直動転がり案内ユニット
【課題】 部品点数を少なくするとともに、通路過程に段差やすき間等ができないようにする。
【解決手段】 スライダSには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔31,32を形成し、このガイド孔31,32にころ37が転動するガイド筒34を挿入する。そして、エンドキャップe1,e2には、深さを異にした一対の通路溝42,43をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒34の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠36を一体に設け、この仕切り枠36を、通路溝のクロス部44に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした。
【解決手段】 スライダSには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔31,32を形成し、このガイド孔31,32にころ37が転動するガイド筒34を挿入する。そして、エンドキャップe1,e2には、深さを異にした一対の通路溝42,43をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒34の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠36を一体に設け、この仕切り枠36を、通路溝のクロス部44に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道面を有するレールに形成した4条の軌道面にころを転動させて案内にする直動転がり案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直動転がり案内ユニットとして図13〜図19に示すものが従来から知られている。この従来のユニットは、レールRの両側面に、一対の軌道面すなわち下軌道面1a,2aと上軌道面1b,2bとを形成している。そして、これら軌道面1aと1b、2aと2bとのそれぞれは、互いにほぼ90度の角度を保つようにしている。このようにした下軌道面1aと上軌道面1bとの間、および下軌道面2aと上軌道面2bとの間には、凹部3,4を形成している。
【0003】
上記のようにした軌道面を有するレールRには、スライダSを走行させるが、このスライダSは、ケーシングcの前後にエンドキャップ5,6を一体的に設けてなり、これらケーシングcおよびエンドキャップ5,6は、上記軌道面を有するレールRをまたいで、それに沿って移動するようにしている。このようにしたスライダSは、軌道面を有するレールRの軸線を基準に左右対称に形成している。そこで、以後は、左右対称で同一形状の構成要素は、同一符号をもって説明する。
【0004】
上記ケーシングcであって、軌道面を有するレールRの軌道面1a,1bおよび2a,2bに対向する位置に、一対のガイド孔7,8を形成しているが、これらガイド孔7,8は、ケーシングcを軸線方向に貫通するとともに、上下において互いに平行に形成している。このようにしたガイド孔7,8のそれぞれには、図14に示すガイド筒9,10を挿入するものである。
【0005】
上記ガイド筒9,10のそれぞれは、2つ割にした半円筒部材を突き合わせて一つのガイド筒にしたもので、このガイド筒9,10にはころ11,12が、軌道面1a,1bおよび2a,2bと平行になるようにして転動するものである。そして、図13からも明らかなように、上側のガイド孔7のガイド筒9を転動するころ11は、下側の軌道面1a,2aに接触する方向に案内され、下側のガイド孔8のガイド筒10を転動するころ12は、上側の軌道面1b,2bに接触する方向に案内される。このようにころ11,12は、転動する過程で上下に方向転換するが、その方向転換するところがエンドキャップ5,6内である。
【0006】
すなわち、上記エンドキャップ5,6には、図15に示すように、クロスする一対の通路溝13,14を形成している。そして、一方の通路溝13は、図16に示すように他方の通路溝14よりもその深さを深くしている。したがって、他方の通路溝14は、一方の通路溝13にその連続性を断たれることになる。そこで、上記連続性を断たれた箇所には、図16で示すブリッジ部材15を掛け渡している。このブリッジ部材15は、端面形状をU字状にしたもので、その底部15aは、図16からも明らかなように、通路溝14の溝部14a,14bに連続する円弧状にしている。このようにしたU字状のブリッジ部材15は、上記一方の通路溝13と平行に設けたブリッジ用段部16に掛け止めるもので、その掛け止め状態が図17である。
【0007】
図17は、一方のエンドキャップ5を示したもので、上記のようにブリッジ部材15を組み付けることによって、溝部14a,底面15aおよび溝部14bが一連になって通路溝14が形成される構成にしている。また、ブリッジ部材15を、図17に示すように組み付けることによって、通路溝13と14とが、このブリッジ部材15を介して区画されるとともに、このブリッジ部材15の部分で、通路溝13,14がクロスすることになる。なお、図17中、符号17はふた部材で、このふた部材17は、上記通路溝14に直交する方向に組み付けられるとともに、その端部を図16に示す掛け止め段部18に掛け止める構成にしている。
【0008】
そして、上記通路溝13,14の一方端、言い換えると前記軌道面を有するレールRよりも離れた側に位置する一方端には、図15に示すように、一対の凸部19,19および20,20を設けるとともに、これら一対の凸部間にはめ込み凹部21,22を形成している。また、上記凸部19,20よりも一段高くした一対の凸部23,23および24,24を設けるとともに、これら凸部19,20と23,24との外周が相まって、前記ガイド筒9,10の外周と一致する円弧を形成する関係にしている。
【0009】
一方、前記したガイド筒9,10は、図14からも明らかなように、その端部に突出部9a,10aが形成されているが、この突出部9a,10aが上記はめ込み凹部21,22にぴったりとはめ込まれるようにしている。このように突出部9a,10aがはめ込み凹部21,22にぴったりとはめ込まれることによって、2つ割にしたガイド筒9,10が一体に保たれるようになる。そして、突出部9a,10aをはめ込み凹部21,22にはめたガイド筒9,10の端部は、上記凸部19,20および23,24に当接して、ガイド筒9,10と通路溝13,14との連続性を保つようにしている。
【0010】
したがって、ガイド筒9,10を通って通路溝13,14に導かれたころ11,12は、通路溝13,14の他方の端部である出入部25,26を経由して、軌道面を有するレールRの下軌道面1aおよび上軌道面1b側に導かれる。あるいは、下軌道面1aおよび上軌道面1bを経由してエンドキャップ5,6に到達したころ11,12は、この出入部25,26から通路溝13,14内に導かれることになる。なお、図19はスライダSを、軌道面を有するレールRにまたがせた状態の断面図であるが、図中符号29は、上記のように出入部25,26から導出されたころ11,12がスライダSから脱落しないようにするための保持板である。
【0011】
また、図14において符号27は、スライダSの下面をシールする下面シール部材で、スライダの下面からのダストなどの侵入を防止するためのものである。符号28は、エンドキャップ5,6の外側に設けたエンドシール部材で、スライダの移動方向からのダストなどの侵入を防止するためのものである。
【0012】
今、スライダSを、軌道面を有するレールRに沿って移動すると、スライダS内に組み込んだころ11,12が軌道面1a,1bおよび2a,2bを転動し、スライダSのスムーズな動きを確保する。そして、このときのころ11,12の転動軌跡は次の通りである。
【0013】
なお、スライダSの移動方向に応じて、例えば、図15の出入部25,26からころ11,12が通路溝13,14に導入されたり、あるいは、出入部25,26から軌道面1a,1bに導出されたりする。そこで、先ず、上記出入部25,26からころ11,12が導入される場合について説明する。
【0014】
スライダSが移動してその移動方向後方側のエンドキャップ5あるいは6の出入部25からころ11が導入され、出入部26からころ12が導入されたとすると、出入部25に導かれたころ11は、通路溝13に案内されて、上記出入部25とは反対側における通路溝13の端部に接続したガイド筒9に導かれる。一方、出入部26に導かれたころ12は、通路溝14に案内され、出入部26とは反対側における通路溝14の端部に接続したガイド筒10に導かれる。このとき、図17からも明らかなように、ころ11群の転動列と、ころ12群の転動列とが、ブリッジ部材15を境にしてクロスすることになる。そして、これら両転動列が互いにクロスした状況を示したのが、図14の符号11,12で示したころであり、その転動列である。
【0015】
上記のようにエンドキャップ5あるいは6内でクロスしたころ11,12は、上記したように通路溝13,14からガイド筒9,10を経由して、移動方向前方のエンドキャップ6あるいは5に導かれ、この移動方向前方のエンドキャップ6あるいは5の出入部25,26とは反対側端から通路溝13,14に導かれる。そして、この通路溝13,14を経由する過程で、両ころ11,12の転動列が互いにクロスすることになる。
【特許文献1】特開2002−54633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のようにした従来の直動転がり案内ユニットでは、両エンドキャップ5,6内に組み込む部品点数が多い上に、それら組み込み部品とガイド筒9,10とが別部品になっているので、全体の組み付け作業の効率が極端に悪くなるという問題があった。また、当然のことであるが、部品点数が多くなるので、それら部品の製造コストも上昇するという問題もあった。
【0017】
さらに、上記のようにエンドキャップに組み込む部品点数が多くなると、それら部品の寸法公差などが影響して、部品と部品との連接部分に、どうしても段差やすき間ができやすくなる。そして、段差やすき間ができてしまうと、その部分で、ころ11,12が傾いたり、引っかかったり、あるいはガイド筒9,10が摩耗したりし、ころ11,2のスムーズな循環に支障を来すことになる。そのために、軌道面を有するレールRをスライダSが走行するとき、そのレールRに対するスライダSの摩擦抵抗がばらついてしまうと言う問題があった。
【0018】
この発明の目的は、部品点数を少なくして、部品間の連接部を減らして、上記従来の問題を解消した直動転がり案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、軌道面を有するレールが、片側にそれぞれ2条ずつの軌道面を備え、4条のエンドレスな転動列を構成する複数のころを組み込んだスライダは、この軌道面を有するレールをまたいだ状態で移動するとともに、エンドレスな転動列の一方の側における転動列をガイドする往動ガイド通路と、他方の側における転動列をガイドする復動ガイド通路とを一組にして、軌道面を有するレールの両側に二組ずつ設け、上記往動ガイド通路は各軌道面に対向し、復動ガイド通路はスライダ内を通過する構成にするとともに、これら往動ガイド通路と復動ガイド通路とは、スライダに設けたエンドキャップ内でクロスする構成にした直動転がり案内ユニットを前提にする。
【0020】
上記の直動転がり案内ユニットを前提にしつつ、第1の発明は、スライダには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔を形成し、このガイド孔にころが転動するガイド筒を挿入する構成にし、かつ、上記エンドキャップには、深さを異にした一対の通路溝をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠を一体に設け、この仕切り枠を、通路溝のクロス部に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした点に特徴を有する。また、この発明におけるころには、円筒ころ、棒状ころあるいは針状ころなどが含まれる。
【0021】
第2の発明は、上記仕切り枠が、当該ガイド筒を通過したころがそのまま転動可能な通路孔を形成するとともに、仕切り枠の外側を、他のガイド筒を転動してきたころのガイド面として機能する構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0022】
第1,2の発明によれば、復動ガイド通路を構成するための部品は、エンドキャップ以外に、仕切り枠と一体にしたガイド筒だけで足りるので、言い換えると、エンドキャップに組み込む部品点数は、一つで足りるので、従来のものに比べて製造コストを大幅に削減できる。また、部品点数が少ない分、組み付け時の作業工数も少なくなる。したがって、組み付け作業を単純化でき、その分、コスト削減に役立つことになる。
【0023】
さらに、上記したようにエンドキャップに組み込む部品点数が少ないので、部品同士が連接する箇所も少なくなる。したがって、各部品の寸法公差等が原因で発生していた上記連接部分の段差やすき間も少なくなる。このように段差やすき間が無くなれば、ころが傾いたり、引っかかったり、あるいはガイド筒9,10が摩耗したりする不都合もなくなる。このように不都合が無くなるので、軌道面を有するレールRをスライダSが走行するとき、そのレールRに対するスライダSの摩擦抵抗が安定することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1〜図12は、この発明の実施形態を示したもので、スライダSは、ケーシングcと一対のエンドキャップe1,e2を主要素にしているもので、このスライダSが従来と同じ軌道面を有するレールRを移動するものである。そして、上記ケーシングcは、従来とほとんど同じ構成であり、その両側に一対のガイド孔31,32を形成したものである。なお、図中符号33はスライダSの下からのダスト等の侵入を防止するための下面シールである。
【0025】
そして、この実施形態の最大の特徴は、上記ガイド孔31,32に組み込むガイド筒34の構成である。なお、このガイド筒34は4本用いるが、これら4本のガイド筒の形状はすべて同じなので、4本とも同じ符号を用いて説明する。このガイド筒34は、図3〜図6からも明らかなように、ガイド孔31,32に挿入する筒部35と、この筒部35と一体形成した仕切り枠36とからなる。
【0026】
上記筒部35は、その中にころ37が転動する孔を形成しているが、この孔内を転動するころ37が、図11からも明らかなように、ころ37の軸線を筒部35の軸線に直交させる状態を保って転動できるようにしている。そして、この筒部35には、その軸方向に2本のスリット38a,38aを形成して、それらスリット38a,38a間をバネ板部38としている。このバネ板部38は、例えば、転動中のころ37の間隔が詰まって、ころ37の整列が乱れたとき、弾力的に退避しながら、整列の乱れを補正するためのものである。
【0027】
また、上記筒部35の一端には、仕切り枠36を一体に設けているが、この仕切り枠36は、図3〜図6からも明らかなように、筒部35の軸線と90度方向を転換した通路孔36aを形成するとともに、この通路孔36aの周囲を囲い壁部36bとしている。このようにした囲い壁部36bには、図6および図9からも明らかなように、その上側すなわち筒部35の延長上に一対の差込片39を一体に形成するとともに、この差込片39とは反対側である仕切り枠36の下側には内側を弧状にしたガイド片40を一体に形成している。さらに、上記ガイド筒34の他端には、図6からも明らかなように段部49を形成している。
【0028】
一方、ケーシングの両端に設けた前記エンドキャップe1,e2は、それら両者の構造が同一なので、以下には、各構成要素に同一符号を付して説明する。これらエンドキャップe1,e2には、図2からも明らかなように、一対の通路溝42,43を形成している。この通路溝42,43は互いにクロスするとともに、一方の通路溝42に対して、他方の通路溝43の溝深さを深くしている。したがって、一方の通路溝42は、他方の通路溝43によって、その連続性が断たれる。
【0029】
また、一方の通路溝42は、その一端を出入部42aとし、他端を接続部42bとしている。そして、この接続部42bは、図7に示すように、その底面42cを円弧状にしている。しかも、この接続部42bの両側には、図10に示すように、差込溝42dを形成しているが、この差込溝42dには、ガイド筒34に形成した差込片39を差し込むようにしている。このように差込片39を上記差込溝42dに差し込むことによって、ガイド筒34の仕切り枠36が、上記両通路溝42,43のクロス部44に位置する関係にしている。
【0030】
上記のように仕切り枠36がクロス部44に位置した状態は、図7に示すとおりである。すなわち、仕切り枠36がクロス部44に位置することによって、分断されていた通路溝42が、仕切り枠36の通路孔36aを介して連続するとともに、この通路溝42によって形成される通路と、通路溝43によって形成される通路とが、上記仕切り枠36の囲い壁部36bによって区画されることになる。なお、このときの囲い壁部36bの外周面は、通路溝43と相まってころ37を案内するもので、この発明のガイド面を構成するものである。
【0031】
なお、上記のようにガイド筒34の仕切り枠36をエンドキャップe1,e2にはめ込むことによって、通路溝42が連続するが、その接続部42b側が筒部35に連続するとともに、出入部42aが上記ガイド片40と相まって、導出入部45を形成する関係にしている。また、図12に示すように、エンドキャップe1,e2には、それと一体に形成した案内片46を設けているが、この案内片46によって形成される通路47が、軌道面を有するレールRの軌道面に連続する構成にしている。
【0032】
さらに、他方の通路溝43は、その一端を出入部43aとし、他端を接続部43bとしている。そして、この接続部43bには、図2および図8に示すように、段部50を形成している。しかも、この接続部43bの底面43cは、筒部35に連続する構成にしている。また、上記出入部43aは、図12のように案内片46によって構成される通路48に連続するが、この通路48も軌道面を有するレールRの軌道面に連続する構成にしている。
【0033】
一方、ガイド筒34の他端には段部49を形成しているが、この段部49は、図2および図8に示すエンドキャップe1,e2の段部50に当接して、図8に示すように、ガイド筒34の筒部35と通路溝43とを連続させるものである。
【0034】
次に、図1を基にして各部材の組み付け状況を説明する。まず、エンドキャップe1,e2のクロス部44に、ガイド筒34の仕切り枠36をはめる。このようにクロス部44に仕切り枠36をはめたガイド筒34を、ケーシングcのガイド孔31,32に挿入する。そして、上記ガイド筒34は、ガイド孔31,32に挿入することによって、上記仕切り枠36とは反対端にある上記段部49がケーシングcから突出する寸法関係を維持している。したがって、この突出した段部49を、エンドキャップe1,e2の段部50に当接させれば、このガイド筒34が通路溝43側に連通することになる。
【0035】
そして、上記ガイド孔31,32に挿入したガイド筒34がこの発明の復動ガイド通路を構成する。また、導出入部45に連続する、軌道面1a,1bおよび2a,2bとの対向間隔が往動ガイド通路を構成することになる。
【0036】
上記のようにした各往動ガイド通路および復動ガイド通路のそれぞれに多数のころ37を装填すると、ガイド孔31に設けたガイド筒34を転動するころ37の転動列と、ガイド孔32に設けたガイド筒34を転動するころ37の転動列とが構成されるとともに、それらころ37の転動列は、上記エンドキャップe1,e2のクロス部44でクロスして循環することになる。
【0037】
これをさらに詳しく説明すると、例えば、往動ガイド通路から一方のエンドキャップe1の導出入部45(図7参照)に入ってきたころ37は、仕切り枠36の通路孔36aを通りながら一方の通路溝42を通過し、この通路溝42の接続部42bから上記筒部35の一端に導かれる。このようにして筒部35の一端に導かれたころ37は、筒部35の他端に達し、この筒部35の他端から他方のエンドキャップe2における他方の通路溝43の接続部43bに導かれ、復動ガイド通路を通過する。このようにして他方のエンドキャップe2の接続部43bに導かれたころ37は、他方のエンドキャップe2における通路溝43を通って、その導出入部45に至り、そこから通路48を経由して軌道面1a,1bあるいは2a,2b側に導かれ、往動ガイド通路を通過することになる。
【0038】
そして、往動ガイド通路を通過したころ37は、一方のエンドキャップe1側の通路47を経由して、その一方のエンドキャップe1の出入部42aに到達し、再び、上記したと同じルートを経由することになる。いずれにしても、両エンドキャップe1,e2間を転動するころ37は、その転動列をエンドレスの状態を保ちながら、往動ガイド通路および復動ガイド通路を転動するものである。
なお、スライダSの移動方向に応じて、ころ37は反対方向に転動するが、その移動ルートは、上記した場合と同じであり、その転動方向だけが相違するものである。
【0039】
上記のようにした実施形態によれば、ガイド筒34は、仕切り枠36と一体に形成しているので、エンドキャップe1,e2に組み付けるべき部品は、ガイド筒34だけになる。したがって、その部品点数が極端に少なくなり、それだけ組み付け工数も少なくなる。このように組み付け工数が少なくなれば、当然のこととして、全体的にもコストダウンを図ることができるものである。
【0040】
また、上記のように部品点数が少ないので、その分、部品同士の連接部も少なくなる。したがって、従来のように部品の寸法公差等に基因した連接部の段差やすき間も無くなり、ころ37の傾きや引っかかりも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スライダの分解斜視図である。
【図2】エンドキャップをケーシング側から見た図である。
【図3】ガイド筒の平面図である。
【図4】ガイド筒の側面図である。
【図5】ガイド筒の底面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線断面図である。
【図7】ガイド筒の仕切り枠をエンドキャップに組み付けた状態の断面図である。
【図8】ガイド筒の段部をエンドキャップに組み付けた状態の断面図である。
【図9】ガイド筒の仕切り枠部分を示す部分斜視図である。
【図10】エンドキャップにおける通路溝の接続部を示す一部を断面にした部分斜視図である。
【図11】ころの転動列がクロスする状態を示した斜視図である。
【図12】エンドキャップにガイド筒を組み付けた状態の部分斜視図である。
【図13】従来の直動転がり案内ユニットを示す、一部を断面にした斜視図である。
【図14】従来の案内ユニットの分解斜視図である。
【図15】従来のエンドキャップをケーシング側から見た図である。
【図16】従来のエンドキャップの一部を断面にした部分斜視図である。
【図17】従来のエンドキャップにふた部材を組み付けた図15のXVII−XVII線断面図である。
【図18】従来のエンドキャップに組み込むブリッジ部材の斜視図である。
【図19】従来のスライダを、軌道面を有するレールにまたがせた状態の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
e1,e2 エンドキャップ
31,32 ガイド孔
34 ガイド筒
36 仕切り枠
36a 通路孔
37 ころ
42,43 通路溝
44 クロス部
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道面を有するレールに形成した4条の軌道面にころを転動させて案内にする直動転がり案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直動転がり案内ユニットとして図13〜図19に示すものが従来から知られている。この従来のユニットは、レールRの両側面に、一対の軌道面すなわち下軌道面1a,2aと上軌道面1b,2bとを形成している。そして、これら軌道面1aと1b、2aと2bとのそれぞれは、互いにほぼ90度の角度を保つようにしている。このようにした下軌道面1aと上軌道面1bとの間、および下軌道面2aと上軌道面2bとの間には、凹部3,4を形成している。
【0003】
上記のようにした軌道面を有するレールRには、スライダSを走行させるが、このスライダSは、ケーシングcの前後にエンドキャップ5,6を一体的に設けてなり、これらケーシングcおよびエンドキャップ5,6は、上記軌道面を有するレールRをまたいで、それに沿って移動するようにしている。このようにしたスライダSは、軌道面を有するレールRの軸線を基準に左右対称に形成している。そこで、以後は、左右対称で同一形状の構成要素は、同一符号をもって説明する。
【0004】
上記ケーシングcであって、軌道面を有するレールRの軌道面1a,1bおよび2a,2bに対向する位置に、一対のガイド孔7,8を形成しているが、これらガイド孔7,8は、ケーシングcを軸線方向に貫通するとともに、上下において互いに平行に形成している。このようにしたガイド孔7,8のそれぞれには、図14に示すガイド筒9,10を挿入するものである。
【0005】
上記ガイド筒9,10のそれぞれは、2つ割にした半円筒部材を突き合わせて一つのガイド筒にしたもので、このガイド筒9,10にはころ11,12が、軌道面1a,1bおよび2a,2bと平行になるようにして転動するものである。そして、図13からも明らかなように、上側のガイド孔7のガイド筒9を転動するころ11は、下側の軌道面1a,2aに接触する方向に案内され、下側のガイド孔8のガイド筒10を転動するころ12は、上側の軌道面1b,2bに接触する方向に案内される。このようにころ11,12は、転動する過程で上下に方向転換するが、その方向転換するところがエンドキャップ5,6内である。
【0006】
すなわち、上記エンドキャップ5,6には、図15に示すように、クロスする一対の通路溝13,14を形成している。そして、一方の通路溝13は、図16に示すように他方の通路溝14よりもその深さを深くしている。したがって、他方の通路溝14は、一方の通路溝13にその連続性を断たれることになる。そこで、上記連続性を断たれた箇所には、図16で示すブリッジ部材15を掛け渡している。このブリッジ部材15は、端面形状をU字状にしたもので、その底部15aは、図16からも明らかなように、通路溝14の溝部14a,14bに連続する円弧状にしている。このようにしたU字状のブリッジ部材15は、上記一方の通路溝13と平行に設けたブリッジ用段部16に掛け止めるもので、その掛け止め状態が図17である。
【0007】
図17は、一方のエンドキャップ5を示したもので、上記のようにブリッジ部材15を組み付けることによって、溝部14a,底面15aおよび溝部14bが一連になって通路溝14が形成される構成にしている。また、ブリッジ部材15を、図17に示すように組み付けることによって、通路溝13と14とが、このブリッジ部材15を介して区画されるとともに、このブリッジ部材15の部分で、通路溝13,14がクロスすることになる。なお、図17中、符号17はふた部材で、このふた部材17は、上記通路溝14に直交する方向に組み付けられるとともに、その端部を図16に示す掛け止め段部18に掛け止める構成にしている。
【0008】
そして、上記通路溝13,14の一方端、言い換えると前記軌道面を有するレールRよりも離れた側に位置する一方端には、図15に示すように、一対の凸部19,19および20,20を設けるとともに、これら一対の凸部間にはめ込み凹部21,22を形成している。また、上記凸部19,20よりも一段高くした一対の凸部23,23および24,24を設けるとともに、これら凸部19,20と23,24との外周が相まって、前記ガイド筒9,10の外周と一致する円弧を形成する関係にしている。
【0009】
一方、前記したガイド筒9,10は、図14からも明らかなように、その端部に突出部9a,10aが形成されているが、この突出部9a,10aが上記はめ込み凹部21,22にぴったりとはめ込まれるようにしている。このように突出部9a,10aがはめ込み凹部21,22にぴったりとはめ込まれることによって、2つ割にしたガイド筒9,10が一体に保たれるようになる。そして、突出部9a,10aをはめ込み凹部21,22にはめたガイド筒9,10の端部は、上記凸部19,20および23,24に当接して、ガイド筒9,10と通路溝13,14との連続性を保つようにしている。
【0010】
したがって、ガイド筒9,10を通って通路溝13,14に導かれたころ11,12は、通路溝13,14の他方の端部である出入部25,26を経由して、軌道面を有するレールRの下軌道面1aおよび上軌道面1b側に導かれる。あるいは、下軌道面1aおよび上軌道面1bを経由してエンドキャップ5,6に到達したころ11,12は、この出入部25,26から通路溝13,14内に導かれることになる。なお、図19はスライダSを、軌道面を有するレールRにまたがせた状態の断面図であるが、図中符号29は、上記のように出入部25,26から導出されたころ11,12がスライダSから脱落しないようにするための保持板である。
【0011】
また、図14において符号27は、スライダSの下面をシールする下面シール部材で、スライダの下面からのダストなどの侵入を防止するためのものである。符号28は、エンドキャップ5,6の外側に設けたエンドシール部材で、スライダの移動方向からのダストなどの侵入を防止するためのものである。
【0012】
今、スライダSを、軌道面を有するレールRに沿って移動すると、スライダS内に組み込んだころ11,12が軌道面1a,1bおよび2a,2bを転動し、スライダSのスムーズな動きを確保する。そして、このときのころ11,12の転動軌跡は次の通りである。
【0013】
なお、スライダSの移動方向に応じて、例えば、図15の出入部25,26からころ11,12が通路溝13,14に導入されたり、あるいは、出入部25,26から軌道面1a,1bに導出されたりする。そこで、先ず、上記出入部25,26からころ11,12が導入される場合について説明する。
【0014】
スライダSが移動してその移動方向後方側のエンドキャップ5あるいは6の出入部25からころ11が導入され、出入部26からころ12が導入されたとすると、出入部25に導かれたころ11は、通路溝13に案内されて、上記出入部25とは反対側における通路溝13の端部に接続したガイド筒9に導かれる。一方、出入部26に導かれたころ12は、通路溝14に案内され、出入部26とは反対側における通路溝14の端部に接続したガイド筒10に導かれる。このとき、図17からも明らかなように、ころ11群の転動列と、ころ12群の転動列とが、ブリッジ部材15を境にしてクロスすることになる。そして、これら両転動列が互いにクロスした状況を示したのが、図14の符号11,12で示したころであり、その転動列である。
【0015】
上記のようにエンドキャップ5あるいは6内でクロスしたころ11,12は、上記したように通路溝13,14からガイド筒9,10を経由して、移動方向前方のエンドキャップ6あるいは5に導かれ、この移動方向前方のエンドキャップ6あるいは5の出入部25,26とは反対側端から通路溝13,14に導かれる。そして、この通路溝13,14を経由する過程で、両ころ11,12の転動列が互いにクロスすることになる。
【特許文献1】特開2002−54633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のようにした従来の直動転がり案内ユニットでは、両エンドキャップ5,6内に組み込む部品点数が多い上に、それら組み込み部品とガイド筒9,10とが別部品になっているので、全体の組み付け作業の効率が極端に悪くなるという問題があった。また、当然のことであるが、部品点数が多くなるので、それら部品の製造コストも上昇するという問題もあった。
【0017】
さらに、上記のようにエンドキャップに組み込む部品点数が多くなると、それら部品の寸法公差などが影響して、部品と部品との連接部分に、どうしても段差やすき間ができやすくなる。そして、段差やすき間ができてしまうと、その部分で、ころ11,12が傾いたり、引っかかったり、あるいはガイド筒9,10が摩耗したりし、ころ11,2のスムーズな循環に支障を来すことになる。そのために、軌道面を有するレールRをスライダSが走行するとき、そのレールRに対するスライダSの摩擦抵抗がばらついてしまうと言う問題があった。
【0018】
この発明の目的は、部品点数を少なくして、部品間の連接部を減らして、上記従来の問題を解消した直動転がり案内ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明は、軌道面を有するレールが、片側にそれぞれ2条ずつの軌道面を備え、4条のエンドレスな転動列を構成する複数のころを組み込んだスライダは、この軌道面を有するレールをまたいだ状態で移動するとともに、エンドレスな転動列の一方の側における転動列をガイドする往動ガイド通路と、他方の側における転動列をガイドする復動ガイド通路とを一組にして、軌道面を有するレールの両側に二組ずつ設け、上記往動ガイド通路は各軌道面に対向し、復動ガイド通路はスライダ内を通過する構成にするとともに、これら往動ガイド通路と復動ガイド通路とは、スライダに設けたエンドキャップ内でクロスする構成にした直動転がり案内ユニットを前提にする。
【0020】
上記の直動転がり案内ユニットを前提にしつつ、第1の発明は、スライダには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔を形成し、このガイド孔にころが転動するガイド筒を挿入する構成にし、かつ、上記エンドキャップには、深さを異にした一対の通路溝をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠を一体に設け、この仕切り枠を、通路溝のクロス部に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした点に特徴を有する。また、この発明におけるころには、円筒ころ、棒状ころあるいは針状ころなどが含まれる。
【0021】
第2の発明は、上記仕切り枠が、当該ガイド筒を通過したころがそのまま転動可能な通路孔を形成するとともに、仕切り枠の外側を、他のガイド筒を転動してきたころのガイド面として機能する構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0022】
第1,2の発明によれば、復動ガイド通路を構成するための部品は、エンドキャップ以外に、仕切り枠と一体にしたガイド筒だけで足りるので、言い換えると、エンドキャップに組み込む部品点数は、一つで足りるので、従来のものに比べて製造コストを大幅に削減できる。また、部品点数が少ない分、組み付け時の作業工数も少なくなる。したがって、組み付け作業を単純化でき、その分、コスト削減に役立つことになる。
【0023】
さらに、上記したようにエンドキャップに組み込む部品点数が少ないので、部品同士が連接する箇所も少なくなる。したがって、各部品の寸法公差等が原因で発生していた上記連接部分の段差やすき間も少なくなる。このように段差やすき間が無くなれば、ころが傾いたり、引っかかったり、あるいはガイド筒9,10が摩耗したりする不都合もなくなる。このように不都合が無くなるので、軌道面を有するレールRをスライダSが走行するとき、そのレールRに対するスライダSの摩擦抵抗が安定することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1〜図12は、この発明の実施形態を示したもので、スライダSは、ケーシングcと一対のエンドキャップe1,e2を主要素にしているもので、このスライダSが従来と同じ軌道面を有するレールRを移動するものである。そして、上記ケーシングcは、従来とほとんど同じ構成であり、その両側に一対のガイド孔31,32を形成したものである。なお、図中符号33はスライダSの下からのダスト等の侵入を防止するための下面シールである。
【0025】
そして、この実施形態の最大の特徴は、上記ガイド孔31,32に組み込むガイド筒34の構成である。なお、このガイド筒34は4本用いるが、これら4本のガイド筒の形状はすべて同じなので、4本とも同じ符号を用いて説明する。このガイド筒34は、図3〜図6からも明らかなように、ガイド孔31,32に挿入する筒部35と、この筒部35と一体形成した仕切り枠36とからなる。
【0026】
上記筒部35は、その中にころ37が転動する孔を形成しているが、この孔内を転動するころ37が、図11からも明らかなように、ころ37の軸線を筒部35の軸線に直交させる状態を保って転動できるようにしている。そして、この筒部35には、その軸方向に2本のスリット38a,38aを形成して、それらスリット38a,38a間をバネ板部38としている。このバネ板部38は、例えば、転動中のころ37の間隔が詰まって、ころ37の整列が乱れたとき、弾力的に退避しながら、整列の乱れを補正するためのものである。
【0027】
また、上記筒部35の一端には、仕切り枠36を一体に設けているが、この仕切り枠36は、図3〜図6からも明らかなように、筒部35の軸線と90度方向を転換した通路孔36aを形成するとともに、この通路孔36aの周囲を囲い壁部36bとしている。このようにした囲い壁部36bには、図6および図9からも明らかなように、その上側すなわち筒部35の延長上に一対の差込片39を一体に形成するとともに、この差込片39とは反対側である仕切り枠36の下側には内側を弧状にしたガイド片40を一体に形成している。さらに、上記ガイド筒34の他端には、図6からも明らかなように段部49を形成している。
【0028】
一方、ケーシングの両端に設けた前記エンドキャップe1,e2は、それら両者の構造が同一なので、以下には、各構成要素に同一符号を付して説明する。これらエンドキャップe1,e2には、図2からも明らかなように、一対の通路溝42,43を形成している。この通路溝42,43は互いにクロスするとともに、一方の通路溝42に対して、他方の通路溝43の溝深さを深くしている。したがって、一方の通路溝42は、他方の通路溝43によって、その連続性が断たれる。
【0029】
また、一方の通路溝42は、その一端を出入部42aとし、他端を接続部42bとしている。そして、この接続部42bは、図7に示すように、その底面42cを円弧状にしている。しかも、この接続部42bの両側には、図10に示すように、差込溝42dを形成しているが、この差込溝42dには、ガイド筒34に形成した差込片39を差し込むようにしている。このように差込片39を上記差込溝42dに差し込むことによって、ガイド筒34の仕切り枠36が、上記両通路溝42,43のクロス部44に位置する関係にしている。
【0030】
上記のように仕切り枠36がクロス部44に位置した状態は、図7に示すとおりである。すなわち、仕切り枠36がクロス部44に位置することによって、分断されていた通路溝42が、仕切り枠36の通路孔36aを介して連続するとともに、この通路溝42によって形成される通路と、通路溝43によって形成される通路とが、上記仕切り枠36の囲い壁部36bによって区画されることになる。なお、このときの囲い壁部36bの外周面は、通路溝43と相まってころ37を案内するもので、この発明のガイド面を構成するものである。
【0031】
なお、上記のようにガイド筒34の仕切り枠36をエンドキャップe1,e2にはめ込むことによって、通路溝42が連続するが、その接続部42b側が筒部35に連続するとともに、出入部42aが上記ガイド片40と相まって、導出入部45を形成する関係にしている。また、図12に示すように、エンドキャップe1,e2には、それと一体に形成した案内片46を設けているが、この案内片46によって形成される通路47が、軌道面を有するレールRの軌道面に連続する構成にしている。
【0032】
さらに、他方の通路溝43は、その一端を出入部43aとし、他端を接続部43bとしている。そして、この接続部43bには、図2および図8に示すように、段部50を形成している。しかも、この接続部43bの底面43cは、筒部35に連続する構成にしている。また、上記出入部43aは、図12のように案内片46によって構成される通路48に連続するが、この通路48も軌道面を有するレールRの軌道面に連続する構成にしている。
【0033】
一方、ガイド筒34の他端には段部49を形成しているが、この段部49は、図2および図8に示すエンドキャップe1,e2の段部50に当接して、図8に示すように、ガイド筒34の筒部35と通路溝43とを連続させるものである。
【0034】
次に、図1を基にして各部材の組み付け状況を説明する。まず、エンドキャップe1,e2のクロス部44に、ガイド筒34の仕切り枠36をはめる。このようにクロス部44に仕切り枠36をはめたガイド筒34を、ケーシングcのガイド孔31,32に挿入する。そして、上記ガイド筒34は、ガイド孔31,32に挿入することによって、上記仕切り枠36とは反対端にある上記段部49がケーシングcから突出する寸法関係を維持している。したがって、この突出した段部49を、エンドキャップe1,e2の段部50に当接させれば、このガイド筒34が通路溝43側に連通することになる。
【0035】
そして、上記ガイド孔31,32に挿入したガイド筒34がこの発明の復動ガイド通路を構成する。また、導出入部45に連続する、軌道面1a,1bおよび2a,2bとの対向間隔が往動ガイド通路を構成することになる。
【0036】
上記のようにした各往動ガイド通路および復動ガイド通路のそれぞれに多数のころ37を装填すると、ガイド孔31に設けたガイド筒34を転動するころ37の転動列と、ガイド孔32に設けたガイド筒34を転動するころ37の転動列とが構成されるとともに、それらころ37の転動列は、上記エンドキャップe1,e2のクロス部44でクロスして循環することになる。
【0037】
これをさらに詳しく説明すると、例えば、往動ガイド通路から一方のエンドキャップe1の導出入部45(図7参照)に入ってきたころ37は、仕切り枠36の通路孔36aを通りながら一方の通路溝42を通過し、この通路溝42の接続部42bから上記筒部35の一端に導かれる。このようにして筒部35の一端に導かれたころ37は、筒部35の他端に達し、この筒部35の他端から他方のエンドキャップe2における他方の通路溝43の接続部43bに導かれ、復動ガイド通路を通過する。このようにして他方のエンドキャップe2の接続部43bに導かれたころ37は、他方のエンドキャップe2における通路溝43を通って、その導出入部45に至り、そこから通路48を経由して軌道面1a,1bあるいは2a,2b側に導かれ、往動ガイド通路を通過することになる。
【0038】
そして、往動ガイド通路を通過したころ37は、一方のエンドキャップe1側の通路47を経由して、その一方のエンドキャップe1の出入部42aに到達し、再び、上記したと同じルートを経由することになる。いずれにしても、両エンドキャップe1,e2間を転動するころ37は、その転動列をエンドレスの状態を保ちながら、往動ガイド通路および復動ガイド通路を転動するものである。
なお、スライダSの移動方向に応じて、ころ37は反対方向に転動するが、その移動ルートは、上記した場合と同じであり、その転動方向だけが相違するものである。
【0039】
上記のようにした実施形態によれば、ガイド筒34は、仕切り枠36と一体に形成しているので、エンドキャップe1,e2に組み付けるべき部品は、ガイド筒34だけになる。したがって、その部品点数が極端に少なくなり、それだけ組み付け工数も少なくなる。このように組み付け工数が少なくなれば、当然のこととして、全体的にもコストダウンを図ることができるものである。
【0040】
また、上記のように部品点数が少ないので、その分、部品同士の連接部も少なくなる。したがって、従来のように部品の寸法公差等に基因した連接部の段差やすき間も無くなり、ころ37の傾きや引っかかりも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スライダの分解斜視図である。
【図2】エンドキャップをケーシング側から見た図である。
【図3】ガイド筒の平面図である。
【図4】ガイド筒の側面図である。
【図5】ガイド筒の底面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線断面図である。
【図7】ガイド筒の仕切り枠をエンドキャップに組み付けた状態の断面図である。
【図8】ガイド筒の段部をエンドキャップに組み付けた状態の断面図である。
【図9】ガイド筒の仕切り枠部分を示す部分斜視図である。
【図10】エンドキャップにおける通路溝の接続部を示す一部を断面にした部分斜視図である。
【図11】ころの転動列がクロスする状態を示した斜視図である。
【図12】エンドキャップにガイド筒を組み付けた状態の部分斜視図である。
【図13】従来の直動転がり案内ユニットを示す、一部を断面にした斜視図である。
【図14】従来の案内ユニットの分解斜視図である。
【図15】従来のエンドキャップをケーシング側から見た図である。
【図16】従来のエンドキャップの一部を断面にした部分斜視図である。
【図17】従来のエンドキャップにふた部材を組み付けた図15のXVII−XVII線断面図である。
【図18】従来のエンドキャップに組み込むブリッジ部材の斜視図である。
【図19】従来のスライダを、軌道面を有するレールにまたがせた状態の断面図である。
【符号の説明】
【0042】
e1,e2 エンドキャップ
31,32 ガイド孔
34 ガイド筒
36 仕切り枠
36a 通路孔
37 ころ
42,43 通路溝
44 クロス部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面を有するレールは、片側にそれぞれ2条ずつの軌道面を備え、4条のエンドレスな転動列を構成する複数のころを組み込んだスライダは、上記軌道面を有するレールをまたいだ状態で移動するとともに、エンドレスな転動列の一方の側における転動列をガイドする往動ガイド通路と、他方の側における転動列をガイドする復動ガイド通路とを一組にして、軌道面を有するレールの両側に二組ずつ設け、上記往動ガイド通路は各軌道面に対向し、復動ガイド通路はスライダ内を通過する構成にするとともに、これら往動ガイド通路と復動ガイド通路とは、スライダに設けたエンドキャップ内でクロスする構成にした直動転がり案内ユニットにおいて、上記スライダには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔を形成し、このガイド孔にころが転動するガイド筒を挿入する構成にし、かつ、上記エンドキャップには、深さを異にした一対の通路溝をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠を一体に設け、この仕切り枠を、通路溝のクロス部に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした直動転がり案内ユニット。
【請求項2】
上記仕切り枠は、当該ガイド筒を通過したころがそのまま転動可能な通路孔を形成するとともに、仕切り枠の外側を、他のガイド筒を転動してきたころのガイド面として機能する構成にした請求項1記載の直動転がり案内ユニット。
【請求項1】
軌道面を有するレールは、片側にそれぞれ2条ずつの軌道面を備え、4条のエンドレスな転動列を構成する複数のころを組み込んだスライダは、上記軌道面を有するレールをまたいだ状態で移動するとともに、エンドレスな転動列の一方の側における転動列をガイドする往動ガイド通路と、他方の側における転動列をガイドする復動ガイド通路とを一組にして、軌道面を有するレールの両側に二組ずつ設け、上記往動ガイド通路は各軌道面に対向し、復動ガイド通路はスライダ内を通過する構成にするとともに、これら往動ガイド通路と復動ガイド通路とは、スライダに設けたエンドキャップ内でクロスする構成にした直動転がり案内ユニットにおいて、上記スライダには、復動ガイド通路を構成するための一対のガイド孔を形成し、このガイド孔にころが転動するガイド筒を挿入する構成にし、かつ、上記エンドキャップには、深さを異にした一対の通路溝をクロスさせて設け、しかも、上記ガイド筒の一方の端部に、クロスした通路溝を区画する仕切り枠を一体に設け、この仕切り枠を、通路溝のクロス部に挿入することによって、往動ガイド通路と復動ガイド通路とが、クロス状態を維持して区画される構成にした直動転がり案内ユニット。
【請求項2】
上記仕切り枠は、当該ガイド筒を通過したころがそのまま転動可能な通路孔を形成するとともに、仕切り枠の外側を、他のガイド筒を転動してきたころのガイド面として機能する構成にした請求項1記載の直動転がり案内ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−275135(P2006−275135A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93947(P2005−93947)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
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