直視型表示装置
【課題】本発明は、表示画面が明るく、かつ、信号量の増加を抑えた直視型表示装置を提供する。
【解決手段】直視型表示装置1は、補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子20を備えるものであって、入力された映像信号における複数の画素の画素値を色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段10を備え、表示素子20が、映像信号変換手段10によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示する。
【解決手段】直視型表示装置1は、補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子20を備えるものであって、入力された映像信号における複数の画素の画素値を色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段10を備え、表示素子20が、映像信号変換手段10によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの直視型表示装置において、画素を構成するサブピクセルの配列構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの直視型表示装置が注目されている。ここでは、従来の直視型表示装置として、バックライトを備えずに、周囲の光を反射してカラー表示を行うものについて説明する(以後、「RGB表示装置」とする)。
【0003】
このRGB表示装置は、図19(a)に示すように、1画素をRGBのサブピクセルに分け、各サブピクセルでR(赤)、G(緑)、B(青)を表示する。従って、RGB表示装置に白色光が入射した場合、各サブピクセルの分光反射率は、図19(b)〜(d)のようになる。この場合、RGB表示装置は、各サブピクセルが入射光の1/3程度しか利用できないので、その輝度が原理的に1/3になり、表示画面が暗くなってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載では、4サブピクセル表示装置に関する発明が提案されている。この4サブピクセル表示装置は、1ドットを赤、緑、青のうちの2色と、この2色に対して補色となる計4色のサブピクセルで構成したものである。これによって、4サブピクセル表示装置は、入射光の利用効率を向上させて、RGB表示装置よりも表示画面を明るくすることができる。
【0005】
なお、図19(b)〜(d)では、図面が見やすくなるようにRGBのサブピクセルの波長領域を図示している。このため、RGBの波長領域が同じ幅でなくともよいことは言うまでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−97176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の4サブピクセル表示装置は、以下のような問題がある。
ここで、説明を簡易にするため、カラー映像がN画素×M画素であり、映像信号に含まれるRGB値と、各サブピクセルの色(信号量)とが、それぞれ1バイトであるとする。この場合、映像信号は、N×M×3(RGB値)=3NMバイトとなる。
【0008】
また、4サブピクセル表示装置は、1ドットが4サブピクセルで、かつ、1ドットで1色を表現するため、3NMバイトの映像信号を、N×M×4=4NMバイトの映像信号に変換する必要がある。すなわち、4サブピクセル表示装置は、映像信号の信号量が4/3倍に増大する。このように映像信号の信号量が増加すると、4サブピクセル表示装置では、ディスプレイの応答速度が低下する、カラー表示素子の回路が複雑化するなどの問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、表示画面が明るく、かつ、信号量の増加を抑えた直視型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係る直視型表示装置は、補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子を備える直視型表示装置であって、映像信号が入力されると共に、映像信号における複数の画素の画素値を色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段を備え、表示素子が、色表現単位に含まれるサブピクセルの対が互いに異なる色の組み合わせを有し、映像信号変換手段によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、直視型表示装置は、1画素が2個のサブピクセルで構成されるため、各サブピクセルが入射光を1/2程度利用することができる。
なお、本発明において、画素とは、画像を構成する単位であって、表示素子で表示可能な最小単位(表示素子の1ドット)に対応するものである。
【0012】
また、直視型表示装置は、1画素が2個のサブピクセルで構成されるため、前記した変換式を適用することができる。そして、直視型表示装置は、この変換式によって、従来の4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑える。
【0013】
例えば、色表現単位を2画素(4個のサブピクセル)とし、映像信号の各画素の画素値(RGB値)を3バイトとし、サブピクセルの信号レベルを1バイトとして説明する。この場合、直視型表示装置は、前記した変換式によって、映像信号で2画素分(色表現単位の画素数と同数)の画素値(3バイト×2=6バイト)を、色表現単位に含まれる4個のサブピクセルの信号レベル(4バイト)に変換する。すなわち、直視型表示装置は、入力された映像信号に対して、表示装置用映像信号の信号量が2/3となる。
【0014】
一方、従来の4サブピクセル表示装置では、4個のサブピクセルで構成された1ドットで1色を表現するため、映像信号に含まれる1画素分の画素値(3バイト)を、4個のサブピクセルの信号レベル(4バイト)に変換する。すなわち、従来の4サブピクセル表示装置では、入力された映像信号に対して、変換後の信号量が4/3となる。このようにして、直視型表示装置は、信号量を約半分に抑えることができる。
【0015】
また、本願第2発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、色表現単位が2個の画素であってもよい。
さらに、本願第3発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、色表現単位が3個の画素であってもよい。
【0016】
ここで、表示素子は、3原色のうちの何れか1原色のサブピクセルと、この1原色のサブピクセルに補色関係となる補色のサブピクセルとで1画素を構成してもよい。例えば、表示素子は、黄と青とのサブピクセルの対、赤とシアンとのサブピクセルの対、または、緑とマゼンタとのサブピクセルの対で1画素を構成する。
【0017】
さらに、表示素子は、3原色以外の色で補色関係となるサブピクセルの対で1画素を構成してもよい。例えば、表示素子は、黄色(橙色)とシアン(緑青)とのサブピクセルの対で1画素を構成する。
【0018】
また、本願第4発明に係る直視型表示装置は、サブピクセルの対が、可視光領域で波長と反射率との関係を示す分光反射率分布における分光反射率合計値が、1.0を越えて1.2以下であることが好ましい。
かかる構成によれば、直視型表示装置は、各画素の輝度を高くすると共に、色表現力の低下を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、本願第5発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、サブピクセルの対が補色関係に代えて準補色関係にある準補色画素と、白のサブピクセルおよびマゼンタのサブピクセルで構成された調整用画素とを有すると共に、色表現単位が3個の準補色画素および1個の調整用画素の集合であることが好ましい。
【0020】
ここで、準補色画素とは、この準補色画素を構成するサブピクセルの対において、分光反射率分布の重なる割合が2割以下となる準補色関係を満たすものである。言い換えるなら、補色関係には、2色を合成したときに白色となる完全な補色だけでなく、2色を合成したときに白色の近似色となる準補色関係も含まれる。
【0021】
すなわち、直視型表示装置は、分光反射率分布が重なる波長領域において、準補色画素の輝度を高くすることができる。その一方、直視型表示装置は分光反射率分布の重なりによって準補色画素の色が変化してしまうので、この色の変化を調整用画素の色で調整して、色表現力の低下を最小限に抑える。
【0022】
また、本願第6発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、サブピクセルの輝度が交互に高低するように、サブピクセルを配列したことが好ましい。
かかる構成によれば、直視型表示装置は、サブピクセルの明暗が交互するため、サブピクセルの配列構造が見え難くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、各サブピクセルが入射光を1/2程度利用できるため、従来のRGB表示装置に比べて、表示画面を明るくすることができる。さらに、本願第1発明によれば、従来の4サブピクセル表示装置に比べて、1画素を構成するサブピクセルの数が半分のため、信号量を約半分に抑えることができる。
【0024】
本願第2発明によれば、2画素で1色を表現する表示素子により、表示画面を明るくすることができる。
本願第3発明によれば、3画素で1色を表現する表示素子により、表示画面を明るくすることができる。
【0025】
本願第4発明によれば、各画素の輝度を高くすると共に、色表現力の低下を最小限に抑えるため、眩しい環境でも映像を見易くすることができる。
本願第5発明によれば、準補色画素の輝度を高くすると共に、準補色画素における色の変化を調整用画素の色で調整するため、色表現力の低下を最小限に抑え、眩しい視環境でも映像を見易くすることができる。
本願第6発明によれば、サブピクセルの配列構造が見え難く、映像を綺麗に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図3】図2のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図4】本発明の変形例2におけるサブピクセルの分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図5】本発明の第2実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図6】図5のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図7】図5のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、色表現単位で3個目の画素を示す。
【図8】本発明の変形例3におけるサブピクセルの配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位を示し、(b)は(a)の色表現単位からなるカラー表示素子を示す。
【図9】本発明の変形例4における分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図10】本発明の変形例4における分光反射率分布を示すグラフであり、色表現単位で3個目の画素を示す。
【図11】本発明の第3実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図12】図11のカラー表示素子の配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図13】図11のカラー表示素子の配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位で3個目の画素を示し、(b)は色表現単位で4個目の画素を示す。
【図14】(a)は図1のカラー表示素子の配列構造を示し、(b)および(c)は本発明の第4実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図15】(a)および(b)は本発明の第4実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図16】(a)は図14(a)のカラー表示素子におけるサブピクセルと反射率との関係を示すグラフであり、(b)は図14(b)のカラー表示素子におけるサブピクセルと反射率との関係を示すグラフである。
【図17】(a)は図14(a)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像であり、(b)は図14(b)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像である。
【図18】(a)は図14(c)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像であり、(b)は従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像である。
【図19】従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの配列構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0028】
(第1実施形態:2個の画素で1色を表現)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置1について説明する。
直視型表示装置1は、1個の画素23で輝度を表現し、2個の画素23が集合した色表現単位21(図2参照)で1色を表現するものであり、カラー信号処理手段(映像信号変換手段)10と、カラー表示素子(表示素子)20とを備える。以後の各実施形態では、直視型表示装置1は、カラー表示が可能な、反射型の液晶ディスプレイとして説明する。
なお、1個の画素による輝度の表現は、以降の各実施形態においても同様である。
【0029】
