説明

真偽判定用媒体およびそれを有する物品、真偽判定用媒体ラベル、真偽判定用媒体転写シートならびに真偽判定用媒体転写箔

【課題】偽造や改ざん等を容易に判定することができ、しかも容易に偽造できない真偽判定手段を提供すること。
【解決手段】入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有し、かつ可視光に対して透過性を有する光選択反射層、可視光に対して透過性を有し、かつ入射光の回転方向が反転する潜像パターン層、ホログラム形成層、ならびに、反射性パターン層をこの順に有する真偽判定用媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造や改ざん等を容易に判定することができ、しかも偽造困難な真偽判定用媒体および前記真偽判定用媒体を有する物品に関する。更に、本発明は、前記真偽判定用媒体を含む真偽判定用媒体ラベル、真偽判定用媒体転写シート、および真偽判定用媒体転写箔に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、クレジットカード、預貯金用カード、各種金券、身分証明書等は、偽造されたり改ざんされて不正に使用されると様々な支障を招く。そのため、偽造や改ざんによる損害を防止するために、そのものの真正性を識別できる機能を有することが望まれる。また、例えば、腕時計、皮革製品、貴金属製品、宝飾品等の高級品、とりわけ、高級ブランド品と言われるもの、オーディオ製品、電化製品、または媒体に記録された音楽ソフト、映像ソフト、ゲームソフト、コンピュータソフト等も、やはり偽造の対象となるので、同様に、真正性を識別できる機能を有することが望まれる。
【0003】
従来、上記の物品を含めた種々の物品の真正性の識別を可能にする目的で、潜像パターンやホログラムが多用されている。潜像パターンは、通常の状態では視認できないが特定の条件下で視認可能となるため、真正性の判定に利用することができ、また偽造防止にも有効である。また、ホログラムは、その構造の精密さから、製造上の困難性を有するため偽造防止効果が大きい。
【0004】
また、近年、ホログラムに代わるものとして、コレステリック液晶層を有する真偽判定体が提案された(特許文献1参照)。更に、潜像パターンとホログラムを組合わせた真偽判定用媒体(特許文献2)、潜像パターンとコレステリック液晶層を組合わせた真偽判定用媒体(特許文献3参照)も提案された。
【特許文献1】特開2000−25373号公報
【特許文献2】特開2005−91786号公報
【特許文献3】特開2005−22231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の真偽判定体においては、判定部は依然としてエンボスホログラムで形成されている。エンボスホログラムによれば、精密なパターンの形成が可能であるものの、エンボス型に刻まれたホログラムの凹凸を充分に再現するためにはエンボス型とエンボスされる材料との接触時間を充分に長くする必要があり、製造時間の短縮が困難である上、エンボス型自体の製造プロセスも工程数が多いため、判定部のパターンの変更は困難である。
【0006】
一方、特許文献2および3に記載の真偽判定用媒体は、判定部はネマチック液晶やスメクチック液晶により形成された潜像パターンからなるため、判定部のパターン形成やパターン変更が容易である。更に、上記真偽判定用媒体は、潜像パターンによる真偽判定と背景の液晶層やホログラム層の反射性による真偽判定を併せて行うことができるためセキュリティ性が高く、しかも高い偽造防止効果を有する。しかし、近年、偽造手段はますます高度化しているため、より有効な偽造防止手段が求められている。
【0007】
かかる状況下、本発明は、偽造や改ざん等を容易に判定することができ、しかも容易に偽造できない真偽判定手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する手段は、以下の通りである。
[1]入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有し、かつ可視光に対して透過性を有する光選択反射層、
可視光に対して透過性を有し、かつ入射光の回転方向が反転する潜像パターン層、
ホログラム形成層、ならびに、
反射性パターン層
をこの順に有する真偽判定用媒体。
[2]前記ホログラム形成層は可視光透過性を有する[1]に記載の真偽判定用媒体。
[3]前記光選択反射層は、コレステリック液晶層である[1]または[2]に記載の真偽判定用媒体。
[4]前記光選択反射層は、少なくとも一部がパターン状である[1]〜[3]のいずれかに記載の真偽判定用媒体。
[5]前記潜像パターン層は、スメクチック液晶層またはネマチック液晶層である[1]〜[4]のいずれかに記載の真偽判定用媒体。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の真偽判定用媒体と、該真偽判定用媒体の前記真偽判定用媒体の光選択反射層を有する面とは反対の面上に粘着層を有する真偽判定用媒体ラベル。
[7]剥離性面を有する基材と[6]に記載の真偽判定用媒体ラベルを有する真偽判定用媒体転写シートであって、
前記真偽判定用媒体ラベルの粘着層を有する面とは反対の面と、前記基材の剥離性面とが対向する、前記真偽判定用媒体転写シート。
[8]感熱性接着剤層、[1]〜[5]のいずれかに記載の真偽判定用媒体、および基材フィルムをこの順に有する真偽判定用媒体転写箔。
[9][1]〜[5]のいずれかに記載の真偽判定用媒体を視認可能に有する物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の真偽判定用媒体によれば、潜像パターンによる真偽判定と光選択反射層の反射性およびホログラム層の絵柄による真偽判定を行うことができる。
また、ホログラムの反射層をパターン化するためには高度な技術を要するため、反射層をパターン層とすることは偽造防止に有効である。
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。

本発明の真偽判定用媒体は、(1)入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有し、かつ可視光に対して透過性を有する光選択反射層、(2)可視光に対して透過性を有し、かつ入射光の回転方向が反転する潜像パターン層、(3)ホログラム形成層、ならびに、(4)反射性パターン層
をこの順に有する。
本発明において、「真偽判定用媒体」とは、真正品と偽造品や改ざん品を判別するために使用され得る媒体をいう。また、本発明において、「可視光透過性」とは、可視光(波長380nm〜780nm)の透過率が、例えば50%以上であることをいう。
