説明

省電力機能を備えた機器および、該機器を制御する制御装置で構成されるシステム、システム制御方法および、方法を記録した媒体

【課題】 省電力機能を有するネットワーク機器の制御において、機器が省電力状態であることを、任意のタイミングで確認することを可能とする。
【解決手段】 省電力状態であることを確認するためのビットパターン/パケットを定義し、制御装置側では定期的あるいは起動時に前記ビットパターン/パケットを送信し、機器側では省電力状態で前記ビットパターン/パケットを受信した場合は省電力状態を維持したまま応答を返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力機能を備えたネットワーク機器と、該機器を制御する制御装置で構成された、ネットワークシステム、およびシステム制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
消費電力の節約のために、一定時間以上使用されない場合には自動的に省電力状態に移行する機能を有するネットワーク機器が存在する。
【0003】
前記ネットワーク機器は、省電力状態にある場合、ネットワークを介して他の機器から操作されることで省電力状態から復帰する。省電力状態から復帰する方法として、ネットワークからの入力信号を受信し、受信した入力信号のパターンが予め登録された入力信号パターンと一致する入力があった場合に省電力状態から復帰する方式が提案されている。
【0004】
省電力状態から復帰するための入力信号パターンとして、マジックパケット(Magic Packet(登録商標))と呼ばれる、通常は送信されない特殊な入力信号パターンによって復帰する方法が提案されている。ここでいう入力信号パターンとは、イーサネット(登録商標)やトークンリングなどのネットワークにおける、パケット内のビットパターンのことであり、本特許の適用範囲はイーサネット(登録商標)やトークンリングとは限らないため一般的に入力信号パターンと称している。この方法では、特殊な入力信号パターンが受信されない限り省電力状態から復帰しないので、省電力状態を長時間保つことが可能である。
【0005】
上記のようなシステムの場合、省電力状態にあるネットワーク機器をユーザが使用する(つまり、通常電力状態へ復帰させる)ためには、一般のユーザが該機器の制御・操作時に使用する各アプリケーションに、特殊な入力信号パターンを送信するように予め変更を加えておかなくてならない。そのため、変更を加えなかったアプリケーションからは省電力状態にある機器を利用することができないという問題がある。
【0006】
この問題を一部解決するため、省電力状態から復帰させる入力信号パターンとして、一般ユーザが使用するアプリケーションが該機器(または該機器を含む複数の機器)に送信する入力信号パターンに設定することで、既存のアプリケーションに変更を加えなくても済むという方法が考えられる。
【0007】
従来例としては、例えば特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特開2002-287936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、省電力状態から復帰させる入力信号パターンとして、一般的な入力信号パターンを使用することで、該機器を使用する各アプリケーションの変更を行う必要がないが、容易に送信される入力信号パターンであるため、該機器が頻繁に省電力状態から復帰してしまう可能性がある。
【0009】
この問題点に対処するため、省電力状態への移行と、通常電力状態への復帰に関して、機器側からアプリケーションにイベントで通知するという方法が考えられる(図6参照)が、非同期型のイベントを使用する場合は、以下のような課題が残る。
【0010】
・何らかの要因で、アプリケーション側にイベントパケットが届かなかった場合に、アプリケーションは電力状態の変化が発生したことを知ることができない。(図7参照)。
【0011】
・アプリケーション起動前に、機器が省電力状態に移行していた場合、省電力状態であることを検知できない。
【0012】
本発明は、かかる問題点を解決するためのものである。つまり、省電力状態をイベントで管理する場合に、イベントを補完するための機構を用意し、該機器を制御・操作する各アプリケーションの電力状態管理機能を強化した、該システム、および該システム制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明にかかるシステムは、省電力機能を有する機器と、該機器を制御する制御装置で構成されるシステムであって、省電力機能を有する機器として、
ある特定ビットパターンAの入力を受信した場合には、省電力状態から通常の電力状態に復帰する手段と、
省電力状態で他の特定ビットパターンBの入力を受信した場合には、省電力状態を維持したまま、省電力状態であることを応答として返信する手段と
を有し、該機器を制御する該制御装置として、
該機器の電力状態を管理する電力状態管理メモリと、
