説明

相乗的なリポソームのアジュバント

本発明は、リポソーム、混合物またはリポソームおよび少なくとも2種の異なるアジュバントおよび治療剤を含むリポソーム組成物、その生成、ならびに増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、特に、自己免疫疾患およびアレルギーを予防し治療するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソーム、混合物またはリポソーム、ならびに少なくとも2種の異なるアジュバントおよび治療剤を含むリポソーム組成物、その生成法、ならびに増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、特に自己免疫疾患、およびアレルギーを予防し治療するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
数十年間、ワクチン接種法は、主として、患者が感染性病原体に接触した後、疾患を生じないように保護するための保護免疫を育てるために使用されてきた。この目的のために、生の弱毒化病原体、死病原体もしくは破壊病原体、病原体調製物、または病原体の精製成分もしくは組換え成分が、それぞれの病原体の抗原成分に対して特定の免疫応答を引き出すために患者に投与されてきた。そのような免疫応答を刺激する成分は、例えば、病原体特異的蛋白質、多糖類、または脂質と思われる。病原体内に含まれる対抗原特異的免疫応答は、アジュバントの同時投与によってさらに刺激することができる。これは、1920年代中頃に、Ramonが、ジフテリア毒素の注射部位に膿瘍が発生したウマでは、膿瘍がない動物よりも高い抗毒素価が生じたことを観察したときに発見した。ある種の化合物にアジュバントが作用するそれ以上の証拠は、Glenny et al. (1926) J. Path. Bact. 29: 38-45(非特許文献1)によって提出され、彼は、アルミニウム化合物を同時投与することによって、ジフテリア毒素に対する免疫応答を増強できることを示した。1930年代中頃には、フロイントが、鉱油中水滴型乳濁液から構成した強力な免疫アジュバントを開発し、このアジュバントには死滅させた破壊放線菌が含まれていた。
【0003】
従って、アジュバントは、一種または複数の抗原に特異的な免疫応答の質を促進し、延長し、または亢進することが当技術分野で知られており、現在、全ての認可を受けた米国のワクチンで使用されている。提唱されているアジュバントの利点には、1)ワクチンに適当な免疫応答を指揮し最適化する能力、2)ワクチンの粘膜送達を可能にする能力、3)細胞介在免疫応答を促進する能力、4)高度精製抗原や組換え抗原など、弱い免疫原の免疫原性を増強する能力、5)保護免疫を得るために必要な抗原量または免疫化頻度を減少させる能力、6)新生児、高齢者、免疫不全患者など、免疫応答が低い、または弱い個体でワクチンの効力を改善する能力が含まれる。
【0004】
アジュバントには、多様な作用機序が含まれる。アジュバントの同定されている第一の作用機序は、いわゆる持効性作用であり、その際、水酸化アルミニウム(ミョウバン)や、不完全フロイントアジュバント(IFA)など、乳濁液ベースアジュバントなどのゲル型アジュバントは抗原と会合し、免疫応答が生ずる排泄リンパ節への抗原の輸送を促進する。免疫アジュバントは、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)に直接的または間接的に作用する(Wu J.Y. et al. (1994) Cell Immunol. 154: 393(非特許文献2);Kovacsovics-Bankowski M. et al. (1994) 24: 2421(非特許文献3))。標準的ミョウバンアジュバントと比較した場合、MHCクラスIに限定されたCD8+細胞障害性T細胞(CTL)応答の誘導を改善するべく幾つかのアジュバントが示されている(Takhashi H. et al. (1990) Nature 344: 873(非特許文献4);Newmann M.J. et al. (1992) J. Immunol. 148: 2357-2362(非特許文献5);Shahum E. et al. (1995) Int. J. Immunopharmacol. 17: 9(非特許文献6))。それは、恐らく、抗原をサイトゾルへ直接送達してMHCクラスI分子と共に提示することをこれらのアジュバントが促進するためであろう。サイトゾルに送られた抗原は、エンドソームの抗原送達と、続くMHCクラスII分子との処理を迂回する可能性があり、これは抗原が単独でまたはミョウバンに含まれて送達される場合に生じる。MHCクラスII分子は、主として抗体応答を誘発し、細胞特異的免疫応答は誘発しない、またはほとんど誘発しない。特に、例えば、ウイルス感染症や過剰増殖性疾患などの疾患を治療及び/または予防するためには、細胞特異的免疫応答を刺激する必要がある。
【0005】
アジュバントは、APCが抗原アジュバント複合体を取り込んだ後、抗原がエンドソーム膜を横断してサイトゾルに侵入できるようすることによって、サイトゾル抗原送達およびMHCクラスI提示を促進することもできる(Kovacsovics-Bankowskie M. and Rock K.L (1995) 267: 243-246(非特許文献7))。さらに、ある種のアジュバントによりマクロファージおよび樹状細胞を刺激して、免疫調節サイトカインを分泌させることもできる。アジュバントにより誘発された様々なサイトカインは、リンパ球に作用して主にTh1またはTh2応答を促進する(Audibert F.M. and Lise L.D. (1993) Immunol. Today 14: 281(非特許文献8);Grun J.L et al. (1989) Cell Immunol. 121: 134(非特許文献9))。従って、IFN‐γ、GM‐CSF、およびインターロイキン‐(IL)‐12を含む数種のサイトカインは、ワクチンアジュバントとして現在評価段階にある。
【0006】
別の組のアジュバントは、toll様受容体によって作用する。Toll様受容体(TLR)は、微生物成分、特に病原体成分の特異的パターンを認識し、固有かつ適応する免疫の活性化を調節する(Takeda et al. (2003) Annu. Rev. Immunol. 21, 335-376(非特許文献10))。未成熟樹状細胞は、これらの微生物成分に応答して成熟する。現在まで、10種のTLRファミリーが同定されている。TLRは、単球、マクロファージ、樹状細胞などの食細胞によって発現する。リガンドの結合によりTLRが活性化されることによって、MyoD88依存経路(NF‐кB)またはMyoD88非依存経路(IFR‐3)でシグナル伝達事象がもたらされる。
【0007】
アジュバントを含むワクチンは、伝染病、特に、体液性免疫応答を通しての身体攻撃である伝染病に、個体がかからないように保護することに極めて首尾よく使用されてきたが、外部病原体に起因するはずがない疾患、および/または、例えば、ウイルス感染症や過剰増殖性疾患などの細胞介在免疫反応を必要とする疾患の予防および治療では、これらのワクチンを使用しても限られた成果しか得られずにきた。特に過剰増殖性疾患は、しばしば、疾患細胞蛋白質の様々な変化を原因とし、または変化を伴い、それ故にこれらの変化を利用して、患者の免疫系が疾患細胞を特異的に検出し破壊できるかもしれないと提案されてきた。この種の手法は、保護用または治療用癌ワクチン接種が施用される時点に依存すると言われてきた。しかし、この新規な治療または予防法を成功させるためには、患者が、それぞれの抗原に対する強力で特異的免疫応答、例えば、変化した蛋白質を発現している細胞全てに対する免疫応答などを持つ必要がある。
【0008】
ある種の疾患に特異的であり、従って治療用または保護用ワクチンとして投与するのに適している多くの抗原でさえも、獲得した特異的免疫応答が、患者に有効な保護を提供するには不十分であるばかりか、既に確立された疾患を有する患者の治療にもしばしば十分ではないことが知られている。現在、ほとんどアジュバントは、フリーフォームの抗原と共に患者に投与され、このフリーフォームはアジュバントが溶液状であり、ビヒクルに結合しもしくは組み込まれていないを意味する。
【0009】
フリーのCpG ODNで観察された免疫刺激は、リポソーム中にカプセル化した場合に増大することが、Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp.Therap., 298: 1185(非特許文献11)によって記載されている。Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319(非特許文献12)、は、5mol%のホスファチジルエタノールアミン(PE)の有り無しで、ホスファチジルコリン(PC)およびコレステロール(CH)を等モル量で含むリポソームの使用について記載し、このリポソームはCpGオリゴヌクレオチドおよびHER‐2/neu由来ペプチド抗原をさらに含む。フリーの抗原の使用と比較して、この製剤の免疫化は高度であった。
【0010】
Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23(非特許文献13)は、CpG ODNを含むリポソームペプチドワクチンによる生体内での抗原搭載とDCの活性化および得られた抗ウイルス抗腫瘍免疫について記載している。
【非特許文献1】Glenny et al. (1926) J. Path. Bact. 29: 38-45
【非特許文献2】Wu J.Y. et al. (1994) Cell Immunol. 154: 393
【非特許文献3】Kovacsovics-Bankowski M. et al. (1994) 24: 2421
【非特許文献4】Takhashi H. et al. (1990) Nature 344: 873
【非特許文献5】Newmann M.J. et al. (1992) J. Immunol. 148: 2357-2362
【非特許文献6】Shahum E. et al. (1995) Int. J. Immunopharmacol. 17: 9
【非特許文献7】Kovacsovics-Bankowskie M. and Rock K.L (1995) 267: 243-246
【非特許文献8】Audibert F.M. and Lise L.D. (1993) Immunol. Today 14: 281
【非特許文献9】Grun J.L et al. (1989) Cell Immunol. 121: 134
【非特許文献10】Takeda et al. (2003) Annu. Rev. Immunol. 21, 335-376
【非特許文献11】Mui et al. (2001) J. Pharma. Exp.Therap., 298: 1185
【非特許文献12】Li et al. (2003) Vaccine, 21: 3319
【非特許文献13】Ludewig et al. (2000) Vaccine 19: 23
【非特許文献14】Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507
【非特許文献15】Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53
【非特許文献16】SEREX; Tureci et al., Mol Med Today. 1997, 3:342-349
【非特許文献17】Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174
【非特許文献18】Olson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23
【非特許文献19】Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979
【非特許文献20】Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194
【非特許文献21】Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155
【非特許文献22】Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216
【非特許文献23】Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272
【非特許文献24】Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
「フリーの」アジュバントおよび抗原の投与によって引き出される免疫応答と比較すると、抗原およびアジュバントの従来技術のリポソーム製剤は特異的免疫応答を増大させてはいるが、当技術分野では、所与の抗原によって引き出される免疫応答をさらに増強し、延長し、改善する必要性が依然として存在する。これは、疾患、特に現在までワクチン接種法になじまなかった疾患、例えば、過剰増殖性疾患を首尾よく予防し治癒するための前提条件である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
患者にリポソームで抗原を投与し、さらに、第1のリポソームもしくは第2のリポソーム中に含めた第1のアジュバントを投与することによって、第1のアジュバントとは異なる第2のアジュバントをフリーフォームまたはリポソーム形で同時投与した場合、その抗原に対する特異的免疫応答を顕著に増強できることを本発明者らは発見している。2種のアジュバントをフリーフォームで抗原と共に同時投与した場合、特異的免疫応答が多少増強することは過去にも観察されているが、アジュバントの少なくとも1種と抗原を同一のまたは別々のリポソームに含めた場合、2種のフリーのアジュバントで観察されているアジュバントの作用増強をさらに増強できることは驚くべきことであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
従って、本発明は一態様では、第1のアジュバント、第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバント、および少なくとも一種の治療剤を含むリポソームに関する。
【0014】
本発明の第2の態様は、少なくとも一種の第1のアジュバントと、少なくとも一種の治療剤を含む第1のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む、少なくとも一種の第2のリポソームを含むリポソーム混合物である。本発明の第3の態様は、少なくとも一種の第1のアジュバントを含む第1のリポソーム、少なくとも一種の治療剤を含む第2のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む、少なくとも一種の第3のリポソームを含むリポソーム混合物である。
【0015】
本発明の第4の態様は、少なくとも一種の第1のアジュバントを含む第1のリポソーム、少なくとも一種の治療剤を含む第2のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む液体媒体を含むリポソーム混合物である。
【0016】
最後に、本発明の第5の態様は、第1のアジュバントおよび少なくとも一種の治療剤を含むリポソームと、第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む液体媒体を含むリポソーム組成物である。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明のリポソームまたはリポソーム混合物は、液体媒体に含まれる。用語「液体媒体」は、生体に適合する生理学的に受容可能な液体および液体組成物全てを含み、特に、HO、塩水溶液、緩衝液、例えば、PBS、リンゲル液などを含むのが好ましい。
