説明

盤用クーラ

【課題】ラジエータによる熱交換のみで冷却することができる外気温度や盤内の発熱量の範囲をより広くすることができ、消費電力を削減することができる盤用クーラを提供する。
【解決手段】冷却装置の吸熱側と放熱側をともに液冷構造とし、吸熱側のラジエータ11と放熱側のラジエータ9により熱交換させる盤用クーラであって、冷却装置の吸熱側と吸熱側のラジエータ11、冷却装置の放熱側と放熱側のラジエータ9の間を個別に作動液が循環する2つの液経路と、該2つの液経路の冷却装置への流路を遮断し、吸熱側のラジエータ11と放熱側のラジエータ9の間を作動液が循環する1つの液経路に切り換える液経路の切り換え手段7、10を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電盤、分電盤、通信盤などの電気機器収納ボックスに取り付けられる液冷式の盤用クーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤、分電盤、通信盤などの電気電子機器収納盤の盤内を冷却するために、ペルチェ素子等の冷却装置を使用した盤用クーラが使用されている。こうした盤用クーラとしては、例えば特許文献1に示されるような、冷却装置であるペルチェ素子の吸熱側のヒートシンクにファンを使用して盤内空気を流し、放熱側のヒートシンクを水冷構造として放熱効果を高める工夫をしたものが知られている。
【0003】
ところがこのような工夫を行っても、吸熱側のヒートシンクの能力を高めることが容易でなく、冷却能力にはある程度の限界があった。本願出願人はこうした問題を解決し、従来の限界を大幅に越えた冷却能力を持つ盤用クーラを特願2002−357711として出願中である。この特願2002−357711の盤用クーラは冷却装置としてペルチェ素子を使用したものであり、ペルチェ素子の放熱側と吸熱側のヒートシンクを何れも水冷構造とし、放熱側のヒートシンクを循環する冷却水と盤外の空気を放熱側のラジエータで、吸熱側のヒートシンクを循環する冷却水と盤内の空気を吸熱側のラジエータでそれぞれ熱交換させるようにしてある。
【0004】
この盤用クーラでは、外気温度が低い場合や盤内の発熱量が小さい場合にペルチェ素子への通電電流を断続させることにより冷却能力を制御することができ、盤用クーラの消費電力を削減することができる利点がある。特に外気温度や盤内の発熱量の条件によってはペルチェ素子への電流を完全に遮断し、ラジエータによる熱交換のみで冷却することが可能となり、省エネルギーの観点からも優れたものである。ところが、ペルチェ素子への電流を遮断した状態ではペルチェ素子とヒートシンクが熱抵抗となって熱交換効率が低下するため、ラジエータによる熱交換のみで冷却できる範囲が限定されるという問題があった。
【特許文献1】実開平3−43739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点を解決し、ラジエータによる熱交換のみで冷却することができる外気温度や盤内の発熱量の範囲をより広くすることができ、消費電力を削減することができる盤用クーラを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、冷却装置の吸熱側と放熱側をともに液冷構造とし、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータにより熱交換させる盤用クーラであって、冷却装置の吸熱側と吸熱側のラジエータ、冷却装置の放熱側と放熱側のラジエータの間を個別に作動液が循環する2つの液経路と、該2つの液経路の冷却装置への流路を遮断し、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータの間を作動液が循環する1つの液経路に切り換える液経路の切り換え手段とを設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、冷却装置の吸熱側と吸熱側のラジエータ、冷却装置の放熱側と放熱側のラジエータの間を個別に作動液が循環する2つの液経路と、該2つの液経路の冷却装置への流路を遮断し、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータの間を作動液が循環する1つの液経路に切り換える液経路の切り換え手段とを設けたので、冷却装置の吸熱側と吸熱側のラジエータ、冷却装置の放熱側と放熱側のラジエータの間を個別に作動液が循環する2つの液経路を形成する状態では、ペルチェ素子に電流を流すことによりペルチェクーラとして動作する。
【0008】
吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータの間を作動液が循環する1つの液経路を形成するように切り換えた状態では吸熱側のラジエータを循環する冷却水を直接放熱側のラジエータに循環させることになり、冷却装置が熱抵抗として熱交換回路に入ることがない。したがって、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータは効率の良い液冷熱交換器として動作し、冷却装置を使用することなく冷却可能な範囲が拡大され、冷却装置の消費電力を著しく削減することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら具体的に説明する。
図1は第1の実施の形態を示す機器構成図であり、盤用クーラの筐体1には盤内空気通風路を区画する隔壁2が設けてある。筐体1内には冷却装置としてペルチェ素子3を備えるペルチェユニット4が設けてあり、ペルチェ素子3には図示しない直流電源装置から電源を供給するようにしてある。ペルチェユニット4はペルチェ素子3を放熱側のヒートシンク5と吸熱側のヒートシンク6でサンドイッチ状に挟んで構成してあり、放熱側のヒートシンク5と吸熱側のヒートシンク6は何れも液冷式として作動液の流路が設けてある。
【0010】
