説明

監視制御システム

【課題】運用系、待機系の系統が切換わったときに、制御論理データを自動的に引継げるようにし、オペレータの作業負担を軽減できるとともに、信頼性を向上できる監視制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】被監視制御装置2の動作状態を所定の制御論理に基づいて監視制御し、一方を運用系とし、他方を待機系とする一対の論理制御部11a、11bと、運用系に指定された論理制御部11a、11bが異常状態を検出した場合、運用系に指定された論理制御部11a、11bを待機系に切換え、待機系に指定された論理制御部11a、11bを運用系に切換える系切換制御部13と、この系切換制御部13の系切換え制御によって、運用系に指定されていた論理制御部11a、11bの制御論理データを待機系に指定されていた論理制御部11a、11bに移行する制御論理データ保証手段13とを備える監視制御システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、空港、飛行場等に設置される多数の灯火装置の光度や点灯/消灯を監視制御するのに適用される航空灯火監視制御システム等の監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港、飛行場等の滑走路に設置される灯火装置は、航空機の離着陸や地上走行に必要な視覚的情報を提供し、航空機の安全運航を支える重要な役目を担っている。そのため、灯火装置を監視制御する監視制御システムとしての灯火監視制御システムは、その論理制御部や伝送路等が二重化構成となっている。
【0003】
つまり、運用系と待機系の2つの系統が用意されていて、運用系に異常が発生した場合、待機系に切換えて、今まで待機系であった系統を運用系に変更し、運用系であった系統を待機系に変更することが行われている。そして、変更後は、今まで待機系であった系統の論理制御部によって灯火装置の光度や点灯/消灯等が監視制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−358619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、待機系であった系統は、運用系の運用期間中は休止状態であるため、運用系に切換わった場合、前の運用系の系統の制御論理データを引継いでいない。そのため、オペレータは、系統が切換わったときに、灯火状態を継続させるため、灯火運用卓から運用系の論理制御部を介して灯火装置を手動操作して、前の灯火状態に設定する必要がある。
このオペレータの手動操作による設定は、オペレータの作業負担の増大を招く可能性があり、また、操作ミスが生じる可能性もある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、系統が切換わったときに、制御論理データを自動的に引継げるようにし、オペレータの作業負担を軽減できるとともに、信頼性を向上できる監視制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の監視制御システムは、被監視制御装置と、この被監視制御装置の動作状態を所定の制御論理に基づいて監視制御する一対の論理制御部とを備えている。この一対の論理制御部のうち、一方を運用系とし、他方を待機系とし、運用系に指定された論理制御部が異常状態を検出した場合、運用系に指定された論理制御部を待機系に切換え、待機系に指定された論理制御部を運用系に切換える系切換制御部を有し、この系切換制御部の系切換え制御によって、運用系に指定されていた論理制御部の制御論理データを待機系に指定されていた論理制御部に移行する制御論理データ保証手段を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オペレータの作業負担を軽減できるとともに、信頼性を向上できる監視制御システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る監視制御システムを示すブロック図である。
【図2】同動作を示すフローチャートである。
【図3】同制御のタイミングを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態では、監視制御システムとして航空灯火監視制御システムを示しており、図1は、航空灯火監視制御システムを示すブロック図、図2は、動作を示すフローチャート、図3は、制御のタイミングを示すタイムチャートである。
【0011】
図1に示すように、航空灯火監視制御システムは、ロケーション的には、管制室側、電源室側及び滑走路側に亘って配置されている。電源室側には、灯火監視制御装置1が配置され、滑走路側には被監視制御装置として灯火装置2、管制室側には、灯火運用卓3が配置されている。
【0012】
電源室側に配置された灯火監視制御装置1は、二重化構成となっており、例えば、1系統と2系統とを有しており、1系統の論理制御部11a、1系統の伝送コントローラ12a、2系統の論理制御部11b、2系統の伝送コントローラ12bを備えている。
【0013】
