説明

直腸内クワドラチュアコイルおよびそのためのインターフェース装置

【課題】MRシステムと併用するための腔内プローブにより、内部的な解剖学的構造の画像およびスペクトルを取得することを提供する。
【解決手段】腔内プローブは、バルーン型の筺体内に、MR信号の垂直および水平の両方の成分に対する反応性を持つ単一素子クワドラチュアコイルを内蔵し、その出力線によって、クワドラチュアコイルは、専用のインターフェース装置に差し込まれ、クワドラチュアコイルがMRシステムと連動するよう設計される。インターフェース装置内の出力線の電気的長さおよび位相シフティングネットワークと共に、コイル内の駆動コンデンサにより、MRシステムにより生じる伝送磁場から、クワドラチュアコイルがデカップリングされる。インターフェース装置内でのプリアンプ、パワースプリッティングおよび合成ネットワークにより、MR信号の電圧信号が処理され、それらがMRシステムの入力ポートに伝達されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明の分野>
本発明は、全般的に、磁気共鳴(MR)システムを用いて腔内構造の画像およびスペクトルを取得するシステムおよび方法に関連する。さらに特定すれば、本発明は、MR処置中に励起された原子核から得られたMR信号からの画像および分光分析結果を提供することのできる、直腸内クワドラチュアコイル(quadrature endorectal coil)および関連するインターフェース装置に関する。
【背景技術】
【0002】
<関連技術に関する簡単な説明>
下記の背景情報は、以下に開示した発明およびそれが一般的に使用される環境についての読者の理解を助けるために提供したものである。本明細書で使用した用語は、本明細書において明示的または黙示的のいずれかのかたちで別途明瞭な記載のない限り、何らかの特定の狭い解釈に限定されることは意図していない。
【0003】
磁気共鳴画像法(MRI)は、ヒトの身体の内部の高品質の画像を生成する非侵襲性方法である。これにより、医療従事者は、手術することなく、またはX線などの電離放射線を使用することなく、ヒトの身体の内側を見ることができる。画像は、癌やその他の形態の病状が、多くの場合、健康な組織と視覚的に区別できるほど高い解像度のものである。磁気共鳴の技術およびシステムは、分光分析を実施し、それによって体組織またはその他の材料の化学物質含有量を判定できるようにするという目的のためにも開発されてきた。
【0004】
MRIでは、体内の軟組織、筋肉、神経および骨の詳細な画像を生成するために強力な磁石、電波およびコンピュータ技術を使用する。これは、生命体内の全細胞で豊富に存在する原子である水素原子の基本的な性質を利用することによってなされる。磁場がない場合、水素原子の原子核は、あらゆる方向にランダムに、コマのようにスピン、つまり歳差運動する。ところが、強い磁場に晒されると、水素原子核のスピン軸は磁場の方向に整列する。これは、水素原子の原子核が、磁場の方向と整列する固有の強い傾向である、大きな磁性モーメントと呼ばれるものを持つためである。集合的に、撮像される領域の水素原子核が、磁場と平行な磁化の平均ベクトルを生成する。
【0005】
典型的なMRIシステム、つまりスキャナーには、主要磁石、3個の傾斜コイル、高周波(RF)アンテナ(しばしば、全身コイルと呼ばれる)、およびそこからオペレーターがシステムを制御できるコンピュータステーションが含まれる。ただし、MRIシステムの主な構成要素は、主要磁石である。これは、一般に事実上超伝導で、かつ円筒形の形状である。その穴(MRI処置時に患者がそのなかに配置される開口部)の内部で、主要磁石が、よくB0磁場と呼ばれることのある強い磁場を生成するが、これは、一様でありかつ静的(非変化)である。このB0磁場は、z方向と呼ばれる穴の縦軸に沿った向きであり、これが、体内の水素原子核の磁化ベクトルを強制的にその軸と平行になるようにさせる。この整列において、原子核は、全身コイルから適切な周波数のRFエネルギーを受ける準備ができている。この周波数は、ラーモア周波数として知られ、また等式ω = γB0で規定され、この式中、ωはラーモア周波数(この値で水素原子が歳差運動する)で、γはジャイロ磁気係数、およびB0は静磁場の強度である。
【0006】
一般に、RFアンテナ、つまり全身コイルは、RFエネルギーのパルスの送信および水素原子核内でそれによって誘発された結果的な磁気共鳴(MR)信号の受信の両方のために使用される。具体的には、その送信サイクル中に、身体コイルがRFエネルギーを円筒形の穴に一斉送信する。このRFエネルギーにより、RF B1磁場としても知られている高周波の磁場が生成されるが、その磁力線は、水素原子核の磁化ベクトルに対して直角の線の方向を向く。RFパルスによって、水素原子核のスピン軸が主な(B0)磁場に対して傾斜し、こうして正味の磁化ベクトルがz方向から既知の角度だけそれることになる。ところが、RFパルスは、RFパルスの周波数でその軸の周りを歳差運動する水素原子核にのみ影響を及ぼす。言い換えれば、その周波数で「共鳴」する原子核のみが影響を受け、またこうした共鳴は3個の傾斜コイルの動作と関連して実現する。
【0007】
傾斜コイルは電磁コイルである。それぞれの傾斜コイルは、その穴内部の3つの空間的方向(x、y、z)のうちいずれか1つに沿って、直線的に変化する静磁場を生成するために使用される。傾斜コイルは、主要磁石の内部に配置され、特定の方法で非常に速くオン・オフすると非常に局部的なレベルで主要磁場を変化させることができる。こうして、主要磁石と共に、傾斜コイルは、様々な撮像技術に従い動作させることができ、水素原子核は――所定の任意の時点または所定の任意のストリップ、スライスまたは容量単位で――適切な周波数のRFパルスが適用されたときに、共鳴を実現することができるようになる。RFパルスに反応して、選択した領域において歳差運動する水素原子は、身体コイルから伝送中のRFエネルギーを吸収し、こうしてその磁化ベクトルを強制的に主要な(B0)磁場の方向から離れて傾斜させる。身体コイルがオフになったとき、以下でさらに説明するとおり、水素原子核はMR信号の形態でRFエネルギーを放出しはじめる。
【0008】
画像を取得するために使用できるよく知られた1つの技術は、スピンエコー イメージング(画像化)技術と呼ばれる。この技術に従い動作すると、MRIシステムはまず1つの傾斜コイルを起動し、z軸に沿って磁場勾配を設定する。これは、「スライス選択勾配」と呼ばれ、またRFパルスが適用されたときに設定され、およびRFパルスがオフになったときにオフになる。これによって、撮像中の領域のスライス内部に位置する水素原子核内でのみ共鳴が起こるようになる。対象とする平面の両側にあるいかなる組織でも共鳴は起こらない。RFパルスがなくなった直後、起動したスライス内にあるすべての原子核は「同相」であり、すなわちそれらの磁化ベクトルがすべて同一の方向を指す。それ自体の装置にまかされているが、そのスライス内のすべての水素原子核の正味磁化ベクトルは、緩和され、よってz方向に再び整列する。ところがそのかわり、第二の傾斜コイルが短時間のあいだ起動し、y軸に沿って磁場勾配が生成される。これは、「位相エンコード勾配」と呼ばれる。これによって、そのスライス内の原子核の磁化ベクトルは、勾配の最も弱い端と最も強い端との間を移動するにともない、次第に異なる方向を指すようになる。次に、RFパルス、スライス選択勾配および位相エンコード勾配がオフになった後、第三の傾斜コイルが短時間のあいだ起動し、x軸に沿って勾配が生成される。これは、「周波数エンコード勾配」または「読取り傾斜」と呼ばれるが、それはMR信号が最終的に計測されるときにのみ適用されるためである。これにより、緩和された磁化ベクトルが差動的に再び励起されることになり、勾配の低い端に近い原子核がより速い速度で歳差運動し始めるようになり、また高い端にあるものはそれよりもさらに高速となる。これらの原子核が再び緩和されると、最も速いもの(勾配の高い端にあったもの)が最も高い周波数の電波を放出する。
【0009】
集合的に、傾斜コイルによりMR信号を空間的にエンコードでき、その共振信号の周波数および位相によって撮像中の領域の各部分が一様に定義されるようになる。特に、水素原子核が緩和すると、それぞれがミニチュアの無線装置となり、それが存在する局部の微小環境に応じて、時間経過とともに変化する特徴的なパルスが放出される。例えば、脂肪中の水素原子核は、水中のものとは異なる微小環境を持ち、よって異なるパルスを送信する。異なる組織の異なる水対脂肪比と共に、これらの差異により、異なる組織は、異なる周波数の無線信号を送信する。その受信サイクル中、身体コイルは、これらのミニチュアの無線送信を検出するが、これがときには集合的にMR信号と呼ばれる。身体コイルから、これらの固有の共振信号は、MRシステムのレシーバーに伝達され、そこでそれに対応する数学的データに変換される。適正なSN比(SNR)の画像が形成されるためには、処置全体が複数回反復される必要がある。多次元フーリエ変換を用いて、MRシステムは、数学的データを二次元またはさらには三次元画像に変換できる。
【0010】
身体の特定の部分についてさらに詳細な画像が必要なとき、全身コイルの代わりに局部コイルが使用されることがある。局部コイルは、ボリュームコイルまたは表面コイルの形態をとりうる。ボリュームコイルは、撮像する体積(例えば、頭、腕、手首、脚、または膝)を覆うまたは囲むために使用される。ところが、表面コイルは、下にある対象領域(例えば、腹部、胸部および/または骨盤の領域)が撮像できるように、患者の表面上に配置されるだけである。さらに、局部コイルは、受信専用コイルとして、または送信/受信(T/R)コイルとして動作するよう設計できる。前者は、上述のとおりMRI処置に反応して身体により生成されたMR信号を検出することだけができる。ところが、T/Rコイルは、MR信号の受信と、体組織内で共鳴を誘発するための必要条件であるRF B1磁場を生成するRFパルスの送信の両方ができる。
【0011】
