説明

直交フラックスゲート式磁界センサー

【解決手段】外部磁界Hextを測定する直交フラックスゲート式センサーであって、励磁電流を送電する導電体と、前記の励磁電流により生成された磁界内にて飽和できる強磁性材と、前記の磁性材近辺の磁界の変化を検出するための少なくとも1つのピックアップコイルとを具備する。前記の励磁導電体は、励起ロッドを構成する、導電性の非磁性材のほぼ直線の伸長部からなる。前記の磁性材は、被覆体として励起ロッドを取り囲む。
【選択図面】 図1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体直交フラックスゲート式磁界センサー、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弱い磁界を所定の精度で測定するために、低価格で小型の磁界センサーの多様な適用性が求められている。最も一般的で感度の良い磁気センサーは、容易に飽和可能な強磁性コアを備えたフラックスゲート式である。フラックスゲート式磁界センサーは、DC磁界または低周波AC磁界の強度や方向の測定に利用できる。典型的な利用例として、電子コンパス、電流センサー、磁気インク読取、フェロ素材検出、非破壊検査(非特許文献1、2)などがある。フラックスゲート式センサーの主要な長所は、感度が高くてオフセット値が低いことである。一方、従来のフラックスゲート式センサーには、磁界操作範囲が狭く、残磁性が高いという問題がある(非特許文献3)。
【0003】
フラックスゲート式センサーの動作原理は、AC励起磁界による強磁性材の周期飽和に基づいて、外部磁界に比例したコア部を透過した磁束の変化を検出するものである。フラックスゲート式センサーとして、測定磁界に平行な励起磁界をもつ平行フラックスゲート構造と測定磁界に垂直な励起磁界をもつ直交フラックスゲート構造の2つの構造タイプが周知である。
【0004】
フラックスゲート式磁界センサーの製造を簡単にするには、コイルを備えた単一の強磁性コア部を利用すればよい。単一の強磁性コア部を採用した場合、フラックスゲート式センサーの信号処理ダイナミック特性を高めるには、直交フラックスゲート構造が好ましい。検出コイルを励起磁界に対する直交位置に配置することにより、測定する磁界を励起磁界から物理的に切り離すのである。それゆえ、測定信号への励起磁界の影響がなくせる(非特許文献6)。
【0005】
従来の単一コア部のフラックスゲート式センサーの直交構造を、図1に示す。環状の励起磁界Hexcは、コア部Cの軸と直交、つまり結果として、外部から付与された磁界Hextと直交する。その構造により、検出コイルSを励起コイルEから分離することができる。
【0006】
しかしながら、図1に示す従来の直交フラックスゲート式センサーは、特に、強磁性コア部の周囲に励起コイルを巻き付け、コア部に設けた中心凹部からコイル端部に通電する必要があるため、製造コストが高くなる。また、コア部の周囲に検出コイルを巻き付けることも、コスト削減に貢献するものではない。励起コイルの巻き付け構成においては、実際のコイル長が制限される。さらに、その従来構造には、小型電子機器におけるセンサーの縮小化や一体化の可能性にも制限がある。
【0007】
上述の観点から、従来のフラックスゲート式センサーを一体化して小型で低コスト構造にするため、いくつかの対策技術が開発されている。例えば、非特許文献7、8、9に記載の平面構造は、常に平行形状、差動形態のオープンコア構造を採用しており、以下のような特徴をもつ。
【0008】
・2つの強磁性コア部、または、単一の強磁性コア体の2つの部位を備える。
・コア部の縦方向への励磁。
・対向方向、差動形態で励磁された2つのコア部を備える。
・センサーの精度および励磁界性能の要件を、同時に決定するのは、コア部のサイズ(コア域内でのコア部長さ)とコア部の磁気特性である。
・コア部の励磁および/または測定磁界の検出は、コア部に内蔵された3Dマイクロ機械加工されたコイル、または、CMOS技術の金属加工法で作成されたコア部下方に配備された平面コイルで行われる。
【0009】
【非特許文献1】F.Kaluza,A.Gruger,H.Gruger、「フラックスゲート式センサーの新規および将来の応用例」、センサー&アクチュエータ誌、A106巻、ページ48〜51、2003年。
