説明

皮膚用乳化化粧料

【課題】乳化剤型において、セラミド類を内包してなるリポソームをミセル化や析出を起さずに安定配合できるとともに、該リポソームの形態を維持し続けることができる皮膚用乳化化粧料の提供。
【解決手段】リポソームと、非イオン性界面活性剤とを含有してなる皮膚用乳化化粧料であって、該リポソームは、(A)リン脂質、(B)セラミド類および(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、好ましくは、酸化エチレンの付加モル数が10〜40のモノ脂肪酸ポリエチレングリコールから形成されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚用乳化化粧料に関する。更に詳しくは、リポソームを安定に配合することができる皮膚用乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のバリア機能を担っているのは角質細胞間脂質であり、その約半数はセラミド類であることが知られている。角質細胞間脂質の減少は、皮膚外部からの外的要因の侵入又は皮膚内部からの水分蒸散などの皮膚バリア機能の低下に繋がる。よって、皮膚バリア機能が低下した皮膚にセラミド類を補うことで皮膚状態を改善できると考えられている。
【0003】
従来より、セラミド類を皮膚用化粧料に配合させる試みがなされている。しかしながら、セラミド類は、融点が高い結晶性の物質であるため、製剤中での安定化が難しい。そこで、皮膚用化粧料に安定に配合するために、種々の界面活性剤と多量の油剤を用いて乳化剤型とする試みがなされている。
【0004】
具体的には、例えば、セラミド類およびアルキロイル乳酸エステル塩を含有してなる乳化組成物(例えば、特許文献1を参照)、セラミド類、ペクチン、液体油および水を含有してなる乳化化粧料(例えば、特許文献2を参照)、特定のカルボン酸および/又はその塩、塩基、セラミド類、水および界面活性剤を含有してなる水中油型エマルション(例えば、特許文献3および4を参照)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、これら試みに拠って、セラミド類を安定に配合することはできるものの、界面活性剤や油剤を多量に用いなければならず、ベタつきなどの使用感に劣るといった問題がある。そのため、近年では、リン脂質などを含有する脂質二重膜で構成されたリポソームにセラミド類を内包し、皮膚用化粧料とする試みがなされている。
【0006】
具体的には、例えば、セラミドおよび4−n−ブチルレゾルシノールを内包するリポソームを含有する皮膚外用剤(例えば、特許文献5を参照)、特定のリン脂質、乳化剤および生理活性成分を含有してなる粉末状リン脂質組成物を水性媒体に分散してなるリポソーム組成物(例えば、特許文献6を参照)などが提案されている。
【0007】
しかしながら、これら試みに拠って、セラミド類を安定に配合することはできるものの、皮膚用化粧料とした場合のしっとりとした使用感に劣るといった問題がある。また、これらリポソームを乳化剤型の皮膚用化粧料に配合した場合、乳化剤として用いられた界面活性剤の影響を受け、リポソームの形態が崩壊してミセル化(乳化)する又は凝集して析出するといった問題がある。そのため、保存安定性の観点から、乳化剤型にはリポソームを配合し難いといった現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−256188号公報
【特許文献2】特開2001−122734号公報
【特許文献3】特開2006−290751号公報
【特許文献4】特開2006−312622号公報
【特許文献5】特開2006−328026号公報
【特許文献6】特開2007−176821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、乳化剤型において、セラミド類を内包してなるリポソームをミセル化や析出を起さずに安定配合できるとともに、該リポソームの形態を維持し続けることができる皮膚用乳化化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、
〔1〕リポソームと、非イオン性界面活性剤とを含有してなる皮膚用乳化化粧料であって、該リポソームは、(A)リン脂質、(B)セラミド類および(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから形成されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料、
〔2〕(A)成分が、水素添加リン脂質である前記〔1〕に記載の皮膚用乳化化粧料、
〔3〕(C)成分が、酸化エチレンの付加モル数が10〜40のモノ脂肪酸ポリエチレングリコールであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の皮膚用乳化化粧料、
〔4〕(A)成分、(B)成分および(C)成分の含有量が、下記含有質量比、
(C)成分/((A)成分+(B)成分)=0.02〜0.34
の範囲を満たすことを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の皮膚用乳化化粧料、並びに
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の皮膚用乳化化粧料が、前記(A)成分〜(C)成分で形成されてなるリポソームを含む組成物を、前記非イオン性界面活性剤により乳化した組成物に配合されることにより調製されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚用乳化化粧料は、セラミド類を内包してなるリポソームを安定に配合させることができるという効果を奏する。また、配合されたリポソームの形態が崩壊することなく維持し続けることから、保存安定性に格段に優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の皮膚用乳化化粧料の製造直後に透過型電子顕微鏡でリポソームを撮影したときの図面代用写真である。
【図2】本発明の皮膚用乳化化粧料を40℃6週間保存した後に透過型電子顕微鏡でリポソームを撮影したときの図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚用乳化化粧料は、リポソームと、非イオン性界面活性剤とを含有し、該リポソームは、(A)リン脂質、(B)セラミド類および(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから形成される。
【0014】
まず、本発明の皮膚用乳化化粧料に含有されるリポソームについて説明する。尚、本発明のリポソームは、該リポソームを含有する組成物の形態で調製されることが好ましい。
