説明

直流ケーブル用終端接続部

【課題】高い電圧クラスの直流ケーブルにも適用でき、かつ現場施工時間を短縮するとともに、現場作業者に求められる技量の軽減を図った直流ケーブル用終端接続部を提供する。
【解決手段】直流ケーブル用終端接続部10は、絶縁体部120と半導電部121とを有し、ケーブル絶縁体との体積抵抗率比(絶縁体部の体積抵抗率/ケーブル絶縁体の体積抵抗率)が、0.01〜0.5の範囲である体積抵抗率を有し、高圧側先端部120aの厚さtが6mm以下であるストレスコーン12と、筒状の絶縁碍管11と、絶縁碍管11の下側開口を塞ぐ下部金具13と、絶縁碍管11の上側開口を塞ぐ上部金具14とを備え、直流ケーブル端末部1Aの接続において、ストレスコーン12をケーブル絶縁体1bに装着し、ストレスコーン12を含むケーブル端末部を絶縁碍管11、下部金具13及び上部金具14で覆い、絶縁碍管11内部に絶縁媒体15を封入してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流ケーブル用終端接続部に関し、特に、直流送電に用いられる架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルに好適な直流ケーブル用終端接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで国内では、直流送電用として架橋ポリエチレン(XLPE:Cross Linked Polyethylene)絶縁電力ケーブル(XLPEケーブル)が実線路に適用された事例はなく、直流用XLPEケーブルの終端接続部も実線路に適用された事例はない。
【0003】
一方、海外では、直流送電用としてXLPEケーブルを電圧150kV程度までの実線路に適用されている。図4は、そのXLPEケーブル用終端接続部(終端接続部)の一般的な構造を示す。電圧クラスや設置環境により異なるが、同図に示す終端接続部100は、150kV以下の直流送電用として屋内設備で適用されている一般的な乾式終端接続部であり、ひだ111a、111bを有する小径部111と大径部112とを備え、耐候性に優れたシリコーンゴムなどから形成された絶縁スリーブ110であって、絶縁スリーブ110の大径部112に半導電性ゴムからなる半導電体部113を収容したストレスコーン一体型ひだ付き絶縁スリーブである。
【0004】
この終端接続部100は、拡径した状態でXLPEケーブルによる直流ケーブル1のケーブル端末部1Aのケーブル絶縁体1b上に装着され、その後は絶縁油などを封入しない簡易絶縁構造を有するものである。この構造の終端接続部100は、ケーブル端末部1Aを曲がりのない真っ直ぐな状態にして装着しなければならず、ケーブル絶縁体1b上への装着が難しく装着作業性に問題があることから、約2m程度の長さが限界と考えられている。従って、電圧クラスが150kVを超える線路や屋外設備には適していない。なお、図4中、114はシール部、115は保護金具、2は導体引出棒、1aは導体である。
【0005】
乾式終端接続部の他の例としては、直流電圧印加時の有害な電荷の蓄積を抑制するため、または回路遮断操作時や極性反転操作時、サージ性電圧侵入時などの急激な電圧の変化により、内部絶縁体の一部に有害な高電界部が生じるのを抑制するため、露出させたケーブル絶縁体上にある種の抵抗層を装着して、抵抗層の一端をケーブル高電圧導体に接続し、他端を大地電位であるケーブル外部半導電層に接続して電界緩和層を構成し、その上にストレスコーンを取り付けた構造のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
更に、150kVを超える上位の電圧クラスの終端接続部としては、国内に開発事例があり、その終端接続部は、磁器碍管の内部にシリコーン油などの絶縁媒体を封入し、電界緩和を目的に適切なストレスコーンの形状になるよう絶縁紙又はポリエチレンなどからなる絶縁シート及び半導電性テープを、ケーブル絶縁体上に施工現場で巻き付けて形成した補強絶縁体と、前もって工場で組み立てられた絶縁紙及び金属箔の積層で構成されたコンデンサーコーンとの組合せからなる油浸式終端接続部が報告されている。