【非特許文献2】P.Ripka、「フラックスゲート式センサーの先端技術」、センサー&アクチュエータ誌、A106巻、ページ8〜14、2003年。
【非特許文献3】Pavel Ripka、「磁気センサーと磁力計」、アルテックハウス出版、2001年1月刊。
【非特許文献4】J.M.Quemperら、「フォトレジストモールド層を使ったパーマロイ電気メッキ法」、センサー&アクチュエータ誌、A74巻、ページ1〜4、1999年。
【非特許文献5】J.A.Osborn、「一般楕円の消磁係数」、物理レビュ誌、67巻11〜12号、6月1−15日、ページ351〜357、1945年。
【非特許文献6】F.Primdahl、「フラックスゲート式磁力計」、J物理E科学インストルメント誌、12巻、ページ241〜253、1979年。
【非特許文献7】S.O.Choi,S.Kawahito,Y.Matsumoto,M.Ishida,Y.Tadokoro、「集積回路マイクロフレックスゲート式磁気センサー」、センサー&アクチュエータ誌、応用物理、55巻、2−3版、ページ121〜126、1996年7月31日。
【非特許文献8】R.Gottfried−Gottfried,W.Budde,R.Jahne,H.Kuck,B.Sauer,S.Ulbricht,U.Wende、「平面フレックスゲート式センサーとCMOS読取回路とからなる小型磁界センサーシステム」、センサー&アクチュエータ誌、応用物理、54巻、1−3版、ページ443〜447、1996年6月。
【非特許文献9】L.Chiesi,P.Kejik,B.Janossy,R.S.Popovic、「CMOS平面2Dマイクロフレックスゲート式センサー」、センサー&アクチュエータ誌、応用物理、82巻、1−3版、ページ174〜180、2000年5月15日。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのような従来の一体フラックスゲート式センサーの周知構造には、大量生産においては小型でコスト削減効果があるけれども、下記のような欠点をもつ。
【0011】
・2つの強磁性コア部の採用により、センサー構造が相対的に複雑になり、より大きなスペースを必要とする。
・オープンコア部の構造は、コア部の全長にわたって磁化されない。コア部中心が最初に飽和し、最後にコア部の先端が飽和される。そのため、コア部の先端は、完全に飽和することなく、センサーに残磁性(大きな磁気衝撃に対するセンサーのメモリー作用)が発生する。
・励起磁界や磁界検出のためのコア部サイズに限界がある。コア部が短いほど、励起条件に反して測定範囲の幅が広くなるが、コア部が短くなると、コア部全長を飽和させるのに十分な強度の磁界の生成がより困難となる。それゆえ、測定範囲や励起構造が、両方向にわたってコア部の長さにて制限される。
・磁界の励起や検出の両方の平面コイル利用は、コイル構造の密接結合が必要である。その構造のせいで、測定信号に対する容量信号や磁気寄生信号が大きくなってしまう。それら妨害信号により、センサーの信号/ノイズ率が低下し動作性能が落ちる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、産業分野での製造において小型でコスト削減可能であって、特に、測定範囲が広く、残磁性が低く、精度が高いという高性能な直交フラックスゲート式センサーを提供することにある。
【0013】
別の目的は、コスト効率よく集積回路形態に集積可能であって、かつ、駆動および制御が簡単な直交フラックスゲート式センサーを提供することにある。
【0014】
さらに別の目的は、電力消費が少ない直交フラックスゲート式センサーを提供することにある。
【0015】
本発明の目的は、発明の請求項1に記載の直交フラックスゲート式磁界センサーを提供することにより達成できる。
【0016】
本明細書に開示する直交フラックスゲート式磁界センサーは、非磁性導電材でできた励磁導電体と、飽和可能な磁性材と、少なくとも1つのピックアップコイルとを具備し、前記励磁導電体は、ロッド形状のほぼ直線の伸長部で構成され、それに沿って取り囲むような前記飽和可能な磁性材で被覆されている。前記の1つ、または、それ以上の数のピックアップコイルは、前記強磁性被覆体の両端に近接して好適に配置する。前記強磁性被覆体は、絶縁材を介在させることなく、前記励磁導電体に直接に接触させても構わない。
【0017】
