説明

監視カメラ、監視システムおよび監視方法

【課題】コストダウンを図るとともに、画像処理を用いることなく、監視カメラの不正移動の検出精度を向上させる技術を提供する。
【解決手段】異常の有無を監視する監視カメラ2に、撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する撮像部26と、基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度センサ27と、撮像部26の基準姿勢における基準軸に沿った方向の加速度を基準情報210として記憶するRAM21と、加速度センサ27により測定された測定情報270と基準情報210との差分を求めることにより、基準軸に沿った方向の加速度の変化量情報214を求める変化量演算部200と、変化量演算部200により求められた変化量情報214に応じて、撮像部26に対する異常の有無を判定する衝撃判定部201および姿勢判定部202とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象が不正に動かされたことを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションや店舗の入り口、ATM等における防犯を意図しつつ、現場に監視員を直接派遣することなく、監視カメラにより現場を監視する技術が知られている。そして、このような監視カメラにおいては、適切な撮像範囲を撮像する必要があるため、当該監視カメラの撮像方向が適切に設定されている必要がある。しかし、現場に監視員がいないため、犯罪等を企図する者(以下、「悪意者」と称する)により、監視カメラの撮像方向が犯行前に変更されてしまう危険性がある。
【0003】
従来より、監視カメラの撮像方向が変更されたことを検出し、警報を発する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、角速度センサーによって、監視カメラの予期せぬ動きを検出する技術が記載されている。特に、特許文献1では、監視カメラの動きが小さい場合は、監視カメラによって撮像されている画像の輝度変化を検出することにより、検出精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−239569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載されている角速度センサーとしては、例えば、ジャイロセンサが想定されるが、ジャイロセンサは比較的高価であり、コストアップを招来するという問題があった。
【0006】
また、画像の輝度変化を検出するためには、撮像画像に対する画像処理が必要であるため情報処理における負荷が大きいという問題がある。さらに、撮像画像において輝度変化がない場合は検出できないという問題もある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストダウンを図るとともに、画像処理を用いることなく、監視カメラの不正移動の検出精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、異常の有無を監視する監視カメラであって、撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する撮像手段と、基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度測定手段と、前記撮像手段の基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する記憶手段と、前記加速度測定手段により測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める変化量演算手段と、前記変化量演算手段により求められた変化量に応じて、前記撮像手段に対する異常の有無を判定する異常判定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る監視カメラであって、前記異常判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量と第1閾値とに応じて前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第1判定手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る監視カメラであって、前記第1判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量の絶対値を前記基準軸ごとに求めて加算し前記第1閾値と比較することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2の発明に係る監視カメラであって、前記第1判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量に基づいて合成加速度の変化量を求めて前記第1閾値と比較することを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る監視カメラであって、前記異常判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量を判定期間中において積分することにより積分値を求め、前記積分値の絶対値と第2閾値とを比較することにより前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第2判定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明に係る監視カメラであって、前記異常判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量を判定期間中において第1のサンプリング周期で取得しつつ、取得した前記変化量について、前記判定期間中における平均値の絶対値を前記基準軸ごとに求めるとともに、求めた前記基準軸ごとの前記平均値の絶対値を加算して判定値を求める平均値演算手段と、前記平均値演算手段により求められた判定値と第2閾値とに応じて前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第3判定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る監視カメラであって、前記平均値演算手段は、前記判定期間中において前記第1のサンプリング周期で取得した複数の変化量に含まれる正の変化量と負の変化量との比に応じて、前記第1のサンプリング周期を第2のサンプリング周期に変更することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの発明に係る監視カメラであって、前記基準軸は、第1基準軸と前記第1基準軸に直交する第2基準軸とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る監視カメラであって、前記基準軸は、前記第1基準軸および第2基準軸のいずれにも直交する第3基準軸をさらに含むことを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項1ないし9のいずれかの発明に係る監視カメラであって、前記基準軸は、前記撮像手段の撮像方向に沿った方向と異なる方向に沿うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの発明に係る監視カメラであって、前記基準軸は、前記撮像手段の撮像方向に直交する方向と異なる方向に沿うことを特徴とする。