【0007】
この構造においては、ケーブル絶縁体の体積抵抗率に対して補強絶縁体の体積抵抗率が高い場合、直流印加時には電界分布が抵抗分担となることから、ストレスコーンの絶縁紙やポリエチレンシートの絶縁シートに高い電圧が加わり高電界が発生して絶縁破壊が起き易くなる。
【0008】
これを防止する目的で、ストレスコーンをケーブル絶縁体と同じXLPEで形成し同じ体積抵抗率のものを用いた構造のものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO00/74191A1号
【特許文献2】実公平1−35538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のケーブル絶縁体上に電界緩和層を設ける構造では、電界緩和層を形成する手段として、例えば抵抗層を構成する材料をテープ状に加工し、終端接続部を組み立てる際に現場でケーブル絶縁体上に巻きつける方法、あるいは前もって工場でケーブル絶縁体の外径より小さな内径を有するモールド絶縁チューブに成型し、そのモールド絶縁チューブを施工現場で拡げながらケーブル絶縁体上に装着する方法などが考えられる。しかし、いずれの方法においても終端接続部材料のコストアップとなり、かつ現場作業が増えて施工に時間がかかるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1の終端接続部を例えば電圧が200kVを超える超高圧ケーブル用終端接続部や、屋外設備に設置されて塩害などの汚損度合の高い地区で前述の乾式終端接続部に適用しようとすると、必要な耐電圧性能に応じた長大な表面漏洩距離を有するゴムモールド絶縁チューブが必要となり、これを拡径してケーブルに装着する作業は極めて困難となるため、実際の線路や設備に適用するのは難しい。
【0012】
一方、コンデンサーコーンを使用する油浸式終端接続部の場合、前述のとおり施工現場でケーブル絶縁体上に絶縁シートや半導電性テープを用いて適切な形状となるよう補強絶縁体を形成する、あるいは特許文献2で開示されているようなストレスコーンのみを事前にモールドにより成型し、更に施工現場でケーブル絶縁体上に装着して、その上にコンデンサーを取り付けるといった作業が必要である。
【0013】
このため、絶縁シートや半導電性テープの手巻き作業に熟練した高度なスキルと多大な作業時間を要する。また巻き付け部にトラップされたエアを抜くための絶縁油封入の前に内部の真空引き作業が必要となり、さらに作業時間が長くなる。あるいはコンデンサーコーンなどの部品製造に時間がかかりコストアップとなるといった問題がある。
【0014】
したがって、本発明の目的は、高い電圧クラスの直流ケーブルにも適用でき、かつ現場での施工時間を短縮するとともに、現場作業者に求められる高度な技量の軽減を図った直流ケーブル用終端接続部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するためには、従来から交流ケーブル用終端接続部として多くの使用実績がある差込式絶縁構造、すなわちストレスコーン、絶縁媒体、及び絶縁碍管を組合せた構造がシンプルであり、かつ施工時間を短縮することのできる簡易施工型の終端接続部を直流用XLPEケーブル等の直流ケーブルの終端接続部に適用できることを発明者らは見出した。
【0016】
しかし、交流XLPEケーブル用終端接続部の構造、構成材料をそのまま直流用XLPEケーブルに適用した場合、直流特有の現象である空間電荷の蓄積や急激な電圧変動によって内部絶縁体に部分的な高電界部が発生するという問題が懸念される。そこで使用するストレスコーンや絶縁媒体の選定材料、その特性、及びそれらの形状、構造を適切に規定することにより、安定した直流送電が可能となる直流ケーブル用終端接続部を提供するものである。
【0017】