【0018】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、アジュバント、添加剤、および補助物質からなる群から選択される少なくとも一種の別の成分を含むことができる。用語「添加剤」には、リポソームまたは液体媒体のどんな成分、例えば、抗酸化体やラジカル捕捉剤などをも安定させる物質が含まれる。特に安定剤は、α‐トコフェロール、あるいは炭水化物、特にグルコース、ソルビトール、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、セルビオース、ラフィノース、マルトトリオース、またはデキストランからなる群から選択される。安定剤は、リポソームの脂質膜中に、リポソーム内部に、および/またはリポソームを取り巻く液体媒体内に含めることができる。
【0019】
用語「リポソーム」は、概括的には、水性内部を封入した、形成脂質膜の数によって単層状または多層状(好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、および10層状)脂質構造をさす。リポソームを形成できる脂質には、脂肪性または脂肪様特性を有する物質全てが含まれる。そのような脂質は、長い無極性残基(X)と、通常、水溶性極性親水性残基(Y)を含み、この脂質は以下の基本式によって特徴付けることができる。
X‐Y
【0020】
式中、nは0以上である。n=0の脂質は「無極性脂質」と称し、n≧1の脂質は「極性脂質」と称する。本発明のリポソームの脂質を構成できる好ましい脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスホノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される。
【0021】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、好ましい実施形態では、ステロール、特にCHを含む。CHは、天然膜の豊富な成分であり、従ってCHを含むリポソームは、耐性に恵まれ安定しているからである。好ましいリポソームは、リポソームの全モル脂質組成物に対して約20mol%を超えるCHを含む。
【0022】
負荷電脂質が存在すると、特にCHの存在下では、造血系細胞、特にAPC中へのリポソームの取込みが増加することが、本発明者らによってさらに判明した。従って、さらに好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、少なくとも一種の負荷電脂質、好ましくは少なくとも一種の負荷電脂質とステロール、特にCHを含む。従って、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームの正味の表面電荷は、陰性であることが好ましく、すなわちリポソームは、リポソーム中に正荷電脂質量を超える負荷電脂質量を含む。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、負荷電脂質が、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、およびホスファチジン酸(PA)からなる群から選択される。
【0024】
さらにより好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分含む。この場合は、リポソームの全モル脂質組成物に対して、リポソームが
a)20mol%〜60mol%のCH;ならびに
b)それぞれ、
20mol%〜50mol%のPS;
20mol%〜50mol%のPGおよび
20mol%〜50mol%のPE、を含むのがさらに好ましい。
【0025】
他の脂質と関連してCH濃度が60mol%を超えることは、規則的な脂質二重層構造の形成に有害であることが判明しており、従って本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームでは、CHの含有量は60%が上限である。他方で、20mol%未満にコレステロール濃度を下げることは、造血細胞、例えば、DCなどへの結合および組込みを低下させると思われる。従って、CH含有リポソームの好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHはモル比で約20〜約60mol存在する。より好ましくは、リポソームの全モル脂質組成物に対して、CHはモル比で約23〜約42mol%存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%存在する。
【0026】
好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、PSはモル比で約23〜約42mol%存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%存在する。
【0027】
好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、PGがモル比で約23〜約42mol%存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%存在する。
【0028】
好ましい実施形態では、リポソームの全モル脂質組成物に対して、PEがモル比で約23〜約42mol%存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%存在する。
【0029】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、全モル脂質組成物に対して、CH、PS、PGを、それぞれ、約23〜約42mol%含み、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%含む。
【0030】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、全モル脂質組成物に対して、CH、PS、PEを、それぞれ、約23〜約42mol%含み、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%含む。
【0031】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、全モル脂質組成物に対して、CH、PG、PEを、それぞれ、約23〜約42mol%含み、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%含む。
【0032】
脂質残部、すなわち、事例によっては、CH、PSおよびPG;CH、PSおよびPE;またはCH、PGおよびPEのいずれでもなく、かつ加えて100mol%にするのに必要な脂質の量は、どんな脂質からなっていてもよい。本発明の好ましいリポソームの脂質残部を構成することができる好ましい脂質は、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される。
【0033】
これらの脂質の中で、脂質残部は一種もしくは複数のリン脂質を含むのが好ましい。そのリン脂質は、PCおよびPEからなる群から選択するのが好ましい。好ましいリポソームがCH、PG、およびPSを含むような場合には、PEをさらに含めることもできる。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、上記した範囲であり、好ましい範囲でCH、PG、およびPSを含み、さらに、全モル脂質組成物に対して、PEを約1〜約40mol%の濃度で含み、好ましくは約5〜約20mol%で、より好ましくは約8〜約15mol%で含む。
【0035】
特定の好ましい実施形態では、本発明のリポソームの脂質は、本質的にCH、PSおよびPG;CH、PSおよびPEあるいはCH、PGおよびPEからなる。この場合は、CH、PS、PGおよび/またはPEは、上記の好ましい濃度範囲で、特に好ましい濃度範囲で存在してよい。従って、好ましい実施形態では、本発明のリポソームは、全モル脂質組成物に対して、本質的に、CH、PS、およびPGからなり、その場合、それぞれは、約23〜約42mol%で存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%の範囲で存在し;CH、PS、およびPEからなり、その場合、それぞれは、約23〜約42mol%で存在し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%の範囲で存在し;CH、PG、およびPEからなり、その場合、それぞれは、約23〜約42mol%し、より好ましくは約26〜約39mol%、さらにいっそう好ましくは約30〜約36mol%、最も好ましくは約32〜約34mol%の範囲で存在する。
【0036】
PSおよびPGは、それぞれ類似するホスファチジルセリン頭基およびホスファチジルグリセロール頭基を有する脂質の包括的用語である。しかし、これらの頭基に多くの異なる無極性残基を取り付けることができる。従って、異なる天然源から単離したPSおよびPGは、取り付けられた無極性残基の長さ、組成、および/または化学構造がかなり異なり、自然に存在するPSおよびPGは、通常、異なる無極性残基を有するPSおよびPGの混合物である。現在までに試験した、PSおよびPG混合物、あるいは純粋単離した、もしくは化学合成したPSおよびPG化合物は全て、好ましい本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソーム中に示した範囲で、または好ましい範囲で組み込んだ場合、優れた免疫応答をもたらすが、ある種のPSおよびPG型は、特定の強力な免疫応答を刺激することが本発明者らによって観察されており、従って、本発明のリポソーム中に使用されるPSは、パルミトイルオレオイルホスファチジルセリン(palmitoyloleoylphosphatidylserine)、パルミトイルリノエオイルホスファチジルセリン(palmitoyllinoeoylphosphatidylserine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルセリン(palmitoylarachidonoylphosphatidylserine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルセリン(stearoyloleoylphosphatidylserine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルセリン(stearoyllinoleoylphosphatidylserine)、ステアロイル‐アラキドノイルホスファチジルセリン(stearoyl-arachidonoylphosphatidylserine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルセリン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylserine)、ジカプリルホスファチジルセリン(dicaprylphosphatidylserine)、ジラウロイルホスファチジルセリン(dilauroylphosphatidylserine)、ジミリストイルホスファチジルセリン(dimyristoylphosphatidylserine)、ジフィタノイルホスファチジルセリン(diphytanoylphosphatidylserine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルセリン(diheptadecanoylphosphatidylserine)、ジオレオイルホスファチジルセリン(dioleoylphosphatidylserine)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(dipalmitoylphosphatidylserine)、ジステアロイルホスファチジルセリン(distearoylphosphatidylserine)、ジリノレオイルホスファチジルセリン(dilinoleoylphosphatidylserine) ジエルコイルホスファチジルセリン(dierucoylphosphatidylserine)、ジドコサヘキサエノイル‐ホスパチジルセリン(didocosahexaenoyl-phospahtidylserine)、脳由来PS、および大豆由来PSからなる群から選択することが好ましく;特に好ましいのはジオレオイルホスファチジルセリンである。本発明のリポソーム中に使用されているPGは、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyloleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(palmitoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(palmitoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルオレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyloleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルグリセロール(stearoyllinoleoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルグリセロール(stearoylarachidonoylphosphatidylglycerol)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylglycerol)、ジカプリルホスファチジルグリセロール(dicaprylphosphatidylglycerol) ジラウロイルホスファチジルグリセロール(dilauroylphosphatidylglycerol)、ジヘプタデカノイルホスファチジルグリセロール(diheptadecanoylphosphatidylglycerol)、ジフィタノイル‐ホスファチジルグリセロール(diphytanoyl-phosphatidylglycerol)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(dimyristoylphosphatidylglycerol)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(dipalmitoylphosphatidylglycerol)、ジエライドイルホスファチジルグリセロール(dielaidoylphosphatidylglycerol)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(distearoylphosphatidylglycerol)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol)、ジリノエオイルホスファチジルグリセロール(dilinoeoyl-phosphatidylglycerol)、ジアラキドノイルホスファチジルグリセロール(diarachidonoylphosphatidylglycerol)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルグリセロール(docosahexaenoylphosphatidylglycerol)、および卵由来PGからなる群から選択することが好ましく;特にジオレオイルホスファチジルグリセロール(dioleoylphosphatidylglycerol)が好ましい。