【0011】
前記光選択反射層と潜像パターン層は、可視光透過性を有する。よって、本発明の真偽判定用媒体を自然光の下で光選択反射層側から観察すると、光選択反射層の色彩変化やホログラム(ホログラム形成層と反射性パターン層により形成される)の絵柄は観察できるものの、潜像パターン層は、まったく見えないか、ごく不鮮明にしか見えず潜像となる。
【0012】
このような本発明の真偽判定用媒体に、円偏光板を重ねると光選択反射層の反射性に応じて、以下のようなメカニズムによってパターン層を鮮明な像として認識することができる。
例えば光選択反射層が右円偏光を選択的に反射する性質を有する場合、右円偏光板を重ねて観察すると、真偽判定用媒体全体が光選択反射層からの反射光の色に着色した状態に視認される。例えば、前記光選択反射層がコレステリック液晶層である場合には、コレステリック液晶層のらせんピッチに基づいて着色して見える。
一方、左円偏光板を重ねて観察すると、入射光は光選択反射層では反射されず、該層を透過する。光選択反射層を透過した光は潜像パターン層において回転方向が反転するため、潜像パターン層からの反射が起きる。本発明の真偽判定用媒体は、潜像パターン層の背景にホログラム形成層と反射性パターン層を有する。潜像パターン層の背景に反射性のある層(ホログラム形成層と反射性パターン層によって形成されるホログラム)を配置することにより、潜像パターン層によって形成される像を鮮明に認識することが可能となる。
上記では、光選択反射層が右円偏光を選択的に反射する態様について説明したが、本発明は上記態様に限定されるものではない。光選択反射層が左円偏光を選択的に反射する性質を有する場合には、左円偏光板を重ねて観察することにより光選択反射層の反射光の色を認識することができ、右円偏光板を重ねて観察することにより、潜像パターン層を鮮明な像として認識することができる。
なお、前記潜像パターン層を視認するための偏光板としては、直線偏光板、左円偏光板、右円偏光板のいずれを用いてもよいが、円偏光板を使用することにより、潜像と併せて光選択反射層の反射性も観察することができる。
【0013】
更に、本発明の真偽判定用媒体では、ホログラム形成層の下層に位置する反射層は、パターン状である。これにより、下層に反射性層が積層された部分ではホログラムが見えやすく、下層に反射性層が積層されていない部分では光選択反射層の色調や色彩変化(見る角度により色彩が変化する効果)を確認しやすく、また、右円偏光板または左円偏光板を介して観察することにより、右円偏光もしくは左円偏光の有無を確認することが可能である。しかも、ホログラムが見えやすい部分と光選択反射層の効果が確認しやすい部分とがパターン状に区分けされて観察されるので、複雑な外観を有する上に、真正性の識別性が高い真偽判定用媒体を提供することができる。
【0014】
上記のように、本発明の真偽判定用媒体は、潜像パターン、光選択反射層の反射性、色調および色彩変化、ならびにホログラムの絵柄による真偽判定を行うことができる。しかも、潜像パターンおよび光選択反射層の反射性によって真偽判定可能であることは目視では容易に識別できないため、偽造防止に有効である。
しかも、本発明の真偽判定用媒体は、各層を形成する材料は一般に入手困難であり、層形成も容易ではないため、偽造防止効果がきわめて高い。更に、前記のように複雑な層構成を有することも偽造防止に効果的である。特に、ホログラムを形成する反射層をパターン化し、更にはホログラムの反射層のパターンとホログラム絵柄を同調させるためには高度な技術が要求されるため、反射性パターン層を有することは偽造防止にきわめて有効である。
こうして、本発明によれば、真偽判定が容易であり、しかも優れた偽造防止効果を有する真偽判定用媒体を提供することができる。
次に、本発明の真偽判定用媒体に含まれる各層の詳細を説明する。
【0015】
潜像パターン層
前記潜像パターン層は、可視光透過性を有し、かつ入射光を反転させる性質を有するものであれば特に限定されず、公知の材料から形成することができる。前記潜像パターン層は、好ましくはスメクチック液晶層またはネマチック液晶層である。ここで、スメクチック液晶層とは、スメクチック型液晶分子を含む層であり、ネマチック液晶層とは、ネマチック型液晶分子を含む層であり、該液晶分子が配向することにより、入射光を反転させる性質を示すことができる。前記液晶分子としては、後述するコレステリック液晶層に使用可能な液晶分子を使用することができる。液晶材料は一般に入手困難であり、しかも高度な配向技術が要求されるので、前記潜像パターン層が液晶層であることは、偽造防止に有効である。
【0016】
前記液晶層は、液晶分子を含むインキ組成物、好ましくはこれらの液晶分子の溶剤溶液からなるインキ組成物を各種印刷法によりパターン状に印刷することにより形成することができる。前記インキ組成物を、配向性を有する基材や光選択反射層上に塗布して乾燥させることにより、層内で液晶分子が配向した液晶層を得ることができる。また、前記インキ組成物を配向膜上に塗布して乾燥させることにより、層内の液晶分子を配向させることもできる。
【0017】
基材
前記潜像パターン層は、光選択反射層上に直接形成することもできるが、基材の一方の面に直接または配向膜を介してパターン層を形成し、他方の面に光選択反射層を直接または配向膜を介して形成することもできる。配向膜の詳細は後述する。
前記基材としては、可視光透過性を有するプラスチック基材および位相差性が少ない基材が望ましい。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロール(TAC)、ジアセチルセルロール、ポリエチレン−エチルビニルアルコールなどを例示できる。
【0018】
配向膜
前記潜像パターン層と光選択反射層の間に配向膜を形成することもできる。この場合、配向膜は、潜像パターン層中の液晶分子および光選択反射層中の液晶分子を配向させ所望の光反射性を付与する役割を果たす。また、前述のように、基材の表面に配向膜を形成することも可能である。更に、潜像パターン層中の液晶分子を配向させるために、ホログラム形成層と潜像パターン層との間に配向膜を形成することも可能である。
