説明

盗難検知センサ、盗難防止タグ及び盗難防止システム

【課題】 展示品等から離れた場所から威嚇鳴動を行って盗難を抑制することにある。
【解決手段】 各展示品等に取付けられ、展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び個別識別データを無線送信する電池電源13aを持った盗難防止タグ1と、手の届かない場所に設置され、異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、威嚇鳴動し、かつ通報する威嚇通報装置2と、監視員が常駐する建物に設置され、かつ、個別識別参照データと展示品等特定情報とが対応付けて記憶され、威嚇通報装置から異常データ及び個別識別データを受信したとき、個別識別データと前記個別識別参照データとを比較し、一致した個別識別参照データが存在するとき、外部に鳴動するとともに、個別識別参照データに対応付けられた展示品等特定情報を表示する中央監視装置3とを設けた盗難防止システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅展示場,ホテル,自動車展示場その他広域・大規模な展示場・店舗等に装備される備品や販売目的で展示される高額商品の盗難を抑制する盗難検知センサ、盗難防止タグ及び盗難防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗に陳列される商品を盗難から防止するために、多くの盗難防止装置が提案されている。
【0003】
これら盗難防止装置としては、ワイヤー式盗難防止タグや貼り付け型盗難防止タグが使用されている。
【0004】
ワイヤー式盗難防止タグは、警報回路及び警報ブザーを備えたタグ本体の一側部から盗難検知用ワイヤーが導出され、当該盗難検知用ワイヤーの先端部はループ状に形成されている。また、タグ本体には常時はタグ本体底部から外部に突出するようにプッシュ式検知スイッチが取付けられている。
【0005】
ワイヤー式盗難防止タグの商品への取付けは、人手によりタグ本体を持ち、商品陳列棚などに立設される固定バーの回りを一巡させてワイヤー先端部のループ内を潜らすことにより、固定バーにタグ本体を支持する。また、商品とタグ本体との間に、プッシュ式検知スイッチがタグ本体内に没するごとく両面テープを介在させて貼り付けることにより、商品とタグ本体とを一体とし、商品陳列棚に陳列する。
【0006】
この状態において、盗難検知用ワイヤーが切断されたり、商品からタグ本体が切り離されて検知スイッチが外部に突出したとき、タグ本体内の警報回路が盗難と検知し、警報ブザーを鳴動させて盗難を防止する(特許文献1)。
【0007】
次に、貼り付け型盗難防止タグは、箱状筐体の内部に警報回路及び警報ブザーが内蔵され、また、筐体内部に内装された盗難検知スイッチから筐体底部を貫通して外部に作動棒が突出される。そして、前述同様に、筐体底部から突出された作動棒が商品陳列棚上の商品に当接するように設定しつつ、両面テープを用いて、商品と箱状筐体とを一体とし、商品陳列棚に陳列する。
【0008】
盗難者が商品と筐体との隙間から例えば安全剃刀のごとく非常に薄く、鋭利な長尺の板状体を差し入れて先端操作棒を操作したとき、当該先端操作棒が浮き上ったり、側方から押されて傾くと、盗難検知スイッチが動作し、警報回路が盗難と検知し、警報ブザーを鳴動させて盗難を防止する(特許文献2)。
【0009】
また、従来の盗難防止装置としては、所要形状の板状タグ本体の表面にコイルとコンデンサからなる検出共振回路を設けた盗難防止用タグであって、当該盗難防止用タグは各種商品の保護ケースに収納する。
【0010】
盗難者が商品を収納した保護ケースを持って店舗出口近傍のゲートを通過したとき、当該ゲートに内蔵された送受信アンテナと盗難防止用タグの検出共振回路との共振周波数が一致し、ゲート等に設置される警報装置が鳴動し、店員等に報知し、盗難を防止する構成である(特許文献3)。
【0011】
さらに、盗難防止装置としては、外部から高周波信号を受けて応答エネルギーに変換し出力する磁性体コイルを持った内部アンテナと、数値識別データを記憶する記憶機能と蓄電器とが連動して当該数値識別データを発信する通信機能とを備えたICチップが内蔵されたRFID(Radio Frequency Identification)を利用した電子タグである。
【0012】
そして、この電子タグを商品に付すとともに、店舗内の売場や出口付近等の少なくとも複数箇所に電子タグとの間で送受信する検知アンテナを設置し、盗難者が商品を持って店舗の外に出る際、各検知アンテナが同一の数値識別データを2回受信したとき、盗難と判断し、警報を発することにより、警備員に知らせる盗難防止システムである(特許文献4)。
【0013】