【0015】
(A)成分のリン脂質とは、リン酸残基を含む複合脂質であって、天然リン脂質、合成リン脂質、天然由来のリン脂質の不飽和炭素鎖を水素により飽和とした水素添加リン脂質などが挙げられる。具体的なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチンなどの天然リン脂質;ジラウロイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイル・オレオイルホスファチジルコリンなどの合成リン脂質;水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリンなどの水素添加リン脂質などを例示することができる。これら(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(A)成分としては、保存安定性に優れる観点から、水素添加リン脂質を用いることが好ましく、中でも、水素添加大豆レシチンを用いることがより好ましい。
【0016】
尚、(A)成分は、市販品をそのまま用いることもできる。水素添加大豆レシチンの市販品としては、例えば、COATSOME NC−61(商品名,日油社製)、NIKKOL レシノールS−10M(商品名,日光ケミカルズ社製)、ベイシス LS−60HR(商品名,日清オイリオグループ社製)などを例示することができる。
【0017】
(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、リポソームを形成する観点から、組成物中、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、保存安定性の観点から、10質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。
【0018】
(B)成分のセラミド類は、上記(A)成分により形成されるリポソームに内包される成分である。用いられるセラミド類の具体例としては、例えば、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン;スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンの長鎖脂肪酸アミドであるセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド3B、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6I、セラミド6IIなどの天然セラミド類;スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体であるスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリンなどのスフィンゴリン脂質およびフィトスフィンゴリン脂質;スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンの配糖体であるセレブロシド、ガングリオシドなどのスフィンゴ糖脂質およびフィトスフィンゴ糖脂質などを例示することができる。本発明においては、上記したセラミド類の他に化学合成で得られたセラミド類似化合物も好適に用いることができる。これら(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0019】
(B)成分の含有量は、リポソームに内包されて所望の効果が充分に発揮される量であれば特に限定されないが、(A)成分との質量含有比が、(B)成分/(A)成分=0.01〜1の範囲となるように含有させることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5である。質量含有比が0.01未満の場合、所望の効果が充分に発揮されないために好ましくない。また、質量含有比が1よりも多い場合、保存安定性に劣るために好ましくない。
【0020】
(C)成分のポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、上記(B)成分を内包したリポソームの二分子膜の親水基部分に配向させることでリポソームを微細化し、組成物中での保存安定性を高める観点から配合される。用いられるポリエチレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノ脂肪酸ポリエチレングリコール、ジ脂肪酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0021】
具体的には、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコールなどのモノ脂肪酸ポリエチレングリコール;ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどのジ脂肪酸ポリエチレングリコールなどを例示することができる。これら(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(C)成分としては、保存安定性の観点から、モノ脂肪酸ポリエチレングリコールを用いることが好ましい。
【0022】
また、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの酸化エチレンの付加モル数は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、微細化の観点から、10〜40が好ましく、より好ましくは20〜30である。
【0023】
(C)成分の含有量は、リポソームに配向されて所望の効果が充分に発揮される量であれば特に限定されないが、(A)成分との質量含有比が、(C)成分/(A)成分=0.01〜1の範囲となるように含有させることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.5である。質量含有比が0.01未満の場合、保存安定性に劣るために好ましくない。また、質量含有比が1よりも多い場合、ミセル化によりリポソームの形態が崩壊するために好ましくない。
【0024】
上記(A)〜(C)成分により形成されるリポソームの平均粒子径は、特に限定されないが、組成物中のリポソームの分散性を高める観点から、20〜300nmの範囲内とすることが好ましく、より好ましくは30〜200nmである。尚、本発明のリポソームの平均粒子径とは、ELS−8000(大塚電子社製)を用いて、積算回数100回で測定したときの値であるが、これら測定条件のみに限定されるものでない。
【0025】
また、上記した(A)成分、(B)成分および(C)成分の含有量は、組成物中のリポソームの分散性を高め、優れた保存安定性を付与する観点から、下記含有質量比、
