直流地絡検出装置、この直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステム
【課題】直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した場合でも、確実に地絡事故を検出することができる直流地絡検出装置を提供する。
【解決手段】直流地絡検出装置5の検出部51において、直流電源1の正極と負極とを抵抗R1〜R4を介して接続線で接続し、当該接続線の途中の接地点c1,c2と接地線との接続を切替信号発生部51aからの信号に基づいてスイッチSWで所定の周期で変更するようにした。これにより、接地点がc1とc2との間で切り替わり、接地点から正極までの抵抗値と接地点から負極までの抵抗値との抵抗比率が、所定の周期で変更されるようになった。この抵抗比率が変更される毎に、地絡検出手段52が接地点からグランドに流れる電流を検出し、この検出値を用いて地絡の発生を検出するので、確実に地絡事故を検出することができる。
【解決手段】直流地絡検出装置5の検出部51において、直流電源1の正極と負極とを抵抗R1〜R4を介して接続線で接続し、当該接続線の途中の接地点c1,c2と接地線との接続を切替信号発生部51aからの信号に基づいてスイッチSWで所定の周期で変更するようにした。これにより、接地点がc1とc2との間で切り替わり、接地点から正極までの抵抗値と接地点から負極までの抵抗値との抵抗比率が、所定の周期で変更されるようになった。この抵抗比率が変更される毎に、地絡検出手段52が接地点からグランドに流れる電流を検出し、この検出値を用いて地絡の発生を検出するので、確実に地絡事故を検出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流地絡検出装置、この直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池や燃料電池などを備えた直流電源から出力される直流電力を、インバータにより交流電力に変換して、出力するインバータシステムが開発されている。このインバータシステムの直流電源内部や、直流電源とインバータとを接続する接続線における地絡事故を検出するための直流地絡検出装置が開発されている。
【0003】
図11は、従来の直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。この系統連系インバータシステムは、太陽電池を備えた直流電源100から出力された直流電力を、インバータ200で交流電力に変換し、商用電力系統300に供給するものである。
【0004】
このシステムでは、地絡事故による地絡電流によって感電したり、インバータ200が破壊されたりすることを防ぐために、遮断器400、直流地絡検出装置500、および制御装置600が備えられている。直流地絡検出装置500は、直流地絡事故を検出するものであり、直流地絡事故を検出した場合に制御装置600に検出信号を出力する。制御装置600は、直流地絡検出装置500から検出信号を入力されたとき、遮断器400に遮断信号を出力し、インバータ200に停止信号を出力する。遮断器400は、制御装置600から遮断信号を入力されると、直流電源100とインバータ200との接続を遮断する。インバータ200は、制御装置600から停止信号を入力されると停止する。これにより、地絡電流がインバータ200に流れることを防止することができる。このように、直流地絡検出装置500および制御装置600は、直流地絡事故が発生した場合にインバータ200を地絡電流から保護する保護継電器を構成する。
【0005】
直流地絡検出装置500は、検出部510および判定部520を備えている。検出部510は、系統連系インバータシステムの直流電源100とインバータ200とを接続する2本の接続線にそれぞれ接続される正極端子aおよび負極端子bと、正極端子aと負極端子bとを2つの抵抗Ra、Rbを介して接続する接続線と、2つの抵抗Ra、Rbの間の接続点cで接続線を接地する接地線と、接地線を流れる電流を検出する計器用変流器CTとを備えている。検出部510は、計器用変流器CTが検出する電流信号を判定部520に出力する。判定部520は、検出部510から電流信号を入力され、地絡事故が発生したか否かを判定する。すなわち、入力される電流信号が示す電流値が、測定誤差を排除するために設けられた所定範囲内の場合は地絡事故が発生していないと判定し、電流値が所定範囲外となった場合に地絡事故が発生したと判定する。判定部520は、地絡事故が発生したと判定したときは、検出信号を制御装置600に出力する。
【0006】
図12は、図11の系統連系インバータシステムにおいて、地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図12においては、直流電源100と直流地絡検出装置500の検出部510のみを記載しており、それ以外については簡略化のために省略している。同図において、直流電源100の正極と図示しないインバータ200との接続線上の点dで地絡事故が発生している。同図に示す抵抗Rgは、地絡時の抵抗値を表している。このとき、地絡発生箇所dから接続点c(以下、「接地点c」とする。)を経由するように、破線矢印に示す地絡電流Igが流れる。判定部520は、計器用変流器CTから入力される電流信号が示す電流値が地絡電流Igにより所定値を超えることにより、地絡事故が発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−233045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直流電源100は、高い出力電圧が必要とされる場合、複数の太陽電池を直列に接続して構成されている。この直列接続された太陽電池の間で地絡事故が発生した場合、直流地絡検出装置500は地絡事故を検出できない場合がある。
【0009】
図13は、図11の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源100内部の直列接続された太陽電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図13においては、図12と同様、直流電源100と直流地絡検出装置500の検出部510のみを記載している。同図において、直流電源100内部の直列接続された太陽電池の中間点d’で地絡事故が発生している。
【0010】
この場合、直流電源100の正極から正極端子aおよび接地点cを経由して中間点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、中間点d’から接地点cおよび負極端子bを経由して直流電源100の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。直流電源100の出力電圧をE、抵抗Ra、Rbの抵抗値を等しくRとすると、Ipg=Ing=(1/2)E/(R+Rg)となり、接地線に流れる電流は地絡電流IpgとIngとが相殺されるので、計器用変流器CTが検出する電流信号に地絡電流が表れない。したがって、判定部520は、地絡事故が発生したと判定することができない。地絡電流IpgとIngとが同一とならない場合でも、計器用変流器CTが検出する電流信号が示す電流値が所定値以下となる場合は、判定部520は地絡事故が発生したと判定することができない。
【0011】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した場合でも、確実に地絡事故を検出することができる直流地絡検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
本発明の第1の側面によって提供される直流地絡検出装置は、直流電源の正極と負極との間に抵抗回路を接続するとともに、当該抵抗回路内にグランドに接地される接地点が設けられ、その接地点の前記正極および負極に対する電圧またはその接地点と前記グランドとの間に流れる電流に基づいて地絡の発生を検出する直流地絡検出装置であって、前記抵抗回路は、前記接地点から前記正極までの抵抗値と前記接地点から前記負極までの抵抗値との抵抗比率が変更可能になされ、所定の周期で前記抵抗比率を変更する抵抗比率変更手段と、前記抵抗回路の前記抵抗比率が変更される毎に、前記接地点の前記正極および負極に対する電圧または前記接地点から前記グランドに流れる電流を検出し、それらの検出値を用いて前記地絡の発生を検出する地絡検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、前記抵抗比率が所定の周期で変更されるので、当該比率がある値のとき地絡事故を検出できなくても、当該比率が別の値に変更されたときに地絡事故を検出することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗比率変更手段は、前記抵抗比率を、2つの値の間で交互に変化させる。
