説明

皮膚用あぶらとりシート

【課題】 吸脂によって色相が変化することによって明瞭な皮脂確認性を有し、かつ吸脂速度が速くてベトツキを感じさせない皮膚用あぶらとりシートを提供すること。
【解決手段】 本発明の皮膚用あぶらとりシートは、繊維を主体とした皮膚用あぶらとりシートであって、少なくとも一方の表面から観察される色相が吸脂によって変化し、吸脂前の色相と吸脂後の色相とが、100分割マンセル色相環において12以上50以下となる色相差を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚用あぶらとりシートに関する。より具体的には、化粧前又は化粧後に皮膚の表面に浮き出た皮脂分を速やかに吸い取り、化粧ののりを良くすることができ、また、化粧直し等に使用できる皮膚用あぶらとりシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧前又は化粧後に皮膚の表面に浮き出た皮脂分を吸い取るための脂取り紙として、「麻繊維中にポリオレフィン樹脂繊維体を10〜70重量パーセント配合し、12g/cm〜50g/cmの紙厚に抄造したことを特徴とする化粧用脂取り紙」(特許文献1)などが提案されている。このような化粧用脂取り紙において、皮脂を吸い取った際に紙が透明化することにより、皮脂を吸い取ったことの確認性を有するものが好まれ、この確認性を向上させる加工を施したあぶらとりシートが各種提案されている。たとえば、着色不織布表面の繊維に白色顔料を付着させ、不連続な白色の吸脂表示部を設けた吸収材が提案されている(特許文献2)。この吸収材は吸脂前は着色不織布の色に白色顔料によって白っぽくかすみがかかったような色彩を呈しており、吸脂後は、吸脂表示部が透明化して不織布基材の色が顕在化するとともに、吸脂により有色の不織布基材が濃色化するため、吸脂部分と非吸脂部分とのコントラストにより微量の油脂の吸収を確認することができる効果を有していた。しかしこのような吸収材の吸脂による変化は、同一色相での濃色化に過ぎず、色相変化を伴わないため、確認性が不充分であった。
【0003】
また、プラスチック材料の多孔質延伸フィルムからなる化粧用脂取りシートにおいては「少なくとも2層の同一もしくは異なる多孔質延伸フィルムを有していて、互いに隣り合うフィルムの明度が相違することを特徴とする」(特許文献3)ものがあった。この化粧用脂取りシートは一方のフィルム層が皮脂を吸収すると透明化して、明度の相違する他のフィルム層があらわれて、皮脂の確認性を有するものであるが、多孔質延伸フィルムは繊維からなるあぶらとりシートよりも吸脂速度が遅いために、使用時にベトツキを感じる場合があった。
【0004】
【特許文献1】特公昭56−8606号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献2】特開平2000−50951号公報(特許請求の範囲など)
【特許文献3】特開平2002−17445号公報(特許請求の範囲など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述のような問題点を解決するためになされたもので、吸脂によって色相が変化することによって明瞭な皮脂確認性を有し、かつ吸脂速度が速くてベトツキを感じさせない皮膚用あぶらとりシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の皮膚用あぶらとりシート(以下単に「あぶらとりシート」ということがある)は、繊維を主体とした皮膚用あぶらとりシートであって、少なくとも一方の表面から観察される色相が吸脂によって変化し、吸脂前の色相と吸脂後の色相とが、100分割マンセル色相環において12以上50以下となる色相差を有することを特徴とする。繊維を主体(あぶらとりシートの重量に対して50重量%以上)としていることにより、吸脂速度が速く、使用時にベトツキを感じにくくなり、また吸脂前後で色相が変化し、しかも100分割マンセル色相環において12以上50以下というように変化の幅が大であるため皮脂確認性が高いものである。
【0007】
なお、本発明で色相変化の尺度としている、100分割マンセル色相環(以下単に色相環ということがある。)とは、基本色相5色(赤、黄、緑、青、紫)が環状に配置され、前記基本色相5色の中間にそれぞれの中間色相5色(橙、黄緑、青緑、青紫、赤紫)が配置され、この10色相の間が色相知覚の差が等歩度になるようにさらに10分割された色相環である。本明細書中では、色相環に関して特に断りのない限り日本工業規格(JIS)「Z8721:色の表示方法−三属性による表示」の用語を使用するものとし、実際の測定においては市販の色彩計であぶらとりシートのマンセル値を測定することで色相環上の位置を決定している。
