説明

直列接続された蓄電セルの中間タップとバランス回路とDC−DCコンバータを併用した電力変換装置

【課題】DC−DCコンバータの入出力電圧を低く抑えることにより、スイッチング損失やノイズの低減、及び変換効率の改善を可能とする電源システムを提供する。
【解決手段】直列接続された蓄電セルにより構成される蓄電セル群から電力を供給する放電用電源システムにおいて、一部の蓄電セルのみをDC−DCコンバータの入力端子と接続することによりコンバータの入出力電圧を抑え、且つ蓄電セル群にバランス回路を接続することにより、放電速度の差に起因する蓄電セル電圧のばらつきを解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置に関し、特に、DC−DCコンバータの入力電圧、及び出力電圧を低くすることによって、スイッチング損失やノイズの低減、及び変換効率の改善を可能とする電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力によって何らかの装置を動作させるためには、その装置の特性により決定される所定の動作電圧範囲内で給電をすることが必要である。電子機器類は個々の特性に応じた所定の電圧範囲内にて動作するが、その動作電圧範囲外では動作が不安定となるか、あるいは非動作となってしまうからである。これに関して、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、二次電池等の蓄電セルを電源に用いる場合には、それら蓄電セルを複数個直列接続した蓄電モジュールとして電源を構成することにより、各蓄電セル電圧の合計電圧として出力電圧を所望の値に調整できる。
【0003】
この場合、各蓄電セルの充放電状態に応じて蓄電モジュールの出力電圧が変動するため、一般的にはDC−DCコンバータ等を用いて出力電圧を安定させる必要がある。DC−DCコンバータとして、降圧型コンバータ、昇圧型コンバータ、及び反転昇降圧型コンバータを用いて負荷への出力電圧を調整するよう構成した電源システムの例を、それぞれ図1〜図3に示す。
【0004】
図1〜図3の電源システム100において、蓄電セルC1〜Cnで構成される蓄電モジュール102は、DC−DCコンバータ111,112,又は113のいずれかを介して負荷104に接続されている。これらのコンバータは、コイルL、ダイオードD、スイッチSw、入力キャパシタCin、及び出力キャパシタCoutから構成されている。入出力の電圧変換比は、スイッチSwのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の比率として定義される時比率(デューティー)により決定される。
【0005】
降圧型DC−DCコンバータ111を用いる図1の放電用電源システム100において、Coutの電圧はCinの電圧よりも低い。すなわちコンバータ111の出力電圧は入力電圧よりも低くなるのであり、コンバータ111への入力電圧をVin、スイッチSwの時比率をdとすれば、出力電圧Voutはd×Vinである。一方、昇圧型DC−DCコンバータ112を用いる図2の電源システム100においてはCoutの電圧がCinの電圧よりも高くなるのであり、すなわちコンバータ112の出力電圧が入力電圧よりも高い。この場合の出力電圧VoutはVin/(1−d)である。これに対し、反転昇降圧型コンバータ113を用いる図3の電源システム100においては、時比率を適宜選択することにより、出力電圧を入力電圧より高くすることも、あるいは低くすることもできる。この場合の出力電圧Voutは(d×Vin)/(1−d)である。ただし、図3の電源システムを用いる場合はコンバータ113によって出力電圧の極性が反転される。
【0006】
また、図1〜図3の電源システム100において、蓄電モジュール102をDC−DCコンバータ111〜113それぞれの出力側に接続し、入力側には任意の電源105を接続することにより、電源105を用いて蓄電モジュール102を充電するための充電用電源システム200を構成することができる。図4〜6に示されるこのような電源システム200においては、電源105と蓄電モジュール102との間にDC−DCコンバータ111,112,又は113のいずれかを備えたことにより、蓄電モジュール102に印加する電圧を調整することが、言い換えれば各蓄電セルC1〜Cnに印加する電圧を調整することが可能となっている。
【0007】
キャパシタ、電気二重層キャパシタ、二次電池等の蓄電セルに対して、それら蓄電セル各々の特性により決定される所定の最大電圧以上の電圧で充電が行われた場合、それら蓄電セルは過充電状態に陥り、その寿命が著しく縮められる。許容される最大電圧に比べて大幅に高い電圧での充電、又は最大電圧以上の電圧での長時間に亘る充電は、蓄電セルの発火や破裂へと繋がる恐れもある。同様に、蓄電セル各々に対してその特性により決定される規定値以上の大きさの電流で充電を行えば、蓄電セルの損傷を引き起こす恐れがある。このような問題を回避するため、一般的には図4〜図6に示すとおりDC−DCコンバータ等を用いることにより、蓄電モジュールへの電圧と電流とを制御しつつ充電が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】T. Misyhima、“Experimental Evaluation of the EDLC-based Power Compensator for a Partially Shaded PV Array,” IEEE Industrial Electronics Society, 2003. pp. 1308-1313
【非特許文献2】内海、他、“多段昇圧チョッパを適用した太陽光発電システムにおける最大出力制御”、2007年電気学会全国大会予稿集、第4分冊pp.106.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記図1〜図6に示される電源システムにおいては、DC−DCコンバータへの入力電圧、あるいはDC−DCコンバータからの出力電圧を低く抑えるような構成がとられていないために、コンバータ内でのスイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなるという問題があった。
【0010】
具体的に、まず図1〜図3に示す電源システム100において、DC−DCコンバータの入力側には蓄電モジュール102を構成する全ての蓄電セルC1〜Cnが接続されているため、各蓄電セルの電圧をVcとすればDC−DCコンバータへの入力電圧はn×Vcである。また、出力電圧は負荷104の電圧VLoadと等しい。図4〜図6に示す電源システムにおいては、蓄電モジュール102を構成する全ての蓄電セルC1〜Cnがコンバータの出力側に接続されており、コンバータからの出力電圧はn×Vcとなっている。このときの入力電圧は電源105の電圧VPSと等しい。
【0011】
このような図1〜図6の各電源システム中のDC−DCコンバータにおける、スイッチ切り替えに伴うスイッチングノード106の電圧変動範囲は、図1と図4の降圧型コンバータにおいては0〜Vin、図2と図5の昇圧型コンバータにおいては0〜Vout、そして図3と図6の反転昇降圧型コンバータにおいてはVin〜−Voutである。この電圧変動範囲が大きいほど、スイッチ切り替えに伴う損失、ノイズ、及びダイオードのリカバリ損失が大きくなる。すなわち、これら損失及びノイズを抑えるためには、スイッチングノード106の電圧の変動範囲を定めているコンバータの入出力電圧を小さくすることが好ましい。しかしながら、既に述べたとおり、従来の電源システムにおいては蓄電セルC1〜Cnが全てコンバータの入力側、あるいは出力側に接続されており、全ての蓄電セル電圧がコンバータの入力あるいは出力に寄与している。
【0012】
さらに、上記スイッチングノード106の電圧変動範囲が大きい場合には、スイッチSw及びダイオードDとして高耐圧の素子を用いる必要がある。具体的に、上記図1の降圧型コンバータにおいてはVin=n×Vcの、図2の昇圧型コンバータにおいてはVout=(n×Vc)/(1−d)の、そして図3の反転昇降圧型コンバータにおいてはVin+Vout=(n×Vc)/(1−d)の電圧に対する耐圧性を、それぞれの素子が少なくとも有していなければならない。同様に、上記図4の降圧型コンバータにおいてはVin=(n×Vc)/dの、図5の昇圧型コンバータにおいてはVout=n×Vcの、そして図6の反転昇降圧型コンバータにおいてはVin+Vout=(n×Vc)/dの電圧に対する耐圧性を、それぞれの素子が有していなければならない(いずれの場合においても、ダイオードDにおける順方向降下電圧を無視している。)。
