説明

目標追尾装置、目標追尾方法、及びプログラム

【課題】センサを有効活用して多くの目標を追尾可能とする。
【解決手段】目標追尾手段10は、センサ装置61、62の観測値から、目標の探知や、目標の状態を推定する。センサ状態管理手段20は、センサ装置61、62の状態を管理する。目標軌道予測手段30は、目標の状態から、目標の将来位置を予測する。センサ割当・方位変更計算手段40は、センサの状態と目標の将来位置とから、ネットワークの経路探索を行うことにより、センサ割当スケジュールと方位変更スケジュールとを算出する。センサ制御装置50は、センサの状態、目標の将来位置、センサ割当スケジュール、及びセンサ方位変更スケジュールから、目標追尾と方位変更とを指示する。センサ装置61、62は、センサ制御装置50からの指示に従って、目標追尾と方位変更とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセンサで複数の目標を継続的に追尾する目標追尾装置、目標追尾方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサを複数台利用して複数の目標を追尾する場合、1台のセンサでは、同時追尾できる目標数に上限があるため、目標に対して追尾するセンサを適切に割り当てる必要がある。このように複数センサで複数目標を追尾するにあたり、目標のセンサ割当をどのように行うかについては、様々な先行技術が存在する。
【0003】
特許文献1では、追尾フィルタの追尾情報(誤差分散)に基づいて、センサを割り当てる目標の優先度を決定する技術を提示している。また、特許文献2では、追尾フィルタの追尾情報(誤差分散)に加え追尾目標の周辺環境(目標同士の近接状況・クラッタの状況・失検出回数)を考慮して、センサを割り当てる技術を提示している。また、特許文献3では、旋回中の目標に対してセンサを優先的に割り当てる技術を提示している。
【0004】
また、特許文献4では、特定航跡に対する単一センサの追尾モード指定をビームの必要総ヒット数に変換し、その総ヒット数を、航跡を追尾可能な複数センサへ割り振る技術を提示している。また、特許文献5では、弾道軌道目標の追尾に特化し、RCSと軌道情報に基づき弾頭とブースタの分離を行える様にセンサ割当を行う技術を提示している
【0005】
また、特許文献6では、弾道軌道目標の追尾に特化し、追尾精度要求を満たすように目標のセンサ割当スケジュールを決定する技術、また、目標の弾道軌道面に近いセンサを優先的に割り当てる技術を提示している。さらに、特許文献7では、追尾精度要求を満たすように最小限のセンサ割当スケジュールを決定する技術を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第003339295号
【特許文献2】特許第004014785号
【特許文献3】特開2000−075023号公報
【特許文献4】特開2001−051051号公報
【特許文献5】特開2006−258555号公報
【特許文献6】特開2007−187468号公報
【特許文献7】特開2007−333410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、センサが目標を追尾可能な覆域がセンサ方位方向に依存した限られた領域である場合、センサを最大限に有効活用して目標を追尾するには、センサを方位変更することも含めてセンサ割当を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1から特許文献7に記載の技術では、センサの方位は、固定されたものとして扱われているか、目標を追尾するのに十分な追尾覆域を持っているとみなされており、方位を変更することに関しては、特に考慮されておらず、センサを有効活用して多くの目標の追尾を行うことが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを、互いの影響を考慮しながら算出することができ、センサを有効活用して多くの目標の追尾を行うことができる目標追尾装置、目標追尾方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、目標を継続的に追尾する目標追尾装置であって、前記目標を探知する複数のセンサ装置と、現時刻から一定の時間毎のセンサ方位と目標へのセンサ割当とを意味するノードと、遷移可能なノード間を繋ぐアークとで構成されるネットワークの経路探索を行い、該ネットワークのコストが最小となる最小コスト経路を算出するセンサ割当・方位算出ネットワーク探索手段と、前記センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段で算出されたネットワークの最小コスト経路から、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するスケジュール算出手段と、前記センサ割当・方位変更計算手段により算出された前記センサ割当スケジュール及び前記センサ方位変更スケジュールに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御装置とを備えることを特徴とする目標追尾装置である。
