説明

直動案内装置

【課題】軸体を比較的に小さな力で長さ方向に移動させることができ、そして軸体の昇降を繰り返しても内筒と軸体との相対的な位置関係に変動を生じ難い直動案内装置を提供すること。
【解決手段】外筒51、外筒の内周面に沿って配設された複数個の転動体52、外筒の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、上記複数個の転動体を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒53、内筒に挿入された上記複数個の転動体に外周面が支持されている軸体54、および外筒の各開口部に備えられている環状の蓋体55を含み、そして上記の内筒と少なくとも一方の蓋体との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネ61が備えられていて、そして該コイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分61aと、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分61bとを含む直動案内装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長さ方向に移動可能な軸体を備える直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内装置は、長さ方向に移動可能な軸体を備えていて、例えば、電子部品実装装置に代表される各種の機械装置に組み込んで使用される。電子部品実装装置には、複数個の直動案内装置が、それぞれ軸体を垂直に配置した状態で組み込まれる。各々の軸体の下端部には、電子部品の吸着ノズルが付設される。
【0003】
電子部品実装装置は、直動案内装置の軸体を吸着ノズルと共に下降させ、予めトレイに収容した電子部品を吸着ノズルで吸着したのち軸体を上昇させ、次いで直動案内装置をプリント配線板の上方に移動したのち軸体を下降させ、そして吸着ノズルで吸着した電子部品をプリント配線板の所定位置に装着(実装)する。電子部品実装装置は、上記のように直動案内装置の軸体を繰り返し昇降(長さ方向に移動)させ、多数の電子部品をプリント配線板の表面に実装する。
【0004】
図1は、従来の直動案内装置の構成例を示す部分断面図である。但し、直動案内装置10は、外筒11及び蓋体15を軸体14の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒13の一部分を切り欠いた状態で記入してある。そして図2は、図1に記入した切断線A−A線に沿って切断した直動案内装置10の断面図である。但し、転動体12は切断していない状態で記入してある。
【0005】
図1及び図2に示す直動案内装置10は、両端に開口部を持つ外筒11、外筒11の内周面に沿って配設された複数個の転動体12、外筒11の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、複数個の転動体12を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒13、内筒13に挿入された上記複数個の転動体12に外周面が支持されている軸体14、および外筒11の各開口部に備えられている環状の蓋体15から構成されている。
【0006】
直動案内装置10の外筒11を支持固定して、軸体14を図1に示す位置(以下「初期位置」と云う)から下降させると、外筒11と軸体14とに挟まれた転動体12が下方に転動するため、転動体12を保持している内筒13もまた図1に示す位置(以下「初期位置」と云う)から下降する。次いで、軸体14を上昇させて初期位置に配置させると、転動体12が上方に転動するため、内筒13もまた上昇して初期位置(元の位置)に配置される。
【0007】
転動体12を保持する内筒13の移動速度(昇降の速度)は、軸体14の移動速度とは一致せず、理論的には、軸体14の移動速度の二分の一の速度になる。従って、内筒13は通常、内筒13の移動速度とは異なる速度で移動する軸体14、あるいは静止している外筒11に固定されることはない。
【0008】
このため、軸体14の昇降を繰り返すと、その際に、例えば、複数個の転動体12を保持する内筒13が重力(自重)の影響を受け続けることが原因で、その後に軸体14を初期位置に配置させても、内筒13が初期位置に配置されることなく、初期位置よりも下方の位置に配置されることがある。
【0009】
また、直動案内装置10の転動体12は、外筒11と軸体14とに挟まれて加圧された状態にある。そして、例えば、外筒11や軸体14を作製する際の機械加工の精度の僅かな変動により、外筒11の内径がその中心軸方向において変動したり、軸体14の外径がその中心軸方向において変動したり、あるいは直動案内装置10の各種機械装置への取り付け状態により、外筒11と軸体14とが両者の中心軸が傾斜した状態で設置されたりすると、転動体12に加わる圧力が外筒11の長さ方向に変動する。転動体12に加わる圧力が外筒11の長さ方向に変動していると、転動体12が外筒11の長さ方向において圧力の小さい位置に移動し易くなる。このため、軸体14の昇降を繰り返すと、その後に軸体14を初期位置に配置させても、転動体12を保持している内筒13が初期位置に配置されることなく、初期位置よりも上方あるいは下方の位置(初期位置とは異なる位置)に配置されることがある。
【0010】
このように、従来の直動案内装置10では、軸体14の昇降を繰り返すと、その後に軸体14を初期位置に配置させても、内筒13が初期位置に配置されることなく、初期位置とは異なる位置に配置されることがある。すなわち、軸体14の昇降を繰り返すと、内筒13と軸体14との相対的な位置関係に変動を生じることがある。
【0011】
例えば、図1に示す直動案内装置10において、軸体14の昇降を約1万回繰り返し、その後に軸体14を初期位置に配置させると、内筒13が初期位置よりも数mm程度下方の位置に配置されることがある。
【0012】
このように、直動案内装置10の軸体14の昇降を繰り返す際に、例えば、内筒13が軸体14に対して相対的に下方に移動し続けると、図3に示すように軸体14を初期位置から下降させた際に、転動体12と共に下降する内筒13が外筒11の開口部に備えられた蓋体15に接触(衝突)して停止する。内筒13が静止すると、軸体14を支持している転動体12も停止するため、軸体14を円滑に移動させることのできる距離が短くなる。
【0013】
また、軸体14を支持している転動体12が停止すると、これと同時に軸体14と転動体12とが互いに強く擦れ合い(摺動し)、両者の間に急激に大きな摩擦抵抗が発生する。このため、駆動装置により軸体14を昇降(長さ方向に移動)させて位置決めする精度が低下したり、極端な場合には、駆動装置がその駆動力によっては軸体14を昇降させることができずに停止することもある。
【0014】
