説明

直流反応性スパッタ装置

【課題】対向して配置されるターゲットを有するスパッタ装置において、その対向するターゲットの間に形成される空間内への反応ガスの流入防止を図ること。
【解決手段】本発明は、対向配置されるターゲット5、6を備えるスパッタ源1と、スパッタ源1と連通され処理対象である基板Wが収容される成膜室2と、を備えている。スパッタ源1の開口部3には、成膜室2の反応ガスがスパッタ源1内へ侵入するのを防止する括れ部20が形成されている。括れ部20は、開口部3の対向する内壁31、32からそれぞれ突出する突出部22、24により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に膜を形成する直流反応性スパッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置は、ターゲットに金属または導電性化合物等を使用し、直流電圧により放電を発生させてスパッタリングを行うため、装置全体が簡易で成膜レートが早いという利点がある。しかし、チャンバ内に酸素などの反応性ガスを導入して気相中や基板表面においてスパッタ粒子を酸化させて誘電体薄膜(酸化膜)を形成するため、金属ターゲットの表面にも酸化膜が形成され易い。
【0003】
そこで、このような金属ターゲットの表面への酸化膜の形成を防止し、金属ターゲット表面の維持を図る技術として、例えば特許文献1に記載の発明が知られている。
特許文献1に記載の発明は、少なくとも不活性ガスと酸化性ガスとを含む混合ガス中において、金属よりなるターゲットを用いた反応性スパッタリング法により基板上に金属酸化物膜を形成する方法である。そして、スパッタリング法として対向ターゲットマグネトロン方式を採用し、ターゲット表面における不活性ガスの濃度が基板表面における不活性ガスの濃度より高い状態でスパッタリングを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−7360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の発明は、対向して配置される2つのターゲットを有し、一方のターゲットの表面で発生したスパッタ粒子(ターゲット粒子)は、2つのターゲットの間の空間を飛行して他方のターゲットの表面に堆積するので、このスパッタ粒子などが反応ガスと反応することを防止する必要がある。
その防止には、2つのターゲットの間の空間内に不活性ガスを充満させれば良いが、2つのターゲットの間の距離が長くてその空間が大きな場合には、その空間内に反応ガスが流入するのを阻止することが困難である。
そこで、本発明の幾つかの態様の目的は、対向して配置されるターゲットを有するスパッタ装置において、その対向するターゲットの間に形成される空間内への反応ガスの流入防止を図るようにした直流反応性スパッタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、本発明は、以下のように構成される。
本発明の態様の1つは、対向配置された第1および第2のターゲットを内壁に備え、前記第1および第2のターゲットが対向する空間の側方に開口部を有するスパッタ源と、前記スパッタ源の開口部と連通する成膜室と、前記スパッタ源内にスパッタガスを供給する第1のガス供給手段と、前記成膜室内に反応ガスを供給する第2のガス供給手段と、を備え、前記開口部は、開口の幅が狭められた括れ部を有する。
このような構成によれば、括れ部が、成膜室内の反応ガスがスパッタ源の対向するターゲットの間に形成される空間内に侵入するのを防止できる。
【0007】
また、前記括れ部は、前記スパッタ源の内壁から突出する突出部を有し、前記突出部は、前記第1のターゲットの有効領域における前記開口部側の端部から前記開口部の端部を経由して前記成膜室に向かう第1の経路と、前記第2のターゲットの有効領域における前記開口部とは反対側の端部から前記開口部の端部を経由して前記成膜室に向かう第2の経路と、前記スパッタ源の内壁と、で囲まれた設置領域内に設置されている。
このような構成によれば、反応ガスの侵入防止を確保しつつ、ターゲットの有効領域から放出されるターゲット粒子(スパッタ粒子)を成膜室内の基板の成膜作成に有効に寄与させることができる。
【0008】
さらに、前記突出部は、第1の傾斜部と第2の傾斜部とを有し、前記第1の傾斜部は、前記第1の経路と平行に設けられ、前記第2の傾斜部は、前記第2の経路と平行に設けられている。
また、前記突出部は、前記設置領域の前記ターゲット側および前記成膜室側の各端部と間隔を開けて設置されている。
