説明

目玉継手の組立構造体

【課題】 目玉継手の組立構造体は、搬送時や組付作業時にパッキン20が脱落することがなく、組付作業性に優れていること。
【解決手段】 目玉継手の組立構造体は、目玉部16を有する継手本体12と、目玉部16に装着されるパッキン20と、ボルト孔18を貫通することにより相手部品Ptに締結されるボルト30とを備えている。パッキン20の下シール部24には、貫通穴24aの内周縁から上記ボルト孔18の内周壁に沿うように延設された延設部24bが形成されている。延設部24bの内壁は、上記雄ネジ34に螺合する雌ネジ24cが形成され、ボルト30の雄ネジ34にネジ込まれることにより、パッキン20を継手本体12に強固に装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるブレーキシステムの油圧ホースなどの接続に使用される目玉継手の組立構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の目玉継手の組立構造体として、目玉部を有する継手本体と、目玉部に装着されるパッキンと、目玉部のボルト孔を貫通することにより相手部品に締結されるボルトとを備えている。こうした目玉継手の組立構造体として、搬送中のシール面の損傷防止を兼ねたパッキンをボルトで目玉部に装着したものが知られている(特許文献1,2)。すなわち、特許文献1の技術は、上シール部と、下シール部と、上シール部と下シール部とを連結する連結部とを備えたパッキンを用いて、連結部で目玉部から突設した係合突起に係合させることで目玉部とパッキンとを一体化させる構成である。また、特許文献2の技術は、上シール部と下シール部とを連結するとともに、下シール部にボルトの雄ネジに係合する脱落防止突起を設けることでボルトにパッキンを引っ掛けた構成である。
【0003】
しかし、特許文献1の技術では、パッキンの連結部の構成および目玉部の係合突起の構成が複雑になり、しかも、ボルトを仮止めするためにはキャップなどを別途用意する必要があり、部品点数が増加するという問題がある。また、特許文献2の技術では、脱落防止突起とボルトの雄ネジとの係合力が小さく、目玉継手の組立構造体の搬送中にパッキンが脱落し易いという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平7−77294号公報
【特許文献2】特開2003−56705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、簡単な構成で、搬送中にパッキンが脱落することがなく、しかも組付作業性に優れた目玉継手構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
上シール面および下シール面を有する目玉部と、上記上シール面および上記下シール面に臨むとともに該目玉部に貫通形成されたボルト孔とを有する継手本体と、
上記上シール面に密着することで上記ボルト孔を外部にシールするとともに貫通穴を有する上シール部と、上記下シール面に密着することで上記ボルト孔を外部に対してシールするとともに貫通穴を有する下シール部と、上記上シール部と上記下シール部とを連結する連結部とを有するパッキンと、
ボルト頭および雄ネジを有し、上記上シール部の貫通穴、上記ボルト孔および上記下シール部の上記貫通穴を貫通し、上記ボルト頭で上記上シール部を上記上シール面に対して押し付けるとともに、上記雄ネジが上記下シール部の貫通穴を貫通するボルトと、
を備え、
上記下シール部は、上記貫通穴の内周縁から上記ボルト孔の内周壁に沿うように延設された延設部を備え、該延設部の内壁は、上記雄ネジに螺合する雌ネジを有すること、を特徴とする。
【0007】
本発明にかかる目玉継手の組立構造体は、ボルトを上シール部の貫通穴、ボルト孔に挿入し、延設部の雌ネジに雄ネジをネジ込むとともに、下シール部の貫通穴からボルトの先端部を突出させる。このような組付状態にて、目玉継手の組立構造体は、搬送される。継手本体に組み付けられたパッキンは、下シール部の延設部の雌ネジにボルトの雄ネジをネジ込むことにより、継手本体に一体的かつ強固に組み付けられているので、搬送中や車両の組立工程における作業中に脱落することがない。
また、目玉継手の組立構造体は、パッキンを継手本体に一体的に組み付けているから、車両組立時に、パッキンを組み付けやボルトの挿入作業が不要となり、作業工程を簡略化することができる。