カラー信号処理手段(映像信号変換手段)10は、所定の変換式によって、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換するものである。この変換式は、映像信号で色表現単位21と同数の2画素分の画素値(例えば、RGB値)を、色表現単位21のサブピクセルS1-1〜S2-2の信号レベルに変換するように予め設定された計算式である。
【0030】
ここで、後記するカラー表示素子20は、2個以上の画素23が集合した色表現単位21で1色を表現するため、RGB形式、YCbCr形式などの従来の映像信号をそのまま利用できない。このため、カラー信号処理手段10は、入力された映像信号を、カラー表示素子20で表示可能な形式の表示装置用映像信号に変換して、カラー表示素子20に出力する。
【0031】
以下、映像信号の変換方法について、具体的に説明する。
色表現単位に含まれる4個のサブピクセルS1-1,S1-2,S2-1,S2-2と、画像の元となる3原色のRGB値とは、下記の式(1)の関係で表すことができる。
【0032】
【数1】
【0033】
説明を簡易にするため、ガンマは、1.0とする。また、映像信号の2画素分について、RGB値とY値(輝度値)は、それぞれ、(R1,G1,B1),Y1、(R2,G2,B2),Y2とする。そして、3原色のRGB値からY値への寄与は、それぞれ、CR,CG,CBとする。さらに、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2の信号レベルは、それぞれ、g1,g2,h1,h2とする(g;色表現単位21で1個目の画素、h;色表現単位21で2個目の画素)。この場合、1画素単位で輝度を表現し、2画素で1色を表現するので、下記の式(2)が成立する。
【0034】
なお、人間の視覚は、輝度に対しては高い周波数まで感度を持つが、色に対しては輝度の1/4程度の周波数までしか感度を持たないことが知られている(参考文献:WILEY出版“The Reproduction of Colour”,R.W.Hunt著、第6版、2006年、p.310)。このとき、1画素単位で輝度を表現するので、この参考文献によれば、複数の画素で1色を表現しても問題ないと言える。すなわち、本発明において、前記したサブサンプル表示を行っても、感度の問題が生じない。
【0035】
【数2】
【0036】
この式(2)は、4元4連立方程式なので、下記の式(3)に示すように、一意に解くことができる。すなわち、カラー信号処理手段10は、変換式としての式(3)を用いて、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する。
【0037】
【数3】
【0038】
また、直視型表示装置1では、画像の元となるRGBのサブピクセルのxyz座標値(以下、「RGBのxyz座標値」)と、画像の元となる基準白色のサブピクセルのxyz座標値(以下、「白のxyz座標値」)とが決まれば、寄与CR,CG,CBを求めることができる。ここで、RGBのxyz座標値は、それぞれ、(rx,ry,rz)、(gx,gy,gz)、(bx,by,bz)とする。また、白のxyz座標値は、(wx,wy,wz)とする。この場合、下記の式(4)の関係が成立する。なお、式(4)の定数C1,C2,C3は、下記の式(5)から求めることができる。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
従って、カラー信号処理手段10は、下記の式(6)を用いて、寄与CR,CG,CBを求めることができる。
【0042】
【数6】
【0043】
例えば、HDTV(High Definition TeleVision)において、RGBのxyz座標値R=(0.64,0.33,0.03)、G=(0.30,0.60,0.10)、B=(0.15,0.06,0.79)で、白色の座標値=(0.3127,0.3290,0.3583)の場合を考える。この場合、寄与CR,CG,CBは、それぞれ、0.2126、0.7152、0.0722となる。
【0044】
カラー表示素子(表示素子)20は、カラー信号処理手段10から表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20は、表示装置用映像信号の信号レベルg1,g2,h1,h2に基づいて、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2をそれぞれ発光させる。
【0045】
図2を参照して、カラー表示素子20での配列構造について説明する。
図2に示すように、画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。このように、画素23は、それぞれ、補色関係にある2個のサブピクセルで構成され、かつ、画素23に含まれるサブピクセルS1-1〜S2-2の対が互いに異なる色の組み合わせを有する。
【0046】
このとき、画素23は、一方のサブピクセルを3原色のうちの何れか1原色とし、他方のサブピクセルをこの1原色の補色としてもよい。図2の例では、青のサブピクセルS1-2および赤のサブピクセルS2-1が原色になる。また、黄のサブピクセルS1-1およびシアンのサブピクセルS2-2が、それぞれ、サブピクセルS1-2,S2-1に対する補色となる。
さらに、本発明では、画素23を構成する2個のサブピクセルを、両方とも原色以外の色としてもよく、この具体例については後記する。
【0047】
ここで、2個のサブピクセルからなる1個の画素23だけでは、1色を表現できない。このため、カラー表示素子20は、2個の画素23を組み合わせた色表現単位21によって、1色を表現する。
【0048】
なお、図2では、カラー表示素子20を構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20の全体を図2の配列構造としてもよい
また、カラー表示素子20は、例えば、偏光フィルタ、カラーフィルタ、ガラス基板、透明電極、配向膜、液晶層などからなり、公知の手法・素材により形成可能なため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図3を参照して、カラー表示素子20での分光反射率分布について説明する(適宜図1,図2参照)。
黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2との分光反射率分布は、図3(a)のようになる。この分光反射率分布は、可視光領域で、波長(横軸)と、反射率(縦軸)との関係を示すものである。この可視光領域は、肉眼で識別可能な光の波長領域であり、例えば、下限の波長λminが400nm程度であり、上限の波長λmaxが800nm程度である。また、反射率は、各波長領域での反射率を示しており、通常、0.0〜1.0の範囲となる。
【0050】
図3(a)上段に示すように、黄のサブピクセルS1-1は、黄の波長領域で反射率が1.0になる。また、図3(a)下段に示すように、青のサブピクセルS1-2は、青の波長領域で反射率が1.0になる。このように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、反射率が1.0となる波長領域が重なりあうことがない。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、その分光反射率分布を合計すると、可視光領域全体で反射率が1.0(つまり、白)になり、完全な補色となる。
【0051】
また、図3(b)上段に示すように、赤のサブピクセルS2-1は、赤の波長領域で反射率が1.0になる。さらに、図3(b)下段に示すように、シアンのサブピクセルS2-2は、シアンの波長領域で反射率が1.0になる。このように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、反射率が1.0となる波長領域が重なりあうことがない。従って、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、図3(a)と同様、完全な補色となる。
【0052】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置1は、サブピクセルS1-1〜S2-2が入射光を1/2程度利用できる。一方、RGB表示装置では、RGBのサブピクセルで入射光の利用効率が1/3程度である。従って、直視型表示装置1は、RGB表示装置に比べて、約50%、表示画面を明るくすることができる。
【0053】
さらに、直視型表示装置1は、画素23を構成するサブピクセルの数が2個のため、4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑えることができる。以下、映像信号のR,G,B、および、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2が、ぞれぞれ、1バイトとして具体的に説明する。
【0054】
この場合、直視型表示装置1は、映像信号に含まれる2画素分のRGB値(6バイト)を、4バイトのg1,g2,h1,h2に変換する(式(3)参照)。すなわち、直視型表示装置1は、入力された映像信号に対して、表示装置用映像信号の信号量が2/3となる。
【0055】
一方、4サブピクセル表示装置では、映像信号に含まれる1画素分のRGB値(3バイト)を、4個のサブピクセルに対応した4バイトの信号に変換する。すなわち、4サブピクセル表示装置では、入力された映像信号に対して、変換後の信号量が4/3となる。このように、直視型表示装置1は、4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑えることができる。
【0056】
なお、第1実施形態では、図2に示すように、色表現単位21が4個のサブピクセルS1-1〜S2-2を水平方向に配列した構造としたが、これに限定されない。つまり、色表現単位21は、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2を垂直方向に配列した構造としてもよい。
【0057】
なお、直視型表示装置1では、所望のカラーフィルタを適用して、図3のような分光反射率分布を実現できる。図3(a)の例では、直視型表示装置1は、黄の波長領域で反射率が1.0になるカラーフィルタと、青の波長領域で反射率が1.0になるカラーフィルタとを適用している。
【0058】
(変形例1)
図1に戻り、本発明の変形例1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
以後、本発明の変形例1に係る直視型表示装置およびカラー信号処理手段を、それぞれ、直視型表示装置1Bおよびカラー信号処理手段10Bと呼ぶ。
【0059】
第1実施形態に係る直視型表示装置1では、表示画面を明るくできる一方、画素の妨害(表示画面のノイズ)が発生することがある。この誤作動の原因としては、彩度が高くなる領域で、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の値が負になることが考えられる。
【0060】
そこで、直視型表示装置1Bは、式(3)以外の変換式によって映像信号を変換することで、この誤作動を防止する。具体的には、前記した式(2)の代わりに、下記の式(7)を用いることを考える。この場合、変換式は、下記の式(8)で表すことができる。
【0061】
【数7】
【0062】
【数8】
【0063】
この式(7)および式(8)では、αが彩度の相対値(つまり、色の濃さを示す値)であり、0.0から1.0までの範囲で手動設定される。ここで、相対値α=0の場合、映像をモノクロで表示することになり、相対値α=1の場合、映像信号のままの色で映像を表示することになる。
【0064】
このとき、相対値αは、直視型表示装置1Bが誤動作しない範囲で、高い値に設定することが好ましい。この方法として、カラー信号処理手段10Bは、α=1.0が手動設定された状態で、映像信号を変換する。ここで、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の何れかが負になる場合、その画素の計算行うときだけ、所定値(例えば、0.1)を減算した相対値αを再設、手動設定する。そして、カラー信号処理手段10Bは、減算後の相対値αが設定された状態で、映像信号を再度変換する。
【0065】
この結果、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の値が全て正になれば、カラー信号処理手段10Bは、変換処理を終了する。一方、カラー信号処理手段10Bは、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の何れかが負であれば、前記した手順を再度実行する。この手順によれば、例えば、相対値αは、0.7から1.0までの間になることが多い。
【0066】
以上のように、本発明の変形例1に係る直視型表示装置1Bは、変換式として、式(8)を用いることで、表示画面のノイズを低減することができる。つまり、直視型表示装置1Bは、直視型表示装置1と同様の効果に加えて、綺麗な映像を表示することができる。
【0067】
(変形例2)
図4を参照して、本発明の変形例2について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図1,図2参照)。
以後、本発明の変形例2に係る直視型表示装置およびカラー表示素子を、それぞれ、直視型表示装置1Cおよびカラー表示素子20Cと呼ぶ。
【0068】
第1実施形態では、黄、青、赤およびシアンのサブピクセルを例にあげて説明したが、サブピクセルの配列構造は、これに限定されない。具体的には、カラー表示素子20Cは、緑のサブピクセルS1-1と、マゼンタのサブピクセルS1-2とで画素231が構成される。また、例えば、カラー表示素子20Cは、シアン(緑青)のサブピクセルS2-1と、黄(橙色)のサブピクセルS2-2とで画素232が構成される。
【0069】
図4を参照して、カラー表示素子20Cでの分光反射率分布について説明する。
図4(a)に示すように、緑のサブピクセルS1-1と、マゼンタのサブピクセルS1-2とは、完全な補色である。また、図4(b)に示すように、シアン(緑青)のサブピクセルS2-1と、黄(橙色)のサブピクセルS2-2とは、完全な補色である。すなわち、画素232を構成するサブピクセルS2-1,S2-2は、両方とも、原色以外の色である。