さらに、盗難防止装置用としては、店舗の売場天井に監視カメラを設置し、監視室で顧客の動向を監視し、盗難者による商品の盗難を見つけ出す方法も多く利用されている。
【特許文献1】特開2000−30156号公報
【特許文献2】特開平10−302172号公報
【特許文献3】特開2003−109133号公報
【特許文献4】特開平07−254092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、各種商品の展示場、中古自動車展示場、催し場、ホテルなどでは、不特定多数の者を対象にして展示、見学、手で触れさせたり、利用させることが多く、備品,商品を含む展示品等の盗難は不可避となる。
【0015】
特に、広大な敷地に多数の展示品等が点在している場合、それら展示品等の近辺に販売員や監視員が常駐できない場合が多い。例えば、広大な敷地の建物の複数階にわたって中古自動車を展示する場合、鍵を抜いた状態で自由に自動車内を見せるようにしており、展示場の最上階などには販売員や監視員がいない。その結果、車内に装備される備品(例えばカーナビゲーション等)を切り離して持ち帰ることが可能となる。また、ホテルにおいても同様であり、多くの備品の中から値打ちのある備品を持ち帰ることが可能となる。
【0016】
このような状況下において、展示品等に特許文献1,2等のような盗難防止タグを貼り付けた場合、展示品等と盗難防止タグとを切り離すと、盗難防止タグ自体が鳴動するが、鳴動を無視するとか、盗難防止タグを破壊して鳴動を止めるとか、様々な手法を屈指して容易に盗難を繰り返すことが可能となる。
【0017】
また、展示品等に特許文献3,4等のように電子タグを取付け、店舗内や出入り口付近を通過する際に盗難を検知する技術では、広大な敷地の展示場の出入口が多数存在し、それに伴って多くの検知アンテナを備える必要があり、検知アンテナを含むゲートの設置におのずと限界がある。
【0018】
さらに、展示場内に盗難防止用監視カメラを設置し、顧客の動向を監視する盗難防止技術においては、監視カメラ自体の視野角の制限から死角が生じやすく、監視範囲が限定されてしまう問題がある。
【0019】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成により展示品等から離脱された状態となった場合、確実に異常状態を検知する盗難検知センサ及び盗難防止タグを提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明の目的は、展示品等に付した盗難防止タグの離脱,破壊が行われたとき、周囲に対して威嚇鳴動を行うことによって盗難を抑制し、また展示品等の近くに販売員や監視員がいなくても、盗難場所等を容易に把握可能とする盗難防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明は、両面テープの上下面部に互い違いに織り込んだ薄膜導電シートを電路の一部として電路断によって異常を検知する盗難検知センサである。
【0022】
また、本発明は、1つまたは複数の盗難検知センサを導電性の盗難防止用ワイヤーで直列に接続され、電路断により異常状態を検知する異常検知部及び無線発信部を有するタグ本体とを設け、前記異常検知部は、常時は電池電源から供給される電圧を受けて前記薄膜導電シート及び当該各盗難防止用ワイヤーよりなる通電路が形成され、備品を含む展示品等と前記盗難検知センサ用筐体又は前記タグ本体との間に両面貼り付けされた前記盗難検知センサの薄膜導電シートの破断や各盗難防止用ワイヤーの切断による前記通電路の断によって異常を検知し、前記無線発信部は、前記展示品等の設置場所や展示品等名を認識可能な固有識別データが記憶され、前記異常検知部から異常検知信号を受けると、所定の異常データに当該固有識別データを付して無線送信する盗難防止タグである。
【0023】
さらに、本発明は、広域・大規模な施設に提示される備品を含む展示品等の盗難を抑制する盗難防止システムにおいて、前記各展示品等に取付けられ、少なくとも当該展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び予め所有する個別識別データを無線送信する電池電源を持った盗難防止タグと、前記広域・大規模な施設内の手の届かない場所に所定間隔ごとに設置され、前記盗難防止タグから異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、周囲に対して威嚇鳴動する威嚇通報装置とを備えた盗難防止システムである。
【0024】
