説明

監視装置、プログラム

【課題】ベッドを基準にして監視すべき領域を自動的に検出することにより、監視対象の人の動作を正確かつ再現性よく検出することを可能にした監視装置を提供する。
【解決手段】距離画像センサ10は、画素値が物体までの距離値である距離画像を生成する。距離画像センサ10の視野領域には、監視対象であるベッドの全体を含む。ベッド認識部21は、距離画像センサ10が出力した距離画像を用いてベッドの位置を抽出する。人認識部22は、距離画像センサ10が出力した距離画像のうちベッド認識部21により認識したベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占有する領域を検出する。動作判定部23は、ベッド認識部21により検出したベッドと人認識部22により検出した人の領域との組み合わせによりベッドに対する人の動作を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具上の人を監視する監視装置、監視装置に用いる機能をコンピュータで実現するプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の監視装置として、監視対象物までの距離に相当する距離関連値を求め、距離関連値を閾値と比較することにより、寝具上の就寝者の動きや呼吸を検出する技術が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、所定時間内に就寝者の形状変化が検出されない場合には、監視対象物が監視対象領域の外に出たと判断することによって、離床を検出する技術が記載されている。
【0003】
特許文献1では、ベッド上の就寝者の一部を含む複数の対象点を設定し、就寝者の情報から対象点までの距離を距離センサにより計測している。対象点は、ベッド上に就寝者が居る場合に就寝者の一部を含むように設定された監視領域内に複数配置される。特許文献1に記載の技術では、これらの対象点から得られた距離関連値の時間変化と対象点の位置とを用いることにより、就寝者の離床のほか、呼吸や起き上がりを検出している。
【0004】
特許文献1に記載の技術では、寝具上の就寝者の離床などを非接触で検出することができるから、患者にストレスを与えないという利点を有している。また、特許文献1には、移動可能なスタンドに距離センサを設けることが可能であり、必要なときに必要な場所に設置できる旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−290154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1には、監視領域がベッドの上に設定されていることは記載されているが、監視領域をどのようにして設定するかについてはとくに記載されていない。すなわち、ベッドの上で監視領域を自動的に設定することはできない。とくに、スタンドを用いることにより可動にした場合には、対象点を適切に設定するように調節することは容易ではない。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ベッドを基準にして監視すべき領域を自動的に検出することにより、監視対象の人の動作を正確かつ再現性よく検出することを可能にした監視装置、および監視装置の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、画素値が物体までの距離値である距離画像を生成するとともに視野領域に監視対象であるベッドの全体が含まれる距離画像センサと、距離画像を用いてベッドの位置を抽出するベッド認識部と、距離画像のうちベッド認識部により認識したベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占有する領域を検出する人認識部と、ベッド認識部により検出したベッドと人認識部により検出した人の領域との組み合わせによりベッドに対する人の動作を判別する動作判定部と、動作判定部による判定結果を報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0009】
ベッド認識部は、ベッドを置いた床面に対して適宜高さ以上である高さの度数分布をベッドの長手方向および短手方向においてそれぞれ求め、度数が適宜の閾値を横切る位置を、ベッドの長手方向および短手方向における端部の位置として検出するのが望ましい。
【0010】
この場合、ベッド認識部は、ベッドの長手方向および短手方向における端部に囲まれた矩形の範囲内をベッドの範囲内とし、ベッドの範囲内の領域をベッドの長手方向において複数の分割領域に分割し、分割領域ごとに高さに関する代表値を求め、さらに代表値から所定のオフセット値を減算した値を、ベッドに関して分割領域ごとの基準の高さに用いるのが望ましい。
【0011】
さらに、ベッド認識部は、分割領域の代表値として、分割領域ごとの高さの平均値と最頻値との一方を用いるのが望ましい。
【0012】
ベッド認識部は、分割領域の代表値に上限値を設けてあり、代表値が上限値を超える場合はこの代表値を採用しないことが望ましい。
【0013】
あるいはまた、ベッド認識部は、分割領域の代表値に対する高さ閾値を設けてあり、所定個数以上の分割領域において代表値が高さ閾値を超える場合に、ベッドの位置が異常であると判断することが望ましい。
【0014】
ベッド認識部は、ベッドの位置を抽出した直後に、ベッドの範囲内であって分割領域の基準の高さに対して規定の除外閾値よりも上方に位置する物体の存在範囲を、人認識部において人を検出する領域から除外するマスク領域として記憶することが好ましい。
【0015】
人認識部は、ベッド認識部が検出した分割領域ごとの基準の高さに対して上方に所定距離だけ離れた検知面を少なくとも1個設定し、検知面を横切る物体が検出されると当該検知面について規定したベッドの範囲内での人の動作であると判定するのが望ましい。
【0016】
人認識部は、ベッド認識部が検出したベッドの範囲外においてベッドを置いた床から所定高さの倒れ閾値を設定し、ベッドの範囲外において倒れ閾値より高い位置に物体が検出されるとベッドの範囲外に人が存在すると判定する構成を採用してもよい。
【0017】
人認識部は、ベッド認識部が検出したベッドの範囲外における背景画像を記憶し、その後に得られる画像について背景画像に対する変化が生じた領域の面積が規定の閾値であるときにベッドの範囲外に人が存在すると判定してもよい。
【0018】
この場合、人認識部は、検知面として、人のベッドの上での臥床の状態を検知する臥床検知面と、人がベッドの上での起き上がりの状態を検知する起き上がり検知面とを有し、人が臥床検知面と起き上がり検知面とを横切るときに、臥床検知面が切り取る面積に対して起き上がり検知面が切り取る面積の比率を求め、この比率が所定の閾値以上であるときに起き上がりの状態と判定するのが望ましい。
【0019】
あるいはまた、人認識部は、検知面として、人のベッドの上での臥床の状態を検知する臥床検知面と、人がベッドの上での立ち上がりの状態を検知する起立検知面とを有し、人が臥床検知面と起立検知面とを横切るときに、臥床検知面が切り取る面積に対して起立検知面が切り取る面積の比率を求め、この比率が所定の閾値以上であるときに立ち上がりの状態と判定するのが望ましい。
【0020】
動作判定部は、ベッドの長手方向および短手方向の端部に対して人が占める領域が交差しているときに、ベッドに人が腰を掛けている状態と判定することが望ましい。
【0021】
動作判定部は、ベッドの長手方向および短手方向の端部において人が占める領域がベッドの範囲内と範囲外とにまたがっており、かつ人が占める領域の面積に対してベッドの範囲外において人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲内であれば、ベッドに人が腰を掛けている状態と判定するようにしてもよい。
【0022】
動作判定部は、ベッドに落下防止のための柵を設けている場合に、柵の位置をあらかじめ指定可能であり、柵に対して人が占める領域が交差しているときに、柵を人が乗り越えている状態と判定することが望ましい。
【0023】
動作判定部は、ベッドに落下防止のための柵を設けている場合に、柵の位置をあらかじめ指定可能であり、人が占める領域が柵に対してベッドの範囲内と範囲外とにまたがっており、かつ人が占める領域の面積に対してベッドの範囲外において人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲を超えているときに、柵を人が乗り越えている状態と判定するようにしてもよい。
【0024】
動作判定部は、ベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占める領域の面積に対してベッドの範囲外において人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲を超えるときに離床を開始したと判定することが望ましい。
【0025】
動作判定部は、ベッドの範囲外においてベッドを置いた床面に対して規定の高さ以下の物体が検出される状態が規定の判定時間継続するときに、人が転倒している状態と判定することが望ましい。
【0026】
動作判定部は、ベッドの範囲内と範囲外とにおいて検出される人の代表点の位置を追跡し、位置の移動が不連続であるときには人の移動と判定しないことが望ましい。
【0027】
動作判定部は、人の代表点の位置を追跡する際に、ベッドの範囲内を起点とする場合に人の行動と判定し、ベッドの範囲外を起点とする場合であってベッドの範囲内に移動した後にベッドの範囲内である状態の継続時間が規定時間に達すると追跡の起点をベッドの範囲内に更新することが望ましい。
【0028】
報知部は、動作判定部の判定結果に加えて人が操作する操作装置からの入力を受け付け、動作判定部による判定結果と操作装置による入力との組み合わせにより、動作判定部による判定結果の報知の有無を切り換える構成を採用することができる。
【0029】
距離画像センサは、距離画像について規定された座標系をベッドを置いた空間の座標系に変換する機能を備えることが望ましい。
【0030】
報知部は、人の動作と報知内容とを対応付ける機能を備えることが望ましい。
【0031】
報知部は、別に設けた受信装置に報知内容を通知する通信機能を備えることが望ましい。
【0032】
距離画像センサは、距離画像とともに濃淡画像を生成する機能を有し、報知部は人の動作の報知後に距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を出力することが望ましい。
【0033】
動作判定部は、人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、報知部は、距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における濃淡画像を画像記憶部および距離画像センサから他装置に伝送する通信処理部とを備えることが望ましい。
【0034】
また、動作判定部は、人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、報知部は、距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する着目画像記憶部とを備える構成を採用してもよい。
【0035】
あるいはまた、動作判定部は、人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、報知部は、距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する着目画像記憶部と、特定動作検知部が人の特定の動作を検知したことを他装置に通知する通信処理部とを備える構成を採用してもよい。
