真性赤血球増加症に関与するJAK2の変異の識別方法
本発明は、真性赤血球増加症の原因となっている、JAK2チロシンキナーゼタンパク質のV617F変異体に関するものである。また、本発明は、赤血球増加症と血小板増加症を骨髄増殖症候群に関連付けることを可能にする、赤血球増加症および血小板増加症の一次診断方法、すなわち、赤血球増加症と血小板増加症を新たな疾病群に再分類することを可能にする、骨髄増殖症候群におけるJAK2 V617F変異体の検出にも関するものであり、そして、特異的阻害剤とsiRNAの識別にも関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真性赤血球増加症の原因となっている、JAK2チロシンキナーゼタンパク質のV617F変異体に関するものである。また、本発明は、赤血球増加症と血小板増加症を骨髄増殖症候群に関連付けることを可能にする、赤血球増加症および血小板増加症の一次診断方法、すなわち、赤血球増加症と血小板増加症を新たな疾病群に再分類することを可能にする、骨髄増殖症候群におけるJAK2 V617F変異体の検出にも関わるものであり、そして、特異的阻害剤とsiRNAの識別にも関わるものである。
【背景技術】
【0002】
真性赤血球増加症(Polycythemia VeraすなわちPV)は、慢性骨髄増殖症候群のひとつであり、該慢性骨髄増殖症候群は、真性赤血球増加症を、またしばしば血小板増加症および白血球増加症を伴う。それは、造血幹細胞のクローン性の後天性疾患である。PVの造血前駆細胞はエリスロポエチン(Epo)の不在下で、「自然発生コロニー」と呼ばれる赤芽球コロニーを形成する能力がある。インターロイキン3(IL−3)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)およびインスリン様成長因子(IGF−1)など、その他のいくつかの成長因子に対する、PVの造血前駆細胞の過敏性も証明されている。いくつかのチームがPVの生理病理学に関心を寄せているが、疾患の原因である分子異常は今日でも未知のままである(H.Pahl,2000)。
【0003】
いくつかのサイトカインに対するPVの前駆細胞の過敏性により、サイトカイン受容体に共通のシグナル伝達経路における異常を検査することができる。PVにおいては分子マーカーの存在はかつて証明されたことがないが、PVとその他の骨髄増殖症候群との間にある類似性、特にLMCとの間にある類似性を考慮すると、Bcr−Ablによって誘発されるものに近い分子メカニズムが、とりわけ悪性クローンの増殖とその最終分化の原因になっていると考えられる。この仮説は近年、二つの珍しい骨髄増殖症候群において確証が得られており、その一つは、FGF受容体の構成的活性化を誘発する8p11染色体領域における転座に関連する骨髄増殖症候群であり、もう一つは、潜在性の染色体の欠失によりキメラ遺伝子PDGFRα−FIP1L1が生じる好酸球増加症候群である。両方の場合において、分子異常により、構成的なチロシンキナーゼ活性を有する融合タンパク質が生じる。
【0004】
患者の10%〜15%で20qの欠失が検出され、約30%のケースで9pのヘテロ接合性の消失が検出されても、PVにおいて再発性の細胞遺伝学的異常が見られたことはない(Kralovics,2002)。しかし、これらの異常は当該疾患に特異的なものではない。
【0005】
PV細胞がEpoに依存していないため、Epo受容体(Epo−R)経路に対する研究が行われてきた。まず、受容体は構造レベルでも機能レベルでも正常である(Hess et al.,1994、Le Couedic et al.,1996、Means et al.,1989)。Epoによる刺激が止まるとEpo−RとJAK2を脱リン酸化するフォスファターゼSHP−1は、通常、RNAとタンパク質のレベルで発現する(Andersson et al.,1997、Asimakopoulos et al.,1997)。Epo−Rのシグナル伝達のさらに下流では、PVを示す患者の多核球(PNN)においてSTAT5の異常な活性化が研究されたが、異常は発見できていない。逆に、STAT3の構成的リン酸化が、研究された14例中4例のPVのPNNで明らかにされた(Roder,2001)。最後に、STAT5の転写標的である、抗アポトーシスタンパク質bcl−xlの発現が、免疫組織化学およびフローサイトメトリーで研究されている(Silva et al.,1998)。そして、bcl−xlがPVの赤芽球で高発現すること、とりわけ、通常このタンパク質が発現しなくなる、より成熟した段階で高発現することが示された。
【0006】
真性赤血球増加症において、主要な診断基準は現在、臨床的なものである(PVSG基準、Pearson,2001)。生物学的診断は、主としてEpoの不在下での、赤血球前駆細胞の培養の実施に基づいている(内因性コロニーの検出)。その良好な実施に専門技術が必要であることと、多くの「技術者の時間」が費やされることから、この試験はすべてのセンターで可能なわけではなく、経験を積んだ研究所によって実施されるときにだけ信頼できるものである。さらに、良好な感度を得るために、この試験は患者から採取した骨髄細胞に対して行う必要があり、これは患者にとって無害とは言えない。
【0007】
サブトラクティブハイブリダイゼーション法により、ドイツの研究グループが、PRV1(Polycythemia Rubra Vera 1)と呼ばれる、PVのPNNで高発現した遺伝子をクローニングしている(Temerinac et al.,2000)。PRV−1タンパク質は表面受容体uPARのスーパーファミリーに属している。PVの多核球においてPRV−1をコードしているmRNAの高発現はリアルタイムRT−PCRによって容易に検出可能であり、近年発見された疾患の、生理病理学的役割のないマーカーを構成する。しかし、最近公刊された研究では、それは特に感度が良いわけでも特異的でもないことが示されている。
【0008】
Spivak JL et al.,2003(「Chronic myeloproliferative disorders」;Hermatology;2003;200 24.)では、いくつかのPVマーカーが記載されている。好中球抗原NBI/CD177のmRNAはPV患者の顆粒球において過剰発現する。しかし、患者の中にはこの過剰発現を示さないものもおり、また、この過剰発現が真性赤血球増加症以外の骨髄増殖症候群の患者でも観察されうるため、このマーカーはPVを検出するための信頼できる手段とは考えられない。血小板上のトロンボポエチン受容体Mplの発現が少ないこともPVでは認められている。この異常はPVで支配的だが、その他の骨髄増殖症候群でも見られる。ほかにも、専門の研究所でしか実施できない、実現が難しい試験もある。
【0009】
このように、従来技術では、信頼できるPV診断を可能にする方法はない。また、利用可能な治療も特異的なものではない。正常範囲内にヘマトクリット値を維持するための瀉血、細胞毒性薬の使用あるいはIFNの使用が問題となる。
【特許文献1】国際公開第02/44321号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/44895号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の枠組みにおいて、我々は試験した患者の約90%においてJAK2遺伝子に変異を発見しただけではなく、この変異が、このチロシンキナーゼの構成的活性の原因であることも明らかにし、そして、該変異を阻害することによって、PV赤芽球の自然発生的な増殖と分化を妨げることが可能になることを証明した。
【0011】
JAK2はJanusキナーゼファミリー(JAK)に属し、該ファミリーは、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2という複数の細胞質内チロシンキナーゼからなる。JAKタンパク質は多くの膜受容体の細胞内シグナル伝達に関与するものであり、該膜受容体は、サイトカイン受容体スーパーファミリーのいくつかのメンバー、特にEpo受容体(Epo−R)のように、内在的なチロシンキナーゼ活性を有していない。JAK2タンパク質は23個のエクソンを含んだ遺伝子によってコードされている。相補的DNAは3500塩基対のサイズを有し、1132個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする(130kD)(図1)。我々はPCRとシーケンシングによって、PV患者の90%近くにおいてJAK2のエクソン12でクローン性の後天的な点変異を識別した。通常バリン(V)をコードしているコドン617「GTC」が、フェニルアラニン(F)をコードする「TTC」に変異している。この変異V617Fは、25人の対照または試験した二次性赤血球増加症患者では見られなかった。逆に、本態性血小板増加症の40%と骨髄線維症の50%では観察され、したがって、この変異は、Bcr−Ablが慢性骨髄性白血病を定義したように、骨髄増殖症候群の新たな枠を定義するものである。
【0012】