【0019】
また、請求項12の発明は、異常の有無を監視する少なくとも1つの監視カメラと、前記監視カメラからの撮像情報を再生する映像再生装置とを備え、前記監視カメラは、撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する撮像手段と、基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度測定手段とを備え、前記撮像手段の基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する記憶手段と、前記加速度測定手段により測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める変化量演算手段と、前記変化量演算手段により求められた変化量に応じて、前記撮像手段に対する異常の有無を判定する異常判定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項13の発明は、請求項12の発明に係る監視システムであって、前記映像再生装置は、前記異常判定手段が前記撮像手段に対する異常があったと判定した場合に、警報を出力するとともに、前記撮像手段により取得された撮像情報を再生する警報出力手段をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項14の発明は、監視カメラによって異常の有無を監視する監視方法であって、前記監視カメラの撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する工程と、加速度センサによって基準軸に沿った方向の加速度を測定する工程と、前記監視カメラの基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する工程と、前記加速度センサにより測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める工程と、求められた変化量に応じて、前記監視カメラに対する異常の有無を判定する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1ないし14に記載の発明は、基準軸に沿った方向の加速度を測定し、基準姿勢における基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶し、測定された基準軸に沿った方向の加速度と基準値との差分を求めることにより、基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求め、当該変化量に応じて、異常の有無を判定することにより、角速度センサを採用する場合に比べてコストを抑制できるとともに、画像処理を用いないので処理負荷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1の実施の形態における監視システムの構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態における監視カメラの構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態における監視カメラの基準軸を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における監視カメラの機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図5】映像再生装置の構成を示す図である。
【図6】第1の実施の形態における監視方法を示す流れ図である。
【図7】第1の実施の形態における監視カメラの監視処理を示す流れ図である。
【図8】監視処理が開始されてから充分に時間が経過した後の変化量情報を例示する図である。
【図9】判定期間中において、監視カメラが第1基準軸に沿った方向に振動している状態における変化量Δα1の変化を示す図である。
【図10】第2の実施の形態における監視カメラの機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図11】第2の実施の形態における変化量Δαを示す図である。
【図12】第3の実施の形態における監視カメラの機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
【図13】外乱ノイズによる振動中に適切な第1サンプリング周期ごとに加速度の変化量が取得される様子を示す図である。
【図14】外乱ノイズによる振動中に不適切な第1サンプリング周期ごとに加速度の変化量が取得される様子を示す図である。
【図15】第3の実施の形態における監視処理の姿勢変化監視タスクを示す流れ図である。
【図16】第4の実施の形態における監視カメラを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における監視システム1の構成を示す図である。監視システム1は、監視すべき現場に設置される監視カメラ2と、現場から離れた監視センターに設置される映像再生装置3とから構成されている。なお、監視システム1は、複数の監視カメラ2および複数の映像再生装置3から構成されていてもよい。あるいは、映像再生装置3が複数の監視カメラ2からの映像を同時にあるいは切り替えて再生できるように構成されていてもよい。
【0026】
監視システム1において、監視カメラ2と映像再生装置3とは、データの送受信が可能な状態で接続されている。監視カメラ2と映像再生装置3との間の接続形態は、図1に示すような専用ケーブル10を用いるものであってもよいし、公衆網(例えばインターネット等)を介する形態であってもよい。また、一部、または、全部に無線通信が用いられてもよい。
【0027】
図2は、第1の実施の形態における監視カメラ2の構成を示す図である。監視カメラ2は、データの演算や監視カメラ2の備える各構成を制御するCPU20、CPU20の一時的なワーキングエリアとして使用されるとともに基準情報210を記憶するRAM21、および、CPU20によって実行されるプログラム220を格納する読み取り専用のROM22を備えている。また、監視カメラ2は、監視カメラ2に対して情報や指示を入力するために操作される操作部23、情報をランプやLEDにより表示する表示部24、および、警告音を出力するブザー25を備えている。さらに、監視カメラ2は、撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報9を取得する撮像部26、3つの基準軸(後述)に沿った方向の加速度をそれぞれ測定する加速度センサ27、および、映像再生装置3との間のデータ通信を行う通信部28を備える。
【0028】
いわゆる3軸(3つの基準軸)の加速度センサ27は、各基準軸に沿った方向の加速度を測定する機能を有している。
【0029】
