説明

目標類別装置

【課題】特徴量の信頼性の動的な変動を考慮することで、より高精度な区間値ファジィ推論方式による目標類別を可能とする目標類別装置を得る。
【解決手段】目標観測手段101により類別対象の目標が有する特徴量を得て、特徴量と特徴の度合いを表す入力ファジィ区間値とを関連付けたメンバシップ関数106と、メンバシップ関数106の区間の幅として定義できる特徴の曖昧さを特徴量から信頼性算出処理部108により算出された信頼性係数とを用いて、区間値ファジィ化処理部102により目標観測手段101によって得られた特徴量のファジィ化を行い、入力ファジィ区間値を得て、これから推論処理部103により目標種類の確からしさを表す出力ファジィ区間値を算出し、非ファジィ化処理部104によって算出された出力ファジィ区間値から目標種類を確定し、表示装置105に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特徴量の信頼性を考慮できるファジィ化処理と区間値ファジィ推論処理を行うことで、より高精度に目標類別結果を得るようにした目標類別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の区間値ファジィ値を用いたファジィ推論方式による目標類別装置(非特許文献1)では、メンバシップ関数の形状や区間の幅を静的なパラメータとして用いていた。メンバシップ関数とは、目標観測手段が得た速度や高度等の特徴量を、高速らしさや高高度らしさ等の入力ファジィ区間値に換算するための関数であり、メンバシップ関数の区間幅は、特徴量の確からしさと見なすことができるが、この確からしさも経験的・実験的に変動不可なパラメータとして定める必要があった。
非特許文献1では、センサや信号処理装置等の目標観測手段で速度や高度等の特徴量を得る。この特徴量を区間値ファジィ化処理部でメンバシップ関数を用いてファジィ化を行い、入力ファジィ区間値を得る。次いで、推論処理部で、入力ファジィ区間値と関係行列より出力ファジィ区間値をファジィ推論により算出する。次いで、非ファジィ化処理部が、出力ファジィ区間値より目標種類を確定し、その処理結果を表示装置に表示する。
【0003】
【非特許文献1】電子情報通信学会論文誌D−1、Vol.74−D−I、No.2、野本弘平、「逐次型ファジィ後向き推論を用いた目標類別」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に示される従来の区間値ファジィ値を用いたファジィ推論方式による目標類別装置において、メンバシップ関数を定義するにあたり、区間幅(メンバシップ関数の上限と下限の間のなす幅)を経験的・実験的に特徴量の大きさのみにより決定される静的な値として定める必要があった。この区間幅は、ファジィ推論において特徴量の確からしさと見なすことができる(幅が大きいほど信頼性が低い)が、現実には同じ特徴量の大きさであっても信頼性は動的に変動する。
例えば、特徴量の観測時点での、環境条件に影響されるセンサの精度(温度が高いとセンサの精度が低くなる等)、目標観測手段の特徴量取得アルゴリズム特有の精度(処理対象目標数が増えると精度が低くなる等)、類別対象目標の距離や姿勢により生じる精度(遠距離の目標はセンサの性能上、精度が低くなる等)が特徴量の信頼性に大きく影響する。
非特許文献1のような従来装置では、リアルタイムに変動する信頼性に応じた類別処理ができないことを考えると、上記は大きな問題となる。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、特徴量の信頼性の動的な変動を考慮することで、より高精度な区間値ファジィ推論方式による目標類別を可能とする目標類別装置を得ることを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる目標類別装置においては、類別対象の目標が有する特徴の計測値である特徴量を得る目標観測手段、この目標観測手段により得られる特徴量と、この特徴値に対応して特徴の度合いを上限値と下限値とからなる区間で表す入力ファジィ区間値とを定義したメンバシップ関数を格納した記憶手段、メンバシップ関数の区間の幅として定義される特徴の曖昧さを目標観測手段により得られた特徴量から信頼性係数として算出する信頼性係数算出処理手段、メンバシップ関数と信頼性係数算出処理手段によって算出された信頼性係数とに基づき、目標観測手段によって得られた特徴量のファジィ化を行い、入力ファジィ区間値を得る区間値ファジィ化処理手段、この区間値ファジイ化処理手段により得られた入力ファジィ区間値から、目標種類の確からしさを表す出力ファジィ区間値をファジィ推論により算出する推論処理手段、この推論処理手段により算出された出力ファジィ区間値から目標種類を確定する非ファジィ化処理手段、及びこの非ファジイ化処理手段により確定された目標種類を表示する表示装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、以上説明したように、類別対象の目標が有する特徴の計測値である特徴量を得る目標観測手段、この目標観測手段により得られる特徴量と、この特徴値に対応して特徴の度合いを上限値と下限値とからなる区間で表す入力ファジィ区間値とを定義したメンバシップ関数を格納した記憶手段、メンバシップ関数の区間の幅として定義される特徴の曖昧さを目標観測手段により得られた特徴量から信頼性係数として算出する信頼性係数算出処理手段、メンバシップ関数と信頼性係数算出処理手段によって算出された信頼性係数とに基づき、目標観測手段によって得られた特徴量のファジィ化を行い、入力ファジィ区間値を得る区間値ファジィ化処理手段、この区間値ファジイ化処理手段により得られた入力ファジィ区間値から、目標種類の確からしさを表す出力ファジィ区間値をファジィ推論により算出する推論処理手段、この推論処理手段により算出された出力ファジィ区間値から目標種類を確定する非ファジィ化処理手段、及びこの非ファジイ化処理手段により確定された目標種類を表示する表示装置を備えたので、目標の状態や観測条件による特徴量の信頼性の変動に対し、柔軟に信頼性を制御可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による目標類別装置の構成を示すブロック図である。