【0013】
一般的に高耐圧のスイッチは低耐圧のスイッチと比較してオン抵抗が高く、スイッチング速度が遅いため、効率の観点からは低耐圧スイッチを使用することが望ましい。同様に、高耐圧のダイオードは低耐圧のダイオードと比較して順方向降下電圧が大きく逆回復時間が長いため、効率の観点からは低耐圧ダイオードを使用することが望ましい。この点からも、スイッチングノード106の電圧変動範囲を抑えて低耐圧素子の使用を可能とするために、コンバータの入出力電圧を小さくすることが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本件第1発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第2入力端子と第2出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、を備え、第1出力端子と蓄電セル群の他端との間に、第1出力端子と第2入力端子との間の電位差であるDC−DCコンバータの出力電圧と、蓄電セル群においてDC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを提供する。
【0015】
上記構成に従い、蓄電セルの直列接続点に中間タップなどを備えた上でDC−DCコンバータの入力端子を接続し、蓄電セル群に含まれる蓄電セルの一部のみをコンバータへの入力に用いることにより、コンバータの入力電圧Vin、及び入力電圧Vinを時比率に応じて増幅あるいは低減して得られる出力電圧Voutを小さくすることができる。なお、この場合にはコンバータへの入力に寄与する蓄電セルと寄与しない蓄電セルとの間で放電速度が異なるが、放電速度の差に起因する当該蓄電セル電圧のばらつきは、バランス回路の動作によって解消される。
【0016】
なお、本件第1発明は、後述の実施例1において詳細に説明するとおり、降圧型DC−DCコンバータ、あるいは昇圧型DC−DCコンバータを用いた放電用電源システムとして特に優れているが、本件第1発明の電源システムがこれらに限られるわけではない。
【0017】
また、本件第2発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第1入力端子と第1出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、を備え、第2出力端子と蓄電セル群の他端との間に、第2出力端子と第2入力端子との間の電位差であるDC−DCコンバータの出力電圧と、蓄電セル群においてDC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを提供する。
【0018】
本発明の電源システムにおける別の一態様を示したものである。組み込まれるDC−DCコンバータの種類に応じて、電源システムの具体的回路構成を適宜変更することができる。なお、本件第2発明は、後述の実施例2において詳細に説明する反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた放電用電源システムとして特に優れているが、本件第2発明の電源システムがこれに限られるわけではない。
【0019】
また、本件第3発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第2出力端子と蓄電セル群の他端とが電気的に接続されたコンバータと、を備え、第1出力端子と第2出力端子との間に、第1出力端子と第2入力端子との間の電位差であるDC−DCコンバータの出力電圧と、蓄電セル群においてDC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを提供する。
【0020】
上記第3発明は、本件第1発明の電源システムにおいて具体的な回路構成を変更することで得られるバリエーションに対応する。第1発明と同様に、本件第3発明も、後述の実施例3において詳細に説明する降圧型DC−DCコンバータ、あるいは昇圧型DC−DCコンバータを用いた放電用電源システムとして特に優れているが、本件第3発明の電源システムがこれらに限られるわけではない。
【0021】
また、本件第4発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第1出力端子と蓄電セル群の他端とが電気的に接続されたコンバータと、を備え、第2出力端子と第1出力端子との間に、第2出力端子と第2入力端子との間の電位差であるDC−DCコンバータの出力電圧と、蓄電セル群においてDC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システムを提供する。
【0022】
上記第4発明は、本件第2発明の電源システムにおいて具体的な回路構成を変更することで得られるバリエーションに対応する。第2発明と同様に、本件第4発明も、後述の実施例4において詳細に説明する反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた放電用電源システムとして特に優れているが、本件第4発明の電源システムがこれに限られるわけではない。
【0023】
また、本件第5発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1出力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2出力端子と、第1及び第2入力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第2出力端子と第2入力端子とが電気的に接続されたコンバータと、第1入力端子と蓄電セル群の他端との間に電気的に接続された電源と、を備え、第1入力端子と第2出力端子との間の電位差である、DC−DCコンバータの入力電圧は、電源が供給する電源電圧よりも、蓄電セル群においてDC−DCコンバータの第1及び第2出力端子の間にない蓄電セルの電圧だけ低いことを特徴とする、電源システムを提供する。
【0024】
上記構成に従い、蓄電セルの直列接続点に中間タップなどを備えた上でDC−DCコンバータの出力端子を接続し、蓄電セル群に含まれる蓄電セルの一部のみにコンバータからの出力電圧を供給することで、コンバータからの出力電圧を小さくすることができる。また、上記のとおり本発明が教示する回路構成を採用すれば、コンバータの入力電圧は、電源が供給する電源電圧よりも、蓄電セル群においてコンバータの第1及び第2出力端子の間にない蓄電セル、すなわちコンバータから直接の電圧出力を受けない蓄電セルの電圧の合計だけ低くなる。
【0025】
なお、この場合にはコンバータからの出力を直接受ける蓄電セルと直接の出力を受けない蓄電セルとの間で充電速度が異なるが、充電速度の差に起因する当該蓄電セル電圧のばらつきはバランス回路の動作によって解消される。
【0026】
なお、本件第5発明は、後述の実施例5において詳細に説明するとおり、降圧型DC−DCコンバータ、あるいは昇圧型DC−DCコンバータを用いた充電用電源システムとして特に優れているが、本件第5発明の電源システムがこれらに限られるわけではない。
【0027】
また、本件第6発明は、1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、蓄電セル群と電気的に接続された、蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1出力端子と、蓄電セル群において蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2出力端子と、第1及び第2入力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、第1入力端子と第1出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、第2入力端子と蓄電セル群の他端との間に電気的に接続された電源と、を備え、第2入力端子と第2出力端子との間の電位差である、DC−DCコンバータの入力電圧は、電源が供給する電源電圧よりも、蓄電セル群においてDC−DCコンバータの第1及び第2出力端子の間にない蓄電セルの電圧だけ低いことを特徴とする、電源システムを提供する。
【0028】
本発明の電源システムにおける別の一態様を示したものである。組み込まれるDC−DCコンバータの種類に応じて、電源システムの具体的回路構成を適宜変更することができる。なお、本件第6発明は、後述の実施例6において詳細に説明する反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた充電用電源システムとして特に優れているが、本件第6発明の電源システムがこれに限られるわけではない。