【0070】
以上のように、本発明の変形例2に係る直視型表示装置1Cは、原色以外のサブピクセルを用いた場合でも、第1実施形態と同様、表示画面を明るく、信号量を抑えることができる。
この場合、直視型表示装置1Cは、変形式として、前記した式(3)および式(8)の両方を利用できることは言うまでもない。
【0071】
(第2実施形態:3個の画素で1色を表現)
図5を参照し、本発明の第2実施形態に係る直視型表示装置1Dについて説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Dは、3個の画素23が集合した色表現単位21Dで1色を表現するものであり、カラー信号処理手段10Dと、カラー表示素子20Dとを備える。
【0072】
カラー信号処理手段10Dは、映像信号が入力されると共に、予め設定された変換式によって、入力された映像信号を、色表現単位21Dに対応した直視型表示装置用映像信号に変換するものである。
【0073】
色表現単位21Dに含まれる6個のサブピクセルS1-1,S1-2,S2-1,S2-2,S3-1,S3-2と、画像の元となる3原色のRGB値との関係は、下記の式(9)で表すことができる。
【0074】
【数9】
【0075】
6個のサブピクセルS1-1〜S3-2の信号レベルは、それぞれ、g1,g2,h1,h2,k1,k2とする(g;色表現単位21Dで1個目の画素、h;色表現単位21Dで2個目の画素、k;色表現単位21Dで3個目の画素)。また、映像信号の3画素分について、RGB値とY値(輝度値)は、それぞれ、(R1,G1,B1),Y1、(R2,G2,B2),Y2、(R3,G3,B3),Y3とする。この場合、下記の式(10)が成立する。
【0076】
【数10】
【0077】
また、彩度が高くなる領域での誤作動が起きる場合、式(10)の代わりに、下記の式(11)を用いることもできる。
【0078】
【数11】
【0079】
すなわち、カラー信号処理手段10Dは、式(10)または式(11)を解いた変換式により、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する。すなわち、カラー信号処理手段10Dは、この変換式によって、映像信号で色表現単位21Dと同数の3画素分の画素値(9バイト)を、色表現単位21DのサブピクセルS1-1〜S3-2の信号レベル(6バイト)に変換する。
【0080】
なお、式(10)および式(11)は、6元5連立方程式なので、自由度が1になることがわかる。すなわち、直視型表示装置1Dは、入力された映像信号に対して異なる色を発光する可能性があるが、この色の違いを肉眼で識別することが困難であり、実用上の問題はない。
【0081】
ここで、式(10)および式(11)の解き方について説明する。前記した式(10)および式(11)は、下記の式(12)のように、5個の1次式で表される形式である。この式(12)では、6個のx1〜x6が未知数(信号レベルg1〜k2)であり、a1〜e6,y1〜y5が定数である。
【0082】
【数12】
【0083】
しかし、前記した式(12)では、未知数x1〜x6を一意に求めることができない。そこで、制約条件として、式(12)に下記の式(13)を追加する。この式(13)では、定数がf1〜f6,y6であり、任意の値とすることができる。すなわち、式(13)は、式(12)から独立している。
【0084】
【数13】
【0085】
例えば、f1を1とし、f2〜f6,y6を0とすると、前記した式(13)は、x1=0となる。従って、前記した式(12)は、下記の式(14)のように、6個の式で表すことができる。このとき、未知数がx1〜x6という6個であり、定数が残りのa1〜f6,y1〜y6である。
【0086】
【数14】
【0087】
前記した式(14)は、逆行列を用いると、下記の式(15)となる。以上より、カラー信号処理手段10Dは、式(10)または式(11)に任意の制約条件を課すことで、式(10)または式(11)を解いて、未知数x1〜x6(信号レベルg1〜k2)を求めることができる。
【0088】
【数15】
【0089】
カラー表示素子20Dは、カラー信号処理手段10Dから表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20Dは、表示装置用映像信号の信号レベルg1,g2,h1,h2,k1,k2に基づいて、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を発光させる。
【0090】
図5を参照して、カラー表示素子20Dでの配列構造について説明する。
図5に示すように、画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。さらに、例えば、画素233は、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とで構成される。このように、画素23は、それぞれ、完全な補色のサブピクセルS1-1〜S3-2の対で構成される。
なお、図5では、カラー表示素子20Dを構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20Dの全体を図5の配列構造としてもよい
【0091】
図6,図7を参照して、カラー表示素子20Dでの分光反射率分布について説明する(適宜図1,図5参照)。
図6(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、は、図3(a)と同様の分光反射率分布になる。また、図6(b)に示すように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、図3(b)と同様の分光反射率分布になる。さらに、図7に示すように、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、図4(a)と同様の分光反射率分布になる。図6,図7の分光反射率分布からも、色表現単位21Dを構成する画素23は、それぞれ、完全な補色のサブピクセルS1-1〜S3-2の対で構成されることがわかる。
【0092】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る直視型表示装置1Dは、3個の画素23が集合した色表現単位21Dで1色を表現した場合でも、第1実施形態と同様、表示画面を明るくし、信号量を約半分に抑えることができる。
【0093】
なお、図5に示すように、第2実施形態では、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を水平方向に配列した構造としたが、これに限定されない。つまり、色表現単位21Dは、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を垂直方向に配列した構造としてもよい。さらに、色表現単位21Dは、T字状の配列構造としてもよく、この配列構造を変形例3として説明する。
【0094】
(変形例3)
図8を参照して、本発明の変形例3について、第2実施形態と異なる点を説明する。
以後、本発明の変形例3に係る直視型表示装置、カラー表示素子および色表現単位を、それぞれ、直視型表示装置1E、カラー表示素子20Eおよび色表現単位21Eと呼ぶ。
【0095】
図8(a)に示すように、色表現単位21Eは、画素231と画素232とを左右に隣接して配置し、画素233を画素231および画素232の下側中間位置に配置する。そして、図8(b)に示すように、T字状の色表現単位21Eを水平方向に複数配列する。すると、カラー表示素子20Eでは、隣接した色表現単位21Eの間に凹部状のスペースが形成されるので、別の色表現単位21Eをこのスペースに挿入するように配列する。
【0096】
以上のように、直視型表示装置1Eは、T字状の色表現単位21Eを配列した場合でも、第2実施形態と同様、表示画面を明るくし、信号量を抑えることができる。さらに、直視型表示装置1Eは、水平方向、垂直方向などの1次元的な配列構造以外も可能となり、その設計自由度が向上する。
【0097】
(変形例4)
図9,図10を参照して、本発明の変形例4について、第2実施形態と異なる点を説明する(適宜図6,図7参照)。
以後、本発明の変形例4に係る直視型表示装置およびカラー表示素子を、それぞれ、直視型表示装置1Fおよびカラー表示素子20Fと呼ぶ。
【0098】
前記した第2実施形態では、分光反射率分布における分光反射率合計値が1.0として説明した。具体的には、図6(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1の反射率と、青のサブピクセルS1-2の反射率とを合計すると、可視光領域全体で反射率が1.0になる。この点、図6(b)および図7も同様である。
【0099】
一方、カラー表示素子20Fでは、各画素23を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対が、分光反射率分布における分光反射率合計値が1.0を越えて1.2以下となる。具体的には、図9(a)上段に示すように、黄のサブピクセルS1-1は、黄の波長領域で反射率が1.0になる。また、黄のサブピクセルS1-1は、黄以外の波長領域での反射率が、黄の波長領域での最大反射率の1/5(つまり、0.2)になる(ハッチング部分参照)。すなわち、黄のサブピクセルS1-1は、可視光領域全体で反射率が1.0か0.2の何れかとなる。
【0100】
図9(a)下段に示すように、青のサブピクセルS1-2は、青の波長領域で反射率が1.0になる。また、青のサブピクセルS1-2は、青以外の波長領域での反射率が0.2になる。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布を合計すると、可視光領域全体で反射率が1.2になる。
【0101】
また、図9(b)に示すように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、その分光反射率分布を合計すると、図9(a)と同様、可視光領域全体で反射率が1.2になる。さらに、図10に示すように、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、その分光反射率分布を合計すると、図9(a)と同様、可視光領域全体で反射率が1.2になる。
【0102】
以上のように、本発明の変形例3に係る直視型表示装置1Fは、分光反射率合計値が1.0を超えるため、画素23の輝度を高くでき、眩しい視聴環境(例えば、屋外)でも映像を見易くできる。さらに、直視型表示装置1Fは、分光反射率合計値が1.2以下のため、濃い色を表現できないといった色表現力の低下を、最小限に抑えることができる。
【0103】
なお、直視型表示装置1Fは、所望のカラーフィルタを適用することで、図9,図10のような分光反射率分布を実現できる。図9(a)上段の例では、直視型表示装置1Fは、黄の波長領域で反射率が1.0になり、黄以外の波長領域での反射率が0.2になるカラーフィルタを適用している。また、図9(a)下段の例では、直視型表示装置1Fは、青の波長領域で反射率が1.0になり、青以外の波長領域での反射率が0.2になるカラーフィルタを適用している。
【0104】
(第3実施形態:4個の画素で1色を表現)
図11を参照し、本発明の第3実施形態に係る直視型表示装置1Gについて説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Gは、4個の画素231〜234が集合した色表現単位21Gで1色を表現するものであり、カラー信号処理手段10Gと、カラー表示素子20Gとを備える。
【0105】
カラー信号処理手段10Gは、映像信号が入力されると共に、予め設定された変換式によって、入力された映像信号を、色表現単位21Gに対応した直視型表示装置用映像信号に変換するものである。
【0106】
まず、各サブピクセルと同じ大きさで、3原色(RGB)を発光したときのxyz座標値のベクトルを考える。ここで、RGBのxyz座標値のベクトルは、下記の式(16)で定義する。なお、Rx〜Bzは、予め設定された定数である。
【0107】
【数16】
【0108】
また、4個の画素23を構成する各サブピクセルS1-1〜S4-2の信号レベルは、それぞれ、P1-1〜P4-2とする。このとき、各サブピクセルS1-1〜S4-2を信号レベルP1-1〜P4-2で発光させたとき、各サブピクセルS1-1〜S4-2からのxyz座標値のベクトルは、下記の式(17)で表すことができる。なお、C1-1R〜C4-2Bは、予め設定された定数である。
【0109】
【数17】
【0110】
ここで、カラー表示素子20Gが表示したいのは、4個の画素231〜234のそれぞれの輝度y1〜y4、および、4個の画素23全体の平均色である。ここでは、4個の画素23全体で、式(16)で定義されるベクトルを加算することで、平均色を求めることができる。この場合、輝度y1〜y4、および、平均色Rtotal,Gtotal,Btotalは、下記の式(18)で表すことができる。
【0111】
【数18】
【0112】
すなわち、カラー信号処理手段10Gは、式(18)を解いた変換式により、映像信号で色表現単位21Gと同数の4画素分の画素値(12バイト)を、色表現単位21GのサブピクセルS1-1〜S4-2の信号レベル(8バイト)に変換する。
【0113】
なお、この式(18)において、未知数である信号レベルP1-1〜P4-2の8個に対して、式(18)が7個の式で構成される。このように、式(18)で未知数の重複が見られるので、自由度が6になる。このため、カラー信号処理手段10Gは、前記したカラー信号処理手段10Dと同様、P3-2=P4-2というような任意の制約条件を課すことで、式(18)を解くことができる。
【0114】
カラー表示素子20Gは、カラー信号処理手段10Gから表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20Gは、4個の画素231〜234がそれぞれ輝度y1〜y4、かつ、4個の画素231〜234全体で平均色Rtotal,Gtotal,Btotalとなるように、サブピクセルS1-1〜S4-2を発光させる。
【0115】