すなわち、本発明の一態様は、上記目的を達成するため、絶縁体部と半導電体部とを有して一体に成型され、前記絶縁体部は、高圧側先端部と大径部との間に高圧側テーパ部を有し、ケーブル絶縁体との体積抵抗率比(絶縁体部の体積抵抗率/ケーブル絶縁体の体積抵抗率)が、0.01〜0.5の範囲である体積抵抗率を有し、高圧側先端部の厚さが6mm以下であるストレスコーンと、表面にひだを有する筒状の絶縁碍管と、前記絶縁碍管の下側開口を塞ぐ下部金具と、前記絶縁碍管の上側開口を塞ぐ上部金具とを備え、直流ケーブル端末部との接続において、前記ストレスコーンの高圧側先端部が上部金具側に配設するよう前記ストレスコーンを前記ケーブル絶縁体上に装着し、前記ストレスコーンを含む前記直流ケーブル端末部を前記絶縁碍管、下部金具及び上部金具で覆い、前記絶縁碍管の内部に絶縁媒体を封入してなることを特徴とする直流ケーブル用終端接続部を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高い電圧クラスの直流ケーブルにも適用でき、かつ現場での施工時間を短縮するとともに、現場作業者に求められる技量の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る直流ケーブル用終端接続部を直流XLPEケーブルに装着した状態を示す右半分の断面図である。
【図2】図2は、図1の本発明の第1の実施の形態に適用されるストレスコーンの構成例を示す上半分の断面図である。
【図3】図3は、図1の本発明の第2の実施の形態に適用されるストレスコーンの構成例を示す上半分の断面図である。
【図4】図4は、従来の交流XLPEケーブル用終端接続部の一般的な構造を示す上半分の断面図である。
【図5】図5は、本発明の直流ケーブル用終端接続部に用いられるストレスコーンの絶縁体部/ケーブル絶縁体の体積抵抗比率と接続部破壊電圧の関係を示した電気特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0021】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る直流ケーブル用終端接続部を直流XLPEケーブルに装着した状態を示す。
【0022】
この直流ケーブル用終端接続部10は、絶縁性を有する絶縁碍管11と、段剥処理された直流ケーブル端末部1A上に配設され、電界ストレスを緩和するストレスコーン12と、絶縁碍管11の下側開口を塞ぐ下部金具13と、絶縁碍管11の上側開口を塞ぐ上部金具14と、直流ケーブル端末部1Aを絶縁碍管11、下部金具13及び上部金具14で覆い、絶縁碍管11の内部に絶縁媒体15を封入する、いわゆる差込式絶縁構造を有するものである。
【0023】
絶縁碍管11は、碍管本体部11aと、碍管本体部11aの外側でその表面に一定の間隔で形成された複数のひだ11b、11cとを備える。絶縁碍管11は、絶縁性を有する材料、例えば、磁器、ゴム、プラスチック等から形成される。本実施の形態では、シリコーンゴムを用いた碍管本体部11aと複数のひだ11b、11cとが一体成型された単一構造である。なお、絶縁碍管11は、繊維強化プラスチック(FRP)からなる絶縁筒の表面にシリコーンゴム等の高分子絶縁材料からなる外皮となる複数のひだを被覆した複合構造の複合碍管でもよい。
【0024】
ストレスコーン12は、絶縁体部120と半導電体部121とが工場で一体にモールド成型により形成される。ストレスコーン12の詳細な構成は、後述する。
【0025】
下部金具13は、直流ケーブル1の直流ケーブル端末部1Aを挿通させるための開口13aが中央に形成されており、複数の支持碍子16を介して架台17に固定される。上部金具14は、シールドカバー18で覆われている。
【0026】
直流ケーブル1は、例えばXLPEケーブルであり、直流ケーブル端末部1Aが段剥処理によって導体1a、ケーブル絶縁体1b、外部半導電層1c、遮蔽層1dがケーブルシース1eから露出されている。
【0027】
(ストレスコーンの詳細)
