説明

直流電源装置及びバッテリ評価装置

【課題】直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量を背景技術に比べて小さくする。
【解決手段】直流電源装置である回生型充放電装置1は、系統電源30から直流電力を生成する直流電力生成回路2と、直流電力生成回路2の出力を受けて動作するDC/DCコンバータ3と、DC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンと、該変化パターンに対応する直流電力生成回路2の制御量の制御パターンとにアクセス可能に構成されたコントローラ10とを備え、コントローラ10は、DC/DCコンバータ3の出力をモニタリングすることによって得られる第1のモニタ値Iが上記目標値と等しくなるようDC/DCコンバータ3を制御するDC/DCコンバータ制御部12と、上記制御パターンに基づいて直流電力生成回路2の制御量を制御する直流電力生成回路制御部13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直流電源装置及びバッテリ評価装置に関し、特に2段以上の構成を有する直流電源装置及びバッテリ評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドカーで用いられるモータの評価試験には、力行時にモータ駆動用のインバータに対して直流電力を供給する一方で、ブレーキ時にはモータで発生する回生エネルギーを吸収できる回生型充放電装置が用いられる。
【0003】
力行時の回生型充放電装置の動作は、商用の交流電源(例えば、三相200Vの電源。以下、「系統電源」という。)を指定電流値の直流電力に変換し、モータ駆動用のインバータに供給する直流電源装置としての動作である。回生型充放電装置の出力電流の大きさはモータの状態を受けて変動するが、PI制御などのフィードバック制御により、所望の出力電流が実現される。
【0004】
回生型充放電装置は、系統電源から直流電力を生成する直流電力生成回路と、この直流電力を受けて動作するDC/DCコンバータとから構成される。DC/DCコンバータの出力が、回生型充放電装置の出力となる。DC/DCコンバータとしては、それぞれフルブリッジ接続された複数個のチョッパ回路を備えるスイッチング電源が用いられる。このようなDC/DCコンバータを用いるのは高精度な出力電流を実現するためであり、複数個のチョッパ回路の出力電流を合成して用いることでリップルが平滑化されることから、高精度な出力電流を得ることが可能になる。特許文献1及び非特許文献1には、このようなDC/DCコンバータに類似する構成の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−276678号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大枝憲司、外2名、「多重化4象限チョッパの電流バランスに関する検討」、平成17年電気学会全国大会、2005年3月17日、第4分冊、p.63−64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したような回生型充放電装置は、バッテリの評価試験を行うバッテリ評価装置としても用いられる。バッテリの評価試験の際には、通常、電流値で表したバッテリの充放電パターンを予め決めておき、バッテリ評価装置の出力電流が充放電パターンに則して変化するよう、フィードバック制御を行う。これにより、任意の充放電パターンでバッテリを試験することが可能になる。
【0008】
しかしながら、近年のバッテリの高性能化に伴い、バッテリ評価装置には極めて高速な応答(1ミリ秒程度)が求められるようになっており、これを実現するために、直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間に大容量のキャパシタを設ける必要が生じている。これがバッテリ評価装置の小型化の障害となっており、キャパシタの容量を小さくできる仕組みが求められていた。以下、この点について詳しく説明する。
【0009】
DC/DCコンバータの前段に設けられる直流電力生成回路の出力電圧は、DC/DCコンバータの入力電圧として予め規定される電圧値となるよう、フィードバック制御される。このフィードバック制御は、上述した充放電パターンとは関係なく、直流電力生成回路単体で行われる。
【0010】
充放電パターンが電流値の急激な変化を含んでいた場合、フィードバック制御により、DC/DCコンバータの出力電流にはその変化が速やかに反映される。一方で、単体でフィードバック制御を行っている直流電力生成回路の出力電圧には少し遅れて反映されるため、DC/DCコンバータの入力電圧に一時的な変動が発生してしまう場合がある。そこで、この一時的な電圧変動を補うために、直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間にキャパシタが設けられる。
【0011】
充放電パターンの変化が急激であるほど予想される入力電圧の変動幅が大きくなることから、電圧変動を補うためのキャパシタも大容量化しなければならなくなる。これが、キャパシタの大型化を招き、バッテリ評価装置の小型化の障害となっていた。
【0012】
したがって、本発明の目的の一つは、直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量を背景技術に比べて小さくできる直流電源装置及びバッテリ評価装置を提供することにある。
【0013】
また、直流電力生成回路は、系統電源から直流電力を生成するAC/DCコンバータと、AC/DCコンバータの出力を受けて動作する絶縁DC/DCコンバータとによって構成される場合がある。この場合、絶縁DC/DCコンバータの出力が、直流電力生成回路の出力(DC/DCコンバータの入力)となる。AC/DCコンバータは、交流電力である系統電源を直流電力に変換する機能を有している。絶縁DC/DCコンバータは、トランスを挟んで対称にスイッチング素子が配置された双方向コンバータであり、一方の端部に供給される直流電力をパルス波の交流に変換してトランスに出力し、トランスで電圧変換した後、スイッチング素子により再度直流電力に変換して他方の端部から出力する機能を有している。
【0014】
直流電力生成回路がこのような構成を有する場合、AC/DCコンバータと、絶縁DC/DCコンバータとは、それぞれ個別にフィードバック制御される。つまり、AC/DCコンバータの出力電圧は、後段の絶縁DC/DCコンバータの入力電圧として予め規定される電圧値となるよう、フィードバック制御される。また、絶縁DC/DCコンバータの出力電圧は、後段のDC/DCコンバータの入力電圧として予め規定される電圧値となるよう、フィードバック制御される。
【0015】
したがって、この場合、上述したような一時的な電圧変動を補うためのキャパシタは、直流電力生成回路(絶縁DC/DCコンバータ)とDC/DCコンバータの間の他、AC/DCコンバータと絶縁DC/DCコンバータの間にも設ける必要がある。このキャパシタについても、容量を小さくすることが求められる。