前記強磁性被覆体と励磁導電体は、被覆層用の強磁性パーマロイ材の積層、非磁性材のエッチングと銅の電気メッキによるLiGA処理などのように、集積構造を形成できるよう積層工程およびエッチング工程により作成するのが好ましい。CMOS技術などのように、センサーの駆動および制御のための電子回路が設けられたシリコン基板上に、前記積層を形成することも可能である。
【0018】
本発明によるセンサー構造は、センサーの大きさやフットプリントを著しく縮小して、集積回路の積層工程により作成可能であるという長所をもち、それゆえ、非常に小型、低価格、低電力消費の磁界センサーとなるよう、センサーの駆動回路や信号処理回路を、同じ半導体基板上に直接に形成することができる。
【0019】
本発明のセンサーのさらなる重要な長所は、前記被覆体の全長にわたって、中心にある励磁導電体を取り囲む強磁性被覆体の飽和が均等に行えることである。加えて、中心にある励磁導電体と被覆体の全長を容易に変更することができ、製造工程を大きく変更することなく、センサーの感度や動作範囲の変更が可能となる。
【0020】
さらにまた、前記励磁導電体や検出コイルは個別に独立して駆動できるため、センサーの信号/ノイズ率や安定性が高くなる。
【0021】
前記飽和可能な強磁性被覆体の中心域を伸長する単一の導電体ロッドのおかげで、従来の平面励磁コイルを備えた集積フラックスゲート式センサーに比べて、励磁機構に占有される半導体面積を著しく削減することができる。
【0022】
例えば、電気メッキ法で形成される電気接点を経由して入力される励磁電流Iexcが中心にある導電体を流れると、円形の磁界Hexcが発生する。縦方向(測定域に平行な方向)の磁気透過率は、測定域に垂直な円形磁界Hcirにより変わる。外部磁界Hextに比例する交番磁界の検出は、前記強磁性被覆体の縦方向の両端の下方に位置し、ピックアップコイルまたはホールプレート素子により表される二つの検出素子により行われる。
【0023】
なお、前記強磁性被覆体や中心にある励磁導電体の断面形状は、四角や円形が好ましいが、その他の形状でも構わない。
【0024】
前記強磁性コア部の全体を低い励磁電流に保って飽和させるため、強磁性コア部の表面積を積層技術における最小値にするのが望ましい。そして、前記ピックアップコイルの各部位の中心は、基板に垂直な方向の磁界密度が最大値になる、強磁性被覆体の縦方向の両端の下方に配置する。
【0025】
前記強磁性被覆体、検出コイル、基板は、非伝導非磁性材により互いに分離されている。中心にある励磁導電体と強磁性被覆体の間の電気絶縁は不要であるが、必要ならば、絶縁処理をしても構わない。
【0026】
前記マイクロセンサーの線形特性を高めるには、システムにフィードバック構成を増設すればよい。強磁性体の下方に平面コイルを、あるいは、マイクロセンサーを取り囲む外部離散コイルを設置して、補正磁界を発生させるのである。フィードバック構成のための平面コイルは、信号検出用コイルと同じものでも構わない。
【0027】
前記磁気センサーに、CMOS技術で作成した電子回路を付随させることも可能である。電子回路により、励磁動作、信号検出、フィードバック動作に必要な信号全部を提供できる。
【0028】
縦方向の測定域Hextと異なる、前記円筒型の強磁性体が露出する円形磁界Hcirの方向は、大きな長所を備える。第1に、フラックスゲート式センサーに直交構造を採用しているため、励起磁界の影響を測定信号に与えない。第2に、励起磁界が円形であるため、磁気構造が閉路となり、固有透磁率μiに等価なみかけ透磁率μaをもつ強磁性被覆体が、円形の励起磁界Hcirに直接に曝される。その結果、被覆体の飽和に要する励起磁界Hcirのレベルを、強磁性被覆体の全長Iに変動があっても、一定に保つことができる。それゆえ、強磁性体の全長Iは励磁機構に何ら影響を与えない。外部磁界が縦方向に付与されるので、全長Iにわたって影響がおよび、全体構造サイズで決まる消磁係数Nd(非特許文献5)が縦方向のみかけ透磁率μaを減少させることになる。つまり、励磁導電体や被覆体の長さIを変えるだけで、センサーの測定範囲を容易に調整することが可能となる。
【0029】