図4は、従来の直動案内装置の別の構成例を示す部分断面図である。図4の直動案内装置40は、内筒13と各蓋体15との間にコイルバネ41を備えていて、軸体14の昇降を繰り返す際に、各々のコイルバネ41から内筒13に、内筒13を外筒11の上下の中央の位置(初期位置)に向かって押し戻す力が継続して付与される。このため、軸体14の昇降を繰り返しても内筒13と軸体14との相対的な位置関係に変動を生じ難く、従って内筒13と蓋体15との接触の発生が抑制されることから、軸体14を円滑に移動可能な距離が短縮し難い。
【0015】
また、内筒13と蓋体15との接触の発生が抑制されるため、軸体14と転動体12との間の大きな摩擦抵抗の発生も抑制される。このため、軸体14の位置決め精度の低下も抑制される。図4の直動案内装置40と同様の構成を有する直動案内装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平11−223217号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図1の直動案内装置10は、軸体14の昇降を繰り返すと、内筒13と軸体14との相対的な位置関係に変動を生じ易く、従って内筒13と蓋体15とが接触し易いことから、軸体14を円滑に移動可能な距離が短縮し易い。
【0018】
図4の直動案内装置40では、各々のコイルバネ41から内筒13に、内筒13を外筒11の上下の中央の位置(初期位置)に向かって押し戻す力が継続して付与される。このため、軸体14の昇降が繰り返されても、内筒13と軸体14との相対的な位置関係に変動を生じ難く、従って内筒13と蓋体15との接触の発生が抑制されることから、軸体14を円滑に移動可能な距離が短縮し難い。
【0019】
しかしながら、直動案内装置40では、軸体14をコイルバネ41の復元力を超える大きな力で昇降させる必要がある。また、コイルバネ41の復元力は、コイルバネ41が縮小するほど大きくなる。このように、コイルバネの大きく且つ変動する復元力に逆らって軸体を昇降させると、軸体を昇降して位置決めする精度が低下する傾向にある。
【0020】
本発明の課題は、軸体を比較的に小さな力で長さ方向に移動させることができ、そして軸体の昇降を繰り返しても内筒と軸体との相対的な位置関係に変動を生じ難い直動案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、直動案内装置の内筒と蓋体との間に、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むコイルバネを設けると、下記(1)の理由により軸体を比較的に小さな力で移動させることが可能になり、そして下記(2)の理由により、軸体の昇降を繰り返しても内筒と軸体との相対的な位置関係に変動を生じ難くなることを見出し、本発明に到達した。
(1)上記のコイルバネは、第1のバネ区分の互いに隣接する線材が接触する前には相対的に小さなバネ定数を示し、第1のバネ区分の互いに隣接する線材が接触した後には相対的に大きなバネ定数を示す。このため、第1のバネ区分の互いに隣接する線材が接触するまでは、軸体を初期位置から相対的に小さな力で昇降(長さ方向に移動)させることができる。なお、内筒が外筒の端部に備えられた蓋体に接近し、第1のバネ区分の互いに隣接する線材が接触すると、コイルバネの大きな復元力によって内筒が初期位置に向かって押し戻されるため、内筒と蓋体との接触の発生が確実に防止される。
(2)上記のコイルバネ(すなわち第1のバネ区分及び第2のバネ区分のそれぞれ)から内筒に、内筒を初期位置に向けて押し戻す力が継続して付与されるため、軸体の昇降を繰り返しても内筒と軸体との相対的な位置関係に変動を生じ難い。
【0022】
本発明は、両端に開口部を持つ外筒、外筒の内周面に沿って配設された複数個の転動体、外筒の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、上記複数個の転動体を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒、内筒に挿入された上記複数個の転動体に外周面が支持されている軸体、および外筒の各開口部に備えられている環状の蓋体を含む直動案内装置であって、上記の内筒と少なくとも一方の蓋体との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネが備えられていて、そして上記のコイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むことを特徴とする直動案内装置にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の直動案内装置は、軸体を比較的に小さな力で長さ方向に移動させることができ、そして軸体の昇降を繰り返しても内筒と軸体との相対的な位置関係に変動を生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の直動案内装置の構成例を示す部分断面図である。但し、直動案内装置10は、外筒11及び蓋体15を軸体14の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒13の一部分を切り欠いた状態で記入してある(図4についても同様である)。
【図2】図1に記入した切断線A−A線に沿って切断した直動案内装置10の断面図である。但し、転動体12は切断していない状態で記入してある(図15についても同様である)。
【図3】図1の直動案内装置10を内筒13と蓋体15とが接触した状態にて示す図である。
【図4】従来の直動案内装置の別の構成例を示す部分断面図である。但し、コイルバネ41は、線材の巻数を実際よりも少なくして記入してある。
【図5】本発明の直動案内装置の構成例を示す部分断面である。但し、直動案内装置50は、外筒51、蓋体55、およびコイルバネ61を軸体54の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒53の一部分を切り欠いた状態で記入してある(図14についても同様である)。なお、コイルバネ61は、線材の巻数を実際よりも少なくして記入してある(図6〜図14についても同様である)。
【図6】図5の直動案内装置50を、図に示すように内筒53と軸体54との相対的な位置関係に変動を生じていない場合に、軸体54を下方に移動させた状態で示す図である。
【図7】図5の直動案内装置50を、軸体54の昇降が繰り返され、内筒53が軸体54に対して相対的に下方の位置に配置された場合に、軸体54を下方に移動させた状態で示す図である。
【図8】本発明の直動案内装置の別の構成例を示す部分断面図である。但し、直動案内装置80は、外筒51及び蓋体55を軸体54の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒53の一部分を切り欠いた状態で記入してある(図9〜図13についても同様である)。