【0029】
なお、上記蓄電セルの一例としては、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、二次電池等を用いることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明による電力変換装置によれば、DC−DCコンバータの入出力電圧を低圧化することで、スイッチングに伴い発生する損失やノイズを低減させることが可能となる。また、上記DC−DCコンバータを構成するキャパシタやコイルなどのデバイスに対して求められる耐圧条件が緩和されるため、DC−DCコンバータのサイズ・重量において大きな割合を占める入出力キャパシタやコイルなどの部品として低耐圧の小型デバイスを用いることが可能となり、コンバータの小型化が達成される。なお、本発明の電力変換装置にはバランス回路が備えられており、直列接続されたキャパシタにおいて充放電の進行に伴い生じる電圧のばらつきは解消される。したがって、一部のキャパシタにのみ高電圧が印加されることによりモジュール全体としての寿命が縮められる恐れはない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の放電用電源システムを示す、回路図である。
【図2】昇圧型DC−DCコンバータを備えた従来の放電用電源システムを示す、回路図である。
【図3】反転昇降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の放電用電源システムを示す、回路図である。
【図4】降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の充電用電源システムを示す、回路図である。
【図5】昇圧型DC−DCコンバータを備えた従来の充電用電源システムを示す、回路図である。
【図6】反転昇降圧型DC−DCコンバータを備えた従来の充電用電源システムを示す、回路図である。
【図7】本発明に係る電源システムの第1実施形態を示す回路図である。
【図8】バランス回路の一例として用いることができる、スイッチトキャパシタを示した回路図である。
【図9】本発明に係る電源システムの第1実施形態において、コンバータとして降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図10】本発明に係る電源システムの第1実施形態において、コンバータとして昇圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図11】本発明に係る電源システムの第2実施形態を示す回路図である。
【図12】本発明に係る電源システムの第2実施形態において、コンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図13】本発明に係る電源システムの第3実施形態を示す回路図である。
【図14】本発明に係る電源システムの第3実施形態において、コンバータとして降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図15】本発明に係る電源システムの第3実施形態において、コンバータとして昇圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図16】本発明に係る電源システムの第4実施形態を示す回路図である。
【図17】本発明に係る電源システムの第4実施形態において、コンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図18】本発明に係る電源システムの第5実施形態を示す回路図である。
【図19】本発明に係る電源システムの第5実施形態において、コンバータとして降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図20】本発明に係る電源システムの第5実施形態において、コンバータとして昇圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【図21】本発明に係る電源システムの第6実施形態を示す回路図である。
【図22】本発明に係る電源システムの第6実施形態において、コンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータを用いた構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図7〜図22を参照しながら、本発明に係る電源システムの実施形態を説明する。なお、電源システムに用いるコンバータとしては特に非絶縁型の降圧型、昇圧型、反転昇降圧型DC−DCコンバータを例として挙げているが、Cukコンバータ、SEPICコンバータ、ZETAコンバータ等、他種のコンバータを用いることも可能である。また、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ、プッシュプルコンバータ、ブリッジコンバータ等の絶縁型コンバータを用いることも可能である。
【実施例1】
【0033】
放電用電源システム1の構成
図7は、本件第1発明として実施することが可能な放電用電源システム1を示している。C1〜Cnは、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、二次電池等の蓄電セルであり、これらを直列接続することにより蓄電モジュール102が構成されている。蓄電モジュール102にはバランス回路101が接続されており、蓄電セルC1〜Cnの各電圧はバランス回路101により常に等しく維持されているものとする。
【0034】
バランス回路101は、例えば図8に示されるとおりの、キャパシタCs,1〜Cs,n-1、及びスイッチQ1〜Q2nからなるスイッチトキャパシタシステムとして構成された回路であってよい。
【0035】
バランス回路101として図8のスイッチトキャパシタシステムを用いる場合は、スイッチQ1〜Q2nの高速スイッチングによってキャパシタCs,1〜Cs,n-1と蓄電セルC1〜Cnとが相互充放電することにより、各蓄電セルの分担する電圧が均一となる。
【0036】
具体的には、奇数番号のスイッチQ1,Q3,…Q2n-1がオンであるときには、蓄電セルC1とキャパシタCS,1とが、C2とCS,2とが、…及びCn-1とCS,n-1とが、それぞれ並列接続されることとなるため、並列接続された蓄電セル・キャパシタ間に電圧のばらつきが発生している場合には相互充放電が行われ、電圧ばらつきが解消される方向へと向かう。また一方で、偶数番号のスイッチQ2,Q4,…Q2nがオンであるときには、蓄電セルC2とキャパシタCS,1とが、C3とCS,2とが、…及びCnとCS,n-1とが、それぞれ並列接続されることとなるため、並列接続された蓄電セル・キャパシタ間に電圧のばらつきが発生している場合には相互充放電が行われ、電圧ばらつきが解消される方向へと向かう。
【0037】
したがって、奇数番号のスイッチを全てオンとする状態と偶数番号のスイッチを全てオンとする状態との間でスイッチングを繰り返すことにより、各々の蓄電セルは他の全ての蓄電セルと直接的、又は間接的に(他のキャパシタを介して)相互充放電を行うのであり、蓄電セルC1〜Cnの電圧が均一化される。なお、バランス回路に用いるスイッチとしては、FET、サイリスタ、フォトMOS FET等、高速での切り替えが可能な電子的スイッチ(半導体スイッチ)を用いると都合がよい。この点については、後述のDC−DCコンバータに用いるスイッチSwにおいても同様である。ただし、本発明の電源システムに用いることのできるスイッチがこれらに限られるわけではない。またスイッチングは、スイッチ制御手段としての任意のスイッチドライバ(不図示)を用いて、例えばトランジスタのゲートに印加する電圧を切り替えることによって行うことができる。
【0038】
また、蓄電モジュール102の一端(蓄電セルCnにおいて、隣接する蓄電セルCn-1と接続されていない側の端子)はDC−DCコンバータ103の第1入力端子IN1と接続されており、さらにCmとCm+1の接続点から取り出された中間タップが第2入力端子IN2と接続されている。したがって、蓄電モジュール102を構成する蓄電セルC1〜Cnのうち、特にCm+1〜Cnが、DC−DCコンバータ103に対して電力を直接供給する。
【0039】
負荷104は、DC−DCコンバータ103の第1出力端子OUT1と蓄電モジュール102のリターン側の端子(蓄電セルC1において、隣接する蓄電セルC2と接続されていない側の端子)に接続されている。なお、上記リターン側の端子は接地されている。さらに、DC−DCコンバータ103の第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とが接続されている。