【0036】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、画素値が物体までの距離値である距離画像を生成するとともに視野領域に監視対象であるベッドの全体が含まれる距離画像センサから得られた距離画像を用いてベッドの位置を抽出するベッド認識部と、距離画像のうちベッド認識部により認識したベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占有する領域を検出する人認識部と、ベッド認識部により検出したベッドと人認識部により検出した人の領域との組み合わせによりベッドに対する人の動作を判別する動作判定部と、動作判定部による判定結果を報知する報知部として機能させるものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の構成によれば、ベッドの上で監視すべき領域を自動的に検出するから、ベッドの範囲内と範囲外とを分離して、監視対象である人の動作を正確かつ再現性よく検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の全体構成を示すブロック図である。
【図2】(A)は同上の使用例を示す斜視図、(B)は同上の構成例を示す斜視図である。
【図3】同上に用いる距離画像センサを示すブロック図である。
【図4】同上における座標変換の原理説明図である。
【図5】同上における座標変換の原理説明図である。
【図6】同上の他の使用例を示す斜視図である。
【図7】同上におけるベッドの端部を検出する動作の説明図である。
【図8】同上において視野領域が適正でない場合の動作説明図である。
【図9】(A)は同上における分割領域の説明図、(B)は同上におけるベッド面の説明図である。
【図10】同上の動作説明図である。
【図11】同上の動作説明図である。
【図12】同上の動作説明図である。
【図13】同上の動作説明図である。
【図14】同上においてベッドに物体が重なる例を示す斜視図である。
【図15】同上においてマスク領域の設定例を示す動作説明図である。
【図16】同上においてベッドに物体が重なる例を示し、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図17】同上における検知面の設定例を示す図である。
【図18】同上の動作説明図である。
【図19】同上の動作説明図である。
【図20】同上の動作説明図である。
【図21】同上の動作説明図である。
【図22】同上の動作説明図である。
【図23】同上の他の構成例を示すブロック図である。
【図24】同上のさらに他の構成例を示すブロック図である。
【図25】同上の別の構成例を示すブロック図である。
【図26】同上においてベッドサイド端末を配置した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に説明する監視装置の全体構成を説明する。本実施形態の監視装置では、図2に示すように、ベッド30の全体を視野に含む距離画像を撮像する距離画像センサ10を用いる。距離画像は画素値を距離値とした画像であり、距離画像を生成する技術は種々知られている。
【0040】
たとえば、パッシブ型の距離画像センサとしては複数台の撮像装置の視差に基づいて物体までの距離を求めるステレオ画像法が知られている。また、アクティブ型の距離画像センサとしては、三角測量法の原理に基づいて物体までの距離を求める光切断法、光を投光し物体での反射光を受光するまでの時間を計測する飛行時間法が広く採用されている。また、空間位相の異なる複数種類の光パターンを投光し、物体の表面に形成された光パターンの位置関係から物体の表面の3次元形状を求める距離画像センサも知られている。
【0041】
以下に説明する実施形態では、距離画像を生成する技術についてとくに制限はないが、飛行時間法(Time Of Flight)による距離画像センサを用いる場合を例として説明する。以下では、飛行時間法を「TOF法」と略称する。TOF法を用いる距離画像センサの構成は種々知られている。ここでは、光の強度を一定周期の変調信号で変調した強度変調光を対象空間に投光し、対象空間に存在する物体で反射された強度変調光が受光されるまでの時間を、強度変調光の投受光の位相差として検出し、この位相差を物体までの距離に換算する構成を採用する。
【0042】
対象空間に投光する光は、多くの物体を透過することなく物体の表面で反射され、かつ人に知覚されない光が望ましい。そのため、投光する光には近赤外線を用いるのが望ましい。ただし、撮像領域を調節する場合のように、人に知覚されるほうが望ましい場合には可視光を用いることも可能である。
【0043】
強度変調光の波形は、正弦波を想定しているが、三角波、鋸歯状波、方形波などを用いることができる。正弦波、三角波、鋸歯状波を用いる場合には強度変調光の周期を一定周期とする。なお、方形波を用いる場合に、強度変調光の周期を一定周期とするほか、オン期間(発光源の投光期間)とオフ期間(発光源の非投光期間)との比率を乱数的に変化させる技術を採用することも可能である。すなわち、オン期間とオフ期間とに対して十分に長い時間において、オン期間の生じる確率が50%になるようにオン期間とオフ期間とを不規則に変化させ、前記十分に長い時間において累積した受光量を用いてもよい。
【0044】
また、強度変調光を一定周期とする場合、たとえば、投光する光を20MHzの変調信号により変調し、10000周期程度の受光量を累積することによりショットノイズの影響を軽減させる。オン期間とオフ期間とを乱数的に変化させる場合にも、たとえば、単位期間を20MHzの1周期に相当する期間(5×10−8s)とし、単位期間の数倍程度の範囲でオン期間とオフ期間とを変化させ、単位期間の10000倍程度の期間の受光量を累積する。この動作により、累積後の受光量は、一定周期の強度変調光を用いて受光量を累積した場合と同様に扱うことができる。
【0045】
物体で反射された強度変調光は、複数個の画素が2次元に配列された撮像装置により受光する。撮像装置は、濃淡画像を撮像するため撮像素子と、撮像素子の受光面に光が入射する範囲を制限する受光光学系とを備える。撮像素子は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサとして提供されている濃淡画像を撮像する周知構成の撮像素子を用いることができるが、距離画像センサに適する構造を有するように専用に設計された撮像素子を用いることが望ましい。
【0046】
以下では、理解を助けるために距離画像センサの一例として下記構成を想定して説明するが、この構成は本発明を限定する趣旨ではなく、強度変調光の変調波形、撮像素子の構成、撮像素子の制御などに関して、周知の種々の距離画像センサに提供された構成を用いることができる。
【0047】
以下の説明で用いる距離画像センサ10は、図3に示すように、光を対象空間に投光する投光装置11と、対象空間からの光を受光する撮像装置12とを備える。投光装置11は、発光ダイオードやレーザダイオードのように入力の瞬時値に比例した光出力が得られる発光素子13と、発光素子13から出射した光を対象空間の範囲に投光させる投光光学系14とを備える。投光装置11は、光出力を確保するために適数個の発光素子13を備える。また、撮像装置12は、上述した撮像素子15と、撮像素子15の視野を決める受光光学系16とを備える。
【0048】
発光素子13から出射された強度変調光は投光光学系14を通して対象空間に投光される。撮像素子15は、受光光学系16を通して対象空間からの光を受光する。投光光学系14と受光光学系16とは、投受光の方向を平行にし互いに近接して配置してある。ここに、投光光学系14と受光光学系16との距離は視野領域に対して実質的に無視することができるものとする。
【0049】
距離画像センサ10は、発光素子13から強度変調光を出射させるために発光素子13に与える変調信号を生成する変調信号生成部17を備える。また、距離画像センサ10は、撮像素子15が対象空間から受光するタイミングを制御するために、撮像素子15での受光タイミングを規定する受光タイミング信号を変調信号から生成するタイミング制御部18を備える。撮像素子15で得られた受光量に相当する電荷は撮像素子15から読み出されて演算処理部19に入力される。演算処理部19は、受光タイミングと受光量との関係から対象空間に存在する物体までの距離を求める。
【0050】
変調信号生成部17は、出力電圧が一定周波数(たとえば、20MHz)の正弦波形で変化する変調信号を生成する。発光素子13はこの変調信号により駆動され、光出力が正弦波状に変化する強度変調光が発光素子13から出射される。
【0051】
本実施形態において用いる撮像素子15は、電子シャッタの技術を用いることにより、受光タイミング信号に同期する期間にのみ受光強度に応じた電荷を生成する。また、生成された電荷は、遮光された蓄積領域に転送され、蓄積領域において変調信号の複数周期(たとえば、10000周期)に相当する蓄積期間に蓄積された後、撮像素子15の外部に受光出力として取り出される。
【0052】
タイミング制御部18では、変調信号に同期する受光タイミング信号を生成する。ここでは、タイミング制御部18が、変調信号の異なる4位相ごとに一定時間幅の受光期間を有した4種類の受光タイミング信号を生成する。また、上述した蓄積期間ごとに4種類の受光タイミング信号から選択した1種類の受光タイミング信号を撮像素子15に与える。
【0053】
すなわち、1回の蓄積期間において1種類の受光タイミング信号を撮像素子15に与えることにより、変調信号の特定の位相期間に対応する受光期間における電荷を撮像素子15の各画素で生成する。蓄積後の電荷は、受光出力として撮像素子15から取り出される。蓄積期間ごとに異なる各受光タイミング信号を撮像素子15に与え、撮像素子15で生成された電荷を受光出力として取り出す動作を繰り返すと、4回の蓄積期間で4種類の受光タイミング信号に対応する受光出力が撮像素子15から得られる。
【0054】
いま、4種類の受光タイミング信号が、変調信号の1周期において90度ずつ異なる位相に設定され、各受光タイミング信号に対応して撮像素子15から出力された受光出力(電荷量)が、それぞれA0,A1,A2,A3であったとする。このとき、三角関数の関係を用いると、強度変調光の投光時と受光時との位相差ψ〔rad〕は、下式の形式で表すことができる。
ψ=(A0−A2)/(A1−A3)
変調信号の周波数は一定であるから、位相差ψを投光から受光までの時間差に換算することができ、光速は既知であるから、時間差が求まれば物体までの距離を求めることができる。
【0055】
すなわち、4種類の受光出力(電荷量)A0〜A3により物体までの距離を求めることができる。なお、受光期間は、各画素において適正な受光量が得られるように、適宜に設定することができる(たとえば、変調信号の4分の1周期に相当する受光期間を用いることが可能である)。各受光期間の時間幅は互いに等しくすることが必要である。
【0056】
演算処理部19では、受光出力(電荷量)A0〜A3に基づいて位相差ψを求め、距離に換算する上述の処理のほか、以下の実施形態において説明する処理も行う。演算処理部19はマイコン、DSP、FPGAなどから選択されるデジタル信号処理装置を用いて構成され、上述した処理はデジタル信号処理装置においてプログラムを実行することにより実現される。また、演算処理部19だけではなく、発光素子13および撮像素子15を除く構成は、上述したデジタル信号処理装置を用いて実現可能である。デジタル信号処理装置は、1個だけ用いることが可能であるが、少なくとも距離画像センサ10に用いる機能と、以下に説明する機能とは、異なるデジタル信号処理装置に処理を振り分けることが好ましい。また、さらに多くのデジタル信号処理装置を用いることも可能である。
【0057】
また、上述の動作例では、4種類の受光タイミング信号を用いているが、3種類の受光タイミング信号でも位相差ψを求めることができ、環境光ないし周囲光が存在しない環境下では、2種類の受光タイミング信号でも位相差ψを求めることが可能である。
【0058】
さらに、上述した動作では、1画素について1種類の受光タイミング信号に対応する電荷を蓄積しているから、4種類の受光出力(電荷量)A0〜A3を撮像素子15から取り出すために4回の蓄積期間が必要である。これに対して、1画素について2種類の受光タイミング信号に対応する電荷を蓄積すれば、撮像素子15から2種類の受光タイミング信号に対応した受光出力を1回で読み出すことが可能になる。同様に、1画素について4種類の受光タイミング信号に対応する電荷を蓄積可能に構成すれば、4種類の受光タイミング信号に対応する受光出力を1回で読み出すことが可能になる。
