説明

皿頭リベット

【課題】リベットを圧入固定したとき固定部材の裏面が膨出するのを阻止するとともに被締結部材の下穴合わせを容易にして部材の組み合わせを簡単にする皿頭リベット得る。
【解決手段】あらかじめあけられた下穴11に圧入する脚部4と頭部2とからなるリベット1であって、頭部径は前記脚部径より大きく脚部側が小径な皿頭形状の頭部2を形成し、頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上である皿頭リベットであるので、固定部材の表面における下穴周縁に円錐穴形状の座ぐりをあらかじめ形成することが不要になり、この下穴に皿頭リベットを圧入するだけで固定部材にリベットを固定でき、リベットの頭部表面を固定部材の表面と同一平面にすることができる。このため、座ぐりを形成するという作業工程がなくなり、製品コストの低減が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部材にこれの表面側から脚部を圧入して固定するリベットであって、リベットが固定部材の下穴に固定されたとき、下穴の周縁の材料をできるだけ裏面から膨出しないようにして、被締結部材を固定部材の裏面に重ねて脚部先端をかしめことで、固定部材と被締結部材とを固定するようにした皿頭リベットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要が急増している液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの所謂、薄型テレビにおいては、その軽量化等の構成上からアルミニウム合金製のパネルが多く使用され、これに前記ディスプレイが取り付けられて製品化されている。このようなパネルにおいては、多くのリベットやインサート部材が使用され、薄型化及び軽量化が進んでいるが、互いの板材を固定する場合、一般的には頭部に丸みを持たせたリベットで互いの板材を固定するようになっており、そのため、この頭部が板材の表面に出っ張りとなって突出し、これが邪魔になって薄さの追求の障害となっている。
【0003】
また、アルミニウム合金製の板材に代えて、比較的軟質な冷間圧延鋼板などの板材を使用することもあるが、前記のような問題を解決しようとすると、リベットかしめを行うこのような固定部材の下穴に座ぐりを施し、この下穴にこれに合う皿頭を有するリベットを使用して板材の表面と平坦な頭部面とを同一にする必要がある。しかしながら、板材には下穴周囲に座ぐりを形成する必要があることから、この座ぐり工程を設けねばならず、必然的に作業工程が多くなっていた。
【0004】
このように皿頭リベットを用いて板状の部品を重ねてかしめ固定したものに特許第3706838号公報に示すものがある。これは、遊技機、釣り銭機、両替機、自動販売機などに内蔵して、必要な枚数のコインを払い出すためのコインホッパー型コイン払出し装置におけるコイン搬送用ディスクローターの補強構造に関するものであり、図5にその要部を示す。この図5において、110はディスクローター本体120を補強する表面カバーで、コインより硬く平滑な好ましくは約0.4mmの一定厚みのステンレス鋼板やその他の金属板が塑性加工されたものであり、リベット植え込み孔121に円錐皿穴122を形成して皿リベット101を圧入して表面カバー110をディスクローター本体120の表面に被着一体化したものである。このようにリベット101の頭部102は表面カバー110と同一平面となるようにするためにディスクローター本体120には円錐皿穴122が形成された構成となっている。
【特許文献1】特許第3706838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにかしめられたリベットの頭部が出っ張らないようにするには通常皿頭リベットを使用して、このリベットの円錐座面が接するようにワークに座ぐり(円錐皿穴)を形成し、かしめることが一般に行われているが、作業工程が必然的に多くなり、製品コストの低減に繋がっていない。また、このように座ぐりを形成することで、この座ぐり形成作業においてバリが発生することから、これを必ず除去する必要があり、これを除去しないとワークと同一表面となった面上に薄いシートを貼り付けた場合、これが破れることもあった。更に、互いの板状のワークをこのリベットで密着した状態で締結する場合、互いの板材をあらかじめ重ねてからリベットを圧入してかしめるか若しくはあらかじめ互いのワークに下穴をあけてからこれを位置決めした後、リベットを圧入かしめすることが多いが、前者の場合はリベットでワークを打ち抜くことになるからリベット周辺のワークが膨出することになり、裏面が膨れた状態となる。一方、後者の場合は、互いのワークを重ねた状態において夫々のワークの下穴合わせをする必要があり、これに多くの時間がかかっている。しかも、この下穴の中心が少しでもずれるとリベットに歪みが生じたり、リベットの頭部が僅か浮き上がるなどの課題が生じている。