【0037】
PSおよびPGと同様に、PEも、ホスファチジルエタノールアミン頭基を有する脂質の総称である。ある種のPEは、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソーム中に組み込まれた場合、特定の強力な免疫応答を刺激することも本発明者らによって観察されており、従って、好ましい実施形態では、PEは、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyloleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoylarachidonoylphosphatidylethanolamine)、パルミトイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyl-oleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyllinoleoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyl-arachidonoylphosphatidylethanolamine)、ステアロイルドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(stearoyldocosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、ジラウロイルホスファチジルエタノールアミン(dilauroylphosphatidylethanolamine)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(dimyristoylphosphatidylethanolamine)、ジフィタノイルホスファチジルエタノールアミン(diphytanoylphosphatidylethanolamine)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(dipalmitoylphosphatidylethanolamine)、ジヘプタデカノイルホスファチジルエタノールアミン(diheptadecanoylphosphatidylethanolamine)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(distearoylphosphatidylethanolamine)、ジエライドイルホスファチジルエタノールアミン(dielaidoylphosphatidylethanolamine)、ジアラキドノイルホスファチジルエタノールアミン(diarachidonoylphosphatidylethanolamine)、ドコサヘキサエノイルホスファチジルエタノールアミン(docosahexaenoylphosphatidylethanolamine)、細菌由来PE、心臓由来PE、脳由来PE、肝臓由来PE、卵由来PE、および大豆由来PEからなる群から選択される。
【0038】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物の好ましい実施形態では、治療剤は、薬物または抗原からなる群から選択される。
【0039】
本明細書全体にわたって使用される用語「抗原」は、ヒトを含む動物で、投与と同時に抗原に対して免疫応答が引き出される物質全てをさす。そのような免疫応答は、例えば、B細胞の増殖と抗体分泌、サイトカインの分泌(例えば、IL‐1、IL‐6、TNFα)によって評価される単球および/またはマクロファージの活性化、特異的表面抗原の特異的発現および/または上方もしくは下方制御(例えば、上方制御されるMHCクラスII、CD80、CD86、CD83、CD40、DC‐LAMP、および下方制御される抗原、例えば、マンノース受容体、DEC‐205、DC‐SIGN)によって評価される樹状細胞(DC)の活性化および分化、ならびに抗原特異的T細胞が伴う体液および/または細胞介在免疫応答によって特徴付けることができ、この抗原特異的T細胞は、そのCD4もしくはCD8発現および適当な抗原、特に免疫応答誘発に使用したのと同じペプチド抗原での活性化(再刺激)に続くサイトカインの放出(例えばIFNγ)によって特徴付けられる。ある場合には、薬物も免疫応答を引き出すことができるが、検出された免疫応答が、以下に定義した腫瘍抗原判定基準を満たす場合、そのような物質は薬物ではなく抗原と見なされる。抗原もしくはその断片は、MHCを提示し、特にMHCクラスIを提示でき、従って細胞介在免疫応答を引き出すことができるのが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己抗原、またはアレルゲンからなる抗原の群から選択される。
【0040】
用語「腫瘍抗原」は、腫瘍に対して免疫応答が引き出される物質全てを含む。特に適当な物質は、正常細胞と比べて腫瘍細胞に豊富にある物質である。これらの物質は、腫瘍細胞内に存在し、かつ/または腫瘍細胞の外側で利用できるのが好ましい。腫瘍抗原が、腫瘍細胞内にしか存在していなくても、その抗原もしくはその断片はMHC系によって細胞表面に提示されるので、免疫系は腫瘍抗原を利用することができる。好ましい態様では、腫瘍抗原は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に概ね排他的に存在し、同じ細胞型の正常細胞中には存在しない。
【0041】
適当な腫瘍抗原は、例えば、同じ細胞型の腫瘍細胞と正常細胞の間の蛋白質の発現の差を分析することによって同定することができ、マイクロアレイをベースにした手法(Russo et al., Oncogene. 2003, 22:6497-507(非特許文献14))を使用し、PCRまたはマイクロアレイを基に腫瘍特異的変異細胞遺伝子をスクリーニング(Heller, Annu. Rev. Biomed. Eng. 2002, 4:129-53(非特許文献15))することによって、あるいは組換え発現クローニングにより抗原を血清学的に同定(SEREX; Tureci et al., Mol Med Today. 1997, 3:342-349(非特許文献16))することによって同定できる。当業者は、腫瘍細胞上および/または腫瘍細胞中に優先的にまたは排他的に存在する多数の物質について把握しており、それらの物質には、例えば、発癌遺伝子、例えば、切断型上皮細胞成長因子、葉酸塩結合蛋白質、メラノフェリン、癌胎児性抗原、前立腺特異的膜抗原、HER2‐neu、およびある種の糖鎖、例えば、上皮ムチンなどが含まれる。
【0042】
腫瘍細胞中におよび/または腫瘍細胞上に優先的にまたは排他的に存在する物質の全てが、強力な免疫応答を引き出すわけではなく、従って本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、またはリポソーム組成物中に含めるために、強力な免疫応答、優先的にMHCクラスI免疫応答を引き出す腫瘍抗原を選択することが好ましい。強力な免疫応答を引き出す抗原は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも15%のIFNγ産生CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞を誘発させ、この細胞は、その抗原で攻撃することによって、抗原で予め免疫化したマウスから単離され、かつ/または増殖しようする抗原で攻撃すると同時に、好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは少なくとも15%の、その抗原で予め免疫化したマウスから単離したB細胞細胞を誘発させる。これらの基準を満たす抗原は、治療用および/または予防用癌ワクチンで使用するための候補である。
【0043】
特定の好ましい実施形態では、腫瘍抗原は、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特にサイクリン依存性キナーゼ(例えば、CDC2、CDK2、CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pm1‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特にNY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6、MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE8)、NY‐ESO‐1、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特にヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMP‐1、LMP‐2;過剰発現抗原もしくは組織特異的分化抗原、特にgp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連蛋白質(TRP‐1とTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1;ならびにそれらの断片および誘導体からなる群から選択される。特定の好ましい腫瘍抗原は、チロシナーゼ関係蛋白質に由来する抗原である。本発明のリポソームに含めるために選択された腫瘍抗原またはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0044】
用語「ウイルス抗原」は、ウイルスに対する、特にウイルス感染細胞に対して免疫応答が引き出される物質全てを含む。ウイルス抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、ウイルス抗原は、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に、胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルスおよび黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特に、コロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特にパラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特に、インフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に、出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特に、B型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特にパルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、パピローマウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;およびイリドウイルス科、特に、アフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなる群から選択されるウイルスに由来する。特に好ましいウイルス抗原は、HPVL6、HPVL7、それらの断片および誘導体からなる群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができるウイルス抗原もしくはその断片は、細胞介在免疫応答を刺激するのが好ましい。
【0045】
用語「真菌抗原」は、真菌に対して免疫応答が引き出される物質全てを含む。この真菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すことが好ましい。本発明好ましい実施形態では、真菌抗原は、クリプトコックス種(Cryptococcus specis)、特にクリプトコックスネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ種(Histoplasma specis)、特にヒストプラスマカプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス種(Coccidioides specis)、特にコクシジオイデスイミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス種(Blastmyces specis)、特にブラストミセスデルマティティジス(Blastmyces dermatitidis)、クラミジア種(Chlamydia specis)、特にクラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)、およびカンジダ種(Candida specis)、特にカンジダアルビカンス(Candida albicans)からなる群から選択される真菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい真菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0046】