【0059】
上述した距離画像センサ10は、対象空間からの光を受光するための受光素子として複数個の画素が2次元配列された撮像素子を用いているから、各画素の画素値として距離値を求めることにより距離画像が生成されることになる。すなわち、撮像素子の受光面が距離画像センサ10の視野領域を投影する仮想の投影面になる。
【0060】
上述した距離画像センサ10は、対象空間に発光素子13から投光し撮像素子15の視野領域を対象空間として撮像するから、対象空間の形状は、距離画像センサ10を頂点として距離画像センサ10から離れるほど広がる形になる。たとえば、投光光学系14および受光光学系16がそれぞれ光軸の周りに等方的に形成されていると、対象空間の形状は、距離画像センサ10を頂点とする角錐状になる。
【0061】
したがって、上述した仮想の投影面に配列された画素の位置は、距離画像センサ10から対象空間を見込む方向に対応することになり、各画素の画素値は当該方向に存在する物体までの距離を表すことになる。言い換えると、距離画像センサ10(および画像生成手段)により生成された距離画像は、極座標系で物体の位置を表していることになる。このような距離画像を極座標系の距離画像と呼ぶことにする。
【0062】
上述した極座標系の距離画像は、距離画像センサ10からの距離の情報が必要であるときには利便性が高いが、対象空間である実空間の各位置との対応関係がわかりにくく、実空間に存在する物体を基準にした領域を指定するには不便である。したがって、演算処理部19では、極座標系の距離画像から直交座標系の各座標値を有した画像を生成する座標変換を行う。以下では、座標変換を行った後の画像を座標軸別画像と呼ぶ。
【0063】
極座標系の距離画像から座標軸別画像を生成する手順について、図4、図5を参照して説明する。極座標系の距離画像から座標軸別画像を生成するには、まず極座標系の距離画像を直交座標系であるカメラ座標系の3次元画像に変換し、この3次元画像を対象空間に規定した直交座標系であるグローバル座標系の3次元画像に変換する。グローバル座標系の3次元画像が得られると、各座標軸別画像に分解することができる。
【0064】
極座標系の距離画像からカメラ座標系の3次元画像を生成するには、以下の演算を行う。ここに、図4に示すように、撮像素子15の受光面における水平方向と垂直方向とをu方向とv方向とする。撮像素子15と受光光学系16とは、受光光学系16の光軸16Aが撮像素子15の受光面の中心位置の画素を通るように配置する。また、撮像素子15の受光面を受光光学系16の焦点に位置させる。この位置関係において、撮像素子15の受光面の中心位置の画素の座標(単位は、ピクセル)を(uc,vc)、撮像素子15の画素のu方向とv方向とのピッチ(単位は、mm)を(su,sv)とする。さらに、受光光学系16の焦点距離をf[mm]とし、撮像素子15の受光面における各画素の座標(単位はピクセル)の位置(u,v)に対応する方向に存在する物体について受光光学系16の中心から物体までの距離をd[mm]とする。これらの値は、距離画像センサ10において物体までの距離dを各画素の位置に対応付けることにより既知の値になる。
【0065】
物体についてカメラ座標系での座標値(X1,Y1,Z1)を求めると以下のようになる。座標値(X1,Y1,Z1)の各成分の単位はmmである。なお、撮像素子15の受光面に設定した座標系の原点は矩形状である撮像素子15の受光面の1つの角の位置とし、直交座標系の原点は受光光学系16の中心とする。
X1=u1・d/R
Y1=v1・d/R
Z1=f・d/R
ただし、
u1=su(u−uc)
v1=sv(v−vc)
R=(u1+v1+f1/2
ここでは、説明を簡単にするために、受光光学系16の光学歪みの影響は省略している。ただし、光学中心からの距離Rを補正する歪み補正式を用いることにより、光学歪みを補正することができる。
【0066】
上述したように、極座標系の距離画像をカメラ座標系の3次元画像に変換した後に、グローバル座標系への座標変換を行う。距離画像センサ10は、撮像素子15の受光面における垂直方向(すなわち、v方向)が室内の壁面51および床面52に平行になるように配置される。
【0067】
いま、図5(A)のように、距離画像センサ10において受光光学系16の光軸16Aの俯角をθとする。図5(A)において距離画像センサ10の視野角はφで表している。カメラ座標系からグローバル座標系への変換には、図5(B)に示すように、カメラ座標系での座標値(X1,Y1,Z1)に対して、Y軸周りで俯角θに相当する回転を行う。これにより、図5(C)のように、室内の壁面51および床面52に直交する座標軸を持つグローバル座標系の3次元画像が生成される。
【0068】
以下では、グローバル座標系での座標値を(X,Y,Z)とする。図示例では、壁51に直交する方向で壁51から離れる向きをX方向の正の向きとし、床52に直交する方向の下向きをZ方向の正の向きとする。また、座標系には右手系を用いる。俯角θに関する座標系の回転は、以下の計算により行う。
X=X1・cos(90°−θ)+Z1・sin(90°−θ)
Y=Y1
Z=−X1・sin(90°−θ)+Z1・cos(90°−θ)
座標軸別画像は、グローバル座標系にマッピングを行った画像そのものではなく、距離画像の各画素の座標位置(u,v)にX値とY値とZ値とをそれぞれ個別に対応付けた画像である。すなわち、各座標位置(u,v)に、X(u,v)、Y(u,v)、Z(u,v)をそれぞれ対応付けた画像であり、1枚の極座標系の距離画像に対して3枚の座標軸別画像が生成される。極座標系の距離画像から座標軸別画像を得るには、上述の計算を行ってもよいが、極座標系の距離画像から座標値(X,Y,Z)に変換するテーブルを用意しておけば、処理負荷を軽減することができる。
【0069】
以下では、座標軸別画像のうちX値を画素値とする画像をX画像、Y値を画素値とする画像をY画像、Z値を画素値とする画像をZ画像と呼ぶ。したがって、座標変換を行うテーブルとしては、X画像に変換するX変換テーブルと、Y画像に変換するY変換テーブルと、Z画像に変換するZ変換テーブルとの3種類が必要になる。座標軸別画像を使用する技術は後述する。
【0070】
上述したX画像とY画像とZ画像とは、デジタル信号処理装置のメモリに格納され、実空間である対象空間に対応する3次元の仮想空間を表している。したがって、仮想空間における条件を設定すれば、対象空間において条件を設定したことと等価になる。
【0071】
距離画像センサ10において生成されたX画像とY画像とZ画像とは、行動監視処理部20に与えられる。行動監視処理部20は、監視する対象者40に関してベッド30に関連した動作を分類する。本実施形態では、病院の病室や高齢者施設や介護施設における室内に配置されたベッド30を監視する場合を想定している。分類する動作は後述する。
【0072】
対象者40の行動を上述のように分類するには、ベッド30の上における対象者40の存否にかかわらず、ベッド30を抽出する必要がある。また、ベッド30の上の対象者40を監視するために、距離画像センサ10はベッド30を上方から見下ろす位置に配置される。この条件を満たすために、距離画像センサ10を天井に配置することが可能であるが、既存の室内において天井に距離画像センサ10を設置する工事は手間がかかるという問題がある。
【0073】
したがって、図2(B)に示すように、床に自立するスタンド31の上端部に距離画像センサ10を取り付けた構成を採用するか、図6に示すように、一端部を壁51に取り付けたアーム32の他端部に距離画像センサ10を取り付けた構成を採用する。図2に示す構成では、キャスタ33を備える台板34の上に支柱板35を取り付けたスタンド31を備え、支柱板35の上端部に距離画像センサ10を取り付けてある。また、支柱板35の中間部に、行動監視処理部20を設けてある。
【0074】
行動監視処理部20は、報知部24(図1、図3参照)を通して室内または室外に監視の内容を報知する。監視の内容を室外に報知する場合には、構内ネットワーク(LAN)やナースコールシステム通信網を用いて通信を行う。たとえば、病院において病室にスタンド31を設置している場合、報知部24の通知を受ける受信装置をナースセンタに設けておくことにより、行動監視処理部20において分類した対象者の行動をナースセンタに設けた受信装置に通知することが可能になる。以下では、ナースセンタに設けた受信装置に通知する意味で、「ナースセンタに通知する」あるいは「ナースセンタに報知する」と言う。
【0075】
上述のようにキャスタ33を備えたスタンド31に、距離画像センサ10および行動監視処理部20を設けることによって可動式になるから、所要の場所に移動させることが可能になる。すなわち、対象者40の行動を監視する必要がない部屋にはスタンド31を持ち込む必要がない。また、対象者40の行動を監視する場合でも、図2(A)のように、ベッド30のヘッドボード36と壁面51との間にスタンド31を配置することができるから、配置場所が問題になることはない。
【0076】
上述の構成から明らかなように、距離画像センサ10はベッド30よりも高い位置に配置される。実際には、距離画像センサ10は、視野領域である対象空間内にベッド30の全体が含まれる程度の高さに配置される。このような高さ位置に配置することにより、人が距離画像センサ10に不用意に触れることを防止でき、距離画像センサ10を人の邪魔にならないように配置することができる。たとえば、病院において対象者(患者)に処置を施す際に、スタンド31が作業の邪魔にならない。しかも、距離画像センサ10は、対象空間に存在する物体までの距離を非接触で検出するから、対象者の行動を妨げることがなく、また、ベッド30の寝心地を妨げることもない。
【0077】
距離画像センサ10は、図2(A)のように、ベッド30を俯瞰することができるように、光軸16A(図5参照)を斜め下向きにして配置される。また、この状態において距離画像センサ10の視野領域にベッド30の上面の全体が含まれるように、光軸16Aの傾き角度(俯角θ)が設定される。ここで、光軸16Aが斜め下向きであることから、ベッド30のヘッドボード側では、ベッド30の上面までの距離は相対的に小さくなり、ベッド30のフットボード側では、ベッド30の上面までの距離が相対的に大きくなる。
【0078】
以下、行動監視処理部20について、さらに詳しく説明する。上述したように、対象者40の行動を分類するには、距離画像センサ20が出力した距離画像からベッド30を抽出する必要がある。したがって、行動監視処理部20は、距離画像に含まれる情報を用いてベッド30を認識するベッド認識部21を備える。また、ベッド認識部21によりベッド30が認識されるから、距離画像に含まれる情報とベッド30との相対関係を用いることによって、対象空間における人の存否を認識することが可能になる。
【0079】
行動監視処理部20には、ベッド認識部21が認識したベッド30と他の物体との関係から人の存否を認識する人認識部22が設けられる。さらに、行動監視処理部20は、ベッド認識部21による認識と人認識部22による認識とを総合することにより、対象者の行動を分類し、必要に応じて行動に対する報知を行う動作判定部23を備える。
【0080】
ベッド認識部21では、まず、ベッド30の位置を認識するために、ベッド30を平面視した場合のベッド30の外周を検出する。一般的なベッド30は平面視において四角形状であるから、ベッド認識部21では、ベッド30の4辺を抽出することにより、ベッド30の位置を認識する。
【0081】
ここでは、図5(C)のように、ベッド30の長手方向が壁51に対して直交する方向である場合を想定してベッド30の4辺を抽出するためにX画像とY画像とを用いる。ただし、この関係は一例であって、ベッド30を配置する向きと距離画像センサ10との位置関係は、図5(C)の関係であることは必須ではなく、距離画像センサ10とベッド30との位置関係に応じて、座標の変換方法を変えることが可能である。また、必要に応じて以下に説明する条件を変更することも可能である。