【0016】
この構成によると、前記抵抗比率が3つ以上の値の間で切り替えられる場合と比べて、必要な部品が削減され、設計が簡略化されるので、装置を小型化し、製造コストを削減することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、前記接地点の位置が変更可能になされており、前記抵抗比率変更手段は、前記接地点の位置を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器の両端が短絡可能になされており、前記抵抗比率変更手段は、両端を短絡する抵抗器の数を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器が可変抵抗器であり、前記抵抗比率変更手段は、前記可変抵抗器の抵抗値を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記地絡検出手段は、前記正極及び前記負極と前記抵抗回路との間の一対の線路に流れる電流を検出する電流検出手段を有し、その電流検出手段により前記接地点と前記グランドとの間に流れる電流を検出し、その検出電流を用いて前記地絡の発生を検出する。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される系統連系インバータシステムは、請求項1ないし6のいずれかに記載の直流地絡検出装置と、前記直流地絡検出装置が接続される直流電源で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、を備えた系統連系インバータシステムであって、前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断する遮断手段と、前記直流地絡検出装置により地絡が検出された場合に、前記インバータを停止させ、あるいは、前記遮断手段により前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断させる制御装置と、を備えている。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る直流地絡検出装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【図2】図1の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図3】図2の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図4】図2とは別の場所で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図5】図4の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の別の実施例を説明するための図である。
【図7】第1実施形態のさらに別の実施例を説明するための図である。
【図8】本発明に係る直流地絡検出装置の第2実施形態を説明するための図である。
【図9】図8の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図10】本発明に係る直流地絡検出装置の第3実施形態を説明するための図である。
【図11】従来の直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【図12】図11の系統連系インバータシステムにおいて、地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図13】図11の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る直流地絡検出装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【0026】
系統連系インバータシステムAは、直流電源1、インバータ2、商用電力系統3、遮断器4、直流地絡検出装置5、制御装置6を備えている。直流電源1は、遮断器4を介して、インバータ2に接続している。インバータ2は、商用電力系統3に接続している。直流地絡検出装置5は、直流電源1とインバータ2とを接続する2本の接続線に接続されている。系統連系インバータシステムAは、直流電源1から出力された直流電力を、インバータ2で交流電力に変換し、商用電力系統3に供給するものである。
【0027】
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、本実施形態では、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池を複数個直列接続したものを備えている。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限られず、例えば、燃料電池や蓄電池により直流電力を生成するものであってもよいし、風力発電などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力するものであってもよい。
【0028】
インバータ2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換するものである。インバータ2は、図示しない制御回路が生成するPWM信号に基づいて、図示しない複数のスイッチング素子をオンオフ動作させることで、直流電力を交流電力に変換する。また、インバータ2は、制御装置6から停止信号を入力されると、図示しない制御回路がPWM信号の生成を停止することにより、動作を停止する。
【0029】
遮断器4は、直流電源1とインバータ2との接続を遮断するものである。遮断器4は、通常は直流電源1とインバータ2とを接続しているが、制御装置6から遮断信号を入力されると、直流電源1とインバータ2との接続を遮断する。
【0030】
直流地絡検出装置5は、直流地絡事故を検出するものであり、直流地絡事故を検出した場合に制御装置6に検出信号を出力する。直流地絡検出装置5は、検出部51および判定部52を備えている。
【0031】
検出部51は、地絡電流を検出するための電流信号を検出するものであり、検出した電流信号を判定部52に出力する。検出部51は、系統連系インバータシステムAの直流電源1とインバータ2とを接続する2本の接続線にそれぞれ接続される正極端子aおよび負極端子bを備えており、正極端子aおよび負極端子bから直流電源1の出力電圧が印加される。正極端子aと負極端子bとは、4つの抵抗R1,R2,R3,R4を介して接続線で接続されている。抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値は、直流電源1の最大出力電圧や後述する計器用変流器CTの精度などに応じて決定される。抵抗値が小さすぎると抵抗R1,R2,R3,R4に無駄な電流が流れることになるが、抵抗値が大きすぎると地絡事故発生時に流れる地絡電流が小さくなり、計器用変流器CTの精度によっては検出が難しくなる。本実施形態においては、直流電源1の最大出力電圧が500Vなので、抵抗R
1,R2,R3,R4の抵抗値をそれぞれ10kΩとしている。
【0032】
抵抗R1とR2との間の接続点c1と、抵抗R3とR4との間の接続点c2とは、スイッチSWを介して接地線で接地されている。スイッチSWは、接地線との接続を接続点c1(以下、「第1接地点c1」とする。)と接続点c2(以下、「第2接地点c2」とする。)との間で切り替えるものであり、接地線と第1接地点c1とを接続するスイッチSW1と、接地線と第2接地点c2とを接続するスイッチSW2とを備えている。スイッチSW1およびSW2の接続は、切替信号発生部51aが出力する切替信号に基づいて行われる。切替信号発生部51aは、スイッチSWに切替信号を出力する。本実施形態において、切替信号は、所定の周期でハイレベルとローレベルとが切り替わるパルス信号である。切替信号がハイレベルのときスイッチSW1が接続されてスイッチSW2が解除され、切替信号がローレベルのときスイッチSW2が接続されてスイッチSW1が解除される。すなわち、スイッチSW1とスイッチSW2は交互にオンとオフとが切り替えられる。
【0033】
スイッチSWの切替周期(すなわち、切替信号の周期の半分の周期)は、地絡検出のタイミング周期と同じ周期としてもよいし、自然数倍としてもよい。スイッチSWの切替周期と地絡検出のタイミング周期とが同じ周期の場合、地絡検出のタイミング毎に第1接地点c1が接地された状態と第2接地点c2が接地された状態とが切り替えられる。スイッチSWの切替周期が地絡検出のタイミング周期の2倍の周期の場合、地絡検出のタイミングの2回に1回、第1接地点c1が接地された状態と第2接地点c2が接地された状態とが切り替えられる。なお、本実施形態では、例えば1秒としている。