任意のタイミングで、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信する手段と、
前記送信した信号に対しての応答の値、あるいは応答が無かったことにより、該機器が省電力状態ではないことを判別する手段と
を設けることにより、省電力状態に移行した機器に対し、より適切な制御を行うことが可能となる。
【0014】
さらに、請求項2の発明にかかるシステムは、請求項1のシステムを構成する該機器において通常電力状態で上記特定ビットパターンBの入力を受信した場合に、通常電力状態であることを応答として返信する。
【0015】
請求項3および請求項4の発明にかかるシステムは、請求項1のシステムを構成する該制御装置において、定期的あるいは該機器の制御開始時に、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信する。
【0016】
請求項5の発明にかかるシステム制御方法は、省電力機能を有する機器における、
ある特定ビットパターンAの入力を受信した場合には、省電力状態から通常の電力状態に復帰するステップと、
省電力状態で他の特定ビットパターンBの入力を受信した場合には、省電力状態を維持したまま、省電力状態であることを応答として返信するステップと、
を有し、さらに、該機器を制御する該制御装置において、
該機器の電力状態を管理する電力状態管理メモリと、
任意のタイミングで、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信するステップと、
前記送信した信号に対しての応答の値、あるいは応答が無かったことにより、該機器が省電力状態ではないことを判別するステップと
を有していることを特徴とするシステム制御方法である。
【0017】
請求項6の発明にかかる記録媒体は、請求項5に記載の方法を実行するコンピュータプログラムを有する記憶媒体である。
【発明の効果】
【0018】
以上で説明したように本発明のシステム、システム制御方法および、方法を記録した媒体によれば、省電力機能を有する機器としては、
ある特定ビットパターンAの入力を受信した場合には、省電力状態から通常の電力状態に復帰し、
省電力状態で他の特定ビットパターンBの入力を受信した場合には、省電力状態を維持したまま、省電力状態であることを応答として返信し、
さらに該機器を制御する該制御装置側においては、
該機器の電力状態を管理する電力状態管理メモリを設け、
任意のタイミングで、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信し、
前記送信した信号に対しての応答の値、あるいは応答が無かったことにより、該機器が省電力状態ではないことを判別することにより、
該機器が省電力状態であることを、任意のタイミングで該制御装置が検知することが可能となる。
【0019】
その結果、該制御装置ではより正確に該機器の電力状態を把握することができるため、省電力機能を有効に活用可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施例1)
以下で、添付図面を用いて、本発明にかかる実施例について説明する。
【0021】
図1は、実施形態が適用するシステムの構成例を示している。
【0022】
DEV1は、省電力機能を有しているネットワーク機器である。
【0023】
PC1およびPC2は、DEV1を含むネットワーク機器を制御・操作する機器制御装置である。本実施例では、オペレーティングシステム(OS)が動作可能なコンピュータおよび、機器制御や操作を行うアプリケーションソフトウェアで構成されているものとする。該アプリケーションソフトウェアには、DEV1等の機器の電力状態を管理するための、電力状態管理メモリが割り当てられている。コンピュータのハードウェア構成は、一般的なパーソナルコンピュータやワークステーション等と同等であるものとし、詳細は割愛する。
【0024】
PC1またはPC2から電気信号がネットワークを経由して、制御対象機器であるDEV1に入力される。ユーザからの直接の操作やDEV1に対するある条件を満たす電気的入力がなくなると、DEV1は省電力状態へ移行する。ここでいうある条件とは、何時間、どのような入力信号がないと省電力状態へ移行するなどの条件であり、機器に予め設定された設定値であり、ユーザによっても設定することが可能である。
【0025】
図2は、該DEV1の内部構成を示す図である。
【0026】
CNTL1は、DEV1の電力状態を制御するソフトウェアを含むコントローラである。
【0027】
ENG1は、DEV1のジョブ(印刷ジョブなど)を処理する、本体部のエンジンである。
【0028】
LANC1は、DEV1のネットワーク経由での入出力電気信号を制御する、ネットワークインタフェースコントローラである。省電力状態へ移行すると、CNTL1およびENG1には、必要最小限の電力のみが供給されるようになる。
【0029】