図2に、図1の第1の実施の形態に適用されるストレスコーンの構成例を示す。ストレスコーン12の絶縁体部120に抵抗分担により高電圧が印加されると、絶縁体部120の電界値が許容値を上回り絶縁破壊を引き起こす原因となり得る。このため、この絶縁体部120の体積抵抗率をケーブル絶縁体1bのそれよりも、常に相対的に小さく抑えておくことが重要である。また、発明者らの検討により、ストレスコーンの絶縁体部の体積抵抗率とケーブル絶縁体の体積抵抗率が離れすぎても接続部全体としての破壊電圧に悪影響を及ぼすことが分かった。この理由は、ケーブル絶縁体とストレスコーンの絶縁体部との界面に蓄積する空間電荷によるものと考えられる。体積抵抗率を常に相対的に小さく抑え、空間電荷を蓄積させないというこれらの条件を満たすため、絶縁体部120を構成する材料の体積抵抗率は、ケーブル絶縁体1bの体積抵抗率に対する体積抵抗率比(絶縁体部120の体積抵抗率/ケーブル絶縁体部1bの体積抵抗率)が、0.01〜0.5の範囲であることが望ましいということを明らかとした。なお、ケーブル絶縁体とストレスコーンの絶縁体部の体積抵抗率は、いずれも温度の影響を受けるため、常温〜90℃の範囲で、上記関係が維持される絶縁材料を選定することが重要である。
【0028】
絶縁体部120の体積抵抗率は、ケーブル絶縁体1bとの相対的な関係であるため、個々のケースで必要な体積抵抗率は異なるが、本発明者らが良好な特性を確認したケースでは、絶縁体部120は、ケーブル絶縁体1bの体積抵抗率に対する体積抵抗率比(絶縁体部の体積抵抗率/ケーブル絶縁体の体積抵抗率)が、0.01〜0.5の範囲である体積抵抗率を有すること、例えば、ケーブル絶縁体1bの体積抵抗率を1×1015Ωcmであるとき、絶縁体部120の体積抵抗率が1×1013〜5×1014Ωcmを有することが有効であった。
【0029】
これにより、直流電圧印加時に、ストレスコーン12での電圧分担は軽減され、大半がケーブル絶縁体1bで分担される。
【0030】
一方、ケーブル絶縁体との体積抵抗率差が2桁以下となることで、ケーブル絶縁体/ストレスコーンの絶縁体部との界面の空間電荷の蓄積特性が破壊電圧に悪影響を及ぼすことがなくなる。
【0031】
これらの条件を満たす材料としてエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)を用いて成型したストレスコーンにて、試料1〜試料5により電気試験を実施した。その結果、表1および図5に示すような結果が得られた。この結果、ケーブル絶縁体とストレスコーンの絶縁体部の体積抵抗率比が0.01〜0.5の試料2、試料3および試料4が破壊電圧740kV以上という良好な結果が得られた。
【0032】
なお、試料1については、ケーブル絶縁体との体積抵抗率の差が大きいことによる空間電荷の蓄積等により本発明の実施形態の試料2、3、4よりも650kVと電気性能が低下した。また、試料5についてはストレスコーンの絶縁体部への電圧分担が大きくなったため、破壊電圧が540kVと低下したものと考えられる。
【0033】
【表1】

【0034】
なお、絶縁体部120は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)の他に、例えばシリコーンゴムなどの合成エラストマーから成型することができる。
【0035】
また、絶縁体部120は、高圧側先端部120aと、低圧側基端部120bと、大径部120cと、高圧側先端部120aと大径部120cとの間に形成された高圧側テーパ部120dと、低圧側基端部120bと大径部120cとの間に形成された低圧側テーパ部120eとを有する。なお、絶縁体部120は、高圧側先端部120aが直流ケーブル端末部1Aとの接続において、上部金具14側に配設されるよう図1に示した上方向の状態でケーブル絶縁体1b上に装着される。
【0036】
低圧側テーパ部120eに半導電体部121が収容されるよう一体に成型されており、この半導電体部121は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム (EPDM)やシリコーンゴム等の半導電性ゴムからなる。
【0037】
(ストレスコーンの高圧側先端部の厚さの検討)