このような構成によれば、反応ガスの侵入防止ができ、ターゲットからのターゲット粒子の成膜作成の寄与が図れ、かつ、スパッタガスのスパッタ源内への溜まり易さを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の直流反応性スパッタ装置の第1実施形態の構成を示す概略断面図である。
【図2】括れ部を形成する突出部とその近傍の正面図である。
【図3】突出部の配置領域を説明する図である。
【図4】突出部の形状、配置位置などを説明する図である。
【図5】突出部のサイズ、配置位置の具体例を示す図である。
【図6】本発明の直流反応性スパッタ装置の第2実施形態の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について、図1を参照して説明する。
この第1実施形態に係る直流反応性スパッタ装置は、図1に示すように、真空雰囲気内に対向配置されたターゲット5、6上にプラズマを生成し、この生成されたプラズマによってターゲット粒子(スパッタ粒子)をターゲット5、6から放出させ、この放出させたターゲット粒子を基板W上に付着および堆積させる直流反応性スパッタ法を用いたものである。
【0011】
次に、この第1実施形態に係る直流反応性スパッタ装置の具体的な構成について説明する。
図1に示すように、第1実施形態は、対向配置されるターゲット5、6を備えるスパッタ源1と、スパッタ源1と連通され処理対象である基板Wが収容される成膜室2と、を備えている。
スパッタ源1は、図1に示すように、上部側に開口部3を有するとともに、筐体4、ターゲット5、6、電極7、8、バッキングプレート9、10、防着板11などを備えている。
【0012】
スパッタ源1の開口部3は、成膜室2と連通するために、成膜室2の一部を開口した開口部に接続されている。筐体4は、対向する左右の側壁12、13を有する。側壁12、13には、電極7、8に支持されたバッキングプレート9、10が対向するように配置されている。バッキングプレート9、10上には、ターゲット5、6が配置されている。これにより、筐体4内には、ターゲット5、6が、成膜室2内の基板Wの被成膜面に対して垂直方向に配置され、かつ互いに対向して配置されている。
【0013】
電極7、8内には、ターゲット5、6の各表面に磁界を発生させる磁石(図示せず)が配置されている。また、ターゲット5、6(電極7、8)には直流電源(図示せず)がそれぞれ接続され、各直流電源から電極7、8を介してターゲット5、6に電圧が印加され、ターゲット5、6の表面上にプラズマを発生するようになっている。
筐体4の底部には、スパッタ源1(筐体4)内へスパッタガスを導入するためのスパッタガス導入口14が設けられている。スパッタガス導入口14は、スパッタ源1内にスパッタガスを供給するスパッタガス供給手段15と接続されている。また、筐体4の底部には、その底部から所定の間隔をおいて防着板11が配置され、これによりスパッタガス導入口14から筐体4内に導入されたスパッタガスがターゲット5、6の表面に案内されるようになっている。
【0014】
成膜室2の一部にはスパッタ源1と接続するための開口部が設けられ、その開口部がスパッタ源1の開口部3と接続されている。成膜室2内には、基板Wを搬送する基板搬送装置16が成膜室2の上流側(図1の左側)から下流側(図1の右側)に向けて配置されている。これにより、基板搬送装置16は、矢印aで示すように、成膜室2の上流側から下流側に向けて基板Wを搬送するようになっている。
成膜室2とスパッタ源1とが接続される部分であって、成膜室2の上流側に、成膜室2内へ反応ガスを導入する反応ガス導入路17が設けられている。反応ガス導入路17の入口側は、成膜室2内へ反応ガスを供給する反応ガス供給手段18と接続されている。
【0015】
反応ガス導入路17は、図1に示すように、入口側の開口の断面積が出口側よりも狭く一定であり、出口側の開口の断面積が成膜室内2に向けて徐々に大きくなるように形成されている。また、反応ガス導入路17の出口は、基板Wの搬送方向と直交する方向の長さに相当する長さがあり、その出口から吹き出す反応ガスが基板Wの被成膜面に当たるようになっている。
【0016】
また、成膜室2とスパッタ源1とが接続される部分であって、成膜室2の下流側には、反応ガス排気口19が設けられている。反応ガス排気口19の開口は、反応ガス導入路17の出口側の開口とほぼ対向するようになっている。また、反応ガス排気口19は、図示しない排気手段に接続されている。
なお、反応ガス排気口19の他に、成膜室2の下流側には図示しない排気口を追加し、その排気口に排気手段を接続させるようにしても良い。このようにすれば、成膜室2内のガスの流れを効果的に制御できる。
【0017】