【0016】
したがって、本発明の目的の他の一つは、直流電力生成回路内のAC/DCコンバータと絶縁DC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量を背景技術に比べて小さくできる直流電源装置及びバッテリ評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するための本発明による直流電源装置は、系統電源から直流電力を生成する直流電力生成回路と、前記直流電力生成回路の出力を受けて動作するDC/DCコンバータと、前記DC/DCコンバータの出力の目標値の変化パターンと、該変化パターンに対応する前記直流電力生成回路の制御量の制御パターンとにアクセス可能に構成されたコントローラとを備え、前記コントローラは、前記DC/DCコンバータの前記出力をモニタリングすることによって得られる第1のモニタ値が前記目標値と等しくなるよう、前記DC/DCコンバータを制御するDC/DCコンバータ制御手段と、前記制御パターンに基づいて前記直流電力生成回路の前記制御量を制御する直流電力生成回路制御手段とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、DC/DCコンバータの出力の目標値の変化パターンに対応する直流電力生成回路の制御量の制御パターンに基づいて直流電力生成回路の制御量を制御しているので、DC/DCコンバータの出力の急激な変化に対しても、直流電力生成回路の出力電圧の変動を抑制することが可能になる。したがって、直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量を、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【0019】
上記直流電源装置において、前記直流電力生成回路は、前記系統電源から直流電力を生成するAC/DCコンバータと、前記AC/DCコンバータの出力を受けて動作する絶縁DC/DCコンバータとを有し、前記制御量は、前記絶縁DC/DCコンバータを制御するための第1の制御量と、前記AC/DCコンバータを制御するための第2の制御量とを含み、前記直流電力生成回路制御手段は、前記制御パターンに基づいて前記絶縁DC/DCコンバータの前記第1の制御量を制御する絶縁DC/DCコンバータ制御手段と、前記制御パターンに基づいて前記AC/DCコンバータの前記第2の制御量を制御するAC/DCコンバータ制御手段とを有することとしてもよい。これによれば、直流電力生成回路内のAC/DCコンバータと絶縁DC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量についても、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【0020】
上記直流電源装置において、前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記絶縁DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第2のモニタ値と、前記絶縁DC/DCコンバータの出力電圧の目標値である第1の目標電圧値と、前記変化パターンとに基づいて、前記制御パターンのうち前記第1の制御量に関する部分を生成することとしてもよく、さらに、前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記第1の目標電圧値と前記第2のモニタ値の偏差に基づく第1のフィードバック演算と、前記変化パターンに基づく第1のフィードフォワード演算とを行い、前記第1のフィードバック演算の結果と前記第1のフィードフォワード演算の結果とに基づいて、前記制御パターンのうち前記第1の制御量に関する部分を生成することとしてもよい。
【0021】
また、このような直流電源装置において、前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電流の目標値であり、前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記目標値とを乗算することにより電力値を算出し、前記第1のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算であることとしてもよいし、前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記DC/DCコンバータの出力電流をモニタリングすることによって得られる第5のモニタ値とを乗算することにより電力値を算出し、前記第1のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算であることとしてもよいし、前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電力の目標値であり、前記第1のフィードフォワード演算は、前記目標値に対する演算であることとしてもよい。
【0022】
上記直流電源装置において、前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記AC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第3のモニタ値と、前記AC/DCコンバータの出力電圧の目標値である第2の目標電圧値と、前記変化パターンとに基づいて、前記制御パターンのうち前記第2の制御量に関する部分を生成することとしてもよく、さらに、前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記第2の目標電圧値と前記第3のモニタ値の偏差に基づく第2のフィードバック演算と、前記変化パターンに基づく第2のフィードフォワード演算とを行い、前記第2のフィードバック演算の結果と前記第2のフィードフォワード演算の結果とに基づいて、前記制御パターンのうち前記第2の制御量に関する部分を生成することとしてもよい。
【0023】
また、このような直流電源装置において、前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電流の目標値であり、前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記目標値とを乗算することにより電力値を算出し、前記第2のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算であることとしてもよいし、前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記DC/DCコンバータの出力電流をモニタリングすることによって得られる第5のモニタ値とを乗算することにより電力値を算出し、前記第2のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算であることとしてもよいし、前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電力の目標値であり、前記第2のフィードフォワード演算は、前記目標値に対する演算であることとしてもよい。