【0034】
なお、切替信号発生部51aおよびスイッチSWの構成はこれに限られず、第1接地点c1と第2接地点c2とを交互に接地線に接続することができればよい。例えば、切替信号発生部51aが、スイッチSW1を接続させるためのパルス信号と、このパルス信号を反転させたパルス信号であってスイッチSW2を接続させるためのものとを、それぞれ出力する構成としてもよい。また、スイッチSW1およびSW2をトランジスタなどのスイッチング素子としてもよい。また、スイッチSW1およびSW2に換えて、接地線との接続を第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替える1つのスイッチとしてもよい。
【0035】
接地線には計器用変流器CTが配置されている。計器用変流器CTは、接地線を流れる電流を検出して、検出した電流信号を判定部52に出力する。
【0036】
判定部52は、検出部51から電流信号を入力され、地絡事故が発生したか否かを判定するものである。判定部52は、地絡事故が発生したと判定したときは、検出信号を制御装置6に出力する。判定部52は、フィルタ部52a、地絡事故判定部52bを備えている。
【0037】
フィルタ部52aは、検出部51より入力される電流信号から、インバータ2の特性による交流成分およびスイッチング周波数成分を除去するものである。フィルタ部52aは、例えば、数Hz以下の周波数成分のみを通過するローパスフィルタで構成される。
【0038】
地絡事故判定部52bは、フィルタ部52aから入力される電流信号が示す電流値が、測定誤差を排除するために設定された所定範囲内であるか否かにより、地絡事故が発生したか否かを判定する。すなわち、電流値が所定範囲内の場合は測定誤差の範囲であり地絡事故が発生していないと判定し、電流値が所定範囲外となった場合は地絡事故が発生したと判定する。本実施形態において、所定範囲は±0.05Aとしているが、実験により適切な範囲を適宜決定すればよい。地絡事故判定部52bは、地絡事故が発生したと判定した場合、制御装置6に検出信号を出力する。
【0039】
制御装置6は、直流地絡検出装置5から検出信号を入力されたとき、遮断器4に遮断信号を出力し、インバータ2に停止信号を出力する。遮断信号を入力された遮断器4は直流電源1とインバータ2との接続を遮断し、停止信号を入力されたインバータ2は動作を停止する。これにより、地絡電流がインバータ2に流れることを防止することができる。このように、直流地絡検出装置5および制御装置6は、直流地絡事故が発生した場合にインバータ2を地絡電流から保護する保護継電器を構成する。
【0040】
次に、直流地絡検出装置5の動作について説明する。
【0041】
地絡事故が発生していない場合、スイッチSWの状態に関係なく、計器用変流器CTで検出され、フィルタ部52aでノイズを除去された電流信号が示す電流値は所定範囲内となるので、直流地絡検出装置5が検出信号を出力することはない。
【0042】
一方、地絡事故が発生した場合、接地線に地絡電流が流れるので、計器用変流器CTで検出され、フィルタ部52aでノイズを除去された電流信号が示す電流値が所定範囲外となるため、直流地絡検出装置5が検出信号を出力する。また、切替信号発生部51aから入力される切替信号に基づいて、スイッチSWが接地線との接続を第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替える。したがって、仮に一方に切り替えたときに地絡事故を検出できなくても、他方に切り替えたときには地絡事故を検出することができる。
【0043】
以下、スイッチSWの切り替えによる地絡電流の検出について、図2〜図6を用いて説明する。
【0044】
図2は、図1の系統連系インバータシステムAにおいて、直流電源1内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図2においては、直流電源1と直流地絡検出装置5の検出部51のみを記載しており、それ以外および切替信号発生部51aについては簡略化のために省略している。以下の図3〜5についても同様である。図2において、地絡が直流電源1内部の直列接続された電池の中間点d’(以下、「地絡点d’」という。)で発生している。同図に示す抵抗Rgは、地絡時の抵抗値を表している。
【0045】
同図においては、接地線と第1接地点c1とが接続されるように、スイッチSWが切り替えられている。この場合、直流電源1の正極から正極端子aおよび第1接地点c1を経由して地絡点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、地絡点d’から第1接地点c1および負極端子bを経由して直流電源1の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。直流電源1の出力電圧をE、抵抗R1〜R4の抵抗値を等しくRとすると、Ipg=(1/2)・E/(R+Rg)、Ing=(1/2)・E/(3R+Rg)となり、地絡電流IpgとIngとが一致しないので、その差の地絡電流が計器用変流器CTにより検出される電流信号に重畳される。したがって、電流信号に重畳される地絡電流(Ipg−Ing=ER/((R+Rg)・(3R+Rg)))が地絡事故判定部52bに設定されている所定範囲外となるように抵抗値Rが決定されていれば、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0046】
図3は、図2の状態からスイッチSWが切り替えられ、接地線と第2接地点c2とが接続された状態を説明するための図である。この場合、Ipg=(1/2)・E/(3R+Rg)、Ing=(1/2)・E/(R+Rg)となり、地絡電流IpgとIngとが一致せず、その差の地絡電流(Ipg-Ing=−ER/((R+Rg)・(3R+Rg)))が所定範囲外となるので、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0047】
図4および図5は、地絡事故が直流電源1の電圧を1:3に分ける点d”(以下、「地絡点d”」という。)で発生した状態を説明するための図である。図4においては、接地線と第1接地点c1とが接続されるように、スイッチSWが切り替えられている。この場合、Ipg=(1/4)・E/(R+Rg)、Ing=(3/4)・E/(3R+Rg)となり、その差の地絡電流(Ipg−Ing=−(1/2)・ERg/((R+Rg)・(3R+Rg)))が、Rgの大きさによっては、所定範囲内となる可能性もある。しかし、図5に示すように、スイッチSWが切り替えられ、接地線と第2接地点c2とが接続された場合、Ipg=(1/4)・E/(3R+Rg)、Ing=(3/4)・E/(R+Rg)となり、その差の地絡電流(Ipg−Ing=−(1/2)・E・(4R+Rg)/((R+Rg)・(3R+Rg)))が所定範囲外となるので、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0048】
次に、直流地絡検出装置5の作用について説明する。
【0049】
本実施形態においては、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した場合、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、地絡電流IpgおよびIngが変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、地絡電流IpgとIngとが相殺されて地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに地絡事故を検出することができる。
【0050】
なお、上記第1実施形態では、計器用変流器CTで接地線を流れる電流信号を検出して判定部52に入力しているが、これに限られない。例えば、零相電流検出用変流器により零相電流を検出するようにしてもよいし、正極および負極の対地間電圧を検出するようにしてもよい。
【0051】
図6は、第1実施形態の別の実施例を説明するための図である。本実施例は、接地線に配置された計器用変流器CTに代えて、直流電源1と図示しないインバータとを接続する2本の接続線に零相電流検出用変流器CT’を配置し、零相電流検出用変流器CT’により検出された零相電流信号を判定部52(図1参照)に入力するものである。本実施例においても、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、地絡電流IpgおよびIngが変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、地絡電流IpgとIngとが相殺されて地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに地絡事故を検出することができる。