前記配向膜は、一般に配向膜として使用し得るものであればいずれでもよいが、光選択反射層やホログラムの視認性に影響を与えないためには可視光透過性を有するものであることが好ましい。前記配向膜としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリイミド樹脂等を用いることができる。配向膜は、これらの樹脂の溶剤溶液を、適宜な塗布法により塗布し、乾燥させた後に、布、ブラシ等を用いて摩擦するラビングを行って形成することができる。前記配向膜として、基材フィルムや潜像パターン層、光選択反射層と接着性のよいものを選ぶと該配向膜は接着層として機能し、他方、接着性に乏しいものを選ぶと該配向膜は剥離層として機能する。配向膜が剥離層として機能すれば、転写箔として使用できる。また、例えば光選択反射層/基材/配向膜(剥離層)/潜像パターン層/ホログラム形成層/反射性パターン層/粘着層の構成でラベルとして使用した場合、対象物に貼り付けた後に剥がそうとすると、剥離層より上が剥がれてしまうため、真偽判定用媒体全体として剥がすことが難しく、基材が剥がれてしまうので、ラベルが貼り替えられない。そのため、配向膜が剥離層として機能することは、改竄防止に有効である。
但し、液晶層は、下層の物性によっては配向膜なしでも層内の液晶分子を配向させることができるので、上記配向膜は必須ではない。例えば、延伸フィルム(例えばPETフィルム)からなる基材を用いる場合には、配向層なしでも液晶層中の分子を配向させることができる。この場合、基材の少なくとも一方の面に剥離層を設けることにより、前記と同様の効果を得ることができる。また、光選択反射層と潜像パターン層を基材や配向膜を介さずに積層する場合、両層の界面に剥離層を設けることもできる。この剥離層としては、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種または2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、またはアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂が1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。特に、上記潜像パターン層と光選択反射層との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)となるようなものであることが好ましい。また、その厚みは剥離力、箔切れ等の面から、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0019】
更に、前記基材の光選択反射層と対向する表面および/または潜像パターン層と対向する表面を易剥離化することによっても、前述と同様の効果を得ることができる。前記基材として使用され得る透明フィルムは、他層と積層可能な程度の接着力を示すものもあるが、通常は接着力を向上させるための処理が行われる。そこで、この接着力向上処理を行わないか、またはその程度を調整することにより表面の接着力を意図的に低くした(易剥離化した)透明フィルムを使用することにより、透明フィルムと他層との接着力を低下させることができる。このような透明フィルムを基材として使用すれば、易剥離化された表面において剥離するため、前記と同様の効果を得ることができる。
【0020】
前記接着力向上処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、プライマー塗布処理またはケン化処理を挙げることができる。いずれの処理も、公知の装置、方法を用いて行うことができる。処理条件は、基材フィルム表面に対し、他層と接着可能ではあるが剥離しようとしたときにその表面において剥離する程度の接着力を付与し得るように適宜設定することができる。また、ポリエチレンテレフタレートフィルムのように、未処理でも他層と接着可能な程度の接着力を有するフィルムを基材として使用する場合は、接着力向上処理を行わないことにより、基材表面で剥離することができる。
【0021】
また、前記基材フィルムの膜厚を過度に薄くしたり成分を調整し、基材自体の強度を意図的に低下させれば、本発明の真偽判定用媒体を適用した物品に外力を加えて媒体を剥ぎ取ろうとすると基材が破壊されるため、光選択反射層とパターン層が分離される。これによっても、前述と同様の効果を得ることができる。
前記のように、光選択反射層と潜像パターン層との間に脆弱部(真偽判定用媒体に含まれる層および層間の界面の中で強度が最も低い部分)を設けることは、偽造改竄防止に有効である。
【0022】
光選択反射層
前記光選択反射層は、入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有し、かつ可視光に対して透過性を有するものであればよく、コレステリック液晶層であることが好ましい。ここで、コレステリック液晶層とは、コレステリック型液晶分子を含む層である。液晶材料は一般に入手困難であり、しかも高度な配向技術が要求されるので、前記光選択反射層がコレステリック液晶層であれば、高い偽造防止効果を得ることができる。更に、前記光選択反射層が可視光透過性を有することにより、下層に位置する潜像パターン層およびホログラムの絵柄を容易に視認することができる。
【0023】
前記光選択反射層がコレステリック液晶層である場合、使用する液晶材料は特に限定されず、公知のものを用いることができる。コレステリック液晶層は、コレステリック液晶材料を適当な溶媒に溶解し、各種の印刷方法によって適用し、乾燥させることによって形成することができる。このとき、重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物を調製し、得られた紫外線重合性組成物を各種の印刷法によって適用し、乾燥後に紫外線を照射して重合させて形成することもできる。
【0024】
具体的には、コレステリック液晶層を形成するための材料としては、三次元架橋可能な液晶性の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子を用いることができる。所定の重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に任意のカイラル剤を添加することにより、コレステリック型液晶分子を含む層を得ることができる。
【0025】
三次元架橋可能なモノマー分子としては、例えば特開平7−258638号公報や特表平10−508882号公報で開示されているような、液晶性モノマーおよびキラル化合物の混合物がある。より具体的な例を示すと、例えば下記一般化学式(1)〜(11)に示されるような液晶性モノマーを用いることができる。尚、一般化学式(11)で示される液晶性モノマーの場合、Xは2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
【化2】

【0028】
【化3】

【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