前記励磁ロッドに施されている強磁性材の被覆は、その強磁性材内部に円状の励起磁界ループが生成できるよう被覆される。強磁性層の透磁率は、励磁ロッドを流れるAC電流にて生成される測定磁界に直交する方向で、周期的に変動する。それにより、センサーの検出部位が励磁機構の影響を受けなくなり、被覆体の長さ調整だけで測定範囲や感度を変更することが可能となる。また、コア部の長さの調整により、そのコア部の消磁係数(非特許文献5)を変えることができる。コア部のみかけの相対透磁率μappは、消磁係数に応じた固有値から逸脱する。これを式にすると、以下のように示せる。
【0030】
μapp=μi/1+N(μi−1) (1)
【0031】
ここで、μiは固有相対透磁率で、Nは消磁係数である。みかけ透磁率の変動により、強磁性被覆層のB−H曲線の線形域が変化する。飽和磁界強度Bsatが一定であるため、線形域の傾斜がゆるやかになり、磁性材を飽和させる磁界Hが増加する。つまり、感度が低下し、センサーの線形動作範囲が拡大するのである。この状況は、センサーの縦方向、つまり、磁界の検出方向に効果的に作用する。
【0032】
一方、径方向、つまり、励磁方向においては、消磁係数がゼロになるような閉磁気ループのための構造の、無限に長い磁性材コア部としてみなすことができる。そのため、B−H曲線の傾斜が最大となり、被覆体全長にわたった簡単で等価な飽和が可能となる。そして、強磁性被覆体の両端の下方に位置する好適な2つの平面コイルから、測定信号が取り出される。平面ピックアップコイルの採用の結果、標準のCMOS処理による集積工程が簡単に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図面に示す、特に図2a〜2cに示すように、本発明による直交フラックスゲート式磁界センサー2は、飽和可能な強磁性被覆体8を備えた「励磁ロッド」被覆層であって、以下、そのように記述する、基本的に直線形の部位6をもつ励磁導電体4と、前記飽和可能な強磁性被覆体8の対向端14に近接配備されたコイル部12をもつセンサーピックアップコイル10とからなる。さらに、センサーには、前記被覆体8と励磁導電体4とが載置された基板16が備わる。
【0034】
前記基板16は、セラミック材、ガラス材、または、その他の絶縁材料で作成可能である。しかしながら、基板16は、励磁導電体4に接続された、ピックアップコイル10を含む集積回路を備える半導体で作成するのが好ましい。そのような半導体で構成された回路の模範的な実施例を、図4aと4bのブロック図に示し、以下、それを説明する。
【0035】
前記基板16が集積回路のない支持体として作用する例では、検出コイルおよび励磁導電体には、導電体を外部の信号処理励起回路に接続するため、それぞれ導体パッド18、20(図2a参照)が設けられる。基板16が集積回路で作成される場合には、図3の層16aとして図解的に示すように、導体の積層工程中に作成されるビア(スルーホール)21にて励磁導電体の端20を回路に直接に相互接続する。同様に、回路に対する異なる層間でのそれぞれのピックアップコイルの相互接続は、ビアつまり接続点23にて行われる。
【0036】
前記集積回路16aを備えた基板16は、CMOSなどの周知の半導体技術で作成可能であって、その場合、集積回路が形成された半導体層やピックアップコイルを形成する金属導電層が、基板上に直接に集積されて、部品16a、15、13からなる集積回路を構成し、その上に磁性材や励磁導電体が積層される。製造内容の一例を、下記に説明する。
【0037】
前記検出コイル10は、平面形状であるのが好ましく、そうすれば、強磁性被覆体8の両端14に、コイル部12の中心がほぼ重なる。そのため、外部磁束線の強磁性被覆体側への屈曲により、両端14での集中度が最高値となり、基板の面と直交する外部磁界の最大の検出が可能となる。
【0038】
ピックアップ感度を高めるには、図3に示すように、コイル部12を積み重ねられた2つの層13、15に設けられた2組の螺旋形状12a、12bで形成して、検出コイルの巻線数を2倍にするのが望ましい。実際上、コイル中心の外側の接続点18への経路を確保するには、検出コイルには2つの層が一般的に必要であるため、前記追加コイルは別の層を追加する必要はなく、製造工程が複雑になることもない。ただし、測定感度をより高めるようとすれば、別の層を追加することも可能である。
【0039】