【図9】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図10】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図11】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図12】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図13】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図14】本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。
【図15】図14に記入した切断線B−B線に沿って切断した直動案内装置140の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
先ず、本発明の直動案内装置の代表的な実施態様について、添付の図面を参照しながら説明する。
【0026】
図5は、本発明の直動案内装置の構成例を示す部分断面である。但し、直動案内装置50は、外筒51、蓋体55、およびコイルバネ61を軸体54の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒53の一部分を切り欠いた状態で記入してある。なお、コイルバネ61は、その構成が理解し易くなるように、線材の巻数を実際よりも少なくして記入してある。
【0027】
図5の直動案内装置50は、両端に開口部を持つ外筒51、外筒51の内周面に沿って配設された複数個の転動体52、外筒51の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、複数個の転動体52を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒53、内筒53に挿入された上記複数個の転動体52に外周面が支持されている軸体54、および外筒51の各開口部に備えられている環状の蓋体55を有している。このような構成については、図1に示す従来の直動案内装置10の構成と同様である。
【0028】
そして直動案内装置50は、内筒53と各蓋体55との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネ61を備えていて、そしてコイルバネ61が、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分61aと、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分61bとを含むことに特徴がある。
【0029】
直動案内装置50において、内筒53が蓋体55の側に近づいて両者の間隔が狭くなるほど、コイルバネ61に付与される荷重が増大する。上記のように、コイルバネ61の第1のバネ区分61aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる。従って、コイルバネ61に付与される荷重が増大すると、先ず第1のバネ区分61aの互いに隣接する線材に接触を生じる。
【0030】
従って、コイルバネ61は、上記のように第1のバネ区分61aの互いに隣接する線材に接触を生じる前には、その長さ方向の全体が縮小することができるため、相対的に小さなバネ定数(バネに単位の変形を与えるのに必要な力)を示す。
【0031】
その一方で、コイルバネ61は、上記のように第1のバネ区分61aの互いに隣接する線材に接触を生じた後には、前記の線材の接触を生じている部分が、コイルバネ61に付与される荷重が更に増大しても、この荷重の増大に応じて縮小することができなくなる(バネとして機能しなくなる)ため、相対的に大きなバネ定数を示す。
【0032】
従って、直動案内装置50において、軸体54を初期位置(図5に示す位置)から下降させていくと、図6に示すように第1のバネ区分61aの互いに隣接する線材に接触を生じる前までは、コイルバネ61が相対的に小さなバネ定数を示すため、軸体54を比較的に小さな力で昇降(長さ方向に移動)させることができる。
【0033】
一方、直動案内装置50において、軸体の昇降が繰り返され、例えば、内筒53が軸体54に対して相対的に下方の位置に移動していくと、軸体54を初期位置から下降させた際に、コイルバネ61に付与される荷重が大きくなる。このため、軸体54を下降させた際に、図7に示すように第1のバネ区分61aの互いに隣接する線材に接触を生じて、コイルバネ61が相対的に大きなバネ定数を示すようになる。従って、コイルバネ61が、その大きな復元力によって内筒53を初期位置に向けて強く押し戻すため、内筒53と蓋体55との接触の発生が確実に防止される。
【0034】
また、上記のコイルバネ61(すなわち第1のバネ区分61a及び第2のバネ区分61bのそれぞれ)から内筒53に、内筒53を初期位置に向けて押し戻す力が継続して付与されるため、軸体54の昇降を繰り返しても内筒53と軸体54との相対的な位置関係に変動を生じ難い。
【0035】
図5の直動案内装置50の場合、コイルバネ61の線材の断面積が、コイルバネ61の一方の端部(蓋体55の側の端部)から他方の端部(内筒53の側の端部)にかけて連続的に減少していて、第1のバネ区分61aは、コイルバネ61を三等分に区分した上記他方の端部の側の区分とされ、そして第2のバネ区分61bは、コイルバネ61を三等分に区分した上記一方の端部の側の区分とされる。なお、上記のようにコイルバネ61の第1のバネ区分と第2のバネ区分を定める際には、荷重が付与されていない状態でコイルバネ61を三等分に区分する。
【0036】
コイルバネ61の線材の断面積は、コイルバネ61の上記一方の端部(すなわち第2のバネ区分61bの側の端部)から上記他方の端部(すなわち第1のバネ区分61aの側の端部)にかけて連続的に減少している。従って、コイルバネ61の第1のバネ区分61aのバネ定数は、第2のバネ区分61bのバネ定数よりも小さくなる。このため、コイルバネ61に荷重が付与された際に(すなわち各バネ区分に同じ大きさの荷重が付与された際に)、第1のバネ区分61aが相対的に大きく弾性変形(縮小)して、互いに隣接する線材に接触を生じ易くなる。これにより、コイルバネ61の第1のバネ区分61aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされ、そして第2のバネ区分61bは、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされる。
【0037】
コイルバネ61は、例えば、次のようにして作製することができる。先ず、断面が円形の線材を螺旋状に巻いてコイルバネを作製する。但し、コイルバネの外径は、コイルバネの中心軸方向に沿って次第に大きく(あるいは小さく)なるように調製する。これにより、円錐台の形状のコイルバネを作製する。作製した円錐台の形状のコイルバネの外周面の一部分を、例えば、コイルバネの外径が上記中心軸方向に沿って均一な外径になるように研磨除去することにより、図5に示すように線材の断面積が一方の端部から他方の端部にかけて連続的に減少しているコイルバネ61を作製することができる。
【0038】
図8は、本発明の直動案内装置の別の構成例を示す部分断面図である。但し、直動案内装置80は、外筒51及び蓋体55を軸体54の中心軸を含む平面に沿って切断し、そして内筒53の一部分を切り欠いた状態で記入してある。
【0039】