さらに、本発明は、広域・大規模な施設に提示される備品を含む展示品等の盗難を抑制する盗難防止システムにおいて、前記各展示品等に取付けられ、少なくとも当該展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び予め所有する個別識別データを無線送信する電池電源を持った盗難防止タグと、前記広域・大規模な施設内の手の届かない場所に所定間隔ごとに設置され、前記盗難防止タグから異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、周囲に対して威嚇鳴動するとともに、前記異常データ及び個別識別データをする威嚇通報装置と、監視員が常駐する建物に設置され、かつ、予め個別識別参照データと展示品等特定情報とが対応付けて記憶され、前記威嚇通報装置から異常データ及び個別識別データを受信したとき、当該個別識別データと前記個別識別参照データとを比較し、一致した個別識別参照データが存在するとき、外部に鳴動するとともに、前記一致した個別識別参照データに対応付けられた展示品等特定情報を表示する無線又は有線にて通報中央監視装置とを備えた盗難防止システムである。
【0025】
さらに、本発明は、広域・大規模な施設に提示される備品を含む展示品等の盗難を抑制する盗難防止システムにおいて、前記各展示品等に取付けられた盗難防止タグから、一定時間間隔で、存在通知データ及び予め所有する個別識別データを無線送信し、前記威嚇通報装置から存在通知データ及び個別識別データを受信したとき、前記威嚇通報装置の個別識別データを付加して前期中央監視装置に無線又は有線にて通報する。
【0026】
中央監視装置では、識別参照データに対応付けられた威嚇通報装置の設置場所情報から 展示品が存在する場所を表示し、場所が移動した場合ならびに一定時間以上存在通知データが通知されない時に異常警報を発する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡易な構成により展示品等から離脱された状態となった場合、確実に異常状態を検知できる盗難防止センサ及び盗難防止タグを提供できる。
【0028】
また、本発明は、展示品等に付した盗難防止タグの離脱,破壊が行われたとき、周囲に対して威嚇鳴動を行うことによって展示品等の盗難を抑制でき、また展示品等の近くに販売員や監視員がいなくても、盗難場所等を把握できる盗難防止システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る盗難防止システムの一実施の形態を示す構成図である。
【0030】
この盗難防止システムは、展示場等に装備される備品,商品,展示品を含む展示品等に貼り付けし、展示品等からの離脱,タグ本体などの破壊を検知する盗難防止タグ1と、この盗難防止タグ1から送信されてくる異常データを受信し、威嚇鳴動するとともに、無線,LAN等の有線伝送ラインを利用して異常状態を通報する威嚇通報装置2と、この威嚇通報装置2から伝送されてくる盗難等の異常状態を表示する中央監視装置3とで構成されている。4は備品,展示品その他販売商品を含む展示品、5は机,陳列棚その他基礎となる固定部を意味する。
【0031】
盗難防止タグ1は、盗難検知センサ11と、タグ本体(筐体)12とからなる。
盗難検知センサ11としては前述した各特許文献を含む従来周知の検知手段が用いられる。すなわち、特許文献1のように、タグ本体内の警報回路に接続されているワイヤー(盗難検知用ケーブル)やタグ本体底部に設けられた突没可能なプッシュ式検知スイッチが用いられる。また、特許文献2によれば、筐体底部から突出される作動棒を含む盗難検知スイッチが用いられる。
【0032】
図2は従来周知の検知手段とは異なる新規な盗難検知センサ11を示す平面図である。
この盗難検知センサ11は、E型形状をなす両面テープ11aが設けられ、この両面テープ11aのE型形状の溝を通して互い違いに上下に織り込むように薄膜導電シート11bが設けられている。薄膜導電シート11bは、例えばE型形状をなす両面テープ11aの図示左側上面から隣接脚部間の溝を通して中央脚部の下側面を経て再び図示右側上面に配置され、両面テープ11aのテープ面に貼り付けられている。両面テープ11aのE型形状の溝を通して互い違いに上下に織り込む場合、逆の形態に織り込んでもよい。
【0033】
薄膜導電シート11bは、外部から所定の引張り力を受けたとき、両面テープ11aの粘力に抗して確実に破断するような材質の材料であればよく、例えば銅箔やアルミ箔等が用いられる。
【0034】
さらに、薄膜導電シート11bの両端部にはそれぞれ導電性の盗難検知用ワイヤー11cが接続されている。このことは、薄膜導電シート11bに代えて、2つの盗難検知用ワイヤー11cの間に特許文献1,2に相当するプッシュ式検知スイッチ等を接続すれば、等価な検知回路を構成することができる。
【0035】