図3は、第1の実施の形態における監視カメラ2の基準軸を示す図である。第1の実施の形態における監視カメラ2では、基準軸となる第1基準軸81、第2基準軸82および第3基準軸83を、図3に示す相対関係を満たすように加速度センサ27を監視カメラ2内に内蔵する。
【0030】
簡単に説明すると、監視カメラ2では、第1基準軸81を撮像部26の撮像方向に沿った方向の軸とする。このとき、監視カメラ2から被写体を望む向きを第1基準軸81の正方向とし、逆方向を負方向とする。また、第1基準軸81を水平面と平行に配置したときに当該第1基準軸81と直交し、かつ、水平面に平行となる軸を第2基準軸82とする。さらに、第1基準軸81と第2基準軸82との交点を通り、かつ、第1基準軸81および第2基準軸82のいずれとも直交する軸を第3基準軸83とする。なお、図3に示す各基準軸の矢印の方向を「正」とし、矢印の逆方向を「負」とする。
【0031】
加速度センサ27は、測定した加速度に応じて、測定情報270を作成し、RAM21に伝達する。図2に示すように、測定情報270には、測定値271,272,273が含まれている。本実施の形態では、第1基準軸81に沿った方向の加速度の測定値を測定値271、第2基準軸82に沿った方向の加速度の測定値を測定値272、第3基準軸83に沿った方向の加速度の測定値を測定値273とする。
【0032】
また、加速度センサ27は、監視カメラ2(撮像部26)が基準姿勢となっているときに測定を行い、撮像部26の基準姿勢における基準軸に沿った方向の加速度を基準情報210(基準値211,212,213)として作成しRAM21に記憶させる。
【0033】
監視カメラ2の基準姿勢とは、監視カメラ2の運用が開始されたときの姿勢(初期姿勢)であり、本実施の形態では、監視カメラ2と映像再生装置3とがデータ通信を開始したときの姿勢とする。すなわち、通信部28において通信が開始されたことを示す信号が伝達されると、加速度センサ27は当該タイミングで測定を行い、基準情報210を作成する。
【0034】
ただし、加速度センサ27が基準情報210を作成するタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、監視カメラ2を設置した作業員が、監視カメラ2の操作部23を操作して、基準情報210を取得するよう指示を入力してもよい。あるいは、監視員が映像再生装置3において映像を視認することにより、監視カメラ2によって所望の撮像範囲が撮影されている状態を確認し、映像再生装置3から監視カメラ2(加速度センサ27)に対して、その姿勢において基準情報210を作成するよう指示を与えてもよい。
【0035】
図4は、第1の実施の形態における監視カメラ2の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。図4に示す変化量演算部200、衝撃判定部201および姿勢判定部202は、CPU20がプログラム220を実行することにより実現される機能ブロックである。
【0036】
変化量演算部200は、加速度センサ27による測定が行われるたびに、測定された基準軸に沿った方向の加速度(測定情報270:測定値271,272,273)と、RAM21に記憶されている基準情報210(基準値211,212,213)との差分を求めることにより、基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める。
【0037】
より詳しくは、第1基準軸81に沿った方向の加速度の変化量(以下、「Δα1」と称する。)を、測定値271から基準値211を減算することにより求める。同様に、第2基準軸82に沿った方向の加速度の変化量(以下、「Δα2」と称する。)を、測定値272から基準値212を減算することにより求める。さらに、第3基準軸83に沿った方向の加速度の変化量(以下、「Δα3」と称する。)を、測定値273から基準値213を減算することにより求める。
【0038】
変化量演算部200により求められたΔα1、Δα2、および、Δα3の値は、変化量情報214としてRAM21に記憶される。なお、Δα1、Δα2、および、Δα3の値は、「0」および「正の値」のみならず「負の値」となることもある。また、変化量情報214には少なくとも判定期間T(例えば10秒)の間に得られたΔα1、Δα2、および、Δα3の値が保存されており、変化量情報214を参照することにより少なくとも判定期間T中の変化量(過去および最新の変化量)を参照することが可能とされている。
【0039】
衝撃判定部201は、変化量情報214を参照し、Δα1、Δα2、および、Δα3の値に基づいて、式1を実行して判定値Q(第1判定値)を求める。
【0040】
【数1】

【0041】
さらに、衝撃判定部201は、求めた判定値Qが第1閾値W1より大きいか否かを判定する。ただし、|Δα1|、|Δα2|、および|Δα3|は、それぞれΔα1、Δα2、および、Δα3の絶対値とする。
【0042】
すなわち、衝撃判定部201は、変化量演算部200により求められた変化量(変化量情報214)と第1閾値W1とに応じて、撮像部26に対する異常の有無を判定する機能を有している。
【0043】
より詳細には、衝撃判定部201は、変化量演算部200により求められた変化量から、当該変化量の絶対値を基準軸ごとに求め、基準軸ごとに求めた変化量の絶対値を加算する(式1)ことにより判定値Qを求め、判定値Qと第1閾値W1とを比較して、判定値Qが第1閾値W1より大きい場合に、撮像部26に対する異常があったと判定する。
【0044】
衝撃判定部201による判定は、最新のΔα1、Δα2、およびΔα3の値が測定されるだけで実行可能であり、比較的短時間で撮像部26に対する異常を検出できる。
【0045】
衝撃判定部201は、撮像部26に対する異常があったと判定した場合、その旨を表示部24、ブザー25および通信部28(映像再生装置3)に伝達する。
【0046】
姿勢判定部202は、変化量情報214を参照し、判定期間T中のΔα1、Δα2、および、Δα3の値に基づいて、式2を実行して判定値R(第2判定値)を求める。
【0047】
【数2】

【0048】
さらに、姿勢判定部202は、求めた判定値Rが第2閾値W2より大きいか否かを判定する。
【0049】
すなわち、姿勢判定部202は、変化量演算部200により求められた変化量を判定期間T中において積分することにより積分値を求め、当該積分値の絶対値を判定値R(第2判定値)とし、判定値Rと第2閾値W2とを比較して、撮像部26に対する異常の有無を判定する機能を有する。
【0050】
姿勢判定部202は、撮像部26に対する異常があったと判定した場合、その旨を表示部24、ブザー25および通信部28(映像再生装置3)に伝達する。
【0051】
図5は、映像再生装置3の構成を示す図である。映像再生装置3は、データの演算や映像再生装置3の備える各構成を制御するCPU30、CPU30の一時的なワーキングエリアとして使用されるとともに監視カメラ2から送信された警報情報310を記憶するRAM31、CPU30によって実行されるプログラム320を格納する読み取り専用のROM32、および、撮像情報9を記憶し保存しておくハードディスク33を備えている。これにより、映像再生装置3は、監視センターにおいて監視員により操作される、一般的なコンピュータとしての構成および機能を備えている。
【0052】