【0024】
また、本発明によるバッテリ評価装置は、上記直流電源装置を備え、前記DC/DCコンバータの出力はバッテリに供給され、前記変化パターンは、前記バッテリの充放電パターンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、DC/DCコンバータの出力の目標値の変化パターンに対応する直流電力生成回路の制御量の制御パターンに基づいて直流電力生成回路の制御量を制御しているので、DC/DCコンバータの出力の急激な変化に対しても、直流電力生成回路の出力電圧の変動を抑制することが可能になる。したがって、直流電力生成回路とDC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量を、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【0026】
また、直流電力生成回路内のAC/DCコンバータと絶縁DC/DCコンバータの間に設けられるキャパシタの容量についても、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態による回生型充放電装置のシステム構成を示す略ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態によるAC/DCコンバータの内部構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による絶縁DC/DCコンバータの内部構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態による3相DC/DCコンバータの内部構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態によるAC/DCコンバータ制御部が行う制御を示すブロック線図である。
【図6】本発明の実施の形態による絶縁DC/DCコンバータ制御部が行う制御を示すブロック線図である。
【図7】本発明の実施の形態によるDC/DCコンバータ制御部が行う制御を示すブロック線図である。
【図8】本発明の実施の形態の変形例による絶縁DC/DCコンバータ制御部が行う制御を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態による回生型充放電装置1のシステム構成を示す略ブロック図である。同図に示すように、回生型充放電装置1は、系統電源30から直流電力を生成する直流電力生成回路2と、直流電力生成回路2の出力を受けて動作する3相DC/DCコンバータ3と、直流電力生成回路2及び3相DC/DCコンバータ3を制御するコントローラ10とを備えている。回生型充放電装置1は、主としてハイブリッドカー用又は電気自動車用のモータ及びバッテリ、或いは太陽電池などの評価試験用に用いられるもので、試験対象に直流電源を供給する直流電源装置としての機能の他、試験対象から回生される電力を吸収する機能も有している。系統電源30は、本実施の形態では三相200Vの商用交流電源とする。ただし、系統電源30として使用可能な電源がこれに限られるものではない。
【0030】
本実施の形態では、図1に示した試験対象バッテリ40の評価試験用として、回生型充放電装置1を用いる場合について説明する。この場合、試験用の充放電パターンが予め決定され、この充放電パターンに従って試験対象バッテリ40を充放電したときの回生型充放電装置1の状態(後述する各種制御量の値など)に基づいて、試験対象バッテリ40の良否が判定される。
【0031】
充放電パターンは、DC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンである。ここでいう出力は、図1に示したDC/DCコンバータ3の出力電流Iであってもよいし、DC/DCコンバータ3の出力電力であってもよい。なお、出力電力は、図1に示すノードNとノードNの間の電圧V(回生型充放電装置1の出力電圧)を用いて、出力電流I×出力電圧Vと表される。以下の説明では、出力電流Iの目標値の変化パターンを充放電パターンとして用いる。
【0032】
充放電パターンは、図1に示したコンピュータ20に予め設定される。コンピュータ20は例えばパーソナルコンピュータであり、コンピュータ20と回生型充放電装置1の間は、例えばLANなどの通信回線によって接続される。充放電パターンは、時間の関数で表した電流値、若しくは時間と電流値とを対応付けたテーブルの形式で、予めコンピュータ20に書き込まれる。試験者の操作によって評価試験が開始されると、コンピュータ20は、接続回線を通じて順次、開始からの経過時間に応じた電流値(目標値)を回生型充放電装置1に供給する。
【0033】
コンピュータ20から供給される電流値は、コントローラ10に入力される。コントローラ10は、図1に示すように、DC/DCコンバータ制御部12(DC/DCコンバータ制御手段)と、直流電力生成回路制御部13(直流電力生成回路制御手段)とを有して構成される。
【0034】
DC/DCコンバータ制御部12は、DC/DCコンバータ3の出力電流Iをモニタリングすることによって得られる電流値(第1のモニタ値、第5のモニタ値)が、コンピュータ20から供給された目標値と等しくなるよう、DC/DCコンバータ3のフィードバック制御を行う。これにより、DC/DCコンバータ3の出力電流Iが、予めコンピュータ20に設定された充放電パターンに従って変化することになる。
【0035】
直流電力生成回路制御部13は、図1に示すノードNとノードNの間の電圧V(直流電力生成回路2の出力電圧=DC/DCコンバータ3の入力電圧)をモニタリングすることによって得られる電圧値(第2のモニタ値)が、予め定められる一定値(第1の目標電圧値)となるよう、直流電力生成回路2のフィードバック制御を行う。これにより、電圧Vが第1の目標電圧値に維持される。
【0036】
ただし、現実には、直流電力生成回路2のフィードバック制御だけでは、充放電パターンが電流値の急激な変化を含んでいる場合などに、制御が間に合わずに電圧Vに一時的な変動が発生してしまう場合がある。そこで、回生型充放電装置1では、図1に示すように、ノードNとノードNの間にキャパシタCを設けている。これにより、直流電力生成回路2のフィードバック制御が間に合わず、結果として直流電力生成回路2の出力電圧が一時的に不足することになったとしても、キャパシタCから供給される電荷によって、電圧Vの低下が抑制される。また、直流電力生成回路2の出力電圧が一時的に過剰となった場合には、キャパシタCへの充電を通じて、電圧Vの上昇が抑制される。
【0037】
回生型充放電装置1では、このキャパシタCの容量を、背景技術に比べて小さくすることが実現される。これは、直流電力生成回路制御部13が、上述したフィードバック制御に加えて、コンピュータ20から順次供給される電流値(充放電パターン)に基づく直流電力生成回路2のフィードフォワード制御も行うことによって実現される。この点については、後ほど別途詳しく説明する。