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解消して固定部材にリベットを圧入固定したとき固定部材の裏面が極力膨出するのを阻止するとともに被締結部材の下穴合わせを容易にして互いの部材の組み合わせを簡単にする皿頭リベット得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、あらかじめあけられた下穴11に圧入する脚部4と頭部2とからなるリベット1であって、頭部径は前記脚部径より大きく脚部側が小径な皿頭形状の頭部2を形成し、頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上である皿頭リベットを提供することで達成される。
【0008】
また、本発明の目的は、あらかじめあけられた下穴11に圧入する脚部4と頭部2とからなるリベット1であって、頭部径は前記脚部径より大きく脚部側が小径な皿頭形状の頭部2を形成し、頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上に形成し、一方、このリベット1を固定部材10にあけられた下穴11に、固定部材10の表面に頭部表面が同一平面となるとともに脚部4がこの固定部材10の裏面10aに固定される被締結部材20から突出するよう圧入固定し、固定部材10に前記リベット1が固定され且つリベット1の脚部4が固定部材10から突出した状態で被締結部材20の下穴21にリベット1の脚部4を貫挿させて脚部先端がかしめられるようにした皿頭リベットを提供することによっても達成される。
【0009】
更に、これら構成の皿頭リベットにおいて、頭部径は脚部径に対して5/4〜6/4の大きさに設定されていることで、ワークとしての固定部材の裏面への材料の膨出が極力緩和される。しかも、リベットは固定部材10の硬度より大きい硬度を有し、圧入時において固定部材10の下穴周縁を押し潰す構成であることから、固定部材の材料は下穴中心側に膨れてリベットを押圧するので、固定部材の裏面がほとんど膨出しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固定部材の表面における下穴周縁に円錐穴形状の座ぐりをあらかじめ形成することが不要になり、この下穴に皿頭リベットを圧入するだけで固定部材にリベットを固定でき、リベットの頭部表面を固定部材の表面と同一平面にすることができる。このため、座ぐりを形成するという作業工程がなくなり、製品コストの低減が可能になる。また、座ぐり形成時に発生するバリが皆無になり、これを除去する必要性もなくなり、この固定部材の表面に薄いシートを貼り付けても、これがバリで破れるということも解消される。更に、この固定部材の裏面に板状の被締結部材を密着させた状態でかしめ固定する場合、固定部材の裏面に膨出ヶ所がほとんど発生しないため、固定部材と被締結部材とは隙間を生じることなく重ねてかしめ固定することができる。しかも、皿頭リベットを固定部材の下穴にあらかじめ圧入固定して脚部が突出した状態にしてから被締結部材の下穴に前記リベットの脚部を貫挿させ、この脚部をかしめているので、固定部材に対する被締結部材の下穴合わせが容易になり、下穴の中心がずれることがない。これにより、リベットに歪みが生じることがなく、リベットの頭部が浮き上がることもなくなる。その上、固定部材を離れた所に移動させてそこで被締結部材と固定させる場合においても被締結部材との位置合わせが容易になるなどの特有の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図4に基づき説明する。図1において、1は頭部2の表面が平坦で脚部側が頭部径より小径な皿頭形状となっている座面3を有する頭部2とこれに連続してこれより小径な脚部4と一体となった皿頭リベットである。この頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上の大きさとなっており、多くても頭部径は脚部径に対して5/4〜6/4の大きさに設定されている。このように設定することで、固定部材10にあらかじめあけられている下穴11に脚部4を先にして圧入固定されても、固定部材10の裏面10aから部材の材料が膨出することが極力生じないようになっている。
【0012】
また、この皿頭リベット1の円錐形状の座面3はその傾斜角(θ)が通常45°程度に傾斜しており、これにより固定部材10の表面側の材料は固定部材10の下穴中心側に流れ、圧入されたリベット1の周面を押圧することになり、リベット1は固定部材10に一体固定されるようになっている。このとき、リベット1の頭部外周径は脚部径より僅か大きく形成されているだけなので、固定部材10の裏面10aへの材料の流れはほとんど生じない。尚、この円錐形状の座面3の傾斜角(θ)は前記45°よりも大きくすることで、より小さい圧入力で固定することができる。一方、リベット1は前記固定部材10の厚みとこれに固定される被締結部材20の厚みとを加えた長さより長くして被締結部材20の裏面20aにおいてかしめるのに十分なかしめ代を有する長さに設定されており、その先端には下穴11、21への挿入が容易となるよう面取りが施されている。