【0011】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、目標を継続的に追尾する目標追尾装置であって、前記目標を探知する複数のセンサ装置と、前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理手段と、前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾手段と、前記目標追尾手段により推定された前記目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測手段と、前記センサ状態管理手段により管理される前記各センサ装置の状態と前記目標軌道予測手段により予測された前記目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算手段と、前記センサ状態管理手段より管理される前記各センサの状態と、前記目標軌道予測手段により予測された前記目標の将来位置と、前記センサ割当・方位変更計算手段により算出された前記センサ割当スケジュール及び前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御装置とを備え、前記複数のセンサ装置は、前記センサ制御装置からの指示に従って、目標追尾と方位変更とを実行し、前記目標の観測値を獲得することを特徴とする目標追尾装置である。
【0012】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、複数のセンサ装置で目標を継続的に追尾する目標追尾方法であって、前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理ステップと、前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾ステップと、前記推定された目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測ステップと、前記各センサ装置の状態と前記予測された目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算ステップと、前記各センサの状態と、前記予測された目標の将来位置と、前記センサ割当スケジュールと、前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御ステップと、前記目標追尾と前記方位変更との指示に従って、前記複数のセンサ装置が前記目標追尾と前記方位変更とを実行し、前記目標を追尾する追尾ステップとを含むことを特徴とする目標追尾方法である。
【0013】
また、上述した課題を解決するために、本発明は、複数のセンサ装置で目標を継続的に追尾する目標追尾装置のコンピュータに、前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理機能、前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾機能、前記推定された目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測機能、前記各センサ装置の状態と前記予測された目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算機能、前記各センサの状態と、前記予測された目標の将来位置と、前記センサ割当スケジュールと、前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御機能、前記目標追尾と前記方位変更との指示に従って、前記複数のセンサ装置が前記目標追尾と前記方位変更とを実行し、前記目標を追尾する追尾機能を実行させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを、互いの影響を考慮しながら算出できるため、センサを最大限に有効活用して多くの目標の追尾を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態による目標追尾装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による、センサ割当・方位算出のためのネットワークと、センサ割当スケジュールと、センサ方位変更スケジュールトとの関係を示す概念図である。
【図3】本実施形態によるネットワーク探索方法の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施形態によるネットワーク探索方法の動作の具体例を説明するための概念図である。
【図5】本実施形態によるネットワーク探索方法の動作の具体例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態による目標追尾装置の構成を示すブロック図である。図において、目標追尾手段10は、センサ装置61、62から得られた観測値に基づいて、目標の探知や、目標の状態(位置、速度など)を推定する。センサ状態管理手段20は、センサ装置61、62から得られた情報に基づいて、センサの状態(現在方位や、目標追尾状況など)を管理する。目標軌道予測手段30は、目標追尾手段10から得られた目標の状態に基づいて、目標の将来位置を予測する。
【0018】
センサ割当・方位変更計算手段40は、センサ状態管理手段20で管理されているセンサの状態と目標軌道予測手段30から得られた目標の将来位置とに基づいて、センサ割当スケジュールと方位変更スケジュールとを算出する。
【0019】