【0040】
放電用電源システム1の動作
次に、放電用電源システム1により放電動作を行ったときの、DC−DCコンバータ103の入出力電圧、負荷104へと印加される電圧、負荷104を流れる電流、及びバランス回路102を構成する各蓄電セルC1〜Cnを流れる放電電流について説明する。
【0041】
図7において、ILoadはDC−DCコンバータ103を動作させたときに負荷104を流れる電流を示している。同様に、IL及びIUは、それぞれDC−DCコンバータ103を動作させたときにC1〜Cm及びCm+1〜Cnを流れる放電電流を示している。
【0042】
既に述べたとおり、DC−DCコンバータ103の第1入力端子IN1は蓄電モジュール102の一端と接続されている一方、第2入力端子IN2はCmとCm+1の接続点から取り出された中間タップと接続されており、このためコンバータ103への入力に直接寄与する蓄電セルはCm+1〜Cnである。したがってコンバータ103への入力電圧Vinは、バランス回路101によって均一化された各蓄電セルC1〜Cnの電圧をVcとすると、下記(1)式で表すことができる。
in=(n−m)×Vc …(1)
ただし、本実施例1においては、入力電圧Vinを、第1入力端子と第2入力端子の間の電位差と定義している。後続の実施例2〜4においても同様である。
【0043】
図1〜3で示した構成を採用する場合、コンバータ111〜113への入力電圧は(n×Vc)となるのであり、図7の構成によれば従来に比較してコンバータへの入力電圧を低く抑えることができる。
【0044】
ここで、図7中のDC−DCコンバータ103は無損失で動作するものとする。コンバータ103の出力電圧Voutを第1出力端子OUT1と第2入力端子IN2との間の電位差とし、コンバータ103の出力電流Ioutを第1出力端子OUT1から流れ出す電流とすると、エネルギー保存則より下記(2)式が成立する。
U×(n−m)×Vc=Vout×Iout …(2)
ただし、上記(2)式中のIUには、バランス回路の動作により蓄電セルCm+1〜Cnに流れ込む、あるいはそこから流れ出す電流を含まないものとする。
【0045】
電源システム1全体で考えた場合、負荷104に印加される負荷電圧をVLoadとして、エネルギー保存則より下記(3)式が成立する。
U×(n−m)×Vc+IL×m×Vc=VLoad×ILoad …(3)
ただし、上記(3)式中のIU及びILには、バランス回路の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはそこから流れ出す電流を含まないものとする。
【0046】
負荷電圧VLoadはC1〜Cmの電圧とコンバータの出力電圧Voutの和と等しくなるため、下記(4)式が成立する。
Load=m×Vc+Vout …(4)
また、負荷電流ILoadについては、下記(5)式が成立する。
Load=Iout=IL …(5)
【0047】
(2)式と(5)式より、IUとILとの関係式として、下記(6)式が導かれる。
U=(Vout×IL)/{(n−m)×Vc} …(6)
【0048】
(6)式が示すとおり、Vout=(n−m)×Vcとなる場合を除き、IUとILとは異なる値となる。IUとILとが等しくないならば、C1〜Cmのセル電圧とCm+1〜Cnのセル電圧との間には放電速度の差に起因したばらつきが発生する。しかし、このような場合であっても、バランス回路101の動作により蓄電セル電圧間のばらつきは解消される方向に向かう。したがって、図7に示す電源システムを安定的に動作させることが可能となる。
【0049】
降圧型コンバータを用いた具体例
図7に示す放電用電源システム1の具体例として、降圧型DC−DCコンバータ111を用いて構成した電源システム1を図9に示す。コンバータ111は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。降圧型コンバータ111の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの関係は、スイッチSwのスイッチング周期に対するスイッチのオン期間の比率である時比率d(0≦d≦1)を用いて、下記(7)式により表される。
out=d×Vin=d×(n−m)×Vc …(7)
【0050】
上記(7)式と(4)式とより、負荷電圧VLoadは以下のとおり表される。
Load={d×(n−m)+m}×Vc …(8)
DC−DCコンバータ111を用いずに蓄電セルC1〜Cnを直接負荷104に接続する場合、負荷104にはn×Vcの電圧が印加されるのであり、したがって図9の放電用電源システム1は降圧動作をしていることがわかる。(8)式によれば、負荷電圧VLoadの大きさは、DC−DCコンバータ111に直接接続されていない蓄電セルC1〜Cmの電圧の和であるm×Vcと、DC−DCコンバータ111の出力電圧であるd×(n−m)×Vcと、の合計に等しい。
【0051】
次に、図9の放電用電源システム1におけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(6)に、降圧型コンバータを用いる場合に出力電圧Voutについて成立する(7)式を代入することで、下記(9)式に示すとおりの具体的な関係式が得られる。
U=d×IL …(9)
ただし、上記(9)式中のIUとILとはいずれも、バランス回路101の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはC1〜Cnから流れ出す電流を含まないものとする。
【0052】
上記(9)式に示すとおり、図9の放電用電源システム1においてはIU≦ILであり、蓄電セルC1〜Cmは蓄電セルCm+1〜Cnよりも急速に放電する。したがって蓄電セル間に電圧ばらつきが発生することとなるが、バランス回路101の動作によりそのようなばらつきは解消されるため、電源システム1を安定的に動作させることが可能となる。
【0053】
また図9の構成において、DC−DCコンバータ111のスイッチングノード106と第2入力端子IN2との間の電位差を、(1)式を用いてVin=(n−m)×Vcと表すことができる。一方、図1の従来構成におけるスイッチングノード106と第2入力端子IN2との間の電位差はn×Vcである。すなわち図9の構成によれば、スイッチングノード106に印加される電圧を、C1〜Cmのセル電圧の寄与分に相当するm×Vcだけ、従来よりも低く抑えることができる。
【0054】
したがって、図9に示す本発明の放電用電源システム1によれば、スイッチング損失やダイオードにおけるリカバリ損失、及びスイッチングにより発生するノイズを図1に示す従来構成よりも小さく抑えることが可能となる。加えて、図1に示す従来構成ではスイッチSwやダイオードDとして最低でもn×Vcの電圧に対する耐電圧性を備えたデバイスを用いる必要があったが、図9の電源システム1に用いる素子は(n−m)×Vcの電圧に対する耐電圧性を備えていれば十分である。すなわち、従来よりも低耐圧のデバイスを選択することが可能となるのであり、これは電源システム全体としての小型化に繋がる。DC−DCコンバータのサイズならびに重量は、入出力のコンデンサやコイルが大きな割合を占めるが、コンバータの入出力電圧を低く抑えることにより単位容量あたりのコンデンサのサイズ、ならびに単位リップル電流あたりのコイルのサイズも同様に小型化することができる。
【0055】
昇圧型コンバータを用いた具体例
図7に示す放電用電源システム1の、もう一つの具体例として、昇圧型DC−DCコンバータ112を用いて構成した電源システム1を図10に示す。コンバータ112は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。昇圧型コンバータ112の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの関係は、時比率d(0≦d≦1)を用いて、下記(10)式により表される。
out=Vin/(1−d)={(n−m)×Vc}/(1−d) …(10)
【0056】
負荷電圧VLoadと出力電圧Voutとの間には(4)式が成立する。(4)式に上記(10)式を代入することにより、下記(11)式に示すとおり負荷電圧VLoadが求められる。
Load=m×Vc+{(n−m)×Vc}/(1−d) …(11)