受信専用コイルについては、表面またはボリュームのどちらか単一の局部コイルを使用してMR信号を検出することが、MRIの分野で周知である。初期の受信コイルは、単に線形コイルであったが、これは対象領域によって生成されるMR信号の2つの直角(すなわち、垂直のMXおよび水平のMY)成分のうち1つのみを検出できることを意味する。線形コイルの一例は、図1に示す単一ループコイルである。このループは、ループの平面に対して直角/垂直の方向の磁場(すなわち、MR信号)を検出できるのみである。線形コイルの別の例は、図2に示すバタフライコイルである。単一ループと異なり、バタフライコイルは、コイルの平面と平行の向きの磁場に対してのみ反応性がある。これは、バタフライコイルでは、ループを中央で捻って、中点の周りに2つの同一のサブループを形成しているためである。サブループ内を流れる電流は同一であるが、逆回転の向きに流れるため、対象的な構造のうち一方のサブループを通して流れる電流によって生成された磁束は等しいが、他方のサブループ内の電流による磁束と反対である。従って、構造の中点の周りでは、逆回転の電流による垂直の磁場は反対となり、よって互いに打ち消しあう。ところが、それらの電流によって生成された水平の磁場は合成され、コイルの平面に平行な向きの磁場が得られる。
【0012】
単一ループおよびバタフライコイル素子は、別個に使用したときには線形コイルとして機能するものの、――一方の上に他方を積み重ねたとき――集合的にクワドラチュアコイルとして機能する。こうした2つの局部コイルを積み重ねておよび電子的に合成して、2コイル素子構造を形成したとき、結果的に生じるクワドラチュアコイルは、患者から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出することができるようにされる。米国特許第4,816,765号に教示があるとおり、2つの線形コイル素子を物理的に積み重ねてこうしたクワドラチュアコイルを形成することは、MRIの分野で周知である。
【0013】
線形の受信コイルと比較すると、クワドラチュア受信コイルにより、MRIシステムは、著しく高い、一般的に線形コイルよりも41%程度高いSNRの画像を提供できるようになる。ところが、クワドラチュアモードの検出によってもたらされる改善はあるものの、単一コイル方式では、画質という点でなおも改善が求められている。単一コイル方式に固有の欠点は、対象領域全体についてMR信号を取得するために、たった1つのコイル構造しか使用されていないことに原因がある。
【0014】
フェーズドアレイコイルシステムは、単一コイル方式の欠点を克服するために開発された。大きな1つの局部コイルの代わりに、フェーズドアレイ方式では複数の小さめの局部コイルを使用するが、そうしたそれぞれのコイル素子は対象領域の一部分のみを覆うかまたは囲い込む。例えば、こうした2個のコイル素子を持つシステムにおいて、それぞれは、対象領域のおよそ半分を覆うかまたは囲い込むことになるが、2個のコイル素子は一般に磁性の分離の目的で部分的に重複する。2個のコイル素子は、それぞれの部分から同時にMR信号を取得し、また重複による有害な相互作用は起こさない。それぞれの素子が対象領域の半分のみを覆うため、そうしたそれぞれの素子は、その対象範囲内の領域について高めのSNRでMR信号を受信することができる。よって、フェーズドアレイの局部コイル素子が小さいほど、MRIシステムには、対象領域全体について、単一の大きな局部コイルだけから得ることのできるものよりも高い解像度の画像を生成するために必要な信号データが集合的に供給される。
【0015】
フェーズドアレイコイルシステムの一例は、MEDRAD, Inc.(ペンシルベニア州インディアノーラ)販売の胴アレイ(Torso Array)である。胴アレイには、4個の表面コイルが含まれ、そのうち2個は前方パドルに配置され、また他の2個は後部パドルに配置されている。2つのパドルは、腹部、胸部および骨盤の領域付近で患者のそれぞれ前面および後面に当てて配置されるように設計されている。胴アレイは、複数のレシーバーを持つデータ取得システムを有するMRシステムと共に使用するために設計されている。2個の前面コイルおよび2個の後面コイルのそれぞれ1本ずつからなる、胴アレイの4本のリードは、個別のレシーバーに連結でき、それぞれのレシーバーが受信した信号を増幅およびデジタル化する。次に、MRシステムは、個別のレシーバーからのデジタルデータを合成して、その全体的なSNRが、対象領域全体を覆う単一の局部コイル、あるいはさらには前方および後部の2個の大き目の局部コイルから得ることのできるものより良好な画像を形成する。
【0016】
内部身体構造の画像を取得するために腔内プローブを使用することも周知である。いくつかの先行技術の腔内プローブが、米国特許第5,476,095号および第5,355,087号および米国出願第10/483,945号および第11/719,253号(それぞれ、米国特許出願公報第2004/0236209A1号および第2009/0076378A1号として公開)に開示されているが、そのすべてが本発明の出願人に譲渡されており、参照することにより本明細書に組み込む。これらの参考文献で開示されている先行技術のプローブは、直腸、膣、および口といった身体の開口部に挿入するように設計されている。これらの参考文献では、そのそれぞれの腔内プローブとMR撮像および分光システムとを連結するように設計されているインターフェース装置も開示されている。腔内プローブを使用する方法は、米国特許第5,348,010号に開示されているが、これも本発明の出願人に譲渡されており、参照することにより本明細書に組み込む。
【0017】
先行技術のそれぞれのプローブは、その関連するインターフェース装置と共に動作させることにより、MRシステムは前立腺、結腸または頚部といった各種内臓の画像、およびそれらのための分光分析結果を生成することができるようになる。こうした腔内プローブには、一般的にシャフトおよびその末端部にあってその内部に局部コイルが収納されるバルーン型の筺体が含まれる。シャフトは、プローブの末端部を身体の開口部に挿入するとき、およびそこから抜き出すときにバルーンが収縮できる膨張可能な内腔を有する。開口部内に適切に配置された時点で、バルーンを膨張させて、その内部の局部コイルを撮像する内臓に近づけることができる。シャフト内の別の管腔を通した出力ケーブルによって、局部コイルが、腔内プローブを関連するインターフェース装置と接続するために使用される外部のプラグに接続されている。
【0018】
こうした腔内プローブの例には、BPX-15前立腺/直腸内コイル、PCC-15結腸直腸内コイル、BCR-15頚部コイルおよびBPX-30前立腺/直腸内コイルが含まれ、これらはすべて、MEDRAD, Inc.製である。これらの腔内プローブと共に使用されるインターフェース装置の例には、単チャンネルATD-II、4チャンネルATD-胴、4チャンネル1.5T MR64ERA、8チャンネル1.5T M64ERA8-HD、8チャンネル3.0T M128ERA8-HDの装置およびSiemens製およびPhilips製の各種スキャナー用1.5T & 3.0Tインターフェース装置が含まれ、これらもMEDRAD, Inc.製である。
【0019】
ATD-IIインターフェース装置が、BPX-15プローブとMRシステムのレシーバーの1つと連結され、前立腺の画像またはスペクトルを供給するために使用されている。多チャンネルのインターフェース装置が、1つ以上の先行技術のプローブだけでなく、MEDRAD胴アレイも、MRシステムの複数のレシーバーと連結するために使用される。例えば、4チャンネル1.5T MR64ERAインターフェース装置をBPX-15プローブおよび胴アレイと連結するとき、MR64ERAインターフェース装置により、MRシステムは、前立腺についてだけでなく、周囲の生体構造、すなわち、腹部、胸部および骨盤の領域についての画像またはスペクトルも供給できるようになる。
【0020】
従来は、腔内プローブは、特定の磁界の強さのMRシステムと共に動作させるために、ループコイルを同調させ、電気的に均衡をとることができるように、それぞれ固有に作成された回路を持つにもかかわらず、単一のループコイルのみで設計されてきた。よって、これらの先行技術のプローブは、特にMR信号の2つのクワドラチュア成分のうち1つのみしか検出できないといった、他の線形コイルと同じ欠点がある。
【0021】
よって、内部コイル構造がMR信号の垂直および水平の両方の成分に対する反応性を有する腔内プローブをもたらすことが望ましい。しかしながら、腔内プローブの用途向けに設計されたクワドラチュアコイルは、できる限り小型でかつ柔軟性を持つ必要がある。その中のクワドラチュアコイルが、患者に対して最小限の不快感で、撮像する内臓の近くに配置できるように、拡張可能(膨張可能)および折り畳み可能(収縮可能)なバルーンまたはその他の適切な筺体内部に納めることができ、また従って、プローブの筺体が上述の身体の開口部に、およびそれを通して挿入可能としうる必要がある。上記の米国特許第4,816,765号で開示されているものなどのクワドラチュアコイル構造では十分ではない。その積み重なった二素子構造は、相互間のクロスカップリングを避けるために個別の素子が精密に整列していなければならないため、最適なSNRを実現することを困難なものにしている。最適なアラインメントであっても、MR信号の垂直および水平の両方の成分を検出する積み重なった構造の能力は、本質的に損なわれている。
【0022】
従って、腔内プローブでの使用、およびその他の表面コイル製品での使用に適した、単一素子のクワドラチュアコイル、およびそのための関連するインターフェース装置を発明することが望ましい。腔内プローブ製品については、そのための適切な筺体内部に簡単に組み込むことができ、また上述の身体の開口部に簡単に挿入ができ、またその内部で操作ができるように、クワドラチュアコイルをできる限り小型にすることが理想的である。あらゆる症状において、患者の表面、またはその内部の内臓に合わせることができ、また従って下にある対象領域にできるだけ近く配置できるように、こうしたクワドラチュアコイルはできるだけ柔軟性があることが理想的である。そうすれば、こうしたクワドラチュアコイルによって、先行技術のクワドラチュアコイルと比較して、大きな対象範囲が提供され、SNR性能の改善がなされることになる。