図11〜図13を参照して、カラー表示素子20Gでの配列構造について説明する。
図11に示すように、カラー表示素子20Gは、色表現単位21Gが、3個の準補色画素231〜233と、1個の調整用画素234との計4個の画素23で構成される。ここで、色表現単位21Gは、準補色画素231,232を隣接配置し、その下側に準補色画素233および調整用画素234を隣接配置した、矩形状の配列構造となる。
【0116】
なお、図11では、準補色画素および調整用画素も単に「画素」と図示した。
また、図11では、カラー表示素子2Gを構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20Gの全体を図11の配列構造としてもよい。
【0117】
準補色画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、準補色画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。さらに、例えば、準補色画素233は、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とで構成される。これら準補色画素231〜233を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対は、準補色関係になる。
【0118】
この準補色関係とは、図12,図13に示すように、準補色画素231〜233を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対において、分光反射率分布の重なる割合が2割以下になるものである。言い換えるなら、準補色関係とは、サブピクセルS1-1〜S3-2の対がそれぞれ発光する色を合成したときに、白色の近似色になるものである。
【0119】
具体的には、図12(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布が、黄の波長領域λYと青の波長領域λBとの境界で重複している。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素231は、輝度が高くなると共に、白っぽいシアンで発光することになる。
【0120】
ここで、分光反射率分布の重なる割合は、例えば、サブピクセルS1-1〜S3-2の対のうち、分光反射率分布における波長領域が広い方を基準として、2割以下とする。図12(a)の例では、黄の波長領域λYが青の波長領域λB´より広いため、この黄の波長領域λYの2割まで重複させることができる(ハッチング部分参照)。
【0121】
また、直視型表示装置1Gは、サブピクセルS1-1〜S3-2の対のうち、原色のサブピクセルの波長領域を拡大してもよい。図12(a)の例では、青のサブピクセルS1-2が原色のため、本来の青の波長領域λBが波長領域λB´まで拡大されて、黄の波長領域λYに重ねられている。
【0122】
図12(b)では、赤のサブピクセルS2-1の波長領域が拡大されて、シアンのサブピクセルS2-2の波長領域に重ねられている。従って、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素232は、輝度が高くなると共に、白っぽい黄色で発光することになる。
【0123】
図13(a)では、緑のサブピクセルS3-1の波長領域が拡大されて、マゼンタのサブピクセルS3-2の波長領域に重ねられている。従って、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素233は、輝度が高くなると共に、白っぽい緑で発光することになる。つまり、3個の準補色画素231〜233は、それぞれが発光する色を合成すると白っぽい緑となり、入力された表示装置用映像信号に対して、異なる色で発光することなる。
【0124】
そこで、調整用画素234は、表示装置用映像信号の色から変化した準補色画素231〜233の色を、この表示装置用映像信号と同じ色になるように調整する。この調整用画素234は、図13(b)に示すように、白のサブピクセルS4-1と、マゼンタのサブピクセルS4-2とで構成される。そして、調整用画素234は、準補色画素231〜233の白っぽい緑をサブピクセルS4-1,S4-2の色で相殺するようにして、調整(キャンセル)する。言い換えるなら、カラー表示素子20Gは、3個の準補色画素231〜233と、1個の調整用画素234とを組にすることで、白を発光することができる。
【0125】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る直視型表示装置1Gは、準補色画素231〜233の輝度を高くすると共に、この準補色画素231〜233の色を調整用画素234の色で調整するため、色表現力の低下を最小限に抑え、眩しい視聴環境でも映像を見易くすることができる。
【0126】
なお、直視型表示装置1Gは、所望のカラーフィルタを適用することで、図12,図13のような分光反射率分布を実現できる。図12(a)の例では、直視型表示装置1Gは、黄および青の波長領域が重なりあうカラーフィルタを適用している。
【0127】
(第4実施形態:明暗が交互するサブピクセルの配列)
図14〜図18を参照し、本発明の第4実施形態に係る直視型表示装置1Hについて、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Hは、明暗が交互するようにサブピクセルS1-1〜S2-2を配列したものであり、カラー信号処理手段10Hと、カラー表示素子20Hとを備える。
【0128】
前記した各実施形態では、1個の画素23が2個のサブピクセルで構成されるため、サブピクセルの構造が見え易くなることがある。例えば、図1の直視型表示装置1においては、ある程度離れて表示画面を見た場合、色の差が分からないが、各サブピクセルS1-1〜S2-2の輝度レベルが分かってしまう。
【0129】
そこで、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造を見え難くするため、直視型表示装置1Hは、カラー表示素子20Hを、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が交互する配列構造とした。以後、サブピクセルS1-1〜S2-2は、第1実施形態と同様、それぞれ、黄、青、赤およびシアンとする。また、サブピクセルS1-1〜S2-2の輝度は、それぞれ、Y(S1-1)〜Y(S2-2)と表記する。
【0130】
ここで、前記した寄与CR,CG,CBより、RGBの輝度値をそれぞれ0.2、0.7、0.1と近似した場合を考える。この近似値を式(1)に代入すると、Y(S1-1)=0.2+0.7=0.9、Y(S1-2)=0.1、Y(S2-1)=0.2、Y(S2-2)=0.7+0.1=0.8となる。この結果より、Y(S1-1),Y(S1-2)の大小関係、および、Y(S2-1),Y(S2-2)の大小関係は、下記の式(19)で表すことができる。
【0131】
【数19】
【0132】
このとき、サブピクセルS1-1〜S2-2の対が補色となるため、一方のサブピクセルS1-1,S2-1が暗ければ、他方のサブピクセルS1-2,S2-2が明るくなる。つまり、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造により、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え易いか、見え難いかが決まる。そこで、この式(19)の条件に基づいて、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造を幾つか例示して説明する。
【0133】
図14(a)に示すように、図1のカラー表示素子20では、サブピクセルS1-1〜S2-2が水平方向で順番に配列されている。この場合、図16(a)に示すように、カラー表示素子20では、サブピクセルS1-1,S1-2で輝度が低くなった後、サブピクセルS1-2,S2-1,S2-2で輝度が段階的に高くなる。すなわち、カラー表示素子20は、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が交互する配列構造になっておらず、明るい部分と暗い部分とが1画素幅で並んでしまう。このため、図17(a)に示すように、カラー表示素子20は、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え易くなる。
なお、図14では、図面を見易くするため、サブピクセルS1-1〜S2-2を、「S1−1」〜「S2−2」と図示した。
【0134】
そこで、図14(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が1次元方向(水平方向)で交互するように、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列する。つまり、カラー表示素子20Hは、図14(a)において、サブピクセルS2-1,S2-2を入れ替えた配列構造になる。このため、図16(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、明るいサブピクセルS1-1,S2-2、暗いサブピクセルS1-2,S2-1が交互に並ぶことになる。従って、図17(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え難くなる。
【0135】
さらに、図14(c)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2が2次元方向で交互する配列構造としてもよい。具体的には、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に水平方向で配列する。その列の下段に、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS2-2,S2-1,S1-1,S1-2を順番に水平方向で配列する。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。この場合、図18(a)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造がより見え難くなる。
【0136】
このとき、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造は、図14(c)に限定されない。例えば、図15(a)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列し、その列の下段にサブピクセルS2-1,S1-1,S1-2,S2-2を順番に配列する。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。
【0137】
また、図15(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列し、その列の下段にサブピクセルS2-1,S2-2,S1-2,S1-1を順番に配列してもよい。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。図15の配列構造とした場合、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が2次元方向で交互するため、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造がさらに見え難くなる。
【0138】
ここで、比較対象として、従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの構造を、図18(b)に示す。これら図17,図18より、本発明の第4実施形態に係る直視型表示装置1Hは、第1実施形態と同様の効果に加え、直視型表示装置1や従来のRGB表示装置よりも、サブピクセルの構造が見え難にくく、綺麗な映像を表示できることがわかる。
なお、直視型表示装置1Hは、第1実施形態に適用する例で説明したが、第2実施形態にも同様に適用することができる。
【0139】
なお、各実施形態では、本発明に係る直視型表示装置1〜1Hを反射型の液晶ディスプレイとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明に係る直視型表示装置は、プラズマディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイとしてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1〜1H 直視型表示装置
10〜10H カラー信号処理手段(映像信号変換手段)
20〜20H カラー表示素子(表示素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの直視型表示装置において、画素を構成するサブピクセルの配列構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどの直視型表示装置が注目されている。ここでは、従来の直視型表示装置として、バックライトを備えずに、周囲の光を反射してカラー表示を行うものについて説明する(以後、「RGB表示装置」とする)。
【0003】
このRGB表示装置は、図19(a)に示すように、1画素をRGBのサブピクセルに分け、各サブピクセルでR(赤)、G(緑)、B(青)を表示する。従って、RGB表示装置に白色光が入射した場合、各サブピクセルの分光反射率は、図19(b)〜(d)のようになる。この場合、RGB表示装置は、各サブピクセルが入射光の1/3程度しか利用できないので、その輝度が原理的に1/3になり、表示画面が暗くなってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載では、4サブピクセル表示装置に関する発明が提案されている。この4サブピクセル表示装置は、1ドットを赤、緑、青のうちの2色と、この2色に対して補色となる計4色のサブピクセルで構成したものである。これによって、4サブピクセル表示装置は、入射光の利用効率を向上させて、RGB表示装置よりも表示画面を明るくすることができる。
【0005】