DC−DCコンバータ112を用いず蓄電セルC1〜Cnを直接負荷104に接続する場合、負荷104にはn×Vcの電圧が印加されるのであり、したがって図10の放電用電源システム1は昇圧動作をしていることがわかる。(11)式によれば、負荷電圧VLoadの大きさは、DC−DCコンバータ112に直接接続されていない蓄電セルC1〜Cmの電圧の和であるm×Vcと、DC−DCコンバータ112の出力電圧である{(n−m)×Vc}/(1−d)と、の合計に等しい。
【0057】
次に、図10の放電用電源システムにおけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(6)に、昇圧型コンバータ112を用いる場合に出力電圧Voutについて成立する(10)式を代入することで、下記(12)式に示すとおりの具体的な関係式が得られる。
U=IL/(1−d) …(12)
ただし、上記(12)式中のIUとILとはいずれも、バランス回路101の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはC1〜Cnから流れ出す電流を含まないものとする。
【0058】
上記(12)式に示すとおり、図10の放電用電源システム1においてはIU≧ILであり、蓄電セルCm+1〜Cnは蓄電セルC1〜Cmよりも急速に放電する。したがって蓄電セル間に電圧ばらつきが発生することとなるが、バランス回路101の動作によりそのようなばらつきは解消されるため、電源システム1を安定的に動作させることが可能となる。
【0059】
また図10の構成において、DC−DCコンバータ112のスイッチングノード106と第2入力端子IN2との間の電位差を、(10)式を用いてVout={(n−m)×Vc}/(1−d)と表すことができる。一方、図2の従来構成におけるスイッチングノード106と第2入力端子IN2との間の電位差は(n×Vc)/(1−d)である。すなわち図10の構成によれば、スイッチングノード106に印加される電圧を、C1〜Cmのセル電圧の寄与分に相当する(m×Vc)/(1−d)だけ、従来よりも低く抑えることができる。
【0060】
したがって、図10に示す本発明の放電用電源システム1によれば、スイッチング損失やダイオードにおけるリカバリ損失、及びスイッチングにより発生するノイズを図2に示す従来構成よりも小さく抑えることが可能となる。加えて、図2に示す従来構成ではスイッチSwやダイオードDとして最低でも(n×Vc)/(1−d)の電圧に対する耐電圧性を備えたデバイスを用いる必要があったが、これに対して図10の電源システム1に用いる素子は{(n−m)×Vc}/(1−d)の電圧に対する耐電圧性を備えていれば十分である。すなわち、従来よりも低耐圧のデバイスを選択することが可能となり、これは電源システム全体としての小型化に繋がる。
【実施例2】
【0061】
放電用電源システム1の構成
DC−DCコンバータとしては、反転昇降圧型コンバータを用いることも可能である。本件第2発明の一例として実施することができる、反転昇降圧型コンバータを組み込むために適した放電用電源システム1の回路構成を図11に示す。図7においてDC−DCコンバータ103の第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とが接続されていたのとは異なり、図11の回路構成においては第1入力端子IN1と第1出力端子IN1とが接続されている。
【0062】
反転昇降圧型コンバータを用いた具体例
図11に示すシステムにおけるDC−DCコンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータ113を用いた例を図12に示す。コンバータ113は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。出力キャパシタCoutの電圧は、入力キャパシタCinの電圧Vinを用いて(d×Vin)/(1−d)と表される。ただし、図12中の「+」記号で示されるとおり極性が反転している。第2出力端子OUT2と第2入力端子IN2との間の電位差としてコンバータ113の出力電圧Voutを定義すれば、Voutは以下の(13)式により表される。
out=Vin+(d×Vin)/(1−d)
={(n−m)×Vc}/(1−d) …(13)
【0063】
(13)式は、昇圧型DC−DCコンバータ112を用いた場合の出力電圧を表す(10)式と同一である。図12の回路構成においても昇圧型コンバータ112を用いた場合と同様に(4)式、及び(6)式が成立することから、反転昇降圧型コンバータ113を用いた場合の負荷電圧VLoadは(11)式で表され、またIUとILとの関係は(12)式で表される。すなわち、反転昇降圧型コンバータ113を用いた図12の放電用電源システム1は、実質的には昇圧型コンバータ112を用いた図10の放電用電源システム1と同じ動作特性を有する。
【0064】
なお、上記図7〜図12を用いて説明した具体的な放電用電源システムは、本件第1及び第2発明を実施するための単なる例に過ぎず、本発明としてこれらとは異なる構成をとることも可能である。
【0065】
例えば、蓄電モジュール102を構成するそれぞれの蓄電セルは、任意の蓄電素子を複数接続してなる蓄電セルであってもよい。
【0066】
また、バランス回路101は図8に示される特定の回路に限られるわけではない。バランス回路101は、例えば蓄電セルC1〜Cmの電圧とCm+1〜Cnの電圧との大きさの比率を所定の値に調整するよう構成された、任意の回路であってよい。上述のとおり、負荷電圧VLoadの大きさは、DC−DCコンバータに直接接続されていない蓄電セルC1〜Cmの電圧と、DC−DCコンバータの出力電圧Voutとの合計に等しい。したがって、DC−DCコンバータの制御により負荷電圧を調整するにあたっては、負荷電圧の基準点を決定するC1〜Cmの電圧と、コンバータによる調整幅を決定するCm+1〜Cnの電圧とをそれぞれ別個に設定することが好ましい場合もある。あるいは、放電により各蓄電セルの電圧が降下する間も負荷電圧の基準点を一定に保つために、C1〜Cmの電圧とCm+1〜Cnの電圧との大きさの比率を放電の進行に伴い適宜変更するよう、バランス回路を構成することもできる。なお、上記負荷電圧の基準点とコンバータによる調整幅との設定は、中間タップを取り出すべき位置を変更する(1≦m≦n−1の範囲でmを変更する)ことによっても可能である。
【0067】
以下の実施例3〜8においても、同様に具体的実施態様を適宜変更可能である。本発明の技術的範囲には、それら全てのバリエーションが含まれる。
【実施例3】
【0068】
放電用電源システム1の構成
図13は、図7に示される放電用電源システム1の回路構成を一部変更することで得られる、本件第3発明として実施することが可能な放電用電源システム1を示している。図7の構成においては第2出力端子OUT2が第2入力端子IN2と接続されていたのに対し、図13の構成では第2出力端子OUT2が蓄電モジュール102のリターン側の端子と接続されている。
【0069】
放電用電源システム1の動作
次に、図13の放電用電源システム1により放電動作を行ったときの各電圧・電流の関係について説明する。まず、コンバータ103への入力に直接寄与する蓄電セルは図7等と同様にCm+1〜Cnであり、本実施例3においても(1)式が成立する。
【0070】
また、図13の放電用電源システム1においても、システム全体のエネルギー保存則として(3)式が成立する。また、図7の放電用電源システム1と同様に第1出力端子OUT1と第2入力端子IN2との間の電位差としてコンバータ103の出力電圧Voutを定義すれば、図13の構成においても(4)式が成立する。さらに、負荷電流ILoadについても、図7の構成と同様に(5)式が成立する。
【0071】
(3)式,(4)式,及び(5)式より、IUとILとの関係式として、図13の構成においても上記(6)式が導かれる。
【0072】
(6)式が示すとおり、Vout=(n−m)×Vcとなる場合を除いてIUとILとは異なる値となり、各セル電圧にばらつきが発生するが、バランス回路101の動作によりこれを解消することでシステムの安定的動作が可能となる。
【0073】
降圧型コンバータを用いた具体例
図13に示す放電用電源システム1の具体例として、降圧型DC−DCコンバータ114を用いて構成した電源システム1を図14に示す。コンバータ114は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。降圧型コンバータ114の出力電圧Voutは、時比率d(0≦d≦1)を用いて、図9の構成と同様に上記(7)式で表される。上記(7)式と(4)式より、負荷電圧VLoadは、図9に示す電源システムと同様に(8)式で表される。
【0074】