【発明の概要】
【0023】
本発明の現時点での好ましい実施形態において、クワドラチュアコイルは、対象領域の画像またはスペクトルを取得するためのMRシステムと併用することができる。クワドラチュアコイルには、柔軟性のある誘電体材料の基板、柔軟性のある基板の一方の側に結合された第一の導体パターンおよび柔軟性のある基板の反対側に結合された第二の導体パターンが含まれる。第一の導体パターンには、概して対称的な形状を持つ外側の伝導性ループが含まれ、その一方の端で駆動ギャップが画定され、またその他方の端で第一の同調ギャップが画定される。第二の導体パターンには、駆動コンデンサセグメントおよび同調導体セグメントが含まれる。駆動コンデンサセグメントは、駆動ギャップに対称的に重複し、また、反対側にある外側の伝導性ループおよびそれらの間にある柔軟性のある基板と共に、ほぼ同じ値でその間の接続ノードを持つ第一の駆動コンデンサおよび第二の駆動コンデンサを形成する。同調導体セグメントは、第一の同調ギャップに重複し、また、反対側にある外側の伝導性ループおよびそれらの間にある柔軟性のある基板と共に、ほぼ同じ値で、接続ノードとは全く反対の位置に位置するコモンノードを持つ、第一の同調コンデンサおよび第二の同調コンデンサを形成する。外側の伝導性ループと、駆動および同調導体セグメントは、単純ループ型コイルを形成し、そこにおいて第一および第二の駆動コンデンサは、その接続ノードにおいて、単純ループ型コイルの電気的な均衡とインピーダンス整合をとるための仮想接地を形成する。第一および第二の同調コンデンサによって、単純ループ型コイルは、MRシステムの動作周波数で共鳴し、そのためクワドラチュアコイルの平面と直交する向きのMR信号を検出することができるようにもなる。第一の導体パターンには、駆動および第一の同調ギャップの間に配置されているものの、外側の伝導性ループおよびその内部の駆動および第一の同調ギャップのどちらにも接続されていない内部導体セグメントも含まれる。第二の導体パターンには、駆動および同調導体セグメント間に延び、その内部の第二の同調ギャップを画定する中心導体セグメントも含まれる。内部導体セグメントは、第二の同調ギャップに重複し、また、反対側にある中心導体セグメントおよびそれらの間にある柔軟性のある基板と共に、そのリアクタンスが動作周波数での内部および中心導体セグメントの誘導リアクタンスと等しい第三の同調コンデンサを形成する。これによって、内部および中心導体セグメントが単純ループ型コイルと同調され、それによって、クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルを形成することができるようになる。結果としてできる単一構造のクワドラチュアコイルは、患者の対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出することができるようになっている。
【0024】
より広い態様において、本発明は、対象領域の画像またはスペクトルを取得するためのMRシステムと併用するためのクワドラチュアコイルを提供する。クワドラチュアコイルには、外側ループおよび外側ループを二分する中心導体が含まれる。外側ループは、クワドラチュアコイルの平面に直交する向きのMR信号を検出するよう設計されている。外側ループは、ほぼ同じ値で、外側ループ内およびその接続ノードに直列に配置され、電気的な均衡および外側ループのインピーダンス整合のための仮想接地を形成する第一の駆動コンデンサおよび第二の駆動コンデンサを含めた複数のコンデンサを持つ。外側ループには、外側ループ内に直列に配置され、接続ノードと全く反対の位置に位置するそのコモンノードのある、第一の同調コンデンサおよび第二の同調コンデンサも含まれる。第一および第二の同調コンデンサは、MRシステムの動作周波数で外側ループと共鳴するように選択されたほぼ同じ値を持つ。中心導体は、外側ループのコモンノードおよび接続ノードの間に延びている。中心導体は、動作周波数で同じ容量および誘導リアクタンスを持ち、また、外側ループと同調して、クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルを形成している。結果としてできる単一構造のクワドラチュアコイルは、患者の対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出することができるようになっている。
【0025】
本発明の関連する態様および現時点での好ましい実施形態において、インターフェース装置によって、クワドラチュアコイルとMRシステムを連結することができる。クワドラチュアコイルは、第一および第二のポートを持ち、そのそれぞれが、第一および第二のポートから出力された水平の向きのMR信号を表す電圧信号が0度離れ、および第一および第二のポートから出力された垂直の向きのMR信号を表す電圧信号が180度離れるように、患者の対象領域から発する水平および垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を出力することができる。インターフェース装置には、第一および第二の位相シフティングネットワーク、第一および第二のパワースプリッタ、0度コンバイナおよび180度コンバイナが含まれる。第一の位相シフティングネットワークは、クワドラチュアコイルの第一のポートを越えて接続することができ、そこから受信した電圧信号の位相を90度ずらすことができる。第二の位相シフティングネットワークは、クワドラチュアコイルの第二のポートを越えて接続することができ、そこから受信した電圧信号の位相を90度ずらすことができる。第一のスプリッタは、第一の位相シフティングネットワークによってずれた電圧信号の位相を分割し、第二のスプリッタは、第二の位相シフティングネットワークによってずれた電圧信号の位相を分割する。0度コンバイナは、第一のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号と、第二のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号を建設的に合成する。0度コンバイナはまた、第一のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を、第二のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号で破壊的に打ち消す。180度コンバイナは、第一のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号と、第二のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を建設的に合成する。180度コンバイナはまた、第一のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号を、第二のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号で破壊的に打ち消す。望ましくは、インターフェース装置には、2つのプリアンプネットワークも含まれるが、そのうち第一のものは、第一の位相シフティングネットワークと第一のスプリッタの間に配置され、第二のものは、第二の位相シフティングネットワークと第二のスプリッタの間に配置される。任意に、インターフェース装置にはさらに、0度コンバイナから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号と、180度コンバイナから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を合成するための90度ハイブリッドカップラーを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明およびその現時点での好ましいおよび代替的な実施形態は、下記の詳細な開示および添付図面を参照することでよりよく理解される。
【0027】
【図1】図1は、単一ループコイルおよびそれによって検知が可能な垂直方向を向いた磁場の概略図を示す。
【0028】
【図2】図2は、バタフライコイルおよびそれによって検知が可能な水平方向を向いた磁場の概略図を示す。
【0029】
【図3】図3は、本発明によるクワドラチュア直腸内コイルおよびそのためのインターフェース装置を簡略化した概略図である。
【0030】
【図4】図4は、1.5T MRシステムと共に動作するよう設計された、本発明のクワドラチュア直腸内コイルの詳細な概略図である。
【0031】
【図5】図5は、図4で示したクワドラチュアコイルの外側ループ内を、MR信号の垂直成分により誘発された電流がどのように流れるかを示す。
【0032】
【図6】図6は、図4で示したクワドラチュアコイル内に形成されたバタフライ型構造内を、MR信号の水平成分により誘発された電流がどのように流れるかを示す。
【0033】
【図7】図7は、本発明のクワドラチュア直腸内コイル用のインターフェース装置の詳細な回路図である。
【0034】
【図8】図8は、インターフェース装置の別の実施形態をフローチャートの形で図示したものである。
【0035】
【図9】図9は、3.0T MRシステムと共に動作するよう設計された、本発明のクワドラチュア直腸内コイルの詳細な概略図である。
【0036】
【図10】図10は、薄い柔軟性のある誘電体基板材料で作成した本発明のクワドラチュアコイルを、別個のレイヤで図示したものであって、この誘電体基板材料に対して両側に追加的かつ異なる導体パターンが結合されて、同調およびデカップリングに必要な伝導路およびコンデンサが形成されている。
【0037】