本実施例においては、LANC1で処理する特殊なビットパターンとして、二種類の区分を備えている。ひとつめとしては、省電力状態から通常電力状態への復帰条件となるビットパターンである。以下では該ビットパターンを復帰ビットパターンとする。ふたつめとしては、省電力状態における状態確認のためのビットパターンである。以下では該ビットパターンを確認ビットパターンとする。各ビットパターンとしては、それぞれ複数のパターンを登録しておくことも可能である。
【0030】
では、図3のフローチャートによって、該DEV1が省電力状態への移行する前後の処理について詳細に説明する。(DEV1とPC1あるいはPC2上のアプリケーション間のシーケンスに関しては図5参照。)
ステップS101において、省電力状態に移行することを、PC1あるいはPC2に対して通知する。例えば、イベント型の通信パケットによって、状態変化を通知する。
【0031】
ステップS102において、電源状態を省電力状態に移行する。
【0032】
ステップS103において、LANC1はネットワークLAN1からの入力待ちを行う。
【0033】
ステップS104において、ネットワークLAN1からの入力があるか否かを判断し、入力がない場合には、再度ステップS103に戻る。入力があったと判断された場合には、ステップS105を実行する。
【0034】
ステップS105において、通常電力状態への復帰条件として設定されている復帰ビットパターンを取得する。
【0035】
ステップS106において、入力信号と、設定された該ビットパターンを比較し、該当する場合はステップS107を、該当しない場合には、ステップS109をそれぞれ実行する。
【0036】
ステップS107において、LANC1は、CNTL1へ起動信号を送り、さらに、CNTL1は起動信号を機器本体ENG1へ送り、機器が省電力状態から復帰する。ただし、CNTL1のみが起動するか、あるいはENG1も含めて起動、復帰するかは設定と機器の仕様による。また、機器本体ENG1への起動信号をLANC1から直接送信する場合もある。
【0037】
ステップS108において、通常電力状態に復帰したことを、PC1あるいはPC2に対して通知する。例えば、イベント型の通信パケットによって、状態変化を通知する。
【0038】
ステップS109においては、省電力状態での状態確認用として設定されている確認ビットパターンを取得する。
【0039】
ステップS110において、入力信号と、設定された該ビットパターンを比較し、該当する場合はステップS111を、該当しない場合には、ステップS103をそれぞれ実行する。
【0040】
ステップS111において、該入力信号が、省電力時における状態確認要求であることが判別できたため、確認要求を送信しているPC1あるいはPC2に対し、状態確認の応答を返す。本実施例では機器全体を通常電力状態へ復帰させることなく該応答を返すことを想定しているが、機器の仕様によっては、CNTL1のみ通常電力状態へ復帰させるといった、省電力のための限定的な運用も可能である。
【0041】
次に、図4のフローチャートによって、PC1あるいはPC2での電力状態管理処理について、詳細に説明する。本処理は、DEV1の制御・操作を行っている間、継続的に実施するものであり、特にDEV1が省電力状態に移行する前後の電力状態管理処理に関する。
【0042】
ステップS201において、DEV1からの省電力状態への移行通知を受信したかどうかを判別する。該通知を受信した場合にはステップS202を実行し、受信していない場合には本ステップへ戻る。
【0043】
ステップS202において、電力状態管理メモリに、省電力状態であることを記録する。
【0044】
ステップS203において、DEV1への状態確認を定期的に実行するための状態確認タイマをスタートする。
【0045】
ステップS204において、前記タイマが満了したかどうかを判別する。満了した場合はステップS205を、満了していない場合はステップS208を、それぞれ実行する。
【0046】
ステップS205において、DEV1に対し確認ビットパターンを含んだ状態確認のためのパケットを送信する。
【0047】
ステップS206において、DEV1から状態確認の応答パケットを受信したか否かを判別する。受信した場合は、電力状態が省電力状態のままであることがわかるのでステップS203へ戻る。受信しなかった場合にはステップS207を実行する。
【0048】
ステップS207において、電源状態管理メモリの情報をクリアし、本シーケンスを終了する。
【0049】
ステップS208においては、DEV1からの通常電力状態への復帰通知を受信したかどうかを判別する。該通知を受信した場合にはステップS209を実行し、受信していない場合にはステップS204へ戻る。
【0050】
ステップS209において、前記状態確認タイマをストップする。
【0051】
ステップS210において、電力状態管理メモリに、通常電力状態であることを記録する。
【0052】
(その他の実施例)