より具体的には、センサ割当・方位変更計算手段40は、センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41とスケジュール算出手段42から構成される。センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41は、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを算出するためのネットワークの経路探索を行う。スケジュール算出手段42は、センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41で算出されたネットワークの最小コスト経路から、センサ割当スケジュールと方位変更スケジュールとを算出する。
【0020】
センサ制御装置50は、センサ状態管理手段20から得られたセンサの状態と、目標軌道予測手段30から得られた目標の将来位置と、センサ割当・方位変更計算手段40で得られたセンサ割当スケジュール及びセンサ方位変更スケジュールとに基づいて、センサ装置61、62に目標追尾と方位変更とを指示する。センサ装置61、62は、センサ制御装置50からの指示に従って、目標追尾と方位変更とを実行して目標を検出し、検出により得られた目標の観測値を出力する。これにより、目標追尾装置は、目標の観測値を獲得する。
【0021】
次に、本実施形態の動作について説明する。
センサ装置61、62が観測値を得ると、それらの観測値は、目標追尾手段10、及びセンサ状態管理手段20に供給される。目標追尾手段10では、観測値に基づいて、カルマンフィルタなどの追尾処理を行い、目標の探知や、目標の状態を推定する。目標軌道予測手段30では、上記目標の状態(位置、速度)に基づいて、目標の軌道予測処理を行い、目標の将来位置を予測する。将来位置は、センサ割当を行う時刻毎に求める。
【0022】
センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41では、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールを算出するためのネットワークの経路探索を行う。経路探索を行うネットワークは、現時刻から一定の時間毎のセンサ方位と目標のセンサ割当とを意味するノードと、遷移可能なノード間を繋ぐアークとで構成される。以降、このノードが定義されている時刻のことを割当時刻と呼び、ノードが定義されている時刻の間隔のことを割当間隔と呼ぶ。
【0023】
割当間隔内で方位を変更することができないようなノード間は、アークで接合しない。探索に利用するアークのコストは、センサの同時追尾数や、割当時刻における目標の将来位置に対するセンサの追尾能力などから計算される。センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41は、現時刻から将来の一定時刻分までのこのネットワークのコストが最小となる経路を算出する。
【0024】
次に、スケジュール算出手段42では、センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41で算出されたネットワークの最小コスト経路から、センサ割当スケジュールと方位変更スケジュールとを算出する。センサ割当スケジュールは、センサ割当が変更される場合、変更となるノードの時刻に、センサが目標の追尾を開始するのに十分な余裕(追尾マージン)を持って、センサ装置61、62に対して目標の追尾を開始するように指示を出すように計画される。すなわち、追尾を開始する時刻よりも前に追尾を変更する指示を出力し、割当時刻には、指示された目標に関する観測値が得られるようにする。
【0025】
方位変更スケジュールは、方位が変更される必要がある場合、変更となるノードの時刻に十分な余裕(方位変更マージン)を持って、センサ装置61、62に対して方位の変更の指示を出すように計画される。すなわち、方位を変更する時刻よりも前に方位の変更指示を出力し、割当時刻には、指示された方位の観測値が得られるようにする。なお、現在の割当時刻に対して1つ前の前割当時刻の割当に影響を与えるのを避けるため、両マージンは、割当間隔よりも小さい必要がある。
【0026】
図2は、本実施形態による、センサ割当・方位算出のためのネットワークと、センサ割当スケジュールと、センサ方位変更スケジュールトとの関係を示す概念図である。図2を参照して、ネットワークと、センサ割当と、センサ方位との関係について説明する。
【0027】
図2には、2つのセンサ1、2があり、それぞれのセンサ1、2が2つの方位1、2に向くことができるという条件下で、1つの目標を現時刻tから時刻tまで追尾するために、センサ割当スケジュールとセンサ方位スケジュールとを算出したネットワークを表している。
【0028】
まず、現時刻tにおいて、センサ1が方位1を向いている状態で目標を追尾する。センサ2は、方位1を向いた状態で何も追尾をしていない。時刻tにおいては、センサ1が方位1の状態で引き続き目標を追尾する。時刻tにおいては、センサ1が方位2の状態で目標を追尾する。これは、センサ1が時刻tとtの間において、方位を方位1から方位2へ変更しながら目標を追尾することを意味しているため、方位変更スケジュール100が計画される。
【0029】
時刻tにおいては、センサ1から目標の追尾を引き継ぎ、センサ2が方位2の状態で目標を追尾することを意味している。現時刻tにおいて、センサ2は、方位1を向いている状態のため、時刻tに達する前に方位2へ方位を変更する方位変更スケジュール200が計画される。また、時刻tに達する前に、センサ2が目標の追尾を始めるように、センサ割当スケジュールが計画される。時刻tとtにおいては、センサ2が方位2の状態で引き続き目標を追尾する。
【0030】
センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段41におけるネットワーク探索方法の実施例の動作について説明する。このセンサ割当・方位算出のためのネットワーク探索においては、目標1つに対して探索を行う場合には、動的計画法などで最小コストとなるネットワーク経路を探すことができる。
【0031】
しかしながら、複数の目標を考慮して探索を行う場合には、それぞれの目標毎に最小コストとなるネットワーク経路を探しても、それぞれのセンサ割当スケジュールと方位変更スケジュールとが衝突してしまい、実現不能なスケジュールが算出される場合がある。
【0032】
例えば、同時刻において同じセンサの異なる方位の状態に対して目標の追尾を行うようなセンサ割当スケジュールが立案された場合、このスケジュールの実現は、不可能である。また、現時刻の1つ前の前時刻において他の目標が特定のセンサで追尾されている場合、時間内にそのセンサの方位が変更できない方位へ変更するような方位変更スケジュールが立案された場合も、このスケジュールの実現は不可能である。
【0033】
そこで、本実施形態では、全ての目標の割当を考慮しながら探索を行うために、特定時刻におけるセンサ割当とセンサ方位とを、ネットワークの経路探索問題とみなして解くことで、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを、互いの影響を考慮しながら同時に算出するようにしている。以下、本実施形態によるネットワーク探索方法について詳細に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態によるネットワーク探索方法の動作を説明するためのフローチャートである。図3を参照し、本実施形態による探索方法について説明する。ネットワークの探索は、仮説が最後の割当時刻に達するまで行う。ここで、仮説とは、目標に対するセンサの割当、及び当該センサの方位の組み合わせである。
【0035】
まず、目標のセンサ割当を行う優先度を計算する(ステップS1)。優先度は、目標の推定誤差共分散の大きさや、目標の位置などから計算される。次に、前回のループの計算において算出されたN個の仮説から、優先度が最も高い目標の現割当時刻における実現可能で、かつコストの低いノードを探索し、N×N個の仮説を生成する(ステップS2)。なお、ループの最初の計算においては、現時刻における目標のセンサ割当のノードから、優先度が最も高い目標の現割当時刻における実現可能で、かつコストの低いノードを探索し、N×N個の仮説を生成する。
【0036】
次に、優先度が最大の目標を除き、優先度の高い順に、目標毎に、対象目標の現割当時刻における実現可能で、かつコストの低いノードを探索し、仮説に追加する(ステップS3)。なお、この処理は、現割当時刻の仮説において、まだセンサ割当が行われていない目標の割当を行っていく処理のため、仮説の数は増加しない。
【0037】
次に、ステップS2とS3で作成されたN×N個の仮説の中から、コストの低い仮説をN個選定し、残りの仮説を破棄する(ステップS4)。そして、最後の割当時刻まで達したN個の仮説の中で、最もコストの低いものを探索結果として選択する(ステップS5)。
【0038】
図4、及び図5は、本実施形態によるネットワーク探索方法の動作の具体例を説明するための概念図である。図4、及び図5においては、2つの目標を2つの方位を向くことができる2つのセンサに割り当てるためのネットワークをN=2とした条件で探索するものとする。図中でのS1D1といった表記は、仮説がセンサ1の方位1の割当のノードを経由することを意味する。また、図3のステップS1における目標の優先度計算は割愛し、常に目標1の優先度が目標2よりも大きいとする。
【0039】
まず、現時刻での初期状態において、目標1は、センサ1に方位1を向いた状態で追尾されており、目標2は、センサ2に方位2を向いた状態で追尾されている。図4に示す処理状態B1では、図3に示すステップS2の処理により、現時刻のセンサ割当の状態を元に、時刻tにおける目標1の割当を計算し、2×2個の仮説を生成している。
【0040】
処理状態B2では、図3に示すステップS3の処理により、処理状態B1で生成されている4つの仮説において、既に計算済みの目標1の割当と衝突が発生しないように、目標2の割当を決定している。更に、図3に示すステップS4の処理により、仮説のコストを計算し、コストが高い仮説(仮説3と仮説4)を枝狩りして破棄することで、N個の仮説を選定している。
【0041】
この場合、仮説(仮説3と仮説4)では、目標1の割当と衝突する割当のコストが予め高く設定されている。例えば、各センサにおいて、方位の選択は、排他的な選択である場合、割当が衝突する仮説に最も高いコストが設定するようにしてもよい。また、方位の変更を伴う割当は、方位の変更がない割当より高いコストが設定するようにしてもよい。
【0042】
図5に示す処理状態B3では、図3に示すステップS2の処理により、前回の処理状態B2で選定されたN個の仮説を元に、時刻tにおける目標1の割当を計算し、2×2個の仮説を生成している。
【0043】
処理状態B4では、図3に示すステップS3の処理により、処理状態B1で生成されている4つの仮説において、既に計算済みの目標1の割当と衝突が発生しないように、目標2の割当を決定している。更に、図3に示すステップS4の処理により、仮説のコストを計算し、コストが高い仮説(仮説2と仮説3)を枝狩りして破棄することで、N個の仮説を選定している。
【0044】
上述した動作を繰り返し、ネットワークのコストが最小となる経路を計算する。
【0045】