また、映像再生装置3は、映像再生装置3(監視システム1)に対する情報や指示を入力するために操作される操作部34、撮像情報9を再生して画面に表示する表示部35、警告音を出力するブザー36、監視カメラ2との間のデータ通信を行う通信部37を備えている。
【0053】
以上が、第1の実施の形態における監視システム1の構成および機能の説明である。次に、監視システム1による監視方法について説明する。
【0054】
図6は、第1の実施の形態における監視方法を示す流れ図である。図6は、主に、監視カメラ2の動作に係る処理を示している。
【0055】
監視カメラ2は、起動すると所定の初期設定(ステップS1)を実行した後、映像再生装置3との間の通信を開始するために、通信部28により映像再生装置3に対して応答要求を行う。このとき、監視カメラ2は、撮像部26の撮像領域が適切な範囲となるように、その姿勢が決定され、基準姿勢となっているものとする。
【0056】
監視カメラ2からの応答要求に対して映像再生装置3から応答が返信され、監視カメラ2と映像再生装置3との間の通信が開始されると(ステップS2においてYes)、通信部28から加速度センサ27に対して基準情報210を取得するよう指示が伝達される。これにより、加速度センサ27が測定(基準姿勢における測定)を行い、取得された測定値に基づいて基準情報210が作成される(ステップS3)。
【0057】
基準情報210がRAM21に記憶されると、監視カメラ2は監視処理(ステップS4)を開始する。
【0058】
図7は、第1の実施の形態における監視カメラ2の監視処理を示す流れ図である。監視処理とは、監視カメラ2の運用が開始され、監視カメラ2からの撮像情報9によって、監視員が異常の有無を監視している状態をいうものとする。
【0059】
監視処理における監視カメラ2では、図7に示すように概ね4つのタスク(撮像タスク、測定タスク、衝撃監視タスクおよび姿勢変化監視タスク)が同時並行的に繰り返し実行されている。ただし、これらのタスク以外のタスクが実行されていてもよい。
【0060】
撮像タスクは、撮像部26が、撮像周期ごとに撮像を行い(ステップS11)、撮像により取得した撮像情報9を、一旦、RAM21に格納した後、映像再生装置3に向けて送信する(ステップS12)タスクである。送信された撮像情報9は、映像再生装置3において、必要に応じて表示部35に再生され、監視員によって異常な状況が撮像されていないかどうかの確認がされる。
【0061】
測定タスクは、加速度センサ27による加速度の測定を行うタスクである。より詳細には、加速度センサ27がセンシング周期ごとに加速度を測定することにより(ステップS13)、RAM21に測定情報270が作成される。
【0062】
次に、変化量演算部200が、基準情報210と測定情報270とに基づいて、各基準軸ごとに、加速度の変化量を演算する(ステップS14)。これにより、各基準軸ごとに、基準軸に沿った方向における基準姿勢に対する変化量(Δα1、Δα2、および、Δα3)が求まり、変化量情報214が作成される(ステップS15)。
【0063】
図8は、監視処理が開始されてから充分に時間が経過した後の変化量情報214を例示する図である。ただし、図8では、現在の時間を「0」とし、過去(−τ)に姿勢変化が起きている例を示している。
【0064】
衝撃監視タスクは、変化量情報214に基づいて、衝撃判定部201が、撮像部26に対する異常の有無(衝撃が加えられたか否か)を判定するタスクである。
【0065】
監視カメラ2(撮像部26)に衝撃が加えられると、それによって撮像部26の姿勢が変化し、撮像範囲が変化して、所望の被写体を撮像することができなくなる可能性がある。一方、姿勢判定部202による判定は、判定期間Tにおける積分を用いるため、判定結果が得られるまでに比較的時間を要する場合がある。
【0066】
物体に強い衝撃が加えられると、物体の加速度は瞬間的に大きく変化し、基準姿勢に対する加速度の変化量も比較的大きく変化する。したがって、これを検出すれば、比較的短時間で撮像部26に対する異常を検出できる。そこで、衝撃判定部201は、先述の式1を実行して判定値Q(第1判定値)を求め(ステップS16)、判定値Qが予め実験等で求めた第1閾値W1(衝撃判定用閾値)より大きいか否かを判定する(ステップS17)。
【0067】
図8に示す例では、姿勢変化が生じたときの変化量(時間「−τ」におけるΔα1、Δα2、および、Δα3の値)の絶対値の合計が第1閾値W1より大きければ、衝撃が加えられたことを、時間「−τ」の時点で判定できる。
【0068】
判定値Qが第1閾値W1より大きい場合(ステップS17においてYes)、衝撃判定部201は、警報を表示部24、ブザー25および通信部28に伝達する。これにより、表示部24のLEDやパトライトが点灯することにより警報が出力されるとともに、ブザー25が警告音を発することによっても警報が出力される(ステップS18)。
【0069】
また、ステップS18において、通信部28は映像再生装置3に向けて警報情報310を送信出力する。これを受信した映像再生装置3は、表示部35やブザー36に警報を出力する。このとき、映像再生装置3は、警報情報310を送信した監視カメラ2からの撮像情報9を、優先的に表示部35に再生する。このように、監視システム1では、警報情報310を受信した映像再生装置3が、警報を出力するとともに、当該警報情報310を送信した監視カメラ2の映像を再生することにより、効率よく、状況確認をすることができる。
【0070】
一方、判定値Qが第1閾値W1以下の場合(ステップS17においてNo)、衝撃判定部201は、衝撃が加えられていないと判定し、ステップS18をスキップし、監視処理を継続する。
【0071】
姿勢変化監視タスクは、姿勢判定部202が変化量情報214に応じて、撮像部26に対する異常の有無(基準姿勢から変化していないかどうか)を判定するタスクである。
【0072】
上記のように、比較的大きな衝撃が加わることによって比較的大きな加速度変化が生じると、衝撃判定部201によって異常を検出することができる。しかし、比較的小さな加速度しか生じないように(第1閾値W1を超えないように)、ゆっくりと長時間かけて撮像部26の向きを動かすと、衝撃判定部201では異常を検出できない。
【0073】
しかし、衝撃判定部201の検出精度を向上させるために第1閾値W1を低くすると、外乱ノイズの影響により、誤検出が頻発するおそれがある。外乱ノイズとは、外部振動(地震、風、店舗シャッターの開閉等)により生じる一時的で比較的小さな動きである。外乱ノイズによって撮像部26の撮像範囲が大きく変化することは稀であり、しかもその変化は一時的なものである場合が多い。したがって、外乱ノイズによる加速度変化は「異常」として検出するべきではないが、第1閾値W1を低くすると、衝撃判定部201において、微小振動による加速度変化を異常として誤検出することになる。
【0074】
したがって、監視カメラ2において、第1閾値W1を下げることには限界があり、悪意者が加速度の変化量を小さく抑えつつ監視カメラ2の向きを変化させると、衝撃判定部201に検出されることなく、撮像部26の姿勢を変化させて撮像範囲を変化させることが可能になる。
【0075】
しかし、姿勢が変化すれば、重力に起因する基準軸にかかる重力加速度が変化する。しかも、姿勢の変化が外乱ノイズによる一時的なものではなく、恒常的なものである場合、重力加速度の変化も恒常的なものとなる。