さらに、パッキンの雌ネジは、ボルトの雄ネジと同じ形状で雄ネジに螺合しているので、車両組立時におけるボルトの締結作業に支障となることもない。
【0008】
本発明の好適な態様として、上記雌ネジは、上記雄ネジまたは雄ネジに同形状の工具をネジ込んで塑性変形することにより形成することができる。すなわち、雌ネジの加工手段として、ドリルを用いるほか、仮止めの際にボルトをネジ込むと同時に雄ネジで延設部の内壁に雄ネジを同時に形成してもよく、これにより、加工するための治具が不要で工程を簡略化することができる。
【0009】
他の好適な態様として、上記継手本体は、ブレーキホースに接続されるオイル通路を有し、該オイル通路の一部は、上記ボルトの外周部、上記ボルト孔の内周壁および上記延設部の端部により囲まれた間隙で構成することができる。この構成により、延設部の厚みの間隙を利用してオイル通路が形成され、オイル通路を形成するためにボルト孔の内周壁に切削加工を施したりする必要がなく、加工コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0011】
(1) 目玉継手の組立構造体の構成
図1は本発明の一実施例にかかる目玉継手の組立構造体を示す断面図である。目玉継手の組立構造体は、自動車のブレーキ系統に使用され、つまりブレーキホースBHとキャリパなどの相手部品Ptとを接続するために使用されるものである。目玉継手の組立構造体は、継手本体12と、ボルト30と、パッキン20とを備えている。
【0012】
継手本体12は、ブレーキホースBHを接続するためのホース接続部14を備えている。ホース接続部14は、有底筒体のソケット14aと、その内部に配置されたニップル14bとを有している。ソケット14aとニップル14bとの間には、ブレーキホースBHの端部が挿入され、ソケット14aをかしめることによりブレーキホースBHがホース接続部14に接続されている。ニップル14bは、ホース接続部14の軸線に沿って配置され、ブレーキホースBHに接続されるオイル通路14cを備えている。
【0013】
図2は図1の要部を拡大して示す断面図である。継手本体12は、ホース接続部14と一体に形成された目玉部16と、目玉部16の側壁から突設され相手部品Ptの係合穴Ptbに突入することで回り止めする鉤部17とを備えている。目玉部16は、その上面および下面を上シール面16aおよび下シール面16bとしており、この上シール面16aおよび下シール面16bを貫通するようにボルト孔18が形成されている。このボルト孔18は、オイル通路14cに接続されている。
【0014】
図3はパッキン20を示す斜視図である。図2および図3において、パッキン20は、円板状の上シール部22および下シール部24と、上シール部22と下シール部24とを連結する連結部26とを備え、これらを一体に形成している。上シール部22は、目玉部16の上シール面16aをシールするものであり、ボルト30を貫通させるための貫通穴22aを有している。下シール部24は、目玉部16の下シール面16bをシールするものであり、ボルト30を貫通させるための貫通穴24aを有している。連結部26は、上シール部22と下シール部24のそれぞれの外周端を連結する細い板で形成されており、ボルト孔18の側壁を回り込むように配置されるものである。
また、下シール部24には、延設部24bが形成されている。延設部24bは、貫通穴24aの内周縁からボルト孔18の内周壁に沿うように筒状に延設されている。延設部24bの内壁には、ボルト30の雄ネジ34に螺合する雌ネジ24cが形成されている。
パッキン20は、通常、軟質金属(例えば銅)の板金から打ち抜きプレス加工した後に、曲げ加工や後述する塑性加工により製造することができる。
【0015】
図2において、ボルト30は、上シール部22の貫通穴22a、ボルト孔18および下シール部24の貫通穴24aを貫通するとともに、パッキン20の雌ネジ24cに螺合するとともに相手部品Ptのネジ溝Ptaに螺着することにより継手本体12を相手部品Ptに固定するものである。このボルト30による締結状態において、ボルト頭32が上シール部22を上記上シール面16aに対して押し付けるとともに、下シール面16bが下シール部24を相手部品Ptに押し付けることにより、ボルト孔18を外部に対してシールしている。