また、カイラル剤としては、例えば下記一般化学式(12)〜(14)に示されるようなカイラル剤を用いることができる。尚、一般化学式(12)、(13)で示されるカイラル剤の場合、Xは2〜12の範囲の整数であることが望ましく、また、一般化学式(14)で示されるカイラル剤の場合、Xが2〜5の範囲の整数であることが望ましい。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
また、オリゴマー分子を用いる場合は、例えば特開昭57−165480号公報で開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物を用いることができる。例えば、重合性モノマー分子または重合性オリゴマー分子に、カイラル剤を数%〜10%程度添加することによりコレステリック液晶層を得ることができる。
【0042】
本発明の真偽判定用媒体では、潜像パターン層の下層に位置するホログラム形成層が可視光透過性を有することが好ましい。ホログラム形成層が可視光透過性を有すれば、特に下層に反射性パターン層が積層されてない部分では、ホログラムからの反射光によって妨げられることなく、光選択反射層の色彩変化による真偽判定を容易に行うことができ、また光選択反射層の色調を活かすことができるという利点もある。特に、液晶層は、使用する液晶分子の種類やカイラル剤の添加量等を調整することによって多様な色彩を表現することができるが、液晶材料は一般に入手困難であり、しかも高度な製造技術が要求されるため液晶層の色彩は再現することが困難である。よって、前述のようにホログラム形成層を可視光透過性として光選択反射層の色彩を活かすことができることは、偽造防止に有効である。なお、コレステリック液晶層は、ほぼ均一な厚みを有する層として形成することができるが、層の有無や厚みの違いによりパターンが形成されたパターン層とすることもできる。パターン層は、各種印刷方法を用いて形成することができる。光選択反射層の少なくとも一部をパターン状とすれば、見る角度により色彩が変化する効果がパターンに応じて得られるため、偽造防止により有効である。
【0043】
本発明の真偽判定用媒体は、二層以上の光選択反射層を有することもできる。この場合、二層以上の光選択反射層を直接積層することもでき、二層の光選択反射層の間に基材を配置することもできる。二層の光選択反射層が基材を介して積層されていると、見る角度により色彩が変化する効果がより複雑な真偽判定用媒体を提供することができる。また、二層以上の光選択反射層を直接積層する場合に比べ、光選択反射層形成用塗布液中の溶剤が先に積層された光選択反射層に悪影響を与えることを回避することができるという利点もある。また、二層以上設ける光選択反射層の一部の層をパターン層とすることも可能である。
【0044】
前記光選択反射層は、異なる光反射性を有する2層以上の層から形成することもできる。例えば、複数のコレステリック液晶層の厚みを変えるか、または各層を螺旋ピッチが異なる液晶材料を用いて形成することにより、光反射性を変えることができる。上記のように重合性のコレステリック液晶を用いて紫外線重合性組成物からコレステリック液晶層を形成する場合には、重合性のネマチック液晶とカイラル剤を組み合わせて用い、このとき重合性のネマチック液晶とカイラル剤との配合比を異ならせた紫外線重合性組成物を調製して用いることにより、互いに螺旋ピッチの異なるコレステリック液晶層を形成することができる。
【0045】
ホログラム形成層
前記ホログラム形成層としては、公知のホログラム形成層を用いることができるが、前述のように光選択反射層の色調変化を活かすためには、可視光透過性を有するものが好ましい。例えば、前記ホログラム形成層は、透明な樹脂素材からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することにより作製することができる。ホログラム形成層を構成するための透明な樹脂材料としては、各種の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電離放射線硬化樹脂等の各種樹脂材料が選択可能である。例えば、熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはアクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独、または2種類以上の共重合体として使用することができる。また、これらの樹脂は単独、または2種類以上を各種イソシアネート樹脂や、ネフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱または紫外線硬化剤を配合してもよい。また、電離放射線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリル変性ポリエステル等が挙げられる。このような電離放射線硬化型樹脂に架橋構造、粘度調整等を目的として、他の単官能または多官能モノマー、オリゴマー等を抱合させることができる。
【0046】
前記ホログラム形成層は、感光性樹脂材料にホログラムの干渉露光を行って現像することによって直接的に形成することもできるが、予め作製したレリーフホログラムもしくはその複製物、またはそれらのメッキ型等を複製用型として用い、その型面を上記の樹脂材料に押し付けることにより、賦型を行うこともできる。熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、型面に未硬化の樹脂を密着させたまま、加熱または電離放射線照射により硬化を行い、硬化後に剥離することによって、硬化した透明な樹脂材料からなる層の片面にレリーフホログラムの微細凹凸を形成することができる。なお、本発明では、同様な方法によりパターン状に形成して模様状とした回折格子を有する回折格子形成層もホログラム形成層に含めるものとする。また、ホログラム形成層および回折格子形成層を合わせたものを光回折構造層と呼ぶこととする。
【0047】
反射性パターン層
本発明の真偽判定用媒体は、ホログラムを形成する反射層がパターン状である。これにより、下層に反射性パターン層が積層された部分ではホログラムの絵柄が見えやすく、下層に反射性パターン層が積層されてない部分では光選択反射層の色調や色彩変化を確認しやすく、また、右円偏光板または左円偏光板を介して観察することにより、右円偏光もしくは左円偏光の有無を確認することが可能である。
【0048】
前記反射性パターン層を、光を反射する金属等の材料から形成すると不透明タイプのホログラムを得ることができ、可視光透過性を有する材料から形成すると透明タイプのホログラムを得ることができる。
【0049】