【0038】
ところで、図1に示すように、本実施の形態による直流電力生成回路2は、AC/DCコンバータ4と絶縁DC/DCコンバータ5の2段構成の回路となっている。AC/DCコンバータ4は、系統電源30から直流電力を生成する回路である。絶縁DC/DCコンバータ5は、インバータ6,7と、これらの間に設けられたトランス8とを含んで構成される双方向コンバータであり、AC/DCコンバータ4の出力を受けて動作するよう構成される。トランス8が含まれることにより、AC/DCコンバータ4の出力電圧を昇圧又は降圧することが可能になるとともに、インバータ6とインバータ7とを電気的に絶縁することも実現される。
【0039】
コントローラ10内の直流電力生成回路制御部13は、AC/DCコンバータ4に対応するAC/DCコンバータ制御部14(AC/DCコンバータ制御手段)と、絶縁DC/DCコンバータ5に対応する絶縁DC/DCコンバータ制御部15(絶縁DC/DCコンバータ制御手段)とを含んで構成される。上述した直流電力生成回路2の制御、すなわち、電圧Vを第1の目標電圧値に維持するために行う直流電力生成回路2のフィードバック制御と、キャパシタCの容量を小さくするために行う直流電力生成回路2のフィードフォワード制御とは、絶縁DC/DCコンバータ制御部15が絶縁DC/DCコンバータ5の制御を行い、AC/DCコンバータ制御部14がAC/DCコンバータ4の制御を行うことによって実現される。
【0040】
フィードバック制御に関して具体的に説明すると、まず絶縁DC/DCコンバータ制御部15は、上述した第2のモニタ値(電圧Vのモニタ値)が、上述した第1の目標電圧値となるよう、絶縁DC/DCコンバータ5のフィードバック制御を行う。また、AC/DCコンバータ制御部14は、図1に示すノードNとノードNの間の電圧V(AC/DCコンバータ4の出力電圧=絶縁DC/DCコンバータ5の入力電圧)をモニタリングすることによって得られる電圧値(第3のモニタ値)が、予め定められる一定値(第2の目標電圧値)に等しくなるよう、AC/DCコンバータ4のフィードバック制御を行う。
【0041】
次にフィードフォワード制御に関しては、まず絶縁DC/DCコンバータ制御部15は、コンピュータ20から順次供給される電流値(充放電パターン)に基づいて、絶縁DC/DCコンバータ5のフィードフォワード制御を行う。また、AC/DCコンバータ制御部14も、コンピュータ20から順次供給される電流値(充放電パターン)に基づいて、AC/DCコンバータ4のフィードフォワード制御を行う。
【0042】
なお、電圧Vについても、電圧Vと同様、フィードバック制御だけだと、充放電パターンが電流値の急激な変化を含んでいる場合などに、一時的な変動が発生してしまう場合がある。そこで、回生型充放電装置1では、図1に示すように、ノードNとノードNの間にもキャパシタCを設けている。回生型充放電装置1では上述のようにAC/DCコンバータ4のフィードフォワード制御が行われることから、このキャパシタCの容量についても、背景技術に比べて小さくすることが実現される。この点についても、後ほど別途詳しく説明する。
【0043】
以下、AC/DCコンバータ4,絶縁DC/DCコンバータ5,DC/DCコンバータ3それぞれの詳細な回路構成について、順次説明する。これらの説明の後、上述した各種のフィードバック制御及びフィードフォワード制御について、詳しく説明する。
【0044】
図2は、AC/DCコンバータ4の内部構成を示す図である。同図から明らかなように、AC/DCコンバータ4はいわゆる三相全波整流回路である。具体的には、三相(u,v,w)それぞれに対応する3本の電圧線と、相ごとに2個ずつ計6個のトランジスタを含むスイッチ素子SWとを有している。3本の電圧線のそれぞれには、高調波抑制及び平滑化のためのリアクトルが2個ずつ挿入される(リアクトルL,L)。また、各電圧線のリアクトルLとリアクトルLの間の部分には、Δ接続されたキャパシタセットからなる位相補償用のキャパシタCが接続される。1本の電圧線に対応する2個のトランジスタは、ノードNとノードNの間に直列に接続される。これら2個のトランジスタの接続点は、対応する電圧線に接続される。また、ノードNとノードNの間には、スイッチ素子SWと並列に、図1に示したキャパシタCの一部を構成するキャパシタC21が挿入される。
【0045】
なお、スイッチ素子SWを構成する各トランジスタには、絶縁ゲートバイポーラトランジスタを用いることが好ましい。また、各トランジスタそれぞれに、図2に示すように、並列にダイオードが接続される。これらのダイオードはトランジスタに回生電流が流れ込まないように設けられているもので、トランジスタと逆方向に接続される。これらの点は、後述する絶縁DC/DCコンバータ5及びDC/DCコンバータ3に設けられる各トランジスタについても同様である。
【0046】
AC/DCコンバータ4は、AC/DCコンバータ4の制御量S(第2の制御量)を制御する制御部4aを有している。制御量Sは、具体的にはスイッチ素子SWの変調率mref及び変調位相mphaseである。制御部4aには、AC/DCコンバータ制御部14から制御量Sの目標値(制御パターン)が供給される。制御部4aは、この目標値に基づいてスイッチ素子SWを構成する各トランジスタのオンオフ状態を制御することにより、制御量Sを制御する。詳しくは後述する。
【0047】
図示していないが、AC/DCコンバータ4には、コントローラ10が制御で利用するための各種物理量をモニタリングするためのセンサが設けられる。具体的なモニタリング項目は、u相に対応する電圧線とv相に対応する電圧線の間の線間電圧Vuv、v相に対応する電圧線とw相に対応する電圧線の間の線間電圧Vwv、u相に対応する電圧線に流れる電流I、w相に対応する電圧線に流れる電流I、及び電圧Vである。センサによってモニタリングされたこれらの物理量は、AC/DCコンバータ制御部14に供給される。電圧Vについては、絶縁DC/DCコンバータ制御部15にも供給される。
【0048】
図3は、絶縁DC/DCコンバータ5の内部構成を示す図である。同図から明らかなように、インバータ6,7は、それぞれがいわゆる単相ブリッジ整流回路である。具体的に説明すると、まずインバータ6は、ノードNとノードNの間に直列接続され、かつ互いの接続点にトランス8の一次側の一方の入力端子が接続された2個のトランジスタと、ノードNとノードNの間に直列接続され、かつ互いの接続点にトランス8の一次側の他方の入力端子が接続された2個のトランジスタとを含んで構成される。なお、トランス8の一次側の一方入力端子には、高調波抑制及び平滑化のためのリアクトルLが挿入される。一方インバータ7は、ノードNとノードNの間に直列接続され、かつ互いの接続点にトランス8の二次側の一方の入力端子が接続された2個のトランジスタと、ノードNとノードNの間に直列接続され、かつ互いの接続点にトランス8の二次側の他方の入力端子が接続された2個のトランジスタとを含んで構成される。
【0049】