スパッタ源1の開口部3は、成膜室2の反応ガスがスパッタ源1内へ侵入(流入)するのを防止するために、開口の幅が狭められまたは開口の大きさが絞られた括れ部20有している。具体的には、括れ部20は、その両端が膨れて中央部が細くなっている。言い換えると、括れ部20は、図1に示すようにスパッタ源1の深さ方向に向けて形成され、その深さ方向と直交する方向の断面積が両端部側で最大であり、中央部側に向けて徐々に小さくなっている。
【0018】
括れ部20は、開口部3の対向する内壁31、32からそれぞれ突出する突出部22、24により形成されている。突出部22は、傾斜部221、222を有している。同様に、突出部24は、傾斜部241、242を有している。
傾斜部221は、突出部22の中央側から成膜室1側に向けて低く傾斜するようになっている。傾斜部222は、突出部22の中央側から成膜室1とは反対側に向けて低く傾斜するようになっている。突出部24の傾斜部241および傾斜部242も同様に傾斜している。
ここで、突出部22、24は、開口部3などの内壁にスパッタ膜が付着するのを防止する防着板としても機能する。
【0019】
次に、第1実施形態により基板Wの被成膜面に成膜を形成する方法について、図1を参照して説明する。
まず、スパッタガス供給手段15により、スパッタ源1(筐体4)内にスパッタガスとしてアルゴンガスを導入しながら、ターゲット5、6に直流電力を供給することで、ターゲット5、6に挟まれる空間にプラズマを発生させる。具体的には、ターゲット5、6の表面にそれぞれ磁場を発生させ、プラズマ雰囲気中のアルゴンイオンをターゲット5、6に衝突させることで、ターゲット5、6から成膜材料(シリコン)をスパッタ粒子として叩き出す。
【0020】
このように、スパッタ源1内にアルゴンガスを導入してターゲット5、6の空間にプラズマを発生させたのち、反応ガス供給手段18から成膜室2内に反応ガスとして酸素ガスが導入させる。また、酸素ガスの導入とともに、基板搬送装置16により基板Wの搬送を開始し、基板Wが反応ガス導入路17の出口側の近傍に到達すると、反応ガス導入路17の出口から出る酸素ガスが基板Wの被成膜面に当たる。
【0021】
そして、スパッタ源1のターゲット5、6から成膜室2内に飛来したスパッタ粒子と、成膜室2内に導入される酸素ガスとが、基板Wの被成膜面上で反応することで、金属酸化物の薄膜が基板Wの被成膜面上に形成される。
この第1実施形態では、スパッタ源1の開口部3に、突出部22、24からなる括れ部20を設けるようにした。このため、成膜室2内に比べてスパッタ源1内の方が圧力が高くなり、成膜室2側からスパッタ源1側に侵入(流入)しようとする反応ガスを押し戻すことになる。したがって、スパッタ源1内に反応ガスが侵入することにより、スパッタ源1内に金属化合物が生じるのを抑制できる。
一方、成膜室2とスパッタ源1の接続部分の空間内の反応ガスはスパッタ粒子と反応して基板Wの被成膜面上への成膜に消費され、消費されない未反応ガスはそのまま反応ガス排気口19などから排気される。
【0022】
次に、括れ部20を形成する突出部22、24について説明する。
括れ部20を形成する突出部22、24は、成膜室2内からスパッタ源1内への反応ガスの流入防止のためであるが、スパッタ源1のカソード5、6からのスパッタ粒子の基板Wに対する成膜への寄与も考慮する必要がある。
そこで、成膜への寄与も考慮した場合の突出部22、24の配置領域や形状を決定する具体的な手順について、図1〜図4を参照して説明する。
まず、突出部22、24の開口部3内における配置領域について、図1および図3を参照して説明する。
ターゲット5、6の表面のそれぞれの有効範囲内から放出されるターゲット粒子のうち、成膜室2内の基板Wの成膜への寄与が最も大きいのは、図3に示すように、ターゲット5、6のそれぞれの有効範囲内のうち成膜室2から一番近い位置である上端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで直進して飛行する経路41、42のものである。
【0023】
一方、ターゲット5、6の表面のそれぞれの有効範囲内から放出されるターゲット粒子のうち、成膜室2内の基板Wの成膜への寄与が最も小さいのは、ターゲット5、6のそれぞれの有効範囲内のうち成膜室2から一番遠い位置である下端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで直進して飛行する経路43、44のものである。