用語「細菌抗原」は、細菌に対して免疫応答が引き出される物質全てを含む。細菌抗原は、先に定義した強力な免疫応答を引き出すのが好ましい。本発明好ましい実施形態では、細菌抗原は、ヘリコバクター種(Helicobacter species)、特にピロリ菌(Helicobacter pyloris);ボレリア種(Borelia species)、特にボレリアブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi);レジオネラ種(Legionella species)、特にレジオネラニューモフィラ(Legionella pneumophilia);マイコバクテリア種(Mycobacteria species)、特に結核菌(M. tuberculosis)、M.アビウム(M. avium)、M.イントラセルラール(M. intracellulare)、M.カンサシイ(M. kansasii)、M.ゴルドナ(M. gordonae);ブドウ球菌種(Staphylococcus species)、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus);ナイセリア種(Neisseria species)、特に淋菌(N. gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis);リステリア種(Listeria species)、特にリステリアモノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);レンサ球菌種(Streptococcus species)、特に化膿レンサ球菌(S. pyogenes)、B群レンサ球菌(S. agalactie);S.フェーカリス(S. faecalis);S.ボビス(S. bovis)、肺炎球菌(S. pneumoniae);嫌気性レンサ球菌種(anaerobic Streptococcus species);病原性カンピロバクター種(pathogenic Campylobacter species);腸球菌種(Enterococcus species);ヘモフィルス種(Haemophilus species)、特にインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae);バシラス種(Bacillus species)、特に炭疽菌(Bacillus anthracis);コリネバクテリウム種(Corynebacterium species)、特にジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae);エリシペロトリックス種(Erysipelothrix species)、特に豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae);クロストリジウム種(Clostridium species)、特にC.ペルフリンゲンス(C. perfringens)、破傷風菌(C. tetani);エンテロバクター種(Enterobacter species)、特にエンテロバクターアエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、クレブシエラ種(Klebsiella species)、特に肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ種(Pasturella species)、特にパスツレラムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイド種(Bacteroides species);フソバクテリウム種(Fusobacterium species)、特にフソバクテリウムヌクレアツム(Fusobacterium nucleatum);ストレプトバシルス種(Streptobacillus species)、特にストレプトバシルスモニリホルミス(Streptobacillus moniliformis);トレポネーマ種(Treponema species)、特にトレポネーマペルテヌ(Treponema pertenue);レプトスピラ(Leptospira);病原性エシェリキア種(pathogenic Escherichia species);および放線菌種(Actinomyces species)、特に放線菌イスラエリ(Actinomyces israelli)からなる群から選択される細菌に由来する。本発明のリポソーム中に含めることが好ましい細菌抗原またはその断片は、体液性免疫応答を刺激する。
【0047】
用語「自己免疫抗原」は、体内、特に、正常な細胞、組織、または臓器に通常存在する物質、例えば、蛋白質に対して免疫応答が引き出される物質全てを含む。自己免疫抗原は、自己免疫疾患、例えば、1型糖尿病、従来の臓器特異的自己免疫疾患、神経系疾患、リウマチ性疾患、乾癬、結合組織疾患、自己免疫血球減少症、他の自己免疫疾患などを治療し、かつ/または予防するための脱感作法に使用することができる。そのような従来の臓器特異的自己免疫は、甲状腺炎(Graves病+Hashimoto病)、胃炎、副腎炎(Addison病)、卵巣炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、性腺機能不全、副甲状腺機能低下症、脱毛症、吸収不良症候群、悪性貧血、肝炎、抗受容体抗体疾患、白斑症を含み得る。そのような神経系疾患は、統合失調症、アルツハイマー病、うつ病、下垂体機能不全、尿崩症、乾燥症候群、多発性硬化症を含んでよい。そのようなリウマチ性疾患/結合組織疾患は、リューマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)またはループス、強皮症、多発性筋炎、炎症性腸疾患、皮膚筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、血管炎、乾癬性関節炎、剥脱性乾癬皮膚炎、尋常性天疱瘡、シェーグレン症候群を含んでよい。他の自己免疫関連疾患は、本明細書記載し関連技術分野で知られているような自己免疫ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、心筋梗塞開心術後症候群、肺ヘモシデリン沈着症、アミロイド症、類肉腫症、アフタ性口内炎、および他の免疫関連疾患を含んでよい。それぞれ示した疾患の原因となる自己免疫抗原は、当技術分野で知られており、それだけには限らないが、全て本発明のリポソーム中に含めることができる。
【0048】
用語「アレルゲン」は、ウイルス抗原、細菌抗原、または真菌抗原ではない外来物質に対して免疫応答を引き出す物質をさす。アレルゲンは、脱感作法によってアレルギーを治療しまたは予防するために、本発明のリポソーム中に含めることができる。好ましいアレルゲンは、花粉、特に、カエデ、カバノキ、ハンノキ、ヘイゼルナッツ、ヨモギ、ビーチマウンテンセダー、オーク、クルミ、ニレ、オリーブ、スズカケノキ、ハコヤナギ、アメリカトネリコ、およびストローブマツの花粉;イネ科草本、特に、ハルガヤ、カモガヤ、ギョウギシバ、野生オート麦、ドクムギの草本;昆虫およびクモ、特に、ダニおよびミツバチ;食材、特に、乳や乳製品、ナッツ、特に、ピーナッツ、ヘイゼルナッツ、およびアーモンド;獣毛、特に、ネコ、ウマ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、マウス、ラット、モルモット、およびウサギに由来する毛髪からなる群から選択し、または得てよい。本発明のリポソームに含めることができるそれ以上のアレルゲンは、接触過敏症を引き出す、例えば、ニッケルや銅などのアレルゲンである。
【0049】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、2種のアジュバントと一緒に、かつ/所望の場合はさらに抗原に加えて薬物送達に使用することができる。好ましい実施形態では、薬物は、鎮痛薬;抗リウマチ薬;駆虫薬;抗アレルギー薬;抗貧血薬;抗不整脈薬;抗生物質;血管新生阻害薬;抗感染薬;抗痴呆薬(向知性薬);抗糖尿病薬;解毒薬;制吐薬;抗眩暈薬;抗てんかん薬;止血薬;抗高浸透圧薬;抗低浸透圧薬;抗凝血剤;抗真菌剤;鎮咳薬;抗ウイルス剤;β‐受容体およびカルシウムチャンネル拮抗薬;気管支溶解剤および抗喘息薬;ケモカイン;サイトカイン、特に免疫調節サイトカイン;分裂促進因子;細胞分裂停止薬;細胞傷害性薬剤およびそのプロドラッグ;皮膚薬;催眠薬および鎮静薬;免疫抑制剤;免疫賦活薬、特に、NF‐кBアクチベータ、MAPキナーゼ、STAT蛋白質、および/またはタンパク質リン酸化酵素B/Akt;ペプチドもしくは蛋白質薬物、特に、ホルモン、生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、サイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。もちろん、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、一度に一種を超える薬物を含み、あるいは一種もしくは複数の抗原、および/または一種もしくは複数の第1のアジュバントと共に、一種もしくは複数の薬物を含むことも想定されている。好ましい実施形態では、薬物は、ケモカイン、サイトカイン、分裂促進因子、細胞分裂停止薬、細胞傷害性薬剤、およびそのプロドラッグ、免疫賦活薬、ペプチドもしくは蛋白質薬物、特にホルモン、および生理学的もしくは薬理学的分裂促進因子阻害薬、ケモカイン、またはサイトカイン、あるいはそのそれぞれのプロドラッグからなる群から選択される。
【0050】
本発明のリポソーム、混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、どんな細胞分裂停止薬物または細胞障害薬を含んでもよいが、既知の細胞分裂停止薬および細胞障害薬からは以下のものが特に好ましい:アルキル化物質、抗代謝産物、抗生物質、エポシロン、核内受容体アゴニストおよびアンタゴニスト、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、白金化合物、ホルモンおよび抗ホルモン薬、インターフェロン、細胞周期依存性タンパク質キナーゼ(CDK)阻害薬、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害薬、生体脂肪酸;プロスタノイド、ロイコトリエンを含む脂肪酸誘導体;タンパク質リン酸化酵素阻害薬、蛋白質ホスファターゼ阻害薬、脂質キナーゼ阻害薬、白金配位錯体、エチレンイメン、メチルメラミン、トラジン、ビンカアルカロイド、ピリミジン類似体、プリン類似体、アルキルスルホン酸、葉酸類似体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、特にアセジアスルホン、アクラルビシン、アンバゾン、アミノグルテチミド、L‐アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ホリン酸カルシウム、カルボプラチン、カルペシタビン、カルムスチン、セレコキシブ、クロランブシル、シス‐プラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシンダプソン、ダウノルビシン、ジブロンプロプアミジン、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エンジイン、エピルビシン、エポシロンB、エポシロンD、エストラムシンホスファート、エストロゲン、エチニルエストラジオール、エトポシド、フラボピリドール、フロックスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミドホスフェストロール、フラゾリドン、ゲムシタビン、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシカルバミド、ヒドロキシメチルニトロフラントイン、ヒドロキシプロゲステロネカプロアト、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イドクスウリジン、イホスフアミド、インターフェロンα、イリノテカン、ロイプロリド、ロムスチン、ルルトテカン、マフェニドスルファートオールアミド、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロンアセタート、メガストロールアセタート、メルファラン、メパクリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトロニダゾール、マイトマイシンC、ミトポドジド、ミトタン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、ナリジクス酸、ニフラテル、ニフロキサジド、ニフララジン、ニフルティモックス、ニムスチン、ニノルアゾール、ニトロフラントイン、ナイトロジェンマスタード、オレオムシン、オキソリン酸、ペンタアミジン、ペントスタチン、フェナゾピリジン、フタリルスルファチアゾール、ピポブロマン、プレドニムスチン、プレドニゾン、プロイッシン、プロカルバジン、ピリメタミン、ラルチトレキセド、ラパマイシン、ロフェコキシブ、ロシグリタゾン、サラゾスルファピリジン、スクリフラビニウムクロリド、セムスチンストレプトゾシン、スルファカルバミド、スルフアセタミド、スルファクロピリダジン、スルファジアジン、スルファジクラミド、スルファジメトキシン、スルファエチドール、スルファフラゾール、スルファグアニジン、スルファグアノール、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、スルファメトキシジアジン、スルファメトキシピリダジン、スルファモキソール、スルファニルアミド、スルファペリン、スルファフェナゾール、スルファチアゾール、スルフィソミジン、スタウロスポリン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テルチポシド、テストラクトン、テストステロンプロピオナート、チオグアニン、チオテパ、チニダゾール、トポテカン、トリアジクォン、トレオサルファン、トリメトプリム、トロホスファミド、UCN‐01、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ゾルビシン、あるいはそのそれぞれの誘導体もしくは類似体。次に、癌を治療するために上記の薬物の数種を同時に投与し、従って一種を超える細胞分裂停止薬物および/または細胞障害薬を本発明のリポソーム中に含めることも想定されている。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれる少なくとも一種のリポソーム、または組成物に含まれるリポソームは、治療剤のモル量:全脂質のモル量=1:100〜1:10の割合、好ましくは1:80〜1:15、より好ましくは1:50〜1:20の割合となるような量で治療剤を含む。
【0052】
本発明のリポソームの直径は、10〜1000nmであってよい。しかし、好ましい実施形態ではリポソームの直径は50〜200nmであり、より好ましくは100〜180nmである。例えば、既知の孔径の篩またはメッシュを通してリポソーム組成物を押し出すことによって、リポソームの直径に影響を与えることもできる。リポソームの径を制御するこの方法や別の方法は、当技術分野で周知であり、例えば、Mayhew et al. (1984) Biochim. Biophys. Acta 775:169-174(非特許文献17)またはOlson et al. (1979) Biochim. Biophys. Acta 557:9-23(非特許文献18)に記載されている。
【0053】
本明細書で使用する用語「アジュバント」は、抗原の投与前に、投与と共に、または投与後に投与した場合、抗原の単独投与と比較して、抗原に対する免疫応答の質および/または強度を促進し、延長し、かつ/または増強する物質をさす。本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物中に含まれるリポソーム中に含めることができる第1および第2のアジュバントは、それぞれ、個々に、抗原応答を少なくとも20%増大させ、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも200%、最も好ましくは少なくとも1000%増大させる。抗原応答およびアジュバントによって生じた増大は、腫瘍抗原に関して上記した方法を含め、当技術分野で周知の様々な方法のどれかによって測定することができる。好ましくは、少なくとも2種の異なるアジュバントは、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体、合成リポペプチド誘導体、特にPamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショック蛋白質(HSP)、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特に、インターフェロン‐γ、TNF‐α;25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチド;水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物からなるアジュバントの群から選択される。本発明のリポソーム中に含めることができる特定の好ましいアジュバントは、群:非メチル化DNA、特に、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN)、グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、および合成リポペプチド誘導体、特にPamCysから選択される。