高圧側先端部120aには、ストレスコーン12を装着した状態において、ケーブル絶縁体1b、絶縁媒体15及び高圧側テーパ部120dのストレスコーン12の3種類からなる絶縁材料による境界部が形成される。これらの3種類の絶縁材料による境界部(以下、「3重点部」という。)が、それぞれの選定材料の材料特性に基づいた抵抗値の違いから、直流電圧印加時は、この3重点部あるいはその近傍に空間電荷が蓄積し、抵抗分担で決まるように電界分布を形成する。
【0038】
また、直流ケーブル1の高電位部である導体1aから注入された電荷が、接地されたストレスコーン12の半導電体部121の方向に絶縁媒体15中を移動する。ストレスコーン12の絶縁体部120の高圧側先端部120aの厚さtが厚く、面積が大きければ大きいほど電荷移動の妨げとなる壁が形成され、3重点部あるいはその近傍に電荷がトラップされて蓄積する。
【0039】
これらの蓄積した電荷は、回路の開閉操作や極性反転、サージ電圧の侵入時などの急激な電圧変動時には電界強調をもたらし、3重点部で絶縁破壊が起き易くなる。このように蓄積すると悪影響を及ぼす電荷をスムーズに移動させるために、ストレスコーン12の高圧側先端部120aの厚さtを6mm以下と薄くすることが有効である。これにより、直流電圧印加時に懸念される電荷の蓄積を抑制することができる。
【0040】
ただし、高圧側先端部120aの厚さtを極端に薄くした場合、内径を拡げてケーブル絶縁体1b上に装着すると、ストレスコーン12には常に引っ張り応力が働いていることから、その装着時あるいは運転中に薄肉部に機械的な割れが発生し、電気的に致命傷となる可能性もあることから、最小厚さは設計事項とし、最大厚さのみを規定するものである。
【0041】
なお、本発明者らの実験によると、高圧側先端部120aの厚さtが20mmのストレスコーンを使用して逆極性サージ電圧を印加したところ、3重点部近傍を起点とした内部絶縁破壊が発生した。また、高圧側先端部120aの厚さtを6mm以下にしたところ、絶縁破壊電圧は上昇したことを確認した。250kV直流ケーブルでの試験結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
(絶縁媒体の材料の検討)
絶縁媒体15は、使用される温度:常温〜90℃において、ケーブル絶縁体1bよりも小さい体積抵抗率を有する液状の絶縁媒体、例えばシリコーン油などを用いることができる。絶縁媒体15としてシリコーン油を用いることにより、ケーブル絶縁体1bへの電圧分担比率が上り、前述の3重点部への空間電荷蓄積を低減するのに有効である。逆にSFガスのような高い抵抗率を有する気体状の絶縁媒体を用いると、ストレスコーン12の周囲に高抵抗領域が形成されることから、ストレスコーン12の接地電極である半導電体部121近傍に電界が集中して内部絶縁破壊を引き起こし易くなる。
【0044】
絶縁碍管11の内部に体積抵抗率の低い(低抵抗)の絶縁媒体15を封入することにより、交流課電時にはストレスコーン12周囲の絶縁碍管11の外表面に電界が集中する差込式終端接続部であっても、直流印加時には絶縁碍管11の外表面の電界分布が高電位部の上部金具14から低電圧部である下部金具13に向けて比較的なだらかな分布となり、ストレスコーン12周囲の絶縁碍管11の外表面の局部集中による低電圧フラッシュオーバーを防止する効果がある。
【0045】
(直流ケーブル用終端接続部の形成方法)
次に、直流ケーブル用終端接続部10の形成方法の一例について説明する。
【0046】
まず、直流ケーブル端末部1Aの段剥処理を行い、ケーブルシース1eから導体1a、ケーブル絶縁体1b、外部半導電層1c及び遮蔽層1dを露出させる。次に、直流ケーブル1の導体1aに導体引出棒2を圧縮等により接続する。
【0047】
次に、直流ケーブル端末部1Aのケーブルシース1eから露出させたケーブル絶縁体1bと外部半導電層1cとに跨り、それらを取り囲むようにストレスコーン12を主たる補強絶縁体として装着し、更にしかるべく遮蔽処理、下部金具13の取り付け、絶縁碍管11を被せ、上部金具14を取り付けて直流ケーブル端末部1Aを密封するように覆い、絶縁碍管11の内部に絶縁媒体15としてシリコーン油を封入する。このようにして直流ケーブル用終端接続部10が形成される。