本発明によるJAK2 V617F変異体を、血液学における診断研究所で従来的に用いられている広く普及した手段で効果的に検出することができるかどうか調べるために、我々は骨髄増殖症の疑いのある患者に由来する119のサンプルを分析した。JAK2 V617FがLightCycler(登録商標)法とTaqMan(登録商標)法によって効果的に検出されることが示されたが、これらの技術はシーケンシングよりわずかに感度が良いものである。次に我々は、51%を超えるヘマクリット値を有する88人の患者において一次診断試験としてJAK2 V617Fの検出値を算定し、変異が、赤血球増加症において100%の陽性的中率で、WHO基準(R=0.879)とPVSG基準(R=0.717)にしたがったPV診断に対応することを示した。これらのデータに基づいて我々は、赤血球量の測定、骨髄の吸引および内因性赤血球コロニーの形成のインビトロでの分析の実施を避けるべく、顆粒球におけるJAK2 V617Fの検出を赤血球増加症患者の一次診断試験としてみなすべきであることを提案する。また、この検出は骨髄増殖症候群の全体あるいはそれらの疑いに対する一次診断にまで広げることができるものである。この検出は、骨髄増殖症候群を確認するための確実な生物学的試験が存在しない慢性血小板増加症においても特に重要となるものである。また、この検出は骨髄線維症の診断において重要な検査となるものであり、不確定な病因による血栓症に関連する臨床所見に適用することができるものである。
【0013】
このように、本発明は第一に診断手段をもたらし、PVとこの変異に関連する骨髄増殖症候群を対象とする治療に至る道筋を開くものである。より特定的には、我々はJAK2 V617F変異の検出を赤血球増加症の枠組みにおける一次診断試験として提案し、このことによって、大半の患者および慢性血小板増加症における、骨髄の吸引ならびに赤血球と内因性赤血球細胞(EEC)の量の測定を避けることが可能になり、このことによって長期の病因調査を避けることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このように、第一の特徴として、本発明は単離したJAK2(Janusキナーゼ2)タンパク質、特にヒトJanusキナーゼ2タンパク質(NCBI寄託番号NM_004972、GI:13325062)に関するものであり、該タンパク質は、617番アミノ酸(cDNAの、ATGから数えて617番目のコドン)における変異、より特徴的にはV617F変異を含んでおり、以下ではJAK2 V617F変異体と称し、以下のSEQ ID No1で示される。
【0015】
SEQ ID No1(V617FヒトJanusキナーゼ2すなわちJAK2 V617F)
【0016】
また、本発明は他の哺乳動物の617位が変異したこのタンパク質の等価物、たとえば、ラット(NM_031514)、ブタ、マウス(NM_008413)などの他の哺乳動物のJAK2 V617Fも目的とし、また、変異体の活性および3D構造に影響を与えない一つまたは複数の修飾をさらに含んだ、SEQ ID No1の変異体も目的としている。
【0017】
また、本発明はSEQ ID No1をコードするヌクレオチド配列、好ましくはSEQ ID No2(コドン617においてGTCの代わりにコドンTTCを有する(以下G1849Tと称する、翻訳開始を示すATGから数えて1849位におけるg/t変異)ヒトJAK2遺伝子配列)も対象としている。
【0018】
この配列は、ウイルスベクターまたはプラスミドベクター、あるいは哺乳動物の細胞で有効なプロモーターの制御下にある裸DNAに存在しうるものである。したがって、本発明はJAK2 V617Fタンパク質を発現するベクターにも及ぶものである。本発明のベクターはクローニングベクターおよび/または発現ベクターとすることができ、また、宿主細胞、とりわけ哺乳動物の細胞、好ましくはヒトCD34+前駆細胞をトランスフェクトするために用いることができる。
【0019】
PVおよびその他の骨髄増殖症候群のトランスジェニック動物モデル
【0020】
本発明はまた、組換えJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物も対象とする。この動物は、好ましくはマウスまたはラットとすることができる。モデルとして用いられるトランスジェニックのラットまたはマウスは、当業者によって一般的に用いられているあらゆる方法、とりわけ、相同組換えまたはCre−LoxPもしくはFLP−FRTシステムでの部位特異的組換えによってES細胞にノックイン(標的位置への配列の挿入)することで得ることができる。本発明の好ましい実施態様によると、本発明によるトランスジェニック細胞は、宿主細胞のゲノムの一つまたは複数の配列でのJAK2 G1849T変異体の遺伝子ターゲッティングによって得られる。より詳細には、導入遺伝子は、宿主細胞のゲノムの相同配列の相同組換えにより安定した方法で挿入される。トランスジェニック動物を産生するためのトランスジェニック細胞を得ようとする場合、宿主細胞は好ましくは胚性幹細胞(ES細胞)である(Thompson et al.,1989)。遺伝子ターゲッティングは、標的とする内因性配列と配列の相同性を有している外来DNA配列での相同組換えによる、染色体座の部位特異的な修飾である。さまざまなタイプの遺伝子ターゲッティングがある。ここでは、遺伝子ターゲッティングは特に、野生型JAK2遺伝子をJAK2 G1849T変異体の遺伝子または遺伝的に類似した他のあらゆる変異体で置換するために用いることができる。この場合、遺伝子ターゲッティングは「ノックイン」(K−in)と呼ばれる。あるいは、遺伝子ターゲッティングは、野生型JAK2の発現を減らすかまたは消失させてJAK2変異体の遺伝子を導入するために用いることができる。このとき遺伝子ターゲッティングは「ノックアウト」(KO)と呼ばれる(Bolkey et al.,1989参照)。本発明による細胞は、導入遺伝子が安定してその細胞のゲノムに組み込まれることと、その発現が内因性遺伝子の調節エレメントによって制御されることを特徴としている。安定した組み込みとは、導入遺伝子を本発明による細胞のゲノムDNAに挿入することを意味する。このように挿入された導入遺伝子は、次に細胞の子孫に伝わる。導入遺伝子の組み込みは、標的である内因性JAK2遺伝子の上流、下流、または中心で行う。任意で、一つまたは複数の正の選択または負の選択の遺伝子を用いることができる。また、レポーター遺伝子部分の両側または挿入すべき完全配列の両側に位置している好ましくは二つの標的遺伝子座と相同的なDNA領域を用いることができる。「相同的なDNA領域」とは、最適なアラインメントの後および比較の後に、通常少なくともおよそ90%〜95%のヌクレオチドが同一であり、好ましくは、少なくともおよそ98%〜99.5%のヌクレオチドが同一である二つのDNA配列を意味する。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman(1981)による局所的相同性アルゴリズム、Neddleman and Wunsch(1970)による局所的相同性アルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)による類似性検索法、これらのアルゴリズムを用いるソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Packageの中のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTAおよびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)を用いて行うことができる。細菌および哺乳動物の細胞における相同組換えを行うためには14bpが100%相同であれば十分であるが、より長い相同配列の部分が好ましい(一般的にはこれらの部分は相同配列の各部分について少なくとも2000bpであり、好ましくは少なくとも5000bpである)。好適には、JAK変異体の配列は内因性型の調節を確実にするエレメントの一群、すなわち、少なくとも内因性JAK遺伝子のプロモーター、調節配列(エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター)、終結シグナルを含んだ一群に挿入される。
【0021】
特徴的な実施態様によると、JAK G1849T導入遺伝子は、少なくともコード配列と、レコンビナーゼの作用に対して特異的な部位に挟まれた、または挟まれていない正の選択のカセット、たとえば、前記配列の5’位に存在することができるLox/Neo−TK/Loxまたはlox/Neo/loxまたはFRT/Neo−TK/FRTまたはFRT/Neo/FRTカセットを有しており、たとえば一つまたは複数のDTA遺伝子および/またはTK遺伝子を含む負の選択のカセットが導入遺伝子の末端の少なくとも一方に存在していることを特徴としている。本発明の導入遺伝子は、好ましくは動物細胞に天然に存在している外来のDNA配列に直接由来する。この天然の形態のDNA配列は、たとえばクローニングに必要な制限酵素認識部位を挿入すること、および/または、部位特異的組換えの部位(lox配列およびflp配列)を挿入することで修飾することができる。