前記実施例においては、機器が省電力状態にある場合に、状態確認のビットパターンを検出し、省電力状態を維持したまま応答を返す実施形態を示した。この形態に対し、通常電力状態において状態確認のビットパターンを検出した場合も、応答を返しても良い。ただし、その場合は、応答の内容を参照した結果、機器が省電力状態にあるのか通常電力状態にあるのかを判別可能となるように、応答を定義しておく。
【0053】
さらに、前記実施例においては、PC1あるいはPC2上のアプリケーションが起動した状態で、機器の電力状態が変化する場合の構成例について示している。それに対し、機器が省電力状態に移行後に、アプリケーションが起動する場合もある。その場合、アプリケーションが起動し、機器へ何らかの制御・操作を行う前に、状態確認のパケットによって、機器が省電力状態であるかどうかを判別することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に関わるシステムの構成図。
【図2】本発明に関わる機器の内部構成図。
【図3】本発明に関わる機器側の動作を示すフローチャート図。
【図4】本発明に関わるアプリケーション側の動作を示すフローチャート図。
【図5】本発明に関わるシステムの動作を示すシーケンス図。
【図6】従来例でのシステムの動作を示すシーケンス図。
【図7】従来例でのシステムの動作を示すシーケンス図。
【符号の説明】
【0055】
PC1 機器へ入力信号を送るユーザが使用する機器
PC2 機器へ入力信号を送るユーザが使用する機器
DEV1 省電力機能を有するネットワーク機器
LAN1 PC1、PC2、DEV1を接続するネットワーク
LANC1 DEV1のネットワーク制御装置
CNTL1 DEV1の制御装置
ENG1 DEV1の機器本体装置
POW1 DEV1の電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
省電力機能を有する機器と、該機器を制御する制御装置で構成されるシステムにおいて、省電力機能を有する機器は、
ある特定ビットパターンAの入力を受信した場合には、省電力状態から通常の電力状態に復帰する手段と、
省電力状態で他の特定ビットパターンBの入力を受信した場合には、省電力状態を維持したまま、省電力状態であることを応答として返信する手段と、
を有し、該機器を制御する該制御装置は、
該機器の電力状態を管理する電力状態管理メモリと、
任意のタイミングで、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信する手段と、
前記送信した信号に対しての応答の値、あるいは応答が無かったことにより、該機器が省電力状態ではないことを判別する手段と
を有していることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムを構成する該機器において、通常電力状態で上記特定ビットパターンBの入力を受信した場合に、通常電力状態であることを応答として返信する手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1のシステムを構成する該制御装置において、該機器が省電力状態である場合に、定期的に上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信する手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1のシステムを構成する該制御装置において、該機器の制御・操作の開始時に、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信する手段を有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
省電力機能を有する機器における、
ある特定ビットパターンAの入力を受信した場合には、省電力状態から通常の電力状態に復帰するステップと、
省電力状態で他の特定ビットパターンBの入力を受信した場合には、省電力状態を維持したまま、省電力状態であることを応答として返信するステップと、
を有し、さらに、該機器を制御するシステム制御方法において、
該機器の電力状態を管理する電力状態管理メモリと、
任意のタイミングで、上記ビットパターンBを含んだ信号を、該機器に送信するステップと、
前記送信した信号に対しての応答の値、あるいは応答が無かったことにより、該機器が省電力状態ではないことを判別するステップと
を有していることを特徴とするシステム制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法を実行するコンピュータプログラムを有する記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−41052(P2008−41052A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218339(P2006−218339)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】