【0008】
本発明のあぶらとりシートは、少なくとも一方の表面において吸脂前の色相を色相環上に始点(0)として定めたときに、吸脂後のあぶらとりシートの色相について、同一であれば0、色相環上の隣接した色相であれば1、というふうに、吸脂前と後のあぶらとりシートの色相の色相環上の距離を色相差と定義し、この色相差が12以上であることが好ましく、24以上であることがさらに好ましく、36以上であることがさらに好ましく、50であることが最も好ましい。なお色相差50とは100分割マンセル色相環上で対面に配置された補色関係のことで、最大の色相差を有することを意味する。
【0009】
本発明のあぶらとりシートが、色相が異なることによって区別される層を少なくとも2層以上そなえた皮膚用あぶらとりシートであり、少なくとも一方の表面側にある表層は白色以外でかつ吸脂によって有色透明化するものであり、前記表層に接している隣接層は白色以外のかつ表層とは色相が相違した繊維シートであることを特徴とする場合には、請求項1のあぶらとりシートの色相変化を、容易にコントロールすることが出来る。とくに吸脂前の表層の色相と隣接層の色相とが、100分割マンセル色相環において30以上50以下となる色相差を有する組合せを行うことで、色相差を拡大することが出来る。
【0010】
なお、あぶらとりシートの表層が繊維を主体とした層であれば、吸脂速度が速くてベトツキを感じにくいうえ、隣接層の繊維シートとあわせてあぶらとりシート全体の吸脂量が高くなるので好適である。またあぶらとりシートの表層が顔料を主体としてなる層である場合には、隣接層の色相を隠蔽する効果が高いので、吸脂前の色相と吸脂後の色相との色相差が顕著になるので好適である。
【0011】
本発明のあぶらとりシートで、両面において観察される色相が吸脂によって変化するものであれば、使用面を自由に選べるので使いやすい。また本発明のあぶらとりシートに配合されている繊維に無機粉体及び/又は有機粉体が付着していると、ASTM E−1294−89に基づいて求めた平均流量細孔径(以下単に「平均孔径」ということがある)を小さくすることができ、また地合いを向上させることができるため、吸脂前のあぶらとりシートの色相を明確にする効果が高いので好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚用あぶらとりシートは、吸脂によって色相が変化し、しかも100分割マンセル色相環において12以上50以下というように吸脂前後の色相変化量(色相差)が大であるため、明瞭な皮脂確認性を有するものである。また繊維を主体とした皮膚用あぶらとりシートであるため皮脂の吸い取り性に優れ、使用時にベトツキを感じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のあぶらとりシートは、少なくとも一方の表面から観察される色相が吸脂によって変化するため、皮脂確認性に優れる。吸脂前と吸脂後との色相変化を測定する具体的方法は以下のとおりである。まず、白いプラスチック板上に吸脂前のあぶらとりシートを戴置し、色彩色差計(ミノルタ(株)製 CR−210)でマンセル値を測定し、そのままあぶらとりシートを動かさずに上方から人工皮脂を滴下したのち、再び色彩色差計でマンセル値を測定する。得られたマンセル値の、吸脂前の色相値と吸脂後の色相値から、100分割マンセル色相環上の配置を決め、両者の色相差を計算する。
【0014】
なお、人工皮脂とは、天然の皮脂成分の内容に基づいて調製される、主に油脂類の混合物である。人工皮脂に含有させる油分等としては、例えば、炭素原子数が14〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸、スクワレン、スクワラン、コレステロール、パルミチン酸等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。人工皮脂の具体的な処方の一例を、後述する実施例において記載する。人工皮脂の滴下量は、あぶらとりシートの表面が半透明になるのに十分な量とし、約20〜50g/cmである。
【0015】