【0054】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物に含まれるリポソーム、またはリポソーム組成物中に含まれるリポソームは、様々な量のそれぞれのアジュバントを含むことができる。最大のアジュバント効果を引き出すために、治療剤と共にできるだけたくさんの第1のアジュバントを送達することが望ましいので、従って、アジュバントは、通常、治療剤と共にできるだけたくさんのアジュバントをカプセル化するために、リポソーム形成中過剰に供給される。リポソームの化学組成および特性、カプセル化しようとするそれぞれのアジュバント、ならびにリポソームの形成で使用される方法に応じて、カプセル化効率は異なり、従って本発明のリポソームは、異なる量のアジュバントを含む。リポソームが、CHおよび少なくとも一種の負荷電脂質を含む好ましい実施形態では、リポソームは、親油性アジュバントを濃度0.1〜10mol%で組み込んで、または親水性アジュバントを濃度1〜100μg/μmol脂質でカプセル化して含む。
【0055】
本発明者らは、抗原およびアジュバントを含むリポソームは、第1のアジュバントとは異なる第2のアジュバントと同時投与した場合、抗原に対してかなり強い免疫応答を引き出せることを発見している。アジュバントを抗原と同時投与すれば、免疫応答をさらに刺激できることが当技術分野で知られてはいても、驚くべきことに、少なくとも一種をリポソーム中に含めた場合、2種のアジュバントを組み合わせた作用は、2種の同時投与した「フリーの」アジュバントの作用よりも強力であることが見出された。第2のアジュバントを同じまたは異なるリポソーム内にさらに含める事例では、特にアジュバントが親水性である場合には、第1のアジュバントまたは第2のアジュバントをリポソーム内部中に「自由に」を含めることができ、特に、アジュバントが親油性の場合には、リポソーム膜中に含めることができ、あるいはリポソームを構成する任意の成分、例えば、リポソームの脂質成分、好ましくは、PE、PS、および/またはPG、あるいはリポソーム中に含まれる蛋白質にこれを取り付けることができ、例えば、抗原に取り付けることができる。
【0056】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、少なくとも1個をリポソーム中に組み込む2種以上のアジュバントを含む。2種以上のアジュバントは、免疫系細胞、特に、APC、例えば、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞などの刺激に相乗的に作用するのが好ましい。アジュバントが、異なる受容体に結合し、またはアジュバントの作用の媒介に関与する異なる分子経路を刺激する場合、特に、2種のアジュバントの相乗効果を観察することができる。従って、第1および第2のアジュバントのそれぞれは、主として異なる受容体によって抗原に対する免疫応答を刺激するのが好ましい。とはいえ、数種のアジュバント、例えば、熱ショック蛋白質は、一種を超える受容体を同時に刺激することできる。そのような場合には、第2の抗原はさらに別の受容体を刺激するのが好ましい。免疫応答を刺激する受容体は、当業者に知られており、例えば、サイトカイン受容体、特に、I型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体;転写因子として働くビタミンD受容体;Toll様受容体1(TLR1)、TLR‐2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR‐6、TLR7、TLR9が含まれる。従って、第1および第2のアジュバントは、I型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体;ビタミンD受容体;およびTLR1、TLR‐2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR‐6、TLR‐7、TLR‐9からなる群から選択される少なくとも2個の受容体を活性化するのが好ましい。それぞれの受容体を活性化するアジュバントは当業者に知られている。
【0057】
好ましい実施形態では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、第1および第2のアジュバントを含み、主として異なる受容体を刺激するアジュバンドは以下に向けて選択される:
a)GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、およびIL‐7からなる群に由来するI型サイトカイン受容体;
b)IFN‐α/βおよびIFN‐γからなる群に由来するII型サイトカイン受容体;
c)TNF‐αおよびCD40リガンドからなる群に由来するTNF受容体;
d)カルシトリオールからなる群に由来するビタミンD受容体;
e)細菌および放線菌由来トリ‐アシルリポペプチド、ならびに髄膜炎菌由来溶解因子からなる群に由来するTLR‐1;
f)リポペプチドからなる群に由来するTLR‐2、特にPamCys、放線菌由来リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン、ザイモサンおよび熱ショック蛋白質(HSP)、特にHSP70、グラム陽性菌由来リポテイコ酸、ブドウ球菌種、特に表皮ブトウ球菌由来フェノール溶解性モジュリン、トリパノソーマ種、特にクルーズトリパノソーマ由来グリコイノシトールリン脂質、トレポネーママルトフィルム由来糖脂質、ナイセリア由来ポーリン、レプトスピラ種、特にレプトスピラインテロガンおよびポルフィロモナス種、特にポルフィロモナス属ジンジバーリス由来非定型LPS;
g)ウイルス二本鎖RNAおよびポリdI:dCからなる群に由来するTLR‐3;
h)グラム陰性菌由来LPSからなる群に由来するTLR‐4およびその誘導体、特にモノホスホリル脂質(MPLA)、HSP、特にHSP60およびHSP70、タキソール、RSV融合蛋白質、MMTV外被蛋白質、フィブロネクチンおよびその断片、ヒアルロン酸オリゴ糖、ヘパラン硫酸塩多糖体断片、ならびにフィブリノーゲン;
i)細菌フラジェリンからなる群に由来するTLR‐5;
j)マイコプラズマ由来ジ‐アシルリポペプチドからなる群に由来するTLR‐6;
k)イミダゾキノリン、ロキソリビン、およびブロピリミンからなる群に由来するTLR‐7;ならびに
l)非メチル化DNA、特にCpG‐DNAからなる群のTLR‐9;非メチル化CpGオリゴヌクレオチド、特にホスホロチオ酸CpG‐PTOオリゴヌクレオチド。
【0058】
別の実施形態では、本発明のリポソーム、混合物中に含まれるリポソーム、またはリポソーム組成物中のリポソームのリポソーム膜を構成する成分のどれも、別の化学部分に取り付けることができる。用語、化学部分は特に限定されない。しかし、好ましい実施形態では、化学部分は以下に、より詳細に記載するような標的部分、または安定化させる部分である。
【0059】
本記述全体にわたって使用されている用語「取り付ける」は、それぞれ、化学部分、特に標的部分もしくは安定化させる部分と、リポソームの別の成分の間の直接的もしくは間接的共有もしくは非共有結合および接続、特に直接共有結合をさす。先に定義した取付けを可能にする多様な化学基は、例えば、ビオチン‐ストレプトアビジン、アミノ反応基(例えば、カルボジイミド、ヒドロキシルメチルホスフィン、イミドエステル、N‐ヒドロキシスクシンイミドエステル、イソチオシアナート、イソシアナート)、スルフヒドリル反応基(例えば、マレイミド、ハロアセチル、ピリジルジスルフィド、アジリジン)、カルボキシル反応分子(例えば、カルボジイミド、カルボジイミダゾール、ジアオアルカン)、ヒドロキシル反応基(例えば、カルボニルジイミダゾール、アルキルハロゲン、イソシアナート)を含め、当技術分野で知られており、適宜、当業者が容易に選択することができる。
【0060】
本発明の意味内での安定化させる部分は、一旦、投与したならば、リポソームの循環時間を延長する。特定の好ましい安定化させる部分は、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、またはPEGであり、特定の好ましいPEGの分子量は、約1,000〜約10,000g/molであり、約5,000g/molがより好ましい。
【0061】
好ましい実施形態では、化学部分、特に安定化させる部分は、リポソーム膜を構成する分子の画分にのみ取り付けられる。リポソーム膜の成分の約1〜約20mol%が、取り付けられた化学部分を有するのが好ましく、約3〜約10mol%がより好ましく、約5mol%がさらにいっそう好ましい。
【0062】
化学部分、特に安定化させる部分を取り付けるための好ましいリポソーム成分は、脂質成分である。異なる化学部分を異なる脂質成分に取り付けることができるが、化学部分は好ましい本発明のリポソーム内に含まれている一種もしくは複数のリン脂質に取り付けることが好ましい。さらに好ましい実施形態では、一種もしくは複数の化学部分をPEに取り付ける。特に、例えば、PEGのような安定化剤を使用する場合、取付けにはPEを使用する。
【0063】
安定化させる部分の界面活性剤の取付けに加えて、本発明のリポソームの脂質二重層を安定させるために、蛋白質およびペプチドをリポソームに組み込むことができる。二重層安定化成分として使用することができる界面活性剤には、それだけには限らないが、TritonX-100、デオキシコラート、オクチルグルコシド、リゾホスファチジルコリンが含まれる。二重層安定化成分として使用することができる蛋白質には、それだけには限らないが、グリコホリンやチトクロム酸化酵素が含まれる。好ましい実施形態では、リポソームは、0.05〜15mol%の安定化剤を含むことができる。
【0064】
リポソームの脂質組成物に応じて、いくつかは、ある種の細胞型に優先的に結合することが知られている。例えば、CHおよび負荷電脂質、特にPS、PG、PEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含む本発明の好ましいリポソームは、優先的に造血系細胞に結合する。特にワクチン接種法には、抗原は、造血系細胞、例えばAPSなどに、より特異的に送達されるのが望ましい。特定の細胞型に優先性を示さない本発明の他のリポソームに、主として体内の特異的な一種または複数の細胞型にそのようなリポソームを仕向けられるようにするターゲティング手段を設けることができる。同様に、そのようなターゲティング手段は、そのリポソーム組成物のために細胞型特異性を示すリポソームの細胞型特異性をさらに増強することができる。より特異的ターゲティングは、望ましくない全身的作用および/または毒性の低減に役立てることができ、あるいはより効果的に抗原およびアジュバントを、例えば、APSに送達することによって免疫応答を増強できる。従って、本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物別の実施形態では、標的部分をリポソームの少なくとも1種に取り付ける。先に述べたように、化学部分に関して標的部分はリポソームのどの成分にも取り付けることができる。標的部分は、:a)リポソームの脂質成分の1種に取り付ける、b)本発明のリポソーム膜に組み込むことができる膜蛋白質に取り付ける、あるいはc)それ自体をその脂質層に挿入し、または組込むことができるのが好ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、標的部分は、ペプチドもしくは蛋白質、特に抗体もしくはその断片、一本鎖抗体もしくはその断片、受容体リガンドもしくはその断片;アプタマー;および炭水化物からなる群から選択される。
【0066】
より詳細には、標的部分は、天然もしくは合成の受容体結合ペプチドおよびそれらの模倣体、単糖もしくはオリゴ糖、受容体リガンドもしくはその断片、抗体もしくはその断片からなる群から選択することができ、それらの全ては、DC特異的表面分子もしくは受容体、特にCD54(ICAM‐1)とICAM‐2、マンノース受容体、CD207(ランゲリン)、ASGPR、CLEC‐1、CLEC‐2、DCIR、dectin‐1、DC‐SIGN、DEC‐205、BDCA‐2、TLR‐1、TLR‐2、TLR‐3、TLR‐4、TLR‐5、TLR‐7、TLR‐9、CD40、CD16/32(FcγR‐IIIとII)、CD11、CD1a、CD1d、およびMHCクラスIIを対象とする。
【0067】
好ましい実施形態では、標的部分をスペーサーに取り付ける。本記述全体にわたって使用される用語「スペーサー」は、それがリポソーム成分、例えば、脂質に取り付けられたときでさえも、標的部分が到達しやすくする目的のために役立つ化学部分をさし、そうではない場合は、標的部分のそのそれぞれの標的構造物への結合が立体的に妨害される。この意味内でのスペーサーの直線的長さは少なくとも0.5nmであり、スペーサーの直線的長さは1〜10nmが好ましく、2〜5nmがさらにいっそう好ましい。スペーサーは、直鎖もしくは分枝、飽和もしくは不飽和糖鎖であることが好ましい。糖鎖は、単量体構成単位の多量体反復を含むのが好ましい。それぞれの単量体構成単位の長さに応じて、単量体構成単位の2〜10個の多量体反復が好ましい。好ましい実施形態では、スペーサーは親水性である。スペーサーは、一末端への標的部分の取付けを可能にする官能基、および他方の末端にリポソーム成分、例えば、本発明の脂質へのスペーサーの取付けを可能にする別の官能基を含むことができる。
【0068】
好ましいスペーサーは、二機能性分子、特に、約1〜40個の反復配列を含むことが好ましい二機能性ポリエチレンもしくはポリプロピレングリコール誘導体であり、オリゴペプチドは天然および/または合成アミノ酸を含む。このオリゴペプチドは、好ましくは1〜40個の、好ましくは2〜20個の、より好ましくは2〜10個のアミノ酸含む。スペーサーの特定の好ましい構成単位は、8‐アミノ‐3,6‐ジオキサタン酸(doo)であり、1〜10個のdoo反復配列を含むスペーサーが好ましい。2〜5個のdoo単位を含むスペーサーが、さらにより好ましく、3個のdoo単位を含むスペーサーが最も好ましい。リポソームと関連して、スペーサーには最適な長さがあり、それは2〜5nmであることが本発明者らによって発見されている。一方で、長さが約0.5nm未満のスペーサーでは、ほとんどの場合、リポソーム表面から標的部分が取り付けられている場所までの距離が十分ではなく、効率的な相互作用、すなわち、標的部分とそのそれぞれの標的、例えば、腫瘍細胞などとの結合が行われない。他方で、約10nmより長いスペーサーは、「緩み」が増大し、これも標的部分とその標的との間の相互作用に有害である。従って、好ましい実施形態では、スペーサーの長さは約1〜約10nmであり、約2.5〜約5nmが好ましい。
【0069】