【0076】
そこで、姿勢判定部202は、式2を実行することにより判定値R(第3判定値)を求め(ステップS19)、判定値Rが予め実験等で求めた第2閾値W2(姿勢判定用閾値)より大きいか否かを判定する(ステップS20)。
【0077】
判定値Rが第2閾値W2より大きい場合(ステップS20においてYes)、姿勢判定部202は、警報を表示部24、ブザー25および通信部28に伝達する。これにより、表示部24のLEDやパトライトが点灯することにより警報が出力されるとともに、ブザー25が警告音を発することによっても警報が出力される(ステップS21)。
【0078】
また、ステップS21において、通信部28は映像再生装置3に向けて警報情報310を送信出力する。これを受信した映像再生装置3は、表示部35やブザー36に警報を出力する。このとき、映像再生装置3は、警報情報310を送信した監視カメラ2からの撮像情報9を、優先的に表示部35に再生する。このように、監視システム1では、警報情報310を受信した映像再生装置3が、警報を出力するとともに、当該警報情報310を送信した監視カメラ2の映像を再生することにより、効率よく、状況確認をすることができる。
【0079】
なお、衝撃判定部201による警報と、姿勢判定部202による警報とを区別するように構成してもよい。これにより、監視員は、比較的強い衝撃が監視カメラ2に加えられたのか、それとも監視カメラ2の姿勢が変化したのかを区別することができる。
【0080】
一方、判定値Rが第2閾値W2以下の場合(ステップS20においてNo)、姿勢判定部202は、姿勢が変化していないと判定し、ステップS21をスキップし、監視処理を継続する。
【0081】
図8に示す例では、姿勢変化が生じたときの変化量(時間「−τ」におけるΔα1、Δα2、および、Δα3の値)が、その後も変化せず、恒常的となっている。これは、基準姿勢にあった撮像部26が他の姿勢に変更(向きを変更)された場合に典型的な現象である。このような場合、変化量を判定期間Tにおいて積分した値の絶対値(図8において斜線で示す面積に相当する)は比較的大きな値になるため、判定値Rは比較的大きな値となる。したがって、姿勢判定部202は、図8に示すような例において、「異常」を検出することができる。
【0082】
図9は、判定期間T中において、監視カメラ2が第1基準軸81に沿った方向に振動している状態における変化量Δα1の変化を示す図である。図9に示すように、外乱ノイズ(振動)によって監視カメラ2が振動している場合、Δα1(加速度の変化量)も振動する。
【0083】
しかし、振幅が比較的小さい外乱ノイズによる振動であれば、加速度の変化量の振幅も比較的小さいので、加速度の変化量の絶対値も大きな値とはならない。したがって、式1で求まる判定値Qの値も大きくならないので、衝撃判定部201による異常判定(ステップS17)において、外乱ノイズによる誤検出は抑制される。いいかえれば、外乱ノイズの振幅程度では、判定値Qが第1閾値W1を超えないように、第1閾値W1が設定されている。
【0084】
また、振動中の加速度の変化量は、正の値と負の値とを往復する。したがって、判定期間T中の変化量の積分値は振動の1周期ごとにほぼ相殺されるためにあまり大きな値とはならない。したがって、式2で求まる判定値Rの値も大きくならないので、姿勢判定部202による異常判定(ステップS20)において、外乱ノイズによる誤検出は抑制される。
【0085】
一般的な振動は、一定期間経過後に収束する。そして収束後、監視カメラ2は、通常、基準姿勢に戻るため、加速度の変化量は「0」となる。したがって、振動が収束した後、監視カメラ2が基準姿勢に戻った場合、衝撃判定部201および姿勢判定部202のいずれも「異常」と判定することはない。
【0086】
このように、監視カメラ2は、監視カメラ2が外乱ノイズで振動している場合(振動中の場合)には、これを「異常」と検出することによる誤検出を抑制することができる。したがって、外乱ノイズによる誤報を抑制することができる。
【0087】
ただし、振動の収束後に、基準姿勢に戻らなかった場合(振動によりその後の姿勢が狂ってしまった場合)は、振動収束後の姿勢(変化した姿勢)が恒常的となり、積分値は相殺されず、判定値Rが比較的大きな値となる。したがって、姿勢判定部202によって「異常」と判定される。すなわち、振動が原因であったとしても、撮像領域が恒常的に変化してしまった場合には、所望の被写体が撮像されない状態(撮像範囲が不適切な状態)となっている可能性がある。このような場合、姿勢判定部202は「異常」として検出することができる。
【0088】
ところで、悪意者が撮像部26を人力により移動させて撮像範囲を変更しようとする状況において、姿勢判定部202に検出されないように姿勢を変化させることなく、かつ、衝撃判定部201に検出されないようにゆっくりと動かし続けるのは非常に困難といえる。特に、監視カメラ2は、壁や天井等に固設されるのが一般的であるため、回動部を動かして向きを変える(姿勢を変える)ことは比較的容易であっても、壁や天井等に固設された監視カメラ2の姿勢を変えずに移動させることは困難である。したがって、本実施の形態における監視カメラ2は充分に実用に耐えるものである。
【0089】
以上のように、第1の実施の形態における監視カメラ2は、撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報9を取得する撮像部26と、基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度センサ27と、撮像部26の基準姿勢における基準軸に沿った方向の加速度を基準情報210として記憶するRAM21と、加速度センサ27により測定された基準軸に沿った方向の加速度(測定情報270)と、RAM21に記憶されている基準情報210との差分を求めることにより、基準軸に沿った方向の加速度の変化量情報214を求める変化量演算部200と、変化量演算部200により求められた変化量情報214に応じて、撮像部26に対する異常の有無を判定する衝撃判定部201および姿勢判定部202とを備えることにより、角速度センサを採用する場合に比べてコストを抑制できる。また、異常判定において画像(撮像情報9)を用いる必要がないので、処理負荷が抑制される。
【0090】
また、衝撃判定部201が、変化量演算部200により求められた変化量情報214と第1閾値W1とに応じて撮像部26に対する異常の有無を判定することにより、大きな衝撃が加えられたときには、比較的短時間で異常を検出できる。
【0091】
また、衝撃判定部201が、変化量演算部200により求められた変化量情報214の絶対値を、基準軸ごとに求め、基準軸ごとに求めた変化量情報214の絶対値を加算して判定値Qとし、判定値Qが第1閾値W1より大きい場合に、撮像部26に対する異常があったと判定することにより、容易に異常判定(衝撃検出)を行うことができる。
【0092】
また、姿勢判定部202が、変化量演算部200により求められた変化量を判定期間T中において積分することにより積分値を求め、当該積分値の絶対値を判定値Rとし、判定値Rと第2閾値W2とを比較して、撮像部26に対する異常の有無を判定することにより、加速度の変化量が小さい場合でも、姿勢が変化していれば検出できる。また、振動による一時的な姿勢変化による誤検出を抑制できる。