【0016】
また、ボルト30には、軸心を通るオイル通路36が形成されている。ボルト30の外周部、ボルト孔18の内周壁および延設部24bの上端部により囲まれた間隙にオイル通路18aが形成されている。このようなオイル通路により、ブレーキホースBH内を流れるブレーキオイルは、オイル通路14c、オイル通路18a、ボルト孔18のオイル通路36を経て相手部品Pt(ブレーキキャリパ)のオイル通路に導かれ、または逆の流れによって相手部品PtからブレーキホースBHへ導かれる。
【0017】
(2) 組付作業
次に目玉継手の組立構造体の組付工程について説明する。図4は目玉継手の組立構造体の組付工程を説明する説明図である。図4(A)に示すように、ホース接続部14のソケット14aとニップル14bとの間隙に、ブレーキホースBHの端部を挿入し、ソケット14aの外周部をかしめることによりブレーキホースBHをホース接続部14に固定する。次に、図4(B)に示すように、パッキン20を目玉部16に装着する。このとき、上シール部22を上シール面16aに、下シール部24を下シール面16bに位置合わせする。続いて、図4(C)に示すように、パッキン20の下シール部24に延設部24bを形成する。すなわち、延設部24bは、下シール部24の貫通穴24aの周縁部をプレス加工によりボルト孔18内に向けて折曲することにより成形する。そして、図4(D)に示すように、延設部24bの内壁に雌ネジ24cを形成する。すなわち、図5に示すようにボルト30の雄ネジ34と同一形状のドリルDrにより延設部24bの内壁に雌ネジ24cを形成する。そして、図6に示すように、ボルト30を上シール部22の貫通穴22a、ボルト孔18に挿入し、延設部24bの雌ネジ24cに雄ネジ34をネジ込むとともに、下シール部24の貫通穴24aからボルト30の先端部を突出させる。これにより図7に示す、搬送用の仮組み状態の目玉継手の組立構造体が得られる。
【0018】
そして、車両の組立工程にて、図1に示すように目玉部16の鉤部17を係合穴Ptbに挿入するとともに、ボルト30の先端部をネジ溝Ptaに位置合わせし、ボルト30をネジ込むことにより相手部品Ptに目玉継手を組み付ける。
【0019】
(3) 目玉継手の組立構造体の作用・効果
上記目玉継手の組立構造体にかかる実施例により、以下の作用効果を奏する。
(3)−1 パッキン20は、下シール部24の延設部24bの雌ネジ24cにボルト30の雄ネジ34をネジ込むことにより、継手本体12に一体的かつ強固に組み付けられているので、搬送中や車両の組立工程における作業中に脱落することがない。
(3)−2 目玉継手の組立構造体は、パッキン20を継手本体12に一体的に組み付けているから、車両組立時に、パッキン20の組み付けやボルト30の挿入作業が不要となり、作業工程を簡略化することができる。
(3)−3 パッキン20の雌ネジ24cは、ボルト30の雄ネジ34と同じ形状で雄ネジ34に螺合しているので、車両組立時におけるボルト30の締結作業に支障となることもない。
(3)−4 パッキン20の延設部24bは、ボルト孔18に挿入されたときにその厚さ分の隙間を、オイル通路として利用することができるので、オイル通路を形成するためにボルト孔18の内周壁に切削加工を施したりする必要がなく、加工コストを低減できる。
【0020】
(4) 他の実施例
この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
(4)−1 図8は他の実施例にかかるパッキンを示す斜視図である。本実施例のパッキン20Bは、下シール部24Bに設けた延設部24Bbが貫通穴24Baの周縁部の一部から突設され、内壁に雌ネジ24Bcが形成されている。この実施例によると、延設部24Bbの塑性加工の変形量が少なくてすみ、加工を簡単にできる。
(4)−2 上記実施例では、雌ネジ24cの加工手段として、ドリルDrを用いたが、これに限らず、仮止めの際にボルト30をネジ込むと同時に雄ネジで延設部の内壁部を塑性変形させて雌ネジ24cを同時に形成してもよく、これにより、加工するための治具が不要で工程を簡略化することができる。
(4)−3 上記実施例の延設部24bは、目玉部16に装着した後に塑性加工により形成したが、目玉部16に相当する加工治具を用いて予め形成してもよい。