【図11】図11は、1.5T MRシステムと共に動作させることが意図された、柔軟性のある基板で設計されたクワドラチュアコイルが連結されたマイクロストリップの形態での出力線についての簡略化した図式である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<発明の詳細な説明>
その実施形態および関連する態様のすべてにおいて、以下に開示した本発明は、磁界の強さ1.0〜3.0 Teslaまたはその間の任意の値で動作するように設計されている磁気共鳴(MR)システムと共に使用することが理想的であるが、それよりも低いまたは高い磁界の強さで動作するMRシステムとの使用にも設計することができる。当技術は、磁石が水平または垂直の穴の向きまたは複合的変形で構成されている、また開いた、または閉じた穴で構成されているスキャナーに適用できる。
【0039】
本発明は、本明細書で特定の実施において、すなわち、クワドラチュア直腸内コイル――これは適切なハウジング内に組み込むことができ、前立腺の画像および/またはスペクトルを取得する直腸に挿入可能な腔内プローブを形成することができる――として説明しているが、発明は、口、膣または腔内プローブによって貫通可能なその他の開口部を通して到達可能なものなど、その他の対象領域からの画像および/またはスペクトルを取得するために適応させることが同様に可能であることが理解されるべきである。また、本明細書で提示した原理は、頚部、胴、四肢および身体のその他の構造の撮像が意図されたものなど、非常に広範囲の表面コイルアレイにも適用させることが可能であることが明らかである。
【0040】
図3〜11は、本発明、すなわち単一素子のクワドラチュア直腸内コイル、およびコイルと適切なMRシステムの入力ポートとを連結するためのインターフェース装置を図示している。すべての実施形態において、本発明のクワドラチュア直腸内コイルは、MR信号の垂直および水平の両方の成分に反応する単一素子構造として明示する。
【0041】
図4は、1.5T MRシステムと共に動作するよう設計された、本発明のクワドラチュア直腸内コイルの概略図である。一般的に100で示すクワドラチュアコイルには、外側ループ110、外側ループ110を二分する中心導体150、および出力線180が含まれる。外側ループ110には、第一および第二の駆動コンデンサ111、112と、第一および第二の同調コンデンサ121、122を含めた複数のコンデンサが含まれる。ほぼ同じ値の、駆動コンデンサ111および112は、外側ループ110内およびその接続ノード2に直列で配置され、電気的な均衡およびループのインピーダンス整合のための仮想接地を形成している。同調コンデンサ121および122も、外側ループ110内に直列で配置され、そのコモンノード3が接続ノード2と全く反対の位置に位置する。ほぼ同じ値の、同調コンデンサ121および122は、外側ループ110がMRシステムの動作周波数で共鳴するように選択される。その点において、外側ループ110は、4つのインダクタを持つものとして図4に示している。これらのインダクタの値は、単に、ループの伝導性(例えば、銅)のセグメントに固有のインダクタンスを表す。外側ループ110にあるコンデンサの値は、ループの容量リアクタンスが、動作周波数でのループの誘導リアクタンスと大きさが等しくなるように選択されてきた。個々のインダクタを、その目的で外側ループ110に組み込むこともできる。
【0042】
この様に、図4の外側ループ110は、1.5T MRシステムの動作周波数で患者から発せられるMR信号を検出するよう同調されている。外側ループ110の形状は、ループがその磁力線がループの平面に対して垂直な向きのMR信号のみを検出することができることを示している。ところが、上述の同調の仕組みは、それが検出した垂直の向きのMR信号を表す外側ループ110により出力された結果的な電圧信号について、180度の位相のずれを課すこともある。具体的には、接続ノード2の仮想接地に対して、第一の駆動コンデンサ111を越えて、すなわち第一のポートにおいて検出可能な電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ112を越えて、すなわち第二のポートにおいて検出可能な電圧信号の位相から180度である。この位相の差異の重要性は、下記に説明したインターフェース装置の動作に関連して明らかとなる。
【0043】
中心導体150は、接合部および外側ループ110のコモンノード2および3の間に延び、それらを均等に二分しており、そのためクワドラチュアコイル100の物理的および電気的な対称性を維持している。図4は、中心導体150を、その長さ方向に対称的に配置された2つのインダクタおよび同調コンデンサ151を持つものとして示したものである。外側ループ110と同様、これらのインダクタの値は、単に導体に固有のインダクタンスを表すだけである。同調コンデンサ151の値は、その動作周波数でのリアクタンスが中心導体150の誘導リアクタンスと等しくなるように選択されてきた。これにより、2つの動作モードが同時に派生することができる。まず、誘導および容量リアクタンスが等しいことで、中心導体150が外側ループ110に対して開回路の役割を果たすことができる。具体的には、図5に示すとおり、受信サイクル時に、外側ループ110内の垂直の向きのMR信号により誘発された電流は、これがループへの流入およびそこからの流出を示す信号電流であるため、ISで表現できる。物理的および電気的なクワドラチュアコイル100の対称性のため、ISは、このループに入ると2つの等しい電流に分かれるが、具体的には次のとおりである。
IS=IA+IA
【0044】
2つのIA電流が、中心導体150の反対端に達すると、それぞれが他の2つの電流に分離し、そのうちの一方は、外側ループ110内に留まる主要ループ電流IM、また他方は、中心導体150に漏れて入る漏れ電流ILとなる。
IA=IM+IL
【0045】
クワドラチュアコイルの対称性のために、主要ループ電流の両方の分岐は、漏れ電流の両方の分岐と同様に等しい。
IM=IM 及び IL=IL
【0046】
2つの漏れ電流は、外側ループ110の反対端から中心導体150に流入するため、これらは、符号が逆であり、よって互いに打ち消しあう。一方では、2つの主要ループ電流(一方はループの遠い側から第一のポートに流れ込み、また他方は第二および第一のコンデンサ112および111から流れ出る)は、第一のポートで合成され、信号電流ISを再形成する。
IS=IA+IA=(IM+IL)+(IM−IL)=2IM
【0047】
実質的に、受信サイクル中には、正味電流は中心導体150には全く流入せず、そのため、中心導体150が外側ループ110に流入する電流に対して開回路としての役割を果たすことができるようになる。
【0048】
中心導体150は、MR信号の垂直成分の検出を可能にする外側ループ110用の開回路としての役割を果たすだけでなく、クワドラチュアコイル100の平面と平行な向きのMR信号を検出するために、外側ループ110とともに動作し、バタフライ型コイルの模倣もする。本発明の同調の仕組みによって、外側ループ110のための単純なループ電流路だけでなく、外側ループ110と中心導体150を組み合わせるための別の電流路――逆回転する電流が関与――も生成される。これは図6に最も適切に示されている。具体的には、受信サイクル中および接続ノード2付近から始まり、水平の向きのMR信号により誘発された電流は、第二の駆動コンデンサ112を越えて、外側ループ110の最遠端まで流れ、また中心導体150に流れ込み下向きに流れる。これが次に、バタフライ構造の中点を横切り、第一の駆動コンデンサ111を越えて、外側ループ110の最遠端まで流れ、また中心導体150に流れ込み下向きに流れ、クワドラチュアコイル100が動作の受信サイクル中にMR信号を検出する位置にある限りは、サイクルを新しく開始する。
【0049】
従って、図4の中心導体150および外側ループ110も、クワドラチュアコイル100の平面に対して水平な向きのMR信号を検出するように同調されている。これは、バタフライ型コイルを模倣するように同調されているためであり、その同一形状のサブループ内で、誘発された電流は同じ大きさであるが、逆回転方向に流れる。中点の周りの2つのサブループを、先行技術のバタフライコイルの場合と同様に、伝導性ループを中央で捻ることにより物理的に形成するのではないにもかかわらず、本発明のコイル構造は、外側ループ110に関連して説明した上記の単純なループに加え、バタフライコイルの動作を電気的に模倣する。
【0050】
垂直の向きのMR信号を示す電圧信号についてとは異なり、同調の仕組みは、バタフライ型構造により検出された水平の向きのMR信号によって結果的に生じる電圧信号による位相のずれを課さない。具体的には、接続ノード2での仮想接地に対して、第一の駆動コンデンサ111を越えて第一のポートにおいて検出可能な「水平」電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ112を越えて第二のポートにおいて検出可能な「水平」電圧信号の位相と同じ(すなわち、それに対して0度)である。この0度位相の差異の重要性は、下記に説明するインターフェース装置の動作に関連して明らかとなる。
【0051】
クワドラチュアコイル100のための出力線180は、同軸ケーブル、ストリップ線路、マイクロストリップまたはその他の伝送線路技術など、さまざまなメカニズムを使用して実施できる。図4は、それぞれのシールド導電体がコイルの接続ノード2に連結されている、2本の同軸ケーブル181および182を示す。ケーブル181の中心導体は、第一の駆動コンデンサ111の別の側に接続され、その一方でケーブル182の中心導体は、第二の駆動コンデンサ112の別の側に接続されている。別の方法として、二重の内部導体を持つ単一の同軸ケーブルを使用することもできる。この場合には、唯一のシールド導電体は接続ノード2に接続され、一方で1つの内部導体は第一の駆動コンデンサ111を越えて第一のポートに接続され、および他方の内部導体は第二の駆動コンデンサ112を越えて第二のポートに接続されることになる。いずれの場合も、駆動コンデンサ111および112は、クワドラチュアコイル100により出力された電圧信号を二股に分ける手段を提供するが、これらをシールド導電体という。