【0013】
更に、このリベット1の硬度は前記固定部材10の硬度より大きい硬度を有するように設定してあり、圧入時において固定部材10の下穴周縁を押し潰す構成となっている。このようにリベット1の硬度は固定部材10の硬度より大きければ十分であり即ち、リベット1の座面3が固定部材10の下穴周縁を押し潰すのに十分であれば、特にその硬度は限定されるものではない。この実施例においては例えば、固定部材10の硬度はHv80〜Hv100であることからリベット1の硬度はHv130以上に設定されている。
【0014】
このような皿頭リベット1を固定部材10に固定する作業に際しては、図2に示すように、あらかじめリベット1の脚部径に合わせてあけられている下穴11を有する固定部材10を準備し、この下穴11に図3に示すように、固定部材10の表面側からリベット1の脚部4を先にして圧入する。これにより、圧入されたリベット1は頭部2の座面3が下穴11の周縁を押し潰しながら固定部材内10に没入し、リベット1の頭部表面は固定部材10の表面と同一平面となり、脚部4は固定部材10の裏面10aから所定量だけ突出した状態で固定される。
【0015】
このように、あらかじめあけられた下穴11に圧入する脚部4と頭部2とからなるリベット1において、このリベット1を固定部材10にあけられた下穴11に、固定部材10の表面に頭部表面が同一平面となった状態で脚部4がこの固定部材10の裏面10aに固定される被締結部材20から突出するに十分な長さの脚部4を有して圧入固定した後、図4に示すように、このリベット1の脚部4を被締結部材20の下穴21に位置決めする。この後、被締結部材20の下穴21にリベット1の脚部4を貫挿させて脚部先端をかしめる。これにより、図1に示すように、被締結部材20は固定部材10に隙間を生じることなく密着固定される。尚、この実施の形態において使用するリベット1は脚部4に中空孔を設けた所謂、中空リベットであっても、あるいは中空孔のない中実リベットであってもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を示す要部断面正面図である。
【図2】リベットと固定部材との関係を示す要部断面正面図である。
【図3】固定部材にリベットを圧入固定する状態を示す要部断面正面図である。
【図4】被締結部材に圧入する状態を示す要部断面正面図である。
【図5】従来例を示す要部断面正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 リベット
2 頭部
3 座面
4 脚部
10 固定部材
10a 裏面
11 下穴
20 被締結部材
20a 裏面
21 下穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめあけられた下穴(11)に圧入する脚部(4)と頭部(2)とからなるリベットであって、頭部径は前記脚部径より大きく脚部側が小径な皿頭形状の頭部を形成し、頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上であることを特徴とする皿頭リベット。
【請求項2】
あらかじめあけられた下穴に圧入する脚部と頭部とからなるリベットであって、頭部径は前記脚部径より大きく脚部側が小径な皿頭形状の頭部を形成し、頭部径は少なくとも脚部径の5/4倍以上に形成し、一方、このリベット(1)を固定部材(10)にあけられた下穴に、固定部材の表面に頭部表面が同一平面となるとともに脚部がこの固定部材の裏面(10a)に固定される被締結部材(20)から突出するよう圧入固定し、固定部材に前記リベットが固定され且つリベットの脚部が固定部材から突出した状態で被締結部材の下穴(21)にリベットの脚部を貫挿させて脚部先端がかしめられるようにしたことを特徴とする皿頭リベット。
【請求項3】
頭部径は脚部径に対して5/4〜6/4の大きさに設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の皿頭リベット。
【請求項4】
リベットは固定部材の硬度より大きい硬度を有し、圧入時において固定部材の下穴周縁を押し潰す構成であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の皿頭リベット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−208869(P2008−208869A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44191(P2007−44191)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】