(4)−4 上記実施例では、ブレーキ系統に適用した構成について説明したが、これに限らず、他の継手付きホースに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例にかかる目玉継手の組立構造体を示す断面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】パッキンを示す斜視図である。
【図4】目玉継手の組立構造体の組付工程を説明する説明図である。
【図5】パッキンの加工工程を説明する説明図である。
【図6】目玉継手の組立構造体の組付工程を説明する説明図である。
【図7】目玉継手の組立構造体を組み付けた状態を説明する説明図である。
【図8】他の実施例にかかるパッキンを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
10...目玉継手
12...継手本体
14...ホース接続部
14a...ソケット
14b...ニップル
14c...オイル通路
16...目玉部
16a...上シール面
16b...下シール面
17...鉤部
18...ボルト孔
18a...オイル通路
20...パッキン
20B...パッキン
22...上シール部
22a...貫通穴
24...下シール部
24B...下シール部
24a...貫通穴
24b...延設部
24Ba...貫通穴
24c...雌ネジ
24Bc...雌ネジ
24Bb...延設部
26...連結部
30...ボルト
32...ボルト頭
34...雄ネジ
36...オイル通路
BH...ブレーキホース
Dr...ドリル
Pt...相手部品
Pta...ネジ溝
Ptb...係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上シール面(16a)および下シール面(16b)を有する目玉部(16)と、上記上シール面(16a)および上記下シール面(16b)に臨むとともに該目玉部(16)に貫通形成されたボルト孔(18)とを有する継手本体(12)と、
上記上シール面(16a)に密着することで上記ボルト孔(18)を外部にシールするとともに貫通穴(22a)を有する上シール部(22)と、上記下シール面(16b)に密着することで上記ボルト孔(18)を外部に対してシールするとともに貫通穴(24a)を有する下シール部(24)と、上記上シール部(22)と上記下シール部(24)とを連結する連結部(26)とを有するパッキン(20)と、
ボルト頭(32)および雄ネジ(34)を有し、上記上シール部(22)の貫通穴(22a)、上記ボルト孔(18)および上記下シール部(24)の上記貫通穴(24a)を貫通し、上記ボルト頭(32)で上記上シール部(22)を上記上シール面(16a)に対して押し付けるとともに、上記雄ネジ(34)が上記下シール部(24)の貫通穴(24a)を貫通するボルト(30)と、
を備え、
上記下シール部(24)は、上記貫通穴(24a)の内周縁から上記ボルト孔(18)の内周壁に沿うように延設された延設部(24b)を備え、該延設部(24b)の内壁は、上記雄ネジ(34)に螺合する雌ネジ(24c)を有すること、を特徴とする目玉継手の組立構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の目玉継手の組立構造体において、
上記雌ネジ(24c)は、上記雄ネジ(34)または雄ネジ(34)に同形状の工具をネジ込んで塑性変形することにより形成した目玉継手の組立構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の目玉継手の組立構造体において、
上記継手本体(12)は、ブレーキホースに接続されるオイル通路を有し、
該オイル通路の一部は、上記ボルト(30)の外周部、上記ボルト孔(18)の内周壁および上記延設部(24b)の端部により囲まれた間隙で構成されている目玉継手の組立構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92773(P2007−92773A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279339(P2005−279339)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】