【0082】
ベッド30の4辺を抽出するには、X画像を用いてX値の度数分布を求め、Y画像を用いてY値の度数分布を求める。また、ベッド30以外の物体領域が極力抽出されないように、Z値には適宜の閾値(たとえば、床52の高さから15cm以上)を規定しておく。この場合、X値の度数分布は、たとえば図7(A)のようになり、Y値の度数分布は、たとえば図7(B)のようになる。
【0083】
すなわち、ベッド30の上面が平面であるとすると、ベッド30の短手方向に同じX値が並び、ベッド30の長手方向に同じY値が並ぶ。一方、ベッド30の端部では度数が急に減少するから、度数を適宜の閾値Thx,Thyと比較すれば、度数が閾値Thx,Thyを横切るときのX値,Y値がベッド30の各端部の候補になると考えられる。
【0084】
ここで、ベッド30以外で床52から高さを有するキャビネット、椅子、医療機器などは、その領域面積がベッド30に比べて小さいから、ベッド30の部分よりも度数が小さくなる(図7(B)のYi未満、あるいはYsを超える部分を参照)。したがって、度数に対して適宜の閾値Thx,Thyを設定することにより、キャビネット、椅子、医療機器などのベッド30以外の物品を除去することができる。
【0085】
加えて、ベッド30の端部抽出が正しく行えたかを以下の判定にて実施する。X値については、閾値Thx以上である範囲をベッド30の長手方向の寸法について設定した許容範囲と比較し、閾値Thx以上の範囲が許容範囲内であれば、閾値Thx以上の範囲の最大値Xsおよび最小値Xiをベッド30の長手方向の端部の位置とする。
【0086】
Y値については、閾値Thy以上である範囲をベッド30の短手方向の寸法について設定した許容範囲と比較し、閾値Thy以上の範囲が許容範囲内であれば、閾値Thy以上の範囲の最大値Ysおよび最小値Yiをベッド30の短手方向の端部の位置とする。
【0087】
許容範囲は、ベッド30の既知の寸法に対し、適宜の幅を持たせることにより設定される。たとえば、長手方向の寸法がL1、短手方向の寸法がW1であるベッド30に対して、長手方向については(L1±ΔL)を許容範囲とし、短手方向については(W1±ΔW)を許容範囲とすればよい。ΔL,ΔWは、距離画像センサ10の測定誤差や画素数を考慮して、たとえば10cmなどの適宜寸法に設定される。
【0088】
さらに、後述するように、対象者40のベッド30に対して出入りする動作を検出する際には、Z方向への平行投影画像を用いベッド30を矩形状として扱う。そのため、ベッド30の端部を求めた後には、ベッド30の各辺を直線とみなし、上述のようにして求めた端部に外接する矩形の内側の領域をベッド30の範囲内の領域とする。すなわち、長手方向と短手方向との端部に囲まれた矩形の領域をベッド30の範囲内とする。
【0089】
ベッド30の端部を求める処理手順をまとめると以下のようになる。まず、Z画像においてZ値が床面に対して適宜の閾値以上となる座標位置(u,v)を求める。次に、求めた座標位置(u,v)のX値についてX画像を用いて度数分布を求め、求めた座標位置(u,v)のY値についてY画像から度数分布を求める。さらに、X値の度数分布を閾値Thxと比較し、Y値の度数分布を閾値Thyと比較する。
【0090】
その後、X値の度数が閾値Thx以上となる範囲(Xs−Xi)をベッド30の長手方向の許容範囲(L1±ΔL)と比較し、Y値の度数が閾値Thy以上になる範囲(Ys−Yi)をベッド30の短手方向の許容範囲(W1±ΔW)と比較する。X値の度数が閾値Thx以上となる範囲が許容範囲(L1±ΔL)に含まれていれば閾値Thxを横切るX値(Xs,Xi)をベッド30の長手方向の端部のX座標とする。また、Y値の度数が閾値Thy以上となる範囲が許容範囲(W1±ΔW)に含まれていれば閾値Thyを横切るY値(Ys,Yi)をベッド30の短手方向の端部のY値とする。
【0091】
なお、上述の例では、度数が閾値Thx,Thy以上になる範囲(Xs−Xi),(Ys−Yi)を求めた後に許容範囲(L1±ΔL),(W1±ΔW)と比較しているが、以下の手順を採用してもよい。
【0092】
まず、X値の度数分布についてX値を最小値から増加させる方向に変化させるとともに、度数を閾値Thxと比較し、度数が閾値Thx以上になるX値が所定値以上連続すればベッド30の長手方向の一方の端点とする。また、X値を最大値から減少させる方向に変化させるとともに、度数を閾値Thxと比較し、度数が閾値Thx以上になるX値が所定値以上連続すればベッド30の長手方向の他方の端点とする。連続の判断は、許容範囲(L1±ΔL)とするのが望ましいが、より小さい値を用いることも可能である。このようにしてベッド30の長手方向の両端の位置を決定することができる。ベッド30の短手方向の両端の位置を決定する手順も同様であり、X値に代えてY値を用い、閾値Thxに代えて閾値Thyを用いればよい。
【0093】
上述したように、Z値が規定の閾値以下(床52から遠い)になる抽出画素が占める領域は、ベッド30の領域に対してベッド30付近の他の物品の領域のほうが小さくなる。この条件に基づいて、画素のX値,Y値のそれぞれの度数を利用してベッド30の端部を求めるので、ベッド30付近の他の物品に影響されることなく、ベッド30の端部を精度よく検出することができる。また、上述した処理において条件を満たす画素が存在しない場合には、距離画像センサ10の視野領域からベッド30がずれている可能性があるから、距離画像センサ10の位置設定が不適切であることを報知部24により報知するのが望ましい。
【0094】
ところで、距離画像センサ10の視野領域にベッド30の各端部が含まれていても、視野領域の周部に余裕がなければ対象者40の行動を判断することができない。そこで、距離画像センサ10の視野領域において、ベッド30の周囲にベッド30以外の領域が含まれることを保証するために以下の判定を行う。
Xmax−Xs≧Mgx1
Xi−Xmin≧Mgx2
Ymax−Ys≧Mgy1
Yi−Ymin≧Mgy2
ここに、Xmaxは視野領域のX方向におけるX値の最大値、Xminは視野領域のX方向におけるX値の最小値、Ymaxは視野領域のY方向におけるY値の最大値、Yminは視野領域のY方向におけるY値の最小値である。また、ベッド30の周囲に設定したい余裕寸法をMgx1,Mgx2,Mgy1,Mgy2である。この場合、余裕寸法Mgx1,Mgx2,Mgy1,Mgy2は、室内におけるベッド30の配置やベッド30に対する距離画像センサ30の配置によって異なる値になるから、図示しない設定手段により設定可能であることが望ましい。なお、本実施形態の場合、距離画像センサ10を設けたスタンド31をベッド30のヘッドボードと壁面との間に配置しているから(図1参照)、ヘッドボード側の余裕寸法Mg2は必ずしも用いなくてもよい。
【0095】
上述の判定の条件が1つでも満たされない場合には、図8のように視野範囲Fvがベッド30からずれていると判定し、距離画像センサ10の位置設定が不適切であることを報知部24により報知するのが望ましい。図8に示す例では、ベッド30の長手方向の一方の端部が視野領域Fvに含まれないからXmax=Xsになり、またベッド30の短手方向の一方の端部が視野領域Fvに含まれないからYmin=Yiになっている。したがって、Xmax−Xs≧Mgx1という条件と、Yi−Ymin≧Mgy2という条件が満たされないことになる。このような判断を行うことにより、ベッド30に対する対象者40の出入りの行動を監視することが可能になる。
【0096】
上述のようにベッド認識部21においてベッド30の位置が認識されると、次に、ベッド30の上面の位置を検出する。以下では、ベッド30の上面をベッド面と呼ぶ。ベッド面の高さを検出するにあたっては、ベッド30の上に対象者40に寝ている状態(この状態を「臥床」という)を想定する。対象者40が臥床している状態では、ベッド30の上に対象者40および掛け布団のような寝具が載っている。上述したグローバル座標系では、実空間の下向きをZ軸の正の向きにとっているが、実空間について高さに関する説明を行う場合には、上向きを値が増加する向きにとる。すなわち、Z方向においてZ値が増加する向きを、高さ方向において高さが減少する向きとして扱う。
【0097】
ベッド認識部21では、図9(A)のように、ベッド30の範囲内を長手方向において規定個数(たとえば、10)の分割領域37に分割する。分割領域37の個数はベッド30の長手方向の寸法にもよるが、1つの分割領域37が10〜20cm程度の幅になるように個数を定める。次に各分割領域37の高さに関する代表値を求める。代表値には、平均値と最頻値とのいずれかを用いればよい。
【0098】
平均値を用いる場合は、Z画像から各分割領域37に属する位置(u,v)を求め、分割領域37ごとのZ値の平均値を求める。一方、最頻値を用いる場合には、Z画像について各分割領域37に属する位置(u,v)を求め、分割領域37ごとのZ値の度数分布を求め、さらに、求めた度数分布から最頻値を求める。分割領域37の場所にもよるが、この度数分布では、ベッド面の度数あるいは寝具の上面の度数が高くなり、ついで対象者40に相当する度数が高くなると考えられる。これは、ベッド30の上で、ベッド面あるいは寝具の占める領域(面積)のほうが対象者40の占める領域よりも大きいという知見に基づいている。
【0099】
各分割領域37から上述のようにして高さに関する代表値を求めると、図9(B)の実線のように代表値Vtが分布することになる。また、代表値Vtから人の厚みを考慮したオフセット値を減算して(Z値の場合は加算して)ベッド面の高さとして用いる。人の厚みは、個人差があるが、たとえば20cmなどの値を用い、その半分の値をオフセット値に用いる。オフセット値については、特段の条件はないから、代表値からオフセット値を減算した値が多くの分割領域37においてベッド面の高さとなるように適宜に設定する。図9(B)の破線は、代表値Vtからオフセット値を減算した値の例を示している。このようにして分割領域37ごとに求めたベッド面の高さが、分割領域37ごとの基準の高さになる。
【0100】
以後の処理では、分割領域37ごとのベッド面の集合を、ベッド30の全体におけるベッド面として扱う。また、ベッド30の全体ではなく長手方向に分割した分割領域37を用いるから、ベッド30がリクライニング式であってベッド面が平面ではない場合にも、ベッド30の部分ごとに求めたベッド面を用いることにより、対象者40と分離することが可能になる。
【0101】
ところで、上述した例では、ベッド30の上の対象者40が臥床の状態である場合を想定してベッド面の高さを求めているが、図10のように、対象者40がベッド30の上で起き上がっている場合、上述のようにして求めたベッド面の高さ(図10においてVhで表している)は適切と言えない。したがって、分割領域37ごとに高さに上限値を設け、ベッド面の高さVhとして求めた値が上限値を超える場合には、ベッド面Vhの高さとして採用できないことを報知部24により報知する。
【0102】
ここに、ベッド30におけるベッド面の計測は、システムの使用開始を指示した直後に行われるので、報知部24から報知することによって、適切な対応を行うことが可能になる。なお、システムの使用開始の指示は、運転開始のスイッチ(図示せず)を投入する操作などを意味する。また、適切な対応とは、対象者40を正しい位置で臥床の状態にした後、システムの使用開始の指示を再度与えることを意味している。
【0103】
上述したベッド30は、ベッド面の高さが固定である場合を想定しているが、看護や介護の作業を容易にするために、ベッド面の高さを変更することができる昇降式のベッド30も提供されている。昇降式のベッド30では、看護や介護の作業後にベッド面を下げるのを忘れていると、ベッド面が通常よりも高くなるから、対象者40がベッド30から離床する際には足が床に届きにくくなり、対象者40がベッド30から落下したときには衝撃が大きくなる。したがって、作業後にはベッド面を必ず下げる必要がある。
【0104】
ベッド30が昇降式である場合には、図11のように、看護や介護の作業中にはベッド面の下限が所定の高さ閾値Thhを超えると考えられるから、高さ閾値Thhを適宜に設定することにより、ベッド面が上昇していることを検出することができる。すなわち、すべての分割領域37について求めたベッド面の高さが、高さ閾値Thhを超えている場合には、ベッド面が上昇したままであると判断して報知部24から報知する。