なお、図19(b)〜(d)では、図面が見やすくなるようにRGBのサブピクセルの波長領域を図示している。このため、RGBの波長領域が同じ幅でなくともよいことは言うまでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−97176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の4サブピクセル表示装置は、以下のような問題がある。
ここで、説明を簡易にするため、カラー映像がN画素×M画素であり、映像信号に含まれるRGB値と、各サブピクセルの色(信号量)とが、それぞれ1バイトであるとする。この場合、映像信号は、N×M×3(RGB値)=3NMバイトとなる。
【0008】
また、4サブピクセル表示装置は、1ドットが4サブピクセルで、かつ、1ドットで1色を表現するため、3NMバイトの映像信号を、N×M×4=4NMバイトの映像信号に変換する必要がある。すなわち、4サブピクセル表示装置は、映像信号の信号量が4/3倍に増大する。このように映像信号の信号量が増加すると、4サブピクセル表示装置では、ディスプレイの応答速度が低下する、カラー表示素子の回路が複雑化するなどの問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、表示画面が明るく、かつ、信号量の増加を抑えた直視型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係る直視型表示装置は、補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子を備える直視型表示装置であって、映像信号が入力されると共に、映像信号における複数の画素の画素値を色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段を備え、表示素子が、色表現単位に含まれるサブピクセルの対が互いに異なる色の組み合わせを有し、映像信号変換手段によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、直視型表示装置は、1画素が2個のサブピクセルで構成されるため、各サブピクセルが入射光を1/2程度利用することができる。
なお、本発明において、画素とは、画像を構成する単位であって、表示素子で表示可能な最小単位(表示素子の1ドット)に対応するものである。
【0012】
また、直視型表示装置は、1画素が2個のサブピクセルで構成されるため、前記した変換式を適用することができる。そして、直視型表示装置は、この変換式によって、従来の4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑える。
【0013】
例えば、色表現単位を2画素(4個のサブピクセル)とし、映像信号の各画素の画素値(RGB値)を3バイトとし、サブピクセルの信号レベルを1バイトとして説明する。この場合、直視型表示装置は、前記した変換式によって、映像信号で2画素分(色表現単位の画素数と同数)の画素値(3バイト×2=6バイト)を、色表現単位に含まれる4個のサブピクセルの信号レベル(4バイト)に変換する。すなわち、直視型表示装置は、入力された映像信号に対して、表示装置用映像信号の信号量が2/3となる。
【0014】
一方、従来の4サブピクセル表示装置では、4個のサブピクセルで構成された1ドットで1色を表現するため、映像信号に含まれる1画素分の画素値(3バイト)を、4個のサブピクセルの信号レベル(4バイト)に変換する。すなわち、従来の4サブピクセル表示装置では、入力された映像信号に対して、変換後の信号量が4/3となる。このようにして、直視型表示装置は、信号量を約半分に抑えることができる。
【0015】
また、本願第2発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、色表現単位が2個の画素であってもよい。
さらに、本願第3発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、色表現単位が3個の画素であってもよい。
【0016】
ここで、表示素子は、3原色のうちの何れか1原色のサブピクセルと、この1原色のサブピクセルに補色関係となる補色のサブピクセルとで1画素を構成してもよい。例えば、表示素子は、黄と青とのサブピクセルの対、赤とシアンとのサブピクセルの対、または、緑とマゼンタとのサブピクセルの対で1画素を構成する。
【0017】
さらに、表示素子は、3原色以外の色で補色関係となるサブピクセルの対で1画素を構成してもよい。例えば、表示素子は、黄色(橙色)とシアン(緑青)とのサブピクセルの対で1画素を構成する。
【0018】
また、本願第4発明に係る直視型表示装置は、サブピクセルの対が、可視光領域で波長と反射率との関係を示す分光反射率分布における分光反射率合計値が、1.0を越えて1.2以下であることが好ましい。
かかる構成によれば、直視型表示装置は、各画素の輝度を高くすると共に、色表現力の低下を最小限に抑えることができる。
【0019】
また、本願第5発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、サブピクセルの対が補色関係に代えて準補色関係にある準補色画素と、白のサブピクセルおよびマゼンタのサブピクセルで構成された調整用画素とを有すると共に、色表現単位が3個の準補色画素および1個の調整用画素の集合であることが好ましい。
【0020】
ここで、準補色画素とは、この準補色画素を構成するサブピクセルの対において、分光反射率分布の重なる割合が2割以下となる準補色関係を満たすものである。言い換えるなら、補色関係には、2色を合成したときに白色となる完全な補色だけでなく、2色を合成したときに白色の近似色となる準補色関係も含まれる。
【0021】
すなわち、直視型表示装置は、分光反射率分布が重なる波長領域において、準補色画素の輝度を高くすることができる。その一方、直視型表示装置は分光反射率分布の重なりによって準補色画素の色が変化してしまうので、この色の変化を調整用画素の色で調整して、色表現力の低下を最小限に抑える。
【0022】
また、本願第6発明に係る直視型表示装置は、表示素子が、サブピクセルの輝度が交互に高低するように、サブピクセルを配列したことが好ましい。
かかる構成によれば、直視型表示装置は、サブピクセルの明暗が交互するため、サブピクセルの配列構造が見え難くなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、各サブピクセルが入射光を1/2程度利用できるため、従来のRGB表示装置に比べて、表示画面を明るくすることができる。さらに、本願第1発明によれば、従来の4サブピクセル表示装置に比べて、1画素を構成するサブピクセルの数が半分のため、信号量を約半分に抑えることができる。
【0024】
本願第2発明によれば、2画素で1色を表現する表示素子により、表示画面を明るくすることができる。
本願第3発明によれば、3画素で1色を表現する表示素子により、表示画面を明るくすることができる。
【0025】
本願第4発明によれば、各画素の輝度を高くすると共に、色表現力の低下を最小限に抑えるため、眩しい環境でも映像を見易くすることができる。
本願第5発明によれば、準補色画素の輝度を高くすると共に、準補色画素における色の変化を調整用画素の色で調整するため、色表現力の低下を最小限に抑え、眩しい視環境でも映像を見易くすることができる。
本願第6発明によれば、サブピクセルの配列構造が見え難く、映像を綺麗に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図3】図2のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図4】本発明の変形例2におけるサブピクセルの分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図5】本発明の第2実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図6】図5のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図7】図5のカラー表示素子の分光反射率分布を示すグラフであり、色表現単位で3個目の画素を示す。
【図8】本発明の変形例3におけるサブピクセルの配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位を示し、(b)は(a)の色表現単位からなるカラー表示素子を示す。
【図9】本発明の変形例4における分光反射率分布を示すグラフであり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図10】本発明の変形例4における分光反射率分布を示すグラフであり、色表現単位で3個目の画素を示す。
【図11】本発明の第3実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図12】図11のカラー表示素子の配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位で1個目の画素を示し、(b)は色表現単位で2個目の画素を示す。
【図13】図11のカラー表示素子の配列構造を示す図であり、(a)は色表現単位で3個目の画素を示し、(b)は色表現単位で4個目の画素を示す。
【図14】(a)は図1のカラー表示素子の配列構造を示し、(b)および(c)は本発明の第4実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図15】(a)および(b)は本発明の第4実施形態におけるサブピクセルの配列構造を示す図である。
【図16】(a)は図14(a)のカラー表示素子におけるサブピクセルと反射率との関係を示すグラフであり、(b)は図14(b)のカラー表示素子におけるサブピクセルと反射率との関係を示すグラフである。
【図17】(a)は図14(a)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像であり、(b)は図14(b)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像である。
【図18】(a)は図14(c)のカラー表示素子におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像であり、(b)は従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの配列構造の見え方を示す画像である。
【図19】従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの配列構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0028】
(第1実施形態:2個の画素で1色を表現)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置1について説明する。
直視型表示装置1は、1個の画素23で輝度を表現し、2個の画素23が集合した色表現単位21(図2参照)で1色を表現するものであり、カラー信号処理手段(映像信号変換手段)10と、カラー表示素子(表示素子)20とを備える。以後の各実施形態では、直視型表示装置1は、カラー表示が可能な、反射型の液晶ディスプレイとして説明する。
なお、1個の画素による輝度の表現は、以降の各実施形態においても同様である。
【0029】
カラー信号処理手段(映像信号変換手段)10は、所定の変換式によって、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換するものである。この変換式は、映像信号で色表現単位21と同数の2画素分の画素値(例えば、RGB値)を、色表現単位21のサブピクセルS1-1〜S2-2の信号レベルに変換するように予め設定された計算式である。
【0030】
ここで、後記するカラー表示素子20は、2個以上の画素23が集合した色表現単位21で1色を表現するため、RGB形式、YCbCr形式などの従来の映像信号をそのまま利用できない。このため、カラー信号処理手段10は、入力された映像信号を、カラー表示素子20で表示可能な形式の表示装置用映像信号に変換して、カラー表示素子20に出力する。
【0031】
以下、映像信号の変換方法について、具体的に説明する。
色表現単位に含まれる4個のサブピクセルS1-1,S1-2,S2-1,S2-2と、画像の元となる3原色のRGB値とは、下記の式(1)の関係で表すことができる。
【0032】
【数1】
【0033】
説明を簡易にするため、ガンマは、1.0とする。また、映像信号の2画素分について、RGB値とY値(輝度値)は、それぞれ、(R1,G1,B1),Y1、(R2,G2,B2),Y2とする。そして、3原色のRGB値からY値への寄与は、それぞれ、CR,CG,CBとする。さらに、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2の信号レベルは、それぞれ、g1,g2,h1,h2とする(g;色表現単位21で1個目の画素、h;色表現単位21で2個目の画素)。この場合、1画素単位で輝度を表現し、2画素で1色を表現するので、下記の式(2)が成立する。
【0034】
なお、人間の視覚は、輝度に対しては高い周波数まで感度を持つが、色に対しては輝度の1/4程度の周波数までしか感度を持たないことが知られている(参考文献:WILEY出版“The Reproduction of Colour”,R.W.Hunt著、第6版、2006年、p.310)。このとき、1画素単位で輝度を表現するので、この参考文献によれば、複数の画素で1色を表現しても問題ないと言える。すなわち、本発明において、前記したサブサンプル表示を行っても、感度の問題が生じない。
【0035】
【数2】
【0036】
この式(2)は、4元4連立方程式なので、下記の式(3)に示すように、一意に解くことができる。すなわち、カラー信号処理手段10は、変換式としての式(3)を用いて、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する。
【0037】
【数3】
【0038】