本発明のあぶらとりシートは、少なくとも一方の表面から観察される色相が吸脂によって変化し、吸脂前の色相と吸脂後の色相との色相差が、100分割マンセル色相環において12以上50以下となる。特にあぶらとりシートのどちらの面においても、この色相差が12以上50以下となることが望ましい。このように両面ともに皮脂確認性が高いあぶらとりシートはおもてうらを意識せずに、どちらの面でも同じように使用できるので好適である。
【0016】
本発明のあぶらとりシートとしては、色相が異なることによって区別される層を少なくとも2層以上そなえたあぶらとりシートで、少なくとも一方の表面側にある表層は白色以外でかつ吸脂によって有色透明化する層であり、しかもこの表層に接している隣接層が白色以外のかつ表層とは色相が相違した繊維シートであるものを好適に使用できる。表層は白色以外の素材であることによって後述する有色透明化を確実にする。表層の素材は吸脂によって有色透明化するものであればどのようなものでもよく、繊維シートである必要はなく、隣接層となる予定の繊維シート上に顔料を含むバインダなどをコーティングして顔料とバインダとを主体とした表層を形成する方法や、繊維シートを用いる場合は隣接層となる予定の繊維シート上にそれと異なる色相の繊維シートを重ねて表層にする方法が適用できる。この発明のあぶらとりシートは、表層の素材が吸脂によって有色透明化することによって、その色を通して隣接層を透かし見ることになり、視覚上の混色がおこる。したがって表層面から観察される色相が吸脂によって(混色がおきて)変化し、吸脂前の色相との色相差をおこして皮脂確認性を高める。なおあぶらとりシートの両面において観察される色相が吸脂によって変化するものを得る場合には、たとえば3層構造で、隣接層となる繊維シートの両面に表層を積層又は形成したサンドイッチ構造であってもよいし、2層構造で、隣接層となる繊維シートにも吸脂によって有色透明化する性質のものを使用すれば、その片面に表層を積層又は形成するだけで、あぶらとりシートの両面での色相変化を起こすことが可能である。後者の場合は、隣接層は反対面から見たときの表層としての機能を有する。
【0017】
前記の表層と隣接層の色相の組合せによって、吸脂前後のあぶらとりシートの色相差を増大させることができる。とくに吸脂前の表層の色相と隣接層の色相との色相差が補色関係に近ければ近いほどよく、100分割マンセル色相環において30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上、最も好ましくは50であると、あぶらとりシートの吸脂前後の色相差が大きく顕著となり、皮脂の確認性が高い。たとえば吸脂前の表層が5Y黄で隣接層が5PB青紫の組合せの場合、表層と隣接層の色相差は50であり、得られるあぶらとりシートの吸脂前後の色相差を増大させる。特に好適な組み合わせは、表層が黄色系(マンセル値の色相Hが5YR〜5GY)で隣接層が青紫色系(5B〜5P)の場合、および表層が赤色系(1RP〜10R)で隣接層が緑色系(1G〜10BG)の場合であり、吸脂の視認性が高い。
【0018】
隣接層に(場合によっては表層にも)用いることのできる白色以外の繊維シートを形成する繊維としてはポリオレフィン系繊維やポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維などを好適に使用でき、複数種類を組み合わせて使用しても良い。特にポリオレフィン系繊維やポリエステル系繊維は親油性を有しており、皮脂の吸い取り性に優れているため本発明のあぶらとりシートの吸脂速度を早め、使用時のベタツキ感を減少させる効果が高い。
【0019】
前記繊維の繊維径は、特に限定するものではないが、細い方が望ましく、4μm以下であるのが好ましく、3μm以下であるのがより好ましく、2μm以下の極細繊維が更に好ましく、延伸状態にあるものであればなお良い。なお「延伸状態」とは、紡糸工程とは別の延伸工程(例えば、延伸ねん糸機による延伸工程)により延伸されていることをいい、例えば、メルトブロー法のように溶融押し出した樹脂に対して熱風を吹き付けて形成した繊維は、紡糸工程と延伸工程とが同じであるため延伸状態にはない。特に表層に繊維シートを用いる場合には、表層の繊維シートは吸脂前に不透明であるほうが吸脂前後の色相差が拡大するので、特に繊維径が細いことが望ましく、繊維径が2μm以下の極細繊維が好適である。下限は特に限定するものではないが、あぶらとりシートの機械的強度を損なわないように、0.1μm程度が適当である。極細繊維としては例えば、芯鞘型(偏芯型を含む)、サイドバイサイド型、多重バイメタル型、オレンジ型、海島型などの断面を有する複合繊維などを物理的・化学的に分割処理したものでよい。