【0052】
図7は、第1実施形態のさらに別の実施例を説明するための図である。本実施例は、接地線に配置された計器用変流器CTに代えて、接地線と正極端子aとの間に電圧計Vp
を、接地線と負極端子bとの間に電圧計Vnをそれぞれ設け、電圧計Vpにより検出された正極の対地間電圧信号と電圧計Vnにより検出された負極の対地間電圧信号とを判定部52(図1参照)に入力するものである。
【0053】
なお、本実施例ではスイッチSWの切替により、電圧計Vpおよび電圧計Vnの検出すべき電圧の比が切り替わるので、判定部52において、スイッチSWの切替に応じて参照するための電圧比を切り替えて、入力された電圧の比が参照された電圧比と一致するか否かを判定するようにしなければならない。例えば、抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値を同一にすると、電圧計Vpと電圧計Vnが検出する電圧の比は、接地される点が第1接地点c1の場合1:3となり、接地される点が第2接地点c2の場合3:1となるはずである。
【0054】
本実施例においても、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、正極の対地間電圧および負極の対地間電圧が変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、検出された電圧の比が参照される電圧比と一致することにより地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに、検出された電圧の比が参照される電圧比と一致しなくなるので地絡事故を検出することができる。
【0055】
なお、検出部51に設けられる抵抗は、上記に限定されない。接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値との比が、スイッチSWの切り替えにより変更されればよいのであって、抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値がそれぞれ異なっていてもよいし、抵抗の数が異なっていてもよい。また、抵抗R1とR2とが1つの抵抗体であって、第1の接地点c1がその抵抗体の途中に設けられた点であってもよい。また、抵抗値の比が2つの値で切り替わることにも限定されず、抵抗値の比が3つ以上の値で切り替わるようにしてもよい。
【0056】
上記第1実施形態においては、接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値がともに変化する場合について説明したが、いずれか一方のみが変化するように構成してもよい。
【0057】
図8は、本発明に係る直流地絡検出装置の第2実施形態を説明するための図である。同図においては、図2と同様に、直流電源1と直流地絡検出装置5の検出部51'のみを記載しており、それ以外および切替信号発生部51aについては簡略化のために省略している。本実施形態の検出部51’は、スイッチSWの代わりに、抵抗R1の両端を短絡するためのスイッチSW3を設けた点で第1実施形態の検出部51と異なる。本実施形態においては、スイッチSW3をオンオフすることにより、接地線と正極端子aとの間の抵抗値のみを切り替える。
【0058】
図8において、スイッチSW3はオフ状態となっている。なお、抵抗R1〜R4の抵抗値は等しくRであり、直流電源1の出力電圧がEであり、地絡が直流電源1内部の直列接続された電池の中間点である地絡点d’で発生しているとする。この場合、直流電源1の正極から正極端子aおよび接地点cを経由して地絡点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、地絡点d’から接地点cおよび負極端子bを経由して直流電源1の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。Ipg=Ing=(1/2)・E/(2R+Rg)となり、接地線に流れる電流は地絡電流IpgとIngとが相殺されるので、計器用変流器CTが検出する電流信号に地絡電流が表れない。したがって、地絡事故を検出することができない。
【0059】
図9は、図8の状態からスイッチSW3がオンに切り替えられた状態を説明するための図である。この場合、抵抗R1の両端が短絡されるので、Ipg=(1/2)・E/(R+Rg)となる。したがって、その差の地絡電流(Ipg−Ing=(1/2)・ER/((R+Rg)・(2R+Rg)))が所定範囲外となるように設定されていれば、地絡事故を検出することができる。
【0060】
上記第1および第2実施形態においては、固定抵抗を用いた場合について説明したが、可変抵抗を用いて構成してもよい。
【0061】
図10は、本発明に係る直流地絡検出装置の第3実施形態を説明するための図である。同図は、検出部51”のみを記載している。本実施形態の検出部51”は、正極端子aと接地線との間に可変抵抗R5が設けられ、負極端子bと接地線との間に固定抵抗R6が設けられている。可変抵抗R5の抵抗値は、切替信号発生部51a(図1参照)から入力される切替信号に応じて2つの値で切り替えられる。本実施形態においても、接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値との比が変更されるので、上記第1および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、可変抵抗R5の抵抗値が2つの値で切り替えられる場合に限定されず、3以上の抵抗値で切り替えられるように構成してもよい。
【0062】
上記実施形態では、直流地絡検出装置が系統連系インバータシステムに用いられた場合について説明したが、これに限られない。本発明の直流地絡検出装置は、直流電流が流れるシステムに用いられた場合に、適切に地絡事故を検出することができる。したがって、直流電力を直接使用するシステムに用いることもできるし、直流電力を生成する太陽電池、燃料電池、蓄電池などに直接用いることもできる。
【0063】
また、本発明の直流地絡検出装置は、地絡事故が検出された場合にシステムを停止する場合だけでなく、地絡事故の検出を報知するために地絡事故を検出する場合にも用いることができる。
【0064】
本発明に係る直流地絡検出装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る直流地絡検出装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0065】
1 直流電源
2 インバータ
3 商用電力系統
4 遮断器
5 直流地絡検出装置
51,51’、51” 検出部
51a 切替信号発生部(抵抗比率変更手段)
52 判定部(地絡検出手段)
52a フィルタ部
52b 地絡事故判定部
6 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流地絡検出装置、この直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池や燃料電池などを備えた直流電源から出力される直流電力を、インバータにより交流電力に変換して、出力するインバータシステムが開発されている。このインバータシステムの直流電源内部や、直流電源とインバータとを接続する接続線における地絡事故を検出するための直流地絡検出装置が開発されている。
【0003】
図11は、従来の直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。この系統連系インバータシステムは、太陽電池を備えた直流電源100から出力された直流電力を、インバータ200で交流電力に変換し、商用電力系統300に供給するものである。
【0004】
このシステムでは、地絡事故による地絡電流によって感電したり、インバータ200が破壊されたりすることを防ぐために、遮断器400、直流地絡検出装置500、および制御装置600が備えられている。直流地絡検出装置500は、直流地絡事故を検出するものであり、直流地絡事故を検出した場合に制御装置600に検出信号を出力する。制御装置600は、直流地絡検出装置500から検出信号を入力されたとき、遮断器400に遮断信号を出力し、インバータ200に停止信号を出力する。遮断器400は、制御装置600から遮断信号を入力されると、直流電源100とインバータ200との接続を遮断する。インバータ200は、制御装置600から停止信号を入力されると停止する。これにより、地絡電流がインバータ200に流れることを防止することができる。このように、直流地絡検出装置500および制御装置600は、直流地絡事故が発生した場合にインバータ200を地絡電流から保護する保護継電器を構成する。
【0005】
