説明

目地構造および外壁目地材

【課題】 火災時に耐火性能を確実に発揮し得る信頼性の高い目地構造および該目地構造に用いる外壁目地材を提供する。
【解決手段】 耐火性を有する外壁パネル11の対向する小口面12に、弾性を有する樹脂製の乾式止水材13を取り付け、乾式止水材13の弾性変形によって小口12を圧接し止水する目地構造において、乾式止水材位置よりも内側の小口面12に乾式止水材13と所定の離間寸法Lをおいて発泡耐火材14を配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を有する外壁パネル間の目地構造および外壁目地材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁パネル間の目地の止水性を確保するために、従来より目地部にシール材を装填して防水施工を行っている。
【0003】
耐火性を有する外壁パネル間の目地に関しては、止水性だけではなく耐火性を確保する必要もあり、例えば特許文献1では、乾式目地止水材と発泡耐火材が一体化されたシール材を用いた目地構造が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−147870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のような乾式目地止水材と発泡耐火材が一体化されたシール材によれば、これを目地に配設するだけで、容易に目地に防水性能とともに耐火性能を付与することができ、施工効率を向上せしめることができる。
【0006】
しかしながら、従来の乾式目地止水材と発泡耐火材が一体化されたシール材は、ゴムやプラスチックからなる乾式目地止水材に発泡耐火材を直接埋め込んだり貼りつけたものであるため、以下のような問題を抱えていた。
【0007】
発泡耐火材よりも乾式目地止水材の方が通常は屋外側にあり、火災時に乾式目地止水材が先に加熱されて熱変形を起した後に燃焼する。また、一般的には発泡耐火材の発泡温度も乾式目地止水材の加熱変形温度や燃焼温度よりも高い。このため、発泡耐火材を乾式目地止水材に直接埋め込んだり貼りつけたものでは、加熱初期の乾式目地止水材の加熱変形等により発泡耐火材も変形し、想定する位置、形状で発泡しない場合があった。
【0008】
また、乾式目地止水材と発泡耐火材が近接していると、燃焼後の乾式目地止水材の残渣により発泡耐火材の発泡が阻害され、目地部の全長にわたり均一に、かつ想定する形状に発泡しない場合があった。
【0009】
本発明は、上記従来の乾式目地止水材と発泡耐火材を用いた目地構造が抱える問題を解決し、火災時に耐火性能を確実に発揮し得る信頼性の高い目地構造および該目地構造に用いる外壁目地材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目地構造は、耐火性を有する外壁パネルの対向する小口面に、弾性を有する樹脂製の乾式止水材を取り付け、乾式止水材の弾性変形によって小口を圧接し止水する目地構造において、乾式止水材位置よりも内側の前記小口面に乾式止水材と所定の離間寸法をおいて発泡耐火材を配置したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の外壁目地材は、平滑面と該平滑面の面外方向に弾性を有し隆起した隆起面を有する止水部と、熱により発泡膨張するシート状の発泡耐火材からなる耐火部と、前記止水部と前記耐火部とを連結する連結部と、からなり、
前記連結部はシート状であり、一方の面は前記止水部の平滑面と前記耐火部の一方の面とを所定の離間寸法を維持して貼着連結し、他方の面は外壁パネル小口面に貼着する貼着面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の目地構造によれば、発泡耐火材は乾式止水材と完全に分離され、且つ、発泡耐火材の近傍に所定の空隙が確保されているため、火災時に、ゴムやプラスチック等を使用する乾式止水材の加熱変形(加熱膨張、燃焼時のめくれ、剥がれ等)の影響を受けて発泡耐火材が所定の位置からずれたり、乾式止水材の残渣によって発泡耐火材の自由な発泡が阻害されたりすることがないため、高い耐火性能を確実に発揮することができる。
【0013】
また、本発明の外壁目地材によれば、発泡耐火材と止水材とが所定の間隔を保ち、さらに外壁パネルの小口面に貼着可能に一体化されているため、火災時に耐火性能を確実に発揮し得る信頼性の高い前記本発明の目地構造を容易に施工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態例について図面に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施形態例に限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の目地構造の一実施形態例を示す断面図である。図1において、11は外壁パネル、12は外壁パネルの小口面、13は乾式止水材、14は発泡耐火材である。