【0093】
なお、監視カメラ2において実行した加速度センサ27の測定値(基準情報210および測定情報270)の記憶や、各種情報の演算および判定の一部を映像再生装置3において実行するように構成してもよい。例えば、監視カメラ2の基準姿勢における基準情報210を映像再生装置3に送信して映像再生装置3において記憶することも可能である。その場合は、変化量演算部200、衝撃判定部201および姿勢判定部202に相当する機能ブロックを映像再生装置3に設けて、撮像部26に対する異常の有無を判定するように構成してもよい。このように構成した場合には、監視カメラ2の負担を軽減することができるため、監視カメラ2の単価を抑制することができる。したがって、監視システム1が比較的多数の監視カメラ2で構成される場合などには、システム全体のコストを削減できる。
【0094】
また、監視カメラ2が撮像部26をパン・チルト等させるための駆動部を備えている場合は、姿勢変化を検出した際に、基準姿勢に戻るように制御してもよい。
【0095】
また、衝撃あるいは姿勢変化を検出したときに、当該衝撃あるいは姿勢変化を検出した監視カメラ2を、他の監視カメラ2によって撮像するように構成してもよい。
【0096】
<2. 第2の実施の形態>
衝撃が加えられたか否かを判定するために求められる判定値は、第1の実施の形態における判定値Qに限定されるものではない。
【0097】
図10は、第2の実施の形態における監視カメラ4の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。第2の実施の形態における監視カメラ4は、衝撃判定部201の代わりに、衝撃判定部203を備えている点を除いて、第1の実施の形態における監視カメラ2と同様である。以下の説明では、第2の実施の形態における監視カメラ4について、第1の実施の形態における監視カメラ2と同様の構成については同符号を付すとともに、適宜、説明を省略する。
【0098】
第2の実施の形態における衝撃判定部203は、変化量演算部200により求められた変化量情報214に基づいて合成加速度の変化量(以下、「変化量Δα」と称する。)を求め、当該合成加速度の変化量Δαの絶対値を判定値Sとし、判定値Sと第1閾値W1とを比較して、判定値Sが第1閾値W1より大きい場合に、撮像部26に対する異常があったと判定する。
【0099】
図11は、第2の実施の形態における変化量Δαを示す図である。
【0100】
第2の実施の形態における衝撃判定部203は、式1を実行する代わりに、式3を実行することにより、判定値Sを求める。
【0101】
【数3】

【0102】
このような演算手法によっても、撮像部26に対して衝撃が加えられたことを検出することができる。
【0103】
<3. 第3の実施の形態>
上記実施の形態では、撮像部26の姿勢変化を検出するために、加速度の変化量の判定期間T中における積分値を用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0104】
図12は、第3の実施の形態における監視カメラ5の機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。第3の実施の形態における監視カメラ5は、姿勢判定部202の代わりに姿勢判定部204を備える点と、機能ブロックとしての平均値演算部205を新たに備える点とを除いて、第1の実施の形態における監視カメラ2と同様である。以下の説明では、第3の実施の形態における監視カメラ5について、第1の実施の形態における監視カメラ2と同様の構成については同符号を付すとともに、適宜、説明を省略する。
【0105】
第3の実施の形態における姿勢判定部204は、後述する平均値演算部205によって作成される判定値情報215と第2閾値W2とを比較することにより、撮像部26の姿勢変化を検出し、撮像部26に対する異常の有無を判定する機能を有している。
【0106】
第3の実施の形態における平均値演算部205は、変化量情報214に格納されている各基準軸に沿った方向における加速度の変化量(Δα1、Δα2、および、Δα3)を、各基準軸についてそれぞれ所定の周期(後述)ごとに取得し、判定値情報215を作成する機能を有する。
【0107】
図13は、外乱ノイズによる振動中に適切な第1サンプリング周期ST1ごとに加速度の変化量が取得される様子を示す図である。また、図14は、外乱ノイズによる振動中に不適切な第1サンプリング周期ST1ごとに加速度の変化量が取得される様子を示す図である。
【0108】
図13および図14に示すように、振動中の加速度の変化量は正の値と負の値とを往復するが、その平均値はほぼ「0」となる。一方、既に図8に示したように、振動によらずに姿勢が変化した場合、加速度の変化量の平均値はほぼ一定であり、その値は姿勢変化の度合いに応じて大きくなる。したがって、判定期間Tにおいて加速度の変化量の平均値が小さければ、その間の姿勢変化は振動によるものであるか、あるいは、姿勢変化の度合いが小さいかのいずれかであると判定できる(いずれも異常として検出する必要がない。)。第3の実施の形態における姿勢判定部204は、このような原理を利用して、積分値を演算することなく、姿勢変化を検出するとともに、外乱ノイズによる誤検出を抑制するものである。
【0109】
ここで、図13に示すように、第1サンプリング周期ST1が、加速度の変化量の振動周期(外乱ノイズの振動周期)の1/2であれば、どのような位相で加速度の変化量が取得されたとしても、取得された加速度の変化量の平均値はほぼ「0」となる。すなわち、外乱ノイズの振動周期の1/2程度となるように、第1サンプリング周期ST1を決定できれば、位相にかかわらず、平均値は比較的小さな値となる。
【0110】
一方で、図14に示すように、第1サンプリング周期ST1が、外乱ノイズの振動周期と一致する場合は、位相によっては、共振により、平均値が比較的大きな値となり、誤検出の可能性がでてくる。このような場合は、第1サンプリング周期ST1を変更する必要がある。
【0111】
図15は、第3の実施の形態における監視処理の姿勢変化監視タスクを示す流れ図である。
【0112】
監視処理が開始され、姿勢変化監視タスクが開始されると、平均値演算部205は、変化量演算部200により求められた変化量情報214から、判定期間T中において第1のサンプリング周期ST1で加速度の変化量を取得する(ステップS31)。
【0113】
変化量を取得すると、平均値演算部205は、取得した変化量に応じて比率判定(ステップS32)を実行する。ステップS32に示す比率判定において、平均値演算部205は、ステップS31で取得した変化量のそれぞれについて正負を判定しつつ、取得された正の変化量の数と取得された負の変化量の数との比率C(正の変化量の数/負の変化量の数)を求める。
【0114】
次に、平均値演算部205は、第3閾値W3(第1サンプリング周期ST1の適否を判定するための閾値)に応じて、比率Cが式4を満たすか否かを判定する。
【0115】
【数4】

【0116】
なお、本実施の形態では、第3閾値W3は「3/7」とするが、第3閾値W3の値はこれに限定されるものではない。
【0117】
式4が満たされないとき(ステップS32においてNo)、平均値演算部205は、第1サンプリング周期ST1を第2サンプリング周期ST2に変更して(ステップS33)、第2サンプリング周期ST2ごとの加速度の変化量を変化量情報214から取得する(ステップS34)。