【0022】
このために、JAK2 G1849T変異体は、宿主細胞内でのその増殖を確実にすることができるクローニングベクターに、および/または任意には、導入遺伝子の発現を確実にすることができる発現ベクターにクローニングすることができる。本発明によるクローニングベクターおよび/または発現ベクターを構築するために用いられるDNA組換え技術は当業者に知られているものである。標準的な技術がクローニング、DNAの単離、増幅、および精製に用いられ、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼに関わる酵素反応は製造者の推薦にしたがって実施される。これらの技術およびその他の技術はほとんどの場合Sambrook et al.,(1989)にしたがって行われる。ベクターは、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YAC、BAC、HACのような人工染色体、ならびにその他の類似のベクターを含んでいる。
【0023】
本発明によるトランスジェニック細胞を生成するための方法はGordon et al.,1989に記載されている。哺乳動物の細胞をトランスフェクトするためのさまざまな技術がKeon et al.,1990によって概説されている。線状化されたもしくはされていないベクター、またはベクター断片の形状のものに任意で含まれる、本発明による導入遺伝子は、たとえば核へのマイクロインジェクション(米国特許第4873191号明細書)、リン酸カルシウム沈殿によるトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション(Lo,1983)、熱ショック、陽イオンポリマー(PEG、ポリブレン、DEAE−デキストランなど)による形質転換あるいはウイルス感染(Van der Putten et al.,1985)といった標準的な方法によって宿主細胞に導入することができる。
【0024】
細胞が導入遺伝子によって形質転換されると、細胞はインビトロで培養することができ、あるいは、ヒトではないトランスジェニック動物を産生するために用いることができる。形質転換後、細胞を培養層および/または適切な培地に播種する。構築物を含んだ細胞は選択培地を用いて検出することができる。コロニーが生じるのに十分な時間の後、コロニーを回収し、相同組換えおよび/または当該構築物の組み込みが生じているかどうか判定するために分析する。相同組換えをしていると考えられるクローンのスクリーニングを行うために、選択遺伝子と呼ばれる陽性および陰性のマーカーを相同組換えベクターに挿入することができる。相同組換えが生じた細胞を選択するさまざまなシステムが説明されている(米国特許第5627059号明細書参照)。本発明による前記陽性選択遺伝子は、好ましくは抗生物質耐性遺伝子から選択される。抗生物質としては、網羅的ではないが、ネオマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、フレオマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコール、カルベニシリン、ジェネティシン、ピューロマイシンを挙げることができる。これらの抗生物質に対応する耐性遺伝子は当業者には知られており、たとえばネオマイシン耐性遺伝子は、培養培地における抗生物質G418の存在に対する耐性を細胞に付与する。また、陽性の選択遺伝子はHisD遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はヒスチジノールである。また、陽性の選択遺伝子はグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GpT)遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はキサンチンである。また、陽性の選択遺伝子はヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はヒポキサンチンである。相同組換えを同定することを可能にするために用いられる一つまたは複数の選択マーカーは、後に遺伝子発現に影響を与えることがあり、必要であれば、Lox部位に特異的なCreリコンビナーゼ(Sauer,1994、Rajewsky et al.,1996、Sauer,1998)またはFRT部位に特異的なFLPリコンビナーゼ(Kilby et al.,1993)といった部位に特異的なリコンビナーゼを利用することで除去することができる。
【0025】
陽性のコロニー、すなわち少なくとも一つの相同組換えが生じている細胞を含んだコロニーは、サザンブロット法および/またはPCR法による分析で識別する。単離細胞または本発明によるトランスジェニック動物の細胞における、導入遺伝子に対応するmRNAの発現レベルは、ノーザンブロット法による分析、in situハイブリダイゼーション法による分析、RT−PCR法による分析を含む技術によって判定することもできる。同様に、導入遺伝子を発現している動物細胞または動物組織は、レポータータンパク質に対する抗体を用いて識別することができる。次に、陽性細胞は、胚の操作、とりわけ修飾された細胞を相同組換えによって胚盤胞内へ注入するために用いることができる。
【0026】
マウスでは、胚盤胞は4〜6週齢の過剰排卵した雌から得る。細胞をトリプシン処理し、修飾された細胞を胚盤胞の胞胚腔に注入する。注入後、胚盤胞を偽妊娠した雌の子宮角に導入する。次に、雌が満期に達するまで待ち、構築物を有する変異細胞の存在を判定するために、得られた子を分析する。産まれた胎児の細胞と胚盤胞細胞あるいはES細胞との間での異なる表現型を分析することで、キメラの新生児を検出することが可能となる。そして、キメラの胎児を成体まで育てる。キメラまたはキメラ動物は、細胞の一つの亜集団のみに改変したゲノムが存在する動物である。一つまたは複数の修飾された遺伝子を有するキメラ動物は、一般的にはそれらの間でまたは野生型の動物と交配させることで、ヘテロ接合またはホモ接合の子を得ることができる。次に、ヘテロ接合の雄と雌を交配することで、ホモ接合動物を作成する。指示しない限り、本発明によるヒトではないトランスジェニック動物は生殖系列細胞のヌクレオチド配列の安定した変化を含んでいる。
【0027】
本発明のもう一つの実施態様によると、本発明によるヒトではないトランスジェニック細胞は核の移動すなわち核移植の枠組みにおける核のドナー細胞として利用することができる。核移植とは、脊椎動物の成体個体または胎児段階の個体の生きたドナー細胞の核を、同種または異種の除核したレシピエント細胞の細胞質に移すことを意味する。移植された核はクローン胚の成長を導くように再プログラムされ、続いて該クローン胚は胎児および新生児を産生するために受胚雌に移植することができ、あるいは、培養で内細胞塊の細胞を産生するために用いることができる。核クローニング用のさまざまな技術を用いることができ、該技術の中では、網羅的ではないが、特許出願の対象となっている国際公開第95/17500号パンフレット、国際公開第97/07668号パンフレット、国際公開第97/07669号パンフレット、国際公開第98/30683号パンフレット、国際公開第99/01163号パンフレットおよび国際公開第99/37143号パンフレットを挙げることができる。
【0028】
このように、本発明はJAK2 V617Fをコードする組換え配列を含んだ、ヒトではないトランスジェニック動物にまで及ぶものである。これらの動物はホモ接合体あるいはヘテロ接合体(JAK2 V617F/JAK2 V617FあるいはJAK2 V617F/JAK2)でありうる。これらの動物は、とりわけ真性赤血球増加症を再現するが、JAK2 V617Fによって誘発されるあらゆる骨髄増殖症候群も再現する。したがって、該動物によってチロシンキナーゼ阻害剤を機能的にスクリーニングすること、とりわけJAK2 V617Fに特異的な阻害剤のスクリーニングを行うことが可能になる。
【0029】
もう一つの変形例は、真性赤血球増加症またはその他の骨髄増殖症候群のモデルを実現させるために、JAK2 V617F変異体を発現する能力を有するウイルスベクター(レトロウイルスまたはレンチウイルスまたはその他)を造血細胞株、前駆細胞またはES細胞に注入することで構成することができる。
【0030】
診断手段
第三の特徴として、本発明は、骨髄増殖症候群に冒された、あるいは骨髄増殖症候群を示す可能性のある哺乳動物において、とりわけ赤血球増加症を示す患者または真性赤血球増加症、血小板増加症および/もしくは骨髄線維症の兆候を示している疑いのある患者において、JAK2 V617F変異の有無を検出することを可能にする診断手段を目的としている。
【0031】