1系統の論理制御部11aと2系統の論理制御部11bとの間には、系切換制御部13が接続されており、1系統の伝送コントローラ12aと2系統の伝送コントローラ12bとの間には、伝送ユニット14が接続されている。また、この伝送ユニット14には、定電流調整装置(CCR)15が接続されている。
【0014】
1系統の論理制御部11aと2系統の論理制御部11bとは、CPUやメモリを内蔵したプログラマブルコントローラ(PLC)から構成されている。これら1系統の論理制御部11aと2系統の論理制御部11bとは、略同一の構成をなしていて、設定されている制御論理に基づいて制御論理データを出力し、これによって灯火装置2の光度や点灯/消灯等の状態を監視制御するようになっている。
【0015】
1系統の論理制御部11aと2系統の論理制御部11bとに接続された1系統の伝送コントローラ12a及び2系統の伝送コントローラ12b、伝送ユニット14は、論理制御部11a、11bと電流調整装置(CCR)15との間に介在してインターフェースI/Fとして機能するものである。
【0016】
系切換制御部13は、1系統と2系統との系統の切換え制御を行う。すなわち、1系統の論理制御部11aと2系統の論理制御部11bとの運用の切換え制御を行う。例えば、1系統の論理制御部11aによって灯火装置2が運用され、光度や点灯/消灯等の状態が監視制御されていた場合、1系統の論理制御部11aが運用系となり、2系統の論理制御部11bは、待機系となって待機状態となる。1系統の論理制御部11aが何らかの異常を検出すると、アラームが発せられ、これに基づいてオペレータが灯火運用卓3を操作し、系切換制御部13によって、今まで待機系であった2系統の論理制御部11bを運用系に切換え、変更する。これによって、2系統の論理制御部11bが運用系となり、灯火装置2の監視制御を行うようになる。一方、1系統の論理制御部11aは、待機系に変更され待機状態となる。
【0017】
なお、論理制御部11aが異常を検出した場合、オペレータの灯火運用卓3の操作によらず、自動的に2系統の論理制御部11bを運用系に切換えるようにしてもよい。
【0018】
また、系切換制御部13には、制御論理データ保証手段16が設けられている。制御論理データ保証手段16は、異常が検出され系統が切換わった際に、例えば、運用系の1系統の論理制御部11aに設定されている制御論理に基づく制御論理データを、待機系の2系統の論理制御部11bに移行し設定するものである。つまり、今まで運用系に指定されていた1系統の論理制御部11aの制御論理データを待機系に指定されていた2系統の論理制御部11bに引継いで、系統が切換わる前と同様の状態で監視制御を行うようにする機能を有している。
なお、この制御論理データ保証手段16は、論理制御部11a、11bに設けてもよいし、また、インターフェースI/F部に設けてもよい。
定電流調整装置(CCR)15は、商用交流電源から定電流を生成し、灯火装置2の光度を一定に保つ機能を有している。
【0019】
定電流調整装置(CCR)15は、滑走路側に配設された多数の灯火装置2に伝送端末21を介して接続されている。この伝送端末21には、1系統の論理制御部11a又は2系統の論理制御部11bから制御論理データが送信され、この制御論理データによって灯火装置2の光度や点灯/消灯等の状態が監視制御されるようになっている。
【0020】
一方、1系統の論理制御部11a及び2系統の論理制御部11bには、それぞれ運用卓コントローラ3a、3bを介して管制室側に配設された灯火運用卓3が接続されている。灯火運用卓3は、オペレータによって視程、背景輝度、雲底高等の条件が入力され、この各種条件に応じた運用パターンの制御信号を生成して論理制御部11a、11bへ送信する。
【0021】
次に、上記のように構成された航空灯火監視制御システムの動作を図2を参照して説明する。灯火監視制御装置1は、灯火運用卓3によって1系統の論理制御部11a又は2系統の論理制御部11bに設定される制御論理に従って、多数の灯火装置2の光度や点灯/消灯等の状態の監視制御を行う。
【0022】
例えば、1系統が運用系に指定され、2系統が待機系に指定されているとする(S1)。この場合、1系統の論理制御部11aに制御論理が設定され(S2)、制御論理データが出力される(S3)。2系統の論理制御部11bは、待機状態であり休止期間となっている。前記制御論理データは、伝送コントローラ12a、伝送ユニット14を介して電流調整装置(CCR)15に送信される。さらに、この制御論理データは、伝送端末21を介して各灯火装置2に送信され、各灯火装置2が監視制御される(S4)。
【0023】
ここで、運用系である1系統の論理制御部11aが異常状態を検出すると(S5)、灯火運用卓3にアラームが報知される。このアラームに基づき、管制室側のオペレータが灯火運用卓3を操作して系切換制御部13に制御信号を送信して、系統を切換える。つまり、運用系である1系統の論理制御部11aを待機系とし、待機系であった2系統の論理制御部11bを運用系に変更する(S6)。
【0024】
この場合、制御論理データ保証手段16によって、運用系の1系統の論理制御部11aに設定されている制御論理に基づく制御論理データは、待機系の2系統の論理制御部11bに移行するようになっている(S7)。