【0105】
ここにおいて、介護や看護の作業中には、対象者40の監視は不要であるから、システムの動作を一旦停止させ、作業の終了後にシステムの動作を再開する。したがって、作業の終了後に、システムの動作を再開する指示を与えたときに、ベッド面の高さの異常が報知されることになり、ベッド面の下げ忘れを防止することができる。
【0106】
また、図12のように、ベッド30の上にテーブル38を出した場合に、テーブル38をしまい忘れる場合がある。これに対して、テーブル38に相当する分割領域37において高さ閾値Thhをテーブル38の高さが検出できるように設定しておけば、テーブル38のしまい忘れを報知部24により報知することが可能になる。
【0107】
ベッド30の下げ忘れとテーブル38のしまい忘れとの両方を検出する場合には、高さ閾値Thhを適宜に定めるとともに、所定個数以上の分割領域37において高さ閾値Thhを超える場合に、報知部24から報知するようにしてもよい。高さ閾値Thhを用いた判定は、ベッド面の計測と同様に、システムの使用開始を開始する指示の直後に行われるから、問題が生じていれば報知部24からただちに報知される。したがって、ベッド30を下げたり、テーブル38を片付けたりするような適正な対応が可能になる。その後は、システムの使用開始の指示を再度与えればよい。
【0108】
ベッド30がリクライニングの機能を備え、図13のように、対象者40の上半身を起こすことができる場合には、高さ閾値Thhによる判定を下半身側の複数個(図示例では5個)の分割領域37においてのみ行えばよい。距離画像内でのベッド30の位置は既知であるから、たとえば、(Xs+Xi)/2よりもX値が大きくなる分割領域37についてのみ高さ閾値Thhによる判定を行えばよい。このように高さ閾値Thhによる判定を行う範囲を、定式化して自動的に決定することができるから、人手による調整作業が不要である。
【0109】
ところで、ベッド30の周辺には、様々な装置が配置されることがあり、たとえば、図14に示すように、ベッド30の上方に対象者40ではない物体41が重なって配置されていることがある。この種の物体41としては、たとえば、照明スタンド、モニタ装置、種々の医療装置がある。
【0110】
このような物体41がベッド30に重なっている場合、対象者40を検知する領域から除外する必要がある。そのため、看護師あるいは介護士が装置を起動させ、ベッド30の位置をベッド認識部21に認識させる際に、物体41の領域をベッド30の領域から除外する処理も行うことが好ましい。すなわち、距離画像センサ10の視野において、ベッド30に物体41が重複している領域を、図15のように、マスク領域42として除外した状態で記憶しておけばよい。マスク領域42は、人認識部22が対象者40を認識する際には、ベッド30の範囲外の領域として扱うことになり、物体41を対象者40と誤認するのを防止できる。
【0111】
マスク領域42は、ベッド認識部21がベッド30の位置を抽出した直後に設定する。すなわち、ベッド認識部21は、看護師あるいは介護士が装置を操作することにより、ベッド30の位置を認識した直後にマスク領域42の有無を判断する処理を行う。ベッド認識部21は、図16に示すように、ベッド30の範囲内であって分割領域37ごとに求めた基準の高さ(ベッド面の高さ)に対して規定の除外閾値よりも上方に物体41が存在するとき、その物体41の存在範囲をマスク領域42とする。除外閾値は、実状に即して適宜に設定される。このようにして設定されたマスク領域42は、対象者40を認識する際に除外される領域として扱うためにベッド認識部21において記憶される。
【0112】
上述の動作では、分割領域37ごとの基準の高さとしてベッド面の高さを用いているが、ベッド認識部21にベッド30の位置を認識させるときには、対象者40がベッド30に存在するから、後述する臥床検知面Pd(図17参照)を基準の高さに用いることが好ましい。臥床検知面Pdは、対象者40がベッド30の上で対象者40が仰臥している状態における基準の高さである。このように、基準の高さとして臥床検知面Pdを用いると、対象者40の存在する領域をマスク領域42と誤認するのを防止できる。ただし、臥床検知面Pdをベッド面から一定高さに規定している場合は、臥床検知面Pdを基準の高さに用いることと、ベッド面を基準の高さに用いることとは等価である。
【0113】
なお、マスク領域42については大きさを評価し、規定した閾値を超える大きさのマスク領域42が存在する場合には、テーブルなどが置かれた状態と判断する。この場合、対象者40を認識する際の信頼性を保つことができず、また、対象者40が物体41に接触する可能性があるから、マスク領域42を設定する代わりに物体41の設置不良として報知部24から報知することが好ましい。
【0114】
以下では、人認識部22により対象者40を認識する技術について説明する。上述したように、ベッド認識部21ではベッド面を検出しているから、人認識部22はベッド面を基準に用いて複数段階の検知面を設定する。ここでは、ベッド30の上での状態として、臥床の状態、上半身を起こした起き上がりの状態、立ち上がった起立の状態の3状態を想定する。それぞれの状態を検出するには、図17のように、ベッド面Pbとして規定される分割領域37ごとの高さを基準に用いて、臥床検知面Pd、起き上がり検知面Pr、起立検知面Psを設定する。
【0115】
臥床検知面Pd、起き上がり検知面Pr、起立検知面Psは、それぞれベッド面PbをZ方向に所定量だけ変位させて設定してある。すなわち、ベッド面Pbは、分割領域37ごとにZ値が定められているから、臥床検知面Pd、起き上がり検知面Pr、起立検知面Psも分割領域37ごとに上方に所定距離だけ離間させて定められる。また、臥床検知面Pd、起き上がり検知面Pr、起立検知面Psの順にベッド面Pbからの距離が大きくなる。一例を示すと、臥床検知面Pdをベッド面Pbから10cm上方、起き上がり検知面Prをベッド面Pbから30cm上方、起立検知面Psをベッド面Pbから60cm上方などに設定する。臥床検知面Pd、起き上がり検知面Pr、起立検知面Psは、ベッド30の上での人の位置を検出するための閾値として用いる。
【0116】
人認識部22では、ベッド30の領域内において、臥床検知面Pdよりも上方に物体が存在し、起き上がり検知面Prよりも上方に物体が存在しなければ、対象者40が臥床の状態であると判定する。また、起き上がり検知面Prよりも上方に物体が存在し、起立検知面Psよりも上方に物体が存在しなければ、対象者40が上半身を起こした起き上がりの状態と判定する。起き上がり検知面Prはベッド面の上方に設定されるから、適正な起き上がり検知面Prを設定しておけば、寝返りや布団の浮き上がりを起き上がりと判定する誤検知はほとんど生じない。また、起立検知面Psよりも上方に物体が存在する場合には、対象者40がベッド30の上で立ち上がっていると判断される。
【0117】
上述のように、人認識部22では、ベッド面Pbを基準に設定した検知面を用いて対象者40の状態を検知している。この処理は、たとえば、ベッド30に対象者40が居ない状態での画像との差分画像を用いる場合に比較すると処理が単純である上に、背景画像を撮像する手間もかからないという利点がある。また、差分画像を用いた場合に、布団などの物体も差分として検出されるから、対象者40との区別が困難であるが、検知面を用いて対象者40の状態を判定すれば、この問題は生じない。
【0118】
上述の例では、3状態を区別して検出するために、ベッド面Pbの上に3段階の検知面を設定しているが、検知面を3段階に設定することは必須ではなく、1段階または2段階に設定することや、4段階以上の検知面を設定することも可能である。たとえば、システムの使用開始の状態を臥床の状態とする場合には、臥床の状態は必ずしも検知しなくてもよい。すなわち、臥床ではない状態、すなわち、起き上がりの状態や起立の状態を検出できればよく、この場合には2段階の検知面を設定すればよいことになる。
【0119】
また、上述の動作において、検知面に対する物体の高さ位置のみを用いているが、検知面によって切り取った面積を用いることにより、物体の大きさも併せて判断してもよい。たとえば、臥床の状態では、Z画像内において臥床検知面Pdで切り取られる面積は、起き上がり検知面Prと起立検知面Psで切り取られる面積よりも大きい。また、起き上がりの状態では臥床の状態に比較すると、Z画像内において臥床検知面Pdで切り取られる面積が小さくなり、起き上がり検知面Prで切り取られる面積が増加する。このような面積の関係を用いることにより、対象者40の状態(姿勢)をより正確に把握することが可能になる。
【0120】
たとえば、ベッド30の範囲内において、起き上がり検知面Prで切り取る面積について、臥床検知面Pdで切り取る面積に対する比率が所定の閾値以上であれば、起き上がりの状態と判定すればよい。この閾値を適正に設定すれば、対象者40が腕を伸ばして伸びをすることにより起き上がり検知面Prを腕が横切ったとしても、上記比率が閾値よりも小さくなるから、起き上がりの状態として検出されるのを防止することができる。
【0121】
たとえば、図18(A)、図19(A)の白抜きの領域は、それぞれ臥床検知面Pdにおいて対象者40の存在する領域を示し、図18(B)、図19(B)の白抜きの領域は、それぞれ起き上がり検知面Prにおいて対象者40の存在する領域を示している。図18、図19において、(A)図での白抜きの領域の面積をE1、(B)図での白抜きの領域の面積をE2として、比率E2/E1を求め、この比率E2/E1を適宜の閾値と比較すると、起き上がりの状態(図18)とそれ以外の状態(図19)とを区別することができる。
【0122】
同様にして、ベッド30の範囲内において、起立検知面Psで切り取る面積について、臥床検知面Pdで切り取る面積に対する比率が所定の閾値以上であれば、対象者40がベッド30の上で立ち上がっている起立の状態と判定する。対象者40が起き上がりの状態において起立検知面Psを超える部分があったとしても、起立している状態に比べると、起立検知面Psを横切る面積は小さいと考えられるから、起立の状態と起き上がりの状態とを区別することができる。
【0123】
たとえば、図20(A)、図21(A)の白抜きの領域は、それぞれ臥床検知面Pdにおいて対象者40の存在する領域を示し、図20(C)、図21(C)の白抜きの領域は、起立検知面Psにおいて対象者40の存在する領域を示している。なお、図示例では、図20(C)において白抜きの領域はなく、対象者40は存在しない。また、図20(B)、図21(B)の白抜きの領域は、起き上がり検知面Prにおいて対象者40が存在する領域を示している。ここで、図20、図21において、(A)図での白抜きの領域の面積をE1、(C)図での白抜きの領域の面積をE3として、比率E3/E1を求め、この比率E3/E1を適宜の閾値と比較すると、起き上がりの状態(図20)と起立の状態(図21)とを区別することができる。
【0124】
ところで、ベッド30の範囲内の人の状態(姿勢)ではなく、ベッド30の範囲外の人の状態は床面の高さを基準に用いて検出することができる。すなわち、図22に示すように、床52からの高さにより倒れ閾値Thfを定めておき、Z画像においてベッド30の範囲外となる画素が倒れ閾値Thfよりも大きいZ値を持つときに、対象者40の少なくとも一部がベッド30の範囲外に出ていると判定することができる。倒れ閾値Thfは、床52よりも高いがベッド面Pbよりも低い値に設定する。たとえば、床52から10cmに設定すればよい。
【0125】
上述の処理では、ベッド30の範囲外に出ていることを倒れ閾値Thfのみで判定しているが、ベッド30の範囲外では差分画像を併せて用いることにより対象者40がベッド30の範囲外に出ていることを検知してもよい。これには、システムの使用開始時に撮像した距離画像から得られたZ画像を背景画像として記憶しておき、その後に得られるZ画像を背景画像から減算した差分画像を二値化する。
【0126】