そこで、突出部22は、図3に示すように、ターゲット5の有効領域の上端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで直進する経路41と、ターゲット6の有効領域の下端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで直進する経路44と、スパッタ源1の内壁31と、で囲まれた設置領域51内に設置するようにした。
【0024】
また、突出部24は、図3に示すように、ターゲット6の有効領域の上端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで直進する経路42と、ターゲット5の有効領域の下端部から放出され、開口部3の開口端部を経由して成膜室2内まで飛行する経路43と、スパッタ源1の内壁32と、で囲まれた設置領域52内に設置するようにした。
【0025】
次に、突出部22、24の形状などの一例について、図4を参照して説明する。
突出部22は、例えば図4に示すように、開口部3の内壁31から突出するとともに、設置領域51内に配置され、傾斜部221と傾斜部222とを有するようにした。そして、傾斜部221は経路44に沿って平行に設け、傾斜部222は経路41に沿って平行に設けるようにした。さらに、突出部22(傾斜部221、222)は、開口部3の内壁31の上下の両端部を除く部分に設けるようにした。
【0026】
同様に、突出部24は、図4に示すように、開口部3の内壁32から突出するとともに、設置領域52内に配置され、傾斜部241と傾斜部242とを有するようにした。そして、傾斜部241、242は、経路43、42に沿って平行に設けるようにした。さらに、突出部24(傾斜部241、242)は、開口部3の内壁32の上下の両端部を除く部分に設けるようにした。
【0027】
ここで、上記のように傾斜部221、222は、経路44、41に沿って平行に設けるようにしたが、経路44、41に沿うように設ければ良く、必ずしも平行に設ける必要はない。この点は傾斜部241、242についても同様である。
ところで、設置領域51、52内に配置可能な突出部22、24は、図4の実線で示す場合の他に、例えば破線で示す突出部22a、24a、あるいは破線で示す突出部22b、24bが考えられる。
【0028】
しかし、突出部22a、24aの場合には、突出部22、24に比べてサイズが小さすぎる上に、その配置位置がスパッタ源1側から離れすぎ、かつ、成膜室2側に近寄りすぎている。このため、成膜室2内からスパッタ源1内への反応ガスの流入防止が図れない上に、スパッタ源1内にスパッタガスが溜まりにくくなる。
また、突出部22b、24bの場合には、突出部22、24に比べて配置位置が僅かに異なる上に、突出部22、24に比べてサイズが若干小さくなる。このため、突出部22、24に比べて、成膜室2内からスパッタ源1内への反応ガスの流入防止の機能が低下する上に、スパッタ源1内へのスパッタガスの溜まり易さも低下する。
【0029】
そこで、この例では、突出部22、24の形状については上記の条件を満たし、突出部22、24のサイズや配置位置について図4の実線で示すようにした。
このため、このような構成の突出部22、24によれば、成膜室2内からスパッタ源1内への反応ガスの流入防止ができる上に、スパッタ源1のターゲット5、6からのスパッタ粒子は基板Wに対する成膜に寄与できる。また、スパッタ源1内にスパッタガスが溜まり易くなる。
【0030】
次に、突出部22、24のサイズおよび配置位置などの具体的な数値例について、図5を参照して説明する。
この具体例は、図5に示すように、ターゲット5、6の配置間隔L1が100mm、開口部3の長さL2が50〜100mmの場合である。
この場合には、突出部22、24の各サイズは、長さL3が30〜40mm、高さH1が10mm程度である。また、突出部22、24と成膜室2との間のそれぞれの距離L4は10mm以上である。
【0031】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について、図6を参照して説明する。
この第2実施形態に係る直流反応性スパッタ装置は、図1に示す第1実施形態の構成を基本とし、その一部に後述の構成要素を追加したものである。
このため、第1実施形態と同一の構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、追加の構成要素について説明する。
すなわち、第2実施形態では、成膜室2とスパッタ源1とが接続される部分であって、成膜室2の下流側に、反応ガス導入路17から導入された反応ガスのうち未反応ガスを流れ込ませる未反応ガス流入空間60を設けるようにした。未反応ガス流入空間60を構成する一部であって、その空間60の下流側には、未反応ガスを外部に排出させる排出口19が設けられている。排気口19は、図示しない排気手段に接続されている。