ノードNとノードNの間には、インバータ6と並列に、キャパシタC22が挿入される。同様に、ノードNとノードNの間には、インバータ7と並列に、キャパシタC11が挿入される。キャパシタC22は、図2に示したキャパシタC21とともに、図1に示したキャパシタCの一部を構成する。キャパシタC11は、図1に示したキャパシタCの一部を構成する。キャパシタC22,C11としては、図3に示すように、電解コンデンサを用いることが好ましい。
【0050】
絶縁DC/DCコンバータ5は、絶縁DC/DCコンバータ5の制御量S(第1の制御量)を制御する制御部5aを有している。制御量Sは、具体的にはインバータ6,7の位相シフト量φである。制御部5aには、絶縁DC/DCコンバータ制御部15から制御量Sの目標値(制御パターン)が供給される。制御部5aは、この目標値に基づいてインバータ6,7を構成する各トランジスタのオンオフ状態を制御することにより、制御量Sを制御する。詳しくは後述する。
【0051】
図示していないが、絶縁DC/DCコンバータ5にも、コントローラ10が制御で利用するための各種物理量をモニタリングするセンサが設けられる。具体的なモニタリング項目は電圧Vのみである。センサによってモニタリングされた電圧Vは、絶縁DC/DCコンバータ制御部15に供給される。
【0052】
図4は、3相DC/DCコンバータ3の内部構成を示す図である。同図に示すように、DC/DCコンバータ3は、それぞれノードNとノードNの間に直列に接続された2個のトランジスタを含み、互いに並列に接続された6個のスイッチ素子SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3Nを備えている。スイッチ素子SW1P,SW2P,SW3Pのそれぞれを構成する2個のトランジスタの接続点は、横流抑制用のリアクトルL4を介して、ノードNに共通接続される。同様に、スイッチ素子SW1N,SW2N,SW3Nのそれぞれを構成する2個のトランジスタの接続点は、横流抑制用のリアクトルL5を介して、ノードNに共通接続される。これらの構成により、DC/DCコンバータ3は、フルブリッジ型のチョッパ回路が3多重化されたスイッチング電源となっている。
【0053】
ノードNとノードNの間には、各スイッチ素子と並列に、キャパシタC12が挿入される。また、ノードNとノードNの間には、キャパシタCが挿入される。キャパシタC12は、図3に示したキャパシタC11とともに、図1に示したキャパシタCの一部を構成する。
【0054】
DC/DCコンバータ3は、DC/DCコンバータ3の制御量Sを制御する制御部3aも有している。制御量Sは、具体的にはスイッチ素子SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3Nそれぞれの変調率m1P,m2P,m3P,m1N,m2N,m3Nである。制御部3aには、DC/DCコンバータ制御部12から制御量Sの目標値(制御パターン)が供給される。制御部3aは、この目標値に基づいてスイッチ素子SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3Nを構成する各トランジスタのオンオフ状態を制御することにより、制御量Sを制御する。詳しくは後述する。
【0055】
図示していないが、DC/DCコンバータ3にも、コントローラ10が制御で利用するための各種物理量をモニタリングするセンサが設けられる。具体的なモニタリング項目は、スイッチ素子SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3Nそれぞれの出力電流I1P,I2P,I3P,I1N,I2N,I1N、DC/DCコンバータ3の出力電流I、及び電圧Vである。出力電流I1P,I2P,I3P,I1N,I2N,I1Nをモニタリングするセンサと、出力電流Iをモニタリングするセンサとは、別々に設けられる。センサによってモニタリングされたこれらの物理量のうち、出力電流I1P,I2P,I3P,I1N,I2N,I1N及び出力電流Iは、DC/DCコンバータ制御部12に供給される。また、電圧Vは、AC/DCコンバータ制御部14及び絶縁DC/DCコンバータ制御部15に供給される。
【0056】
さてここから、上述した各種のフィードバック制御及びフィードフォワード制御について順次説明する。
【0057】
まず、図5は、AC/DCコンバータ制御部14が行う制御を示すブロック線図である。同図に示すV2_refは上述した第2の目標電圧値(電圧Vの目標値)、Iはコンピュータ20から順次供給される出力電流Iの目標値(充放電パターン)、ηは装置効率、Vrmsは系統電源30の電圧実効値、V,V,I,Iはそれぞれ系統電源30のd軸電圧,q軸電圧,d軸電流,q軸電流、fは系統電源30の周波数、θは系統電源30の電圧位相である。
【0058】
上述したように、AC/DCコンバータ制御部14には、センサによってモニタリングされた線間電圧Vuv,Vwv、相電流I,I、及び電圧V,Vが供給される。AC/DCコンバータ制御部14は、これらのモニタ値からの演算により、上記各物理量のうち、電圧実効値Vrms、d軸電圧V、q軸電圧V、d軸電流I、q軸電流I、及び電圧位相θを取得する。なお、系統電源30が商用電源である場合、電圧実効値Vrmsはほぼ一定値となる。第2の目標電圧値V2_ref、周波数f、装置効率ηは、予め人の手によって、AC/DCコンバータ制御部14に設定される。
【0059】
図5に示すように、AC/DCコンバータ制御部14はまず、電圧Vのモニタ値(第3のモニタ値)と電圧Vの目標値V2_refとの偏差に基づくPI制御(第2のフィードバック演算)を行う(ステップS1)。なお、PI制御は、比例動作及び積分動作からなるフィードバック制御である。これにより、d軸電流Iの第1の仮目標値Id_fbが生成される。この第1の仮目標値Id_fbは、電圧Vと目標値V2_refとが等しくなる方向に制御された値となる。
【0060】
また、AC/DCコンバータ制御部14は、出力電流Iの目標値Iに基づくフィードフォワード制御(第2のフィードフォワード演算)を行う(ステップS2)。具体的には、まず出力電流Iの目標値Iに電圧Vのモニタ値(第4のモニタ値)と装置効率の逆数1/ηとを順次乗ずることにより、出力電力の目標値Pout_ffを算出する。そして、この目標値Pout_ffに電圧実効値Vrmsの逆数1/Vrmsをさらに乗ずることにより、d軸電流Iの第2の仮目標値Id_pffを生成する。
【0061】
次に、AC/DCコンバータ制御部14は、ここまでの制御によって生成したd軸電流Iの第1の仮目標値Id_fbと第2の仮目標値Id_pffとを加算することにより、d軸電流Iの目標値Id_refを生成する。そして、この目標値Id_refと、各種モニタ値から算出したd軸電流Iとの偏差に基づくPI制御を行う(ステップS3)。これにより、d軸電圧Vの目標値Vd_refと、実際のd軸電圧Vとの差分が生成される。この差分は、d軸電流Iとその目標値Id_refとが等しくなる方向に制御された値となる。AC/DCコンバータ制御部14は、生成された差分と、各種モニタ値から算出したd軸電圧Vとを加算することにより、d軸電圧Vの目標値Vd_refを生成する。