図1において、センサや信号処理装置等の目標観測手段101により、類別(目標の種類を特定する)対象の目標が有する速度、高度等の運動情報や、全長等の目標形状情報等の目標の特徴について、計測によって目標種類を特定するための複数の特徴量を得る。メンバシップ関数106は、特徴量を、特徴の度合いを区間で表すファジィ区間値に換算するための関数であり、記憶手段に格納されている。メンバシップ関数は、特徴量に応じて、出力する入力ファジイ区間値の上限値と下限値を規定し、この上限値と下限値との差を区間の幅としている。(後述の図2参照)
信頼性算出処理部108(信頼性係数算出処理手段)は、特徴量の信頼性に影響を与える要素(目標距離等)を信頼性係数に換算する。この信頼性係数は、メンバシップ関数の区間の幅を制御するものである。
区間値ファジィ化処理部102(区間値ファジィ化処理手段)は、目標観測手段101から入力される特徴量からメンバシップ関数106と信頼性係数を用いてファジィ化を行い、入力ファジィ区間値を算出する。従来方式とは、図2において区間の幅が制御される点で異なる。
関係行列107は、入力ファジィ区間値と目標種類の確からしさを表す出力ファジィ区間値との関係の強さを表すもので、記憶手段に格納されている。推論処理部103(推論処理手段)では、入力ファジィ区間値と関係行列107より出力ファジィ区間値をファジィ推論により算出する。非ファジィ化処理部104(非ファジィ化処理手段)は、出力ファジィ区間値より目標種類を確定する。その処理結果を表示装置105に表示する。
図2は、この発明の実施の形態1による目標類別装置の区間値ファジイ化処理を示す概念図である。
図2においては、高度を高高度の度合い(高い高度の度合いで、右肩上がりになる。なお、低い高度の度合いの場合は、右肩下がりになる。)に換算するメンバシップ関数の例を示している。
図2では、高度400mという特徴量が入力されると、グラフのように、メンバシップ関数の上限が0.7であり、下限が0.3であるから、高高度の度合いは、0.3〜0.7となり、これが区間値ファジイ化処理により、ファジイ値として出力される。なお、メンバシップ関数の上限値と下限値の間が、区間の幅である。
【0009】
次に、動作について説明する。
この発明は、区間値ファジイ化処理部102の処理を特徴量の信頼性に応じたものにする。
このため、信頼性算出処理部108により、特徴量の信頼性に与える要素を信頼性係数に換算し、これを用いて、メンバシップ関数106の区間の幅を制御するようにする。
メンバシップ関数106は、特徴量を、特徴の度合いを区間で表すファジィ区間値に換算するための関数である。例えば、速度3Machは、高速である度合いが0.7〜0.9と換算するメンバシップ関数を定義できる。ファジィ区間値は、0.0〜1.0の上限値と下限値で定義され、この上限値と下限値の差からなる区間の幅が特徴の曖昧性と見なせる。例えば、0.7〜0.9と0.8〜0.9の高速らしさのファジィ区間値について、双方0.9の高速らしさを有する可能性があるが、前者は0.7までの高速らしさを有する可能性があり、後者に比べて曖昧である。
従来方式では、メンバシップ関数106が、パラメータ固定の関数であったのに対し、本発明では、信頼性算出処理部108を設け、特徴量の信頼性に影響を与える要素(目標距離等)を信頼性係数に換算するようにした。これにより、区間値ファジィ化処理部102は、メンバシップ関数106に信頼性係数を乗じる等の手段を用いてファジイ化を行い、入力ファジイ区間値を算出することにより、図2に示すような区間の幅を制御することで、目標の状態や観測条件による特徴量の信頼性の変動に対し柔軟に信頼性を制御可能とするものである。
【0010】
実施の形態1によれば、信頼性算出処理部により信頼性係数を算出し、区間値ファジィ化処理部で、メンバシップ関数と信頼性係数を用いて特徴量のファジイ化を行うので、目標の状態や観測条件による特徴量の信頼性の変動に対し、柔軟に信頼性を制御可能とすることができる。
すなわち、特徴量の信頼性を動的に判断した上でファジイ化処理を行うことで、より高精度に目標類別結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1による目標類別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による目標類別装置の区間値ファジイ化処理を示す概念図である。
【符号の説明】
【0012】
101 目標観測手段
102 区間値ファジイ化処理部
103 推論処理部
104 非ファジイ化処理部
105 表示装置
106 メンバシップ関数
107 関係行列
108 信頼性算出処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
類別対象の目標が有する特徴の計測値である特徴量を得る目標観測手段、この目標観測手段により得られる特徴量と、この特徴値に対応して上記特徴の度合いを上限値と下限値とからなる区間で表す入力ファジィ区間値とを定義したメンバシップ関数を格納した記憶手段、上記メンバシップ関数の上記区間の幅として定義される上記特徴の曖昧さを上記目標観測手段により得られた特徴量から信頼性係数として算出する信頼性係数算出処理手段、上記メンバシップ関数と上記信頼性係数算出処理手段によって算出された信頼性係数とに基づき、上記目標観測手段によって得られた特徴量のファジィ化を行い、上記入力ファジィ区間値を得る区間値ファジィ化処理手段、この区間値ファジイ化処理手段により得られた入力ファジィ区間値から、目標種類の確からしさを表す出力ファジィ区間値をファジィ推論により算出する推論処理手段、この推論処理手段により算出された出力ファジィ区間値から目標種類を確定する非ファジィ化処理手段、及びこの非ファジイ化処理手段により確定された目標種類を表示する表示装置を備えたことを特徴とする目標類別装置。

【図1】
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【図2】
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