システムの使用開始時に、対象者40は臥床の状態であるからベッド30の範囲外には存在していない。そのため、背景画像においてベッド30の範囲外には物体は存在しない。これに対して、対象者40がベッド30の範囲外に出た状態のZ画像を背景画像から減算した画像では、ベッド30の範囲外に物体が存在している。したがって、差分画像を二値化した画像においてベッド30の範囲外の領域において変化した領域の面積(画素数)を規定の閾値と比較し、面積が閾値以上であると、対象者40がベッド30の範囲外に出たと判定することができる。差分画像においてベッド30の範囲外の値は、実質的に床52からの高さに相当するから、二値化の閾値は倒れ閾値Thfを用いればよい。
【0127】
また、システムの使用開始を指示する際に、使用開始を指示する看護師あるいは介護士は、ヘッドボードの近傍の領域に存在すると考えられる。ただし、この領域は対象者40を検出する領域外であり、また、差分画像を二値化したときには床52とともに除去されるので、背景画像に含めても問題は生じない。
【0128】
上述したように、ベッド認識部21によりベッド30の位置が認識され、人認識部22によりベッド30に対する対象者40の姿勢が検出される。すなわち、ベッド30と対象者40とが分離されるから、次に、動作判定部23において、対象者40の動作が分類される。
【0129】
分類する動作としては、対象者40がベッド30の端部に腰を掛けている状態(以下、「腰掛け」という)がある。「腰掛け」は、ベッド30の4辺のいずれかについて、ベッド30の範囲内と範囲外との領域に対象者40が跨って存在している状態として検出する。ベッド認識部21では、ベッド30の範囲内と範囲外との領域を分離することができ、人認識部23では、ベッド30の範囲内と範囲外との領域における人の存在を検出することができる。
【0130】
このことを利用して、ベッド30の範囲内と範囲外とにおいて人の存在領域が連続ないし近接している場合に、同一の人がベッド30の端部に「交差」していると判断する。そして、この場合を「腰掛け」と判定する。ここに、「近接」は、ベッド30の範囲内と範囲外とにおける人の存在領域の輪郭線間の距離を求め、求めた距離が規定した範囲内であることを意味する。輪郭線間の距離はベッド30の着目している辺に直交する方向の複数本の直線上で求めた平均値を用いればよい。
【0131】
また、ベッド30の範囲内と範囲外とに占める人の面積の全体に対して、ベッド30の範囲外に占める人の面積の比率を求める。この比率について適宜の基準範囲を設定し、比率が基準範囲内であれば「腰掛け」と判定してもよい。この場合、対象者40の体型などに応じて「腰掛け」の判定精度を高めるように、面積の比率に対する基準範囲を調節することが可能である。
【0132】
さらに、上述した両者の判定を組み合わせることによって、「腰掛け」と判定することも可能である。すなわち、交差している状態において、面積の比率を判定すれば、ベッド30の範囲内と範囲外とにおいて検出された人が対象者40である可能性が高くなり、判定の信頼度が向上する。
【0133】
ところで、ベッド30には落下防止用の柵を設けている場合がある。とくに、ベッド30から落下する可能性が高い対象者40に対しては柵を設けることが必要になる。このような柵を設けている場合であっても、ベッド30に出入りするためにベッド30の少なくとも1箇所には柵のない出入口を設けることになる。
【0134】
このように柵を設けている場合には、Z画像において出入口の位置を図示しない入力装置によってあらかじめ登録しておく。ベッド30に対する柵の取付位置は、複数箇所(たとえば、6箇所)から選択することが多いから、入力装置としてはディップスイッチなどを用いて柵の取付位置を選択する構成を採用すればよい。
【0135】
入力装置により登録された出入口以外の領域において上述した「交差」が検出された場合には、柵を乗り越えている状態(以下、「乗り越え」という)と判定する。
【0136】
「乗り越え」の判定には、上述した「腰掛け」と同様に、ベッド30の範囲内と範囲外とに占める面積を用いることもできる。すなわち、出入口以外の場所で、ベッド30の範囲内と範囲外とに占める人の面積の全体に対して、ベッド30の範囲外に占める人の面積の比率を求める。この比率について適宜の基準範囲を設定し、比率が基準範囲を超えていると「乗り越え」と判定する。この場合、基準範囲を適宜に設定しておけば、柵の外に腕を投げ出している状態と「乗り越え」とを区別することが可能になる。
【0137】
動作判定部23においては、対象者40が「離床」の初期行動として、ベッド30から腰を上げてベッド30から離れたときの動作(以下、「離床初期」という)を検出することも可能である。この場合、ベッド30の範囲内と範囲外との領域に占める人の面積を用い、「腰掛け」や「乗り越え」と同様に、ベッド30の範囲内と範囲外とに占める人の面積の合計を人の全体の面積とする。人の全体の面積に対するベッド30の範囲外における人の面積の比率を求め、この値が1に近い値になる場合(つまり、ベッド30の範囲内では人が検出されないか、検出されても微小である場合)、「離床初期」と判定する。言い換えると、1に近い基準範囲を設定し、前記比率が基準範囲を超えるときに「離床初期」と判定する。
【0138】
「離床初期」を検出することにより、対象者40を追跡することなく離床の初期段階を検出することが可能になる。対象者40を追跡する技術を用いると、何らかの原因で追跡が途切れることがあるが、上述の技術により、時間経過に関係なく「離床初期」を検出することが可能になる。
【0139】
ところで、ベッド30から対象者40が落下した場合、あるいはベッド30から対象者40が離床しようとして転倒した場合には、ただちに報知する必要がある。以下では、これらの状態をまとめて「転倒」という。動作判定部23では、「転倒」を検出する際に、状態が継続している時間を計測する。すなわち、ベッド30の範囲外においてのみ、床52から規定の高さ(たとえば、30cm)以下の物体が検出されている場合に、当該物体を人と判定する。動作判定部23では、人が検出されている状態が規定した判定時間に達するまで継続しているときに「転倒」と判定する。判定時間は、たとえば10秒程度に設定すればよい。
【0140】
上述した「腰掛け」「乗り越え」「離床初期」「転倒」は、時間経過とは無関係に特定の状態に着目して判定しているが、対象者40の行動履歴を追跡すれば、判定精度をさらに高めることができる。すなわち、動作判定部23において、人認識部22で検出された対象者40が占める領域の代表点(たとえば、重心)の位置を追跡する。
【0141】
ここに、人認識部22では、対象者40について、ベッド30の範囲内での臥床、起き上がり、立ち上がりの各状態を検知面を用いて判定し、またベッド30の範囲外における存在を検知面に相当する倒れ閾値Thfを用いて判定している。したがって、各検知面で切り取ることにより得られた対象者40の存在領域については、ベッド30の範囲内と範囲外とにおいてそれぞれ重心を求めることが可能である。ただし、対象者40が占める領域は3次元で検出して重心を求めてもよく、また、ベッド30の範囲内と範囲外とにおいてX値の最頻値とY値の最頻値とを、それぞれ追跡する代表点のX値とY値とに用いることも可能である。
【0142】
ベッド30の範囲内と範囲外との人の領域を統合して人の位置を判断している場合に、規定した時間内における代表点の移動距離を適宜の閾値と比較すれば、代表点の位置移動が連続的に生じているか否かを判断することができる。したがって、連続性のない位置移動であればノイズとして排除することができる。このように対象者40の代表点の位置を追跡すれば、対象者40の身体の一部分の移動や寝具の移動のように、対象者40の移動ではないノイズを排除することが可能になる。
【0143】
さらに、対象者40の代表点は、ベッド30の範囲内を起点としているから、代表点のが、ベッド30の範囲内に存在する状態からベッド30の端部に移動し、さらにベッド30の範囲外に出るという移動経路を辿る場合に、離床と判断することができる。この条件を付加することによって、ベッド30の範囲外を起点とする移動経路は、対象者40ではない人(たとえば、看護師、介護士、見舞客など)によると判定することが可能になる。すなわち、ベッド30の範囲外を起点とした移動経路を追跡している場合には、動作判定部23では、離床と判定しないようにする。
【0144】
ただし、対象者40が離床の後にベッド30に戻るという動作では、対象者40がベッド30に戻ったことを検出する必要がある。そこで、ベッド30の範囲外を起点とする移動経路で代表点がベッド30の範囲内に達した後、ベッド30の範囲内に存在する状態か「腰掛け」の状態が継続する時間が規定時間に達したことをもってベッド30に戻ったと判定する。この判定後は、対象者40の移動経路を追跡する際の起点をベッド30の範囲内に更新する。すなわち、対象者40がベッド30に戻れば、自動的に初期の状態に復帰させることが可能になる。
【0145】
ところで、上述のような検知対象か検知対象外かを自動判断する技術は、装置を使用する環境や対象者40によっては不要であることもある。このような場合に備えて、検知対象か検知対象外かの自動判断を行うか行わないかの選択を可能にしておくのが望ましい。また、検知対象外の物体を追跡した場合、自動的に検知対象外と確定して報知をまったく行わないようにするのではなく、装置側で確認の報知を行ってから所定時間内に報知の解除が行われなければ、他装置に離床の報知を行うようにしてもよい。
【0146】
報知部24は、行動監視処理部20で検出した対象者40の動作に応じた報知を行う。ここに、報知部24は、対象者40に合わせて、対象者40のどの動作に対してどのように報知するかを設定する機能を有している。たとえば、対象者40が患者や高齢者であると、起き上がりの状態や腰掛けの状態であっても看護師や介護士に報知しなければならない場合もある。
【0147】
本実施形態の構成では、距離画像センサ10を用いて対象者40を撮像するだけで、対象者40の各種動作を判別することができる。しかも、どの動作に対して報知を行うかも任意に設定することが可能になる。どの動作で報知を行うかは、報知部24にディップスイッチなどを設けて選択すればよい。
【0148】
報知部24は、ベッド30を設けた部屋に配置することができるが、ナースセンタに報知することが望ましい。たとえば、報知部24において、ナースコールボタンと分岐して用いる接点出力を発生させる機能を設けておけば、ナースコールボタンを押さないかもしくは押せない患者でも離床を知らせることが可能である。
【0149】
報知部24は、ナースコールボタンのような操作装置と関連付けて動作させてもよい。すなわち、報知部24において、動作判定部23の判定結果に加えて人が操作する操作装置からの入力を受け付けるようにしてもよい。この場合、動作判定部23による判定結果と操作装置による入力との組み合わせにより、動作判定部23による判定結果の報知の有無を切り換える。
【0150】
たとえば、絶対安静など静止状態が要求されている対象者40には、対象者40が移動したことが動作判定部23に検出されたときと、ナースコールボタンが押されたときとの論理和で、報知部24がナースセンタに報知する動作を選択すればよい。また、移動が許容されている対象者40には、対象者40が移動したことが動作判定部23に検出された時点ではナースセンタに報知せずに仮報知状態とする動作を選択すればよい。この場合、報知部24は、仮報知状態から所定時間内にナースコールボタンが押されると仮報知状態を解除して元の状態に復帰し、仮報知状態から所定時間内にナースコールボタンが押されないとナースセンタに報知する動作を行う。
【0151】
上述のように、報知部24において、距離画像に基づく判定結果だけではなく、ナースコールボタンのような操作装置からの入力を併せて用いることにより、対象者40の動作に応じた望ましい報知が可能になる。ここに、操作装置は、ナースコールボタンに限定されず、後述するように、ベッドサイド端末のタッチパネルなどであってもよい。
【0152】