直流地絡検出装置500は、検出部510および判定部520を備えている。検出部510は、系統連系インバータシステムの直流電源100とインバータ200とを接続する2本の接続線にそれぞれ接続される正極端子aおよび負極端子bと、正極端子aと負極端子bとを2つの抵抗Ra、Rbを介して接続する接続線と、2つの抵抗Ra、Rbの間の接続点cで接続線を接地する接地線と、接地線を流れる電流を検出する計器用変流器CTとを備えている。検出部510は、計器用変流器CTが検出する電流信号を判定部520に出力する。判定部520は、検出部510から電流信号を入力され、地絡事故が発生したか否かを判定する。すなわち、入力される電流信号が示す電流値が、測定誤差を排除するために設けられた所定範囲内の場合は地絡事故が発生していないと判定し、電流値が所定範囲外となった場合に地絡事故が発生したと判定する。判定部520は、地絡事故が発生したと判定したときは、検出信号を制御装置600に出力する。
【0006】
図12は、図11の系統連系インバータシステムにおいて、地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図12においては、直流電源100と直流地絡検出装置500の検出部510のみを記載しており、それ以外については簡略化のために省略している。同図において、直流電源100の正極と図示しないインバータ200との接続線上の点dで地絡事故が発生している。同図に示す抵抗Rgは、地絡時の抵抗値を表している。このとき、地絡発生箇所dから接続点c(以下、「接地点c」とする。)を経由するように、破線矢印に示す地絡電流Igが流れる。判定部520は、計器用変流器CTから入力される電流信号が示す電流値が地絡電流Igにより所定値を超えることにより、地絡事故が発生したと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−233045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
直流電源100は、高い出力電圧が必要とされる場合、複数の太陽電池を直列に接続して構成されている。この直列接続された太陽電池の間で地絡事故が発生した場合、直流地絡検出装置500は地絡事故を検出できない場合がある。
【0009】
図13は、図11の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源100内部の直列接続された太陽電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図13においては、図12と同様、直流電源100と直流地絡検出装置500の検出部510のみを記載している。同図において、直流電源100内部の直列接続された太陽電池の中間点d’で地絡事故が発生している。
【0010】
この場合、直流電源100の正極から正極端子aおよび接地点cを経由して中間点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、中間点d’から接地点cおよび負極端子bを経由して直流電源100の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。直流電源100の出力電圧をE、抵抗Ra、Rbの抵抗値を等しくRとすると、Ipg=Ing=(1/2)E/(R+Rg)となり、接地線に流れる電流は地絡電流IpgとIngとが相殺されるので、計器用変流器CTが検出する電流信号に地絡電流が表れない。したがって、判定部520は、地絡事故が発生したと判定することができない。地絡電流IpgとIngとが同一とならない場合でも、計器用変流器CTが検出する電流信号が示す電流値が所定値以下となる場合は、判定部520は地絡事故が発生したと判定することができない。
【0011】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した場合でも、確実に地絡事故を検出することができる直流地絡検出装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0013】
本発明の第1の側面によって提供される直流地絡検出装置は、直流電源の正極と負極との間に抵抗回路を接続するとともに、当該抵抗回路内にグランドに接地される接地点が設けられ、その接地点の前記正極および負極に対する電圧またはその接地点と前記グランドとの間に流れる電流に基づいて地絡の発生を検出する直流地絡検出装置であって、前記抵抗回路は、前記接地点から前記正極までの抵抗値と前記接地点から前記負極までの抵抗値との抵抗比率が変更可能になされ、所定の周期で前記抵抗比率を変更する抵抗比率変更手段と、前記抵抗回路の前記抵抗比率が変更される毎に、前記接地点の前記正極および負極に対する電圧または前記接地点から前記グランドに流れる電流を検出し、それらの検出値を用いて前記地絡の発生を検出する地絡検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によると、前記抵抗比率が所定の周期で変更されるので、当該比率がある値のとき地絡事故を検出できなくても、当該比率が別の値に変更されたときに地絡事故を検出することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗比率変更手段は、前記抵抗比率を、2つの値の間で交互に変化させる。
【0016】
この構成によると、前記抵抗比率が3つ以上の値の間で切り替えられる場合と比べて、必要な部品が削減され、設計が簡略化されるので、装置を小型化し、製造コストを削減することができる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、前記接地点の位置が変更可能になされており、前記抵抗比率変更手段は、前記接地点の位置を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器の両端が短絡可能になされており、前記抵抗比率変更手段は、両端を短絡する抵抗器の数を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器が可変抵抗器であり、前記抵抗比率変更手段は、前記可変抵抗器の抵抗値を変更することにより前記抵抗比率を変更する。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記地絡検出手段は、前記正極及び前記負極と前記抵抗回路との間の一対の線路に流れる電流を検出する電流検出手段を有し、その電流検出手段により前記接地点と前記グランドとの間に流れる電流を検出し、その検出電流を用いて前記地絡の発生を検出する。
【0021】
本発明の第2の側面によって提供される系統連系インバータシステムは、請求項1ないし6のいずれかに記載の直流地絡検出装置と、前記直流地絡検出装置が接続される直流電源で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、を備えた系統連系インバータシステムであって、前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断する遮断手段と、前記直流地絡検出装置により地絡が検出された場合に、前記インバータを停止させ、あるいは、前記遮断手段により前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断させる制御装置と、を備えている。
【0022】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る直流地絡検出装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【図2】図1の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図3】図2の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図4】図2とは別の場所で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図5】図4の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図6】第1実施形態の別の実施例を説明するための図である。
【図7】第1実施形態のさらに別の実施例を説明するための図である。
【図8】本発明に係る直流地絡検出装置の第2実施形態を説明するための図である。
【図9】図8の状態からスイッチが切り替えられた状態を説明するための図である。
【図10】本発明に係る直流地絡検出装置の第3実施形態を説明するための図である。
【図11】従来の直流地絡検出装置を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【図12】図11の系統連系インバータシステムにおいて、地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【図13】図11の系統連系インバータシステムにおいて、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る直流地絡検出装置の第1実施形態を備えた系統連系インバータシステムを説明するためのブロック図である。