前記被覆体8は、「パーマロイ」などの周知の強磁性材で形成するのが好ましいが、たやすく飽和し、ヒステレシスが低い軟磁性材を使用しても構わない。強磁性材の長所は、本発明によるセンサーを製造するための最新製造技術において、積層が簡単に行えることである。励磁導電体部やピックアップコイルの材料としては、銅や銅合金が望ましいが、導電性が高い非磁性材の使用も可能である。
【0040】
図4aを参照して、直接モードで作動する信号処理回路の第1動作例を、簡単に説明する。最初に、周波数foのクロック信号Clkが、信号発生器GENで作成される。その信号の周波数は、1/2に分割され、ドライバにより、奇数高調波とゼロオフセットをもつ正弦波、三角波、パルス波などの電圧波形に変換される。その電圧波形は、さらに電流波形に変換され、強磁性コア部の励起ロッドへ送られる。電流波形のレベルは、強磁性コア部を飽和できるほど充分に高い値でなければならない。その周期飽和作用により、コア部の端の下方に位置するピックアップコイルの端部に、外部磁界Hextに比例した誘電電圧が発生する。誘電電圧は、増幅され、復調器DEMで同期整流される。その整流信号は、カットオフ周波数がfo値より低いローパスフィルタに送られる。ローパスフィルタの出力は、センサー測定範囲内の外部磁界Hextに比例するDC電圧となる。
【0041】
図4bを参照して、フィードバックモードで作動する信号処理回路の第2動作例を、簡単に説明する。まず、周波数foのクロック信号Clkが、信号発生器GENで作成される。その信号の周波数は、1/2に分割され、ドライバにより、奇数高調波とゼロオフセットをもつ正弦波、三角波、パルス波などの電圧波形に変換される。その電圧波形は、さらに電流波形に変換され、強磁性コア部の励起ロッドへ送られる。電流波形のレベルは、強磁性コア部を飽和できるほど充分に高い値でなければならない。その周期飽和作用により、コア部の端の下方に位置するピックアップコイルの端部に、外部磁界Hextに比例した誘電電圧が発生する。誘電電圧は、増幅され、復調器DEMで同期整流される。その整流信号は、積分器で積分処理され、電圧/電流変換器へ送られる。その変換電流は、外部磁界Hextとは反対方向の補償磁界Hcompを作成するフィードバックコイルへ送られ、そのため、ピックアップコイルの端部における誘電電圧が低下する。システムが安定状態のときは、フィードバックコイルへの電流は外部磁界の電流レベルと同じレベル値であるため、コア部周囲の磁界全体がゼロとなって、ピックアップコイルに誘電電圧が発生することはない。そのため、増幅器と復調器の出力値もゼロとなり、積分器の出力は、外部磁界Hextに比例するDC電圧となる。
【0042】
図5に示すのは、本発明によるセンサー製造法の処理内容の一例としての、積層工程の順序である。図5の左側の部分は、センサー積層の縦断面図であって、右側の部分は、横断面図である。
【0043】
第1の工程(a)では、励起ロッドのための下側層のピックアップコイル12aと接触パッド20が、スパッタリングなどの周知の金属積層技術により基板上に形成され、続いて、フォトリソグラフ法とエッチング法によりパターン化処理が行われて、例えば、AlSi1%のアルミ合金の金属層が形成される。
【0044】
次の工程(b)では、例えば、スパッタリングによりSiO2の接触層が積層され、続いて、フォトリソグラフ法とエッチング法によりパターン化処理が行われるが、特に、2層のピックアップコイル12a、12bを相互接続するためのビア21、23が形成され、さらに工程(c)では、工程(a)と同じ方法で第2のコイル層12bが積層される。
【0045】
工程(d)では、例えば、スピン法によりSU−8の絶縁層が積層され、続いて、フォトリソグラフ法が実施され、工程(e)では、例えば、蒸着法によりCr/Cuの電気メッキのためのシード層が前記層上に積層される。
【0046】
工程(f)では、例えば、スピン法によりAZ9260のモールド層(非特許文献4)が前記層上に積層され、続いて、フォトリソグラフ法が行われて、強磁性被覆体の基礎部8aを形成するのに必要な開孔を露出させ、例えば、電気メッキ法によりパーマロイ(Fe19Ni81)の強磁性被覆体が積層された後、工程(g)に示すようにモールド層を除去する。
【0047】
さらに、工程(h)では、スピン法により別のモールド層が積層され、続いて、フォトリソグラフ法の後、銅の電気メッキにより導電性励起ロッド6が形成されて、その後で、工程(i)に示すようにモールド層を除去する。励起ロッドは、駆動回路への接続のための