本発明のリポソームの好ましい実施形態では、標的部分は、脂質、好ましくはリン脂質、例えば、PE、PG、PC、PSなどに取り付けられ、標的部分の取付けに使用される脂質は、N‐カプロイルアミン(caproylamine)‐PE、N‐ドデカニルアミン(dodecanylamine)‐PE、ホファチジルチオエタノール(phophatidylthioethanol)、N‐[4‐(p‐マレイミドメチル(maleimidomethyl))シクロヘキサン(cyclohexane)‐カルボキサミド(carboxamide)‐PE(N‐MCC‐PE)、N‐[4‐(p‐マレイミドフェニル(maleimidophenyl))ブチルアミド(butyramide)]‐PE(N‐MPB)、N‐[3‐(2‐ピリジルジチオ(pyridyldithio))プロピオナート(propionate)]‐PE(N‐PDP)、N‐スクシニル(succinyl)‐PE、N‐グルタリル(glutaryl)‐PE、N‐ドデカニル(dodecanyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐PE、N‐ビオチニル(biotinyl)‐Cap‐PE、ホスファチジル(phosphatidyl)‐(エチレングリコール(ehtylene glycol))、PE‐ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)(PEG)‐カルボン酸(carboxylic acid)、PE‐PEG‐マレイミド(maleimide)、PE‐PEG‐PDP、PE‐PEG‐アミン(amine)、PE‐PEG‐ビオチン(biotin)、PE‐PEG‐HNS、ジパルミトイル(dipalmitoyl)‐グリセロスクシニル(glycerosuccinyl)‐リジン(lysine)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジオクタデセノイルオキシグリセリル(dioctadecenoyloxy glyceryl))(DO)、α‐メトキシ(methoxy)‐ω‐(1,2‐ジテトラデセノイルオキシグリセリル(ditetradecenoyloxy glyceryl))(DT)からなる群から選択されるのが好ましい。
【0070】
先に述べた主成分のように、および多くの実施形態では、本発明のリポソーム膜を構成する唯一の成分は脂質である。しかし、本発明のある態様では、リポソーム膜は、脂質層中に挿入し/組み込むことができる成分をさらに含むことができる。そのような成分の例には、一個もしくは複数の膜貫通ドメイン、GPI‐アンカー、リポペプチドや糖脂質などの他の両親媒性分子、あるいは一種もしくは複数の脂肪酸、脂質、または他の疎水性部分に接合しまたは融合された分子を含め、親水性部分を有する蛋白質がある。そのような分子は、例えば、リポソームに標的化能力を付与することができ、すなわち、そのような分子は先に定義した標的部分であってよく、または酵素機能を有していてよい。
【0071】
治療もしくは診断化合物をリポソーム内部に含めること、または親油性薬物の場合には脂質二重層内もしくは層間にも含めることが特に好ましい。リポソームに所与の治療剤および/または診断剤を「搭載」するために、従来技術の様々な方法を利用することができる。その最も単純な形では、リポソーム形成中に治療または診断剤を脂質成分と混合する。他の受動的な搭載方法には、脱水‐再含水法(Kirby & Gregoriadis (1984) Biotechnology 2:979(非特許文献19))、逆相蒸発法(Szoka & Papahadjopoulos (1978) Proc. Natl.Acad. Sci. USA 75:4194(非特許文献20))、または界面活性剤枯渇法(Milsmann et al. (1978) Biochim. Biophys. Acta 512:147-155)が含まれる。しかし、これらの技術は、搭載中、しばしば、かなりの量の治療剤および/または診断剤の損失を招き、これは治療または診断剤が高価な場合には特に欠点である。
【0072】
治療剤および/または診断剤をカプセル化するための他の方法には、いわゆる「遠隔搭載」または「能動的搭載」が含まれ、その際、プリフォームしたリポソームの外部と内部間の勾配、例えば、pH勾配または塩勾配に基づいて、治療または診断剤を勾配に従ってリポソーム中に輸送する(参照、例えば、Cheung et al. (1998) Biochim. Biophys. Acta 1414:205-216(非特許文献22);Cullis et al. (1991) Trends Biotechnol. 9:268-272(非特許文献23);Mayer et al. (1986) Chem. Phys. Lipids 40:333-345(非特許文献24))。
【0073】
ほとんどの能動的および受動的な搭載手順では、溶媒中に治療および/または診断化合物を可溶化する必要がある。化合物、特に疎水性化合物、または高分子量化合物、例えば、ペプチドもしくは蛋白質などでは、水性溶媒中への可溶化は困難であることを証明でき、これは搭載を非効率的に、すなわち、特に、高価な化合物を不経済なものにしかねない。従って、そのような場合には水性溶媒を使用するのではなく、従来技術では有機溶媒が使用されてきた。しかし、有機溶媒を含むリポソームまたはリポソーム組成物の投与は、有機溶媒が生体適合性に問題があり、従って投与前にそれらを除去しなくてはならず実施不可能であることが多い。しかし、本発明者らは、今回、一方法によって本発明のリポソームを効率よく生成できることを発見し、その方法は、
a)少なくとも一種の脂質、一種もしくは複数の治療剤、ならびに任意で、液体媒体に含まれた第1および/または第2のアジュバントの懸濁液を形成するステップ、ならびに
b)懸濁液を均質化するステップ
を含む。
【0074】
好ましい実施形態では、一種または複数の脂質、治療剤、および/またはアジュバントの少なくとも1種は、液体媒体に本質的に溶解しない。治療剤は、本質的に溶解性ではないのが好ましい。液体媒体は、HO、塩水溶液、および/または緩衝液が好ましい。一種または複数の脂質は、上記の好ましい脂質および脂質組成物であることが好ましく、脂質および治療剤は、上記した範囲であり、好ましい範囲で使用する。
【0075】
それ以上の受動的および能動的搭載技術は、当技術分野で周知であり、全てがそれだけには限らないが、本発明のリポソーム、リポソーム混合物の少なくとも一種のリポソーム、またはリポソーム組成物中に含まれるリポソームを生成するために、当業者が使用することができる。所与のあらゆる治療剤および/またはアジュバントのための最も効率的搭載方法は、十分に確立された手順により常法の実験によって決定することができる。通常調整する変数は、pH、温度、塩の型および塩濃度、緩衝液の型、溶媒などである。
【0076】
好ましい実施形態では、治療剤および/または少なくとも第1のアジュバントは、遠隔搭載によってリポソーム中に搭載する。この方法によって搭載しようとする物質の損失が非常に少なくなるからである。好ましい実施形態では、搭載にはpH勾配を使用する。搭載しようとする物質に応じて、通常、リポソーム内部をその外部に対して酸性化する。内部をpH1〜6にした後、治療剤および/または診断剤を搭載するのが好ましい。
【0077】
従って、本発明の別の態様は、上記方法の1つ、特に、CH、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含む脂質、一種もしくは複数の治療剤および/または診断剤、ならびに液体媒体の懸濁液を形成するステップ、および懸濁液を均質化するステップの方法によって生成されたリポソームである。
【0078】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、従来技術のワクチン製剤よりも、疾患の治療または予防を目指すワクチン接種法に適当であり、従ってワクチン接種法によって治療し、または予防できることが知られ、またはできると推測されるどんな疾患も、本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物によって一層首尾よく治療し、または予防することができることが分かった。従って、本発明の別の態様は、増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、特に自己免疫疾患およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するためのリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物の使用である。従って、生成した薬物を使用して、ヒトを含む動物の疾患を治療し、または予防することができる。
【0079】
リポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、筋肉内、静脈内、鼻腔内、腹腔内、皮内もしくは皮下、および結節内施用を含む様々な方式によって投与することができる。化合物を疾患部位に直接注射することもできる。他のワクチン接種/免疫化法で通常使用されている量および間隔で、あるいは薬物送達の場合には、フリーの薬物で通常使用されている服用量でリポソームを投与する。
【0080】
本発明者らが実施した実験では、本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物は、腫瘍の治療および/または予防に優れた効力を有することが示され、従って好ましい実施形態では、治療または予防しようとする増殖性疾患は、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される。
【0081】
本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物の好ましい使用では、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に、一種もしくは複数のアジュバント、およびまたはサイトカインを投与する。ここで使用する用語、アジュバントは既に定義されている。好ましいアジュバントは、CpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特に、ホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体、合成リポペプチド誘導体、特にPamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショック蛋白質(HSP)、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85(ソルビタン‐トリオレアート)、およびより高度に精製したQuil A誘導体であるQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体、特にサポニン由来免疫賦活性断片;ポリホスファゼン;N‐(2‐デオキシ‐2‐L‐ロイシルアミノ‐β‐D‐グルコピラノシル)‐N‐オクタデシルドデカノイルアミドヒドロアセタート(BAY R1005)、25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);DHEA;ムラメチド[MDP(Gln)‐OMe];ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチドからなるアジュバントの群から選択される。本発明のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物の投与前、投与中、または投与後に投与できる特定の好ましいアジュバントは、アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、またはTNF‐αである。
【0082】
リポソーム混合物の2種のアジュバントを含むリポソームであって、それぞれのリポソームが少なくとも一種の異なるアジュバントを含むリポソームは構造が安定しており、生成後、周囲の薬物溶液または緩衝液を除去するために、例えば、ろ過することができる。治療剤および/またはアジュバントを含有し、また含有しない「純粋な」リポソームも使用することができるが、その安定性のために、それぞれ、リポソームおよびリポソーム混合物から本質的に液体全てを除去して、乾燥状態での容易な貯蔵を促進することも可能である。従って、本発明のリポソームまたはリポソーム混合物は、乾燥形で、好ましくは凍結乾燥形で供給することができる。これらのリポソームは、使用時点で、例えば、水、塩溶液、および/または緩衝液を添加することによって容易に再含水することができる。
【0083】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれている。以下の実施例に開示した技術は、本発明の実施にあたって首尾よく機能することが本発明者らによって発見された技術を表し、従ってその実施に好ましい方式とみなし得ることを当業者には理解されたい。しかし、本開示に照らして、添付の特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨と範囲を逸脱することなしに、開示した具体的実施形態では多くの変化を行うことができることを当業者は理解すべきものとする。引用した参照文献は全て、参照により本明細書に組み込む。
【実施例】
【0084】
実施例1:抗原ペプチドをAVE3にカプセル化
抗原ペプチドTRP‐2(SVYDFFVWL)をAVE3(コレステロール、DLPE、DOPSはモル比で1:1:1)中にカプセル化した。脂質は全て、Avanti Polar Lipids (米国)およびCalbiochem (米国)から購入し、さらに精製することなく使用した。脂質を29.4mgのTRP‐2とモル比で1:20で混合し、50mlのDuranグラスボトルに充填した。50gのヘペス緩衝液(10mmol/l、pH7.4)を加え、Ultra‐Turrax T8分散装置(IKA Werke, Staufen, ドイツ)によって混合物を55℃の水浴中で30分間約25,000rpmで攪拌した。Ultra‐Turraxは、S8N‐8G分散エレメントを具備した。ボトルをボルテックスで数回攪拌して、ボトルの隅で沈殿が生じるのを回避した。均質な懸濁液を得た後、蒸発した水分を交換し、調製物をEmulsiflexC‐5 ホモジナイザー(Avestin Inc.、カナダ国オタワ)に移した。均質化ノズル前部50,000〜150,000kPaおよび均質化装置(homogenisator)圧力300kPaで30分間均質化を実施した。このステップの最後で、フィルタユニットを挿入し、孔径100nmのポリカーボネート膜によって5分間リポソーム分散体をろ過した後、滅菌ろ過を行った。1日貯蔵後、粒径を光子相関分光法によって測定し、リポソーム中のTRP‐2の量をHPLC分析によって測定した。リポソーム径は130〜180nmであった。カプセル化効率は、230〜300μg/ml(39〜51%)の範囲であった。
【0085】
実施例2:オリゴヌクレオチドをAVE3にカプセル化
クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(AVE3の脂質組成については実施例1を参照)を30mbar、34℃のロータリーエバポレーターで15分間乾燥した。得られた脂質フィルムを10mbarの真空チャンバでさらに乾燥した。次いで、10mg/mlのオリゴヌクレオチド(CpG‐1826、ホスホロチオ酸(PTO)およびリン酸ジエステル(PDO)として5'‐TCCATGACGTTCCTGACGTT‐3')を含む1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmol/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。次いで、分散体を21回孔径50nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。フリーのオリゴヌクレオチドを除去するために、セファロースCL‐4Bカラム(Pharmacia、 スウェーデン)によるサイズ排除クロマトグラフィーにリポソーム懸濁液をかけた。次いで、30,000MWカットオフのVivaspin濃縮装置(Vivascience、ドイツ)を使用し、収集したリポソーム画分を限外濾過によって濃縮した。最後に、小胞を200nmの滅菌フィルタ膜でろ過した。水力学的直径をZetasizer 3000 HS(Malvern, Herrenberg、ドイツ)を使用し測定した。カプセル化したオリゴヌクレオチドをイオン交換HPLCによって定量した。リポソーム径は100〜125nmであった。カプセル化効率は4〜7%の範囲であった。