反射性パターン層のパターンの一例を図1に示す。図1(a)に示すように、パターンは、左右方向の幅が狭く上下方向に長い四角形が等間隔で配列した反射層が等間隔に、例えば、四角形の左右方向の長さ(即ち幅)と等しい間隔を有して配列したことによる縞状のパターンであってもよいし、または、図1(b)に示すように、反射層が幾何学形状(図では長方形と星形)であってもよい。また、パターンは、以上のような具体的なパターンをポジパターンとするとき、それらのネガパターンであってもよい。なお、これらのパターンは例示であって、パターンは、主に意匠的な観点から自由に決めることができ、幾何学形状以外の文字や記号であってもよく、任意の形状であってよい。また、パターンをホログラム形成層のホログラムに同調させたものとしてもよい。ここで、同調とは、ホログラム絵柄と反射性パターン層の絵柄が一体となって1つの連続絵柄を形成していることをいい、一方、非同調とは、ホログラム絵柄と反射性パターン層の絵柄が一致していないことをいう。非同調の態様としては、反射性パターン層のパターン絵柄が連続絵柄となっているものや、ホログラム絵柄が連続絵柄になっているものがある。前述のように、反射性パターン層のパターンをホログラムの絵柄と同調させるには高度な技術を要するため、この技術を用いて形成された真偽判定用媒体の偽造防止効果はきわめて高い。
【0050】
パターンの大きさは、肉眼で解像し得るものであればよいが、光選択反射層が見る角度により色彩が変化することを観察する上で、例えば形状が四角形であれば、縦横が1mm×1mm以上とすることができ、好ましくは3mm×3mm以上であり、より好ましくは5mm×5mm以上である。幾何学形状の場合には、円形であれば、直径を1mm以上とすることができ、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とすることができ、そのほかの形状の場合には、内接円の直径を、例えば1mm以上とすることができ、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とすることができる。
【0051】
前記反射性パターン層は、図1(c)および(d)に示すように、微細パターン状に積層されていてもよい。この場合のパターン(微細パターン)は、図1(c)に示すように、下方の向かって左側から上方の向かって右側を向いた有限幅の線条からなる反射層が、幅方向に幅の2倍程度のピッチで配列した万線パターン状の微細パターンを構成したものであってもよく、または、図1(d)に示すように、円形状もしくは四角形状の微細な形状の反射層を等ピッチで配列したものであってもよい。
これらの微細パターンは例示であって、微細パターンを構成するパターン自体は、自由に決めることができるので、万線パターン状や網点状以外の幾何学形状、文字または記号等の形状のものであってもよい。微細パターンを構成するパターンの大きさは、通常の観察では観察しにくいか、または観察不可能な微細なものであることが好ましく、万線パターン状の場合、線の幅を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができる。前記パターンは、形成可能である範囲で小さくすることもできるが、実際上0.01mm程度以上であることが好ましい。網点が円形状の場合には、直径を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができ、0.01mm程度以上であることが好ましい。また、網点が四角形状の場合には、縦横を、例えば0.3mm×0.3mm以下、好ましくは0.1mm×0.1mm以下とすることができ、0.01mm×0.01mm程度以上であることが好ましい。そのほかの形状の場合には、内接円の直径を、例えば0.3mm以下、好ましくは0.1mm以下とすることができ、0.01mm程度以上とすることが好ましい。
【0052】
パターンが微細パターンであるときは、微細パターンを形成する区域の形状である外形パターン(図1(c)または(d)であれば、外形の四角形)も任意に設定することができ、この外形パターンをホログラム形成層のホログラムの絵柄に同調させたものとしてもよい。
【0053】
反射性パターン層が微細パターンを構成する場合、反射性パターン層の面積率は、例えば20%〜80%であり、好ましくは30%〜60%である。反射性パターン層が微細パターン状に形成されている場合、微細パターンがある区域、即ち、外形パターン内においては、ホログラムの絵柄を確認することもでき、光選択反射層の色彩が見る角度により変化することを確認することもできる。
【0054】
反射性パターン層を形成するための金属材料としては、Al、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Ge、Mg、Sb、Pb、Cd、Bi、Sn、Se、In、Ga、もしくはRb等の金属、またはそれら金属の酸化物もしくは窒化物等を用いることができ、これらのうちから1種もしくは2種以上を組み合わせ用いることができる。これらの中でも、Al、Cr、Ni、Ag、またはAu等が特に好ましく、その膜厚としては1nm〜10,000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜200nmである。
【0055】
可視光透過性を有する反射性パターン層を形成するための材料としては、ホログラム形成層を構成する素材と光の屈折率の異なる透明材料を用いることができる。この透明材料の光の屈折率はホログラム層を形成する素材の光の屈折率より大きくてもよいし、小さくてもよいが、ホログラム形成層との光の屈折率の差が0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.5以上であり、特に好ましくは1.0以上である。好適に使用される素材の具体例としては、酸化チタン(TiO2)、硫化亜鉛(ZnS)、Cu・Al複合金属酸化物等を挙げることができる。なお、厚みが20nm以下の金属薄膜も透明性を有するので、ホログラム層とは光の屈折率の異なる透明層を構成する素材として使用できる。
【0056】
反射性パターン層を形成する方法としては、種々の方法が挙げられる。例えば、パターンマスクを介して、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより薄膜形成を行う方法、印刷法等を用いることができる。また、反射性層を全面に形成した後、不要部分を除去する方法を用いることもできる。
【0057】
以下に、図2および3に基づき、反射性層を全面に形成した後、不要部分を除去することより反射性パターン層を形成する方法の一例を説明する。