【0016】
外壁パネル11は耐火性を有するものであり、例えばALCパネル、PCa板、GRC、セメント押出し成形板、窯業系サイディング、金属サイディング等からなる。
【0017】
乾式止水材13は、弾性を有する樹脂製の止水材であり、弾性変形によって外壁パネルの小口面12を圧接し止水するものである。この乾式止水材13は、所定の止水性能を有するものであれば、その材質および形状は特に限定されるものではなく、従来から用いられているEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、シリコーンゴム等のソリッドまたは発泡体などからなるものを使用することができる。
【0018】
発泡耐火材14は、乾式止水材13よりも内側(室内側)の前記小口面12に乾式止水材13と所定の離間寸法Lをおいて配置される。この発泡耐火材14としては、所定の温度以上に加熱されることで発泡して膨張し、耐火性を発揮するようなものであれば、その材質および形状は特に限定されるものではなく、例えばウレタングラファイト系樹脂などからなるシート状のものを使用することができる。
【0019】
上記離間寸法Lは、隣接する外壁パネル相互の面外方向の相対的なずれの最大値に基づいて決定することができる。
【0020】
具体的には、図2に示すように外壁パネルの施工誤差あるいは製品の製造誤差により外壁パネルの面外方向に段差が発生することがあり、これに伴い一方の外壁パネル小口面12に貼着された発泡耐火材14と他方の外壁パネル小口面に貼着された乾式止水材13との相対的な位置がずれて設計とは異なる状態となることがある。しかし、離間寸法Lを少なくとも隣接する外壁パネル相互の面外方向のずれの最大値に等しく設定することにより、発泡耐火材は対向する乾式止水材もしくはその燃焼後の残渣によって発泡方向(外壁パネルの面内方向)への発泡を阻害されることなく、対向する外壁パネルの小口面に取り付けられた発泡耐火材もしくは対向する外壁パネルの小口面に到達するまで自由に発泡することができる。
【0021】
従って、離間寸法Lを外壁パネルの段差の許容値以上に設定し、外壁パネル施工時に外壁パネルの段差を検査し、前記許容値を超える段差が生じている場合には段差の修正もしくは外壁パネルの交換を行い、段差が許容値以下になるように管理することによって発泡耐火材を適正な位置に配置することができる。
【0022】
また、発泡耐火材と小口面との間には、加熱変形を生じ易い乾式止水材が介在していない。従って、火災の際に乾式止水材の加熱変形に伴って発泡耐火材が変形したり所定の位置からずれたりすることがなく、また、乾式止水材や乾式止水材の燃焼後の残渣によって耐火材に空洞部が生じることが防止できる。
【0023】
上記のように本発明の目地構造では、乾式止水材13と発泡耐火材14とを所定の離間寸法をおいて分離して配置しているため、発泡耐火材14が火災時における乾式止水材13の加熱変形の影響を受けにくくなると共に、発泡耐火材14の自由な発泡空間が確保される。これにより、火災時に、図3(a)、(b)に示すように、発泡耐火材を所定の位置、且つ所定の形状で発泡させることができ(図中、14’は発泡耐火材が発泡した後の形態を示している。)、設計通りの耐火性能を発揮することができる。なお、図3(a)は図1の目地構造に、図3(b)は図2の目地構造に、それぞれ対応している。
【0024】
次に、本発明の目地構造に好適に用いることができる本発明の外壁目地材について説明する。
【0025】
図4は本発明の外壁目地材の一実施形態例を示しており、図5は図4の外壁目地材を用いた目地構造を示す断面図である。
【0026】
本例の外壁目地材40は、止水部41、耐火部42およびシート状の連結部43から構成されている。
【0027】
止水部41は、前記乾式止水材13と同様の材料からなり、平滑面41aと、この平滑面41aの面外方向に隆起した隆起面41bを有している。
【0028】
止水部41の平滑面41aは、連結部43を介して外壁パネルの小口面12に貼着される面であり、平滑であることにより外壁パネルと外壁目地材との間に無用な隙間が生じるのを防ぐことができる。
【0029】
止水部41の隆起面41bは、弾性を有し、弾性変形によって外壁パネルの小口面を圧接して、止水性を確保する。なお、本例の外壁目地材40は、図5に示すように、目地部を構成する双方の外壁パネル11の小口面12に取り付けられるものであり、双方の隆起面41bが互いに圧接することにより、外壁パネルの小口面を圧接して止水性を確保する。