また、直視型表示装置1では、画像の元となるRGBのサブピクセルのxyz座標値(以下、「RGBのxyz座標値」)と、画像の元となる基準白色のサブピクセルのxyz座標値(以下、「白のxyz座標値」)とが決まれば、寄与CR,CG,CBを求めることができる。ここで、RGBのxyz座標値は、それぞれ、(rx,ry,rz)、(gx,gy,gz)、(bx,by,bz)とする。また、白のxyz座標値は、(wx,wy,wz)とする。この場合、下記の式(4)の関係が成立する。なお、式(4)の定数C1,C2,C3は、下記の式(5)から求めることができる。
【0039】
【数4】
【0040】
【数5】
【0041】
従って、カラー信号処理手段10は、下記の式(6)を用いて、寄与CR,CG,CBを求めることができる。
【0042】
【数6】
【0043】
例えば、HDTV(High Definition TeleVision)において、RGBのxyz座標値R=(0.64,0.33,0.03)、G=(0.30,0.60,0.10)、B=(0.15,0.06,0.79)で、白色の座標値=(0.3127,0.3290,0.3583)の場合を考える。この場合、寄与CR,CG,CBは、それぞれ、0.2126、0.7152、0.0722となる。
【0044】
カラー表示素子(表示素子)20は、カラー信号処理手段10から表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20は、表示装置用映像信号の信号レベルg1,g2,h1,h2に基づいて、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2をそれぞれ発光させる。
【0045】
図2を参照して、カラー表示素子20での配列構造について説明する。
図2に示すように、画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。このように、画素23は、それぞれ、補色関係にある2個のサブピクセルで構成され、かつ、画素23に含まれるサブピクセルS1-1〜S2-2の対が互いに異なる色の組み合わせを有する。
【0046】
このとき、画素23は、一方のサブピクセルを3原色のうちの何れか1原色とし、他方のサブピクセルをこの1原色の補色としてもよい。図2の例では、青のサブピクセルS1-2および赤のサブピクセルS2-1が原色になる。また、黄のサブピクセルS1-1およびシアンのサブピクセルS2-2が、それぞれ、サブピクセルS1-2,S2-1に対する補色となる。
さらに、本発明では、画素23を構成する2個のサブピクセルを、両方とも原色以外の色としてもよく、この具体例については後記する。
【0047】
ここで、2個のサブピクセルからなる1個の画素23だけでは、1色を表現できない。このため、カラー表示素子20は、2個の画素23を組み合わせた色表現単位21によって、1色を表現する。
【0048】
なお、図2では、カラー表示素子20を構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20の全体を図2の配列構造としてもよい
また、カラー表示素子20は、例えば、偏光フィルタ、カラーフィルタ、ガラス基板、透明電極、配向膜、液晶層などからなり、公知の手法・素材により形成可能なため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
図3を参照して、カラー表示素子20での分光反射率分布について説明する(適宜図1,図2参照)。
黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2との分光反射率分布は、図3(a)のようになる。この分光反射率分布は、可視光領域で、波長(横軸)と、反射率(縦軸)との関係を示すものである。この可視光領域は、肉眼で識別可能な光の波長領域であり、例えば、下限の波長λminが400nm程度であり、上限の波長λmaxが800nm程度である。また、反射率は、各波長領域での反射率を示しており、通常、0.0〜1.0の範囲となる。
【0050】
図3(a)上段に示すように、黄のサブピクセルS1-1は、黄の波長領域で反射率が1.0になる。また、図3(a)下段に示すように、青のサブピクセルS1-2は、青の波長領域で反射率が1.0になる。このように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、反射率が1.0となる波長領域が重なりあうことがない。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、その分光反射率分布を合計すると、可視光領域全体で反射率が1.0(つまり、白)になり、完全な補色となる。
【0051】
また、図3(b)上段に示すように、赤のサブピクセルS2-1は、赤の波長領域で反射率が1.0になる。さらに、図3(b)下段に示すように、シアンのサブピクセルS2-2は、シアンの波長領域で反射率が1.0になる。このように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、反射率が1.0となる波長領域が重なりあうことがない。従って、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、図3(a)と同様、完全な補色となる。
【0052】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る直視型表示装置1は、サブピクセルS1-1〜S2-2が入射光を1/2程度利用できる。一方、RGB表示装置では、RGBのサブピクセルで入射光の利用効率が1/3程度である。従って、直視型表示装置1は、RGB表示装置に比べて、約50%、表示画面を明るくすることができる。
【0053】
さらに、直視型表示装置1は、画素23を構成するサブピクセルの数が2個のため、4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑えることができる。以下、映像信号のR,G,B、および、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2が、ぞれぞれ、1バイトとして具体的に説明する。
【0054】
この場合、直視型表示装置1は、映像信号に含まれる2画素分のRGB値(6バイト)を、4バイトのg1,g2,h1,h2に変換する(式(3)参照)。すなわち、直視型表示装置1は、入力された映像信号に対して、表示装置用映像信号の信号量が2/3となる。
【0055】
一方、4サブピクセル表示装置では、映像信号に含まれる1画素分のRGB値(3バイト)を、4個のサブピクセルに対応した4バイトの信号に変換する。すなわち、4サブピクセル表示装置では、入力された映像信号に対して、変換後の信号量が4/3となる。このように、直視型表示装置1は、4サブピクセル表示装置に比べて、信号量を約半分に抑えることができる。
【0056】
なお、第1実施形態では、図2に示すように、色表現単位21が4個のサブピクセルS1-1〜S2-2を水平方向に配列した構造としたが、これに限定されない。つまり、色表現単位21は、4個のサブピクセルS1-1〜S2-2を垂直方向に配列した構造としてもよい。
【0057】
なお、直視型表示装置1では、所望のカラーフィルタを適用して、図3のような分光反射率分布を実現できる。図3(a)の例では、直視型表示装置1は、黄の波長領域で反射率が1.0になるカラーフィルタと、青の波長領域で反射率が1.0になるカラーフィルタとを適用している。
【0058】
(変形例1)
図1に戻り、本発明の変形例1について、第1実施形態と異なる点を説明する。
以後、本発明の変形例1に係る直視型表示装置およびカラー信号処理手段を、それぞれ、直視型表示装置1Bおよびカラー信号処理手段10Bと呼ぶ。
【0059】
第1実施形態に係る直視型表示装置1では、表示画面を明るくできる一方、画素の妨害(表示画面のノイズ)が発生することがある。この誤作動の原因としては、彩度が高くなる領域で、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の値が負になることが考えられる。
【0060】
そこで、直視型表示装置1Bは、式(3)以外の変換式によって映像信号を変換することで、この誤作動を防止する。具体的には、前記した式(2)の代わりに、下記の式(7)を用いることを考える。この場合、変換式は、下記の式(8)で表すことができる。
【0061】
【数7】
【0062】
【数8】
【0063】
この式(7)および式(8)では、αが彩度の相対値(つまり、色の濃さを示す値)であり、0.0から1.0までの範囲で手動設定される。ここで、相対値α=0の場合、映像をモノクロで表示することになり、相対値α=1の場合、映像信号のままの色で映像を表示することになる。
【0064】
このとき、相対値αは、直視型表示装置1Bが誤動作しない範囲で、高い値に設定することが好ましい。この方法として、カラー信号処理手段10Bは、α=1.0が手動設定された状態で、映像信号を変換する。ここで、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の何れかが負になる場合、その画素の計算行うときだけ、所定値(例えば、0.1)を減算した相対値αを再設、手動設定する。そして、カラー信号処理手段10Bは、減算後の相対値αが設定された状態で、映像信号を再度変換する。
【0065】
この結果、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の値が全て正になれば、カラー信号処理手段10Bは、変換処理を終了する。一方、カラー信号処理手段10Bは、表示装置用映像信号のg1,g2,h1,h2の何れかが負であれば、前記した手順を再度実行する。この手順によれば、例えば、相対値αは、0.7から1.0までの間になることが多い。
【0066】
以上のように、本発明の変形例1に係る直視型表示装置1Bは、変換式として、式(8)を用いることで、表示画面のノイズを低減することができる。つまり、直視型表示装置1Bは、直視型表示装置1と同様の効果に加えて、綺麗な映像を表示することができる。
【0067】
(変形例2)
図4を参照して、本発明の変形例2について、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図1,図2参照)。
以後、本発明の変形例2に係る直視型表示装置およびカラー表示素子を、それぞれ、直視型表示装置1Cおよびカラー表示素子20Cと呼ぶ。
【0068】
第1実施形態では、黄、青、赤およびシアンのサブピクセルを例にあげて説明したが、サブピクセルの配列構造は、これに限定されない。具体的には、カラー表示素子20Cは、緑のサブピクセルS1-1と、マゼンタのサブピクセルS1-2とで画素231が構成される。また、例えば、カラー表示素子20Cは、シアン(緑青)のサブピクセルS2-1と、黄(橙色)のサブピクセルS2-2とで画素232が構成される。
【0069】
図4を参照して、カラー表示素子20Cでの分光反射率分布について説明する。
図4(a)に示すように、緑のサブピクセルS1-1と、マゼンタのサブピクセルS1-2とは、完全な補色である。また、図4(b)に示すように、シアン(緑青)のサブピクセルS2-1と、黄(橙色)のサブピクセルS2-2とは、完全な補色である。すなわち、画素232を構成するサブピクセルS2-1,S2-2は、両方とも、原色以外の色である。
【0070】
以上のように、本発明の変形例2に係る直視型表示装置1Cは、原色以外のサブピクセルを用いた場合でも、第1実施形態と同様、表示画面を明るく、信号量を抑えることができる。
この場合、直視型表示装置1Cは、変形式として、前記した式(3)および式(8)の両方を利用できることは言うまでもない。
【0071】
(第2実施形態:3個の画素で1色を表現)
図5を参照し、本発明の第2実施形態に係る直視型表示装置1Dについて説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Dは、3個の画素23が集合した色表現単位21Dで1色を表現するものであり、カラー信号処理手段10Dと、カラー表示素子20Dとを備える。
【0072】
カラー信号処理手段10Dは、映像信号が入力されると共に、予め設定された変換式によって、入力された映像信号を、色表現単位21Dに対応した直視型表示装置用映像信号に変換するものである。
【0073】
色表現単位21Dに含まれる6個のサブピクセルS1-1,S1-2,S2-1,S2-2,S3-1,S3-2と、画像の元となる3原色のRGB値との関係は、下記の式(9)で表すことができる。
【0074】
【数9】
【0075】
6個のサブピクセルS1-1〜S3-2の信号レベルは、それぞれ、g1,g2,h1,h2,k1,k2とする(g;色表現単位21Dで1個目の画素、h;色表現単位21Dで2個目の画素、k;色表現単位21Dで3個目の画素)。また、映像信号の3画素分について、RGB値とY値(輝度値)は、それぞれ、(R1,G1,B1),Y1、(R2,G2,B2),Y2、(R3,G3,B3),Y3とする。この場合、下記の式(10)が成立する。
【0076】
【数10】
【0077】
また、彩度が高くなる領域での誤作動が起きる場合、式(10)の代わりに、下記の式(11)を用いることもできる。
【0078】
【数11】
【0079】
すなわち、カラー信号処理手段10Dは、式(10)または式(11)を解いた変換式により、入力された映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する。すなわち、カラー信号処理手段10Dは、この変換式によって、映像信号で色表現単位21Dと同数の3画素分の画素値(9バイト)を、色表現単位21DのサブピクセルS1-1〜S3-2の信号レベル(6バイト)に変換する。
【0080】
なお、式(10)および式(11)は、6元5連立方程式なので、自由度が1になることがわかる。すなわち、直視型表示装置1Dは、入力された映像信号に対して異なる色を発光する可能性があるが、この色の違いを肉眼で識別することが困難であり、実用上の問題はない。
【0081】
ここで、式(10)および式(11)の解き方について説明する。前記した式(10)および式(11)は、下記の式(12)のように、5個の1次式で表される形式である。この式(12)では、6個のx1〜x6が未知数(信号レベルg1〜k2)であり、a1〜e6,y1〜y5が定数である。