次に、図14の放電用電源システム1におけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(6)に、降圧型コンバータ114を用いる場合に出力電圧Voutについて成立する(7)式を代入すれば、上記(9)式が導かれる。すなわち、IUとILとの関係は、図9に示す電源システムと同様に(9)式で表される。
【0075】
以上のとおり、図14の放電用電源システム1は、実質的には図9の放電用電源システム1と同じ動作特性を有する。
【0076】
昇圧型コンバータを用いた具体例
図13に示す放電用電源システム1の、もう一つの具体例として、昇圧型DC−DCコンバータ115を用いて構成した電源システム1を図15に示す。コンバータ115は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。昇圧型コンバータ115の出力電圧Voutは、時比率d(0≦d≦1)を用いて、図10の構成と同様に上記(10)式により表される。上記(10)式と(4)式より、負荷電圧VLoadは、図10に示す電源システムと同様に(11)式で表される。
【0077】
次に、図15の放電用電源システム1におけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(6)に、昇圧型コンバータ115を用いる場合に出力電圧Voutについて成立する上記(10)式を代入すれば、上記(12)式が導かれる。すなわち、IUとILとの関係は、図10に示す電源システムと同様に(12)式で表される。
【0078】
以上のとおり、図15の放電用電源システム1は、実質的には図10の放電用電源システム1と同じ動作特性を有する。
【実施例4】
【0079】
放電用電源システム1の構成
図16は、図11に示される放電用電源システム1の回路構成を一部変更することで得られる、本件第4発明として実施することが可能な放電用電源システム1を示している。図11の構成においては第1出力端子OUT1が第1入力端子IN1と接続されていたのに対し、図16の構成では第1出力端子OUT1が蓄電モジュール102のリターン側の端子と接続されている。
【0080】
放電用電源システム1の動作
次に、図16の放電用電源システム1により放電動作を行ったときの各電圧・電流の関係について説明する。まず、コンバータ103への入力に直接寄与する蓄電セルは図7等と同様にCm+1〜Cnであり、本実施例4においても(1)式が成立する。
【0081】
また、図16の放電用電源システム1においても、システム全体のエネルギー保存則として(3)式が成立する。また、図11と同様に第2出力端子OUT2と第2入力端子IN2との間の電位差としてコンバータ103の出力電圧Voutを定義すれば、出力電圧Voutと負荷電圧VLoadとの間には(4)式が成立する。同様に、負荷電流ILoadについても(5)式が成立する。
【0082】
(3)式,(4)式,及び(5)式より、IUとILとの関係式として上記(6)式が導かれる。
【0083】
(6)式が示すとおり、Vout=(n−m)×Vcとなる場合を除いてIUとILとは異なる値となり、各セル電圧にばらつきが発生するが、バランス回路101の動作によりこれを解消することでシステムの安定的動作が可能となる。
【0084】
反転昇降圧型コンバータを用いた具体例
図16に示すシステムにおけるDC−DCコンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータ116を用いた例を図17に示す。コンバータ116は、蓄電セルCm+1〜Cnからの入力電圧を、スイッチSwのオン・オフ切り替えにより高周波方形波電圧へと一旦変換し、これを整流及び平滑化することにより直流出力電圧を供給する。第2出力端子OUT2と第2入力端子IN2との間の電位差として定義されるVoutは、図12の電源システムと同様に(13)式で表される。また図17の構成においても(4)式が成立するため、負荷電圧VLoadは、図10、図12、及び図15の電源システム1と同様に(11)式で表される。さらに、(13)式を上記(6)式に代入すれば、IUとILとが満たす関係式として、図10、図12、及び図15の電源システムを用いた場合と同様に上記(12)式が導かれる。
【0085】
以上のとおり、図17の放電用電源システム1は、実質的には図10、図12、及び図15の放電用電源システム1と同じ動作特性を有する。
【実施例5】
【0086】
充電用電源システム2の構成
図18は、本件第5発明として実施することが可能な充電用電源システム2を示している。C1〜Cnは、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、二次電池等の蓄電セルであり、これらを直列接続することにより蓄電モジュール102が構成されている。蓄電モジュール102にはバランス回路101が接続されており、蓄電セルC1〜Cnの各電圧はバランス回路101により常に等しく維持されているものとする。なお、バランス回路101としては図8に示されるスイッチトキャパシタシステムを用いることができるが、既に述べたとおり他の任意のバランス回路を用いてもよい。
【0087】
また、蓄電モジュール102の一端(蓄電セルCnにおいて、隣接する蓄電セルCn-1と接続されていない側の端子)はDC−DCコンバータ103の第1出力端子OUT1と接続されており、さらにCmとCm+1の接続点から取り出された中間タップが第2出力端子OUT2と接続されている。したがって、蓄電モジュール102を構成する蓄電セルC1〜Cnのうち、特にCm+1〜Cnが、DC−DCコンバータ103から直接の電力供給を受ける。
【0088】
直流電源105は、DC−DCコンバータ103の第1入力端子OUT1と蓄電モジュール102のリターン側の端子(蓄電セルC1において、隣接する蓄電セルC2と接続されていない側の端子)に接続されている。なお、上記リターン側の端子は接地されている。さらに、DC−DCコンバータ103の第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とが接続されている。
【0089】
充電用電源システム2の動作
次に、充電用電源システム2により充電動作を行ったときの、DC−DCコンバータ103の入出力電圧、直流電源105から供給される電圧、直流電源105を流れる電流、及びバランス回路102を構成する各蓄電セルC1〜Cnを流れる充電電流について説明する。
【0090】
図18において、IPSはDC−DCコンバータ103を動作させたときに電源105を流れる電流を示している。同様に、IL及びIUは、それぞれDC−DCコンバータ103を動作させたときにC1〜Cm及びCm+1〜Cnを流れる充電電流を示している。
【0091】
既に述べたとおり、DC−DCコンバータ103の第1出力端子OUT1は蓄電モジュール102の一端と接続されている一方、第2出力端子OUT2はCmとCm+1の接続点から取り出された中間タップと接続されており、このためコンバータ103から直接の電圧出力を受ける蓄電セルはCm+1〜Cnである。したがってコンバータ103からの出力電圧Voutは、バランス回路101によって均一化された各蓄電セルC1〜Cnの電圧をVcとすると、下記(19)式で表すことができる。
out=(n−m)×Vc …(14)
ただし、本実施例5においては、出力電圧Voutを、第1出力端子と第2出力端子の間の電位差と定義している。後続の実施例6においても同様である。
【0092】
図4〜6で示した構成を採用する場合、コンバータ111〜113からの出力電圧は(n×Vc)となるのであり、図18の構成によれば従来に比較してコンバータからの出力電圧を低く抑えることができる。
【0093】
ここで、図18中のDC−DCコンバータ103は無損失で動作するものとする。コンバータ103の入力電圧Vinを第1入力端子IN1と第2出力端子OUT2との間の電位差とし、コンバータ103の入力電流Iinを第1入力端子IN1に流れ込む電流とすると、エネルギー保存則より下記(15)式が成立する。
in×Iin=IU×(n−m)×Vc …(15)
ただし、上記(15)式中のIUには、バランス回路の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはそこから流れ出す電流を含まないものとする。
【0094】
電源システム2全体で考えた場合、電源105の電源電圧をVPSとして、エネルギー保存則より下記(16)式が成立する。
PS×IPS=IU×(n−m)×Vc+IL×m×Vc …(16)
【0095】
電源電圧VPSはC1〜Cmの電圧とコンバータの入力電圧Vinの和と等しくなるため、下記(17)式が成立する。
PS=m×Vc+Vin …(17)