【0062】
以上の制御と並行して、AC/DCコンバータ制御部14は、電圧実効値Vrmsに2πfc(cは、図2に示したキャパシタCの静電容量)を乗することによりq軸電流Iの目標値Iq_refを生成し、さらにこの目標値Iq_refと、各種モニタ値から算出したq軸電流Iとの偏差に基づくPI制御を行う(ステップS4)。これにより、q軸電圧Vの目標値Vq_refと、実際のq軸電圧Vとの差分が生成される。この差分は、q軸電流Iとその目標値Iq_refとが等しくなる方向に制御された値となる。AC/DCコンバータ制御部14は、生成された差分と、各種モニタ値から算出したq軸電圧Vとを加算することにより、q軸電圧Vの目標値Vq_refを生成する。なお、以上のq軸に関わる制御は、図2に示したキャパシタCによる位相ずれを補償するためのものである。
【0063】
次に、AC/DCコンバータ制御部14は、dq座標系からrθ座標系への座標変換を行う。具体的には、次の式(1)及び式(2)により、電圧の絶対値Vabsと角度差分Δθとを算出する。そして、電圧の絶対値Vabsに電圧Vのモニタ値を乗ずることによって変調率mrefを生成するとともに、角度差分Δθに、各種モニタ値から算出した電圧位相θを加算することにより、変調位相mphaseを生成する。こうして生成された変調率mref及び変調位相mphaseは、制御量Sの目標値(制御パターン)として、図2に示す制御部4aに供給される。
【0064】
【数1】

【0065】
制御部4a(図2)は、スイッチ素子SWの変調率mref及び変調位相mphaseが、AC/DCコンバータ制御部14から供給された目標値に等しくなるよう、スイッチ素子SWを構成する各トランジスタのオンオフ状態を制御する。この制御の結果、充放電パターンに含まれる出力電流Iの目標値の変化は、その変化が電圧Vの変化として現れるのを待たずに、AC/DCコンバータ4の出力電圧に直ちに反映されることになる。これは、AC/DCコンバータ制御部14から供給される制御量Sの目標値が、充放電パターンに基づくフィードフォワード制御の結果を反映した値となっていることによるものである。したがって、回生型充放電装置1では、電圧Vの変動が抑制され、キャパシタC(図1)は容量の小さなもので足りることになる。
【0066】
次に、図6は、絶縁DC/DCコンバータ制御部15が行う制御を示すブロック線図である。同図に示すV1_refは、上述した第1の目標電圧値(電圧Vの目標値)である。この第1の目標電圧値V1_refは、予め人の手によって、AC/DCコンバータ制御部14に設定される。その他、上述したように、出力電流Iの目標値Iはコンピュータ20から順次供給され、電圧V,V,Vについては、回生型充放電装置1の各部に設けたセンサからモニタリング結果が供給される。
【0067】
図6に示すように、絶縁DC/DCコンバータ制御部15はまず、電圧Vのモニタ値(第1のモニタ値)と電圧Vの目標値V1_refとの偏差に基づくPI制御(第1のフィードバック演算)を行う(ステップS10)。これにより、第1の仮位相シフト量φfbが生成される。この第1の仮位相シフト量φfbは、電圧Vと目標値V1_refとが等しくなる方向に制御された値となる。
【0068】
また、絶縁DC/DCコンバータ制御部15は、出力電流Iの目標値Iに基づくフィードフォワード制御(第1のフィードフォワード演算)により、第2の仮位相シフト量φpffを生成する(ステップS11)。具体的には、まず出力電流Iの目標値Iに電圧Vのモニタ値(第4のモニタ値)と装置効率の逆数1/ηとを順次乗ずることにより、出力電力の目標値Pout_ffを算出する。そして、絶縁DC/DCコンバータ5の電力伝達特性を示す次の式(3)に目標値Pout_ffを代入し、式(3)をφpffについて解くことにより、目標値Pout_ffを第2の仮位相シフト量φpffに変換する。ただし、式(3)内のLは図3に示したリアクトルLのインダクタンスであり、fは系統電源30の周波数である。これらの具体的な値は、予め人の手によって、絶縁DC/DCコンバータ制御部15に設定される。
【0069】
【数2】

【0070】
そして、絶縁DC/DCコンバータ制御部15は、第1の仮位相シフト量φfbと第2の仮位相シフト量φpffとを加算することにより、位相シフト量φを生成する。こうして生成された位相シフト量φは、制御量Sの目標値(制御パターン)として、図3に示す制御部5aに供給される。
【0071】
制御部5a(図3)は、インバータ6,7の位相シフト量φが、絶縁DC/DCコンバータ制御部15から供給された目標値に等しくなるよう、インバータ6,7を構成する各トランジスタのオンオフ状態を制御する。この制御の結果、充放電パターンに含まれる出力電流Iの目標値の変化は、その変化が電圧Vの変化として現れるのを待たずに、絶縁DC/DCコンバータ5の出力電圧に直ちに反映されることになる。これは、絶縁DC/DCコンバータ制御部15から供給される制御量Sが、充放電パターンに基づくフィードフォワード制御の結果を反映した値となっていることによるものである。したがって、回生型充放電装置1では、電圧Vの変動が抑制され、キャパシタC(図1)についても、容量の小さなもので足りることになる。
【0072】
最後に、図7は、DC/DCコンバータ制御部12が行う制御を示すブロック線図である。同図に示す出力電流I1P,I2P,I3P,I1N,I2N,I1N及び出力電流Iはそれぞれ、上述したように、DC/DCコンバータ3に設けたセンサから供給される。また、出力電流Iの目標値Iは、コンピュータ20から順次供給される。
【0073】
図7に示すように、DC/DCコンバータ制御部12は、出力電流Iのモニタ値と出力電流Iの目標値Iとの偏差に基づくPI制御を行う(ステップS20)。これにより、変調率mが生成される。また、DC/DCコンバータ制御部12は、出力電流Iの目標値Iの1/3の値と、出力電流I1P,I2P,I3Pそれぞれとの偏差に基づくP制御を行う(ステップS21〜S23)とともに、出力電流Iの目標値Iの−1/3の値と、出力電流I1N,I2N,I1Nそれぞれとの偏差に基づくP制御を行う(ステップS24〜S26)。なお、P制御は、比例動作のみからなるフィードバック制御である。最後に、DC/DCコンバータ制御部12は、ステップS21〜S23それぞれの結果に変調率mを加算することにより変調率m1P,m2P,m3Pを生成し、ステップS24〜S26それぞれの結果に変調率−mを加算することにより変調率m1N,m2N,m3Nを生成する。
【0074】
以上のようにして生成された変調率m1P,m2P,m3P,m1N,m2N,m3Nは、制御量Sの目標値(制御パターン)として、図4に示す制御部3aに供給される。
【0075】
制御部3a(図4)は、スイッチ素子SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3Nそれぞれの変調率m1P,m2P,m3P,m1N,m2N,m3Nが、DC/DCコンバータ制御部12から供給された目標値に等しくなるよう、これらのスイッチ素子SWを各トランジスタのオンオフ状態を制御する。この制御の結果、出力電流Iは充放電パターンに含まれる出力電流Iの目標値に等しくなり、出力電流I1P,I2P,I3P,I1N,I2N,I1Nは互いに等しくなる。