【0030】
耐火部42は、前記発泡耐火材14と同様の材料からなり、熱により発泡膨張するシート状のものである。
【0031】
連結部43は、両面接着性のシート(テープ)からなる。この連結部43の一方の面43aは、止水部41の平滑面41aと耐火部42の一方の面とを前述したような離間寸法Lを維持して貼着連結しており、他方の面43bは外壁パネル小口面に貼着する貼着面となる。なお、この貼着面には、外壁パネルへの取り付け時に剥離される不図示の離型シートが貼着されている。
【0032】
シート状の連結部43は、火災時に耐火部42の自由な発泡を阻害しない材質および厚さのものを用いる。このようなものとしてはブチルテープが好ましく、厚さは1.5mm以下が好ましい。ブチルテープは粗面への貼着性に優れているので、ALCやPCの外壁パネルにも確実に貼着することができる。
【0033】
上述のように、本発明の外壁目地材40は、耐火部42と止水部41とが離間寸法Lを維持して連結部43に貼着連結されているため、止水部41を屋外側にして外壁パネルの小口面12に貼り付けることにより、自動的に止水部41よりも内側(室内側)に離間寸法Lをおいて耐火部42が配置される。したがって、本発明の外壁目地材を用いることにより、火災時に耐火性能を確実に発揮し得る信頼性の高い前記本発明の目地構造を簡単に施工することができる。なお、外壁パネルへの外壁目地材の取付は、外壁パネルの施工前に行われる。
【0034】
本発明の外壁目地材は、図5のように目地部を構成する双方の外壁パネルの小口面にそれぞれ取り付けるものに限らず、図2と同様に一方の外壁パネルの小口面に取り付けるものであってもよい。しかしながら、外壁パネルの目地部の間隔は施工状態によりある程度ばらつきがあるため、図5のような形態のほうが双方の外壁目地材の隆起面41bの弾性変形によってこのばらつきを吸収することができるため好ましい。
【0035】
また、本発明の外壁目地材は、前述したような、平滑面と隆起面を有する止水部と、シート状の発泡耐火材から耐火部と、これらを所定の離間寸法を維持して連結するシート状の連結部を有するものであれば、様々な形態を採り得る。
【0036】
例えば、火災時に耐火部42の自由な発泡を阻害しなければ、図6に示すように、止水部41の耐火部42側に前記離間寸法Lと同じ長さで突出部61を形成することができる。このような形態を採ることにより、突出部61の端部に耐火部42を突き合わせた状態で連結部43に貼り合わせることにより、自動的に離間寸法Lを確保することができ、特に位置合わせを要することなく簡単に外壁目地材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の目地構造の一実施形態例を示す断面図である。
【図2】本発明の目地構造の一実施形態例を示す断面図である。
【図3】発泡耐火材が発泡した後の目地構造を示す断面図である。
【図4】本発明の外壁目地材の一実施形態例を示す図である。
【図5】図4の外壁目地材を用いた目地構造を示す断面図である。
【図6】本発明の外壁目地材の別の実施形態例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
11 外壁パネル
12 外壁パネルの小口面
13 乾式止水材
14 発泡耐火材
14’ 発泡後の発泡耐火材
40 外壁目地材
41 止水部
41a 平滑面
41b 隆起面
42 耐火部
43 連結部
61 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性を有する外壁パネルの対向する小口面に、弾性を有する樹脂製の乾式止水材を取り付け、乾式止水材の弾性変形によって小口を圧接し止水する目地構造において、乾式止水材位置よりも内側の前記小口面に乾式止水材と所定の離間寸法をおいて発泡耐火材を配置したことを特徴とする目地構造。
【請求項2】
平滑面と該平滑面の面外方向に弾性を有し隆起した隆起面を有する止水部と、熱により発泡膨張するシート状の発泡耐火材からなる耐火部と、前記止水部と前記耐火部とを連結する連結部と、からなり、
前記連結部はシート状であり、一方の面は前記止水部の平滑面と前記耐火部の一方の面とを所定の離間寸法を維持して貼着連結し、他方の面は外壁パネル小口面に貼着する貼着面を形成したことを特徴とする外壁目地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−56455(P2007−56455A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239475(P2005−239475)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】