【0082】
【数12】
【0083】
しかし、前記した式(12)では、未知数x1〜x6を一意に求めることができない。そこで、制約条件として、式(12)に下記の式(13)を追加する。この式(13)では、定数がf1〜f6,y6であり、任意の値とすることができる。すなわち、式(13)は、式(12)から独立している。
【0084】
【数13】
【0085】
例えば、f1を1とし、f2〜f6,y6を0とすると、前記した式(13)は、x1=0となる。従って、前記した式(12)は、下記の式(14)のように、6個の式で表すことができる。このとき、未知数がx1〜x6という6個であり、定数が残りのa1〜f6,y1〜y6である。
【0086】
【数14】
【0087】
前記した式(14)は、逆行列を用いると、下記の式(15)となる。以上より、カラー信号処理手段10Dは、式(10)または式(11)に任意の制約条件を課すことで、式(10)または式(11)を解いて、未知数x1〜x6(信号レベルg1〜k2)を求めることができる。
【0088】
【数15】
【0089】
カラー表示素子20Dは、カラー信号処理手段10Dから表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20Dは、表示装置用映像信号の信号レベルg1,g2,h1,h2,k1,k2に基づいて、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を発光させる。
【0090】
図5を参照して、カラー表示素子20Dでの配列構造について説明する。
図5に示すように、画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。さらに、例えば、画素233は、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とで構成される。このように、画素23は、それぞれ、完全な補色のサブピクセルS1-1〜S3-2の対で構成される。
なお、図5では、カラー表示素子20Dを構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20Dの全体を図5の配列構造としてもよい
【0091】
図6,図7を参照して、カラー表示素子20Dでの分光反射率分布について説明する(適宜図1,図5参照)。
図6(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、は、図3(a)と同様の分光反射率分布になる。また、図6(b)に示すように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、図3(b)と同様の分光反射率分布になる。さらに、図7に示すように、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、図4(a)と同様の分光反射率分布になる。図6,図7の分光反射率分布からも、色表現単位21Dを構成する画素23は、それぞれ、完全な補色のサブピクセルS1-1〜S3-2の対で構成されることがわかる。
【0092】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る直視型表示装置1Dは、3個の画素23が集合した色表現単位21Dで1色を表現した場合でも、第1実施形態と同様、表示画面を明るくし、信号量を約半分に抑えることができる。
【0093】
なお、図5に示すように、第2実施形態では、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を水平方向に配列した構造としたが、これに限定されない。つまり、色表現単位21Dは、6個のサブピクセルS1-1〜S3-2を垂直方向に配列した構造としてもよい。さらに、色表現単位21Dは、T字状の配列構造としてもよく、この配列構造を変形例3として説明する。
【0094】
(変形例3)
図8を参照して、本発明の変形例3について、第2実施形態と異なる点を説明する。
以後、本発明の変形例3に係る直視型表示装置、カラー表示素子および色表現単位を、それぞれ、直視型表示装置1E、カラー表示素子20Eおよび色表現単位21Eと呼ぶ。
【0095】
図8(a)に示すように、色表現単位21Eは、画素231と画素232とを左右に隣接して配置し、画素233を画素231および画素232の下側中間位置に配置する。そして、図8(b)に示すように、T字状の色表現単位21Eを水平方向に複数配列する。すると、カラー表示素子20Eでは、隣接した色表現単位21Eの間に凹部状のスペースが形成されるので、別の色表現単位21Eをこのスペースに挿入するように配列する。
【0096】
以上のように、直視型表示装置1Eは、T字状の色表現単位21Eを配列した場合でも、第2実施形態と同様、表示画面を明るくし、信号量を抑えることができる。さらに、直視型表示装置1Eは、水平方向、垂直方向などの1次元的な配列構造以外も可能となり、その設計自由度が向上する。
【0097】
(変形例4)
図9,図10を参照して、本発明の変形例4について、第2実施形態と異なる点を説明する(適宜図6,図7参照)。
以後、本発明の変形例4に係る直視型表示装置およびカラー表示素子を、それぞれ、直視型表示装置1Fおよびカラー表示素子20Fと呼ぶ。
【0098】
前記した第2実施形態では、分光反射率分布における分光反射率合計値が1.0として説明した。具体的には、図6(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1の反射率と、青のサブピクセルS1-2の反射率とを合計すると、可視光領域全体で反射率が1.0になる。この点、図6(b)および図7も同様である。
【0099】
一方、カラー表示素子20Fでは、各画素23を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対が、分光反射率分布における分光反射率合計値が1.0を越えて1.2以下となる。具体的には、図9(a)上段に示すように、黄のサブピクセルS1-1は、黄の波長領域で反射率が1.0になる。また、黄のサブピクセルS1-1は、黄以外の波長領域での反射率が、黄の波長領域での最大反射率の1/5(つまり、0.2)になる(ハッチング部分参照)。すなわち、黄のサブピクセルS1-1は、可視光領域全体で反射率が1.0か0.2の何れかとなる。
【0100】
図9(a)下段に示すように、青のサブピクセルS1-2は、青の波長領域で反射率が1.0になる。また、青のサブピクセルS1-2は、青以外の波長領域での反射率が0.2になる。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布を合計すると、可視光領域全体で反射率が1.2になる。
【0101】
また、図9(b)に示すように、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、その分光反射率分布を合計すると、図9(a)と同様、可視光領域全体で反射率が1.2になる。さらに、図10に示すように、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、その分光反射率分布を合計すると、図9(a)と同様、可視光領域全体で反射率が1.2になる。
【0102】
以上のように、本発明の変形例3に係る直視型表示装置1Fは、分光反射率合計値が1.0を超えるため、画素23の輝度を高くでき、眩しい視聴環境(例えば、屋外)でも映像を見易くできる。さらに、直視型表示装置1Fは、分光反射率合計値が1.2以下のため、濃い色を表現できないといった色表現力の低下を、最小限に抑えることができる。
【0103】
なお、直視型表示装置1Fは、所望のカラーフィルタを適用することで、図9,図10のような分光反射率分布を実現できる。図9(a)上段の例では、直視型表示装置1Fは、黄の波長領域で反射率が1.0になり、黄以外の波長領域での反射率が0.2になるカラーフィルタを適用している。また、図9(a)下段の例では、直視型表示装置1Fは、青の波長領域で反射率が1.0になり、青以外の波長領域での反射率が0.2になるカラーフィルタを適用している。
【0104】
(第3実施形態:4個の画素で1色を表現)
図11を参照し、本発明の第3実施形態に係る直視型表示装置1Gについて説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Gは、4個の画素231〜234が集合した色表現単位21Gで1色を表現するものであり、カラー信号処理手段10Gと、カラー表示素子20Gとを備える。
【0105】
カラー信号処理手段10Gは、映像信号が入力されると共に、予め設定された変換式によって、入力された映像信号を、色表現単位21Gに対応した直視型表示装置用映像信号に変換するものである。
【0106】
まず、各サブピクセルと同じ大きさで、3原色(RGB)を発光したときのxyz座標値のベクトルを考える。ここで、RGBのxyz座標値のベクトルは、下記の式(16)で定義する。なお、Rx〜Bzは、予め設定された定数である。
【0107】
【数16】
【0108】
また、4個の画素23を構成する各サブピクセルS1-1〜S4-2の信号レベルは、それぞれ、P1-1〜P4-2とする。このとき、各サブピクセルS1-1〜S4-2を信号レベルP1-1〜P4-2で発光させたとき、各サブピクセルS1-1〜S4-2からのxyz座標値のベクトルは、下記の式(17)で表すことができる。なお、C1-1R〜C4-2Bは、予め設定された定数である。
【0109】
【数17】
【0110】
ここで、カラー表示素子20Gが表示したいのは、4個の画素231〜234のそれぞれの輝度y1〜y4、および、4個の画素23全体の平均色である。ここでは、4個の画素23全体で、式(16)で定義されるベクトルを加算することで、平均色を求めることができる。この場合、輝度y1〜y4、および、平均色Rtotal,Gtotal,Btotalは、下記の式(18)で表すことができる。
【0111】
【数18】
【0112】
すなわち、カラー信号処理手段10Gは、式(18)を解いた変換式により、映像信号で色表現単位21Gと同数の4画素分の画素値(12バイト)を、色表現単位21GのサブピクセルS1-1〜S4-2の信号レベル(8バイト)に変換する。
【0113】
なお、この式(18)において、未知数である信号レベルP1-1〜P4-2の8個に対して、式(18)が7個の式で構成される。このように、式(18)で未知数の重複が見られるので、自由度が6になる。このため、カラー信号処理手段10Gは、前記したカラー信号処理手段10Dと同様、P3-2=P4-2というような任意の制約条件を課すことで、式(18)を解くことができる。
【0114】
カラー表示素子20Gは、カラー信号処理手段10Gから表示装置用映像信号が入力され、この表示装置用映像信号が示す映像を表示するものである。すなわち、カラー表示素子20Gは、4個の画素231〜234がそれぞれ輝度y1〜y4、かつ、4個の画素231〜234全体で平均色Rtotal,Gtotal,Btotalとなるように、サブピクセルS1-1〜S4-2を発光させる。
【0115】
図11〜図13を参照して、カラー表示素子20Gでの配列構造について説明する。
図11に示すように、カラー表示素子20Gは、色表現単位21Gが、3個の準補色画素231〜233と、1個の調整用画素234との計4個の画素23で構成される。ここで、色表現単位21Gは、準補色画素231,232を隣接配置し、その下側に準補色画素233および調整用画素234を隣接配置した、矩形状の配列構造となる。
【0116】
なお、図11では、準補色画素および調整用画素も単に「画素」と図示した。
また、図11では、カラー表示素子2Gを構成する多数の画素のうち、その一部の配列構造のみを図示したが、カラー表示素子20Gの全体を図11の配列構造としてもよい。
【0117】
準補色画素231は、例えば、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とで構成される。また、例えば、準補色画素232は、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とで構成される。さらに、例えば、準補色画素233は、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とで構成される。これら準補色画素231〜233を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対は、準補色関係になる。
【0118】
この準補色関係とは、図12,図13に示すように、準補色画素231〜233を構成するサブピクセルS1-1〜S3-2の対において、分光反射率分布の重なる割合が2割以下になるものである。言い換えるなら、準補色関係とは、サブピクセルS1-1〜S3-2の対がそれぞれ発光する色を合成したときに、白色の近似色になるものである。
【0119】
具体的には、図12(a)に示すように、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布が、黄の波長領域λYと青の波長領域λBとの境界で重複している。従って、黄のサブピクセルS1-1と、青のサブピクセルS1-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素231は、輝度が高くなると共に、白っぽいシアンで発光することになる。
【0120】
ここで、分光反射率分布の重なる割合は、例えば、サブピクセルS1-1〜S3-2の対のうち、分光反射率分布における波長領域が広い方を基準として、2割以下とする。図12(a)の例では、黄の波長領域λYが青の波長領域λB´より広いため、この黄の波長領域λYの2割まで重複させることができる(ハッチング部分参照)。
【0121】
また、直視型表示装置1Gは、サブピクセルS1-1〜S3-2の対のうち、原色のサブピクセルの波長領域を拡大してもよい。図12(a)の例では、青のサブピクセルS1-2が原色のため、本来の青の波長領域λBが波長領域λB´まで拡大されて、黄の波長領域λYに重ねられている。
【0122】
