲル又は液晶状態とすることにより、高粘度で保型性が高く垂れ落ちにくい上に、使用時ののびが良く、且つ、保存安定性が高くなる。従って、マッサージ性等の使用感をより向上させることができるとともに、透明で美しい外観が得られる。
【0042】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンラノリン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキシド付加物、ソルビトール脂肪酸エステル及びそのアルキレンオキシド付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル等のグリセリン誘導体;脂肪酸モノエタノールアミド等のアミド系界面活性剤;アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等の糖系界面活性剤;ポリエーテル変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤などが挙げられる。その具体例としては、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリン酸ジグリセリル、モノラウリン酸ジグリセリル、モノミリスチン酸ジグリセリル、モノラウリン酸トリグリセリル、グリセリンモノオクチルエーテル、グリセリンモノデシルエーテル、グリセリンモノラウリルエーテル、グリセリンモノ−2−エチルヘキシルエーテル、グリセリンモノイソデシルエーテル、グリセリンモノ−1−ペンチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(3)モノアルキル(sec−C12−C14)エーテル、アルキル(C8−C16)グルコシド等が挙げられる。
【0043】
また、成分(D)のうち、高級脂肪酸としては、炭素数8〜24のもの、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。高級アルコールとしては、炭素数12〜20のもの、例えば、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール等が挙げられる。
【0044】
これら成分(D)のうち、グリセリン誘導体、高級脂肪酸、高級アルコールが、液晶化を容易に達成することができ好ましい。
更に、グリセリン誘導体が好ましく、特にグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテルが、ゲル又は液晶状態と、泡立ちを両立しやすい点から好ましい。これらグリセリン誘導体の疎水基は、炭素数が8〜18であることが好ましく、特に、炭素数が8〜12であるのが好ましい。エステル化度、エーテル化度は、モノエステル、ジエステル、モノエーテル、ジエーテルが好ましい。また、グリセリン骨格としては、モノグリセリン、グリセリン縮合度2〜6のポリグリセリンが好ましく、特にモノグリセリン又はジグリセリン(グリセリン縮合度2のポリグリセリン)が好ましい。これらのうち、特に、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノラウリン酸ジグリセリル、グリセリンモノ2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
【0045】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.5〜30質量%、特に3〜20質量%含有されるのが、安定なゲル又は液晶状態を形成し、かつ泡立ちも良いので好ましい。
【0046】
本発明においては、前記成分(A)のアニオン界面活性剤と、成分(D)を組み合わせることにより、少なくとも一部がゲル又は液晶状態を呈することができ、しかも、泡量や泡立ちの速さ等の泡性能が良好な洗浄剤組成物を得ることができる。成分(A)と成分(D)の配合質量比(A:D)は、より好ましいゲル又は液晶状態を形成し、且つ、泡性能を良好とする点から、10:1〜1:10の範囲が好ましく、特に5:1〜1:5、更に5:1〜1:2の範囲が好ましい。さらに、成分(A)と成分(D)の合計含有量は、全組成中に6質量%以上、特に10〜40質量%とすることが、ゲル又は液晶形成性、あるいは泡立ちの点から好ましい。
【0047】
本発明において「ゲル又は液晶状態」とは、固体と液体の中間状態を意味する中間相であり、液晶状態としては、例えば「液晶便覧(丸善株式会社)」のp440〜446の記述のように、キュービック液晶、ヘキサゴナル液晶、ラメラ液晶等が挙げられる。ヘキサゴナルは別名ミドル相、ラメラは別名ニート相と呼ばれる場合もある。またラメラ液晶は平板状のラメラに加え、球状のマルチラメラ液晶(球晶)も存在する。液晶はこれらのいずれであっても良い。ゲルとしては、例えば、液晶が冷却された状態のゲル、すなわちアルキル鎖は結晶状態であるが、親水部に水を多量に保持したゲル(α−ゲル)が挙げられる。α−ゲル又は液晶状態が形成されているか否かの判定方法としては、偏光顕微鏡観察、小角X線回折法などのX線解析などを用いることができる(「両親媒性分子の自己組織化とその化粧品への応用」鈴木敏幸「表面」37,(1),67(1999))。「ゲル又は液晶状態」は、通常、透明ないし半透明の外観を呈し、高粘度であって、ミセル溶解状態(通常、透明で粘度は低〜中程度)或いは乳化・エマルション状態(通常、乳濁しており中〜高粘度)とは異なる形態である。「ゲル又は液晶状態」の洗浄剤組成物は、回転型粘度計で30℃、回転速度5rpmで測定した場合に、10,000mPa・s以上の粘度を有することが好ましい。
【0048】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、pHを特に限定するものではないが、中性〜弱酸性が好ましく、特に弱酸性であるのが好ましい。具体的には、組成物をイオン交換水で20倍(5質量%)に希釈したとき、25℃でpH4〜8、特にpH4.5〜6.5を示すのが好ましい。ここでpHは、pHメーター(例えば、堀場製作所製、型番F−22)を用いて測定することができる。