放熱側のヒートシンク5は放熱側の三方弁7、放熱側の循環ポンプ8を介して放熱側のラジエータ9に接続してある。また吸熱側のヒートシンク6は吸熱側の三方弁10を介して吸熱側のラジエータ11に接続してあり、該ラジエータ11からヒートシンク6への帰路には吸熱側の循環ポンプ12が接続してある。放熱側の三方弁7は循環ポンプ8への経路を切り換えるもので、ヒートシンク5、循環ポンプ12のいずれかに連結される。吸熱側の三方弁10は吸熱側のラジエータ11への経路を切り換えるもので、ヒートシンク6、ラジエータ9のいずれかに連結される。
【0011】
三方弁7と10は連動して作動液の経路を切り換えるものであり、三方弁7によりヒートシンク5側に経路が形成されているときには、三方弁10によりヒートシンク6側に経路が形成される。この状態では図2に矢印で示すように、放熱側ではヒートシンク5、三方弁7、循環ポンプ8、ラジエータ9の経路を封入された作動液が循環し、ペルチェユニット4の放熱側で発生する熱をヒートシンク5からラジエータ9に移動させ、放熱ファン13による空気流に乗せて外部に放出する。また吸熱側ではヒートシンク6、三方弁10、ラジエータ11、循環ポンプ12の経路を封入された作動液が循環し、ヒートシンク6を流れて冷却された作動液がラジエータ11に流れ、冷却ファン14により冷風を盤内に送風して盤内を冷却する。
【0012】
また、三方弁7により循環ポンプ12側に経路が形成されているときには、三方弁10によりラジエータ9側に経路が形成される。この状態では図3に矢印で示すように、ラジエータ9、三方弁10、ラジエータ11、循環ポンプ12、三方弁7、循環ポンプ8の経路を封入された作動液が循環し、作動液の循環経路は1つとなる。作動液はラジエータ9を流れる間に放熱ファン13により冷却され、冷却された作動液はラジエータ11に流れて冷却ファン14により冷風を盤内に送風し、盤内を冷却することになる。
【0013】
放熱側と吸熱側の2つの経路を作動液が個別に循環する状態では、ペルチェ素子3に流す電流を制御することにより、外気温度と盤内の発熱量に応じて盤内の温度を必要以上に下げないように制御すれば盤用クーラの消費電力を最小限に抑制することができる。電流は連続的に制御してもよく、断続させてデューティの変化により制御してもよい。
【0014】
本発明では作動液の経路を切り換えて放熱側と吸熱側の2つの循環経路を1つの経路とすることができる。作動液が1つの経路を循環する状態では、吸熱側のラジエータ11に流れた作動液がそのまま放熱側のラジエータ9に流れることになる。従って、ラジエータ11により吸収された盤内の熱はそのままラジエータ9に移動し、効率よく盤外に放出されることになる。従って外気温度が低くて盤内温度と外気温度との差が大きい場合には、ペルチェ素子3に電流を流すことなく盤内を冷却することができる。盤内が過度に冷却されるおそれがあるときには作動液の循環量を制限することで防止できる。
【0015】
第1の実施の形態のものは盤の側面に取り付けて使用するものであるが、第2の実施の形態のものは図4のように機器を配置し、盤の天井に取り付けて使用するようにしたものである。また第3の実施の形態のものは図5に示すように吸熱側のラジエータ11をその他の部分と分離して盤に取り付け、その他の部分を別置きとしたものである。別置きとする場合には作動液の配管に接続装置を設けることが好ましい。こうした第2、第3の実施の形態のものも構成する機器は同一であり、対応する部分には同一の符号が付してある。
【0016】
なお前記実施の形態においては何れも冷却装置としてペルチェ素子を使用しているが、これに限らずコンプレッサ式、吸収式等の冷却装置を使用することができる。図6はコンプレッサ式の冷却装置15を使用した場合の機器構成を示すものであり、16はコンプレッサ、17は凝縮器、18はキャピラリチューブ、19は蒸発器である。コンプレッサ式の冷却装置15は従来知られるものと同様であり、凝縮器17と蒸発器19が液冷式としてある。また作動液の循環経路は直結したものとしてあるが、作動液の膨張、収縮や漏れ等に対応するためにリザーバタンク等を適宜設けることができ、作動液の経路の切り換えに三方弁を使用しているが、その他の電動弁等任意のものが使用可能である。作動液としては水が使用可能であるが、寒冷地では不凍液を混入することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態を示す機器構成図である。
【図2】作動液の流れを示す図である。
【図3】作動液の流れを示す図である。
【図4】第2の実施の形態を示す機器構成図である。
【図5】第3の実施の形態を示す機器構成図である。
【図6】異なった冷却装置を使用した場合の機器構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 盤用クーラの筐体
2 隔壁
3 ペルチェ素子
4 ペルチェユニット
5 放熱側のヒートシンク
6 吸熱側のヒートシンク
7 放熱側の三方弁
8 放熱側の循環ポンプ
9 放熱側のラジエータ
10 吸熱側の三方弁
11 吸熱側のラジエータ
12 吸熱側の循環ポンプ
13 放熱ファン
14 冷却ファン
15 コンプレッサ式の冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却装置の吸熱側と放熱側をともに液冷構造とし、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータにより熱交換させる盤用クーラであって、冷却装置の吸熱側と吸熱側のラジエータ、冷却装置の放熱側と放熱側のラジエータの間を個別に作動液が循環する2つの液経路と、該2つの液経路の冷却装置への流路を遮断し、吸熱側のラジエータと放熱側のラジエータの間を作動液が循環する1つの液経路に切り換える液経路の切り換え手段とを設けたことを特徴とする盤用クーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−32754(P2006−32754A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211179(P2004−211179)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】