なお、前述した両面テープ11aはE型形状である必要がなく、例えば四角形の両面テープ11aに複数の切り溝を形成し、薄膜導電シート11bが切り溝を介して互い違いに織り込む構成であってもよい。
【0036】
前記各盗難検知用ワイヤー11c先端部はタグ本体12に接続されるが、通常、展示品等4に盗難検知センサ11を取り付ける場合、2つの盗難検知センサ11を使用し、展示品等4とタグ本体12との間に一方の盗難検知センサ11を両面貼り付けとし、机,陳列棚その他基礎となる固定部5とセンサ固定用のブロックを含むセンサ筐体11dとの間に他方の盗難検知センサ11を両面貼り付けとする。よって、2つの盗難検知センサ11の薄膜導電シート11bの相隣接する端部どうしを盗難検知用ワイヤー11cで接続し、各盗難検知センサ11を構成する薄膜導電シート11bの他端部側から導出される盗難検知用ワイヤー11c先端部がタグ本体12が接続される。よって、タグ本体12に対し、盗難検知用ワイヤー11cと薄膜導電シート11bとで構成される通電路が形成され、常時は閉路状態に設定された盗難検知用スイッチの役割を持っている。
【0037】
タグ本体12は、盗難検知センサ11,11側から状態変化信号を受けたとき、異常検知信号を出力する異常検知部13及び異常検知信号を受けたとき、固有識別データを含む異常データを無線送信する無線発信部14が設けられている。
【0038】
異常検知部13としては、正常時と異なる状態変化が生じたときに異常と検知するものであって、例えば正常時通電オンから通電オフとなったとき、又は正常時通電オフから通電オンとなったとき、異常と検知して異常検知信号を出力する機能を有する。正常時通電オンか正常時通電オフとするかは盗難検知センサ11及び異常検知部13の構成により定まるものである。
【0039】
因みに、図2に示す異常検知部13においては、所定の直流電圧を出力する電池電源13aが設けられ、当該電池電源13aの負極ラインに一方の盗難検知用ワイヤー11cの先端部が接続され、当該電池電源13aの正極ラインには抵抗素子13bを介して他方の盗難検知用ワイヤー11cの先端部が接続されている。抵抗素子13bと他方の盗難検知用ワイヤー11cとの接続ラインには半導体素子13cのゲート端子が接続されている。半導体素子13cのゲート端子には、正常時、薄膜導電シート11bを経て零電位が設定され、薄膜導電シート11bが破断されたときに抵抗素子13bを通して所定の電流が流れることによって所定の電位が設定される。ゲート端子が所定の電位に設定されたとき、半導体素子13cがオンとなり、コレクタ端子から抵抗素子13dの抵抗値で定まる所定の電圧信号,すなわち異常検知信号を出力する。
【0040】
前記無線発信部14は、異常検知部13の出力側に接続され、内部的には、異常検知部13から異常検知信号を受けたときに設定される異常データ及び予め設定される固有識別データを記憶するデータ記憶部と、変調機能を備えた無線送信部とが設けられている。すなわち、無線送信部は、異常データ及び固有識別データを用いて、所定の搬送周波数を変調して威嚇通報装置2に無線送信する機能を有する。
【0041】
この威嚇通報装置2は、展示品等の近傍であって盗難者から容易に手の届かない個所、例えば展示場等の天井やフェンス内に例えば10m間隔ごとに設置されるものである。
【0042】
威嚇通報装置2は、復調機能を有し、盗難防止タグ1から無線送信されてくるデータを受信し、復調機能によって異常データ及び固有識別データを抽出する無線受信部21と、この無線受信部21で復調処理して得られる異常データ及び固有識別データに基づいて所定の処理を実行するCPUなどで構成される警報保持処理部22と、現場鳴動部23と、通報部24とで構成されている。
【0043】
警報保持処理部22は、データ保持記憶部が設けられ、無線受信部21で復調された異常データ及び固有識別データを記憶保持するとともに、鳴動動作指令を出力して現場鳴動部23を鳴動し、盗難者を含む周囲に威嚇通報を行う。
【0044】
通報部24は、警報保持処理部22から通報指示を受けたことを条件とし、警報保持処理部22のデータ保持記憶部から異常データ及び固有識別データを読み出して中央監視装置3に送信する。なお、警報保持処理部22は、外部から警報リセット信号が入力されたとき、データ保持記憶部の異常データ及び固有識別データをクリアするとともに、現場鳴動部23の鳴動を停止させる。
【0045】
前記中央監視装置3は、常時、監視員が常駐する監視室などに設置され、威嚇通報装置2とは無線又はLANなどによる有線にて接続され、双方向通信を行う機能を持っている。
【0046】
中央監視装置3は、内部的には、通報送受信部31と、固有識別参照データ及び異常有無データ、展示品等特定情報(例えば備品・展示品名及び設置個所データその他必要なデータ)を記憶する展示品等特定情報記憶部32と、CPUで構成された異常警報処理部33と、中央鳴動部34と、警報表示部35とで構成される。