【0049】
ここで組成物のpHは、必要に応じて、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸、酒石酸、グリコール酸、アスコルビン酸等の有機酸;グルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;アンモニア又はアンモニア水;モノ、ジ、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどの低級アルカノールアミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸などのpH調整剤を用いて調整することができる。
【0050】
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、前記成分以外に、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤;ポリアルキレングリコール、グリセリン等の保湿剤;油脂、エステル油、炭化水素油、シリコーン油等の油性成分;高分子化合物等の感触向上剤;エタノール等の溶媒;殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、増粘剤、塩類、パール化剤、スクラブ剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキスなどを含有させることができる。
【0051】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、各成分を混合することにより製造することができ、液状、クリーム状、ペースト状等をはじめ、前記のようなゲル又は液晶状態とすることができる。また、洗顔料、メイク落とし、ボディシャンプー、ハンドソープ等として適用することができる。
【0052】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、従来公知の方法により製造することができ、用いる材料の形態等により、必要に応じて投入順序の変更、加温、冷却、攪拌混合等を行うことができる。例えば、各成分を秤量の後、成分(B)のスフィンゴシン類を成分(C)の水中に分散・溶解(必要に応じて加温)後、成分(A)のアニオン界面活性剤を水中に添加して攪拌する。さらに、成分(D)の非イオン界面活性剤等を添加する場合は(固体の場合は加熱融解後)滴下して攪拌混合し、加温した場合は室温まで冷却して洗浄剤組成物を得る。クリーム状、ペースト状、ゲルまたは液晶状態の場合は、高粘度であるので、必要に応じて、アヂホモミクサーなどの混合攪拌機を用いて攪拌を行うのが好ましい。
【実施例】
【0053】
実施例1〜4、比較例1〜4
表1及び表2に示す組成の皮膚洗浄剤組成物(ボディソープ、洗顔料)を、各成分を混合することにより製造し、pH、粘度、起泡性及び使用性を評価した。
表1の実施例及び比較例では、リンゴ酸を用いてpHが6.2となるように調整した。
また、表2の実施例及び比較例の組成物は、下記(5)偏光顕微鏡観察により、液晶状態を呈することが確認された。
結果を表1、表2に併せて示す。
【0054】
(評価方法)
(1)pH:
各組成物をイオン交換水で20倍(5質量%)に希釈した水溶液について、25℃でpHメーター(堀場製作所製、型番F−22)を用いて測定した。
【0055】
(2)粘度:
(2−1)粘度1万mPa・s以上の場合:
回転型粘度計(東機産業社製、B8R型、ヘリカル式)を用い、30℃において、回転速度5rpmで1分間、粘度を測定した。
(2−2)粘度1万mPa・s以下の場合:
振動式粘度計(A&D社製、CVJ5000型)を用い、30℃において粘度を測定した。
【0056】
(3)起泡性:
専門評価者5名が、速泡性、泡量、泡質等に着目し、起泡性を1点〜5点の5段階で評価した。表中に5名の評点の合計点(最高25点、最低5点)で示した。
【0057】
(4)使用性:
専門評価者5名が、手にとるときのとりやすさ、手からのたれ落ちにくさ、泡立ちはじめの広げやすさ等に着目し、使用性を1点〜5点の5段階で評価した。表中に5名の評点の合計点(最高25点、最低5点)で示した。
【0058】
(5)偏光顕微鏡観察:
スライドグラスの上に試料約0.05gを載せ、カバーグラスをかぶせて観察を行うのに適切な厚みに試料を調整する。Nikon社製光学顕微鏡HFX-IIAにより、直交偏光板を通して観察を行って、液晶に特徴的な像(「液晶便覧(丸善株式会社)」p443、「界面活性の化学と応用(大日本図書)」口絵など)を示す場合に液晶であると判定した。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B):
(A)アニオン界面活性剤 3〜50質量%、
(B)スフィンゴシン類又はその塩 0.01〜3質量%、
及び(C)水を含有する皮膚洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に、成分(D)非イオン界面活性剤、高級脂肪酸及び高級アルコールから選ばれる1種以上 0.5〜30質量%を含有する請求項1記載の皮膚洗浄剤組成物。
【請求項3】
ゲル又は液晶状態を呈する請求項2記載の皮膚洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−213652(P2006−213652A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28394(P2005−28394)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】