【0052】
どのように実施しても、出力線180は、米国出願第11/719,253号(米国特許出願公報第2009/0076378A1号として公開)で開示された理由から、電気的長さSL+n(λ/4)を持つべきである。これは本発明の出願人に譲渡されており、参照することにより本明細書に組み込む。'253出願で開示されているとおり、λはMRシステムの動作周波数の波長であり、およびnは奇数の整数で、その値は一般に1に等しい(また以降、そのようにみなす)が、これはクワドラチュアコイル100が実際には、常にそれが接続されるインターフェース装置に適度に近接しているためである。SLは、その誘導リアクタンスが第一および第二の駆動コンデンサ111/112のそれぞれのリアクタンスと大きさが同じである、追加的な長さを表し、それを越えて、出力線180の端末が接続される。
【0053】
2本の同軸ケーブルオプションを一例として、それぞれの中央およびシールド導電体について電気的長さSL+λ/4で使用する場合、それぞれの同軸ケーブル181および182は、90度位相シフティングネットワークに対して接続されるように設計されている。その理由から、以下に開示したインターフェース装置は、こうした2つの位相シフティングネットワークが、クワドラチュアコイル100のそれぞれの同軸ケーブルについて1つ備わっている。標準プラグを各ケーブルの端部に取り付け(または両方のケーブルの導体を収容する単一のプラグにより)、各ケーブル181および182の中央およびシールド導電体は、インターフェース装置内のその対応する位相シフティングネットワークの各ケーブルに接続されるように、適切なソケットまたはインターフェース装置用のその他のタイプの結合装置に接続される。
【0054】
図3および図7は、クワドラチュアコイル100を1.5T MRシステムの適切な入力ポートでインターフェースをとるためのインターフェース装置(一般に500で示す)の好ましい実施形態を図示したものである。図3は、インターフェース装置500をフローチャート形式で図示したもので、一方で図7は、その詳細な回路図を図示している。
【0055】
インターフェース装置500には、位相シフティングネットワーク511および512、プリアンプネットワーク521および522、パワースプリッティングネットワーク531および532、180度合成ネットワーク541、および0度合成ネットワーク542が含まれる。パワースプリッティングネットワークおよび合成ネットワークを標準Wilkinson型のデザインで実装することもでき、またプリアンプネットワークを28dB公称利得で理想的に実現することもできる。プリアンプネットワーク521および522は、ラーモア周波数で低インピーダンス(< 5ohm real)を提供するよう設計された同調済み入力回路付きの、市販ミニチュア低ノイズ、28dB利得遮蔽装置を使用して実装することができる。前者の低インピーダンスの点から、プリアンプネットワーク521/522がそれぞれのピンダイオード511a/512aに近接していることにより、受信サイクル中、クワドラチュアコイルと共に使用される他の表面コイル(またはそのアレイ)から分離する一部の手段が許容される。図7に示した受動的保護ダイオードネットワークが、過度のRF電圧を阻止し、RFパルス送信時にプリアンプネットワーク521および522が損傷しないように、インターフェース装置500に含まれているが、送信サイクル時にMRシステムの穴の内側にあるときには、インターフェース装置500は電源を切るべきである。これらのダイオードネットワークは、同じシナリオにおけるクワドラチュアコイルのための一部のデカップリングを提供する。
【0056】
パワースプリッティングネットワーク531および532が、プリアンプネットワーク521および522の出力で50 ohm/0度スプリッタとして使用されている。2つの合成ネットワーク541および542も、50 ohmの装置として構成されている。その結果、これらの4つのネットワークは、図示したとおり、4本の同一位相長さの50 ohm同軸ケーブル、PCBストリップ線路、マイクロストリップまたはその他の伝送線路媒体を用いて相互接続ができる。任意に、以下に詳述するとおり、180度合成ネットワーク541により出力された「垂直の」電圧信号を、0度合成ネットワーク542により出力された「水平の」電圧信号と合成するために、90度ハイブリッド合成ネットワーク550が必要となる場合がある。結果としてできる合成またはクワドラチュア電圧信号は、次にインターフェース装置が連結されているMRシステムの単一の入力に供給することができる。
【0057】
インターフェース装置500には、2つのピンダイオード511aおよび512aも含まれ、ダイオード511aは、位相シフティングネットワーク511の出力を越えて接続され、またダイオード512aは、位相シフティングネットワーク512の出力を越えて接続されている。位相シフティングネットワークにはそれぞれ、下記に特定した理由から、クワドラチュアコイル100から出力線180を経由して位相シフティングネットワークに入力される電圧信号の90度(またはλ/4ラジアン)シフトが実施されている。
【0058】
本発明の構成要素について記載してきたが、ここで、インターフェース装置500の動作を説明できる。これは、実質的に2セットの機能を実施する。第一のセットについて、位相シフティングネットワーク511/512は、それに対応するピンダイオード511a/512aと共に、クワドラチュアコイル100の第一および第二の駆動コンデンサ111/112およびそれに対応する出力線180の導体に連動して動作し、クワドラチュアコイル100が送信サイクル中にはMRシステムの伝送磁場からデカップルされるようにし、受信サイクル中には、その適切な入力ポートに連結されるようにできる。この点に関してのみ、これらの素子は、米国出願第11/719,253号の教示と類似した方法で、その中で開示された単一ループ直腸内コイルの駆動コンデンサ、出力ケーブル組立品、および関連する位相シフトネットワークの望ましい実施形態と関連して、集合的に機能する。受信サイクル中、高レベルでは、それぞれの位相シフティングネットワーク511/512は、対応する駆動コンデンサ111/112、対応する出力線180の導体181/182を通して(つまりインターフェース装置の残りを通して)、クワドラチュアコイル100をMRシステムの入力ポートに連結できるようにし、ここで、対応する導体から受信したMR信号が入力ポートに転送されるようになる。送信サイクル中、それぞれの位相シフティングネットワーク511/512は、コイルを(それぞれネットワーク511/512に対応する駆動コンデンサ111/112を通して)、出力線180の導体(181/182、それぞれコンデンサ111/112に対応)を通して、MRシステムの伝送磁場からデカップリングできるようにする。
【0059】
さらに具体的に言えば、送信サイクル中に、MRシステムは、バイアスピンダイオード511aおよび512aを、バイアスライン560を経由して転送する。ダイオード511aおよび512aをオンにすることにより、MRシステムは、それぞれの位相シフティングネットワーク511/512の出力時に、出力線180の終端から電気的長さλ/4の地点で短絡を発生させる。第一のポートに関しては、第一の駆動コンデンサ111と位相シフティングネットワーク511の出力の短絡との間の電気的長さは、出力ケーブル181によるSL+λ/4と、位相シフティングネットワーク511による+λ/4によって、SL+λ/2である。上記の米国出願第11/719,253号で記載した、追加的な長さSLは、本質的にインダクタの役割をし、理想的にはその大きさが第一の駆動コンデンサ111の容量リアクタンスのそれと等しい誘導リアクタンスを持つ。ところが、λ/2部分は、動作波長の半分であるため、事実上、電気的長さゼロが示される。そのため、第一のポートでの第一の駆動コンデンサ111とピンダイオード511aとの間の有効な電気的長さは、MRシステムの送信サイクル時にSLである。よって、ダイオード511aの順バイアスにより、出力ケーブル181および第一の駆動コンデンサ111の固有のインダクタンスが有効となり、並列共振回路が形成される。この回路の高インピーダンスは、開回路に近似し、その内部で第一の駆動コンデンサ111が接続される地点付近でクワドラチュアコイル100を効果的に開く。第二のポートについては、第二の駆動コンデンサ112と位相シフティングネットワーク512の出力の短絡との間の電気的長さも、出力ケーブル182によるSL+λ/4と、位相シフティングネットワーク512による+λ/4によって、SL+λ/2である。よって、ピンダイオード512aの順バイアスにより、出力ケーブル182および第二の駆動コンデンサ112の固有のインダクタンスが有効となり、別の並列共振回路が形成される。その並列共振回路の高インピーダンスにより、その内部で第二の駆動コンデンサ112が接続される地点付近でクワドラチュアコイル100を効果的に開く。上述の方法で、クワドラチュアコイル100は、送信サイクル時にMRシステムの伝送磁場からデカップリングされる。
【0060】
クワドラチュアコイル100は、その出力線180がインターフェース装置500から切断されているときでさえも、伝送磁場からデカップリングされることにも注目すべきである。上述のとおり、それぞれの出力ケーブル181および182は、電気的長さSL+λ/4を持つ。それぞれの出力ケーブルにおいて、追加的な長さSLは、それが結合されている対応する駆動コンデンサと共に、電源インピーダンスとしての役割をし、その長さが出力ケーブルの残りのλ/4セクションである伝送線路に結合されていると考えることができる。周知のとおり、開回路の伝送線路の共振周波数の時点での定在波によって、通常ではない効果が作り出される。この場合には、伝送線路の長さがMRシステムの動作波長の正確に1/4(またはその整数倍)となるように選択された場合、伝送線路の終端で、電源では正反対のインピーダンスが見られる。この技術は、時には1/4波長インピーダンス変換と呼ばれる。