図2は、反射性層のパターン化を水溶性樹脂パターンを利用して行う方法の説明図である。なお、図2および以降に説明する際に引用する図3においては、ホログラム形成層以外の層、例えば、光選択反射層、潜像パターン層等は省略する。
【0058】
図2(a)に示すように、まず、下面にホログラムの微細凹凸を有するホログラム形成層を作製する。
次に、図2(b)に示すように、ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面の反射性金属層が不要な部分に水溶性樹脂パターンを形成する。水溶性樹脂パターンの形成は、水溶性樹脂もしくは水膨潤性樹脂を溶解または分散した水溶性樹脂組成物、いわゆる水溶性インキを用いて印刷する等により行うことができる。
その後、図2(c)に示すように、水溶性樹脂パターンが形成された面の一面に反射性層を形成する。その後、反射性層が形成された面に、水または酸性もしくはアルカリ性の水溶液等を接触させて、水溶性樹脂パターンを除去すると共に、水溶性樹脂パターンが積層されていた部分の反射性層を除去することにより、図2(d)に示すように、水溶性樹脂パターンが積層されていなかった部分の反射性層が残り、反射性層がパターン状に形成される。
【0059】
図3は、反射性層のパターン化をレジストパターンを利用して行う方法の説明図である。
まず、図3(a)に示すように、下面にホログラムの微細凹凸を有するホログラム形成層を形成する。
次に、図3(b)に示すように、ホログラム形成層の微細凹凸が形成された面の一面に反射性層を形成する。
その後、図3(c)に示すように、反射性層の下面の、反射性層が必要な部分にレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンが形成された面にエッチング液を作用させ、レジストパターンで被覆された部分以外の部分の反射性層をエッチングして除去する。これにより、図3(d)に示すように、レジストパターンで被覆された部分の反射性層が残り、反射性層がパターン状に形成される。なお、パターン状に形成された反射性層上に残ったレジストパターンは、残したままでもよいが、除去したい場合には、残ったレジストパターンを溶解等すればよい。
【0060】
上記の水溶性樹脂パターンまたはレジストパターンを用いる方法は、同じパターンを有する真偽判定用媒体を量産する際に好適である。反射性層のパターン化は、上記の種々の方法以外にも、反射性層を部分的に加熱し、加熱された部分の反射性層を、サーマルヘッドによる加熱またはレーザー光の照射等により、溶融または蒸発させて除去する方法がある。この方法は、各層を積層した後にも行うことができ、また、どちらかと言うと、個別の情報に基づいたパターン化を行う際に好適である。
以上説明した反射性層をパターン化するための種々の方法は、任意に組み合わせて用いることができる。
【0061】
更に、本発明では、反射性パターン層上に、可視光透過性の反射層を更に積層することもできる。これにより、潜像パターンの背景の反射性がより高くなるため、偏光板を重ねると鮮明な像が現れ、真偽判定がより容易になるという利点がある。
【0062】
下地層
前記反射性パターン層のホログラム形成層を有する面とは反対の面上に下地層を設けることもできる。前述のように、ホログラム形成層が可視光透過性を有する場合、ホログラムによって遮断されることなく下地層の色を視認できるため、下地層に所望の色を付すことにより、光選択反射層の色彩との組み合わせによって多様な色調の真偽判定用媒体を得ることができる。また、下地層として着色層を設けることにより、光選択反射層やホログラムの視認性を高めることもできる。なお、下地層に文字や図形等のデザインを付すことも可能である。前記下地層は、後述する粘着層を構成する材料から形成することができる。いずれの場合も、顔料、染料等を適量添加することにより、所望の色調を有する下地層とすることができる。添加する顔料としては、グンジョウ、カドミウムエロー、ベンガラ、クロムエロー、鉛白、チタン白、カーボンブラックなどの無機顔料やアゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系、フタロシアニン系、その他の有機顔料を挙げることができ、染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、キサンテン染料、アリザリン染料、アクリジン染料、キノンイミン染料(アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料)、チアゾール染料、メチン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料などを挙げることができる。添加する染料、顔料の濃度は所望の色調に応じて調整することができる。
【0063】
本発明の真偽判定用媒体は、必要に応じて、前述の層以外の層を任意の位置に有してもよい。例えば、公知の保護層や各種機能層を有することもできる。
【0064】
本発明の真偽判定用媒体において、各層の厚さは適宜設定されるものであり特に限定されるものではないが、例えば、光選択反射層の厚さは、0.1〜30μm、潜像パターン層の厚さは、0.1〜20μm、ホログラム形成層の厚さは、0.1〜20μmである。また、基材、配向膜、下地層を設ける場合、基材の厚さは、例えば3〜250μm、配向膜の厚さは、例えば0.05〜20μm、下地層の厚さは、例えば0.1〜50μmとすることができる。
【0065】
[真偽判定用媒体ラベル、真偽判定用媒体転写シート]
更に、本発明は、本発明の真偽判定用媒体と、該真偽判定用媒体の前記真偽判定用媒体の潜像パターン層を有する面とは反対の面上に粘着層を有する真偽判定用媒体ラベルに関する。前記真偽判定用媒体ラベルは、本発明の真偽判定用媒体に粘着層を積層することによって作製することができる。前記粘着層は特に限定されず、アクリル系接着剤、天然ゴム系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーンゴム系接着剤等の公知の接着剤を用いて形成することができる。前記粘着層は、好ましくは感熱接着剤層または粘着剤層である。粘着層の厚さは、例えば0.1〜40μm程度とすることができる。前記粘着層は、前述の下地層の機能を兼ねることができるが、前述の下地層と別に粘着層を設けることもできる。
【0066】
更に、前記真偽判定用媒体ラベルには、使用時まで粘着層を保護するため粘着層上に剥離紙を設けることもできる。剥離紙としては、例えば、シリコン系樹脂、ワックス、パラフィン類等を紙またはフィルム等の基材塗工したものを用いることができる。真偽判定用媒体ラベルは、型抜き等で適当な大きさに切断して使用することができる。
【0067】