センサ制御装置50では、センサの状態(現在方位や、目標追尾状況など)と、目標将来位置とセンサ割当スケジュールと、方位変更スケジュールとに基づいて、センサ装置61、62へ目標追尾と方位変更とを指示する。センサのビームマネージメントには、ある程度の時間がかかるため、目標追尾を指示するにあたっては、目標将来位置を利用してキューイングを行うよう指示する。
【0046】
センサへ目標追尾を指示するのにあたって、センサ割当スケジュール上では、方位変更が完了する前に追尾を行うようになっていたとしても、方位変更が完了しないと、目標がセンサの覆域内へ入らない場合には、方位変更が完了してからセンサへキューイングを行うよう指示する。また、目標追尾状況を参照し、追尾の引継ぎに成功した後に、引継ぎ前のセンサの追尾を中止する指示を出す。
【0047】
なお、ネットワーク探索方法の他の実施例として、優先度の高い目標から順番にネットワークの経路を完全に決定していく方法が挙げられる。優先度が低い目標は、既に決まっている目標の経路を考慮して、スケジュールが実現可能になる範囲で探索を行う。
【0048】
ネットワークのアークのコスト関数の定義を変更することで、利用するセンサの特性や、目標の特性に合わせた適切なセンサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを算出することができる。例えば、方位変更中に追尾ビームを撃つことができないセンサを利用する場合、センサが目標追尾しながら方位を変更することのリスクを、コスト関数の定義に含めることで、目標追尾中の方位変更を減らしたセンサ方位変更スケジュールを立案することができる。また、目標の運動性が高い場合など、目標追尾の引継ぎに失敗する可能性がある場合には、目標追尾の引継ぎのリスクをコスト関数の定義に含めることで、目標追尾の引継ぎを減らしたセンサ割当スケジュールを立案することができる。
【0049】
上述した実施形態によれば、特定時刻におけるセンサ割当とセンサ方位とを、ネットワークの経路探索問題とみなして解くことで、センサ割当スケジュールとセンサ方位変更スケジュールとを、互いの影響を考慮しながら算出することができ、この結果、センサを有効活用して多くの目標の追尾を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
複数の航空機、ミサイル、車両、船舶、などを複数のレーダで追尾する場合に利用できる。また、複数の車両、人物などを複数のカメラで追尾する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0051】
10 目標追尾手段
20 センサ状態管理手段
30 目標軌道予測手段
40 センサ割当・方位変更スケジュール計算手段
41 センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段
42 スケジュール算出手段
50 センサ制御装置
61、62 センサ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標を継続的に追尾する目標追尾装置であって、
前記目標を探知する複数のセンサ装置と、
現時刻から一定の時間毎のセンサ方位と目標へのセンサ割当とを意味するノードと、遷移可能なノード間を繋ぐアークとで構成されるネットワークの経路探索を行い、該ネットワークのコストが最小となる最小コスト経路を算出するセンサ割当・方位算出ネットワーク探索手段と、
前記センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段で算出されたネットワークの最小コスト経路から、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するスケジュール算出手段と、
前記センサ割当・方位変更計算手段により算出された前記センサ割当スケジュール及び前記センサ方位変更スケジュールに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御装置と
を備えることを特徴とする目標追尾装置。
【請求項2】
目標を継続的に追尾する目標追尾装置であって、
前記目標を探知する複数のセンサ装置と、
前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理手段と、
前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾手段と、
前記目標追尾手段により推定された前記目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測手段と、
前記センサ状態管理手段により管理される前記各センサ装置の状態と前記目標軌道予測手段により予測された前記目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算手段と、
前記センサ状態管理手段より管理される前記各センサの状態と、前記目標軌道予測手段により予測された前記目標の将来位置と、前記センサ割当・方位変更計算手段により算出された前記センサ割当スケジュール及び前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御装置と
を備え、
前記複数のセンサ装置は、前記センサ制御装置からの指示に従って、目標追尾と方位変更とを実行し、前記目標の観測値を獲得する
ことを特徴とする目標追尾装置。
【請求項3】
前記センサ割当・方位変更計算手段は、
現時刻から一定の時間毎のセンサ方位と目標へのセンサ割当とを意味するノードと、遷移可能なノード間を繋ぐアークとで構成されるネットワークの経路探索を行い、該ネットワークのコストが最小となる最小コスト経路を算出するセンサ割当・方位算出ネットワーク探索手段と、