そのため、本発明は、以下に記載した配列SEQ ID No2における変異の有無の検出を可能にするプライマーおよびプローブに関わるものである。より特徴的には、本発明は、エクソン12または以下の配列SEQ ID No3または4の連続した少なくとも10個、12個、15個、20個、30個、40個または50個のヌクレオチドの配列(たとえば10〜30個のヌクレオチドまたは10〜25個のヌクレオチド)を有し、また変異ヌクレオチドt1849を含む、たとえば10〜30個のヌクレオチドの単離された核酸にも関するものである。
【0032】
【0033】
下線を引いた配列は、1849位における変異に特異的なプローブまたはプライマーの設計を可能にする上流または下流の領域の一例を示している(SEQ ID No4)。
【0034】
本発明のさまざまな好ましいプライマーおよびプローブの例
【0035】
DNA、PCRプライマー:
JAK2エクソン12−PCRF センス 5’−GGGTTTCCTCAGAACGTTGA−3’(54804−54823)(SEQ ID No5)
JAK2エクソン12−PCRR アンチセンス 5’−TTGCTTTCCTTTTTCACAAGA−3’(55240−55260)(SEQ ID No6)
【0036】
DNA、シーケンシングプライマー:
JAK2エクソン12SEQF センス 5’CAGAACGTTGATGGCAGTTG−3’(54813−54832)(SEQ ID No7)
JAK2エクソン12SEQR アンチセンス 5’TGAATAGTCCTACAGTGTTTTCAGTTT−3’(55207−55233)(SEQ ID No8)
【0037】
cDNA、PCRプライマーおよびシーケンシングプライマー:
センス 5’−CAACCTCAGTGGGACAAAGAA−3’(1386−1407)(SEQ ID No9)
アンチセンス 5’−GCAGAATATTTTTGGCACATACA−3’(2019−2041)(SEQ ID No10)
【0038】
SNPSプローブ、変異検出プローブおよびsiRNAプローブ(1829−1870):
TTTTAAATTATGGAGTATGTGTCTGTGGAGACGAGAATATTC(SEQ ID No11)
【0039】
LightCyclerでの遺伝子型決定(PNNまたは骨髄のDNA)
オリゴ「S」(センス) GGCAGAGAGAATTTTCTGAAC(SEQ ID No15)
オリゴ「R」(アンチセンス) GCTTTCCTTTTTCACAAGATA(SEQ ID No16)
センサーwt GTCTCCACAGACACATACTCCATAA3’−FL(SEQ ID No17)
アンカーJAK2 5’−LC Red640AAAACCAAATGCTTGTGAGAAAGCT3’−PH(SEQ ID No18)
【0040】
LightCyclerでの遺伝子型決定(たとえば血小板のcDNA)
cJAK2F GCACACAGAAACTATTCAGAGTC(SEQ ID No19)
cJAK2S AGCAGCAAGTATGATGAGC(SEQ ID No20)
cJAK2A CTAGTGATCCAAATTTTACAAACT(SEQ ID No21)
cJAK2R GTTTAGCAACTTCAAGTTTCC(SEQ ID No22)
センサーwt GTCTCCACAGACACATACTCCATAA3’−FL(SEQ ID No23)
アンカーJAK2 5’−LC Red640AAAACCAAATGCTTGTGAGAAAGCT3’−PH(SEQ ID No24)
【0041】
Taqman法による遺伝子型決定(たとえば骨髄の単核細胞のDNAにおいて)
対立遺伝子に特異的な蛍光プローブおよび一本鎖DNAによる認識
PCR反応
センスプライマー配列:AAGCTTTCTCACAAGCATTTGGTTT(SEQ ID No25)
アンチセンスプライマー配列:AGAAAGGCATTAGAAAGCCTGTAGTT(SEQ ID No26)
リポーター1配列(VIC):TCTCCACAGACACATAC(SEQ ID No27)
リポーター2配列(FAM):TCCACAGAAACATAC(SEQ ID No28)
【0042】
その他の特徴として、本発明は、サンプルにおけるJAK2 V617F変異の有無を検出することを可能にするインビトロまたはエクスビボでの診断方法にも関するものである。
【0043】
本発明の核酸を用いた試験
【0044】
第一の実施態様において、G1849T変異体(JAK2 V617F変異に対応する)はJAK2遺伝子の核酸分子の分析によって検出することができる。本発明の範囲において、「核酸」とはmRNA、ゲノムDNAあるいはmRNAから派生したcDNAを意味する。
【0045】
G1849T変異体の核酸の有無は、シーケンシング、増幅ならびに/または、上述した特異的プローブおよび特異的プライマー、つまりSEQ ID No3または4、およびSEQ ID No5〜11、あるいはSEQ ID No15〜24に由来する配列とのハイブリダイゼーションによって、検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
したがって、本発明は、PV患者またはPVもしくは他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症を発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのエクスビボまたはインビトロでの方法を提案するものであり、該方法は、
a)患者の核酸のサンプルを得ること、
b)前記核酸のサンプルにおけるJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0047】
核酸のサンプルはどのような細胞源または組織生検からも得ることができる。これらの細胞は造血性のものに由来する必要があり、循環血液、造血組織または血液細胞が入ったあらゆる液体から得ることができる。DNAは、Sambrook et al.(1989)に記載されている方法のような、従来技術で知られているあらゆる方法を用いて抽出することができる。またRNAも、たとえば生検時に得られる組織などから、グアニジウムチオフェネート−フェノール−クロロホルムによる抽出のような、当業者によく知られている標準的な方法を用いて単離することができる。
【0048】
JAK2遺伝子のG1849T変異体は、RNAまたはDNAのサンプルにおいて、好ましくは増幅後に検出可能である。たとえば、変異部位に特異的なオリゴヌクレオチド、あるいは、たとえばエクソン12またはSEQ ID No3もしくは4のような変異を含む領域を増幅することを可能にするオリゴヌクレオチドを用いるRT−PCR反応のように、単離されたRNAを逆転写にかけ、次に増幅することができる。「オリゴヌクレオチド」という表現は、ここでは少なくとも10個、好ましくは15〜25個のヌクレオチド、好ましくは100個未満のヌクレオチドからなる核酸を指すために用い、JAK2のゲノムDNA、cDNAまたはmRNAとハイブリダイズする能力がある。
【0049】
本発明のオリゴヌクレオチドは、放射性標識、蛍光標識または酵素標識などの当業者に知られたあらゆる技術によって標識することができる。標識されたオリゴヌクレオチドはJAK2遺伝子のV617F変異体の有無を検出するためのプローブとして用いることができる。
【0050】
このように、本発明で有効なプローブおよびプライマーは1849位(転写開始を示すATGからのナンバリング)のヌクレオチドの近くでJAK2遺伝子の領域と特異的にハイブリダイズするものである。
【0051】
上述した方法において、核酸は対立遺伝子の変異の検出前にPCRで増幅することができる。対立遺伝子の変異の検出方法は、たとえば「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」第二版、Sambrook、Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory,1989)、およびU.Landegren編、Laboratory Protocols for Mutation Detection,Oxford University Press,1996、およびNewton & GrahamによるPCR第2版、BIOS Scientific Publishers Limited,1997で説明されている。
【0052】
したがって、増幅過程の後に、目的の変異体の有無に応じてサンプルを選別することを可能にする検出過程を組み合わせることが可能である。
【0053】
このために採用されるさまざまな技術は欧州特許第1186672号明細書に示されており、該技術とはたとえば、DNAシーケンシング、SSCP、DGGE、TGGEのハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ヘテロ二本鎖分析、CMC、酵素によるミスマッチの切断、「ハイブリダイゼーションベースの固相ハイブリダイゼーション」、DNAチップ、Taqman(登録商標)液相ハイブリダイゼーション(米国特許第5210015号明細書および米国特許第5487972号明細書)、ならびにRFLP法などである。