【0026】
系統連系インバータシステムAは、直流電源1、インバータ2、商用電力系統3、遮断器4、直流地絡検出装置5、制御装置6を備えている。直流電源1は、遮断器4を介して、インバータ2に接続している。インバータ2は、商用電力系統3に接続している。直流地絡検出装置5は、直流電源1とインバータ2とを接続する2本の接続線に接続されている。系統連系インバータシステムAは、直流電源1から出力された直流電力を、インバータ2で交流電力に変換し、商用電力系統3に供給するものである。
【0027】
直流電源1は、直流電力を出力するものであり、本実施形態では、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池を複数個直列接続したものを備えている。なお、直流電源1は、太陽電池により直流電力を生成するものに限られず、例えば、燃料電池や蓄電池により直流電力を生成するものであってもよいし、風力発電などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力するものであってもよい。
【0028】
インバータ2は、直流電源1から入力される直流電力を交流電力に変換するものである。インバータ2は、図示しない制御回路が生成するPWM信号に基づいて、図示しない複数のスイッチング素子をオンオフ動作させることで、直流電力を交流電力に変換する。また、インバータ2は、制御装置6から停止信号を入力されると、図示しない制御回路がPWM信号の生成を停止することにより、動作を停止する。
【0029】
遮断器4は、直流電源1とインバータ2との接続を遮断するものである。遮断器4は、通常は直流電源1とインバータ2とを接続しているが、制御装置6から遮断信号を入力されると、直流電源1とインバータ2との接続を遮断する。
【0030】
直流地絡検出装置5は、直流地絡事故を検出するものであり、直流地絡事故を検出した場合に制御装置6に検出信号を出力する。直流地絡検出装置5は、検出部51および判定部52を備えている。
【0031】
検出部51は、地絡電流を検出するための電流信号を検出するものであり、検出した電流信号を判定部52に出力する。検出部51は、系統連系インバータシステムAの直流電源1とインバータ2とを接続する2本の接続線にそれぞれ接続される正極端子aおよび負極端子bを備えており、正極端子aおよび負極端子bから直流電源1の出力電圧が印加される。正極端子aと負極端子bとは、4つの抵抗R1,R2,R3,R4を介して接続線で接続されている。抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値は、直流電源1の最大出力電圧や後述する計器用変流器CTの精度などに応じて決定される。抵抗値が小さすぎると抵抗R1,R2,R3,R4に無駄な電流が流れることになるが、抵抗値が大きすぎると地絡事故発生時に流れる地絡電流が小さくなり、計器用変流器CTの精度によっては検出が難しくなる。本実施形態においては、直流電源1の最大出力電圧が500Vなので、抵抗R
1,R2,R3,R4の抵抗値をそれぞれ10kΩとしている。
【0032】
抵抗R1とR2との間の接続点c1と、抵抗R3とR4との間の接続点c2とは、スイッチSWを介して接地線で接地されている。スイッチSWは、接地線との接続を接続点c1(以下、「第1接地点c1」とする。)と接続点c2(以下、「第2接地点c2」とする。)との間で切り替えるものであり、接地線と第1接地点c1とを接続するスイッチSW1と、接地線と第2接地点c2とを接続するスイッチSW2とを備えている。スイッチSW1およびSW2の接続は、切替信号発生部51aが出力する切替信号に基づいて行われる。切替信号発生部51aは、スイッチSWに切替信号を出力する。本実施形態において、切替信号は、所定の周期でハイレベルとローレベルとが切り替わるパルス信号である。切替信号がハイレベルのときスイッチSW1が接続されてスイッチSW2が解除され、切替信号がローレベルのときスイッチSW2が接続されてスイッチSW1が解除される。すなわち、スイッチSW1とスイッチSW2は交互にオンとオフとが切り替えられる。
【0033】
スイッチSWの切替周期(すなわち、切替信号の周期の半分の周期)は、地絡検出のタイミング周期と同じ周期としてもよいし、自然数倍としてもよい。スイッチSWの切替周期と地絡検出のタイミング周期とが同じ周期の場合、地絡検出のタイミング毎に第1接地点c1が接地された状態と第2接地点c2が接地された状態とが切り替えられる。スイッチSWの切替周期が地絡検出のタイミング周期の2倍の周期の場合、地絡検出のタイミングの2回に1回、第1接地点c1が接地された状態と第2接地点c2が接地された状態とが切り替えられる。なお、本実施形態では、例えば1秒としている。
【0034】
なお、切替信号発生部51aおよびスイッチSWの構成はこれに限られず、第1接地点c1と第2接地点c2とを交互に接地線に接続することができればよい。例えば、切替信号発生部51aが、スイッチSW1を接続させるためのパルス信号と、このパルス信号を反転させたパルス信号であってスイッチSW2を接続させるためのものとを、それぞれ出力する構成としてもよい。また、スイッチSW1およびSW2をトランジスタなどのスイッチング素子としてもよい。また、スイッチSW1およびSW2に換えて、接地線との接続を第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替える1つのスイッチとしてもよい。
【0035】
接地線には計器用変流器CTが配置されている。計器用変流器CTは、接地線を流れる電流を検出して、検出した電流信号を判定部52に出力する。
【0036】
判定部52は、検出部51から電流信号を入力され、地絡事故が発生したか否かを判定するものである。判定部52は、地絡事故が発生したと判定したときは、検出信号を制御装置6に出力する。判定部52は、フィルタ部52a、地絡事故判定部52bを備えている。
【0037】
フィルタ部52aは、検出部51より入力される電流信号から、インバータ2の特性による交流成分およびスイッチング周波数成分を除去するものである。フィルタ部52aは、例えば、数Hz以下の周波数成分のみを通過するローパスフィルタで構成される。
【0038】
地絡事故判定部52bは、フィルタ部52aから入力される電流信号が示す電流値が、測定誤差を排除するために設定された所定範囲内であるか否かにより、地絡事故が発生したか否かを判定する。すなわち、電流値が所定範囲内の場合は測定誤差の範囲であり地絡事故が発生していないと判定し、電流値が所定範囲外となった場合は地絡事故が発生したと判定する。本実施形態において、所定範囲は±0.05Aとしているが、実験により適切な範囲を適宜決定すればよい。地絡事故判定部52bは、地絡事故が発生したと判定した場合、制御装置6に検出信号を出力する。
【0039】
制御装置6は、直流地絡検出装置5から検出信号を入力されたとき、遮断器4に遮断信号を出力し、インバータ2に停止信号を出力する。遮断信号を入力された遮断器4は直流電源1とインバータ2との接続を遮断し、停止信号を入力されたインバータ2は動作を停止する。これにより、地絡電流がインバータ2に流れることを防止することができる。このように、直流地絡検出装置5および制御装置6は、直流地絡事故が発生した場合にインバータ2を地絡電流から保護する保護継電器を構成する。
【0040】
次に、直流地絡検出装置5の動作について説明する。
【0041】
地絡事故が発生していない場合、スイッチSWの状態に関係なく、計器用変流器CTで検出され、フィルタ部52aでノイズを除去された電流信号が示す電流値は所定範囲内となるので、直流地絡検出装置5が検出信号を出力することはない。
【0042】
一方、地絡事故が発生した場合、接地線に地絡電流が流れるので、計器用変流器CTで検出され、フィルタ部52aでノイズを除去された電流信号が示す電流値が所定範囲外となるため、直流地絡検出装置5が検出信号を出力する。また、切替信号発生部51aから入力される切替信号に基づいて、スイッチSWが接地線との接続を第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替える。したがって、仮に一方に切り替えたときに地絡事故を検出できなくても、他方に切り替えたときには地絡事故を検出することができる。
【0043】
以下、スイッチSWの切り替えによる地絡電流の検出について、図2〜図6を用いて説明する。
【0044】