【0020】
前記極細繊維は繊維シート全体の10重量%以上配合されることが好ましく、さらに好適には75重量%以上、最も好適には極細繊維のみからなるように配合することが好ましい。また、繊維シートには、繊維同士を接着するために熱接着性繊維を、25〜90重量%程度混合することが望ましい。熱接着性繊維は、低融点の熱可塑性樹脂成分からなる極細繊維でも良く、低融点の熱可塑性樹脂成分からなる通常の繊維径の繊維、つまり全溶融型の繊維でもよいし、融点の異なる熱可塑性樹脂成分が芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型などの断面になるように配置され、かつ繊維の表面に低融点成分が一部露出している複合繊維でもよい。とくに前記複合繊維を熱接着性繊維として用いた場合は加熱によって低融点成分が軟化し溶融しても他の樹脂成分によって繊維形態を維持することができるので好適である。熱接着性繊維(複合繊維である場合はその低融点成分)の融点は、熱接着性繊維以外の高融点の繊維(熱接着性繊維が複合繊維である場合にはその高融点成分)の融点に応じて適宜選定すればよいが、高融点繊維(または複合繊維の高融点成分)より15℃以上融点が低い繊維(または複合繊維の低融点成分)である事が好ましく、具体的には融点が90〜150℃程度であると後述する熱風接着の方法を適用する際に効率がよいので好適である。熱接着性複合繊維の繊維径は、20μm以下であるのが好ましく、15μm以下であるのがより好ましく、12μm以下であればより好ましい。
【0021】
繊維シートを構成する繊維の繊維長は、特に限定するものではないが、繊維シートを後述の湿式法にて作成する場合は繊維の分散性に優れるように、10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。なお、極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、0.2mm程度が適当である。また、極細繊維の繊維長が均一であるように、切断された極細繊維であるのが好ましい。繊維シートを乾式法にて作成する場合は繊維の分散性に優れるように、150mm以下であるのが好ましく、100mm以下であるのがより好ましく、50mm以下であるのが更に好ましい。なお、極細繊維の繊維長の下限は特に限定するものではないが、10mm程度が適当である。また、極細繊維の繊維長が均一であるように、切断された親油性極細繊維であるのが好ましい。なお、この「繊維長」は、JIS L 1015(化学繊維ステープル試験法)B法(補正ステープルダイヤグラム法)によって測定される値をいう。
【0022】
繊維シートを形成する繊維に、無機粉体及び/又は有機粉体を付着させてもよく、これによって繊維シートの不透明性を高めることができ、吸脂前後の色相差が拡大する効果がある。粉体としてはたとえばカオリン、ハロイサイト、蝋石、タルク、セリサイト、アロフェン、ゼオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、焼成ケイソウ土、アルミナ、ホワイトカーボン、超微粒子状無水シリカ、酸化チタン、亜鉛華、胡粉、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、トルマリン、などの無機粉体、キチン、キトサン、コラーゲン、絹フィブロイン、デンプン、小麦粉、ビタミン、結晶セルロース、マイクロカプセル、ナイロン粉体、アクリル粉体、エポキシ粉体、ポリエステル粉体、ポリエチレン粉体、メタクリル樹脂粉体、などの有機粉体を使用できる。粉体の平均粒子径は30μm以下であるのが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であるのが更に好ましい。下限は特に限定されるものではないが、0.1μm程度が適当である。なお粉体の「平均粒子径」とは、コールターカウンター法により得られる値をいう。これらの粉体を繊維に付着させるには、繊維状体のときに混合しても良いし、粉体と界面活性剤と水などで配合液を調製し、繊維シートを形成する際にこれを含浸してもよいし、スプレーしてもよい。
【0023】
本発明で使用される繊維シートの着色方法は、樹脂に顔料及び/又は染料を練りこんでから紡糸した着色繊維を用いても良いし、繊維シートの形成後に染料あるいは顔料で染色してもよい。また繊維シートの繊維に無機粉体及び/又は有機粉体を付着させる場合には、この粉体に顔料及び/又は染料を含ませて着色をおこなっても良い。