また、建物内に敷設したナースコール通信網や構内ネットワーク(LAN)などによる通信機能を報知部24に設け、行動監視処理部20の判定結果をナースセンタに通知すれば、対象者40の動作の内容を遠隔監視することが可能になる。この場合、対象者40の各種動作状態のすべてを状態信号として出力し、報知受け側の機器(ナースコール親機など)で所望動作のみを知らせるようにマスクしてもよい。また、ナースコール親機と連動した構内PHS交換機や情報端末向け無線送信機などに対象者40の動作状態情報を重畳させることで、PHSやページャなどを用いて看護師や介護士がナースセンタに居なくても対象者40の行動を把握し、迅速な対応をとることが可能になる。
【0153】
本実施形態で用いる距離画像センサ10は、上述したように、強度変調光を投光するとともに、強度変調光を変調信号に同期する複数の受光タイミングで受光したときの受光量を用いて距離画像を生成している。したがって、受光量を平均化するか、特定の受光タイミングの受光量を用いると濃淡画像を得ることが可能である。
【0154】
さらに、発光素子13から強度変調光を投光して撮像素子15により撮像する期間と、発光素子13から強度変調光を投光せずに撮像素子15により撮像する期間とを設け、両期間の受光量を用いて環境光の成分を除去した濃淡画像を得ることも可能である。環境光の成分を除去した濃淡画像では、強度変調光が照射された物体のみを撮像することができ、しかも強度変調光に近赤外線を用いることにより、対象者40の就寝を妨げず、かつ夜間においても暗視が可能になる。
【0155】
したがって、行動監視処理部20により判別された動作について、目視による確認が必要な場合には、濃淡画像に切り替える機能を設けてもよい。ここに、濃淡画像は、行動監視処理部20により判別された動作に対して報知がなされた時点以降について表示してもよいが、所定時間分ずつの濃淡画像を記憶する機能を報知部24に設けておき、報知の時点から遡って濃淡画像を表示してもよい。このような機能を設けると、動作の通知が行われるだけではなく、動作の内容を看護師や介護士が目視して確認できるから、より適切な対応をとることができる。
【0156】
ただし、この機能は、看護や介護に必要であって対象者40あるいは家族の同意が得られる場合には利用することが可能である。また、顔が見えることが問題である場合には、顔の部分を検出する機能を設けておき、デジタル処理によって顔の部分にマスクをかけることにより、顔の表示を禁止してもよい。これらの動作は、濃淡画像を距離画像に読み替えてもよい。また、距離画像と濃淡画像との両方を用いてもよい。すなわち、以下の説明において、濃淡画像について説明する記憶や伝送の処理は、距離画像と濃淡画像との少なくとも一方について行うことが可能である。距離画像は、対象者40の行動を把握するための情報量は十分であるが、個人を特定するための情報量が少ないから、プライバシを保護する上では濃淡画像よりも優れている。
【0157】
濃淡画像を記憶する場合の動作について、さらに詳しく説明する。報知部24は、図23に示すように、濃淡画像を記憶する画像記憶部241と、画像を他装置に伝送する通信処理部242とを備える。画像記憶部241は、距離画像センサ10から出力される最新の一定時間(たとえば、30秒)の濃淡画像を動画(たとえば、30フレーム/秒)として記憶する。すなわち、画像記憶部241は、リングバッファのように記憶する濃淡画像を次々に更新する機能を有する。また、通信処理部242は、画像記憶部241に記憶している濃淡画像と、距離画像センサ10から出力されている濃淡画像とを選択して他装置に伝送する。ここに、他装置は、ナースセンタに設けた受信装置などを想定している。
【0158】
通信処理部242がナースセンタに濃淡画像を伝送するタイミングは、動作判定部23の出力内容で決定される。動作判定部23は、人の特定の動作を検知する特定動作検知部231を備えており、特定動作検知部231が検知する動作は、離床や転倒などである。特定動作検知部231が、距離画像に基づいて定められた特定の動作を検知すると、報知部24は、動作が検知された時点の前後の所定期間(たとえば、前後に30秒ずつで1分間)における濃淡画像を画像記憶部241から読み出して通信処理部242から他装置に伝送する。ここに、報知部24は、必要に応じて距離画像センサ10から出力されている濃淡画像も併せて他装置に伝送することができる。
【0159】
このような動作によって、ナースセンタに設けた受信装置のような他装置において、対象者40が特定の行動を行った前後の動きを確認することができる。すなわち、病室に出向かなくとも、対象者40の特定の行動を確認することが可能になる。
【0160】
上述の動作では、報知部24は、濃淡画像を他装置に伝送する通信処理部242を備えているが、図24に示すように、通信処理部242に代えて、所定期間における濃淡画像を記憶する着目画像記憶部243を備えていてもよい。着目画像記憶部243は、特定動作検知部231が定められた特定の動作を検知したことを契機とし、検知時点の前後の所定期間における濃淡画像を記憶する。着目画像記憶部243に記憶する濃淡画像は、画像記憶部241に記憶されている濃淡画像と、距離画像センサ10から出力されている濃淡画像とを用いる。すなわち、着目画像記憶部243が記憶する濃淡画像のうち、動作の検知時点よりも前の濃淡画像は画像記憶部241から転送させ、動作の検知時点よりも後の濃淡画像は距離画像センサ10から出力されている濃淡画像を用いる。
【0161】
上述のように、着目画像記憶部243は、対象者40が特定の動作を行った前後の所定期間における濃淡画像を保存するから、対象者40の動作の前後の行動を事後に確認することができる。この構成では、報知部24において濃淡画像を記憶し、個人のプライバシにかかわる濃淡画像を他装置に伝送しないから、セキュリティを確保しやすくなる。セキュリティをより高めるには、着目画像記憶部243に記憶させる濃淡画像を暗号化すればよい。
【0162】
着目画像記憶部243に記憶させる濃淡画像には、記憶した日時を対応付けておくことが好ましい。また、着目画像記憶部243は、フラッシュメモリあるいはハードディスク装置のように記憶容量の大きい記憶装置を用い、さらに、装置に対して着脱可能な可搬型であることが好ましい。この場合、着目画像記憶部243を装置から分離して回収し、複数の対象者40の特定の動作と、当該動作の前後の行動との関係を一括して分析することが可能になる。
【0163】
さらに、図25に示すように、報知部24に、上述した画像記憶部241と通信処理部242と着目画像記憶部243とを設けてもよい。この構成を採用する場合、特定動作検知部231が特定の動作を検知したときに、検知時点の前後の所定期間における濃淡画像を他装置にただちに伝送するのではなく、着目画像記憶部243が濃淡画像を一旦記憶させる。このとき、通信処理部242は、特定動作検知部231が特定の動作を検知したことのみを他装置に通知する。
【0164】
この動作では、他装置から濃淡画像の伝送が要求されると、着目画像記憶部243に記憶されている濃淡画像を読み出し、通信処理部242を通して他装置に濃淡画像を伝送する。また、通信処理部242が濃淡画像の伝送を行わない構成であってもよい。報知部24が、他装置からの要求に対して着目画像記憶部243から濃淡画像を読み出し、読み出した濃淡画像を他装置に転送する構成では、すべての濃淡画像を他装置に伝送する場合に比較して、通信トラフィックを低減させることになる。すなわち、他装置では、必要な濃淡画像のみを指定して報知部24から伝送させるから、通信トラフィックが低減され、また他装置で処理する濃淡画像の処理量が低減されることになる。しかも、濃淡画像は、ベッド30ごとに設けた監視装置の着目画像記憶部243に分散して記憶され、他装置では複数台のベッド30について濃淡画像を蓄積する必要がないから、他装置は大きな記憶容量を必要としない。
【0165】
さらに、通信処理部242の機能は、特定の動作が検知されたことを他装置に通知する機能のみとし、着目画像記憶部243に記憶された濃淡画像は、他装置に伝送しないようにすれば、個人情報を含む可能性がある濃淡画像のセキュリティを確保しやすくなる。この場合もセキュリティを高めるには、濃淡画像を暗号化すればよい。
【0166】
以上説明した動作は、濃淡画像を用いる場合を例として説明したが、上述したように、濃淡画像の記憶や伝送の処理は、距離画像と濃淡画像との少なくとも一方について行うことが可能である。
【0167】
ところで、ベッド認識部21、人認識部22、動作判定部23、報知部24は、コンピュータでプログラムを実行することにより実現させてもよい。コンピュータは、汎用のコンピュータのほか、ベッドサイド端末として知られている病室用のコンピュータを用いてもよい。ベッドサイド端末は、タッチパネルを備え、電子カルテの表示、投薬オーダなどの医療情報を集中管理する医療情報サーバなどとLANを構築している。また、インターネットのような広域通信網の端末装置としての機能や、テレビジョン放送の視聴を行う機能なども備える。
【0168】
したがって、専用の装置を用いることなく、汎用のコンピュータあるいは既存のコンピュータでプログラムを実行することにより、上述の機能が提供される。また、この場合、専用の装置を用いる場合に比較してコスト増が抑制される。この種のコンピュータを用いる場合に、他装置との通信にはIEEE802.3などの通信仕様を用い、距離画像センサ10との接続は、USB(Universal Serial Bus)、IEEE802.3などの通信仕様を用いればよい。
【0169】
上述のように、報知部24は、動作判定部23の判定結果だけではなく、操作装置からの入力を併せて用いることにより報知の有無を切り換える構成を採用する場合がある。したがって、上述のように、コンピュータでプログラムを実行する場合には、操作装置として、キーボードやタッチパネルなどを用いればよい。
【0170】
いま、図26に示すように、タッチパネルを備えたベッドサイド端末25を用いることを想定する。対象者40がベッド30から移動することが禁止されている場合、報知部24は、動作判定部23により対象者40の移動が検出されるか、ベッドサイド端末25のタッチパネルに触れられたときに、ナースセンタに報知すればよい。
【0171】
また、対象者40がベッド30からの移動を許容されている場合、報知部24は、動作判定部23により対象者40の移動が検出されると仮報知状態になり、その後、所定時間内にベッドサイド端末25のタッチパネルに触れられると、仮報知状態を解除する。この場合、仮報知状態になってから所定時間を超えてもタッチパネルに接触がなければ、報知部24はナースセンタに報知する動作を行う。すなわち、対象者40がベッド30の上で起き上がり、離床する前の行動であると判断してナースセンタに報知する。なお、仮報知状態においてベッドサイド端末25のタッチパネルに触れる行為は、対象者40が意図的に仮報知状態を解除する場合のほか、ベッドサイド端末によってテレビジョン放送を視聴する場合、診療案内を見る場合などがある。これらの場合には、ナースセンタへの報知は行わずに仮報知状態を解除する。
【0172】
さらに、タッチパネルに触れたときに、タッチパネル上の操作内容と連動して仮報知状態の解除判断を行うようにしてもよい。この動作では、意図的に他の機能操作をしようとしているのか、離床行動を起す際して体が触れて無意味な操作部を支持したのかを判断して仮報知状態の解除をより正確に行うことができる。
【符号の説明】
【0173】
10 距離画像センサ
20 行動監視処理部
21 ベッド認識部
22 人認識部
23 動作判定部
231 特定動作検知部
24 報知部
241 画像記憶部
242 通信処理部
243 着目画像記憶部
25 ベッドサイド端末
30 ベッド
37 分割領域
41 物体
42 マスク領域
52 床面
Pd 臥床検知面
Pr 起き上がり検知面