【0047】
通報送受信部31は、威嚇通報装置2から送信されてくる異常データ及び固有識別データを受信し、異常警報処理部33に送出する。
【0048】
異常警報処理部33は、固有識別データを伴った異常データを受け取ると、異常データから異常警報と判断するとともに、固有識別データに基づいて盗難特定情報記憶部32に格納される固有識別参照データを参照し、一致する固有識別参照データが存在するとき、固有識別参照データに対応する展示品等特定情報記憶部32の所定エリアに異常有りデータを設定し、鳴動動作指令を出力して中央鳴動部34を鳴動させるとともに、固有識別参照データと対応付けされた展示品等特定情報を読み出し、警報表示部35に表示する。
【0049】
よって、監視員は、中央鳴動部34から発する鳴動から異常警報状態を知ることができ、また固有識別参照データと対応付けされた展示品等特定情報から異常場所又は異常場所を含む盗難の恐れがある展示品等を容易に把握することができる。
【0050】
そして、異常警報処理部33は、外部から警報リセット信号が入力されたときとき、自身の中央鳴動部34の鳴動動作を停止するとともに、通報送受信部31を介して威嚇通報装置2に鳴動停止信号を送信する。
【0051】
威嚇通報装置2における警報保持処理部22は、現場から入力される警報リセット信号又は中央監視装置3から送られてくる鳴動停止信号を受け取ったとき、現場鳴動部23の鳴動を停止させる機能を持っている。
【0052】
次に、以上のように構成された盗難防止システムの動作について図2ないし図4を参照して説明する。なお、盗難検知センサ1としては、従来周知とされる種々の検知手段が用いられるが、ここでは、図2(a)に示す盗難検知センサを用いた例について説明する。
【0053】
先ず、図2(b)に示すように展示場等に展示される展示品等4面部と例えば筐体化されたタグ本体12のコンタクタとの間、及び机等の固定部5とセンサ筐体11dのコンタクタとの間にそれぞれ図2に示す盗難検知センサ11を介在し、当該盗難検知センサ11の構成材である両面テープ11aにて展示品等4とタグ本体12、また固定部5とセンサ筐体11dとをそれぞれ両面貼り付けによって一体化する。
【0054】
このとき、タグ本体12内部の異常検知部13から導出される盗難検知用ワイヤー11cには薄膜導電シート11bの両端に接続されているので、異常検知部13との間で通電路が形成されている。その結果、異常検知部13を構成する半導体素子13cのゲート端子は零電位に設定され、当該半導体素子13cから例えば零電位に相当する所定レベル信号が出力されている。その結果、異常検知部13は、所定レベル信号に基づいて展示品等4が正常な状態で展示されていると認識することができる。
【0055】
このような状態において、不特定多数の見学者が例えば自動車内に装備されている展示品等4であるカーナビゲーションからタグ本体12を切り離そうとしたり、タグ本体12を破壊し、もしくはワイヤー11cを切断してとき、薄膜導電テープ11bが破断し、もしくはワイヤー11cが切断され、薄膜導電シート11bと盗難検知用ワイヤー11cとで形成されていた通電路が開放状態となる。
【0056】
その結果、異常検知部13を構成する半導体素子13cのゲート端子に所定の電圧が印加され、当該半導体素子13cから2値化信号の「1」に相当する所定レベル信号が出力される。つまり、異常検知部13は、正常時と異なるレベル信号を受け取ったとき、異常状態と検知し、異常検知信号を無線発信部14に送出する。
【0057】
無線発信部14は、異常検知部13から異常検知信号を受けると、変調機能を有する無線送信部がデータ記憶部の所定エリアに異常状態を示すフラグ(異常データ)を設定した後、当該異常データと既に設定されている固有識別データを読み出し、所定周波数の搬送波を変調し、微弱な電波によって威嚇通報装置2に無線送信する。
【0058】
このとき、展示場の天井等に所定の間隔で複数の威嚇通報装置2が設置されている場合、当該盗難防止タグ1に最も近い威嚇通報装置2の無線受信部21が盗難防止タグ1で変調された信号を受信し、復調機能によって異常データ及び固有識別データを抽出し、警報保持処理部22に送出する。
【0059】
この警報保持処理部22は図3に示すような一連の処理を実行する。警報保持処理部22は、常時は異常データを受信したか否かを判断し(S1)、受信したと判断したとき、データ保持記憶部に異常データ及び固有識別データを記憶保持する(S2)。そして、警報保持処理部22は、鳴動動作指令を出力して現場鳴動部23から鳴動を出力することによって威嚇を行う(S3)。これにより、展示品等を盗難しようとする見学者は、近くの天井から威嚇鳴動される結果、近くに販売員や監視員が居なくても、監視されていることを察知し、展示品等の盗難を止めることにより、盗難を未然に防止できる。