【0054】
検出は、FRET、蛍光消光、偏光蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能および比色分析法といったその他のさまざまな方法を用いて行うことができる。
【0055】
本発明による方法は、サンプルを得ることおよびそのサンプルの核酸を抽出することからなる過程を含んでいてもいなくてもよい。
【0056】
上述したように、用いるサンプルは個体から得られた血液もしくは他のあらゆる体液または組織とすることができる。核酸の抽出過程および精製過程の後、上述したプライマーを用いたPCR増幅をシグナルの検出を向上させるために用いることができる。
【0057】
このように、本発明による方法は前記プライマーを用いた増幅過程と、その後に続く、ハイストリンジェンシーの条件の下で上述したG1849T変異領域に対応する配列とハイブリダイズする少なくとも一つのプローブ、好ましくは二つのプローブとのハイブリダイゼーション過程、そして前記プローブの標識によって生成したシグナルの検出を含むことができる。
【0058】
たとえば、本発明はより特徴的には、PV患者、またはPVもしくは他のあらゆる骨髄増殖症候群を発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのインビトロでの方法を目的とし、該方法は、JAK2遺伝子のG1849T変異に特異的な一つまたは複数のSNP(一塩基変異多型)、とりわけSEQ ID No17と18、あるいは、23と24を用いて、前記核酸のサンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出することを含むものであり、G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0059】
SNPを用いたこの検出は、対立遺伝子の識別を可能にするTaqman(登録商標)法によって実施することができる。基本的に、この方法は一本鎖DNAにおけるJAK2を1849対立遺伝子に特異的な蛍光プローブによって認識することで構成され、PCR反応(5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼによる)、ハイブリダイズしたSNPの対立遺伝子に特異的な蛍光発光の検出、最終的な蛍光を読み取ることによる遺伝子型の決定(ホモ接合変異DNA、ヘテロ接合変異DNAおよび正常DNAのクラスタを示す画像の取得)を含んでいる。
【0060】
JAK2 V617F変異タンパク質の検出
【0061】
もう一つの実施態様によると、変異体はJAK2タンパク質内で直接検出することができる。
【0062】
そのために、本発明は、PVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症に冒された、またはこれらを発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2 V617F変異体の有無を検出するためのエクスビボあるいはインビトロでの方法を目的とし、該方法は、
a)患者のサンプルを得ること、
b)JAK2 V617F変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
前記変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0063】
前記JAK2 V617F変異体は従来技術で知られているあらゆる適切な方法で検出することができる。
【0064】
より特徴的には、個体から得られたサンプルは、タンパク質JAK2のV617F変異体に特異的な抗体、たとえばV617F変異体と変異していないJAK2タンパク質(およびその他のあらゆるタンパク質)とを区別する能力をもった抗体と接触させることができる。
【0065】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、一本鎖または二本鎖、キメラ抗体、ヒト化抗体、あるいは、抗原と結合する断片[ヒト断片、ヒトF(ab’)2およびF(v)]に対応することが従来技術で知られている部分を含む免疫グロブリン分子の部分とすることができる。
【0066】
これらの抗体は、たとえば毒素またはマーカーとの免疫複合体とすることができる。
【0067】
ポリクローナル抗体を得るための手順は当業者には良く知られている。典型的には、そのような抗体は、免疫前血清を得るために事前に用意したニュージーランドホワイトウサギにJAK2 V617F変異体を皮下注射で投与することで得ることができる。抗原は6箇所の異なった部位に部位あたり100μlまで注射することができる。ウサギは最初の注射の二週間前に用意し、続いて同一の抗原によって、6週間ごとにおよそ3回、定期的に刺激を与える。そして、血清サンプルを各注射の10日後に得る。次に、ポリクローナル抗体を、抗体を捕捉するためにJAK2 V617Fタンパク質を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより血清から精製する。
【0068】
モノクローナル抗体は特異性が高いため、ポリクローナル抗体より好ましい。
【0069】
JAK2 V617F変異体が野生型JAK2タンパク質とは異なった3D構造を有しているため、このようなモノクローナル抗体を得ることは当業者にとって可能である。「モノクローナル抗体」という表現は、抗原のエピトープだけを認識することができる抗体を意味している。
【0070】
モノクローナル抗体は、哺乳動物、たとえばマウス、ラット、あるいは他の哺乳動物に、精製されたJAK2 V617F変異体で免疫付与することで得ることができる。抗体を産生する免疫付与した哺乳動物の細胞を単離し、雑種細胞(ハイブリドーマ)を産生するために骨髄腫または異種骨髄腫の細胞と融合させる。
【0071】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を抗体の産生源として用いる。免疫付与を必要としない抗体の生成技術も本発明の目的である。たとえば「ファージディスプレイ」法である。
【0072】
JAK2 V617F変異体に対する抗体は、ある種の場合には野生型JAK2タンパク質との交差反応を示すことがある。これに該当する場合、V617F変異体に特異的な抗体を選択することが必要となる。したがって、たとえば野生型JAK2との交差反応を示しうる抗体を捕捉するために、野生型JAK2タンパク質でのアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0073】
このように、本発明はJAK2 V617F変異体を特異的に認識するモノクローナル抗体ならびに該抗体を産生するハイブリドーマ系を目的としている。
【0074】
また、本発明は、サンプルにおけるJAK2 V617F変異体の有無を検出するための前記抗体を用いたELISA法も対象とする。
【0075】
抗体の利用に代わる方法は、たとえば、特定の分子の認識を可能にする分子クラスであるハプタマーを調製し、識別することからなる。
【0076】
ハプタマーは、高い親和性と特異性で標的分子のいかなるクラスも実質的に認識することができるオリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチドである。
【0077】
キット
【0078】
もう一つの特徴によると、本発明は、患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒されているかどうかを判定するためのキットに関するものである。
【0079】
本発明のキットは、JAK2遺伝子におけるG1849T変異の有無を特異的に検出するための、上記で定義した一つまたは複数のプローブまたはプライマーを含むことができる。
【0080】
またキットは、PCR増幅のための耐熱ポリメラーゼ、増幅および/またはハイブリダイゼーション過程のための一つまたは複数の溶液、ならびに、マーカーの検出を可能にするあらゆる試薬も含むことができる。
【0081】
もう一つの実施態様において、キットは上記で定義した抗体を含んでいる。
【0082】
さらに、本発明のキットは、固体担体上でのハイブリダイゼーションまたは免疫反応に適したあらゆる試薬を含むことができる。
【0083】
検出方法および検出キットは、好適には、51%を超えるヘマトクリット値を示す患者の亜集団に対して用いられる。また、検出方法および検出キットもまた、好適には、450000を超える血小板の割合を示す患者の亜集団に対して用いられる。
【0084】
本発明のsiRNA
【0085】
第四の特徴として、本発明はまた、617位が変異したJAK2、特にJAK2 V617Fの発現を50%以上、75%以上、90%以上または95%以上、あるいは99%以上減少させることを可能にするsiRNAも対象としている。これらのsiRNAは、リポフェクション、形質導入あるいはエレクトロポレーションによって細胞または組織内に注入することができる。このsiRNAによって、数多くの可能な治療法の適用とりわけ真性赤血球増加症の治療を必要とさせる、JAK2 V617FをコードするmRNAを特異的に破壊することが可能となる。