図8の直動案内装置80の構成は、コイルバネ81の線材の断面積が、線材の断面の形状が円形に保たれ状態で、一方の端部(蓋体55の側の端部)から他方の端部(内筒53の側の端部)にかけて連続的に減少していること以外は、図5の直動案内装置50の構成と同様である。
【0040】
図9は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。図9の直動案内装置90の構成は、コイルバネ91の構成が異なること以外は、図5の直動案内装置50の構成と同様である。
【0041】
すなわち、図9の直動案内装置90の場合、コイルバネ91の互いに隣接する線材の間隔(ピッチ)が、コイルバネ91の一方の端部(蓋体55の側の端部)から他方の端部(内筒53の側の端部)にかけて連続的に増加していて、第1のバネ区分91aは、コイルバネ91を三等分に区分した上記一方の端部の側の区分とされ、そして第2のバネ区分91bは、コイルバネ91を三等分に区分した上記他方の端部の側の区分とされる。なお、上記のようにコイルバネ91の第1のバネ区分91aと第2のバネ区分91bを定める際には、荷重が付与されていない状態でコイルバネ91を三等分に区分する。
【0042】
コイルバネ91の互いに隣接する線材の間隔(ピッチ)は、コイルバネ91の上記一方の端部(すなわち第1のバネ区分91aの側の端部)から上記他方の端部(第2のバネ区分91bの側の端部)にかけて連続的に増加している。このため、コイルバネ91の第1のバネ区分91aの線材の巻数は、第2のバネ区分91bの線材の巻数よりも大きくなる。従って、コイルバネ91の第1のバネ区分91aのバネ定数は、第2のバネ区分91bのバネ定数よりも小さくなる。このため、コイルバネ91に荷重が付与された際に、第1のバネ区分91aが相対的に大きく弾性変形(縮小)して、互いに隣接する線材に接触を生じ易くなる。これにより、コイルバネ91の第1のバネ区分91aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされ、そして第2のバネ区分91bは、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされる。
【0043】
図10は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。図10の直動案内装置100の構成は、コイルバネ101の構成が異なること以外は、図5の直動案内装置50の構成と同様である。
【0044】
すなわち、図10の直動案内装置100の場合、コイルバネ101が、それぞれ線材の断面積が均一で且つ前記断面積が互いに異なる二つのコイルバネ片102a、102bを一列に並べて配置した構成にあり、第1のバネ区分101aは、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片102aから構成され、そして第2のバネ区分101bは、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片102bから構成される。
【0045】
コイルバネ101の第1のバネ区分101aを構成するコイルバネ片102aの線材の断面積は、第2のバネ区分101bを構成するコイルバネ片102bの線材の断面積よりも小さい。従って、コイルバネ101の第1のバネ区分101aのバネ定数は、第2のバネ区分101bのバネ定数よりも小さくなる。このため、コイルバネ101に荷重が付与された際に、第1のバネ区分101aが相対的に大きく弾性変形(縮小)して、互いに隣接する線材に接触を生じ易くなる。これにより、コイルバネ101の第1のバネ区分101aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされ、そして第2のバネ区分101bは、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされている。
【0046】
図11は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。図11の直動案内装置110の構成は、コイルバネ111の構成が異なること以外は、図5の直動案内装置50の構成と同様である。
【0047】
すなわち、図11の直動案内装置110の場合、コイルバネ111が、それぞれ互いに隣接する線材の間隔(ピッチ)が均一で且つ前記間隔が互いに異なる二つのコイルバネ片112a、112bを一列に並べて配置した構成にあり、第1のバネ区分111aは、線材の間隔が最も小さなコイルバネ片112aから構成され、そして第2のバネ区分111bは、線材の間隔が最も大きなコイルバネ片112bから構成される。
【0048】
コイルバネ111の第1のバネ区分111aを構成するコイルバネ片112aの線材の間隔は、第2のバネ区分111bを構成するコイルバネ片112bの線材の間隔よりも小さい。すなわち、コイルバネ111の第1のバネ区分111aの線材の巻数は、第2のバネ区分の線材の巻数よりも大きい。従って、コイルバネ111の第1のバネ区分111aのバネ定数は、第2のバネ区分111bのバネ定数よりも小さくなる。このため、コイルバネ111に荷重が付与された際に、第1のバネ区分111aが相対的に大きく弾性変形(縮小)して、互いに隣接する線材に接触を生じ易くなる。これにより、コイルバネ111の第1のバネ区分111aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされ、そして第2のバネ区分111bは、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされる。
【0049】
図12は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。図12の直動案内装置120の構成は、コイルバネ121の第1のバネ区分121aが蓋材55の側にあり、そして第2のバネ区分121bが内筒53の側にあること以外は、図10の直動案内装置100の構成と同様である。
【0050】
このように、第1のバネ区分及び第2のバネ区分はコイルバネの長さ方向の任意の位置に配置することができる。
【0051】
図13は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。図13の直動案内装置130の構成は、コイルバネ131の構成が異なること以外は、図10の直動案内装置100の構成と同様である。
【0052】
すなわち、図13の直動案内装置130の場合、コイルバネ131が、それぞれ線材の断面積が均一で且つ前記断面積が互いに異なる三つのコイルバネ片132a、132b、132cを一列に並べて配置した構成にあり、第1のバネ区分131aは、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片132bから構成され、そして第2のバネ区分131bは、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片132aから構成される。
【0053】