【0060】
また、警報保持処理部22は、鳴動処理後、通報するか否かを判断し(S4)、通報フラグが設定されていれば、データ保持記憶部から異常データ及び固有識別データを読み出し、通報部24を介して中央監視装置3に送信する(S5)。
【0061】
また、警報保持処理部22は、異常データ及び固有識別データの送信処理を行った後、展示場の現場又は中央監視装置3側から鳴動停止信号等の警報リセットを受けたか否かを判断し(S6)、警報リセットを受けたときデータ保持記憶部の異常データ及び固有識別データをクリアするとともに、現場鳴動部23の鳴動を停止する(S7,S8)。
【0062】
さらに、処理継続か否かを判断し(S9)、処理継続と判断された場合にはステップS1に移行し、次の異常データ等の受信準備体制に入る。
【0063】
一方、中央監視装置3では、通報送受信部31が通報部24からの異常データ及び固有識別デーを受信し、異常警報処理部33に送出する。
【0064】
ここで、異常警報処理部33は、図4に示すように異常データを受信したか否かを判断し(S11)、異常データが受信されたと判断されたとき、固有識別データと展示品等特定情報記憶部32に格納される固有識別参照データとを比較し、一致する固有識別参照データが存在するか否かを判断する(S12)。固有識別参照データが存在する場合、盗難特定情報記憶部32の固有識別参照データと対応付けされた所定エリアに異常有りフラグを設定するとともに、鳴動動作指令を出力して中央鳴動部34から鳴動を出力する(S13,S14)。
【0065】
さらに、異常警報処理部33は、中央鳴動部34から鳴動を出力させた後、展示品等特定情報記憶部32の該当固有識別参照データに対応付けられる展示品等特定情報を読み出し、警報表示部35に表示する(S15)。これにより、警報表示部35には固有識別データ又は固有識別参照データとともに、少なくとも展示場所,展示品等4、又は備品の場合には展示場所,展示品(例えば自動者)及び展示品内の備品(例えばカーナビゲーション)が表示されるので、監視員は何れの展示場所(エリア)にてどんな展示品又は備品が盗難されようとしているかを即座に認識でき、かつ該当場所に急行することが可能となる。
【0066】
異常警報処理部33は、展示品等特定情報を表示した後、外部から警報リセット信号が入力されたか判断し(S16)、入力されていない場合にはステップS14に戻って中央鳴動部34からの鳴動を続ける。警報リセット信号が入力されたとき、中央鳴動部34による鳴動停止処理を行うとともに、鳴動停止信号を通報送受信部31を経由して威嚇/通報装置2に送信する(S17,S18)。しかる後、処理を継続する場合には(S19)、ステップS11に戻り、次の異常データ受信の準備に入る。
【0067】
従って、以上のような実施の形態によれば、展示品等4とタグ本体12又はセンタ用筐体との間に、例えばE型形状の両面テープ11aの溝を利用して薄膜導電シート11bを挟み込んだ盗難検知センサ11を介在し、展示品等4とタグ本体12又はセンタ用筐体とを接合する。よって、この状態において、展示品等4からタグ本体12又はセンサ用筐体を切り離そうとしたり、タグ本体12やセンサ用筐体を破壊し、もしくはワイヤー11cを切断したとき、異常検知部13で異常と検知し、異常データを含む固有識別データを無線送信するので、非常に簡素な盗難検知センサ11を用いて、確実に異常状態を発信することができる。
【0068】
また、威嚇通報装置2は、手の届かない場所に設置され、盗難防止タグ1から異常データを含む固有識別データを受信したとき、現場鳴動部23から鳴動を出力して周囲に知らせるようにしたので、現場に販売員や監視員が居なくても、監視中であることを警告でき、盗難現場に対する威嚇効果を高めることができる。
【0069】
さらに、外部から警告リセット信号を受けない限り、異常状態を保持するので、展示品等4を不正に持ち出そうとして盗難防止タグ1の動作停止又は破壊が行われている間、威嚇鳴動を続けることができ、しかも常時監視員の居る場所の中央監視装置3に即座に異常データを含む固有識別データを通報できる。
【0070】
中央監視装置3は、異常データを含む固有識別データを受信すると、中央鳴動部34から鳴動を発生することにより、展示場等の異常警報状態を認識するとともに、固有識別データに基づいて展示品等特定情報を表示するので、何れの場所,何れの展示品等4で異常が発生しているかを即座に認識できる。よって、監視員は、必要に応じて迅速に異常現場に駆けつけることができる。
【0071】
さらに、盗難しようとする現場近くに販売員,監視員が居ない場合、威嚇通報装置2には警告リセット信号が入力されないが、中央監視装置3側から鳴動停止信号を送出し、現場鳴動部23の鳴動を停止するので、確実に異常状態を確認した後に鳴動を停止させることができる。