【0086】
siRNAは米国特許第60/068562号明細書(CARNEGIE)に記載されている。このRNAは、二本鎖(ds)構造の領域を有することを特徴とする。阻害は標的配列に特異的であり、RNAのds領域の一方の鎖のヌクレオチド配列は少なくとも25個の塩基を含み、標的遺伝子の部分と同一である。RNAのds領域の他方の鎖のヌクレオチド配列は前者の鎖および標的遺伝子の部分に対して相補的である。また、国際公開第02/44321号パンフレット(MIT/MAX PLANCK INSTITUTE)は二本鎖RNA(あるいは化学的に合成された同一の性質のオリゴヌクレオチド)を記載しており、該RNAの各鎖は19〜25個のヌクレオチド長を有し、RNA干渉プロセスによって標的遺伝子の転写後の発現を特異的に阻害することで、遺伝子の機能を判定し、細胞または個体におけるこの機能を変化させる能力をもっている。最後に、国際公開第00/44895号パンフレット(RIBOPHARMA)は真核細胞における所与の標的遺伝子の発現をインビトロで阻害する方法を対象としており、該方法において、別々の二つの一本鎖RNAで形成されたdsRNAが細胞内に導入され、dsRNAの一方の鎖は、標的遺伝子と相補的な、25対未満の連続したヌクレオチドを有する領域を有することを特徴としている。本発明のsiRNAを調製するために、当業者はこの文書に含まれる教示内容を参照することができる。
【0087】
より特徴的には、本発明は、G1849T変異を含むSEQ ID No3の配列に相補的(鎖1)な、および同一(鎖2)の、およそ15〜30個のヌクレオチド、19〜25個のヌクレオチド、好ましくは約19個のヌクレオチド長の二本鎖RNAを対象としている。本発明のこれらのsiRNAは、さらに3’末端にジヌクレオチドTTまたはUUを含むことができる。
【0088】
多くのプログラムが本発明のsiRNAを設計するために利用可能である。
−「siSearch Program」、http://sonnhammer.cgb.ki.se/siSearch/siSearch_1.6.html(「Improved and automated prediction of effective siRNA」,Chalk AM,Wahlesdelt C,and Sonnhammer ELL,Biochemical and Biophysical Research Communications,2004)。
−「SiDirect」、http://design.rnai.jp/sidirect/index.php(Direct:highly effective,target−specific siRNA design software for mammalian RNA interference,Yuki Naito et al,Nucleic Acids Res,Vol.32,No.Web Server issue,Oxford University Press(著作権),2004)。
−「siRNA Target Finder」、Ambion、http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_tools.html。
−「siRNA design tool」、Whitehead Institute of Biomedical Research、MIT、http://jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/。
【0089】
その他のプログラムは以下にリストされている。
http://web.mit.edu/mmcmanus/www/home1.2files/siRNAs.htm、とりわけ、
http://athena.bioc.uvic.ca/cgi−bin/emboss.pl?_action=input&_app=sirna。
【0090】
たとえば、配列TATGGAGTATGTT1849TCTGTGGAGA(SEQ ID No12)に対しては、センスsiRNAはUGGAGUAUGUUUCUGUGGAdTdT(SEQ ID No13)であり、アンチセンスsiRNAはUCCACAGAAACAUACUCCAdTdT(SEQ ID No14)である。
【0091】
特定の実施態様によると、上記の本発明のsiRNAは、野生型JAK2の発現にできるだけ影響を与えずにJAK2 V617Fの発現を減少させる能力、ひいては特異的にブロックする能力について試験、選別されている。たとえば本発明は、JAK2 V617Fの発現を80%より多く、90%より多く、95%より多くまたは99%より多く減少させ、野生型JAK2についてはまったく減少させない、あるいは、50%未満、25%未満、15%未満、10%未満または5%未満、さらには1%未満の減少とすることが可能な、siRNAを目的とするものである。
【0092】
たとえば、本発明のsiRNAは、
−UGGAGUAUGUUUCUGUGGA(SEQ ID No29)、
−GGAGUAUGUUUCUGUGGAG(SEQ ID No30)、
−GAGUAUGUUUCUGUGGAGA(SEQ ID No31)、
から構成されるグループから選択することができる。
【0093】
もう一つの実施態様では、本発明は、国際公開第01/70949号パンフレット(Benitec)に包括的に記載されているddRNAi分子に関するものであるが、JAK2 V617Fを特異的に標的としている。本発明のddRNAiは、JAK2 V617Fをコードしている配列を消失させることを可能にするものであり、該ddRNAiは、(i)SEQ ID No3、4または11と同一の配列、(ii)(i)で定義した配列に相補的な配列、(iii)前記配列(i)および(ii)を隔てるイントロン、そしてJAK V617Fの発現を変化させる能力をもったRNAを産生する細胞または組織にこの構築物を導入することを含んでいる。
【0094】
また、本発明は、JAK2 V617Fの発現をブロックし、遅らせ、または減少させる能力を持った遺伝子構築物を含む一つまたは複数の細胞を有する、遺伝的に修飾された、ヒトではない動物も対象としている。このような遺伝的に修飾された動物を産生する方法は国際公開第04/022748号パンフレット(Benitec)に示されている。
【0095】
スクリーニング方法
【0096】
第五の特徴として、本発明はJAK2 V617Fの特異的阻害剤のスクリーニング方法を目的としている。
【0097】
「特異的阻害剤」とは、JAK2 V617FのIC50に対するJAK2のIC50の比率が5、10、25あるいは50を超える化合物を意味する。たとえば、この化合物はJAK2 V617FのIC50が1μM未満、好ましくは100nM未満であるのに対し、JAK2のIC50は5μMまたは10μMを超える。
【0098】
この方法は、本発明のタンパク質、前記タンパク質を含んだ膜画分、前記タンパク質を発現する細胞、あるいは上述したヒトではないトランスジェニック動物を用いて実施することができる。
【0099】
このように、本発明は、JAK2 V617Fの特異的阻害を一つまたは複数の化合物によって判定することを可能にする試験を対象とし、該試験は、一つまたは複数の化合物を、固定、特異的な固定の検出および/またはJAK2 V617Fの阻害の検出に適した条件下で、上記のJAK2 V617Fタンパク質、JAK2 V617Fを含む膜画分、あるいは上記のJAK2 V617Fを発現する細胞と接触させることからなる過程を含んでいる。
【0100】
この方法はさらに野生型JAK2への固定の測定を含むことができる。
【0101】
また、この方法は複数の分子に対する一連の試験で構成することができ、JAK2 V617Fに対して1μM未満、好ましくは100nM未満のIC50を示す分子を選択する過程を含むことができる。
【0102】
さらにこの方法は、JAK2に対して5μMまたは1μM未満のIC50を示す前述した分子の負の選択を行う過程を含むことができる。
【0103】
本発明は、JAK2 V617Fのリン酸化の阻害を免疫沈降によって判定する、上述したインビトロでのスクリーニングを対象とする。
【0104】
また、本発明は、エリスロポエチン(Epo)の不在下で分化する能力があるCD34+JAK2 V617F前駆細胞に対する、インビボでのスクリーニングも対象としている。このような細胞は真性赤血球増加症の患者から単離する。CD34+JAK2 V617F細胞はSCFおよびIL−3を含んだ培地で培養することができる。化合物を培養培地に加え、細胞の増殖能力および36+/GPA−細胞に分化する能力を判定する。36+/GPA−クローンの数の減少が観察される化合物を選択する。このように、本発明は、エリスロポエチン(Epo)の不在下で、またはJAK2 V617F変異体の導入によって独立因子となった細胞系上で分化する能力がある、CD34+JAK2 V617Fの初代前駆細胞を用いた上記スクリーニング方法を対象としている。同様のタイプの分析を半流動培地におけるCFU−E型の骨髄培養物に対して行うことができ、コロニーの自然発生的な増加の阻害について化合物を直接試験することができる。