(C)成分/((A)成分+(B)成分)=0.02〜0.34
の範囲を満たすことが好ましく、0.08〜0.27の範囲を満たすことがより好ましい。含有質量比が0.02未満、或いは0.34よりも大きい場合には、リポソームの分散性に劣り、保存安定性に悪影響を及ぼすために好ましくない。
【0026】
本発明のリポソームを含有する組成物には、リポソームの二分子膜に配向させることで更に微細化を促進させる観点から、分岐鎖高級アルコールおよび/又は不飽和鎖高級アルコールを含有させることができる。具体的には、例えば、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールなどの炭素数14〜30の分岐鎖高級アルコール;パルミトオレイルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、イコセニルアルコール、エルシルアルコールなどの炭素数16〜22の不飽和鎖高級アルコールなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0027】
分岐鎖高級アルコールおよび/又は不飽和鎖高級アルコールの含有量は、リポソームに配向されて所望の効果が充分に発揮される量であれば特に限定されないが、(A)成分との質量含有比が、(分岐鎖高級アルコールおよび/又は不飽和鎖高級アルコール)/(A)成分=0.01〜1の範囲となるように含有させることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5である。質量含有比が0.01未満の場合、微細化に劣るために好ましくない。また、質量含有比が1よりも多い場合、リポソームの形態が崩壊するために好ましくない。
【0028】
本発明のリポソームを含有する組成物を調製するためには、溶剤として多価アルコールが用いられる。多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−デカンジオール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0029】
多価アルコールの含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、リポソーム調製時の溶解性の観点から、組成物中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、保存安定性の観点から、50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下である。これらの観点から、多価アルコールの含有量は、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは2〜30質量%である。
【0030】
リポソームを含有する組成物の製造方法は、公知の方法を用いて製造することができれば特に限定されないが、好ましくは以下の製造方法を例示することができる。
【0031】
始めに、多価アルコールに(A)成分を加え、70〜90℃の温度範囲で均一溶解して混合物(1)を得る。次いで、多価アルコールに(B)成分および(C)成分を加え、70〜95℃の温度範囲で均一溶解した混合物(2)を、先に調製した混合物(1)に80℃以上で加え混合する。均一に混合後、80℃以上に加温した精製水を加え、ホモミキサー(T.K.ロボミックス,特殊機化工業社製)を用いて、6000rpm、5分間攪拌する。このような製造工程により、本発明のリポソームを含有する組成物を調製することができる。尚、分岐鎖高級アルコールおよび/又は不飽和鎖高級アルコールを含有させる場合は、混合物(1)を調製時に(A)成分とともに多価アルコールに溶解させれば良い。
【0032】
また、本発明においては、より微細なリポソームとするために、高圧ホモジナイザー((マイクロフルイダイザーM−110−E/H,マイクロフルイディックス社製)又は精密乳化分散機(クレアミックス,エム・テクニック社製)を用いて微細化を施しても良い。
【0033】
次に、本発明の皮膚用乳化化粧料について説明する。該化粧料の乳化には、非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0034】
用いられる非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。これら非イオン性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0035】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0036】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0037】
ソルビタン脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0038】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0039】
非イオン性界面活性剤の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、乳化させる観点から、化粧料中、0.3質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上である。また、ミセル形成によるリポソームの崩壊を抑制する観点から、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下である。これらの観点から、非イオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.3〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。
【0040】
また、乳化させるのに用いられる油剤としては、特に限定されないが、例えば、高級アルコール、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油、炭化水素油などが挙げられる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0041】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコールなどを例示することができる。
【0042】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸などを例示することができる。
【0043】