図2は、図1の系統連系インバータシステムAにおいて、直流電源1内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した状態を説明するための図である。図2においては、直流電源1と直流地絡検出装置5の検出部51のみを記載しており、それ以外および切替信号発生部51aについては簡略化のために省略している。以下の図3〜5についても同様である。図2において、地絡が直流電源1内部の直列接続された電池の中間点d’(以下、「地絡点d’」という。)で発生している。同図に示す抵抗Rgは、地絡時の抵抗値を表している。
【0045】
同図においては、接地線と第1接地点c1とが接続されるように、スイッチSWが切り替えられている。この場合、直流電源1の正極から正極端子aおよび第1接地点c1を経由して地絡点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、地絡点d’から第1接地点c1および負極端子bを経由して直流電源1の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。直流電源1の出力電圧をE、抵抗R1〜R4の抵抗値を等しくRとすると、Ipg=(1/2)・E/(R+Rg)、Ing=(1/2)・E/(3R+Rg)となり、地絡電流IpgとIngとが一致しないので、その差の地絡電流が計器用変流器CTにより検出される電流信号に重畳される。したがって、電流信号に重畳される地絡電流(Ipg−Ing=ER/((R+Rg)・(3R+Rg)))が地絡事故判定部52bに設定されている所定範囲外となるように抵抗値Rが決定されていれば、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0046】
図3は、図2の状態からスイッチSWが切り替えられ、接地線と第2接地点c2とが接続された状態を説明するための図である。この場合、Ipg=(1/2)・E/(3R+Rg)、Ing=(1/2)・E/(R+Rg)となり、地絡電流IpgとIngとが一致せず、その差の地絡電流(Ipg-Ing=−ER/((R+Rg)・(3R+Rg)))が所定範囲外となるので、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0047】
図4および図5は、地絡事故が直流電源1の電圧を1:3に分ける点d”(以下、「地絡点d”」という。)で発生した状態を説明するための図である。図4においては、接地線と第1接地点c1とが接続されるように、スイッチSWが切り替えられている。この場合、Ipg=(1/4)・E/(R+Rg)、Ing=(3/4)・E/(3R+Rg)となり、その差の地絡電流(Ipg−Ing=−(1/2)・ERg/((R+Rg)・(3R+Rg)))が、Rgの大きさによっては、所定範囲内となる可能性もある。しかし、図5に示すように、スイッチSWが切り替えられ、接地線と第2接地点c2とが接続された場合、Ipg=(1/4)・E/(3R+Rg)、Ing=(3/4)・E/(R+Rg)となり、その差の地絡電流(Ipg−Ing=−(1/2)・E・(4R+Rg)/((R+Rg)・(3R+Rg)))が所定範囲外となるので、直流地絡検出装置5は地絡事故を検出することができる。
【0048】
次に、直流地絡検出装置5の作用について説明する。
【0049】
本実施形態においては、直流電源内部の直列接続された電池の間で地絡事故が発生した場合、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、地絡電流IpgおよびIngが変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、地絡電流IpgとIngとが相殺されて地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに地絡事故を検出することができる。
【0050】
なお、上記第1実施形態では、計器用変流器CTで接地線を流れる電流信号を検出して判定部52に入力しているが、これに限られない。例えば、零相電流検出用変流器により零相電流を検出するようにしてもよいし、正極および負極の対地間電圧を検出するようにしてもよい。
【0051】
図6は、第1実施形態の別の実施例を説明するための図である。本実施例は、接地線に配置された計器用変流器CTに代えて、直流電源1と図示しないインバータとを接続する2本の接続線に零相電流検出用変流器CT’を配置し、零相電流検出用変流器CT’により検出された零相電流信号を判定部52(図1参照)に入力するものである。本実施例においても、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、地絡電流IpgおよびIngが変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、地絡電流IpgとIngとが相殺されて地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに地絡事故を検出することができる。
【0052】
図7は、第1実施形態のさらに別の実施例を説明するための図である。本実施例は、接地線に配置された計器用変流器CTに代えて、接地線と正極端子aとの間に電圧計Vp
を、接地線と負極端子bとの間に電圧計Vnをそれぞれ設け、電圧計Vpにより検出された正極の対地間電圧信号と電圧計Vnにより検出された負極の対地間電圧信号とを判定部52(図1参照)に入力するものである。
【0053】
なお、本実施例ではスイッチSWの切替により、電圧計Vpおよび電圧計Vnの検出すべき電圧の比が切り替わるので、判定部52において、スイッチSWの切替に応じて参照するための電圧比を切り替えて、入力された電圧の比が参照された電圧比と一致するか否かを判定するようにしなければならない。例えば、抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値を同一にすると、電圧計Vpと電圧計Vnが検出する電圧の比は、接地される点が第1接地点c1の場合1:3となり、接地される点が第2接地点c2の場合3:1となるはずである。
【0054】
本実施例においても、接地される点が第1接地点c1と第2接地点c2との間で切り替えられるので、正極の対地間電圧および負極の対地間電圧が変化する。したがって、一方に切り替えられたときに、検出された電圧の比が参照される電圧比と一致することにより地絡事故を検出できない場合でも、他方に切り替えられたときに、検出された電圧の比が参照される電圧比と一致しなくなるので地絡事故を検出することができる。
【0055】
なお、検出部51に設けられる抵抗は、上記に限定されない。接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値との比が、スイッチSWの切り替えにより変更されればよいのであって、抵抗R1,R2,R3,R4の抵抗値がそれぞれ異なっていてもよいし、抵抗の数が異なっていてもよい。また、抵抗R1とR2とが1つの抵抗体であって、第1の接地点c1がその抵抗体の途中に設けられた点であってもよい。また、抵抗値の比が2つの値で切り替わることにも限定されず、抵抗値の比が3つ以上の値で切り替わるようにしてもよい。
【0056】
上記第1実施形態においては、接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値がともに変化する場合について説明したが、いずれか一方のみが変化するように構成してもよい。
【0057】
図8は、本発明に係る直流地絡検出装置の第2実施形態を説明するための図である。同図においては、図2と同様に、直流電源1と直流地絡検出装置5の検出部51'のみを記載しており、それ以外および切替信号発生部51aについては簡略化のために省略している。本実施形態の検出部51’は、スイッチSWの代わりに、抵抗R1の両端を短絡するためのスイッチSW3を設けた点で第1実施形態の検出部51と異なる。本実施形態においては、スイッチSW3をオンオフすることにより、接地線と正極端子aとの間の抵抗値のみを切り替える。
【0058】
図8において、スイッチSW3はオフ状態となっている。なお、抵抗R1〜R4の抵抗値は等しくRであり、直流電源1の出力電圧がEであり、地絡が直流電源1内部の直列接続された電池の中間点である地絡点d’で発生しているとする。この場合、直流電源1の正極から正極端子aおよび接地点cを経由して地絡点d’に流れる破線矢印に示す地絡電流Ipgと、地絡点d’から接地点cおよび負極端子bを経由して直流電源1の負極に流れる破線矢印に示す地絡電流Ingとが発生する。Ipg=Ing=(1/2)・E/(2R+Rg)となり、接地線に流れる電流は地絡電流IpgとIngとが相殺されるので、計器用変流器CTが検出する電流信号に地絡電流が表れない。したがって、地絡事故を検出することができない。
【0059】