【0076】
以上説明したように、本実施の形態による回生型充放電装置1によれば、コントローラ10において、DC/DCコンバータ3の出力電流Iの目標値の変化パターンに対応する直流電力生成回路2の制御量(スイッチ素子SWの変調率mref及び変調位相mphase、並びにインバータ6,7の位相シフト量φ)の目標値(制御パターン)を算出し、これに基づいて直流電力生成回路2の制御量を制御しているので、DC/DCコンバータ3の出力電流Iの急激な変化に対しても、直流電力生成回路2の出力電圧の変動を抑制することが可能になる。したがって、直流電力生成回路2とDC/DCコンバータ2の間に設けられるキャパシタCの容量を、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【0077】
また、直流電力生成回路2内のAC/DCコンバータ4と絶縁DC/DCコンバータ5の間に設けられるキャパシタCの容量についても、背景技術に比べて小さくすることが可能になる。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0079】
例えば、上記実施の形態では、コントローラ10の内部で、コンピュータ20から順次供給される出力電流Iの目標値に基づいて、各制御量の目標値(制御パターン)を逐一算出していた。しかし、コントローラ10は、DC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンと、該変化パターンに対応する直流電力生成回路2の各制御量の制御パターンとにアクセス可能に構成されていればよく、各制御量の目標値(制御パターン)の具体的な取得の方法は、必ずしも上記のような算出によらなくてもよい。
【0080】
具体的な例を挙げると、試験対象バッテリ40の特性が予め分かっている場合などには、時間と出力電流Iの目標値と各制御量の目標値とを予め対応付けたテーブルをコントローラ10又はコンピュータ20に記憶しておき、このテーブルから逐次、出力電流Iの目標値とともに各制御量の目標値を読み出すことにより、各制御量の目標値を取得することとしてもよい。
【0081】
また、コンピュータ20から順次供給される出力電流Iの目標値Iに代え、DC/DCコンバータ3の出力電流Iを用いて各制御量の目標値(制御パターン)を算出することとしてもよい。つまり、図6及び図7に示した制御において、出力電流Iの目標値Iの代わりに出力電流Iのモニタ値(第5のモニタ値)を用いてもよい。出力電流Iのモニタ値は、DC/DCコンバータ制御部12の制御により、DC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンに対応した値となる。したがって、このような算出方法を採用した場合であっても、算出された各制御量の目標値(制御パターン)はDC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンに対応した値となり、第1のフィードフォワード演算(図6のステップS11)及び第2のフィードフォワード演算(図5のステップS2)はともに、DC/DCコンバータ3の出力の目標値の変化パターンに基づくフィードフォワード演算となる。なお、出力電流Iの目標値Iの代わりに出力電流Iのモニタ値を用いることは、制御中に算出される出力電力の目標値Pout_ffがDC/DCコンバータ3の現在の出力電力に等しくなることから、出力電力の目標値Pout_ffに代えてDC/DCコンバータ3の出力電力のモニタ値を用いることと等価である。
【0082】
また、上記実施の形態では、直流電力生成回路2として、AC/DCコンバータ4と絶縁DC/DCコンバータ5からなる2段構成の回路を用いたが、本発明は、これとは異なる構成を有する直流電力生成回路2にも適用可能である。例えば、絶縁が必要ない場合には絶縁DC/DCコンバータ5を省略してもよいが、そのような直流電力生成回路2にも本発明は適用可能である。また、系統電源30が直流電源である場合、直流電力生成回路2内にAC/DCコンバータ4を設ける必要はないが、そのような直流電力生成回路2にも本発明は適用可能である。
【0083】
また、上記実施の形態では、充放電パターンとして出力電流Iの目標値の変化パターンを用いたが、上述したように、出力電力の目標値の変化パターンを用いてもよい。この場合、図7に示したDC/DCコンバータ制御部12の処理は、出力電力のモニタ値と出力電力の目標値とに基づく処理に置き換えられる。また、図5及び図6に示したAC/DCコンバータ制御部14及び絶縁DC/DCコンバータ制御部15の処理では、コンピュータ20から供給される出力電力の目標値をそのまま、出力電力の目標値Pout_ffとして用いることが可能になる。
【0084】
また、上記実施の形態では、周波数f及び装置効率ηについて予め人の手によって、AC/DCコンバータ制御部14に設定されるとしたが、これらの各物理量もセンサによってモニタリングすることとしてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態による絶縁DC/DCコンバータ制御部15では、第1の仮位相シフト量φfbと第2の仮位相シフト量φpffとを算出し、これらを加算することにより位相シフト量φを生成していた(図5参照)が、図8に示すように、電圧Vのモニタ値と電圧Vの目標値V1_refとの偏差に基づくPI制御(第1のフィードバック演算)を、出力として第1の仮目標電力値Pfbが出力されるように構成し(ステップS12)、この第1の仮目標電力値Pfbと、出力電力の目標値Pout_ffとを加算することによって得られる第2の仮目標電力値Pfb2を式(3)によって位相シフト量に変換することにより(ステップS13)、制御量Sの目標値(制御パターン)としての位相シフト量φを生成することとしてもよい。この場合、ステップS13の変換制御が、出力電流Iの目標値Iに基づくフィードフォワード制御(第1のフィードフォワード演算)に含まれることになる。
【符号の説明】
【0086】
1 回生型充放電装置
3 3相DC/DCコンバータ
3a 制御部
4 AC/DCコンバータ
4a 制御部
5 絶縁DC/DCコンバータ
5a 制御部
6,7 インバータ
8 トランス
10 コントローラ
12 DC/DCコンバータ制御部
13 直流電力生成回路制御部
14 AC/DCコンバータ制御部
15 絶縁DC/DCコンバータ制御部
20 コンピュータ
30 系統電源
40 試験対象バッテリ
SW,SW1P,SW2P,SW3P,SW1N,SW2N,SW3N スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から直流電力を生成する直流電力生成回路と、