Ps 起立検知面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素値が物体までの距離値である距離画像を生成するとともに視野領域に監視対象であるベッドの全体が含まれる距離画像センサと、前記距離画像を用いて前記ベッドの位置を抽出するベッド認識部と、前記距離画像のうち前記ベッド認識部により認識した前記ベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占有する領域を検出する人認識部と、前記ベッド認識部により検出した前記ベッドと前記人認識部により検出した人の領域との組み合わせにより前記ベッドに対する人の動作を判別する動作判定部と、動作判定部による判定結果を報知する報知部とを備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記ベッド認識部は、前記ベッドを置いた床面に対して適宜高さ以上である高さの度数分布を前記ベッドの長手方向および短手方向においてそれぞれ求め、度数が適宜の閾値を横切る位置を、前記ベッドの長手方向および短手方向における端部の位置として検出することを特徴とする請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記ベッド認識部は、前記ベッドの長手方向および短手方向における端部に囲まれた矩形の範囲内を前記ベッドの範囲内とし、前記ベッドの範囲内の領域を前記ベッドの長手方向において複数の分割領域に分割し、前記分割領域ごとに高さに関する代表値を求め、さらに前記代表値から所定のオフセット値を減算した値を、前記ベッドに関して前記分割領域ごとの基準の高さに用いることを特徴とする請求項2記載の監視装置。
【請求項4】
前記ベッド認識部は、前記分割領域の前記代表値として、前記分割領域ごとの高さの平均値と最頻値との一方を用いることを特徴とする請求項3記載の監視装置。
【請求項5】
前記ベッド認識部は、前記分割領域の前記代表値に上限値を設けてあり、前記代表値が前記上限値を超える場合はこの代表値を採用しないことを特徴とする請求項3又は4記載の監視装置。
【請求項6】
前記ベッド認識部は、前記分割領域の前記代表値に対する高さ閾値を設けてあり、所定個数以上の前記分割領域において前記代表値が前記高さ閾値を超える場合に、前記ベッドの位置が異常であると判断することを特徴とする請求項3又は4記載の監視装置。
【請求項7】
前記ベッド認識部は、前記ベッドの位置を抽出した直後に、前記ベッドの範囲内であって前記分割領域の基準の高さに対して規定の除外閾値よりも上方に位置する物体の存在範囲を、前記人認識部において前記人を検出する領域から除外するマスク領域として記憶することを特徴とする請求項3又は4記載の監視装置。
【請求項8】
前記人認識部は、前記ベッド認識部が検出した前記分割領域ごとの基準の高さに対して上方に所定距離だけ離れた検知面を少なくとも1個設定し、前記検知面を横切る物体が検出されると当該検知面について規定した前記ベッドの範囲内での前記人の動作であると判定することを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項9】
前記人認識部は、前記ベッド認識部が検出した前記ベッドの範囲外において前記ベッドを置いた床から所定高さの倒れ閾値を設定し、前記ベッドの範囲外において前記倒れ閾値より高い位置に物体が検出されると前記ベッドの範囲外に前記人が存在すると判定することを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項10】
前記人認識部は、前記ベッド認識部が検出した前記ベッドの範囲外における背景画像を記憶し、その後に得られる画像について前記背景画像に対する変化が生じた領域の面積が規定の閾値であるときに前記ベッドの範囲外に前記人が存在すると判定することを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項11】
前記人認識部は、前記検知面として、前記人の前記ベッドの上での臥床の状態を検知する臥床検知面と、前記人が前記ベッドの上での起き上がりの状態を検知する起き上がり検知面とを有し、前記人が前記臥床検知面と前記起き上がり検知面とを横切るときに、前記臥床検知面が切り取る面積に対して前記起き上がり検知面が切り取る面積の比率を求め、この比率が所定の閾値以上であるときに起き上がりの状態と判定することを特徴とする請求項8記載の監視装置。
【請求項12】
前記人認識部は、前記検知面として、前記人の前記ベッドの上での臥床の状態を検知する臥床検知面と、前記人が前記ベッドの上での立ち上がりの状態を検知する起立検知面とを有し、前記人が前記臥床検知面と前記起立検知面とを横切るときに、前記臥床検知面が切り取る面積に対して前記起立検知面が切り取る面積の比率を求め、この比率が所定の閾値以上であるときに立ち上がりの状態と判定することを特徴とする請求項8記載の監視装置。
【請求項13】
前記動作判定部は、前記ベッドの長手方向および短手方向の端部に対して前記人が占める領域が交差しているときに、前記ベッドに前記人が腰を掛けている状態と判定することを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項14】
前記動作判定部は、前記ベッドの長手方向および短手方向の端部において前記人が占める領域が前記ベッドの範囲内と範囲外とにまたがっており、かつ前記人が占める領域の面積に対して前記ベッドの範囲外において前記人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲内であれば、前記ベッドに前記人が腰を掛けている状態と判定することを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項15】
前記動作判定部は、前記ベッドに落下防止のための柵を設けている場合に、柵の位置をあらかじめ指定可能であり、前記柵に対して前記人が占める領域が交差しているときに、前記柵を前記人が乗り越えている状態と判定することを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項16】
前記動作判定部は、前記ベッドに落下防止のための柵を設けている場合に、柵の位置をあらかじめ指定可能であり、前記人が占める領域が前記柵に対して前記ベッドの範囲内と範囲外とにまたがっており、かつ前記人が占める領域の面積に対して前記ベッドの範囲外において前記人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲を超えているときに、前記柵を前記人が乗り越えている状態と判定することを特徴とする請求項3〜12のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項17】
前記動作判定部は、前記ベッドの範囲内と範囲外とにおいて前記人が占める領域の面積に対して前記ベッドの範囲外において前記人が占める領域の面積の比率が規定した基準範囲を超えるときに離床を開始したと判定することを特徴とする請求項3〜16のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項18】
前記動作判定部は、前記ベッドの範囲外において前記ベッドを置いた床面に対して規定の高さ以下の物体が検出される状態が規定の判定時間継続するときに、前記人が転倒している状態と判定することを特徴とする請求項3〜17のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項19】
前記動作判定部は、前記ベッドの範囲内と範囲外とにおいて検出される前記人の代表点の位置を追跡し、位置の移動が不連続であるときには前記人の移動と判定しないことを特徴とする請求項3〜18のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項20】
前記動作判定部は、前記人の前記代表点の位置を追跡する際に、前記ベッドの範囲内を起点とする場合に前記人の行動と判定し、前記ベッドの範囲外を起点とする場合であって前記ベッドの範囲内に移動した後に前記ベッドの範囲内である状態の継続時間が規定時間に達すると追跡の起点を前記ベッドの範囲内に更新することを特徴とする請求項19記載の監視装置。
【請求項21】
前記距離画像センサは、距離画像について規定された座標系を前記ベッドを置いた空間の座標系に変換する機能を備えることを特徴とする請求項1〜20のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項22】
前記報知部は、前記人の動作と報知内容とを対応付ける機能を備えることを特徴とする請求項1〜21のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項23】
前記報知部は、別に設けた受信装置に報知内容を通知する通信機能を備えることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項24】
前記報知部は、前記動作判定部の判定結果に加えて人が操作する操作装置からの入力を受け付け、前記動作判定部による判定結果と前記操作装置による入力との組み合わせにより、前記動作判定部による判定結果の報知の有無を切り換えることを特徴とする請求項1〜23のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項25】
前記距離画像センサは、距離画像とともに濃淡画像を生成する機能を有し、前記報知部は前記人の動作の報知後に距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を出力することを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項26】
前記動作判定部は、前記人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、前記報知部は、前記距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、前記特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における前記距離画像と前記濃淡画像との少なくとも一方を前記画像記憶部および前記距離画像センサから他装置に伝送する通信処理部とを備えることを特徴とする請求項25記載の監視装置。
【請求項27】
前記動作判定部は、前記人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、前記報知部は、前記距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、前記特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における前記距離画像と前記濃淡画像との少なくとも一方を記憶する着目画像記憶部とを備えることを特徴とする請求項25記載の監視装置。
【請求項28】
前記動作判定部は、前記人の特定の動作を検知する特定動作検知部を備え、前記報知部は、前記距離画像センサが生成した距離画像と濃淡画像との少なくとも一方を記憶する画像記憶部と、前記特定動作検知部が人の特定の動作を検知した時点の前後の所定期間における前記距離画像と前記濃淡画像との少なくとも一方を記憶する着目画像記憶部と、前記特定動作検知部が人の特定の動作を検知したことを他装置に通知する通信処理部とを備えることを特徴とする請求項25記載の監視装置。
【請求項29】
コンピュータを、画素値が物体までの距離値である距離画像を生成するとともに視野領域に監視対象であるベッドの全体が含まれる距離画像センサから得られた前記距離画像を用いて前記ベッドの位置を抽出するベッド認識部と、前記距離画像のうち前記ベッド認識部により認識した前記ベッドの範囲内と範囲外とにおいて人が占有する領域を検出する人認識部と、前記ベッド認識部により検出した前記ベッドと前記人認識部により検出した人の領域との組み合わせにより前記ベッドに対する人の動作を判別する動作判定部と、動作判定部による判定結果を報知する報知部として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−30042(P2012−30042A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35378(P2011−35378)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】