図9は、図8の状態からスイッチSW3がオンに切り替えられた状態を説明するための図である。この場合、抵抗R1の両端が短絡されるので、Ipg=(1/2)・E/(R+Rg)となる。したがって、その差の地絡電流(Ipg−Ing=(1/2)・ER/((R+Rg)・(2R+Rg)))が所定範囲外となるように設定されていれば、地絡事故を検出することができる。
【0060】
上記第1および第2実施形態においては、固定抵抗を用いた場合について説明したが、可変抵抗を用いて構成してもよい。
【0061】
図10は、本発明に係る直流地絡検出装置の第3実施形態を説明するための図である。同図は、検出部51”のみを記載している。本実施形態の検出部51”は、正極端子aと接地線との間に可変抵抗R5が設けられ、負極端子bと接地線との間に固定抵抗R6が設けられている。可変抵抗R5の抵抗値は、切替信号発生部51a(図1参照)から入力される切替信号に応じて2つの値で切り替えられる。本実施形態においても、接地線と正極端子aとの間の抵抗値と接地線と負極端子bとの間の抵抗値との比が変更されるので、上記第1および第2実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、可変抵抗R5の抵抗値が2つの値で切り替えられる場合に限定されず、3以上の抵抗値で切り替えられるように構成してもよい。
【0062】
上記実施形態では、直流地絡検出装置が系統連系インバータシステムに用いられた場合について説明したが、これに限られない。本発明の直流地絡検出装置は、直流電流が流れるシステムに用いられた場合に、適切に地絡事故を検出することができる。したがって、直流電力を直接使用するシステムに用いることもできるし、直流電力を生成する太陽電池、燃料電池、蓄電池などに直接用いることもできる。
【0063】
また、本発明の直流地絡検出装置は、地絡事故が検出された場合にシステムを停止する場合だけでなく、地絡事故の検出を報知するために地絡事故を検出する場合にも用いることができる。
【0064】
本発明に係る直流地絡検出装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る直流地絡検出装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0065】
1 直流電源
2 インバータ
3 商用電力系統
4 遮断器
5 直流地絡検出装置
51,51’、51” 検出部
51a 切替信号発生部(抵抗比率変更手段)
52 判定部(地絡検出手段)
52a フィルタ部
52b 地絡事故判定部
6 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正極と負極との間に抵抗回路を接続するとともに、当該抵抗回路内にグランドに接地される接地点が設けられ、その接地点の前記正極および負極に対する電圧またはその接地点と前記グランドとの間に流れる電流に基づいて地絡の発生を検出する直流地絡検出装置であって、
前記抵抗回路は、前記接地点から前記正極までの抵抗値と前記接地点から前記負極までの抵抗値との抵抗比率が変更可能になされ、
所定の周期で前記抵抗比率を変更する抵抗比率変更手段と、
前記抵抗回路の前記抵抗比率が変更される毎に、前記接地点の前記正極および負極に対する電圧または前記接地点から前記グランドに流れる電流を検出し、それらの検出値を用いて前記地絡の発生を検出する地絡検出手段と、
を備えたことを特徴とする直流地絡検出装置。
【請求項2】
前記抵抗比率変更手段は、前記抵抗比率を、2つの値の間で交互に変化させる、請求項1に記載の直流地絡検出装置。
【請求項3】
前記抵抗回路は、前記接地点の位置が変更可能になされており、
前記抵抗比率変更手段は、前記接地点の位置を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項4】
前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器の両端が短絡可能になされており、
前記抵抗比率変更手段は、両端を短絡する抵抗器の数を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項5】
前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器が可変抵抗器であり、
前記抵抗比率変更手段は、前記可変抵抗器の抵抗値を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項6】
前記地絡検出手段は、前記正極及び前記負極と前記抵抗回路との間の一対の線路に流れる電流を検出する電流検出手段を有し、その電流検出手段により前記接地点と前記グランドとの間に流れる電流を検出し、その検出電流を用いて前記地絡の発生を検出する、請求項1ないし5のいずれかに記載の直流地絡検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の直流地絡検出装置と、
前記直流地絡検出装置が接続される直流電源で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、
を備えた系統連系インバータシステムであって、
前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断する遮断手段と、
前記直流地絡検出装置により地絡が検出された場合に、前記インバータを停止させ、あるいは、前記遮断手段により前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断させる制御装置と、
を備えている系統連系インバータシステム。
【請求項1】
直流電源の正極と負極との間に抵抗回路を接続するとともに、当該抵抗回路内にグランドに接地される接地点が設けられ、その接地点の前記正極および負極に対する電圧またはその接地点と前記グランドとの間に流れる電流に基づいて地絡の発生を検出する直流地絡検出装置であって、
前記抵抗回路は、前記接地点から前記正極までの抵抗値と前記接地点から前記負極までの抵抗値との抵抗比率が変更可能になされ、
所定の周期で前記抵抗比率を変更する抵抗比率変更手段と、
前記抵抗回路の前記抵抗比率が変更される毎に、前記接地点の前記正極および負極に対する電圧または前記接地点から前記グランドに流れる電流を検出し、それらの検出値を用いて前記地絡の発生を検出する地絡検出手段と、
を備えたことを特徴とする直流地絡検出装置。
【請求項2】
前記抵抗比率変更手段は、前記抵抗比率を、2つの値の間で交互に変化させる、請求項1に記載の直流地絡検出装置。
【請求項3】
前記抵抗回路は、前記接地点の位置が変更可能になされており、
前記抵抗比率変更手段は、前記接地点の位置を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項4】
前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器の両端が短絡可能になされており、
前記抵抗比率変更手段は、両端を短絡する抵抗器の数を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項5】
前記抵抗回路は、その構成する一部の抵抗器が可変抵抗器であり、
前記抵抗比率変更手段は、前記可変抵抗器の抵抗値を変更することにより前記抵抗比率を変更する、
請求項1または2に記載の直流地絡検出装置。
【請求項6】
前記地絡検出手段は、前記正極及び前記負極と前記抵抗回路との間の一対の線路に流れる電流を検出する電流検出手段を有し、その電流検出手段により前記接地点と前記グランドとの間に流れる電流を検出し、その検出電流を用いて前記地絡の発生を検出する、請求項1ないし5のいずれかに記載の直流地絡検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の直流地絡検出装置と、
前記直流地絡検出装置が接続される直流電源で生成される直流電力を交流電力に変換して電力系統に供給するインバータと、
を備えた系統連系インバータシステムであって、
前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断する遮断手段と、
前記直流地絡検出装置により地絡が検出された場合に、前記インバータを停止させ、あるいは、前記遮断手段により前記直流電源と前記インバータとの接続を遮断させる制御装置と、
を備えている系統連系インバータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−187513(P2010−187513A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31439(P2009−31439)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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