コイルバネ131の第1のバネ区分131aを構成するコイルバネ片132bの線材の断面積は、第2のバネ区分131bを構成するコイルバネ片132aの線材の断面積よりも小さい。従って、コイルバネ131の第1のバネ区分131aのバネ定数は、第2のバネ区分131bのバネ定数よりも小さくなる。このため、コイルバネ131に荷重が付与された際に、第1のバネ区分131aが相対的に大きく弾性変形(縮小)して、互いに隣接する線材に接触を生じ易くなる。これにより、コイルバネ131の第1のバネ区分131aは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされ、そして第2のバネ区分131bは、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるようにされる。
【0054】
なお、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片が第1のバネ区分を構成するコイルバネであってもよい。同様に、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片が第2のバネ区分を構成するコイルバネ片であってもよい。
【0055】
図14は、本発明の直動案内装置の更に別の構成例を示す部分断面図である。但し、軸体144は、その一部分を切り欠いた状態で記入してある。そして図15は、図14に記入した切断線B−B線に沿って切断した直動案内装置140の断面図である。
【0056】
図14の直動案内装置140の構成は、外筒141の内周面に内筒53の外周側に突き出た転動体142を収容する複数本(例えば、4本)の直線溝141aが形成されていること、軸体144の外周面に内筒53の内周側に突き出た転動体142を収容する複数本の直線溝144aが形成されていること、そして転動体142のサイズが異なること以外は、図5の直動案内装置50の構成と同様である。
【0057】
図14の直動案内装置140は、外筒141と軸体144とが複数個の転動体142を介して互いに係合しているため、外筒141に対する軸体144の回転移動が防止される。このため、例えば、直動案内装置140の軸体144の端部に移動対象の物品を支持固定することにより、上記物品を軸体144の周方向に回転移動させることなく、軸体144の長さ方向に円滑に移動させることが可能になる。また、直動案内装置140の外筒141を回転駆動することにより、外筒141を上記物品が支持固定された軸体144と共に回転移動させることもできる。
【0058】
外筒の内周面には、2〜10本(特に3〜6本)の直線溝が形成されていることが好ましい。同様に軸体の外周面には、2〜10本(特に3〜6本)の直線溝が形成されていることが好ましい。
【0059】
なお、外筒141に対する軸体144の回転移動を防止するためには、上記の外筒141の直線溝141a及び軸体144の直線溝144aのうちの少なくとも一方を備えていればよく、図15に示すように両方の直線溝141a、144aを備えていることが特に好ましい。
【0060】
なお、例えば、直動案内装置が上記の転動体を収容する軸体の直線溝のみを備える場合、転動体を保持している内筒に突起を設け、この突起を外筒に形成した直線溝に係合させることにより、外筒に対する軸体の回転移動を防止することができる。
【0061】
次に、本願発明の構成と好ましい実施態様とについて詳細に説明する。
【0062】
前記のように、本願発明の直動案内装置は、両端に開口部を持つ外筒、外筒の内周面に沿って配設された複数個の転動体、外筒の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、上記複数個の転動体を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒、内筒に挿入された上記複数個の転動体に外周面が支持されている軸体、および外筒の各開口部に備えられている環状の蓋体を備えていて、そして上記内筒と少なくとも一方の蓋体との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネが備えられていて、そして前記コイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むことに特徴がある。
【0063】
外筒、転動体、そして軸体は、通常、鋼に代表される金属材料から形成される。また、直動案内装置の軽量化のために樹脂材料を用いたり、耐熱性や耐腐蝕性を向上させるためにセラミック材料を用いることもできる。
【0064】
転動体としては、通常、ボール(球体)が用いられる。転動体としては、ころ(ローラー)を用いることもできる。
【0065】
転動体の数に特に制限はないが、軸体を安定に支持するため、直動案内装置の複数個の転動体は、軸体の長さ方向に沿って互いに間隔をあけて配置された2〜50個(好ましくは3〜30個)の範囲内の数の転動体の組を、軸体の周方向に沿って互いに間隔をあけて2〜10(好ましくは3〜6)組の範囲内の組数にて含んでいることが好ましい。
【0066】
内筒は、外筒の内径よりも小さな外径に、軸体の外径よりも大きな内径に、そして転動体の直径よりも小さな厚みに設定される。
【0067】
内筒には、上記転動体を回転可能に収容保持する複数個の透孔が形成される。転動する転動体同士が接触(衝突)して停止すると、転動体に支持されている軸体の円滑な移動を妨げることがある。従って、上記の各透孔に収容する転動体の数に特に制限はないが、各透孔に収容する転動体の数をなるべく少なくすることが好ましい。各透孔に収容する転動体の数は、1〜5個の範囲内にあることが好ましく、1〜3個の範囲内にあることが更に好ましく、1個であることが特に好ましい。各透孔に収容する転動体の数が1個である場合には、透孔としては円孔、あるいは内筒の長さ方向に延びる長孔を用いることが好ましく、円孔を用いることが特に好ましい。各透孔に収容する転動体の数が複数個である場合には、透孔としては内筒の長さ方向に延びる長孔を用いることが好ましい。
【0068】
内筒は、例えば、金属材料や樹脂材料から形成される。金属材料としては、内筒の各透孔(例えば、図5に示す内筒53の透孔53a)を形成する際の機械加工が容易になることから、真鍮やステンレス鋼を用いることが好ましい。樹脂材料としては、内筒の機械的強度が大きくなることから、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、あるいはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
環状の蓋体の内径は、外筒の開口部からのコイルバネの飛び出しを防止するため、コイルバネの外径よりも小さく、かつ軸体の外径以上の(通常は軸体の外径よりも大きな)内径に設定される。
【0070】
但し、本発明の直動案内装置では、後述のように内筒と一方の蓋体との間にのみコイルバネが設置されることもある。この場合、外筒のコイルバネが設置されていない側の開口部に備えられた環状の蓋体の内径は、外筒の開口部からの内筒の飛び出しを防止するため、内筒の外径よりも小さく、かつ軸体の外径以上の(通常は軸体の外径よりも大きな)内径に設定される。
【0071】