【0105】
また、組換えJAK V617Fを発現する上記の哺乳動物のあらゆる細胞系を利用することもできる。
【0106】
また、本発明は医薬品の候補を識別するための方法も対象としており、該方法は、真性赤血球増加症を再現し、および/または、JAK2 V617Fの存在に関連する骨髄増殖症候群に冒されている、上述したJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物に化合物を投与することと、化合物の効果を判定し、真性赤血球増加症における赤芽球の増殖および自然発生的な分化の減少もしくはブロックまたはJAK2 V617Fの存在に関連する細胞増殖の減少が観察される医薬品候補を選択することとからなる過程を含んでいる。
【0107】
より特徴的には、この方法は、上述したJAK2 V617F K−inマウスまたはJAK2 V617F K−inラットで実施する。
【0108】
これらの化合物のうち、たとえば前述したJAK2の変異したエクソン12を標的とするsiRNA、特に、変異ヌクレオチドt1849を含んだ配列SEQ ID No3、4または配列SEQ ID No11を標的とするsiRNAを挙げることができる。
【0109】
もう一つの特徴として、本発明は、医薬品の製造のために、前記siRNAまたは上記のddRNAiおよびJAK2 V617Fを特異的に阻害する化合物を利用することを対象としている。前記医薬品はとりわけ、血液の癌、特に真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、骨髄性脾腫つまり原発性骨髄線維症、および慢性骨髄性白血病(LMC)を含む骨髄増殖症候群の治療を目的としている。また、前記医薬品は、JAK2 V617F変異に関連するその他の悪性血液疾患、場合によってはJAK2 V617Fを発現する充実性腫瘍、癌腫、黒色腫および神経芽腫の治療も目的としている。
【0110】
明細書の以下の部分および実施例については、以下に説明した図面を参照するものとする。
【0111】
図面の説明
【0112】
図1:PVにおけるJAK2の主要な役割の発見
平常時では、JAK2はリン酸化していない状態でボックス1に固定されている。Epoとの結合によって受容体の立体構造が変化し、JAK2のリン酸転移が可能となり、それを受けてJAK2はEpo−Rの細胞質内残基をリン酸化し、シグナル伝達のさまざまな正のエフェクター(→)または負のエフェクター(┤)を動員する。
【0113】
図2:エリスロポエチンの不在下で分化できるPVのCD34+前駆細胞の培養モデルの設定
2A:Epo、SCFおよびIL−3を用いた培養。
2B:Epoの不在下での培養。
【0114】
図3:JAK−STAT、Pi3−KおよびSrcキナーゼ経路の阻害による赤血球の自然発生的な分化の抑制。
【0115】
図4:PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の手順。
【0116】
図5:PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の結果
5A:36+/gpa−のクローニング能力の減少。1〜6日目にSCF−IL3において培養し、5日目にエレクトロポレーションを行い、6日目に選別する(形態/36+/gpa−)。
メチルSCFのみ。13日目(選別後7日目)に計数を行う。
5B:V617F変異を有するJAK2の構造(エクソン12)。
【0117】
図6:LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法による、ゲノムDNAにおけるJAK2 V617F変異を検出するためのSNPの遺伝子型決定分析。
AおよびB:FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出。A:TF−1のDNAにおけるさまざまな希釈度のHELのDNAを用いた実験の結果が示されている。JAK2 V617Fのピーク(57℃)は1%の希釈度でも依然として検出可能である。B:代表的な患者のサンプルの結果を示している(#1:ホモ接合体、#2:ヘテロ接合体、#3:弱い、#4:変異なし)。
C:TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出。HELのDNAの希釈物での実験(100〜1%のHEL:白抜きの四角、TF−1細胞:白抜きの丸)と代表的な患者のいくつかのサンプル(黒の十字)を示している。#a:ホモ接合体の患者、#b:ヘテロ接合体の患者、#c:弱い患者、#d:変異のない患者。
【0118】
図7:赤血球増加症(つまり51%を超えるクリマトクリット値)を診断するために提案する診断シート。
シートの各段階についての患者の数は各欄の端に記載されており(n)、ここではすべての臨床データを示す患者のみをリストしている(n=81)。一次診断試験であるJAK2 V617Fの検出の結果、81人中58人の患者において、PV型の骨髄増殖症候群を診断するためのその他の調査を避けた。
【0119】
図8および図9:HEL細胞におけるJAK2 V617Fの発現が、JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)による処理の24時間後に減少する。
0〜6:JAK2 V617FのsiRNAで処理した(1〜6)または処理していない(0)HEL細胞。
C+:JAK2 V617F RVベクターでトランスフェクトした293HEK細胞。
C−:293HEK。
【0120】
図10:K562細胞におけるWT JAK2の発現レベルは、JAK2 V617Fに特異的なsiRNAによる処理の24時間後にも変化しなかった。
Je:WT JAK2のsiRNAで処理したK562細胞。
0〜6:JAK2 V617FのsiRNAで処理したK562細胞。
C−:293HEK(JAK2の発現なし)。
【実施例1】
【0121】
43人中39人の患者におけるJAK2 V617F変異の識別
【0122】
疾病状態にある前駆細胞の培養モデルの設定と生化学的阻害剤の利用によって、JAK2−STAT5、PI3キナーゼおよびSrcキナーゼの経路がPV前駆細胞のEpoに依存しない分化に必要であることが明らかになった(Ugo et al,2004)。これらの結果は、PVが原因である原発性の分子異常が、シグナル伝達経路に構成的活性を与えるチロシンキナーゼの変異のような、シグナル伝達経路の脱制御につながる主要タンパク質の異常であるという、我々の仮説を裏付けている。とはいえ、JAK2タンパク質の主要な役割は真性赤血球増加症に冒された43人の患者に対する検査により特定することができたのであり、該タンパク質はこれらのさまざまなシグナル伝達経路の最も上流に位置するタンパク質で、サイトカイン受容体のシグナル伝達経路に共通しているものであり、該受容体に対する応答の異常はPVにおいて説明されてきている。我々は、
−機能的アプローチ(RNA干渉によるPV細胞におけるJAK2の阻害)、
−ゲノム的アプローチ(遺伝子の23個のエクソンのシーケンシング)、および、
−構成的活性化の原因となるJAK2のリン酸化の異常を発見するための生化学的アプローチ
という3つの補足的なアプローチによって、PVの病理におけるJAK2プロテインキナーゼの関与を研究した。
【0123】
用いた生物材料は、赤血球増加症に冒されている、承諾を得た患者に由来するものであり、診断目的で採取され、Hotel DieuのLaboratoire Central d’Hematologieに送られたサンプルの残りと、治療のための瀉血に対応するものである。
【0124】
1.1 機能的研究
真性赤血球増加症に冒された患者の赤芽球におけるJAK2の機能の研究は、JAK2のmRNAのエクソン15に位置する配列を標的として認識する、JAK2配列に特異的なsiRNA(AMBION、Huntingdon、イギリス)を、エレクトロポレーションによってPVの赤芽球に形質導入することで行った。我々は、JAK2の阻害によって、Epoの不在下でのPV前駆細胞のクローニング能力と「自然発生的な」分化がかなり減少することを示した。JAK2のsiRNAをトランスフェクトした正常な赤芽球前駆細胞は、コントロールsiRNAと比較してクローン化能力が70%減少しており、このことは、JAK2のsiRNAによるトランスフェクションが有効であることを確証している。PVでは、赤芽球前駆細胞においてJAK2を阻害する効果がEpo不在の培養モデルにおいて研究されており、これによって悪性クローン細胞の研究が可能となっている。我々は、JAK2のsiRNAによるトランスフェクション後のPVの赤芽球前駆細胞のクローン化能力、アポトーシスおよび分化を、コントロールsiRNAの場合と比較した。Epoの不在下で培養したPV前駆細胞のクローン化能力の研究により、コントロールsiRNAの場合と比較して、JAK2のsiRNAをトランスフェクトした後にコロニーの数が明らかに減少したことが示された。これらの細胞のアポトーシスについてのフローサイトメトリー分析は、JAK2のsiRNAをトランスフェクトした細胞では、関連のないsiRNAの場合と比較してアポトーシスが顕著に増加したことを示している(70%対53%)。分化に対するJAK2のsiRNAの効果に関する研究(フローサイトメトリーで検出されたグリコフォリンAの回収)では、コントロールsiRNAとJAK2のsiRNAをトランスフェクトした前駆細胞の間ではわずかな違いを示しただけである。