【0061】
受信サイクル中、MRシステムは、バイアスピンダイオード511aおよび512aを、バイアスライン560を経由して反転させ、効果的にそれらをオフにする。開回路のダイオード511aにより、MRシステムは、第一のポートから(第一の駆動コンデンサ111を越えて)出力されたMR信号が、出力ケーブル181を経由して位相シフティングネットワーク511の入力に伝達されることを可能としている。同様に、開回路のダイオード512aにより、MRシステムは、第二のポートから(第二の駆動コンデンサ112を越えて)出力されたMR信号が、出力ケーブル182を経由して位相シフティングネットワーク512の入力に伝達されることを可能としている。
【0062】
インターフェース装置500の第一のセットの機能についての考察が終り、ここで新しい第二のセットについての説明を提供するが、そのすべてが、受信サイクル中のMRシステムの本発明の動作に関連する。上記で教示したとおり、外側ループ210により検出された垂直の向きのMR信号について、第一の駆動コンデンサ211を越えて第一のポートで検出可能な電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ212を越えて第二のポートで検出可能な電圧信号の位相から180度となる。バタフライ型構造により検出される、水平の向きのMR信号について、第一の駆動コンデンサ211を越えて第一のポートで検出可能な電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ212を越えて第二のポートで検出可能な電圧信号の位相と同じである。
【0063】
こうして、クワドラチュアコイル100は、その第一および第二のポート111および112のそれぞれからの水平および垂直の両方の向きのMR信号を表す電圧信号を出力する。説明を簡単にするために、水平の向きのMR信号を表す電圧信号を、これらが各ポートで同一の位相を持つため、本明細書で「0度水平電圧信号」と呼ぶことにする。垂直の向きのMR信号を表す電圧信号は、第一のポート111からの出力について「0度垂直電圧信号」と呼び、第二のポート112からの出力について「180度垂直電圧信号」と呼ぶ。
【0064】
図3を参照すると、インターフェース装置500が出力線180から受信した電圧信号を処理する方法が記載されている。位相シフティングネットワーク511は、第一の駆動コンデンサ/第一のポート111から出力ケーブル181を経由して受信した0度水平電圧信号および0度垂直電圧信号をそれぞれ90度水平電圧信号および90度垂直電圧信号にシフトする。同様に、位相シフティングネットワーク512は、第二の駆動コンデンサ/第二のポート112から出力ケーブル182を経由して受信した0度水平電圧信号および180度垂直電圧信号をそれぞれ90度水平電圧信号および-90度垂直電圧信号にシフトする。プリアンプネットワーク521および522はそれぞれ受信した電圧信号を増幅し、および結果的に生じる増幅されたバージョンをそれぞれパワースプリッティングネットワーク531および532に通過させる。
【0065】
パワースプリッティングネットワーク531は、増幅したバージョンの90度水平電圧信号および90度垂直電圧信号を180度合成ネットワーク541および0度合成ネットワーク542の両方に通過させる。同様に、パワースプリッティングネットワーク532は、増幅したバージョンの90度水平電圧信号および-90度垂直電圧信号を180度合成ネットワーク541および0度合成ネットワーク542の両方に通過させる。パワースプリッティングネットワーク531および532から受信した水平電圧信号は同相であるため、0度合成ネットワーク541は、それらを建設的に合成することができる。同時に、0度合成ネットワーク541は、パワースプリッティングネットワーク531から受信した90度垂直電圧信号を、パワースプリッティングネットワーク532から受信した-90度垂直電圧信号で打ち消す。同様に、パワースプリッティングネットワーク531および532から受信した垂直電圧信号は、180度だけ位相外れであるため、180度合成ネットワーク542は、それらを建設的に合成することができる。合成ネットワーク542は、パワースプリッティングネットワーク531から受信した水平電圧信号を、パワースプリッティングネットワーク532から受信した水平電圧信号で打ち消すが、これはそれらが同相で受信されるためである。従って、0度合成ネットワーク531は、実質的にクワドラチュアコイル100の設計により分岐した水平電圧信号を再構成し、一方で180度合成ネットワーク532は垂直電圧信号を再構成する。
【0066】
結果的に生じる水平および垂直電圧信号は、MRシステムの別個の入力ポートに供給することができる。任意に、90度ハイブリッド合成ネットワーク550は、水平および垂直電圧信号を合成して、クワドラチュアを表す合成した電圧信号を単一の入力ポートに供給するために使用することもできる。図3および図7はどちらも90度ハイブリッド合成ネットワークを図示したものである。図8は、インターフェース装置についてさらに別の実施形態を、フローチャートの形態で図示したものである。
【0067】
図9は、3.0T MRシステムと共に動作するよう設計された、本発明のクワドラチュア直腸内コイルの概略図である。このクワドラチュアコイル(一般に200で示す)は、上述の1.5Tバージョンについてのものと非常に類似した方法で構成されている。クワドラチュアコイル100と同様、そのために選択した特定の実施が何であるかにかかわらず(例えば、同軸ケーブル、ストリップ線路、マイクロストリップまたはその他の伝送線路技術)、本明細書で開示した出力線180と共に使用することが意図されている。また、クワドラチュアコイル100と同様、外側ループ210および中心導体250の物理的レイアウトにおいて、また外側ループ210における第一および第二の駆動コンデンサ211/212と第一および第二の同調コンデンサ221/222の配置、および中心導体250における1つ以上の同調コンデンサ251および252の配置において対称性が示されるべきである。
【0068】
外側ループ210は、2個のインダクタおよび2個の抵抗器を持つものとして表示されている。インダクタの値は、ループに固有のインダクタンスを表し、また抵抗器の値は、固有の抵抗を表す。外側ループ210にあるコンデンサの値は、ループの容量リアクタンスが、動作周波数でのループの誘導リアクタンスと大きさが等しくなるように選択されている。クワドラチュアコイル100の外側ループ110と同様、この目的で個々のインダクタを外側ループ210に組み込むこともできる。中心導体250で示したインダクタおよび抵抗器についても同じことが言える。中心導体150と同様に、中心導体250は、外側ループ210の接合部およびコモンノード2および3を等しく二分して、クワドラチュアコイル200の物理的および電気的な対称性が確保されるべきである。
【0069】
外側ループ210および中心導体250の回路素子の値は、クワドラチュアコイル100と1.5T MRシステムの組み合わせについての上記の説明と同じように、クワドラチュアコイル200が3.0T MRシステムと共に動作することができるように選択されていることは明らかである。外側ループ210により検出された垂直の向きのMR信号について、第一の駆動コンデンサ211を越えて第一のポートで検出可能な電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ212を越えて第二のポートで検出可能な電圧信号の位相から180度となる。バタフライ型構造により検出された水平の向きのMR信号について、第一の駆動コンデンサ211を越えて第一のポートで検出可能な電圧信号の位相は、第二の駆動コンデンサ212を越えて第二のポートで検出可能な電圧信号の位相と同じである。クワドラチュアコイル200により出力されたそれぞれ「垂直」および「水平」電圧信号についてのこうした180および0度位相の差異は、上記のとおり、本発明のインターフェース装置によって有効に利用することができる。
【0070】
本発明のクワドラチュアコイルは、別個の構成要素で構成してもよいことは明らかである。ところが、そうすることで最大5個または6個の別個のコンデンサを持つ構造が得られることになる。背景技術として引用した先行技術で開示されている腔内プローブ内に含まれる単純なループコイル内にある1個または3個の別個のコンデンサと比べて勝るとは言えない。
【0071】
それが格納されるバルーン型の筺体を貫いて突出する内部構成要素の可能性を最小限に抑える設計の、小型で、柔軟性があり、損傷に対する耐性のある腔内プローブに対する要望のために、本発明のクワドラチュアコイルは、銅パターンが両側に貼り付けられて、伝導路だけでなく、同調およびデカップリングに必要なすべてのコンデンサが形成されるように、薄くて柔軟性のある誘電体材料で構成されることが望ましい。その上、クワドラチュアコイルは、一回用の使い捨て腔内プローブの外皮部分としての提供が意図されることが望ましいため、こうした製造技術は、プローブの製造時に相当な節約を実現するという目標の助けとなる。これは、「事前印刷された」クワドラチュアコイルの製造プロセスが、別個の構成要素からなるコイルと比べて、最終製品を検査するにあたって著しく少ない労働力および短い時間しか必要としないためである。追加的なコスト低減が、こうした事前印刷されたクワドラチュアコイルの大量生産から実現されることが予想される。
【0072】
図10は、同調およびデカップリングに必要な伝導路およびコンデンサを形成するために、両側に追加的および異なる導体パターンが結合された、柔軟性のある誘電体基板材料が関与する事前印刷プロセスによって、本発明のクワドラチュアコイルをどのように製造できるかを図示したものである。