蓋体は、金属材料(代表例、鉄)や樹脂材料から形成される。蓋体の内周面には、ゴム製の被膜が備えられていてもよい。この場合、蓋体の内径を軸体の外径に等しくする(蓋体の内周面のゴム製の被膜を軸体の外周面に接触させる)ことにより、外筒の内部への塵や埃の侵入を抑制することができる。
【0072】
蓋体は、外筒と一体に形成してもよいし、外筒とは別体として形成してもよい。なお、上記のように外筒の開口部からのコイルバネ(あるいは内筒)の飛び出しを防止することができれば、環状の蓋体は、複数個に分割されていてもよいし、周方向の一部分が除去されていてもよい(C字形状に設定されていてもよい)。
【0073】
例えば、図5の直動案内装置50の場合には、周方向の一部分が除去されてC字形状に設定された環状の蓋体(「止め輪」あるいは「スリップリング」と呼ばれることもある)55が用いられていて、そして外筒51の開口部の内周面には、蓋体55の外周側の一部分が収容される周溝51aが形成されている。蓋体55は、その外周縁部の側から力を付与してその外径が小さくなるように弾性変形させた状態にて、外筒51の開口部から内部に挿入される。蓋体55は、外筒51の周溝51aに到達すると元の形状に戻り、その外周側の一部分が周溝51aに収容配置される。なお、蓋体が連続した環状の形状にある場合には、蓋体を外筒の開口部から内部に圧入することにより、その外周側の一部分を外筒の周溝に収容配置することができる。
【0074】
上記のように、本発明の直動案内装置は、内筒と少なくとも一方の蓋体との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネが備えられていて、そして前記のコイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むことに特徴がある。
【0075】
コイルバネは、内筒と一方の蓋体との間にのみ設けることもできるし、内筒と各蓋体との間に設けることもできる。コイルバネとしては、通常、圧縮コイルバネが用いられる。
【0076】
例えば、直動案内装置を軸体が垂直に配置された状態で使用する場合、軸体の昇降を繰り返すと、複数個の転動体を保持する内筒が重力(自重)の影響を受け続けることが原因となり、その後に軸体を初期位置に配置させた際に、内筒が初期位置よりも下方の位置に配置されることが多い。そのような場合、内筒と下側の蓋体の間にのみコイルバネを設けると、使用するコイルバネの個数が一つで済むことから、直動案内装置の構成が簡単になり、また製造コストも低くなる。この場合、内筒と上側の蓋体との間に、上記のような第1のバネ区分と第2のバネ区分とを持たない通常のコイルバネ(以下、単に「通常のコイルバネ」と云う)を設けることもできる。
【0077】
コイルバネは、内筒と各々の蓋体との間に備えられていることが好ましい。これにより、軸体の昇降を繰り返す際に、各々のコイルバネから内筒に、内筒を外筒の上下の中央の位置(初期位置)に向かって押し戻す力が継続して且つバランス良く付与されるため、内筒と軸体との相対的な位置関係に極めて変動を生じ難くなる。
【0078】
コイルバネの一方の端部は蓋体に固定することもできる。同様にコイルバネの他方の端部は内筒に固定することもできる。コイルバネは一体に形成されていてもよいし、各バネ区分毎に別体として形成されていてもよい。後者の場合、隣接するバネ区分を互いに固定することもできる。
【0079】
コイルバネは、線材を右巻きに巻いて形成したものであってもよいし、線材を左巻きに巻いて形成したものであってもよい。上記のようにコイルバネを内筒と各蓋体との間に設ける場合、一方のコイルバネの線材が右巻きに巻かれていて、他方のコイルバネの線材が左巻きに巻かれていてもよい。
【0080】
コイルバネは、通常のコイルバネの場合と同様に、例えば、鋼、黄銅、リン青銅に代表される金属材料から形成することができる。
【0081】
なお、直動案内装置の軸棒は、上下の(長さ方向の)何れにも移動される可能性がある。従って、内筒の初期位置は、通常、外筒の長さ方向の中央の位置に設定される(軸体の初期位置は、内筒が初期位置に配置されたときの軸体の位置を意味する)。勿論、内筒の初期位置を外筒の長さ方向の中央の位置とは異なる位置に設定することもできる。
【0082】
コイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むか否かは、最も簡便には、コイルバネに付与する荷重を次第に増加させた際に、コイルバネの長さ方向の一部分において互い隣接する線材に接触を生じ、かつ残りの部分の互いに隣接する線材に接触を生じていない状態が発生するか否かにより確認することができる。すなわち、コイルバネに付与する荷重を次第に増加させた際に、コイルバネに前記の状態が発生するのであれば、そのコイルバネは、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むと云える。
【0083】
なお、コイルバネの第1のバネ区分と第2のバネ区分とを特定する必要がある場合(例えば、後述のように、第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさと、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさとを比較する必要がある場合)には、例えば、次のようにして各区分を定めることができる。
【0084】
先ず、コイルバネを、線材が2周回する毎に(2巻きの線材毎に)区分する。そしてコイルバネを各区分毎に分割して微小なバネ片を作製する。次に、各バネ片に荷重を付与し、そして前記荷重を次第に増加させ、互いに隣接する線材に接触を生じる荷重を求める。上記のバネ片のうち、最も小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるバネ片からなる区分を第1のバネ区分と定め、そして最も大さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるバネ片からなる区分を第2のバネ区分と定める。
【0085】
最も小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのバネ片からなる区分を第1のバネ区分と定めてもよい。同様に、最も大さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じるバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのバネ片からなる区分を第2のバネ区分と定めてもよい。
【0086】
なお、第1のバネ区分と第2のバネ区分は、上記のような荷重の大小関係(荷重の大きさの相対的な関係)により定めるため、各バネ片について互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の測定方法が統一されていれば、上記とは別の測定方法を採用することもできる。
【0087】
また、上記のコイルバネの各区分を構成するバネ片の形状や線材の材料が明確であれば、各バネ片について互いに隣接する線材に接触を生じる荷重を計算により求めることもできる。従って、計算で得られた荷重の大小関係に基づき、第1のバネ区分と第2のバネ区分とを定めることもできる。この方法は、コイルバネを切断する必要がないとの利点を有している。