【0048】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態の直流ケーブル用終端接続部によれば、以下の効果を奏する。
ストレスコーン12の体積抵抗率をケーブル絶縁体1bのそれよりも数桁小さな絶縁特性を有する絶縁材料とし、絶縁体部120の高圧側先端部120aの厚さtを6mm以下とし、更に高圧側先端部120aにケーブル絶縁体1b、絶縁媒体15及び高圧側テーパ部120dのストレスコーン12の3種類の絶縁材料からなる3重点部を形成したことから、
(1)3重点部での電荷蓄積が低減できるので破壊電圧を上昇させることが可能となり、高い電圧クラスの直流ケーブルにも適用できる。
(2)絶縁シート、半導電性テープ等の手巻き作業を省略でき、長大な絶縁スリーブや絶縁チューブ状の抵抗層をケーブル絶縁体1b上に拡径しながら装着するといった作業を不要とし、これにより、直流ケーブル用終端接続部の現場での施工時間を短縮できる。
(3)また。現場作業者に求められる技量の軽減を図ることができる。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。前述の3重点部への電荷蓄積を低減する構造として、ケーブル絶縁体1b、ストレスコーン12の絶縁体部120、及び絶縁媒体15による境界部をケーブル絶縁体1bの体積抵抗率より小さい体積抵抗率を有する絶縁紙やポリエチレンシートなどの絶縁シートを巻き付けて低抵抗層すなわち導電率の高い層を形成し、導体1aから注入された電荷が局部に滞留することなく接地電極に向けてスムーズに移動できる構造とすることも有効である。その構造を図3に示す。
【0050】
図3は、図1の本発明の第2の実施の形態に適用されるストレスコーンの構成例を示す。図3に示すストレスコーンは、図2に示したのと同様に、一体に形成された絶縁体部120及び半導電体部121を有し、絶縁体部120の高圧側、すなわちケーブル絶縁体1b、並びに絶縁体部120の高圧側先端部120a、大径部120c及び高圧側テーパ部120dを覆うように、低抵抗絶縁シート122を巻き付けて複合補強絶縁体を構成したものである。
【0051】
低抵抗絶縁シート122は、例えばケーブル絶縁体1bの通電時の膨張収縮の挙動に追従し、亀裂やしわなどが生じないようケーブル絶縁体1bの膨張係数とほぼ同レベルの膨張係数を有するポリエチレンなどのプラスチックや、直流ケーブル1の膨張に追従できる高い伸びを有する高伸度絶縁紙などが適している。本実施の形態では、例えば幅10cm程度の等幅のポリエチレンシートをストレスコーン12の形状に沿って巻き上げて形成する。
【0052】
なお、低抵抗絶縁シート122は、絶縁体部120の大径部120cに巻き付けずに、高圧側先端部120aと高圧側テーパ部120dとの全部又は一部に巻き付けてもよい。低抵抗絶縁シート122を高圧側先端部120a及び高圧側テーパ部120dの一部に巻き付ける場合は、その巻き付けた外径は、絶縁体部120の大径部120cの外径と等しくてもよい、あるいは大径部120cの外径よりも厚く巻き付けてもよい。また、低抵抗絶縁シート122を絶縁体部120の高圧側先端部120a、高圧側テーパ部120d及び大径部120cだけでなく、低圧側テーパ部120e更には低圧側基端部120bに巻き付けてもよい。さらに、低抵抗絶縁シート122の直流ケーブル1に対する長手方向の巻き付け長さは、ストレスコーン12から露出したケーブル絶縁体1b全長に渡る長さでもよい。
【0053】
第2の実施の形態の直流ケーブル用終端接続部によれば、上記した第1の実施の形態の効果と同様の効果を奏する。