ビア21に接続される。
【0048】
次の工程(j)では、スピン法によりモールド層が積層され、続いて、部分的に形成された強磁性基礎層8aと励起ロッド6の周囲でフォトリソグラフ法が行われて、工程(k)に示すように、励起ロッド周囲の強磁性被覆体8の残り部分の電気メッキを実施した後、最後の工程(l)で、シード層の露出した残り部分をエッチング法で除去する。
【0049】
CMOS技術を採用した場合には、ピックアップコイルは集積回路に集積形成されているため、言い換えれば、工程(a)から工程(d)までの同様の工程がCMOS技術工程に含まれているため、工程(e)以降のシード層の形成から追加処理を開始すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の直交フラックスゲート式磁界センサーの斜視図である。
【図2a】本発明による直交フラックスゲート式磁界センサーの一実施例の斜視図である。
【図2b】図2aの線IIb−IIbに沿った分解断面図である。
【図2c】本発明によるセンサーの中心にある励磁導電体と強磁性被覆体の断面の詳細図である。
【図3】本発明による直交フラックスゲート式磁界センサーの一実施例の分解斜視図である。
【図4a】励磁電流を駆動し、センサーのピックアップ信号を処理する回路を示す回路ブロック図である。
【図4b】本発明の別の実施例による、励磁電流を駆動し、センサーのピックアップ信号を処理するフィードバックを備えた回路を示す回路ブロック図である。
【図5】本発明によるセンサーの一部を製造するための連続する積層工程(a)〜(l)を示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界Hextを測定する直交フラックスゲート式センサーであって、励磁電流Iexcを送電する導電体と、前記励磁電流により生成された磁界内にて飽和できる飽和可能な磁性材と、前記磁性材近辺の磁界の変化を検出するための少なくとも1つのピックアップコイル(10)とを具備し、前記励磁導電体が、励起ロッド(6)を構成する導電性の非磁性材のほぼ直線の伸長部からなり、前記磁性材が被覆体(8)として励起ロッドを取り囲む直交フラックスゲート式センサー。
【請求項2】
前記強磁性被覆体が、前記励起ロッドの周囲に直接接触で積層されている請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
前記ピックアップコイル、強磁性被覆体及び励磁導電体が、積層工程とパターン工程により形成された基板(16、16a)上に層状に積層される請求項1又は2記載のセンサー。
【請求項4】
さらに、励磁電流を駆動し、ピックアップコイル信号を処理する前記基板上に集積形成された回路を備えた前出の請求項に記載のセンサー。
【請求項5】
前記処理回路およびピックアップコイルが、CMOS処理にて集積形成され、その上に、前記強磁性被覆体と励磁ロッドが搭載される前出の請求項に記載のセンサー。
【請求項6】
前記ピックアップコイルが、片方が他方の上面に積層された、少なくとも2つの平面スパイラル層(12a、12b)で構成される前出の請求項のいずれかに記載のセンサー。
【請求項7】
前記ピックアップコイルが、それぞれが前記強磁性被覆体の片方の縦方向端(14)に配置された少なくとも2つのコイル部材層で構成される前出の請求項のいずれかに記載のセンサー。
【請求項8】
前記それぞれのピックアップコイル部材の中心が、対応する前記強磁性被覆体の縦方向端に近接した位置に配置される前出の請求項に記載のセンサー。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−503443(P2009−503443A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522085(P2008−522085)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002007
【国際公開番号】WO2007/010378
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(395021491)リエゾン、エレクトロニク−メカニク、エルウエム、ソシエテ、アノニム (21)
【Fターム(参考)】