【0118】
なお、第3の実施の形態では、第2サンプリング周期ST2は、第1サンプリング周期ST1の2/3とするが、このような関係に限定されるものではない。例えば、第2サンプリング周期ST2は、第1サンプリング周期ST1の3/2であってもよい。
【0119】
さらに、平均値演算部205は、取得した加速度の変化量(第1サンプリング周期ST1または第2サンプリング周期ST2のいずれかの周期ごとに取得した加速度の変化量)の平均値を求める(ステップS35)。なお、本実施の形態では、基準軸が3つ存在するため、ステップS31ないしS35の処理は、各基準軸ごとに実行され、加速度の変化量の平均値は各基準軸ごとに求められる。
【0120】
さらに、平均値演算部205は、ステップS35で求めた各基準軸ごとの平均値の絶対値を求めて、これらをすべて加算して判定値情報215としてRAM21に記憶させる。
【0121】
判定値情報215が作成されると、姿勢判定部204が、判定値情報215と第2閾値W2とに応じて撮像部26に対する異常の有無を判定する(ステップS36)。
【0122】
判定値情報215が第2閾値W2よりも大きい場合(ステップS36においてYes)、姿勢判定部204は、警報を表示部24、ブザー25および通信部28に伝達する。これにより、表示部24のLEDが点灯することにより警報が出力されるとともに、ブザー25が警告音を発することによっても警報が出力される(ステップS37)。
【0123】
また、ステップS37において、通信部28は、第1の実施の形態と同様に、映像再生装置3に向けて警報情報310を送信出力する。これを受信した映像再生装置3は、表示部35やブザー36に警報を出力する。
【0124】
一方、判定値情報215が第2閾値W2以下の場合(ステップS36においてNo)、姿勢判定部204は、姿勢が変化していないと判定し、ステップS37を実行することなく、監視処理を継続する。
【0125】
以上のように、第3の実施の形態における監視カメラ5は、変化量演算部200により求められた変化量を判定期間T中において第1サンプリング周期ST1で取得しつつ、取得した変化量について、判定期間T中における平均値の絶対値を各基準軸ごとに求めるとともに、求めた各基準軸ごとの平均値の絶対値を加算して判定値情報215を求める平均値演算部205と、判定値情報215と第2閾値W2とに応じて撮像部26に対する異常の有無を判定する姿勢判定部204とを備えることにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、積分値を求める場合に比べて、演算負荷を軽減できる。
【0126】
また、平均値演算部205は、判定期間T中において第1のサンプリング周期ST1で取得した複数の変化量に含まれる正の変化量と負の変化量との比に応じて、第1サンプリング周期ST1を第2サンプリング周期ST2に変更することにより、第1サンプリング周期ST1が不適切であるために生じる誤検出を抑制できる。
【0127】
<4. 第4の実施の形態>
上記実施の形態では、3つの基準軸を有する加速度センサ27を用いる例で説明した。このように3つの基準軸を有する加速度センサ27を用いることによって、異常検出精度は向上するが、基準軸の数は3つに限定されるものではなく、1つまたは2つであってもよい。すなわち、基準軸が1つあるいは2つしか規定されていない加速度センサ27によっても衝撃および姿勢変化を検出することは可能である。
【0128】
図16は、第4の実施の形態における監視カメラ6を示す図である。図16に示す方向84は、監視カメラ6(撮像部26)の撮像方向に沿った方向を示している。
【0129】
第4の実施の形態における監視カメラ6では、基準軸としては第1基準軸85のみが規定されている。これにより、第4の実施の形態における加速度センサ27は、第1基準軸85に沿った方向の加速度について測定することは可能であるが、第1基準軸85に対して直交する方向に沿った方向の加速度については測定することができない。
【0130】
したがって、悪意者は、第1基準軸85に沿った方向の加速度のみ変化しないように、注意して監視カメラ6を移動させれば、「異常」と判定されることはない。すなわち、第1基準軸85しか規定されていない監視カメラ6では、上記実施の形態における監視カメラ2,4,5に比べて、検出精度が低下する場合が想定される。
【0131】
しかし、第4の実施の形態における第1基準軸85は、監視カメラ6の撮像方向に沿った方向84とは異なる方向に沿うとともに、方向84と直交する方向とも異なる方向に沿うように規定されている。すなわち、第1基準軸85と方向84との成す角θは、「0°<θ<90°」を満たすように規定されている。
【0132】
加速度センサ27の基準軸(第1基準軸85)がどの方向に規定されているかは、外観上、知得することはできない。そして、第4の実施の形態における監視カメラ6では、基準軸の方向として比較的予測されやすい方向(撮像方向や撮像方向に直交する方向等)と異なる方向に沿うように第1基準軸85が規定されている。
【0133】
したがって、悪意者が、第1基準軸85に沿った方向の加速度が変化しないように、注意して監視カメラ6を移動させようとしても、そもそも第1基準軸85の方向が予測不能であるため、そのような移動が困難となる。
【0134】
なお、例えば、第1の実施の形態における監視カメラ2では、図3に示すように、第1基準軸81が撮像方向と一致している。しかし、監視カメラ2は3つの基準軸を有しているため、結局、いかなる方向に加速度が変化した場合であっても、いずれかの基準軸(第1基準軸81、第2基準軸82または第3基準軸83)に沿った方向の加速度が変化する。したがって、3つの基準軸を有する場合には、比較的予測されやすい方向と基準軸が一致していたとしても、これによって検出精度が低下することはない。
【0135】
また、予測しやすい方向としては、本実施の形態に示すものに限定されるものではなく、例えば、鉛直方向や水平方向等も比較的予測されやすいため、1つまたは2つの基準軸しか有さない加速度センサ27を用いる場合には、これらの方向に注意することが好ましい。
【0136】
<5. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0137】
例えば、上記実施の形態に示した機能ブロックの一部または全部を、専用の論理回路で実現してもよい。すなわち、ソフトウェアによって実現されると説明した構成の一部または全部をハードウェアによって実現してもよい。
【0138】
また、上記実施の形態に示した各工程はあくまでも例示であって、このような順序、処理に限定されるものではない。同様の効果が得られるならば、適宜、各工程の順序や処理内容が変更されてもよい。
【0139】
また、監視カメラ2,4,5,6の撮像情報9は、動画を表現したものであってもよいし、静止画であってもよい。また、白黒の映像を表現したものであってもよいし、カラーの映像を表現したものであってもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 監視システム
2,4,5,6 監視カメラ
20 CPU
200 変化量演算部
201,203 衝撃判定部
202,204 姿勢判定部