また、電源電流IPSについては、下記(18)式が成立する。
PS=Iin=IL …(18)
【0096】
(15)式と(18)式より、IUとILとの関係式として、下記(19)式が導かれる。
U=(Vin×IL)/{(n−m)×Vc} …(19)
【0097】
(19)式が示すとおり、Vin=(n−m)×Vcとなる場合を除き、IUとILとは異なる値となる。IUとILとが等しくないならば、C1〜Cmのセル電圧とCm+1〜Cnのセル電圧との間には充電速度の差に起因したばらつきが発生する。しかし、このような場合であっても、バランス回路101の動作により蓄電セル電圧間のばらつきは解消される方向に向かう。したがって、図18に示す電源システムを安定的に動作させることが可能となる。
【0098】
降圧型コンバータを用いた具体例
図18に示す充電用電源システム2の具体例として、降圧型DC−DCコンバータ111を用いて構成した電源システム2を図19に示す。降圧型コンバータ111の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの関係は、スイッチSwの時比率d(0≦d≦1)を用いて、下記(20)式により表される。
in=Vout/d={(n−m)×Vc}/d …(20)
【0099】
上記(20)式と(17)式とより、電源電圧VPSは以下のとおり表される。
PS={(n−m)×Vc}/d+m×Vc …(21)
【0100】
上記(21)式から
n×Vc=d×(VPS−m×Vc)+m×Vc …(22)
となる。さらに、上記(22)式の両辺からVPSを引くことで、以下の(23)式が得られる。
n×Vc−Vps=(1−d)×(m×Vc−Vps) …(23)
【0101】
ここで、上記(23)式の右辺において(1−d)≧0である。また、(17)式を用いれば、(m×Vc−Vps)=−Vin≦0となることが示される(ただし、Vin≧0となるように電源電圧Vpsの極性を選択するものとする)。したがってn×Vc≦Vps,すなわちVc≦Vps/nとなる。
【0102】
DC−DCコンバータ111を用いずに蓄電セルC1〜Cnを直接電源105に接続する場合、各蓄電セルには電源105から(Vps/n)の電圧が印加される。言い換えれば、各蓄電セルに印加される出力電圧は(Vps/n)からVcへとDC−DCコンバータ111によって降圧されていることがわかる。また(17)式によれば、電源電圧VPSの大きさは、DC−DCコンバータ111に直接接続されていない蓄電セルC1〜Cmの電圧の和であるm×Vcと、DC−DCコンバータ111の入力電圧である{(n−m)×Vc}/dと、の合計に等しい。
【0103】
次に、図19の充電用電源システム2におけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(19)に、降圧型コンバータを用いる場合に入力電圧Vinについて成立する(20)式を代入することで、下記(24)式に示すとおりの具体的な関係式が得られる。
U=IL/d …(24)
ただし、上記(24)式中のIUとILとはいずれも、バランス回路101の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはC1〜Cnから流れ出す電流を含まないものとする。
【0104】
上記(24)式に示すとおり、図19の充電用電源システム2においてはIU≧ILであり、蓄電セルCm+1〜Cnは蓄電セルC1〜Cmよりも急速に充電される。したがって蓄電セル間に電圧ばらつきが発生することとなるが、バランス回路101の動作によりそのようなばらつきは解消されるため、電源システム2を安定的に動作させることが可能となる。
【0105】
また図19の構成において、DC−DCコンバータ111のスイッチングノード106と第2出力端子OUT2との間の電位差を、(20)式を用いてVin={(n−m)×Vc}/dと表すことができる。一方、図4の従来構成におけるスイッチングノード106と第2出力端子OUT2との間の電位差は(n×Vc)/dである。すなわち図19の構成によれば、スイッチングノード106に印加される電圧を、C1〜Cmのセル電圧の寄与分に相当する(m×Vc)/dだけ、従来よりも低く抑えることができる。
【0106】
したがって、図19に示す本発明の充電用電源システム2によれば、スイッチング損失やダイオードにおけるリカバリ損失、及びスイッチングにより発生するノイズを図4に示す従来構成よりも小さく抑えることが可能となる。加えて、図4に示す従来構成ではスイッチSwやダイオードDとして最低でも(n×Vc)/dの電圧に対する耐電圧性を備えたデバイスを用いる必要があったが、図19の電源システム2に用いる素子は{(n−m)×Vc}/dの電圧に対する耐電圧性を備えていれば十分である。すなわち、従来よりも低耐圧のデバイスを選択することが可能となるのであり、これは電源システム全体としての小型化に繋がる。
【0107】
昇圧型コンバータを用いた具体例
図18に示す充電用電源システム2の、もう一つの具体例として、昇圧型DC−DCコンバータ112を用いて構成した電源システム2を図20に示す。昇圧型コンバータ112の入力電圧Vinと出力電圧Voutとの関係は、時比率d(0≦d≦1)を用いて、下記(25)式により表される。
in=Vout×(1−d)={(n−m)×Vc}×(1−d) …(25)
【0108】
電源電圧VPSと入力電圧Vinとの間には(17)式が成立する。(17)式に上記(25)式を代入することにより、下記(26)式に示すとおり電源電圧VPSが求められる。
PS={(n−m)×Vc}×(1−d)+m×Vc …(26)
【0109】
上記(26)式から
n×Vc=(VPS−m×Vc)/(1−d)+m×Vc …(27)
となる。さらに、上記(27)式の両辺からVPSを引くことで、以下の(28)式が得られる。
nVc−Vps={−d/(1−d)}×(m×Vc−Vps) …(28)
【0110】
ここで、上記(28)式の右辺において{−d/(1−d)}≦0である。また、(17)式を用いれば、(m×Vc−Vps)=−Vin≦0となることが示される(ただし、Vin≧0となるように電源電圧Vpsの極性を選択するものとする)。したがってnVc≧Vps,すなわちVc≧Vps/nとなる。
【0111】
DC−DCコンバータ112を用いずに蓄電セルC1〜Cnを直接電源105に接続する場合、各蓄電セルには電源105から(Vps/n)の電圧が印加される。言い換えれば、各蓄電セルに印加される出力電圧は(Vps/n)からVcへとDC−DCコンバータ112によって昇圧されていることがわかる。また(26)式によれば、電源電圧VPSの大きさは、DC−DCコンバータ112に直接接続されていない蓄電セルC1〜Cmの電圧の和であるm×Vcと、DC−DCコンバータ112の入力電圧である{(n−m)×Vc}×(1−d)と、の合計に等しい。
【0112】
次に、図20の充電用電源システム2におけるIUとILとの関係を求める。IUとILとが満たす関係式(19)に、昇圧型コンバータを用いる場合に入力電圧Vinについて成立する(25)式を代入することで、下記(29)式に示すとおりの具体的な関係式が得られる。
U=IL×(1−d) …(29)
ただし、上記(29)式中のIUとILとはいずれも、バランス回路101の動作により蓄電セルC1〜Cnに流れ込む、あるいはC1〜Cnから流れ出す電流を含まないものとする。
【0113】
上記(29)式に示すとおり、図20の充電用電源システム2においてはIU≦ILであり、蓄電セルC1〜Cmは蓄電セルCm+1〜Cnよりも急速に充電される。したがって蓄電セル間に電圧ばらつきが発生することとなるが、バランス回路101の動作によりそのようなばらつきは解消されるため、電源システム2を安定的に動作させることが可能となる。
【0114】
また図20の構成において、DC−DCコンバータ112のスイッチングノード106と第2出力端子OUT2との間の電位差を、(14)式を用いてVout=(n−m)×Vcと表すことができる。一方、図5の従来構成におけるスイッチングノード106と第2出力端子OUT2との間の電位差はn×Vcである。すなわち図20の構成によれば、スイッチングノード106に印加される電圧を、C1〜Cmのセル電圧の寄与分に相当するm×Vcだけ、従来よりも低く抑えることができる。
【0115】
したがって、図20に示す本発明の充電用電源システム2によれば、スイッチング損失やダイオードにおけるリカバリ損失、及びスイッチングにより発生するノイズを図5に示す従来構成よりも小さく抑えることが可能となる。加えて、図5に示す従来構成ではスイッチSwやダイオードDとして最低でもn×Vcの電圧に対する耐電圧性を備えたデバイスを用いる必要があったが、図20の電源システム2に用いる素子は(n−m)×Vcの電圧に対する耐電圧性を備えていれば十分である。すなわち、従来よりも低耐圧のデバイスを選択することが可能となるのであり、これは電源システム全体としての小型化に繋がる。