【0024】
隣接層に(場合によっては表層にも)用いることのできる繊維シートの目付は、使用感を損なわない限り特に限定しない。たとえば、隣接層となる繊維シートの片面に、表層となる繊維シート(隣接層とは色相が異なる)を重ねた、2層構造のあぶらとりシートの場合は、各層の繊維シートの目付は8〜30g/mが好ましく、15〜25g/mであるのがより好ましい。なおこの2層構造のあぶらとりシートは、隣接層となる繊維シートにも白色以外でかつ吸脂によって有色透明化するという、表層の機能を持たせる事ができ、両表面で吸脂による色相変化を起こすことができる。また他の例として隣接層となる繊維シートの片面に顔料を含むバインダなどをコーティングして、顔料を主体としてなる表層を形成した2層構造のあぶらとりシートの場合は、隣接層となる繊維シートの目付は8〜30g/mが好ましく、15〜25g/mであるのがより好ましい。さらにまた他の例として、隣接層となる繊維シートの両面に、表層となる繊維シート(隣接層とは色相が異なる)を重ねて、表層に隣接層が挟まれた3層構造のあぶらとりシートの場合は、各層の繊維シートの目付は8〜30g/mが好ましく、15〜25g/mであるのがより好ましい。さらにまた他の例として、隣接層となる繊維シートの両面に、顔料を含むバインダなどをコーティングして顔料を主体としてなる表層を形成した3層構造のあぶらとりシートの場合は、隣接層となる繊維シートの目付は8〜30g/mが好ましく、15〜25g/mであるのがより好ましい。なおあぶらとりシートが3層以上の積層体となる場合には、各層の目付を適宜調整し、使いにくくならない程度に、硬くならない程度にする。2層構造でも3層構造でも、あぶらとりシート全体で60g/mを超えないようにすることが望ましい。
【0025】
繊維シートの厚みは特に限定しないが、1つの層で18〜50μm、好ましくは23〜40μm、あぶらとりシート1枚あたりの繊維シートの合計の厚みが70μmを超えないようにすることが望ましい。
【0026】
表層が顔料を主体としてなる層であるあぶらとりシートの場合、顔料を主体としてなる表層の目付は、片面3〜20g/mが好ましく、5〜15g/mがより好ましい。このようなあぶらとりシートは隣接層となる繊維シートに顔料を含む液をコーティングするなどの方法で得られ、層間剥離などが起きにくい点で優れている。コーティングに用いる液の配合は、成膜性があるようなものであれば限定しないが、たとえば任意の色彩の顔料と、アクリル系エマルジョンなどのバインダ(結合剤)、および無機粉体または有機粉体、とくにシリカや、超微粒子状無水シリカなどの粉体を配合した分散液を使用することができる。無機粉体や有機粉体は、繊維シートの繊維に付着させる粉体と同じもので良い。
【0027】
本発明のあぶらとりシートの平均流量細孔径(平均孔径)は15μm以下であることが望ましい。平均孔径が小さければ小さい程、吸脂前のあぶらとりシートの色相を明確にする効果、およびあぶらとりシートに表層を有する場合は隣接層の色相を隠蔽する効果に優れている。好ましい平均孔径は12μm以下であり、より好ましい平均孔径は10μm以下であり、平均孔径の下限は特に限定するものではないが、皮脂の吸い取り量が多いように、0.1μm程度が適当である。このようなあぶらとりシートとするためには、例えば、極細繊維を使用すること、繊維に粉体を付着させること、湿式法にて繊維シートを形成すること、熱及び圧力を加えてよってあぶらとりシート全体を融着させること、実質的に低融点樹脂の融着処理のみを行うこと、加熱加圧条件を調節して厚さを調整すること、などの諸条件を満足させることによって製造することができる。なお、極細繊維量を多くしたり、加熱加圧条件を強くすることにより、平均孔径のより小さいあぶらとりシートを製造することができる。なお、あぶらとりシートの「平均孔径」は、PMI社(Porous Materials Inc.米国)のパームポロメーター(Automated Perm Porometer)を用い、ASTM E−1294−89に基づいて求めた平均流量細孔径をいう。より具体的には、乾いたサンプルと試液で濡らしたサンプルについて、徐々に圧力を上げながら気体の透過流量と圧力の関係曲線を求め、次いで、濡れ流量曲線(wet flow curve)と乾き流量曲線(dry flow curve)の1/2の傾きの曲線(halfdry curve)が交わる点の圧力を求め、これを次の方程式に代入して、平均流量細孔径、つまり平均孔径(μm)を求めることができる。