205 平均値演算部
21 RAM
210 基準情報
214 変化量情報
215 判定値情報
22 ROM
220 プログラム
23 操作部
24 表示部
25 ブザー
26 撮像部
27 加速度センサ
270 測定情報
28 通信部
3 映像再生装置
310 警報情報
32 ROM
320 プログラム
35 表示部
36 ブザー
37 通信部
81,85 第1基準軸
82 第2基準軸
83 第3基準軸
84 方向(撮像方向に沿った方向)
9 撮像情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常の有無を監視する監視カメラであって、
撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する撮像手段と、
基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度測定手段と、
前記撮像手段の基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する記憶手段と、
前記加速度測定手段により測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める変化量演算手段と、
前記変化量演算手段により求められた変化量に応じて、前記撮像手段に対する異常の有無を判定する異常判定手段と、
を備えることを特徴とする監視カメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の監視カメラであって、
前記異常判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量と第1閾値とに応じて前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第1判定手段を備えることを特徴とする監視カメラ。
【請求項3】
請求項2に記載の監視カメラであって、
前記第1判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量の絶対値を前記基準軸ごとに求めて加算し前記第1閾値と比較することを特徴とする監視カメラ。
【請求項4】
請求項2に記載の監視カメラであって、
前記第1判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量に基づいて合成加速度の変化量を求めて前記第1閾値と比較することを特徴とする監視カメラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の監視カメラであって、
前記異常判定手段は、前記変化量演算手段により求められた変化量を判定期間中において積分することにより積分値を求め、前記積分値の絶対値と第2閾値とを比較することにより前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第2判定手段をさらに備えることを特徴とする監視カメラ。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の監視カメラであって、
前記異常判定手段は、
前記変化量演算手段により求められた変化量を判定期間中において第1のサンプリング周期で取得しつつ、取得した前記変化量について、前記判定期間中における平均値の絶対値を前記基準軸ごとに求めるとともに、求めた前記基準軸ごとの前記平均値の絶対値を加算して判定値を求める平均値演算手段と、
前記平均値演算手段により求められた判定値と第2閾値とに応じて前記撮像手段に対する異常の有無を判定する第3判定手段と、
をさらに備えることを特徴とする監視カメラ。
【請求項7】
請求項6に記載の監視カメラであって、
前記平均値演算手段は、前記判定期間中において前記第1のサンプリング周期で取得した複数の変化量に含まれる正の変化量と負の変化量との比に応じて、前記第1のサンプリング周期を第2のサンプリング周期に変更することを特徴とする監視カメラ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の監視カメラであって、
前記基準軸は、第1基準軸と前記第1基準軸に直交する第2基準軸とを含むことを特徴とする監視カメラ。
【請求項9】
請求項8に記載の監視カメラであって、
前記基準軸は、前記第1基準軸および第2基準軸のいずれにも直交する第3基準軸をさらに含むことを特徴とする監視カメラ。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の監視カメラであって、
前記基準軸は、前記撮像手段の撮像方向に沿った方向と異なる方向に沿うことを特徴とする監視カメラ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の監視カメラであって、
前記基準軸は、前記撮像手段の撮像方向に直交する方向と異なる方向に沿うことを特徴とする監視カメラ。
【請求項12】
異常の有無を監視する少なくとも1つの監視カメラと、
前記監視カメラからの撮像情報を再生する映像再生装置と、
を備え、
前記監視カメラは、
撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する撮像手段と、
基準軸に沿った方向の加速度を測定する加速度測定手段と、
を備え、
前記撮像手段の基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する記憶手段と、
前記加速度測定手段により測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める変化量演算手段と、
前記変化量演算手段により求められた変化量に応じて、前記撮像手段に対する異常の有無を判定する異常判定手段と、
をさらに備えることを特徴とする監視システム。
【請求項13】
請求項12に記載の監視システムであって、
前記映像再生装置は、
前記異常判定手段が前記撮像手段に対する異常があったと判定した場合に、警報を出力するとともに、前記撮像手段により取得された撮像情報を再生する警報出力手段をさらに備えることを特徴とする監視システム。
【請求項14】
監視カメラによって異常の有無を監視する監視方法であって、
前記監視カメラの撮像範囲に存在する被写体を撮像して撮像情報を取得する工程と、
加速度センサによって基準軸に沿った方向の加速度を測定する工程と、
前記監視カメラの基準姿勢における前記基準軸に沿った方向の加速度を基準値として記憶する工程と、
前記加速度センサにより測定された前記基準軸に沿った方向の加速度と前記記憶手段に記憶されている前記基準値との差分を求めることにより、前記基準軸に沿った方向の加速度の変化量を求める工程と、
求められた変化量に応じて、前記監視カメラに対する異常の有無を判定する工程と、
を有することを特徴とする監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−70223(P2012−70223A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213368(P2010−213368)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】