【0086】
実施例3:PamCysおよび抗原ペプチドをAVE3にカプセル化
脂質は全て、Avanti Polar Lipids (米国)およびCalbiochem (米国)から購入し、PamCysをemc (ドイツ)から購入し、さらに精製することなく使用した。クロロホルム、またはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解させた脂質(97.5mol%、モル比はCH:DLPE:DOPS=1:1:1であった)とPamCys(2.5mol%)、およびDMSOに溶解させた抗原ペプチドを10mbarおよび34℃のロータリーエバポレーターで60分間乾燥した。得られた脂質フィルムをクロロホルムに溶解し、再度上記のように乾燥した。滑らかで均質なフィルムが得られるまでこのステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmol/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤をろ過滅菌した。
【0087】
実施例4:モノホスホリル脂質A(MPLA)および抗原ペプチドをAVE3にカプセル化
全脂質およびMPLAをAvanti Polar Lipids (米国)から購入し、さらに精製することなく使用した。脂質(モル比はCH:DLPE:DOPS=1:1:1であった)およびMPLA(全脂質に対して5%または10%(w/w))をクロロホルムまたはクロロホルム:メタノール(1:1)に溶解し、抗原ペプチドをDMSOに溶解した。10mbar、34℃のロータリーエバポレーターで溶液を60分間乾燥した。得られた脂質フィルムをクロロホルム中に分解し、再度先に記載した通り乾燥した。従って、滑らかな均質フィルムが得られるまでステップを繰り返し、続いて10mbarの真空チャンバで残留溶媒を除去した。次いで、1mlの等張ヘペス緩衝液(10mmol/l、pH7.4)に数個のガラスビーズを入れたロータリーエバポレーターで乾燥フィルムを含水させた。得られた分散体を21回孔径100nmのポリカーボネート膜を通して押し出した。この手順の最後で製剤をろ過滅菌した。
【0088】
実施例5:CpG‐PTOとPamCysの相乗的なアジュバントの作用
0日目と10日目の2度、動物1頭につき、10μgのTRP‐2および21μgのPamCysを施用し、(i)PamCys‐AVE3/TRP‐2(2.5mol%のPamCys)、(ii)PamCys‐AVE3/TRP‐2(2.5mol%のPamCys)と5nmolのCpGを含む生理食塩水、(iii)あるいはAVE3/TRP‐2と5nmolのCpGを含む生理食塩水でマウスを免疫化した。2度目の免疫化から6日後、マウスを屠殺し、流入領域リンパ節を取り出し、IL‐2の存在下で6、7日間リンパ節の細胞を培養した。次いで、抗原ペプチド(TRP‐2)または無関係なペプチド(OVAペプチド、SIINFEKL)で細胞を刺激した。16時間後、サイトカイン分泌アッセイによりIFNγの産生についてCD8陽性細胞を分析した。全ての実験において、ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【0089】
約6%のCD8細胞が、PamCys‐AVE3/TRP‐2単独の存在下でIFNγを分泌したが、CpGも存在した場合、この値は上昇して18%を超えた。CpG単独では、約4%の分泌細胞が得られた(図1)。この知見は、PamCys‐AVE3とCpG ODNが、特異的IFNγ分泌CD8細胞の誘発において相乗効果を有することを明瞭に実証しており、PamCys‐AVE3とCpG ODNの相加作用の予想量より、約2倍のIFNγ分泌CD8細胞がもたらされる。
【0090】
実施例6:CpG‐PTOとモノホスホリル脂質A(MPLA)の相乗的なアジュバントの作用
0日目と10日目の2度、動物1頭につき、10μgのTRP‐2および33μgまたは66μgのMPLAを施用し、(i)MPLA‐AVE3/TRP‐2(10%(w/w)のMPLA)、(ii)MPLA‐AVE3/TRP‐2(5%(w/w)MPLA)、(iii)MPLA‐AVE3/TRP‐2(10(w/w)MPLA)と5nmolのCpG‐PTOを含む生理食塩水、(iv)MPLA‐AVE3/TRP‐2(5%(w/w)MPLA)と5nmolのCpG‐PTOを含む生理食塩水、または(v)AVE3/TRP‐2と5nmolのCpG‐PTOを含む生理食塩水でマウスを免疫化した。2回目の免疫化から1週間後、マウスを屠殺し、流入領域リンパ節を取り出し、IL‐2の存在下で6、7日間リンパ節の細胞を培養した。次いで、抗原ペプチド(TRP‐2)または無関係なペプチド(OVAペプチド、SIINFEKL)で細胞を刺激した。16時間後、サイトカイン分泌アッセイによりIFNγの産生についてCD8陽性細胞を分析した。全ての実験において、ヨウ化プロピジウム染色によって死細胞を除外した。
【0091】
5%もしくは10%(w/w)のMPLA(33μgまたは66μgのMPLA動物1頭につき)でMPLA‐AVE3/TRP‐2を施用し、それぞれ、約1%または7%のIFNγ分泌CD8細胞がもたらされた。CpG ODNの添加によって、数値はそれぞれ約19%および38%に上昇した。CpG ODN単独では約7%のINFy分泌CD8細胞がもたらされた(図2)。従って、PamCysおよびCpG ODNについて観察されたように、INFγ分泌CD8細胞の誘発は2倍から3倍上昇し、カプセル化したMPLAとCpG ODNの間には強力な相乗効果が観察される。
【0092】
実施例7:アジュバントとしてPamCysとCpG‐PTO ODNによる抗腫瘍効果
B16.F1マウス黒色腫細胞の皮下腫瘍モデルで、予防的設定を使用し抗腫瘍効果を分析した。マウス(C57BL/6)を一週間空けて2度後肢足蹠に免疫化した。最後の免疫化から1週間後、2×10個のB16腫瘍細胞を含む総容量200μlのHBSSでマウスを皮下接種した。リポソームアジュバントとして2.5mol%のPamCysを含めまたは含めず、生理食塩水中もしくはAVE3にカプセル化した低用量のCpG‐PTO ODN(1.3nmol)と組み合わせた、AVE3中にカプセル化した低用量のTRP‐2抗原(動物1頭につき10μg)で免疫化後、腫瘍増殖を比較した。B16接種から17日後、PamCysとカプセル化CpG‐PTOを含み、または含まないAVE3中にカプセル化したTRP‐2によってマウスを免疫化した時、腫瘤は著しく減少し、CpG‐PTOのカプセル化は、部分的な腫瘍拒絶を実現するのに必要であることを証明した(図3)。さらに、2種類のカプセル化アジュバント(PamCysおよびCpG‐PTO ODN)の施用によって、抗腫瘍効果はさらに改善され、この改善は生体外で観察された相乗効果に一致する(実施例5)。B16黒色腫細胞の移植後生存期間(図4)も調査した。AVE3/TRP‐2とCpG‐PTOを含む生理食塩水(平均生存時間:未処理、14日;AVE3/TRP‐2とCpG‐PTO、14日)では有意な生存率の上昇は実現できなかった。AVE3/PamCys/TRP‐2とCpG‐PTOを含む生理食塩水でマウスを免疫化した場合は、平均生存時間は著しく増加して16日になった(n=5;p<0.0145、AVE3/PamCys/TRP‐2とCpG‐PTO、対未処理)。PamCysを含めまたは含めず、リポソームCpG‐PTOを加え、AVE3/TRP‐2でマウスを免疫化した場合、平均生存時間は著しく増加して19日になった(n=5;p<0.0035、AVE3/TRP‐2とAVE3/CpGPTO、対未処理;n=5;p<0.0145、AVE3/PamCys/TRP‐2とAVE3/CpG‐PTO、対未処理)。さらに、これらのデータから、抗原含有AVE3中にPamCysを組み込むことは、ワクチン設定に未カプセル化CpG‐PTOが含まれる場合にのみ、著しく生存期間を増加させる(n=5;AVE3/TRP‐2とCpG‐PTO対AVE3/PamCys/TRP‐2とCpG‐PTO;p<0.0145)ことが示された。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】CpG‐PTOとPamCysの間の相乗的なアジュバントの作用を示す図である。マウスは、動物1頭につき、10μgのTRP‐2および21μgのPamCysを施用し、PamCys‐AVE3/TRP‐2;PamCys‐AVE3/TRP‐2と5nmolのCpGを含む生理食塩水;またはAVE3/TRP‐2と5nmolのCpGを含む生理食塩水によって2度免疫化した。試験管内で5μMのTRP‐2ペプチドにより再刺激から16時間後、サイトカイン分泌アッセイによってCD8画分のIFNγ+産生細胞を定量した。陰性対照として、未刺激細胞または5μMのOVAペプチドにより再刺激した細胞を含めた。全ての場合で、背景レベルは0.5〜1.5% IFN生成CD8細胞であった(図示せず)。
【図2】CpG‐PTOとMPLAの間の相乗的なアジュバントの作用を示す図である。マウスは、動物1頭につき、10μgのTRP‐2および、33μgもしくは66μgのMPLAを施用し、5%もしくは10%(w/w)のMPLAを含有するMPLA‐AVE3/TRP‐2、またはMPLA‐AVE3/TRP‐2と5nmolのCpGを含む生理食塩水、またはAVE3/TRP‐2と5nmolのCpGを含む生理食塩水によって2度免疫化した。試験管内で5μMのTRP‐2ペプチドにより再刺激から16時間後、サイトカイン分泌アッセイによってCD8画分のIFNγ産生細胞を定量した。陰性対照として、未刺激細胞または5μMのOVAペプチドにより再刺激した細胞を含めた。全ての場合で、背景レベルは、0.5〜1.5%のIFN生成CD8細胞であった(図示せず)。
【図3】低用量のリポソームワクチン接種が腫瘍増殖を防止するのを示す図である。マウス(n=4)は、5nmolのフリーのCpG‐PTO(A)の存在下で、または1.3nmolのAVE3にカプセル化したCpG‐PTO(B)の存在下、10μgのTRP‐2を含むAVE3もしくはAVE3‐PamCysによって2度免疫化した。次いで、0日目に、マウスに2×10個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。
【図4】低用量のリポソームワクチン接種によって生存が延長したことを示す図である。マウス(グループあたりn=4)は、AVE3/PamCys/TRP‐2(動物1頭につき10μgのTRP‐2)と1.3nmolのリポソームCpG‐PTO、AVE3/PamCys/TRP‐2(動物1頭につき10μgのTRP‐2)と5nmolのCpG‐PTOを含む生理食塩水、リポソームTRP‐2(AVE3/TRP‐2)と1.3nmolのリポソームCpG‐PTO(AVE3/CpG)、リポソームTRP‐2(AVE3/TRP‐2)と5nmolのCpG‐PTOを含む生理食塩水によって2度免疫化し、あるいは未処理で放置した。0日目に、マウスに2×10個のB16黒色腫細胞を皮下接種した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のアジュバント、第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバント、および少なくとも一種の治療剤を含むリポソーム。
【請求項2】
少なくとも一種の第1のアジュバントと、少なくとも一種の治療剤を含む第1のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む、少なくとも一種の第2のリポソームを含むリポソーム混合物。
【請求項3】
少なくとも一種の第1のアジュバントを含む第1のリポソーム、少なくとも一種の治療剤を含む第2のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む、少なくとも一種の第3のリポソームを含むリポソーム混合物。
【請求項4】
少なくとも一種の第1のアジュバントを含む第1のリポソーム、少なくとも一種の治療剤を含む第2のリポソーム、および第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む液体媒体を含むリポソーム混合物。
【請求項5】
第1のアジュバントおよび少なくとも一種の治療剤を含むリポソームと、第1のアジュバントとは異なる少なくとも一種の第2のアジュバントを含む液体媒体を含むリポソーム組成物。
【請求項6】
前記リポソームが、液体媒体中に含まれている、請求項1〜3の1項に記載のリポソームまたはリポソームの混合物。
【請求項7】
前記液体媒体が、HO、塩水溶液、および緩衝液からなる群から選択される、リポソーム、請求項4〜6の一項に記載のリポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項8】
アジュバント、添加剤、および補助物質からなる群から選択される少なくとも一種の別の成分を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項9】
前記リポソーム脂質が、コレステロールおよび少なくとも一種の負荷電脂質を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項10】
リポソーム中に含まれている前記負荷電脂質が、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、およびホスファチジン酸(PA)からなる群から選択される、請求項9に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項11】
前記リポソームが、コレステロール、ならびにPS、PG、およびPEからなる群から選択される少なくとも2種の成分を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項12】
前記リポソームが、リポソームの全モル脂質組成物に対して、
a)20mol%〜60mol%のCH、ならびに
b)それぞれ、
20mol%〜50mol%のPS、
20mol%〜50mol%のPG、および
20mol%〜50mol%のPE
を含む、請求項11に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項13】
CH、PS、PG、およびPEからなる群から選択される1種類から3種類の成分が、リポソームの全モル脂質組成物に対してモル比で30mol%〜36mol%存在する、請求項9〜12のいずれかに記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項14】
前記リポソームの残りの脂質が、グリセリド、グリセロリン脂質、グリセロホスフィノ脂質、グリセロホスホノ脂質、スルホ脂質、スフィンゴ脂質、リン脂質、イソプレノリド、ステロイド、ステアリン、ステロール、および脂質を含む炭水化物からなる群から選択される、請求項9〜13のいずれかに記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項15】
前記残りのリン脂質が、ホスファチジルコリン(PC)またはPEである、請求項14に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項16】
前記リポソーム脂質が、本質的にCH、PS、およびPG;CH、PS、およびPE;CH、PG、およびPE;あるいはCH、PG、PS、およびPEからなる、請求項11から15の一項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項17】