【0025】
具体的には、1系統の論理制御部11aの制御論理データが伝送ユニット14から2系統の伝送コントローラ12bへ送信される。さらに、伝送コントローラ12bで受信された制御論理データは、2系統の論理制御部11bに送信される。この論理制御部11bでは、受信された制御論理データに基づき制御論理が設定される(S8)。
【0026】
以後、この論理制御部11bで設定された制御論理に基づく制御論理データが伝送コントローラ12b、伝送ユニット14を介して電流調整装置(CCR)15、伝送端末21から各灯火装置2に送信され、各灯火装置2が監視制御される(S9)。この場合、系統が切換わる前と同様の状態で監視制御ができれば、制御論理データは、全く同一の形式でなくてもよい。
【0027】
したがって、今まで運用系に指定されていた1系統の論理制御部11aの制御論理データを待機系に指定されていた2系統の論理制御部11bに引継いで、系統が切換わる前と同様の状態で継続して監視制御を行うことができる。なお、異常状態が検出された1系統は、修復され、待機系となって待機状態となる。
【0028】
以上の状態から運用系となった2系統の論理制御部11bが異常状態を検出した場合には、上記と同様な系統の切換え制御が実行され、1系統の論理制御部11aが運用系となり、2系統の論理制御部11bが待機系となる。
次に、上記動作における制御のタイミングについて図3を参照して説明する。図は、制御のタイミングの概略をパルス波形で示している。
【0029】
まず、例えば、(1)灯火操作卓3のスイッチを操作して1系統の論理制御部11aを指定する選択信号を入力する。(2)1系統の論理制御部11aがワンショットパルスの制御論理データを送信する。(3)1系統の伝送コントローラ12aがワンショットパルスの制御論理データを受信し、ラッチするとともにこの制御論理データを伝送ユニット14に送信する。(4)伝送ユニット14が制御論理データを受信するとともに、この制御論理データを電流調整装置(CCR)15に送信する。
【0030】
次いで、前記のように1系統の論理制御部11aが運用中に、異常が発生すると、(5)系切換制御部13から系切換の制御信号が送信され、1系統及び2系統の各装置が系切換の制御信号を受信し、1系統の論理制御部11aが待機系に、2系統の論理制御部11bが運用系に切換わる。そして、1系統の伝送コントローラ12aが系切換の制御信号を伝送ユニット14に送信する。(6)伝送ユニット14が系切換の制御信号を受信し、1系統の論理制御部11aが運用していた制御論理データを2系統の伝送コントローラ12bへ送信する。(7)2系統の伝送コントローラ12bが制御論理データを受信し、2系統の論理制御部11bへ送信するとともに、新たに論理制御部11bから送信される制御論理データを受信し、これを伝送ユニット14に送信する。(8)伝送ユニット14が制御論理データを受信するとともに、この制御データを電流調整装置(CCR)15に送信する。
【0031】
以上のように本実施形態によれば、系統が切換わったときに、制御論理データが自動的に運用系に移行するようになるので、オペレータの作業負担を軽減できるとともに、信頼性を向上できる航空灯火監視制御システムを提供することができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、本発明は、高い信頼性が要求される監視制御システムに好適であり、被監視制御装置を道路照明灯とする場合や道路情報表示システム等に適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・灯火監視制御装置、2・・・被監視制御装置(灯火装置)、
3・・・灯火運用卓、11a、11b・・・論理制御部、13・・・系切換制御部、
16・・・制御論理データ保証手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被監視制御装置と;
この被監視制御装置の動作状態を所定の制御論理に基づいて監視制御し、一方を運用系とし、他方を待機系とする一対の論理制御部と;
前記一対の論理制御部のうち、運用系に指定された論理制御部が異常状態を検出した場合、運用系に指定された論理制御部を待機系に切換え、待機系に指定された論理制御部を運用系に切換える系切換制御部と;
この系切換制御部の系切換え制御によって、運用系に指定されていた論理制御部の制御論理データを待機系に指定されていた論理制御部に移行する制御論理データ保証手段と;
を具備することを特徴とする監視制御システム。
【請求項2】
前記被監視制御装置が空港、飛行場等に設置される灯火装置であることを特徴とする請求項1に記載の監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−3353(P2012−3353A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135596(P2010−135596)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】