【0073】
こうしたプロセスを使用して、クワドラチュアコイルは、柔軟性のある誘電体基板材料600、基板の一方の側に結合された第一の導体パターン700、および基板の反対側に結合された第二の導体パターン800を含むものとして考慮できる。理解しやすくするために、図10は、これらの3つの層を個別に示すが、中央に柔軟性のある基板600があり、左および右の側面にそれぞれ第一の導体パターン700および第二の導体パターン800が位置する。
【0074】
第一の導体パターン700には、概して対称的な形状を持つ外側の伝導性ループ710が含まれる。ループ710は、一方の端で駆動ギャップ711を画定し、また他方の端で第一の同調ギャップ712を画定する。第二の導体パターン800には、駆動コンデンサセグメント810および同調導体セグメント830が含まれる。駆動コンデンサセグメント810は、駆動ギャップ711と対称的に重複し、反対側にある外側の伝導性ループ710およびそれらの間にある柔軟性のある基板600と共に、第一の駆動コンデンサ111/211および第二の駆動コンデンサ112/212を形成し、その間に接続ノード2がある。同調導体セグメント830は、第一の同調ギャップ712と重複し、反対側にある外側の伝導性ループ710およびそれらの間にある柔軟性のある基板600と共に、第一の同調コンデンサ121/221および第二の同調コンデンサ122/222を形成し、そのコモンノード3が接続ノード2の反対側に位置する。こうして、外側の伝導性ループ710と、駆動および同調導体セグメント810および830は、単純ループ型コイルを形成するが、そこにおいて、単純ループ型コイルの電気的均衡とインピーダンス整合をとるために、第一および第二の駆動コンデンサが接続ノード2で仮想接地を形成し、またそこにおいて第一および第二の同調コンデンサにより、動作周波数で単純ループ型コイルが共鳴するようになる。この様に、単純ループ型コイルは、クワドラチュアコイルの平面に直交する向きのMR信号を検出することができる。
【0075】
第一の導体パターン700には、駆動および第一の同調ギャップ711および712間に配置されているものの、外側の伝導性ループ710およびその内部の駆動および第一の同調ギャップ711および712のどちらにも接続されていない内部導体セグメント750も含まれる。第二の導体パターン800には、駆動コンデンサセグメント810および同調導体セグメント830間に延び、その内部の第二の同調ギャップ851を画定する中心導体セグメント850も含まれる。内部導体セグメント750は、第二の同調ギャップ851に重複し、反対側の中心導体セグメント850およびそれらの間にある柔軟性のある基板600と共に、そのリアクタンスが動作周波数での内部および中心導体セグメント750および850の誘導リアクタンスと等しい第三の同調コンデンサ151/251を形成する。これによって、内部および中心導体セグメント750および850が単純ループ型コイルと同調され、クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルをそれらの間に形成することができるようになる。結果としてできる単一構造のクワドラチュアコイル100/200は、患者の対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出することができるようになっている。
【0076】
上記に説明した出力線180の2本の同軸ケーブルの実施形態は、柔軟性のあるクワドラチュアコイルをインターフェース装置500に接続するために使用できることは明らかである。この場合には、ケーブルの接地および内部導体を、クワドラチュアコイルの接続ノード2および第一および第二のポートに半田付けするか、またはその他の方法で機械的に取り付ける必要がある。上記に列挙したその他の伝送線路技術でも十分である。好ましい技術は、特定的に基板材料およびその上の導体パターンを伸ばし、適切なカップリングおよびデカップリングを達成するために必要な電気的長さを生成することによって、同一の事前印刷プロセスで出力線およびクワドラチュアコイルを製造することである。この実施例において、出力線180には、柔軟性のある誘電性基板600の一方の側に結合された接地線および他方の側に結合された第一および第二の信号線が含まれる。接地線は、クワドラチュアコイルの接続ノード2に接続され、一方で、第一および第二の信号線は、第一および第二の駆動コンデンサ111/211および112/212を越えて、クワドラチュアコイルのそれぞれ第一および第二のポートに接続される。上記の通り、第一の信号、第二の信号および接地線は、それぞれ電気的長さSL+n(λ/4)を持ち、そのすべてがクワドラチュアコイルをそのためのインターフェース装置に接続するために、プラグで終端している。
【0077】
図11は、1.5T MRシステムと共に動作するよう設計された柔軟性のあるクワドラチュアコイル100に接続されたマイクロストリップ線の形態での出力線180を示すものである。
【0078】
第一および第二の導体パターンおよびそれらの関連する伝導性ループおよびセグメントは、それによって形成されている駆動および同調コンデンサを含めて、そのレイアウトの対称性を達成することが重要であることが強調されるべきである。この点について、上記の教示に照らせば、出力線180を含めた柔軟性のあるクワドラチュアコイルのための伝導路の厚み、幅、長さについて適切な寸法を選択することは、当業者に明らかである。
【0079】
従って、本発明は、限定的な対象範囲、およびMR信号の水平および垂直の両方の成分に反応するコイルによる最大の利点である円偏光MR信号を使用しないことによる最適とはいえないSNR性能を含めた、先行技術の腔内プローブによって提示されているいくつかの欠点に対処するものである。本発明は、先行技術の直腸内コイルおよびその対応する出力ケーブルの製造において従来的に使用されていた別個の構成要素を除去することにより、組立ての際に直面する困難さおよびコストを低減する。
【0080】
本発明を実施するための現時点での好ましいおよび代替的な実施形態を、特許法に従い詳細に記載してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の請求の範囲の精神を逸脱することなく、発明の実施についての代替的な方法を認識しうる。従って、請求の範囲の文字通りの意味に該当する、および等価の範囲内でのすべての変更および変形物は、その範囲に含まれることになる。当業者は、本発明の範囲が、上記の説明で考察したかまたは示した特定の任意の実施例または実施形態ではなく、下記の請求の範囲によって示されていることも理解するであろう。
【0081】
従って、科学および実用技術の進展を促進するために、我々は、特許証により、下記の請求の範囲に含まれるすべての主題についての排他的な権利を、特許法により定められた期間、確保する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の画像またはスペクトルを取得するための磁気共鳴(MR)システムと併用するためのクワドラチュアコイルであって、
(a) 前記クワドラチュアコイルの平面に対して直交する向きのMR信号を検出するための外側ループであって、その内部に、(i)ほぼ同じ値で、前記外側ループ内およびその接続ノードに直列に配置され、前記外側ループの電気的な均衡とインピーダンス整合をとるための仮想接地を形成する第一の駆動コンデンサおよび第二の駆動コンデンサと、(ii)前記外側ループ内に直列に配置され、前記接続ノードと全く反対に位置するコモンノードを持ち、また前記MRシステムの動作周波数で前記外側ループと共鳴するように選択されたほぼ同じ値を持つ、第一の同調コンデンサおよび第二の同調コンデンサ、を含む複数のコンデンサを持つ外側ループ;および
(b) 前記コモンノードおよび前記接続ノードの間に延びる中心導体であって、動作周波数で等しい容量および誘導リアクタンスを持ち、そのため前記外側ループと同調して、前記クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルを形成する、中心導体;
を備え、単一の構造として対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出できる、クワドラチュアコイル。
【請求項2】
第一の信号線、第二の信号線、および接地線を持つ出力線を更に備えており、該出力線は、前記接地線が前記接続ノードと連結し、および前記第一および前記第二の信号線が、それぞれ前記第一および前記第二の駆動コンデンサを越えて、前記第一の信号、前記第二の信号、および前記接地線に連結されており、(i)それぞれがSL+n(λ/4)の電気的長さを持ち、ここでSLは、そのリアクタンスがそれに対応する前記駆動コンデンサのリアクタンスと同じ大きさの追加的な長さで、nは奇数の整数で、およびλは前記MRシステムの動作周波数の波長であり;および(ii)前記クワドラチュアコイルをインターフェース装置に接続するためにプラグで終端している、請求項1のクワドラチュアコイル。
【請求項3】
患者の腔内にある対象領域の画像またはスペクトルを取得するための磁気共鳴(MR)システムと併用するための腔内プローブであって、クワドラチュアコイルを備えており、前記クワドラチュアコイルが、
(a) 前記クワドラチュアコイルの平面に対して直交する向きのMR信号を検出するための外側ループであって、その内部に、(i)ほぼ同じ値で、前記外側ループ内およびその接続ノードに直列に配置され、前記外側ループの電気的な均衡とインピーダンス整合をとるための仮想接地を形成する第一の駆動コンデンサおよび第二の駆動コンデンサと、(ii)前記外側ループ内に直列に配置され、前記接続ノードと全く反対に位置するコモンノードを持ち、また前記MRシステムの動作周波数で前記外側ループと共鳴するように選択されたほぼ同じ値を持つ、第一の同調コンデンサおよび第二の同調コンデンサ、を含む複数のコンデンサを持つ外側ループ;