【0088】
なお、下記(A)〜(D)に記載のように、コイルバネが特定の構成を有する場合には、それぞれに適した簡便な方法により、第1のバネ区分と第2のバネ区分とを定めることができる。
【0089】
(A)コイルバネの線材の断面積が、コイルバネの一方の端部から他方の端部にかけて連続的に減少している場合(例えば、図5に示すコイルバネ61、あるいは図8に示すコイルバネ81の場合):第1のバネ区分は、上記コイルバネを三等分に区分した上記他方の端部の側の区分と定め、そして第2のバネ区分は、上記コイルバネを三等分に区分した上記一方の端部の側の区分と定める。
【0090】
(B)コイルバネの互いに隣接する線材の間隔が、コイルバネの一方の端部から他方の端部にかけて連続的に増加している場合(例えば、図9に示すコイルバネ91の場合):第1のバネ区分は、上記コイルバネを三等分に区分した上記一方の端部の側の区分と定め、そして第2のバネ区分は、上記コイルバネを三等分に区分した上記他方の端部の側の区分と定める。
【0091】
なお、上記(A)(B)に記載した構成のコイルバネを用いる場合、各区分の互いに隣接する線材に接触を生じることは、同区分に含まれる互いに隣接する線材の組の全組について同時に線材の接触を生じることを意味するのではなく、少なくとも一組の互いに隣接する線材に接触を生じることを意味している。
【0092】
(C)コイルバネが、それぞれ線材の断面積が均一で且つ前記断面積が互いに異なる二以上のコイルバネ片を一列に並べて配置した構成にある場合(例えば、図10に示すコイルバネ101、図12に示すコイルバネ121、あるいは図13に示すコイルバネ131の場合):第1のバネ区分は、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片からなる区分と定め、そして第2のバネ区分は、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片からなる区分と定める。
【0093】
なお、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片からなる区分を第1のバネ区分と定めてもよい。同様に、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片からなる区分を第2のバネ区分と定めてもよい。
【0094】
(D)コイルバネが、それぞれ互いに隣接する線材の間隔が均一で且つ前記間隔が互いに異なる二以上のコイルバネ片を一列に並べて配置した構成にある場合(例えば、図11に示すコイルバネ111の場合):第1のバネ区分は、線材の間隔が最も小さなコイルバネ片からなる区分と定め、そして第2のバネ区分は、線材の間隔が最も大きなコイルバネ片からなる区分と定める。
【0095】
なお、線材の間隔が最も小さなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片からなる区分を第1のバネ区分と定めてもよい。同様に、線材の間隔が最も大きなコイルバネ片が二以上ある場合には、そのうちの何れのコイルバネ片からなる区分を第2のバネ区分と定めてもよい。
【0096】
第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさは、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさの20〜80%の範囲内にあることが好ましい。
【0097】
第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさが、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさの20%以上の値に設定されていると、軸体を相対的に小さな力で移動することのできる距離を十分に長くすることができる。その一方で、第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさが、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさの80%以下の値に設定されていると、第1のバネ区分の線材に接触を生じたのちにも、第2のバネ区分が十分に縮小しながら内筒を支持することが可能になるため、内筒及び内筒に保持されている転動体が停止し難くなる。
【0098】
第2のバネ区分のバネ定数の値は、コイルバネのバネ定数の1.2〜10倍の範囲にあることが好ましく、1.5〜5倍の範囲内にあることが更に好ましい。このような条件を満足すると、第1のバネ区分の線材に接触を生じたのち、コイルバネが十分に大きなバネ定数を示すようになる。従って、コイルバネがその大きな反発力により内筒を初期位置の側に向かって強く押し戻すため、内筒と蓋体との接触の発生をより確実に防止することができる。
【0099】
第1のバネ区分のバネ定数の値は、第2のバネ区分のバネ定数の値よりも小さいことが好ましい。
【0100】
例えば、コイルバネ(バネ定数:k)が、第1のバネ区分(バネ定数:k1)と第2のバネ区分(バネ定数:k2)とから構成されている場合、各々のバネ定数は下記の式(1)の関係を満足する。従って、コイルバネのバネ定数の値は、何れのバネ区分のバネ定数の値よりも小さくなる(コイルバネが更に別のバネ区分を含む場合も同様である)。
式(1) 1/k=1/k1+1/k2
【0101】
但し、上記のように第1のバネ区分のバネ定数の値が第2のバネ区分のバネ定数の値よりも小さくされている、すなわちk1<k2の関係を満足すると、k1>k2の関係を満足する場合と比較して、第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じたのちに、コイルバネが大きなバネ定数の値を示すようになる。従って、コイルバネの大きな反発力により内筒を初期位置の側に向かって強く押し戻すことができる。
【0102】
第1のバネ区分のバネ定数の値は、第2のバネ区分のバネ定数の値の20〜80%の範囲内にあることが更に好ましい。
【0103】
例えば、図10の直動案内装置100の場合、コイルバネ101から第1のバネ区分101a及び第2のバネ区分101bをそれぞれ取り出せば、各バネ区分のバネ定数は、通常のコイルバネの場合と同様に、下記の式(2)の関係を満足する。
【0104】
式(2) k0=(G×d4)/(8×Na×D3
[式(2)中、k0はバネ定数(N/mm)であり、Gは横弾性係数(kgf/mm2)であり(線材の材料の種類により決まる定数であり)、dは線材の直径(mm)であり、Naはコイルバネの有効巻数であり、そしてDはコイルの平均径(mm)である。]
【0105】
従って、コイルバネの各バネ区分のバネ定数の大きさは、上記の横弾性係数G、線材の直径d、コイルバネの有効巻数Na、コイルの平均径Dの設定により容易に調節することができる。
【0106】
各バネ区分のバネ定数の大きさは、日本工業規格(JIS B 2704)に規定されている試験方法に従って確認することができる。
【0107】