図12(b)では、赤のサブピクセルS2-1の波長領域が拡大されて、シアンのサブピクセルS2-2の波長領域に重ねられている。従って、赤のサブピクセルS2-1と、シアンのサブピクセルS2-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素232は、輝度が高くなると共に、白っぽい黄色で発光することになる。
【0123】
図13(a)では、緑のサブピクセルS3-1の波長領域が拡大されて、マゼンタのサブピクセルS3-2の波長領域に重ねられている。従って、緑のサブピクセルS3-1と、マゼンタのサブピクセルS3-2とは、分光反射率分布を合計すると、その重複部分で反射率が1.0を超える。このため、準補色画素233は、輝度が高くなると共に、白っぽい緑で発光することになる。つまり、3個の準補色画素231〜233は、それぞれが発光する色を合成すると白っぽい緑となり、入力された表示装置用映像信号に対して、異なる色で発光することなる。
【0124】
そこで、調整用画素234は、表示装置用映像信号の色から変化した準補色画素231〜233の色を、この表示装置用映像信号と同じ色になるように調整する。この調整用画素234は、図13(b)に示すように、白のサブピクセルS4-1と、マゼンタのサブピクセルS4-2とで構成される。そして、調整用画素234は、準補色画素231〜233の白っぽい緑をサブピクセルS4-1,S4-2の色で相殺するようにして、調整(キャンセル)する。言い換えるなら、カラー表示素子20Gは、3個の準補色画素231〜233と、1個の調整用画素234とを組にすることで、白を発光することができる。
【0125】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る直視型表示装置1Gは、準補色画素231〜233の輝度を高くすると共に、この準補色画素231〜233の色を調整用画素234の色で調整するため、色表現力の低下を最小限に抑え、眩しい視聴環境でも映像を見易くすることができる。
【0126】
なお、直視型表示装置1Gは、所望のカラーフィルタを適用することで、図12,図13のような分光反射率分布を実現できる。図12(a)の例では、直視型表示装置1Gは、黄および青の波長領域が重なりあうカラーフィルタを適用している。
【0127】
(第4実施形態:明暗が交互するサブピクセルの配列)
図14〜図18を参照し、本発明の第4実施形態に係る直視型表示装置1Hについて、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜図1参照)。
直視型表示装置1Hは、明暗が交互するようにサブピクセルS1-1〜S2-2を配列したものであり、カラー信号処理手段10Hと、カラー表示素子20Hとを備える。
【0128】
前記した各実施形態では、1個の画素23が2個のサブピクセルで構成されるため、サブピクセルの構造が見え易くなることがある。例えば、図1の直視型表示装置1においては、ある程度離れて表示画面を見た場合、色の差が分からないが、各サブピクセルS1-1〜S2-2の輝度レベルが分かってしまう。
【0129】
そこで、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造を見え難くするため、直視型表示装置1Hは、カラー表示素子20Hを、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が交互する配列構造とした。以後、サブピクセルS1-1〜S2-2は、第1実施形態と同様、それぞれ、黄、青、赤およびシアンとする。また、サブピクセルS1-1〜S2-2の輝度は、それぞれ、Y(S1-1)〜Y(S2-2)と表記する。
【0130】
ここで、前記した寄与CR,CG,CBより、RGBの輝度値をそれぞれ0.2、0.7、0.1と近似した場合を考える。この近似値を式(1)に代入すると、Y(S1-1)=0.2+0.7=0.9、Y(S1-2)=0.1、Y(S2-1)=0.2、Y(S2-2)=0.7+0.1=0.8となる。この結果より、Y(S1-1),Y(S1-2)の大小関係、および、Y(S2-1),Y(S2-2)の大小関係は、下記の式(19)で表すことができる。
【0131】
【数19】
【0132】
このとき、サブピクセルS1-1〜S2-2の対が補色となるため、一方のサブピクセルS1-1,S2-1が暗ければ、他方のサブピクセルS1-2,S2-2が明るくなる。つまり、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造により、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え易いか、見え難いかが決まる。そこで、この式(19)の条件に基づいて、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造を幾つか例示して説明する。
【0133】
図14(a)に示すように、図1のカラー表示素子20では、サブピクセルS1-1〜S2-2が水平方向で順番に配列されている。この場合、図16(a)に示すように、カラー表示素子20では、サブピクセルS1-1,S1-2で輝度が低くなった後、サブピクセルS1-2,S2-1,S2-2で輝度が段階的に高くなる。すなわち、カラー表示素子20は、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が交互する配列構造になっておらず、明るい部分と暗い部分とが1画素幅で並んでしまう。このため、図17(a)に示すように、カラー表示素子20は、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え易くなる。
なお、図14では、図面を見易くするため、サブピクセルS1-1〜S2-2を、「S1−1」〜「S2−2」と図示した。
【0134】
そこで、図14(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が1次元方向(水平方向)で交互するように、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列する。つまり、カラー表示素子20Hは、図14(a)において、サブピクセルS2-1,S2-2を入れ替えた配列構造になる。このため、図16(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、明るいサブピクセルS1-1,S2-2、暗いサブピクセルS1-2,S2-1が交互に並ぶことになる。従って、図17(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造が見え難くなる。
【0135】
さらに、図14(c)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2が2次元方向で交互する配列構造としてもよい。具体的には、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に水平方向で配列する。その列の下段に、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS2-2,S2-1,S1-1,S1-2を順番に水平方向で配列する。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。この場合、図18(a)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造がより見え難くなる。
【0136】
このとき、サブピクセルS1-1〜S2-2の配列構造は、図14(c)に限定されない。例えば、図15(a)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列し、その列の下段にサブピクセルS2-1,S1-1,S1-2,S2-2を順番に配列する。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。
【0137】
また、図15(b)に示すように、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1,S1-2,S2-2,S2-1を順番に配列し、その列の下段にサブピクセルS2-1,S2-2,S1-2,S1-1を順番に配列してもよい。そして、カラー表示素子20Hは、これら2列を垂直方向に繰り返し配置する。図15の配列構造とした場合、カラー表示素子20Hは、サブピクセルS1-1〜S2-2の明暗が2次元方向で交互するため、サブピクセルS1-1〜S2-2の構造がさらに見え難くなる。
【0138】
ここで、比較対象として、従来のRGB表示装置におけるサブピクセルの構造を、図18(b)に示す。これら図17,図18より、本発明の第4実施形態に係る直視型表示装置1Hは、第1実施形態と同様の効果に加え、直視型表示装置1や従来のRGB表示装置よりも、サブピクセルの構造が見え難にくく、綺麗な映像を表示できることがわかる。
なお、直視型表示装置1Hは、第1実施形態に適用する例で説明したが、第2実施形態にも同様に適用することができる。
【0139】
なお、各実施形態では、本発明に係る直視型表示装置1〜1Hを反射型の液晶ディスプレイとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明に係る直視型表示装置は、プラズマディスプレイまたはエレクトロルミネッセンスディスプレイとしてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1〜1H 直視型表示装置
10〜10H カラー信号処理手段(映像信号変換手段)
20〜20H カラー表示素子(表示素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の前記画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子を備える直視型表示装置であって、
映像信号が入力されると共に、当該映像信号における複数の画素の画素値を前記色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、前記映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段を備え、
前記表示素子は、前記色表現単位に含まれる前記サブピクセルの対が互いに異なる色の組み合わせを有し、前記映像信号変換手段によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示することを特徴とする直視型表示装置。
【請求項2】
前記表示素子は、前記色表現単位が2個の画素であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項3】
前記表示素子は、前記色表現単位が3個の画素であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項4】
前記サブピクセルの対は、可視光領域で波長と反射率との関係を示す分光反射率分布における分光反射率合計値が、1.0を越えて1.2以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の直視型表示装置。
【請求項5】
前記表示素子は、前記サブピクセルの対が前記補色関係に代えて準補色関係にある準補色画素と、白のサブピクセルおよびマゼンタのサブピクセルで構成された調整用画素とを有すると共に、前記色表現単位が3個の前記準補色画素および1個の前記調整用画素の集合であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項6】
前記表示素子は、前記サブピクセルの輝度が交互に高低するように、前記サブピクセルを配列したことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の直視型表示装置。
【請求項1】
補色関係にあるサブピクセルの対で輝度を表現する各画素が構成され、複数の前記画素が集合した色表現単位で1色を表現する表示素子を備える直視型表示装置であって、
映像信号が入力されると共に、当該映像信号における複数の画素の画素値を前記色表現単位の各サブピクセルの信号レベルに変換する変換式によって、前記映像信号を直視型表示装置用映像信号に変換する映像信号変換手段を備え、
前記表示素子は、前記色表現単位に含まれる前記サブピクセルの対が互いに異なる色の組み合わせを有し、前記映像信号変換手段によって変換された直視型表示装置用映像信号が示す映像を表示することを特徴とする直視型表示装置。
【請求項2】
前記表示素子は、前記色表現単位が2個の画素であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項3】
前記表示素子は、前記色表現単位が3個の画素であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項4】
前記サブピクセルの対は、可視光領域で波長と反射率との関係を示す分光反射率分布における分光反射率合計値が、1.0を越えて1.2以下であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の直視型表示装置。
【請求項5】
前記表示素子は、前記サブピクセルの対が前記補色関係に代えて準補色関係にある準補色画素と、白のサブピクセルおよびマゼンタのサブピクセルで構成された調整用画素とを有すると共に、前記色表現単位が3個の前記準補色画素および1個の前記調整用画素の集合であることを特徴とする請求項1に記載の直視型表示装置。
【請求項6】
前記表示素子は、前記サブピクセルの輝度が交互に高低するように、前記サブピクセルを配列したことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の直視型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−226065(P2012−226065A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92665(P2011−92665)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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