更に、本発明は、剥離性面を有する基材と本発明の真偽判定用媒体ラベルを有する真偽判定用媒体転写シートに関する。前記真偽判定用媒体転写シートにおいては、前記真偽判定用媒体ラベルの粘着層を有する面とは反対の面と、前記基材の剥離性面とが対向している。剥離性面を有する基材としては、公知のものを用いることができる。
【0068】
本発明の真偽判定用媒体ラベルおよび真偽判定用媒体転写シートは、種々の物品に適用することができる。前記ラベルは、粘着層を被着体となる物品側に向けて貼り付けることにより適用し、また、前記転写シートは、粘着層を被着体となる物品側に向けて接着させた後、基材を剥離することにより適用することができる。
【0069】
[真偽判定用媒体転写箔]
更に、本発明は、感熱性接着剤層、本発明の真偽判定用媒体および基材フィルムをこの順に有する真偽判定用媒体転写箔に関する。前記転写箔は、本発明の真偽判定用媒体の一方の面上に感熱性接着剤層を設け、他方に基材フィルムを設けることにより作製することができる。前記転写箔においては、前記感熱性接着剤層を反射性パターン層上に設け、前記基材フィルムを光選択反射層上に設けることが好ましい。前記転写箔は、前記感熱性接着剤層と被着体とを接触させて、基材フィルム側から熱をかけることにより、本発明の真偽判定用媒体と被着体とを接着することができる。
【0070】
前記基材フィルムとしては、熱転写の際に加わる熱や圧力に対して耐性を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリフッ化エチレン系フィルム、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリアミドフィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0071】
前記感熱性接着剤層は、公知の熱圧着性接着剤を用いて形成することができる。そのような接着剤としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよびその共重合体樹脂、セルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)等の熱可塑性樹脂を用いることができる。上記の中でも、180℃以下の温度でヒートシール可能な層であることが好ましく、さらにエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の酢酸含量25%以上のものを用いることが好ましい。
【0072】
前記転写箔は、基材フィルムと本発明の真偽判定用媒体との間に剥離層を有することもできる。これにより、熱圧着後に基材フィルムを除去することが可能となる。剥離層としては、例えばアクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、塩化ゴム、カゼイン、各種界面活性剤、金属酸化物等から、1種または2種以上を混合したもの等を用いることができる。上記の中でも、分子量20000〜100000程度のアクリル系樹脂単独、またはアクリル系樹脂と分子量8000〜20000の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂とからなり、さらに添加剤として分子量1000〜5000のポリエステル樹脂を1〜5重量%含有する組成物からなることが特に好ましい。また、前記剥離層は、上記基材フィルムと反射層との間の剥離力が1〜5g/インチ(90°剥離)となるようなものであることが好ましい。また、その厚みは剥離力、箔切れ等の面から、0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。
【0073】
本発明の真偽判定用媒体は、前述のようなラベル、シート、転写箔等の形態で種々の物品に適用することができる。本発明の真偽判定用媒体を適用する物品は、偽造、改ざん防止が求められる各種物品であることができる。具体的には、商品券、証券、株券、チケットなどの金券類、クレジットカード、プリペイドカード、IDカードなどの各種カード、切符、紙幣、パスポート、身分証明書、公共競技投票券、ビデオソフト、パソコン用ソフトなどに使用されている真偽判定シール、スレッド用紙などの漉き込み用紙であることができる。
【0074】
本発明の真偽判定用媒体は、真偽判定対象となる物品に視認可能に適用することができる。ここで、「視認可能」とは、真偽判定用媒体の存在を外部から認識できることをいう。図4に、本発明の真偽判定用媒体を視認可能に有する物品の具体例を示す。
【0075】
図4(a)は、表面の一部に本発明の真偽判定用媒体を有する、真偽判定可能な情報記録体である。情報記録体は、紙やプラスチックシート等を基材とするシート状物で、例えば図4(a)に示すように金券として利用するための金額、発行会社名、注意書等の文字、または彩紋等の情報が、印刷等の手段により形成され記録されたものである。
【0076】
図4(b)に示すものは、本発明の真偽判定用媒体をシート状物に予め内蔵させ、視認可能に構成したもので、紙やプラスチックシート等に貫通孔とはならない凹部状の開口部を形成し、開口部から真偽判定用媒体が見えるよう構成したものである。真偽判定用媒体は適用を容易にするため、例えば0.5mm〜5mm程度のごく狭い幅(図4(b)中縦長のスレッド状)に裁断されており、紙の場合であれば、紙を構成する数層を積層する際に、表層を構成する層に開口部を設けておき、シート状物の層間にスレッド状の真偽判定用媒体をはさむ等して適用することができる。スレッド状の真偽判定用媒体には、必要に応じて、円偏光照射時の視認性を高める目的で基材の片面等に暗色系等の着色を行い、また、シート状物に内蔵させた状態における、スレッド状の真偽判定用媒体とシート状物との接着性を確保するために、片面または両面に接着剤層、好ましくは感熱接着剤層を積層しておくとよい。このようなシート状物に真偽判定用媒体を適用したものは、情報記録体、特に金券やその他の経済的価値を有する印刷物に利用するのに適している。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により説明する。但し、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0078】
[実施例1]
(1)光選択反射層(コレステリック液晶層)の形成
PETフィルムを準備し、その一方の面の全面に、コレステリック液晶インキを塗布し、乾燥させてコレステリック液晶相を発現させた後、紫外線照射して、右円偏光のみを反射する厚みが2μmのコレステリック液晶層を形成した。
【0079】
(2)潜像パターン層の形成