【0054】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の要旨を変更しない範囲内で種々に変形実施が可能である。また、上記第2の実施の形態では、絶縁媒体として絶縁油を使用した場合について説明したが、本発明は絶縁ガスを使用する場合に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 直流ケーブル
1A 直流ケーブル端末部
1a 導体
1b ケーブル絶縁体
1c 外部半導電層
1d 遮蔽層
1e ケーブルシース
2 導体引出棒
10 直流ケーブル用終端接続部
11 碍管
11a 碍管本体部
11b、11c ひだ
12 ストレスコーン
13 下部金具
13a 開口
14 上部金具
15 絶縁媒体
16 支持碍子
17 架台
18 シールドカバー
100 終端接続部
110 絶縁スリーブ
111 小径部
111a、111b ひだ
112 大径部
113 半導電体部
120 絶縁体部
120a 高圧側先端部
120b 低圧側基端部
120c 大径部
120d 高圧側テーパ部
120e 低圧側テーパ部
121 半導電体部
122 低抵抗絶縁シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体部と半導電体部とを有して一体に成型され、前記絶縁体部は、高圧側先端部と大径部との間に高圧側テーパ部を有し、ケーブル絶縁体との体積抵抗率比(絶縁体部の体積抵抗率/ケーブル絶縁体の体積抵抗率)が、0.01〜0.5の範囲である体積抵抗率を有し、高圧側先端部の厚さが6mm以下であるストレスコーンと、
表面にひだを有する筒状の絶縁碍管と、
前記絶縁碍管の下側開口を塞ぐ下部金具と、
前記絶縁碍管の上側開口を塞ぐ上部金具とを備え、
直流ケーブル端末部との接続において、前記ストレスコーンの高圧側先端部が上部金具側に配設するよう前記ストレスコーンを前記ケーブル絶縁体上に装着し、前記ストレスコーンを含む前記直流ケーブル端末部を前記絶縁碍管、下部金具及び上部金具で覆い、前記絶縁碍管の内部に絶縁媒体を封入してなることを特徴とする直流ケーブル用終端接続部。
【請求項2】
前記ストレスコーンは、合成エラストマーから形成されたことを特徴とする請求項1記載の直流ケーブル用終端接続部。
【請求項3】
前記ストレスコーンの絶縁体部の体積抵抗率は、常温〜90℃において、1013Ωcm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の直流ケーブル用終端接続部。
【請求項4】
前記絶縁媒体は、温度:常温〜90℃において、前記ケーブル絶縁体よりも小さい体積抵抗率を有する液状の絶縁媒体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の直流ケーブル用終端接続部。
【請求項5】
前記絶縁碍管は、磁器又はシリコーンゴムから形成された単一構造又は複合構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の直流ケーブル用終端接続部。
【請求項6】
前記ストレスコーンの絶縁体部は、直流ケーブル端末部との接続において、前記高圧側先端部が上部金具側に配設するよう前記ケーブル絶縁体上に装着され、前記ストレスコーンの絶縁体部の前記大径部、前記高圧側テーパ部、前記高圧側先端部、ならびに更に高圧側に向けて露出された前記ケーブル絶縁体の部分を覆うように、前記ケーブル絶縁体の体積抵抗率よりも小さい体積抵抗率を有する絶縁シートを巻き付けて低抵抗層を形成したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の直流ケーブル用終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5500(P2013−5500A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131659(P2011−131659)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(501304803)株式会社ジェイ・パワーシステムズ (89)
【Fターム(参考)】