前記治療剤が、薬物および抗原からなる群から選択される、請求項1から16の一項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項18】
前記抗原が、腫瘍抗原、ウイルス抗原、真菌抗原、細菌抗原、自己免疫抗原、またはアレルゲンからなる抗原の群から選択される、請求項17に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項19】
前記腫瘍抗原が、変異または組換え細胞遺伝子の特有遺伝子産物に属するT細胞限定癌関連抗原、特に、サイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)、p15Ink4b、p53、AFP、β‐カテニン、カスパーゼ8、p53、p21Ras変異、Bcr‐abl融合産物、MUM‐1MUM‐2、MUM‐3、ELF2M、HSP70‐2M、HST‐2、KIAA0205、RAGE、ミオシン/m、707‐AP、CDC27/m、ETV6/AML、TEL/Aml1、デカイン、LDLR/FUT、Pml‐RARα、TEL/AMLI;癌精巣(CT)抗原、特にNY‐ESO‐1、MAGEファミリーのメンバー(MAGE‐A1、MAGE‐A2、MAGE‐A3、MAGE‐A4、MAGE‐A6MAGE‐10、MAGE‐12)、BAGE、DAM‐6、DAM‐10、GAGEファミリーのメンバー(GAGE‐1、GAGE‐2、GAGE‐3、GAGE‐4、GAGE‐5、GAGE‐6、GAGE‐7B、GAGE‐8)、NA‐88A、CAG‐3、RCC関連抗原G250;腫瘍ウイルス抗原、特にヒトパピローマウイルス(HPV)由来E6 E7腫瘍性タンパク質、エプスタイン‐バーウイルスEBNA2‐6、LMP‐1、LMP‐2;過剰発現抗原もしくは組織特異的分化抗原、特にgp77、gp100、MART‐1/メラン‐A、p53、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連蛋白質(TRP‐1とTPR‐2)、PSA、PSM、MC1R;広範に発現した抗原、特に、ART4、CAMEL、CEA、CypB、HER2/neu、hTERT、hTRT、iCE、Muc1、Muc2、PRAMERU1、RU2、SART‐1、SART‐2、SART‐3、およびWT1;ならびにそれらの断片および誘導体からなる群から選択される、請求項18に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項20】
前記ウイルス抗原が、レトロウイルス科、特に、HIV‐1およびHIV‐LP;ピコルナウイルス科、特に、ポリオウイルスおよび肝炎Aウイルス;エンテロウイルス、特に、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス;カルシウイルス科、特に、胃腸炎を引き起こす株;トガウイルス科、特に、ウマ脳炎ウイルスおよび風疹ウイルス;フラウイルス科、特に、デングウイルス、脳炎ウイルスおよび黄熱病ウイルス;コロナウイルス科、特に、コロナウイルス;ラブドウイルス科、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルス;フィロウイルス科、特に、エボラウイルスまたはおよびマールブルグウイルス;パラミクソウイルス、特にパラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルス;オルトミクソウイルス科、特に、インフルエンザウイルス;ブンガウイルス科、特に、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、およびナイロウイルス;アレナウイルス科、特に、出血熱ウイルス;レオウイルス科、特に、レオウイルス、オルビウイルス、およびロタウイルス;ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科、特に、B型肝炎ウイルス;パルボウイルス科、特に、パルボウイルス;パポーバウイルス科、特に、乳頭腫ウイルス、サルウイルス‐40(SV40)およびポリオーマウイルス;アデノウイルス科;ヘルペスウイルス科、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科、特に、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、およびポックスウイルス;およびイリドウイルス科、特に、アフリカブタ熱ウイルス;ならびにC型肝炎からなるウイルス群から選択されるウイルスに由来する、請求項18に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項21】
前記真菌抗原が、クリプトコックス種、特にクリプトコックスネオフォルマンス、ヒストプラスマ種、特にヒストプラスマカプスラーツム、コクシジオイデス種、特にコクシジオイデスイミティス、ブラストミセス種、特にブラストミセスデルマティティジス、クラミジア種、特にクラミジアトラコマティス、およびカンジダ種、特にカンジダアルビカンスからなる群から選択される真菌に由来する、請求項18に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項22】
前記細菌抗原が、ヘリコバクター種、特にピロリ菌;ボレリア種、特にボレリアブルグドルフェリ;レジオネラ種、特にレジオネラニューモフィラ;マイコバクテリア種、特に結核菌、M.アビウム、M.イントラセルラル、M.カンサシイ、M.ゴルドナ;ブドウ球菌種、特に黄色ブドウ球菌;ナイセリア種、特に淋菌、髄膜炎菌;リステリア種、特にリステリアモノサイトゲネス;レンサ球菌種、特に化膿レンサ球菌、B群レンサ球菌;S.フェーカリス;S.ボビス、肺炎連鎖球菌;嫌気性レンサ球菌種;病原性カンピロバクター種;腸球菌種;ヘモフィルス種、特にインフルエンザ菌;バシラス種、特に炭疽菌;コリネバクテリウム種、特にジフテリア菌;エリシペロトリックス種、特に豚丹毒菌;クロストリジウム種、特にC.ペルフリンゲンス、破傷風菌;エンテロバクター種、特にエンテロバクターアエロゲネス、クレブシエラ種、特に肺炎桿菌、パスツレラ種、特にパスツレラムルトシダ、バクテロイド種;フソバクテリウム種、特にフソバクテリウムヌクレアツム;ストレプトバシルス種、特にストレプトバシルスモニリホルミス;トレポネーマ種、特にトレポネーマペルテヌ;レプトスピラ;病原性エシェリキア種;および放線菌種、特に放線菌イスラエリからなる群から選択される細菌に由来する請求項18に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項23】
第1および第2のアジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチド(CpGモチーフ)を含む非メチル化DNA、特にホスホロチオ酸(PTO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PTO ODN)またはリン酸ジエステル(PO)主鎖を有するCpG ODN(CpG PO ODN);グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にモノホスホリル脂質A(MPLA)、リポ多糖(LPS)、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;熱ショック蛋白質(HSP)、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラゲリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、インターロイキン‐(IL‐)2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;25‐ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール);合成オリゴペプチド、特にMHCIIに提示されたペプチド;水酸化アルミニウム(ミョウバン)のゲル様沈殿物からなる群から選択される、請求項1〜22の1項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項24】
第1および第2のアジュバントが、免疫系細胞内の異なる受容体および/または経路を刺激する、請求項23に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項25】
第1および第2のアジュバントが、I型サイトカイン受容体、II型サイトカイン受容体、TNF受容体;転写因子として働くビタミンD受容体;およびToll様受容体1(TLR‐1)、TLR‐2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR‐6、TLR7、およびTLR9からなる群から選択される少なくとも2個の受容体を刺激する、請求項24に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項26】
主として異なる受容体を刺激する第1および第2のアジュバントが、
a)GM‐CSF、IL‐2、IL‐6、およびIL‐7からなる群に由来するI型サイトカイン受容体;
b)IFN‐α/βおよびIFN‐γからなる群に由来するII型サイトカイン受容体;
c)TNF‐αおよびCD40リガンドからなる群に由来するTNF受容体;
d)カルシトリオールからなる群に由来するビタミンD受容体;
e)細菌および放線菌由来トリ‐アシルリポペプチド、ならびに髄膜炎菌由来溶解因子からなる群に由来するTLR‐1;
f)リポペプチドからなる群に由来するTLR‐2、特にPamCys、放線菌由来リポアラビノマンナン、ペプチドグリカン、ザイモサンおよび熱ショック蛋白質(HSP)、特にHSP70、;グラム陽性菌由来リポテイコ酸、ブドウ球菌種、特に表皮ブトウ球菌由来フェノール溶解性モジュリン、トリパノソーマ種、特にクルーズトリパノソーマ由来グリコイノシトールリン脂質、トレポネーママルトフィルム由来糖脂質、ナイセリア由来ポーリン、レプトスピラ種、特にレプトスピラインテロガンスおよびポルフィロモナス種、特にポルフィロモナス属ジンジバーリス由来非定型LPS;
g)ウイルス二本鎖RNAおよびポリdI:dCからなる群に由来するTLR‐3;
h)グラム陰性菌由来LPSからなる群に由来するTLR‐4およびその誘導体、特にモノホスホリル脂質(MPLA)、HSP、特にHSP60およびHSP70、タキソール、RSV融合蛋白質、MMTV外被蛋白質、フィブロネクチンおよびその断片、ヒアルロン酸オリゴ糖、ヘパラン硫酸塩多糖体断片、ならびにフィブリノーゲン;
i)細菌フラジェリンからなる群に由来するTLR‐5;
j)マイコプラズマ由来ジ‐アシルリポペプチドからなる群に由来するTLR‐6、
k)イミダゾキノリン、ロキソリビン、およびブロピリミンからなる群に由来するTLR‐7;ならびに
l)非メチル化DNAからなる群に由来するTLR‐9、特にCpG‐DNA;非メチル化ホスホロチオ酸(PTO)オリゴヌクレオチド、特にCpG‐PTOオリゴヌクレオチド
に向けて選択される、請求項25に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項27】
標的部分が、前記リポソームに取り付けられる、請求項1〜26の1項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物。
【請求項28】
前記リポソームの生成方法が、
a)少なくとも一種の脂質、一種もしくは複数の治療剤、ならびに任意で、液体媒体に含まれた第1および/または第2のアジュバントの懸濁液を形成するステップ、ならびに
b)懸濁液を均質化するステップ
を含む、請求項1〜27の1項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物を生成する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法によって生成されるリポソーム。
【請求項30】
増殖性疾患、伝染病、血管疾患、リウマチ病、炎症性疾患、免疫疾患、およびアレルギーの予防用または治療用薬物を生成するための請求項1から26または請求項28の一項に記載のリポソーム、リポソーム混合物、またはリポソーム組成物の使用。
【請求項31】
前記増殖性疾患が、胃腸路癌もしくは結腸直腸路癌、肝臓癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、精巣癌、黒色腫、口腔粘膜異形成、浸潤性口腔癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、ホルモン依存性乳癌、ホルモン非依存性乳癌、移行細胞癌および扁平上皮細胞癌、神経芽細胞腫を含む神経系悪性腫瘍、グリア細胞腫、星細胞腫、骨肉腫、柔組織肉腫、血管腫、内分泌腫瘍、白血病を含む血液異常増殖、リンパ腫、他の骨髄増殖性疾患およびリンパ球増殖性疾患、上皮内癌、過形成病変、腺腫、線維腫、組織球増殖症、慢性炎症性増殖性疾患、血管増殖性疾患、ならびにウイルス誘発増殖性疾患からなる群から選択される請求項30の使用。
【請求項32】
アジュバントおよび/またはサイトカインが、リポソームまたはリポソーム組成物の投与前、投与と同時に、または投与後に投与される、請求項30または31の使用。
【請求項33】
前記アジュバントが、非メチル化DNA、特にCpGジヌクレオチドを含む非メチル化DNA、特にCpG PTO ODNまたはCpG PO ODN;ミョウバン;グラム陰性菌外膜由来細菌産物、特にMPLA、LPS、ムラミルジペプチド、およびそれらの誘導体;合成リポペプチド誘導体、特にPamCys;リポアラビノマンナン;ペプチドグリカン;ザイモサン;HSP、特にHSP70;dsRNAおよびその合成誘導体、特にポリI:ポリC;ポリカチオンペプチド、特にポリ‐L‐アルギニン;タキソール;フィブロネクチン;フラジェリン;イミダゾキノリン;アジュバント活性を有するサイトカイン、特にGM‐CSF、IL‐2、IL‐6、IL‐7、IL‐18、インターフェロンI型およびII型、特にインターフェロン‐γ、TNF‐α;水中油滴型乳濁液、特にスクアレンからなるMF59;Tween 80、Span 85、およびQS‐21、非イオン性ブロックポリマー、特にポロクサマー401、サポニンおよびその誘導体;ポリホスファゼン;BAY R1005、カルシトリオール;DHEA;[MDP(Gln)‐OMe;ムラパルミチン;乳酸および/またはグリコール酸ポリマー;ポリメタクリル酸メチル;ソルビタントリオレアート;スクワラン;ステアリルチロシン;スクアレン;テルアミド、合成オリゴペプチド、特にMHC‐クラスIIによって提示されたペプチドからなるアジュバントの群から選択される請求項32の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−515451(P2007−515451A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546065(P2006−546065)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014630
【国際公開番号】WO2005/063288
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501023476)
【住所又は居所原語表記】Kogle Alle 6,DK−2970 Horsholm DENMARK
【Fターム(参考)】