上記PETフィルムの光選択反射層を形成した面とは反対の面に重合性ネマチック液晶インキを用いてグラビア印刷を行い、乾燥させた後、紫外線を照射することにより、文字および図柄を形成して厚み2μmの潜像パターン層を得た。
【0080】
(3)ホログラム形成層の形成
前記潜像パターン層上に、透明紫外線硬化性樹脂組成物を塗布し、レリーフホログラムの複製用型の型面を接触させたまま紫外線を照射して、透明紫外線硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、レリーフホログラムの形成を行った。
【0081】
(4)反射性パターン層の形成
前記のレリーフホログラムの賦型された面に、水溶性グラビアインキを用いてグラビア印刷機により反射性パターン層を形成したい部分以外の部分に印刷を行った。その後、印刷面全面にAl蒸着を行った後に水洗いすると、水溶性インキ層上のAl蒸着層は水溶性インキ層とともに除去された。これにより、厚みが400nmの反射性パターン層が形成された。
【0082】
[実施例2]
反射性パターン層の形成方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で真偽判定用媒体を作製した。
レリーフホログラムの賦型された面に、水溶性シルクインキを用いてシルク印刷機により原反の絵柄と同調するように反射性パターン層を形成したい部分以外の部分に印刷を行った。その後、印刷面全面にAl蒸着を行った後に水洗いすると、水溶性インキ層上のAl蒸着層は水溶性インキ層とともに除去された。これにより、厚みが400nmの反射性パターン層が形成された。
【0083】
[実施例3]
反射性パターン層の形成方法を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で真偽判定用媒体を作製した。
レリーフホログラムの賦型された面の全面にAl蒸着を行った後、Al蒸着面に原反の絵柄と同調するようにエッチング用レジストインキを用いて印刷を行った。この印刷されたシートを1%水酸化ナトリウム水溶液でアルカリエッチングした。これにより、レジストインキ層が存在する部分にAl蒸着が残り、その他の部分のAl蒸着が除去され、厚みが400nmの反射性パターン層が形成された。
【0084】
実施例1〜3において得られた真偽判定用媒体を、光選択反射層印刷面側から観察すると潜像はほとんど観察することはできなかったが、コレステリック液晶層の色彩変化は視認可能であった。また、ホログラムの絵柄も確認できた。
また、得られた真偽判定用媒体に右円偏光板を重ねたところ、コレステリック液晶層のらせんピッチに基づいて着色した明るい状態となった。ただし、この状態では潜像は観察されなかった。一方、左円偏光板を重ねて観察したところ、光選択反射層の色は消え、潜像をはっきり認識することができた。
また、右・左円偏光板の区別なく、見る角度によって潜像パターンの明暗(白黒)が変化し、下層に反射性パターン層が存在する部分で潜像パターンを確認することができた。更に、直線円偏光板を重ね該偏光板を回転させたところ、明暗(潜像パターンが明るく背景が暗いか、潜像パターンが暗く背景が明るいか)が変化した。
このように複雑な外観を示す真偽判定用媒体を形成することは容易ではないため、偽造防止に有効である。
【0085】
[実施例4]
実施例1において得られた真偽判定用媒体の反射性パターン層上に粘着加工により粘着層(透明または黒色)を設け、抜き加工を行い、真偽判定用媒体ラベルを得た。
【0086】
[実施例5]
実施例1において得られた真偽判定用媒体の反射性パターン層上にヒートシールを塗工して得られた転写シートを、紙やプラスチックカードに転写した。
【0087】
[実施例6]
実施例1において得られた真偽判定用媒体を、光選択反射層が表面側に位置するように紙に漉き込みスレッド用紙を得た。
【0088】
[実施例7]
実施例1において得られた真偽判定用媒体の反射性パターン層上に有色の下地層を設け、次いで光選択反射層が表面側に位置するように紙に漉き込みスレッド用紙を得た。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】反射性パターン層のパターンの一例を示す。
【図2】反射性層のパターン化の説明図である。
【図3】反射性層のパターン化の説明図である。
【図4】本発明の真偽判定用媒体を視認可能に有する物品の具体例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光のうち左円偏光および右円偏光のいずれか一方を反射する光選択反射性を有し、かつ可視光に対して透過性を有する光選択反射層、
可視光に対して透過性を有し、かつ入射光の回転方向が反転する潜像パターン層、
ホログラム形成層、ならびに、
反射性パターン層
をこの順に有する真偽判定用媒体。
【請求項2】
前記ホログラム形成層は可視光透過性を有する請求項1に記載の真偽判定用媒体。
【請求項3】
前記光選択反射層は、コレステリック液晶層である請求項1または2に記載の真偽判定用媒体。
【請求項4】
前記光選択反射層は、少なくとも一部がパターン状である請求項1〜3のいずれか1項に記載の真偽判定用媒体。
【請求項5】
前記潜像パターン層は、スメクチック液晶層またはネマチック液晶層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の真偽判定用媒体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の真偽判定用媒体と、該真偽判定用媒体の前記真偽判定用媒体の光選択反射層を有する面とは反対の面上に粘着層を有する真偽判定用媒体ラベル。
【請求項7】
剥離性面を有する基材と請求項6に記載の真偽判定用媒体ラベルを有する真偽判定用媒体転写シートであって、
前記真偽判定用媒体ラベルの粘着層を有する面とは反対の面と、前記基材の剥離性面とが対向する、前記真偽判定用媒体転写シート。
【請求項8】
感熱性接着剤層、請求項1〜5のいずれか1項に記載の真偽判定用媒体、および基材フィルムをこの順に有する真偽判定用媒体転写箔。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の真偽判定用媒体を視認可能に有する物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−83268(P2008−83268A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261634(P2006−261634)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】