前記直流電力生成回路の出力を受けて動作するDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータの出力の目標値の変化パターンと、該変化パターンに対応する前記直流電力生成回路の制御量の制御パターンとにアクセス可能に構成されたコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記DC/DCコンバータの前記出力をモニタリングすることによって得られる第1のモニタ値が前記目標値と等しくなるよう、前記DC/DCコンバータを制御するDC/DCコンバータ制御手段と、
前記制御パターンに基づいて前記直流電力生成回路の前記制御量を制御する直流電力生成回路制御手段とを有する
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記直流電力生成回路は、
前記系統電源から直流電力を生成するAC/DCコンバータと、
前記AC/DCコンバータの出力を受けて動作する絶縁DC/DCコンバータとを有し、
前記制御量は、前記絶縁DC/DCコンバータを制御するための第1の制御量と、前記AC/DCコンバータを制御するための第2の制御量とを含み、
前記直流電力生成回路制御手段は、
前記制御パターンに基づいて前記絶縁DC/DCコンバータの前記第1の制御量を制御する絶縁DC/DCコンバータ制御手段と、
前記制御パターンに基づいて前記AC/DCコンバータの前記第2の制御量を制御するAC/DCコンバータ制御手段とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記絶縁DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第2のモニタ値と、前記絶縁DC/DCコンバータの出力電圧の目標値である第1の目標電圧値と、前記変化パターンとに基づいて、前記制御パターンのうち前記第1の制御量に関する部分を生成する
ことを特徴とする請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記第1の目標電圧値と前記第2のモニタ値の偏差に基づく第1のフィードバック演算と、前記変化パターンに基づく第1のフィードフォワード演算とを行い、前記第1のフィードバック演算の結果と前記第1のフィードフォワード演算の結果とに基づいて、前記制御パターンのうち前記第1の制御量に関する部分を生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の直流電源装置。
【請求項5】
前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電流の目標値であり、
前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記目標値とを乗算することにより電力値を算出し、
前記第1のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算である
ことを特徴とする請求項4に記載の直流電源装置。
【請求項6】
前記絶縁DC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記DC/DCコンバータの出力電流をモニタリングすることによって得られる第5のモニタ値とを乗算することにより電力値を算出し、
前記第1のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算である
ことを特徴とする請求項4に記載の直流電源装置。
【請求項7】
前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電力の目標値であり、
前記第1のフィードフォワード演算は、前記目標値に対する演算である
ことを特徴とする請求項4に記載の直流電源装置。
【請求項8】
前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記AC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第3のモニタ値と、前記AC/DCコンバータの出力電圧の目標値である第2の目標電圧値と、前記変化パターンとに基づいて、前記制御パターンのうち前記第2の制御量に関する部分を生成する
ことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか一項に記載の直流電源装置。
【請求項9】
前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記第2の目標電圧値と前記第3のモニタ値の偏差に基づく第2のフィードバック演算と、前記変化パターンに基づく第2のフィードフォワード演算とを行い、前記第2のフィードバック演算の結果と前記第2のフィードフォワード演算の結果とに基づいて、前記制御パターンのうち前記第2の制御量に関する部分を生成する
ことを特徴とする請求項8に記載の直流電源装置。
【請求項10】
前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電流の目標値であり、
前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記目標値とを乗算することにより電力値を算出し、
前記第2のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算である
ことを特徴とする請求項9に記載の直流電源装置。
【請求項11】
前記AC/DCコンバータ制御手段は、前記DC/DCコンバータの出力電圧をモニタリングすることによって得られる第4のモニタ値と、前記DC/DCコンバータの出力電流をモニタリングすることによって得られる第5のモニタ値とを乗算することにより電力値を算出し、
前記第2のフィードフォワード演算は、算出された前記電力値に対する演算である
ことを特徴とする請求項9に記載の直流電源装置。
【請求項12】
前記目標値は前記DC/DCコンバータの出力電力の目標値であり、
前記第2のフィードフォワード演算は、前記目標値に対する演算である
ことを特徴とする請求項9に記載の直流電源装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の直流電源装置を備え、
前記DC/DCコンバータの出力はバッテリに供給され、
前記変化パターンは、前記バッテリの充放電パターンである
ことを特徴とするバッテリ評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−59200(P2013−59200A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196030(P2011−196030)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【特許番号】特許第5128696号(P5128696)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(597144439)Mywayプラス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】