【実施例6】
【0116】
充電用電源システム2の構成
充電用電源システム2に用いるDC−DCコンバータとしては、反転昇降圧型コンバータを用いることも可能である。本件第6発明の一例として実施することができる、反転昇降圧型コンバータを組み込むために適した充電用電源システム2の回路構成を図21に示す。図18においてDC−DCコンバータ103の第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2とが接続されていたのとは異なり、図21の回路構成においては第1入力端子IN1と第1出力端子IN1とが接続されている。
【0117】
反転昇降圧型コンバータを用いた具体例
図21に示すシステムにおけるDC−DCコンバータとして反転昇降圧型DC−DCコンバータ113を用いた例を図22に示す。入力キャパシタCinの電圧は、出力キャパシタCOUTの電圧Voutを用いて{(1−d)×Vout}/dと表される。ただし、図22中の「+」記号で示されるとおり極性が反転している。第2入力端子IN2と第2出力端子OUT2との間の電位差としてコンバータ113の入力電圧Vinを定義すれば、Vinは以下の(30)式により表される。
in={(1−d)×Vout}/d+Vout={(n−m)×Vc}/d
…(30)
【0118】
(30)式により表されるVinの大きさは、降圧型DC−DCコンバータ111を用いた場合の入力電圧を表す(20)式により表されるVinの大きさと同一である。図22の回路構成においても降圧型コンバータ111を用いた場合と同様に(17)式、及び(19)式が成立することから、反転昇降圧型コンバータ113を用いた場合の電源電圧VPSは(21)式で表され、またIUとILとの関係は(24)式で表される。すなわち、反転昇降圧型コンバータ113を用いた図22の充電用電源システム2は、実質的には降圧型コンバータ111を用いた図19の充電用電源システム2と同じ動作特性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、二次電池、電気二重層キャパシタ、コンデンサ等の蓄電セルを用いる電源に広く適用できる。例えば太陽光発電システムにおいて、日射量に依存する不安定な太陽電池の出力電圧を所望の大きさへと制御するために、本発明を用いることができる。あるいは、本発明を蓄電源に応用することも可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 放電用電源システム
2 充電用電源システム
100 放電用電源システム
101 バランス回路
102 蓄電モジュール
103 DC−DCコンバータ
104 負荷
105 電源
106 スイッチングノード
111 降圧型DC−DCコンバータ
112 昇圧型DC−DCコンバータ
113 反転昇降圧型DC−DCコンバータ
200 充電用電源システム
in 入力キャパシタ
out 出力キャパシタ
D ダイオード
L コイル
W,Q1〜Q2n スイッチ
1〜Cn キャパシタ
s,1〜Cs,n-1 蓄電セル
IN1 第1入力端子
IN2 第2入力端子
OUT1 第1出力端子
OUT2 第2出力端子
L 蓄電セルC1〜Cmを流れる電流
U 蓄電セルCm+1〜Cnを流れる電流
LOAD 負荷電流
PS 電源電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第2入力端子と該第2出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、
を備え、
前記第1出力端子と前記蓄電セル群の他端との間に、前記第1出力端子と該第2入力端子との間の電位差である前記DC−DCコンバータの出力電圧と、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項2】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第1入力端子と該第1出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、
を備え、
前記第2出力端子と前記蓄電セル群の他端との間に、前記第2出力端子と該第2入力端子との間の電位差である前記DC−DCコンバータの出力電圧と、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項3】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第2出力端子と該蓄電セル群の他端とが電気的に接続されたコンバータと、
を備え、
前記第1出力端子と前記第2出力端子との間に、前記第1出力端子と該第2入力端子との間の電位差である前記DC−DCコンバータの出力電圧と、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項4】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1入力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2入力端子と、第1及び第2出力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第1出力端子と該蓄電セル群の他端とが電気的に接続されたコンバータと、
を備え、
前記第2出力端子と前記第1出力端子との間に、前記第2出力端子と該第2入力端子との間の電位差である前記DC−DCコンバータの出力電圧と、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータへの入力に寄与しない蓄電セルの電圧と、の合計電圧を出力することを特徴とする、電源システム。
【請求項5】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1出力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2出力端子と、第1及び第2入力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第2出力端子と該第2入力端子とが電気的に接続されたコンバータと、
前記第1入力端子と前記蓄電セル群の他端との間に電気的に接続された電源と、
を備え、
前記第1入力端子と前記第2出力端子との間の電位差である、前記DC−DCコンバータの入力電圧は、前記電源が供給する電源電圧よりも、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータの前記第1及び第2出力端子の間にない蓄電セルの電圧だけ低いことを特徴とする、電源システム。
【請求項6】
1以上の蓄電素子を含んでなる蓄電セルを2以上直列接続して構成される蓄電セル群と、
前記蓄電セル群と電気的に接続された、前記蓄電セルの各々に印加される電圧を調整するバランス回路と、
前記蓄電セル群の一端と電気的に接続された第1出力端子と、該蓄電セル群において前記蓄電セル同士を接続する直列接続点のうちいずれか一つと電気的に接続された第2出力端子と、第1及び第2入力端子と、を有するDC−DCコンバータであって、該第1入力端子と該第1出力端子とが電気的に接続されたコンバータと、
前記第2入力端子と前記蓄電セル群の他端との間に電気的に接続された電源と、
を備え、
前記第2入力端子と前記第2出力端子との間の電位差である、前記DC−DCコンバータの入力電圧は、前記電源が供給する電源電圧よりも、前記蓄電セル群において該DC−DCコンバータの前記第1及び第2出力端子の間にない蓄電セルの電圧だけ低いことを特徴とする、電源システム。
【請求項7】
前記蓄電セルが、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、又は二次電池のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電源システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−155766(P2011−155766A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15486(P2010−15486)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】