油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、水素添加パーム油、アボカド油、ゴマ油、オリーブ油、ククイナッツ油、ブドウ粒子油、サフラワー油、アーモンド油、トウモロコシ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ローズヒップ油などを例示することができる。
【0044】
エステル油としては、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシルなどを例示することができる。
【0045】
シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、アルコール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンなどを例示することができる。
【0046】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オリーブスクワラン、米スクワラン、スクワラン、プリスタン、白色ワセリン、パラフィンワックス、オゾケライト、セレシン、マイクロクリスタリンワックスなどを例示することができる。
【0047】
油剤の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、乳化させる観点から、化粧料中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、保存安定性の観点から、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。これらの観点から、油剤の含有量は、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは2〜40質量%である。
【0048】
本発明の皮膚用乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、多価アルコール、低級アルコール、保湿剤、金属封鎖剤、防腐剤、植物抽出エキス、香料、pH調整剤、精製水などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0049】
本発明の皮膚用乳化化粧料を調製するには、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用い、攪拌して乳化することにより製造することができる。具体的には、例えば、油剤と精製水とを非イオン性界面活性剤を用いて、ホモミキサーを用いて攪拌乳化した後に、予め調製したリポソームを含有する組成物を混合攪拌する調製方法を例示することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0051】
(リポソーム組成物の調製)
表1および表2に記した組成に従い、製造例1〜10の各リポソームを含有する組成物を常法に準じて調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
(試料の調製)
表3および表4に記した組成に従い、実施例1〜5および比較例1〜5の各皮膚用乳化化粧料を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表3および表4に併記する。
【0055】
(試験例1:製造直後の安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料の製造直後のリポソームの形態を透過型電子顕微鏡により観察し、以下の評価基準に従って評価した。
尚、透過型電子顕微鏡での観察は、ネガティブ染色法で行った。
【0056】
<製造直後の安定性の評価基準>
○:リポソームの形態が崩壊していない
△:リポソームの形態が一部崩壊しミセル化又は析出している
×:リポソームの形態が全崩壊しミセル化又は析出している
【0057】
(試験例2:経時的な保存安定性の評価)
試験例1の評価後、50mL容の透明ガラス容器にそれぞれ封入し、40℃の恒温槽に夫々6週間保存した後のリポソームの形態を透過型電子顕微鏡により観察し、以下の評価基準に従って評価した。
尚、透過型電子顕微鏡での観察は、試験例1と同法で行った。
【0058】
<経時的な保存安定性の評価基準>
○:製造直後と全く変化が認められない
△:リポソームの形態が一部崩壊しミセル化している
×:リポソームの形態が全崩壊しミセル化している
【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
表3および表4に示された結果から、各実施例で得られた皮膚用乳化化粧料は、各比較例で得られた皮膚用乳化化粧料と対比して、リポソームの形態を崩壊させることなく、安定に配合できていることが分かる。また、リポソームの形態が持続することから、製剤の保存安定性に格段に優れた効果を奏していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームと、非イオン性界面活性剤とを含有してなる皮膚用乳化化粧料であって、該リポソームは、(A)リン脂質、(B)セラミド類および(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルから形成されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料。
【請求項2】
(A)成分が、水素添加リン脂質である請求項1に記載の皮膚用乳化化粧料。
【請求項3】
(C)成分が、酸化エチレンの付加モル数が10〜40のモノ脂肪酸ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚用乳化化粧料。
【請求項4】
(A)成分、(B)成分および(C)成分の含有量が、下記含有質量比、
(C)成分/((A)成分+(B)成分)=0.02〜0.34
の範囲を満たすことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の皮膚用乳化化粧料。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の皮膚用乳化化粧料が、前記(A)成分〜(C)成分で形成されてなるリポソームを含む組成物を、前記非イオン性界面活性剤により乳化した組成物に配合されることにより調製されることを特徴とする皮膚用乳化化粧料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−32229(P2011−32229A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181281(P2009−181281)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】