但し、各バネ区分が上記のバネ定数の大小関係(バネ定数の大きさの相対的な関係)を満足しているか否かを確認する際には、各バネ区分のバネ定数の試験方法が統一されていれば、上記とは別の試験方法を採用することもできる。
【0108】
また、各バネ区分の横弾性係数G、線材の直径d、コイルバネの有効巻数Na、そしてコイルの平均径Dが明確であれば、上記の式(2)を用いて各バネ区分のバネ定数の値を計算により求めることもできる。従って、計算で得られたバネ定数に基づき、各バネ区分が上記のバネ定数の大小関係を満足しているか否かを確認することもできる。この方法は、コイルバネを切断する必要がないとの利点を有している。
【符号の説明】
【0109】
10 直動案内装置
11 外筒
12 転動体
13 内筒
14 軸体
15 蓋体
40 直動案内装置
41 コイルバネ
50 直動案内装置
51 外筒
51a 周溝
52 転動体
53 内筒
53a 透孔
54 軸体
55 蓋体
61 コイルバネ
61a 第1のバネ区分
61b 第2のバネ区分
71a、71b コイルバネ片
80、90 直動案内装置
81、91 コイルバネ
81a、91a 第1のバネ区分
81b、91b 第2のバネ区分
100、110 直動案内装置
101、111 コイルバネ
101a、111a 第1のバネ区分
101b、111b 第2のバネ区分
102a、102b コイルバネ片
112a、112b コイルバネ片
120、130 直動案内装置
121、131 コイルバネ
121a、131a 第1のバネ区分
121b、131b 第2のバネ区分
132a、132b、132c コイルバネ片
140 直動案内装置
141 外筒
141a 直線溝
142 転動体
144 軸体
144a 直線溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部を持つ外筒、外筒の内周面に沿って配設された複数個の転動体、外筒の内側に長さ方向に移動可能に配置されている、上記複数個の転動体を外周側と内周側とに突き出た状態で回転可能に保持している内筒、内筒に挿入された上記複数個の転動体に外周面が支持されている軸体、および外筒の各開口部に備えられている環状の蓋体を含む直動案内装置であって、
上記内筒と少なくとも一方の蓋体との間に、線材を螺旋状に巻いて形成したコイルバネが備えられていて、そして該コイルバネが、相対的に小さな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第1のバネ区分と、相対的に大きな荷重の付与により互いに隣接する線材に接触を生じる第2のバネ区分とを含むことを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
コイルバネの線材の断面積が、コイルバネの一方の端部から他方の端部にかけて連続的に減少していて、第1のバネ区分が、該コイルバネを三等分に区分した上記他方の端部の側の区分であり、そして第2のバネ区分が、該コイルバネを三等分に区分した上記一方の端部の側の区分である請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
コイルバネの互いに隣接する線材の間隔が、コイルバネの一方の端部から他方の端部にかけて連続的に増加していて、第1のバネ区分が、該コイルバネを三等分に区分した上記一方の端部の側の区分であり、そして第2のバネ区分が、該コイルバネを三等分に区分した上記他方の端部の側の区分である請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項4】
第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさが、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさの20〜80%の範囲内にある請求項2もしくは3に記載の直動案内装置。
【請求項5】
第2のバネ区分のバネ定数の値が、コイルバネのバネ定数の1.5〜5倍の範囲内にある請求項2乃至4のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項6】
第1のバネ区分のバネ定数の値が、第2のバネ区分のバネ定数の値よりも小さい請求項2乃至5のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項7】
コイルバネが、それぞれ線材の断面積が均一で且つ該断面積が互いに異なる二以上のコイルバネ片を一列に並べて配置した構成にあり、第1のバネ区分が、線材の断面積が最も小さなコイルバネ片からなり、そして第2のバネ区分が、線材の断面積が最も大きなコイルバネ片からなる請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項8】
コイルバネが、それぞれ互いに隣接する線材の間隔が均一で且つ該間隔が互いに異なる二以上のコイルバネ片を一列に並べて配置した構成にあり、第1のバネ区分が、線材の間隔が最も小さなコイルバネ片からなり、そして第2のバネ区分が、線材の間隔が最も大きなコイルバネ片からなる請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項9】
第1のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさが、第2のバネ区分の互いに隣接する線材に接触を生じる荷重の大きさの20〜80%の範囲内にある請求項7もしくは8に記載の直動案内装置。
【請求項10】
第2のバネ区分のバネ定数の値が、コイルバネのバネ定数の1.5〜5倍の範囲内にある請求項7乃至9のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項11】
第1のバネ区分のバネ定数の値が、第2のバネ区分のバネ定数の値よりも小さい請求項7乃至10のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項12】
コイルバネが、内筒と各々の蓋体との間に備えられている請求項1乃至11のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項13】
外筒の内周面に内筒の外周側に突き出た転動体を収容する複数本の直線溝が形成されている請求項1乃至12のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。
【請求項14】
軸体の外周面に内筒の内周側に突き出た転動体を収容する複数本の直線溝が形成されている請求項1乃至13のうちのいずれかの項に記載の直動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−72512(P2013−72512A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212798(P2011−212798)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(394000493)ヒーハイスト精工株式会社 (76)
【Fターム(参考)】