【0028】
d=2860γ/P
ここで、d=平均流量細孔径(μm)、γ=試液の表面張力(mN/m)、P=圧力(Pa)をそれぞれ意味する。
【0029】
また、本発明のあぶらとりシートの見掛空隙容積は、4〜16cm/mが好ましく、7〜14cm/mがさらに好ましい。あぶらとりシートの目付や加熱加圧条件を調節して厚さを調整することにより、前記見掛空隙容積を有するあぶらとりシートを製造することができる。なお「見掛空隙容積」は次の式から得られる値をいう。
【0030】
V=100×100×t×(1−d/s)
ここで、Vは見掛空隙容積(cm/m)を表し、tはあぶらとりシートの厚さ(cm)を表し、dはあぶらとりシートの見掛密度(g/cm)を表し、sはあぶらとりシートの平均比重(g/cm)を表す。なお、「平均比重」はあぶらとりシートを構成する比重の異なる各材料の質量比から算出した質量平均値をいう。例えば、あぶらとりシートが比重Gaの材料Ma(mass%)と、比重Gbの材料Mb(mass%)とからなる場合の平均比重Gav(g/cm)は次の式から得られる値をいう。
Gav={Ga×Ma/(Ma+Mb)}+{Gb×Mb/(Ma+Mb)}
【0031】
このような本発明のあぶらとりシートは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、前記した繊維を配合し繊維ウエブを形成する。繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、乾式法(例えば、カード法、エアレイ法など)や湿式法により形成することができる。これらの中でも繊維(特に極細繊維)の均一分散性の優れる湿式法により形成するのが好ましい。この湿式法としては、例えば、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式により形成できる。
【0032】
次いで、繊維ウエブを熱接着性繊維の低融点成分の融点以上に加熱して熱接着性繊維を融着させ、次いでタルク・顔料・ポリオレフィン系粒子・界面活性剤からなる配合液を含浸した後140℃で乾燥すれば、繊維シートを形成することができる。顔料の種類を変えて色相の異なる繊維シート2枚を作製して積層し、加熱加圧によって一体化すれば、2層構造のあぶらとりシートとなる。本発明のあぶらとりシートは地合いが優れ平均孔径が15μm以下でありやすいように、実質的に熱接着性繊維の融着のみによって形態を維持しているのが好ましい。この熱接着性繊維の融着は、例えば、繊維ウエブを一対のカレンダーロール間を通過させることによって実施することができる。このカレンダーロールの温度は熱接着性繊維中の低融点樹脂の融点よりも10〜50℃低い温度に設定し、カレンダーロール間の圧力を150〜300kg/cmとするのが好ましい。このようなカレンダーロールとしていずれのカレンダーロールも表面が平滑なものを使用すると、あぶらとりシート全体が融着した状態とすることができ、また平均孔径が15μm以下のあぶらとりシートとしやすい。
【実施例】
【0033】
ポリ乳酸からなる海成分中にポリプロピレンからなる島成分が25個存在する、複合紡糸後の延伸工程により延伸して得た海島型繊維(繊度:1.7dtex、切断繊維長:2mm)を用意した。この海島型繊維を10mass%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、海成分であるポリ乳酸を抽出除去した後、風乾して、ポリプロピレン極細繊維(繊維径:2μm、切断繊維長:2mm、フィブリル化していない、延伸状態にある、繊維軸方向において実質的に同じ直径を有する、横断面形状:円形、融点:165℃)を得た。
【0034】
他方、芯部分がポリプロピレン(融点:165℃)からなり、鞘部分が高密度ポリエチレン(融点:135℃)からなる芯鞘型熱接着性繊維(繊維径:10.4μm、繊維長:5mm、繊維表面全体を高密度ポリエチレンが占める、芯部分と鞘部分との体積比が6:4、引張り強さ:7.7g/d)を用意した。
【0035】
前記ポリプロピレン極細繊維30mass%と芯鞘型熱接着性繊維70mass%とを分散させたスラリーを傾斜式抄紙機のネット上に抄造して、湿式繊維ウエブを形成した。次いで、この湿式繊維ウエブを温度135℃のドライヤーで乾燥して白色の繊維シート(目付15g/m、厚さ80μm)を得た。次に、タルク・顔料・ポリオレフィン系粒子・界面活性剤からなる水溶液を、顔料の色違いで4色準備し、白色の繊維シートを含浸し、パッダロールで絞った後、温度140℃のドライヤーで乾燥し、4色の繊維シート(目付20g/m、厚さ100μm)を得た。