(b) 前記コモンノードおよび前記接続ノードの間に延びる中心導体であって、動作周波数で等しい容量および誘導リアクタンスを持ち、そのため前記外側ループと同調して、前記クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルを形成する、中心導体;
を含み、単一の構造として対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出でき;および
(c) 第一の信号線、第二の信号線、および接地線を持つ出力線であって、前記接地線が前記接続ノードと連結し、および前記第一および前記第二の信号線が、それぞれ前記第一および前記第二の駆動コンデンサを越えて、前記第一の信号、前記第二の信号、および前記接地線に連結されており、(i)それぞれがSL+n(λ/4)の電気的長さを持ち、ここでSLは、そのリアクタンスがそれに対応する前記駆動コンデンサのリアクタンスと同じ大きさの追加的な長さで、nは奇数の整数で、およびλは前記MRシステムの動作周波数の波長であり;および(ii)前記クワドラチュアコイルを前記腔内プローブ用のインターフェース装置に接続するためにプラグで終端している出力線、を含んでいる、腔内プローブ。
【請求項4】
前記第一および前記第二の駆動コンデンサはそれぞれおよそ62pFの値を持ち、前記第一および前記第二の同調コンデンサはそれぞれおよそ30pFの値を持ち、前記値のそれぞれが、(i)前記外側ループおよび前記中心導体に固有のインダクタンスと(ii)前記外側ループおよび前記中心導体のうち少なくとも1つに追加されたインダクタンスのうち少なくとも1つに固定されている、請求項3の腔内プローブ。
【請求項5】
対象領域の画像またはスペクトルを取得するための磁気共鳴(MR)システムと併用するためのクワドラチュアコイルであって、
(a) 誘電体材料を備えた柔軟性のある基板;
(b) 前記柔軟性のある基板の一方の側に結合した第一の導体パターンであって、概して対称的な形状を持ち、またその一方の端で駆動ギャップを画定し、その他方の端で第一の同調ギャップを画定する外側の伝導性ループを含む、前記第一の導体パターン;
(c) 前記柔軟性のある基板の反対側に結合された第二の導体パターンであって、(i)駆動コンデンサセグメントおよび(ii)同調導体セグメントを含み、前記駆動コンデンサセグメントは、前記駆動ギャップと対称的に重複し、また、反対側の前記外側にある伝導性ループおよびそれらの間にある前記柔軟性のある基板と共に、ほぼ同じ値でその間に接続ノードがある第一の駆動コンデンサおよび第二の駆動コンデンサを形成し;また前記同調導体セグメントは、前記第一の同調ギャップと重複し、また、反対側の前記外側にある伝導性ループおよびそれらの間にある前記柔軟性のある基板と共に、ほぼ同じ値を持ち、前記接続ノードと全く反対の位置に位置するコモンノードを持つ第一の同調コンデンサおよび第二の同調コンデンサを形成し;前記第一の導体パターンの前記外側の伝導性ループと前記第二の導体パターンの前記駆動および前記同調導体セグメントが単純ループ型コイルを形成し、そこにおいて前記第一および前記第二の駆動コンデンサは、前記接続ノードにおいて、前記単純ループ型コイルの電気的な均衡とインピーダンス整合をとるための仮想接地を形成し、およびその中において、前記第一および前記第二の同調コンデンサにより、前記単純ループ型コイルが前記MRシステムの動作周波数で共鳴し、よって前記クワドラチュアコイルの平面と直交する向きのMR信号を検出することができる、前記第二の導体パターン;
(d) 前記第一の導体パターンは、前記駆動および前記第一の同調ギャップの間に配置されるが、前記外側の伝導性ループおよびその内部の前記駆動および前記第一の同調ギャップのどちらにも接続されていない内部導体セグメントを含んでおり;および
(e) 前記第二の導体パターンはまた、前記駆動コンデンサセグメントおよび前記同調導体セグメントの間に延び、その内部の第二の同調ギャップを画定する中心導体セグメントを含み、前記内部導体セグメントは、前記第二の同調ギャップに重複し、反対側にある前記中心導体セグメントおよびそれらの間にある前記柔軟性のある基板と共に、そのリアクタンスが動作周波数での前記内部および前記中心導体セグメントの誘導リアクタンスと等しい第三の同調コンデンサを形成し、これによって前記内部および前記中心導体セグメントが前記単純ループ型コイルと同調され、それによって前記クワドラチュアコイルの平面と平行な向きのMR信号を検出するためのバタフライ型コイルを形成しており;
それによって、単一の構造として対象領域から発するMR信号の垂直および水平の両方の成分を検出できる、クワドラチュアコイル。
【請求項6】
(a) 前記柔軟性のある基板の前記一方の側に結合され、前記接続ノードに接続された接地線;および
(b) 前記柔軟性のある基板の前記他方の側に結合され、それぞれ前記第一および前記第二の駆動コンデンサを越えて接続された、第一の信号線および第二の信号線であって、(i)それぞれSL+n(λ/4)の電気的長さを持ち、ここでSLは、そのリアクタンスがそれに対応する前記駆動コンデンサのリアクタンスと同じ大きさの追加的な長さで、nが奇数の整数で、およびλが前記MRシステムの動作周波数の波長であり;および(ii)前記クワドラチュアコイルをインターフェース装置に接続するためにプラグで終端されている、第一の信号線及び第二の信号線をさらに備える、請求項5のクワドラチュアコイル。
【請求項7】
受信サイクルおよび送信サイクルの動作を備え、クワドラチュアコイルと磁気共鳴(MR)システムとを連結するためのインターフェース装置であって、前記クワドラチュアコイルは第一および第二のポートを持ち、そのそれぞれが前記受信サイクル時に、患者の対象領域から発する水平および垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を、前記第一および前記第二のポートによって出力された水平方向のMR信号を表す電圧信号が0度離れ、および前記第一および前記第二のポートによって出力された垂直方向のMR信号を表す電圧信号が180度離れるように出力する能力があり、
(a) 前記クワドラチュアコイルの前記第一のポートを越えて接続可能で、そこから受信した電圧信号の位相を90度ずらすことが可能な、第一の位相シフティングネットワーク;
(b) 前記クワドラチュアコイルの前記第二のポートを越えて接続可能で、そこから受信した電圧信号の位相を90度ずらすことが可能な、第二の位相シフティングネットワーク;
(c) 前記第一の位相シフティングネットワークによりずらされた電圧信号の位相を分割するための第一のスプリッタ;
(d) 前記第二の位相シフティングネットワークによりずらされた電圧信号の位相を分割するための第二のスプリッタ;
(e) 前記第一のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号と、前記第二のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号を建設的に合成するための、また前記第一のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を前記第二のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号で破壊的に打ち消すための、0度コンバイナ;および
(f) 前記第一のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号と前記第二のスプリッタから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を建設的に合成するための、および前記第一のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号を前記第二のスプリッタから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号で破壊的に打ち消すための、180度コンバイナ、を備えるインターフェース装置。
【請求項8】
(a) 前記第一の位相シフティングネットワークおよび前記第一のスプリッタの間に配置された第一のプリアンプ;および
(b) 前記第二の位相シフティングネットワークおよび前記第二のスプリッタの間に配置された第二のプリアンプをさらに備える、請求項7のインターフェース装置。
【請求項9】
0度コンバイナから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号および180度コンバイナから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を合成するための90度ハイブリッドカップラーをさらに備える、請求項8のインターフェース装置。
【請求項10】
0度コンバイナから受信した水平の向きのMR信号を表す電圧信号および180度コンバイナから受信した垂直の向きのMR信号を表す電圧信号を合成するための90度ハイブリッドカップラーをさらに備える、請求項7のインターフェース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−46792(P2013−46792A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−237421(P2012−237421)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2011−536482(P2011−536482)の分割
【原出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(500483817)メドラッド インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Medrad,Inc.
【Fターム(参考)】