前記センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段で算出されたネットワークの最小コスト経路から、前記センサ割当スケジュールと前記方位変更スケジュールとを算出するスケジュール算出手段と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の目標追尾装置。
【請求項4】
前記センサ割当・方位算出ネットワーク探索手段は、
前記ネットワークの探索に利用するアークのコストを、前記複数のセンサ装置の同時追尾数、または前記ノードが定義されている割当時刻における前記目標の将来位置に対する前記複数のセンサ装置の追尾能力のいずれかから算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の目標追尾装置。
【請求項5】
前記スケジュール算出手段は、
前記センサ割当スケジュールとして、前記各センサ装置が前記目標の追尾を開始するのに十分な追尾マージンを、前記目標の追尾開始タイミングに付与するとともに、
前記方位変更スケジュールとして、前記各センサ装置が方位を変更するのに十分な方位変更マージンを、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングに付与する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の目標追尾装置。
【請求項6】
前記スケジュール算出手段は、
前記追尾マージン、及び前記方位変更マージンを、前記ノードが定義されている割当時刻の間隔である割当間隔よりも小さくする
ことを特徴とする請求項5に記載の目標追尾装置。
【請求項7】
複数のセンサ装置で目標を継続的に追尾する目標追尾方法であって、
前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理ステップと、
前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾ステップと、
前記推定された目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測ステップと、
前記各センサ装置の状態と前記予測された目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算ステップと、
前記各センサの状態と、前記予測された目標の将来位置と、前記センサ割当スケジュールと、前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御ステップと、
前記目標追尾と前記方位変更との指示に従って、前記複数のセンサ装置が前記目標追尾と前記方位変更とを実行し、前記目標を追尾する追尾ステップと
を含むことを特徴とする目標追尾方法。
【請求項8】
前記センサ割当・方位変更計算ステップは、
現時刻から一定の時間毎のセンサ方位と目標のセンサ割当とを意味するノードと、遷移可能なノード間を繋ぐアークとで構成されるネットワークの経路探索を行い、該ネットワークのコストが最小となる最小コスト経路を算出するセンサ割当・方位算出ネットワーク探索ステップと、
前記算出されたネットワークの最小コスト経路から、前記センサ割当スケジュールと前記方位変更スケジュールとを算出するスケジュール算出ステップと
を含むことを特徴とする請求項7に記載の目標追尾方法。
【請求項9】
前記センサ割当・方位算出ネットワーク探索ステップは、
前記目標へのセンサ割当を行う優先度を計算する第1のステップと、
前回算出されたN個の仮説から、優先度が最も高い目標の現割当時刻における実現可能で、かつコストの低いノードを探索し、N×N個の仮説を生成する第2のステップと、
前記N×N個の仮説のうち、優先度が最大の目標を除き、優先度の高い順に、目標毎に、対象目標の現割当時刻における実現可能で、かつコストの低いノードを探索し、前記N×N個の仮説に追加する第3のステップと、
前記N×N個の仮説の中から、コストの低い仮説をN個選定し、残りの仮説を破棄する第4のステップと
を前記ノードが定義されている割当時刻の最後の割当時刻に達するまで、前記割当時刻毎に実行し、
前記最後の割当時刻まで達した時点のN個の仮説の中で、最もコストの低いものを探索結果として選択する第5のステップと
を含むことを特徴とする請求項8に記載の目標追尾方法。
【請求項10】
複数のセンサ装置で目標を継続的に追尾する目標追尾装置のコンピュータに、
前記複数のセンサ装置の状態を管理するセンサ状態管理機能、
前記複数のセンサ装置から得られる観測値に基づいて、前記目標の状態を推定する目標追尾機能、
前記推定された目標の状態に基づいて、前記目標の将来位置を予測する目標軌道予測機能、
前記各センサ装置の状態と前記予測された目標の将来位置とに基づいて、前記目標の追尾開始タイミングを示すセンサ割当スケジュールと、前記各センサ装置に対する方位変更タイミングを示す方位変更スケジュールとを算出するセンサ割当・方位変更計算機能、
前記各センサの状態と、前記予測された目標の将来位置と、前記センサ割当スケジュールと、前記センサ方位変更スケジュールとに基づいて、前記各センサ装置に目標追尾と方位変更とを指示するセンサ制御機能、
前記目標追尾と前記方位変更との指示に従って、前記複数のセンサ装置が前記目標追尾と前記方位変更とを実行し、前記目標を追尾する追尾機能
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate