説明

直挿式光学測定装置

【課題】 高温・高ダスト条件下においても、測定系特に光学系に対する影響を与えずに付着ダストの除去が容易にでき、かつ長期間安定的にダストの除去機能を維持することができる直挿式光学測定装置を提供すること。
【解決手段】 所定の長さを有する試料流路の側面の少なくともいずれかにマド部1a,2aを有する光学素子(光源部1,光検出部2)を配設し、試料流路での吸光量あるいは発光量を測定する直挿式光学測定装置であって、所定の周期で回転するチョッパ31,32を光学素子(光源部1,光検出部2)の光変調手段とするとともに、チョッパ31,32によってマド部1a,2aの清浄を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直挿式光学測定装置に関するもので、例えば、自動車排気ガス中の成分測定において、直接排気管に装着し測定可能な構造を有する直挿式光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料ガス中の一酸化炭素(CO),二酸化炭素(CO),炭化水素(HC)あるいは窒素酸化物(NOx)などの成分測定は、煙道のような定置排出源や自動車のような移動排出源あるいは半導体生産ラインなど各種のプロセスにおいて重要な測定項目である。こうした試料ガス中の成分測定装置としては、従来から、図8に示すような構成が知られている。具体的には、試料採取点から分析計までの間に試料流体中の除湿や除塵あるいは定流量化などを目的として、フィルタ、切換弁、試料導入管、除湿器、吸引ポンプ、絞り弁、流量計などが設けられたサンプリング系を構成するとともに、測定装置は、試料採取点の近くに固定されて稼動している(例えば非特許文献1参照)。また、こうした試料を採取して所定の処理を行った後に測定する方法では、試料採取部〜導管〜試料処理部における各部材の保守が不可避であることから、直接試料流路に測定系を挿入し測定を行う方法がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、図9に例示するように、排ガス流路104内の排ガスExに対して光を照射すると共にこの排ガスExを透過した光を検出する光学装置102であって、前記照射光を反射する反射鏡108の表面を仕切る衝立状の隔壁109と、隔壁109によって仕切られた各光学面108にパージエアAを供給するパージエア供給部110とを備える光学装置を挙げることができる(例えば特許文献1参照)。少量のパージエアを用いて光学面の表面の全体が均等に排ガスに接触しないように保護する汚れ防止機能を有し、安定したパージエアと排ガスの境界面を設けることによって、パージエアの流れによって排ガスの流れを乱すことがなく、排ガスを透過する光の光路長を確実かつ安定に確保することにより、正確な測定ができる。
【0004】
【非特許文献1】日本工業規格「JIS B7982−2002」
【特許文献1】特開2005−140703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記測定装置では、以下のような課題が生じることがあった。
つまり、直挿式測定装置あるいは直接測定方式の測定装置は、試料採取・処理式の測定装置において必要となる試料採取部〜導管〜試料処理部における各部材の保守が不要である点、および応答性が高い点などにおいて優れる一方、高温・高ダスト条件下において測定する場合が多いことから測定系における特有の対策が求められる。
【0006】
例えば、上記測定装置において高ダスト対策として測定系をエアパージする方法が提案されている。このとき、1成分ごとに1つの測定系を要する場合には、多成分を測定できる装置を構成するには、測定成分数に相当する同一構造のエアパージ機構を設ける必要があり、測定装置の大型化を招来する。さらに、パージに必要なエアも大量に必要となり、ポンプによるエア供給を行う場合にあっては、大容量のポンプが必要になる。
【0007】
そこで、本発明はこうした問題点を解決し、試料測定中の測定値に対する信頼性を確保し、測定精度が高く長期間安定な使用が可能な直挿式光学測定装置を提供することを目的とする。つまり、高温・高ダスト条件下においても、測定系特に光学系に対する影響を与えずに付着ダストの除去が容易にでき、かつ長期間安定的にダストの除去機能を維持することができる直挿式光学測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す直挿式光学測定装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、所定の長さを有する試料流路の側面の少なくともいずれかにマド部を有する光学素子を配設し、該試料流路での吸光量あるいは発光量を測定する直挿式光学測定装置であって、所定の周期で回転するチョッパを前記光学素子の光変調手段とするとともに、該チョッパによって前記マド部の清浄を行うことを特徴とする。
【0010】
一般に光学測定装置には、検出器からの出力の安定性および出力信号処理におけるダイナミックレンジの確保等の理由から、光変調手段を用い該変調周波数によって検出器からの出力を処理する方法が適用される。こうした光変調手段としては、光源の発光自体を変調させる方法もあるが、発光光量あるいは変調可能な光の波長域や変調周波数に制限があり汎用性がないことから、通常はいわゆるチョッパと呼ばれる機械的な光断続手段を用いる。一方、直挿式測定装置においては、高温・高ダスト条件下での試料による光学系の汚染を防止することが大きな課題であり、本発明は、こうしたチョッパの駆動機構を利用して、容易に付着ダストを除去し光学系の清浄化を図りつつ正確な変調機能を確保することを可能としたものであって、測定精度が高く長期間安定な使用が可能な直挿式光学測定装置を提供することが可能となった。なお、ここで、「光学素子」とは、広く可視光、赤外線や紫外線あるいはマイクロ波などに関与する素子をいい、具体的には、マド部、光源部、光検出部、光学フィルタ、集光部、あるいは光反射部などが該当する。
【0011】
本発明は、上記直挿式光学測定装置であって、前記光学素子が、光源部、光検出部、集光部あるいは光反射部のいずれかであって、光学素子またはチョッパの位置調節機構を有することを特徴とする。
【0012】
通常光学式の測定装置においては、光源部などからの光を有効に検出器に照射するようにいわゆる光学調整を必要とする。一方、本発明の直挿式光学測定装置においては、チョッパによって光学系の清浄化を図るものである。従って、チョッパによる清浄対象としての光学素子を光源部、光検出部、集光部あるいは光反射部のいずれかとするとともに、こうした光学素子またはチョッパの位置調節機構を設け、光学調整と光学系の清浄化の両方が適切に機能できるように調整することによって、光源などからの光を最大限有効に生かすことが可能となり、精度が高く長期間安定な測定を行うことができる。
【0013】
本発明は、上記直挿式光学測定装置であって、前記集光部が光源部または/および光検出部の一部を構成するとともに、該光源部または/および光検出部のマド部、あるいは前記集光部がマド部である場合には該集光部、の清浄をチョッパによって行うことを特徴とする。
【0014】
試料中の微量成分の測定にあっては、測定精度の向上を図るために、光源部からの光の散乱・拡散を最小限にして光の密度を高めることが重要となる。本発明は、光学系に集光部を設け、光源部または/および光検出部の一部とすることによって光の集光効率を上げるとともに、集光部での付着ダストは他の光学要素以上の影響を受けることから、集光部を構成の一部とする光源部や光検出部のマド部を清浄化することによって付着ダストの影響を軽減することができる。また、集光部をマド材で形成しマド部とする場合には、その集光部を清浄化することによって付着ダストの影響を軽減することができる。
【0015】
本発明は、上記直挿式光学測定装置であって、前記マド部が、サファイアあるいは光透過性セラミックスを基本とする組成物で構成され、前記チョッパが、少なくともマド部表面と接する部材として耐熱性プラスチック製あるいは金属製ブラシを有することを特徴とする。
【0016】
上記のように、本発明はチョッパの駆動機能を利用してマド部の清浄化を図ることを主眼としている。こうした本来の機能を確保するためには、マド部を構成する材料(表面処理を含む)の強度およびチョッパの清浄機能とマド材に対する非損傷性が要求される。本発明者は種々の素材の検証の結果、マド部をサファイアあるいは光透過性セラミックスを基本とする組成物で構成し、チョッパをマド部表面と接する部材として耐熱性プラスチック製あるいは金属製ブラシで構成することによって、本来の機能が損なうことなく長期間安定な使用が可能な直挿式光学測定装置を構成することが可能となる。
【0017】
本発明は、上記直挿式光学測定装置であって、前記光学素子、チョッパおよび位置調整機構を含む一体型の光学系ユニットを形成するとともに、該光学系ユニットが排出源の排出流路に直接装着可能な構造を有することを特徴とする。
【0018】
直挿式光学測定装置は試料流路に直接配設できる点にその特徴があるが、従前は、光学素子など光学系を構成する要素をいくつかに分け、試料流路の側面に各要素を配設することによって光学系を構成する方法が採られていた。こうした場合、セット時に上記のような光学調整などを所定の測定準備作業を必要としていた。本発明の直挿式光学測定装置においては、自動車の排気管などのように一端が開放された排出流路を形成する場合や容易に取り外し可能となっている排出源の排出流路を形成する場合、光学系ユニットとしてその排出流路に対して直接装着可能な構造とすることによって、上記のような光学調整などの準備作業を不要とし、また測定が終了したときの搬出も容易に行うことが可能となる。特に自動車などの移動を伴う測定対象に対しては、非常にフレキシブルで汎用的な測定方法を提供することが可能となる。
【0019】
本発明は、上記直挿式光学測定装置であって、自動車の排気管の出口側近傍に直接装着および脱着可能な光学系ユニットを有する直挿式光学測定装置であって、前記排気管に対してその下流側の開口側から着脱自在に外装される光学系ユニットと、前記排気管と光学系ユニットの中間に挿入される外気遮断部材とからなることを特徴とする。
【0020】
自動車の排気管は、一端が開放された排出流路を形成することから、その排出流路に対して直接装着および脱着可能な構造とすることによって、本発明に係る直挿式光学測定装置を形成することが可能である。排気管からは付着性の強いSoot,SOF(Soluble Organic Fraction)やダストが多く排出されることから、高温・高ダスト条件下においても測定系特に光学系に対する影響を与えずに付着ダストの除去が容易にでき、かつ長期間安定的にダストの除去機能を有する本発明に係る直挿式光学測定装置は、特に有用である。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、高温・高ダスト条件下においても、測定系特に光学系に対する影響を与えずに付着ダストの除去が容易にでき、かつ長期間安定的にダストの除去機能を維持することができる直挿式光学測定装置を提供することが可能となる。また、特に、光学素子などを一体化した光学系ユニットを構成することによって、非常にフレキシビリティの高い直挿式光学測定装置を形成することができ、汎用性の高い使用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。この発明に係る直挿式光学測定装置(以下「本装置」という。)は、光源部や光検出部などの光学素子、所定の周期で回転するチョッパ、および光検出部からの出力を処理する信号処理手段を有し、チョッパを光学素子の光変調手段とするとともに、チョッパによって光学素子のマド部の清浄を行うことを特徴とする。
【0023】
<本装置の第1構成例>
図1は、本装置の第1構成例として、非分散赤外線吸収式測定法(NDIR)を用いた光学系を有する場合を例示する。図1(A)に例示するように、試料Fが流通あるいは貯留する試料流路の1つの側面にマド部1aを有する光源部1と駆動部31aによって回動するチョッパ31を設け、他の側面にマド部2aを有する光検出部2と駆動部32aによって回動するチョッパ32を配設し、こうした要素から形成される光学系10と電源・信号などの送受信を行い各種の処理を行う処理部4を有する構成を示している。図1(B)は、図1(A)のa−a’断面を示す。
【0024】
このとき、所定の周期で回転するチョッパ31と32は、光学素子(上記光源部1と光検出部2を含む)に対する断続光を作成する光学手段として構成され、光変調手段として機能する。図1(A)および(B)に示すように、光源部1から発光された赤外線は、チョッパ31によって断続的に試料流路を介して光検出部2に照射される。光検出部2の前には、チョッパ31と相互に同期して回転するチョッパ32が設けられ、同じく赤外線を断続光として光検出部2に入射させる。このとき、特定波長の赤外線が試料F中に存在する特定成分によって吸収されるとともに、その吸収量が特定成分の濃度変化に対応する特性を利用し、残余の赤外線を光検出部2によって検出することによって、特定成分の濃度を測定することができる。
【0025】
また、チョッパ31(および32)は、上記の光学的機能とともに、図1(C)に例示するようなワイパー部31b(および32b)によって、マド部1a表面の付着ダストの除去という機械的な清浄化機能を有している。つまり、チョッパ31の回動によってワイパー部31bがマド部1aと接触して表面の付着したダストを清浄し、チョッパ32の回動によってワイパー部32bがマド部2aと接触して表面の付着したダストを清浄することができる。なお、図1(C)は、光源部1側について例示したが、光検出部2側についても同様である。
【0026】
このとき、こうした清浄化機能が効果的かつ長期間働くためには、図1(C)に例示するように、ワイパー部31bが、マド部1a表面と接する面においていくらかの接触圧を有することが好ましい。チョッパ31自体の弾力性を利用する方法と、図1(D)に例示するようにチョッパ31に取り付けられたバネ板31cの押圧力による方法などを挙げることができる。なお、図1(C)および(D)は、光源部1側について例示したが、光検出部2側についても同様である。
【0027】
また、同様に清浄化機能が効果的かつ長期間働くためには、マド部1aおよび2aがサファイア(AL)あるいは光透過性セラミックスを基本とする組成物で構成され、チョッパ31および32が、少なくともマド部1aおよび2aの各表面と接する部材として、耐熱性プラスチック製あるいは金属製ブラシを有することが好ましい。本発明者の検証によって、下表1に例示するように、マド部1aおよび2aとチョッパ31および32を構成する素材の硬度および光の透過性を基準に選定し、上記に組み合わせを適用することが好適であることを見出したものである。
【0028】
【表1】

【0029】
ここで、透過性セラミックスとは、例えば商品名ルミセラ(村田製作所製、透過率:0.5〜6μmの光に対し80%、耐水性および耐酸性:JOGIS1級(JOGIS:Measuring method for chemical durability of optical glass (powder method) ))などの光学ガラスをいう。また、使用可能なプラスチックスとして、例えばアクリル、ポリエステル、スチロール、あるいはフェノール樹脂などを挙げることができるが、特に、ポリエーテルサルファン(PES:polyethersulfone、耐熱温度210℃)などの耐熱性プラスチックスが好ましい。さらに、マド部1aおよび2aの素材をサファイアとせずに、シリコンを基材とし、ダイアモンドライクカーボン(DLC)コーティング素材を使用することも可能である。
【0030】
図2(A)に例示するように、光源部1としては、発熱抵抗体や赤外線LEDなど種々の発光部1bによって構成することができ、マド部1aを試料流路側に設けるとともに、電源供給用および出力チェック用の取合部1cが設けられている。ここで、発光部1b自体がシールされた1つのユニットとする、あるいはマド部1aを含む光源部1全体をシールすることによって、光源部1の試料Fあるいは外気からの汚染を防止することができるとともに、後述する位置調節を容易に行うことができる。
【0031】
また、図2(B)に例示するように、レンズ部1d(「集光部」に相当する)が、光源部1の一部を構成することが好ましい。発光部1bからの赤外線の集光効率を上げ、散乱・拡散によるロスを最小限にして密度を高めることができる。ここで、上記同様、レンズ部1dを含む光源部1全体をシールすることができる。
【0032】
さらに、図2(C)に例示するように、マド部1a自体が集光機能を有するようにレンズ部1dを形成し、レンズ部1dの一面を平面(平面部1da)とし、平面部1daを試料流路に接するように配設することが好ましい。光学系10の光路を構成する部品点数を低減することによって、光路の簡便さを確保するとともに、光のロスを低減することができる。このとき、平面部1daをチョッパ31の清浄化の対象とすることによって、特に赤外線密度の高いレンズ部1dが清浄されることとなり、平板上のマド部1aにおける清浄効果を超える清浄効果を得ることができる。
【0033】
また、上記レンズ部1dに代えて、図2(D)に例示するように、反射鏡面1eを用いて集光機能および平行光化機能を有するように光源部1を構成することが可能である。密度の高い赤外線を分散なく照射し、試料Fに対して所定の広がりを有する光の吸収量を得ることができる。
【0034】
光検出部2は、パイロ検出器や半導体検出器などの波長非選択性タイプ、あるいはゴーレイセルやニューマチック検出器などの波長選択性タイプの検出器2bのいずれも使用可能である。このとき、前者については、光学フィルタ(図示せず)を用いて波長選択性を確保し、後者については、光学フィルタとの組み合わせによってさらに高い選択性を確保することができる。通常、光検出部2は、検出器2b、光学フィルタおよびマド部2aから構成されるが、光学フィルタ自体をマド部2aとして使用することも可能である。ただし、多層膜の光学フィルタ(干渉フィルタ)の場合には、多層膜層が形成されていない面を試料流路側とすることが好ましい。また、光源部1と同様、図2(A)〜(D)に例示するような形態によって、(B)レンズ部を光検出部2の構成の一部とすること、(C)マド部2a自体が集光機能を有するようにレンズ部を形成し、レンズ部の一面を平面として試料流路に接するように配設すること、あるいは(D)反射鏡面(2e)を用いて集光機能および平行光化機能を有するように構成することも好ましい。
【0035】
また、試料流路の両側に設けられた一対のチョッパ31および32は、一体として変調することが好ましい。つまり、光源部1から発光した赤外線がチョッパ31および32によってチョッピングされて光検出部2に照射されるに際して、両方のチョッパ31および32が全く同一形状で同時にチョッピングをした場合、試料流路の長さ分の断続光の位相のズレが生じ、光路が開となる時間が僅かに減少することとなる。従ってチョッピングの重複部を全く設けずに、例えば図3(A)に例示するようなチョッパ31および32を用いて変調を行う方法を挙げることができる。あるいは図3(B)に例示するように、予めチョッパ31および32の間に僅かなズレを設けて調整することも可能である。
【0036】
上記は、本装置において1つの光検出部2を配設した場合を例示したが、複数の光検出部を配設した光学系を形成することも可能である。具体的には、図3(C)に例示するように、4つの光検出部21,22,23,24を配設し、チョッパ31を順次チョッピングするとともに清浄することによって、長期間安定性の高い多成分測定用の測定装置を構成することが可能となる。
【0037】
また、本装置においては、光学素子またはチョッパの位置調節機構を有することが好ましい。具体的には、図4(A)に例示するように、発光部1b、レンズ1d、検出器2b、後述する光反射部などの光学素子のみの位置が調整できるように構成することができる機構を挙げることができる。光源部1側と光検出部2側に同一構造の位置調節機構を設け、レンズホルダ1f,2fを2本の調整ネジ1g,1gおよび2g,2gと後側からバネ1h(および2h)で押付けられた押しピン1j(および2j)の3点で支える。ウエーブワッシャ1k,2kによりレンズホルダの固定に遊び(スキ)はないが、調整ネジ1g,2gの回転による移動は自由にして2本の調整ネジ1g,2gを各々回動することにより、レンズ部1dの中心点は自由に平面移動することができる。これによって、図4(B)に例示するように、レンズ部1dの焦点を光源部1側の発光ポイント1pに合せ、光源部1からの赤外光を平行光化し、レンズ部2dの焦点を光検出部2側の受光ポイント2pに合せて平行光を集光することができる。
【0038】
また、レンズ部1dの代わりに、反射鏡面1eを用いて平行光化、集光をする場合にあっては、図4(C)に例示するように、反射鏡面1eの位置調節機構を設けることによって、上記同様発光ポイント、受光ポイントに合せることができる。
【0039】
さらに、図4(D)に例示するように、光源部1全体あるいは光検出部2全体の位置を調整する機構を挙げることができる。これによって、光学系の焦点あるいは光量の調整を光学素子またはチョッパの位置調節によって行うことができる。
【0040】
<本装置の他の構成例>
本装置は、上記の第1構成例を基本構成として、種々の構成を形成することができる。具体的には、図5(A)に例示するように、1つの駆動部31aを用い、軸体33によってチョッパ31とチョッパ32を連結して回動させる構成例(第2構成例)を挙げることができる。光変調機能と清浄化機能を確保しながら、特に前者についてチョッパ31とチョッパ32の同期の確実を図ることができる。
【0041】
また、図5(B)に例示するように、1つの駆動部31aを用いてチョッパ31を回動させるとともに、光検出部2をエアパージする構成例(第3構成例)を挙げることができる。光変調機能と清浄化機能を確保しながら、他の清浄化手段と併用することによって駆動機構の低減を図り、装置全体の負荷を軽減することができる。
【0042】
図5(C)に例示するように、試料流路の一方に光反射部5を設け、他方に光源部1と光検出部2およびその中央にチョッパ31を設け、チョッパ31を回動させて変調させる構成例(第4構成例)を挙げることができる。光変調機能と清浄化機能を確保しながら、実効光路長を2倍にすることができるとともに、光反射部5に位置調節機構を設け、上下・左右に可動することによって集約的に調整することができる。このとき、光反射部5にもチョッパを設け、チョッパ31と連動させることもできが、光反射部5についてエアパージすることが可能である。
【0043】
<本装置の他の実施形態>
次に、本装置の他の実施形態として、上記光学素子、チョッパおよび位置調整機構を含む一体型の光学系ユニットを形成するとともに、該光学系ユニットが排出源の排出流路に直接装着可能な構造を有する場合を例示する。具体的には、自動車61の排気管63(テールパイプ)に装着した状態を、図6に示す。この図において、61は自動車、62は例えばディーゼルエンジン、63はこのエンジン62に連なる排気管であり、この排気管63の下流側の出口近傍に、光学系10が設けられている。なお、排気管63に直接配設することが可能な場合には、各構成例1〜4と同様の構成とすることも可能であることはいうまでもない。
【0044】
このとき、光学系10を装着する方法として、図7に例示するように、排気管63に対して、これを覆うように本装置の筐体7(光学系ユニットに相当する。)が固定具8a,8bによって固定される装置を挙げることができる(第5構成例)。この筐体7に自動車61の排気ガスが試料Fとして流通することから、各構成例1〜4における試料流路に該当する。光源部1や光検出部2およびチョッパ31と32の位置調節を完了した状態で、固定具8a,8bを介して光学系10が取り外し自在に装着されることによって直ちに測定ができ、かつ安定な測定が可能となる。このように、試料流路に直接光学系10が取り付けられた状態において、光学調整などの準備作業を不要とし、高温・高ダスト条件下においても長期間安定的に試料F中の成分測定することができる。と同時に、測定が終了したときの搬出も容易に行うことが可能となる。ここで、図7においては、筐体7を2つの固定具8a,8bによって固定される装置を挙げたが、固定具の数を3つ(例えば均等に120°間隔とする)あるいは4つ(例えば均等に90°間隔とする)以上用いることも可能である。
【0045】
また、排気管63と筐体7の中間には、外気遮断部材7aを挿入することが好ましい。筐体7の内部への外気の混入を防止するとともに、光学系10への散乱光などの外乱影響を防止することができる。さらに、外気遮断部材7aと排気管63の間にシール材7bを塗付することが好ましい。ここで、筐体7としては、耐熱性や耐蝕性あるいは堅牢性や熱膨張などを考慮すると、排気管63と同一の素材を用いることが好ましい。排気ガスの温度や性状が変化しても、排気管63から外れることをなくすることが可能となる。また、外気遮断部材7aおよびシール材7bは、シリコンゴムなどの耐熱性ゴムが好ましい。
【0046】