【0036】
得られた繊維シートを、表1に示した12とおりの色相の異なる組合せと、4とおりの同色相の組合せで、それぞれ2枚重ねにし、温度110℃、圧力220kg/cmに設定された一対の表面平滑カレンダー間を通過させ、芯鞘型熱接着性繊維の高密度ポリエチレンのみを全体的に融着させて、表層と隣接層の2層からなるあぶらとりシート(目付:40g/m、厚さ:60μm、見掛密度:0.67g/cm、平均孔径:6μm、見掛空隙容積:13.0cm/m)を得た。
(吸脂による色相変化の比較)
得られた16種類のあぶらとりシートについて、各層の繊維シートの色相と、片面(表層とする)からの吸脂前の色相、およびその面に人工皮脂を20g/cm付着させた後の吸脂後の色相を色相色差計(ミノルタ(株)製 CR−210)で測定してマンセル値を求め、表1に示した。
【0037】
なお、測定に使用した人工皮脂は次のような成分からなるものである。
オリーブオイル 88重量%
スクアラン(サメ油)10重量%
コレステロール 2重量%

(表1)

【0038】
(考察)
表1に示したように、本発明のあぶらとりシートは吸脂前後で色相差が大きく、特に表層と隣接層の色相差が大きい、補色に近い組み合わせによって作製されたものは吸脂前後での色相差が大きかったので、皮脂確認性に優れている。また、実施例1と実施例2とは表層と隣接層との色の組合せを入れ替えた組であるので、あぶらとりシートの両面において吸脂前後での色相差が大きく吸脂を確認しやすいものであった。
【0039】
(吸脂速度比較)
実施例1のあぶらとりシートと、市販の多孔質あぶらとりフィルムとに、それぞれ0.5mlの人工皮脂を滴下してから、完全に吸収されて表面のベタツキがなくなるまでの時間を測定したところ、実施例1のあぶらとりシートが2秒、市販の多孔質あぶらとりフィルムは7秒かかった。したがって本発明のあぶらとりシートは市販の多孔質あぶらとりフィルムよりも吸脂速度が早く、使用時のベタツキが少ないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を主体とした皮膚用あぶらとりシートであって、少なくとも一方の表面から観察される色相が吸脂によって変化し、吸脂前の色相と吸脂後の色相とが、100分割マンセル色相環において12以上50以下となる色相差を有することを特徴とする皮膚用あぶらとりシート。
【請求項2】
色相が異なることによって区別される層を少なくとも2層以上そなえた皮膚用あぶらとりシートであって、少なくとも一方の表面側にある表層は白色以外でかつ吸脂によって有色透明化するものであり、前記表層に接している隣接層は白色以外のかつ前記表層とは色相が相違した繊維シートであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚用あぶらとりシート。
【請求項3】
吸脂前の表層の色相と隣接層の色相とが、100分割マンセル色相環において30以上50以下となる色相差を有することを特徴とする請求項2に記載の皮膚用あぶらとりシート。
【請求項4】
表層が繊維を主体としてなる層であることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
【請求項5】
表層が顔料を主体としてなる層であることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
【請求項6】
繊維を主体とした皮膚用あぶらとりシートであって、両面において観察される色相が吸脂によって変化し、吸脂前の色相と吸脂後の色相とが、いずれの面でも100分割マンセル色相環において12以上50以下となる色相差を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。
【請求項7】
繊維に無機粉体及び/又は有機粉体が付着していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚用あぶらとりシート。

【公開番号】特開2006−26002(P2006−26002A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207651(P2004−207651)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】