【0032】
また、成膜室2とスパッタ源1とが接続される部分であって、基板Wの成膜終了位置側の位置に、基板Wへの成膜の形成を制限する成膜制限部材70を設けるようにした。そして、成膜制限部材70は、基板Wの被成膜面と対向するように配置させている。
このような構成からなる第2実施形態では、第1実施形態と同様に、スパッタ源1の開口部3に、突出部22、24からなる括れ部20を設けるようにした。
このため、成膜室2内に比べてスパッタ源1内の方が圧力が高くなり、成膜室2側からスパッタ源1側に侵入しようとする反応ガスを押し戻すことになる。したがって、スパッタ源1内に反応ガスが侵入することにより、スパッタ源1内に金属化合物が生じるのを抑制できる。
【0033】
一方、成膜室2とスパッタ源1の接続部分の空間内の反応ガスはスパッタ粒子と反応して基板Wの被成膜面上への成膜に消費され、消費されない未反応ガスはそのまま反応ガス排気口19などから排気される。
未反応ガスが成膜室2とスパッタ源1の接続部分の空間内に溜まっている場合には、その未反応ガスがスパッタ源1内に侵入してくる危険がある。しかし、その接続部分の下流側に未反応ガス流入空間60を設けているので、この空間60を排気することにより、未反応ガスはスパッタ源1内に向かうことなく排気口19から速やかに排気される。
【0034】
また、第2実施形態は、基板搬送装置16により基板Wを搬送しながら成膜するスキャン方式であり、基板Wの成膜開始位置側から成膜室2内の基板Wに向けて反応ガスが導入される。このため、基板Wの成膜が初期段階では反応ガスと未反応のまま成膜されるスパッタ粒子(金属粒子)は存在しない。
しかし、成膜が進んで基板Wが成膜終了位置側にくるときには反応ガスの大半はスパッタ粒子と反応して消費されるので、反応ガスとの反応が不十分なスパッタ粒子が基板Wに堆積するおそれがある。そこで、基板Wの成膜終了位置側に成膜制限部材70を設けるようにしたので、反応ガスとの反応が不十分なスパッタ粒子が基板Wに堆積するのを防止できる。
【符号の説明】
【0035】
W・・・基板、1・・・スパッタ源、2・・・成膜室、3・・・開口部、4・・・筐体、5、6・・・ターゲット、7、8・・・電極、9、10・・・バッキングプレート、11・・・防着板、12、13・・・側壁、14・・・スパッタガス導入口、15・・・スパッタガス供給手段、16・・・基板搬送装置、17・・・反応ガス導入路、18・・・反応ガス供給手段、19・・・反応ガス排気口、20・・・括れ部、22、24・・・突出部、31、32・・・内壁、41〜44・・・経路、51、52・・・設置領域、221、222、241、242・・・傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された第1および第2のターゲットを内壁に備え、前記第1および第2のターゲットが対向する空間の側方に開口部を有するスパッタ源と、
前記スパッタ源の開口部と連通する成膜室と、
前記スパッタ源内にスパッタガスを供給する第1のガス供給手段と、
前記成膜室内に反応ガスを供給する第2のガス供給手段と、を備え、
前記開口部は、開口の幅が狭められた括れ部を有することを特徴とする直流反応性スパッタ装置。
【請求項2】
前記括れ部は、前記スパッタ源の内壁から突出する突出部を有し、
前記突出部は、
前記第1のターゲットの有効領域における前記開口部側の端部から前記開口部の端部を経由して前記成膜室に向かう第1の経路と、
前記第2のターゲットの有効領域における前記開口部とは反対側の端部から前記開口部の端部を経由して前記成膜室に向かう第2の経路と、
前記スパッタ源の内壁と、
で囲まれた設置領域内に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の直流反応性スパッタ装置。
【請求項3】
前記突出部は、第1の傾斜部と第2の傾斜部とを有し、
前記第1の傾斜部は、前記第1の経路と平行に設けられ、
前記第2の傾斜部は、前記第2の経路と平行に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の直流反応性スパッタ装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記設置領域の前記ターゲット側および前記成膜室側の各端部と間隔を開けて設置されていることを特徴とする請求項3に記載の直流反応性スパッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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