このように、光学系10が取り外し自在に装着されることによって直ちに測定ができ、かつ安定な測定が可能となる。また、排気管63に直接光学系10が取り付けられた状態において、光学調整などの準備作業を不要とし、高温・高ダスト条件下においても長期間安定的に試料F中の成分測定することができる。と同時に、測定が終了したときの搬出も容易に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上において、非分散赤外線吸収式測定法(NDIR)を用いた光学系について説明したが、本発明は、かかる光学系を利用できる装置であればこれに限定されるものではなく、可視光による吸収式測定法(例えば、試料F中のダストや濁度の測定など)や非分散紫外線吸収式測定法(NDUV)あるいはマイクロ波吸収式測定法(例えば、試料F中の水分測定など)などにも適用することが可能である。つまり、光学素子を、赤外線以外の可視光、紫外線あるいはマイクロ波などを使用することによって、各波長域の測定装置において同様の機能を確保することが可能となる。
【0048】
さらに、上記のような気体の測定だけでなく、液体あるいは混合流体等の成分測定にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本装置の第1構成例を示す説明図。
【図2】本装置の光源部を概略的に例示する説明図。
【図3】本装置のチョッパを概略的に例示する説明図。
【図4】本装置の光学素子またはチョッパの位置調節機構を概略的に例示する説明図。
【図5】本装置の他の構成例を示す説明図。
【図6】本装置を自動車の排気管に装着した状態を例示する説明図。
【図7】本装置の第5構成例を示す説明図。
【図8】従来技術に係る分析装置の構成を例示する説明図。
【図9】従来技術に係る分析装置の構成を例示する説明図。
【符号の説明】
【0050】
1 光源部
1a,2a マド部
1b 発光部
1d,2d レンズ部
1da 平面部
1e,2e 反射鏡面
2,21,22,23,24 光検出部
2b 検出器
4 処理部
5 光反射部
63 排気管
7 筐体
8a,8b 固定具
10 光学系
31,32 チョッパ
31a,32a 駆動部
31b ワイパー部
31c バネ板
33 軸体
F 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さを有する試料流路の側面の少なくともいずれかにマド部を有する光学素子を配設し、該試料流路での吸光量あるいは発光量を測定する直挿式光学測定装置であって、所定の周期で回転するチョッパを前記光学素子の光変調手段とするとともに、該チョッパによって前記マド部の清浄を行うことを特徴とする直挿式光学測定装置。
【請求項2】
前記光学素子が、光源部、光検出部、集光部あるいは光反射部のいずれかであって、光学素子またはチョッパの位置調節機構を有することを特徴とする請求項1記載の直挿式光学測定装置。
【請求項3】
前記集光部が光源部または/および光検出部の一部を構成するとともに、該光源部または/および光検出部のマド部、あるいは前記集光部がマド部である場合には該集光部、の清浄をチョッパによって行うことを特徴とする請求項1または2記載の直挿式光学測定装置。
【請求項4】
前記マド部が、サファイアあるいは光透過性セラミックスを基本とする組成物で構成され、前記チョッパが、少なくともマド部表面と接する部材として耐熱性プラスチック製あるいは金属製ブラシを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直挿式光学測定装置。
【請求項5】
前記光学素子、チョッパおよび位置調整機構を含む一体型の光学系ユニットを形成するとともに、該光学系ユニットが排出源の排出流路に直接装着可能な構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の直挿式光学測定装置。
【請求項6】
自動車の排気管の出口側近傍に直接装着および脱着可能な光学系ユニットを有する直挿式光学測定装置であって、前記排気管に対してその下流側の開口側から着脱自在に外装される光学系ユニットと、前記排気管と光学系ユニットの中間に挿入される外気遮断部材とからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直挿式光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−51709(P2008−51709A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229566(P2006−229566)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】