【0072】
(その他の実施の形態)
(1) 上記実施の形態では、盗難防止タグ1に電池電源13aが用いられているので、電池電源13aが所定電圧以下になると、盗難防止タグ1の本来の機能が損なわれる可能性がある。
【0073】
そこで、タグ本体12を構成する異常検知部13に電池電源13の電圧又は電流を検出する検出器を設けるとともに、無線発信部14を構成するデータ記憶部などに電圧又は電流低下を判断するしきい値データを設定する。そして、無線発信部14は、所定の周期ごとに前述した検出器の検出レベルとしきい値データとを比較し、検出レベルがしきい値以下となったとき、前述した異常データと異なる電池異常データと固有識別データとを用いて、搬送周波数信号を変調し、威嚇通報装置2に無線送信する。
【0074】
威嚇通報装置2の警報保持処理部22は、盗難に係る異常データと異なる電池異常データであると判断したとき、現場鳴動部23への鳴動動作処理を行うことなく、通報部24を介して電池異常データ及び固有識別データを中央監視装置3に送信する。中央監視装置3は威嚇通報装置2から電池異常データ及び固有識別データを受信すると、異常警報処理部33に送出する。
【0075】
異常警報処理部33は、固有識別データに基づいて展示品等特定情報記憶部32の固有識別参照データを参照し、一致する固有識別参照データが存在する場合には、固有識別参照データに対応付けられた予め定めるエリアに電池異常フラグを設定するとともに、鳴動動作処理指令を出力し、中央鳴動部34から鳴動を出力させ、かつ、固有識別データ又は固有識別参照データ,展示品等特定情報及び電池異常を表示する。
【0076】
この実施の形態によれば、何れの場所及び何れの展示品等4に設置される盗難防止タグ1の電他電源13aの電圧低下を容易に検出でき、盗難防止タグ1の本来の機能を損なう前に確実に電池交換を行うことができる。よって、長期間にわたって盗難防止タグ1を安定的に使用でき、盗難者による威嚇効果を継続発揮することができる。
【0077】
(2) 威嚇報知装置2では、展示品等4の盗難時、盗難防止タグ1側から異常データ及び個別識別データを受け取るので警報保持処理部22のデータ保持記憶部に威嚇メッセージデータを記憶しておけば、盗難現場近くの威嚇報知装置2の現場鳴動部23又は音声発生器から威嚇メッセージデータを送出でき、より威嚇効果を上げることができる。
【0078】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0079】
(3) 前記各展示品等に取付けられた盗難防止タグから、一定時間間隔で、存在通知データ及び予め所有する個別識別データを無線送信し、前記威嚇通報装置から存在通知データ及び個別識別データを受信したとき、前記威嚇通報装置の個別識別データを付加して前期中央監視装置に無線又は有線にて通報する。
【0080】
中央監視装置では、識別参照データに対応付けられた威嚇通報装置の設置場所情報から 展示品が存在する場所を表示し、場所が移動した場合ならびに一定時間以上存在通知データが通知されない時に異常警報を発する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係る盗難防止システムの一実施の形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る盗難防止タグの一実施の形態として、展示品等や机などの固定部に対する盗難検知センサの設置例を示す図であって、同図(a)は盗難検知センサの平面図、同図(b)は盗難検知センサの一部切り欠いて設置した正面図。
【図3】図1に示す威嚇通報装置の動作を説明するフロー図。
【図4】図1に示す中央監視装置の動作を説明するフロー図。
【符号の説明】
【0082】
1…盗難防止タグ、2…威嚇報知装置、3…中央監視装置、11…盗難検知センサ、11a…両面テープ、11b…薄膜導電シート、11c…盗難検知用ワイヤー、11d…センサ筐体、12…タグ本体(筐体)、13…異常検知部、14…無線発信部、21…無線受信部、22…警報保持処理部、23…現場鳴動部、24…通報部、31…通報送受信部、32…展示品等特定情報記憶部、33…異常警報処理部、34…中央鳴動部、35…警報表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面テープの上下面部に互い違いに織り込んだ薄膜導電シートを電路の一部として電路断によって異常を検知する盗難検知センサ。
【請求項2】
1つまたは複数の盗難検知センサを導電性の盗難防止用ワイヤーで直列に接続され、電路断により異常状態を検知する異常検知部及び無線発信部を有するタグ本体とを設け、
前記異常検知部は、常時は電池電源から供給される電圧を受けて前記薄膜導電シート及び当該各盗難防止用ワイヤーよりなる通電路が形成され、備品を含む展示品等と前記盗難検知センサ用筐体又は前記タグ本体との間に両面貼り付けされた前記盗難検知センサの薄膜導電シートの破断や各盗難防止用ワイヤーの切断による前記通電路の断によって異常を検知し、
前記無線発信部は、前記展示品等の設置場所や展示品等名を認識可能な固有識別データが記憶され、前記異常検知部から異常検知信号を受けると、所定の異常データに当該固有識別データを付して無線送信することを特徴とする盗難防止タグ。
【請求項3】
広域・大規模な施設に提示される備品を含む展示品等の盗難を抑制する盗難防止システムにおいて、
前記各展示品等に取付けられ、少なくとも当該展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び予め所有する個別識別データを無線送信する電池電源を持った盗難防止タグと、
前記広域・大規模な施設内の手の届かない場所に所定間隔ごとに設置され、前記盗難防止タグから異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、周囲に対して威嚇鳴動する威嚇通報装置とを備えたことを特徴とする盗難防止システム。
【請求項4】
広域・大規模な施設に提示される備品を含む展示品等の盗難を抑制する盗難防止システムにおいて、
前記各展示品等に取付けられ、少なくとも当該展示品等から離脱された状態が生じたとき、異常データ及び予め所有する個別識別データを無線送信する電池電源を持った盗難防止タグと、
前記広域・大規模な施設内の手の届かない場所に所定間隔ごとに設置され、前記盗難防止タグから異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、周囲に対して威嚇鳴動するとともに、前記異常データ及び個別識別データを無線又は有線にて通報する威嚇通報装置と、
監視員が常駐する建物に設置され、かつ、予め個別識別参照データと展示品等特定情報とが対応付けて記憶され、前記威嚇通報装置から異常データ及び個別識別データを受信したとき、当該個別識別データと前記個別識別参照データとを比較し、一致した個別識別参照データが存在するとき、外部に鳴動するとともに、前記一致した個別識別参照データに対応付けられた展示品等特定情報を表示する中央監視装置とを備えたことを特徴とする盗難防止システム。
【請求項5】
請求項4に記載の盗難防止システムにおいて、
前記盗難防止タグは、所定のしきい値が設定され、前記電池電源の電圧又は電流が前記しきい値以下となったとき、電源異常データ及び個別識別データを無線送信し、
前記威嚇通報装置は、電源異常データ及び個別識別データを受信し、無線又は有線にて通報し、
前記中央監視装置は、前記威嚇通報装置から電源異常データ及び個別識別データを受信したとき、当該個別識別データと一致する個別識別参照データに対応する展示品等特定情報を読み出し、電源異常データとともに表示することを特徴とする盗難防止システム。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の盗難防止システムにおいて、
前記威嚇通報装置は、異常データに対応するメッセージデータが記憶され、前記盗難防止タグから異常データ及び個別識別データを受信したとき、外部から警報リセットが入力されるまで異常状態を保持し、鳴動に代えて周囲に対して前記メッセージデータを出力することを特徴とする盗難防止システム。
【請求項7】
請求項4に記載の盗難防止システムにおいて、
前記盗難防止タグは、一定周期毎に、存在通知データ及び個別識別データを無線送信し、
前記威嚇通報装置は、存在通知データ及び個別識別データを受信し、威嚇通報装置の個別識別データを付加して、無線又は有線にて通報し、
前記中央監視装置は、前記威嚇通報装置から存在通知データ及び個別識別データ及び威嚇通報装置の個別識別データを受信したとき、当該個別識別データと一致する個別識別参照データに対応する展示品等特定情報を読み出し、威嚇通報装置の個別識別データに対応する威嚇通報装置の設置場所とともに表示し、前回受信した存在通知データ及び個別識別データが一定時間以上受信できない場合に、異常を通知することを特徴とする盗難防止システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−206838(P2007−206838A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22925(P2006−22925)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】