【0125】
したがって、細胞研究の結果は、PVの赤芽球前駆細胞がEpoに依存せずに分化するにはJAK2が必要であることを示している。生化学的研究(免疫沈降)の第一の結果は、PVの赤血球前駆細胞をサイトカインから遮断すると、正常細胞と比較して、JAK2のより長いリン酸化が起こることを示している。
【0126】
1.2 JAK2のゲノム的研究
23個のエクソンに対するPCRをゲノムDNAに基づいて正常な被験者に対して行った。そして、細胞培養後にインビトロで得られた赤血球細胞のゲノムDNAを抽出した後に、3人のPV患者について研究した。
【0127】
我々は、JAK2のエクソン12に位置し、試験した3人の患者のうち2人に存在した点変異を識別した。この変異はコード配列の1849番塩基([ATGから開始したナンバリング]、GenBank NM_004972)に関与し、JAK2タンパク質のコドン617を変化させる(V617F)。
・通常のコドン617:バリン(V)をコードするgtc。
・変異したコドン617:フェニルアラニン(F)をコードするttc。
【0128】
インターネット上に公開されているデータベースにより、我々はそれが既知の多型ではないことを確認した。
【0129】
次に、我々は被験者群を広げた。現在、変異は試験した43ケースのうち39人のPV患者で見つかっている。対照(試験した15ケース)あるいは二次性赤血球増加症の患者(試験した18ケース)では変異を有する者は見つかっていない。
【0130】
患者におけるシーケンシングの結果
・試験した43のPV中39の変異(90%)。
・2/3のヘテロ接合体。
・13/39、つまり30%のケースが「ホモ接合体」(9pでのヘテロ接合性の喪失と同じ割合)。
【0131】
コントロール
・試験した33人の対照中0例の変異。
−うち、15人は正常な被験者。
−18人は二次性赤血球増加症(自然発生的なコロニーなし)。
【0132】
JAK2のこの異常の発見は、PVに関わる多くの成長因子(Epo、TPO、IL−3、IL−6、GM−CSF、インスリン)に対する過敏性を説明している。実際、JAK2はこれらサイトカインの受容体のシグナル伝達経路に関与するタンパク質である。
【0133】
さらに、JAK2とEpo−Rとの連関は、JAK2が構成的にEpo−Rに固定されるという点で特徴的である。つまり、ゴルジ装置内で開始されるJAK2/Epo−Rの連関は、赤芽球の膜でのEpo−Rのプロセッシングに必要である。したがって、JAK2とR−Epoとの連関の変化の原因となっているJAK2の異常は、赤芽球系での骨髄の過形成の優位性を説明しうるが、一方、このタンパク質は多くのシグナル伝達経路に関与するものである。また、Moliterno et coll(Moliterno et al.,1998、Moliterno et Spivak,1999)は、グリコシル化の欠如に関連するmplの膜発現の欠如を立証している。Epo−Rから類推して、JAK2がc−mplのプロセッシングに必要である可能性がある。JAK2の異常は、PVで見られるc−mplの膜発現の欠如を説明するものであろう。
【0134】
JAK2は、その近位ドメインにおいて、Epo−Rの、よく保存されたドメインであるBox2に結合する。Epoによる刺激がないとき、JAK2は構成的にEpo−Rに固定されるが、リン酸化していない形態であり、したがって非活性的である。Epoによる受容体の刺激後、二つのJAK2分子はリン酸化し、そしてEpo−Rをリン酸化するのだが、このことによって、STAT5、Grb2、PI3Kタンパク質のようなシグナル伝達に関与するその他のタンパク質を動員し、リン酸化することが可能になる。JAK2タンパク質はすべてのJAKと同様、機能的なキナーゼ領域(JH1)、チロシンキナーゼ活性のない偽キナーゼ領域(JH2)および、JAKファミリーのメンバーに特徴的な複数の保存ドメイン(JH3〜JH7)を有している。JH2ドメインはJAK2のチロシンキナーゼ活性の調整に関与すると考えられる。JAK2タンパク質のマッピングに関する入手可能なデータ(Lindauer,2001)によると、617番アミノ酸はこのJH2ドメインに位置し、モデル化の研究によると、キナーゼ活性の調節に特に重要な領域に位置している。
【0135】
この発見(サイトカインに依存しないメカニズムの理解、さまざまなSMPの分類)の生理病理学的利点を越えて、患者における変異の実証は、診断の確認を可能にする試験を初めて提供するものである。医療診断のアプローチにおいて、JAK2の変異の検査は、悪性クローンに属する血液多核球に対して行うことができるものである。
【0136】
また、本発明は、変異タンパク質に特異的なキナーゼを阻害するタイプの特異的な処理、あるいは遺伝子治療の開発を提供するものでもある。
【実施例2】
【0137】
赤血球増加症の一次診断のためのJAK2 V617F変異体の検出
【0138】
2.1 患者、材料および方法
JAK2 V617Fを検出するための、シーケンシングと二つのSNP遺伝子型決定法の比較。
【0139】
患者の細胞
MPD(すなわち赤血球増加症、血小板増加症、白血球増加症)の疑いがある119のサンプルを分析した。58の血液サンプルをこのために採取し、骨髄バンクの61のサンプルを遡及的に分析した。
【0140】
製造者(Eurobio、フランス)の指示にしたがって密度勾配を用いて末梢顆粒球を単離した。Ficollを用いた勾配遠心法を利用して骨髄の単核細胞を単離した。標準的な手順でゲノムDNAを抽出した。LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法の感度を知るために、最少残基の野生型対立遺伝子とのホモ接合のサンプルに由来するDNAを、正常DNAで連続希釈した。
【0141】
細胞系
標準的なポジティブコントロールであるTF−1細胞系(変異なし)のDNAにおける、ホモ接合性で変異した(JAK2 V617F)ヒト赤白血病細胞系(HEL)のDNAの連続希釈物(1、0.5、0.1、0.05、0.01)を用いた。この細胞系を、ウシ胎児血清を加えたMEM−α培地(Invitrogen)中で成長させた。
【0142】
FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出
JAK2のエクソン12の標的配列の増幅および該配列とのハイブリダイゼーションのために、プライマーとプローブを設計した。変異部位の位置(1849G/T)を、3’をフルオレセインで標識したドナーキャプチャープローブと、5’末端をLightCycler(登録商標)Red640(LCRed640)で標識した、隣接するアクセプターアンカープローブで覆い、該アンカープローブの3’末端は伸長を避けるためにリン酸化した。増幅および融解曲線分析はLightCycler(登録商標)の機器(Roche Diagnostics、Meylan、フランス)で実施した。最終的な反応体積は20μlであり、10ngのDNA、14μlのLightCycler FastStart DNA Master混合物、3mMのMgCl2、0.2μMのプライマー、0.075μMの各プローブが含まれている。簡単に説明すると、サンプルを95℃で10分間加熱し、45サイクル(95℃で10秒、53℃で10秒、72℃で15秒)のPCR増幅の後、95℃で10秒間の変性過程と、それぞれ30秒にわたる63℃と45℃での二回のハイブリダイゼーション過程を行い、そして融解曲線は45℃と70℃(0.1℃/秒)の間に含まれる領域にあった。LightCycler(登録商標)プログラム上での分析は、温度に対する蛍光産物の曲線[Tに対する2(dFl2/Fl1)/dT)]をプロットすることで行った。変異体およびWTのピークはそれぞれ57℃と63℃で見られた。
【0143】
TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出
1849位でのSNPを含む92bpの産物を増幅するために二つのプライマーを設計した。二つのMGB蛍光プローブを、異なる色で蛍光標識して、一つはWT対立遺伝子を標的とし、もう一つは変異対立遺伝子を標的とするよう設計した。96ウェルプレート上で、TaqMan(登録商標)PCRに基づく方法を用いて遺伝子型決定を行った。最終的な反応体積は12.5μlであり、10ngのゲノムDNA、6.25μlのTaqMan(登録商標)Universal Master Mixおよび0.31μlの40×Assays−on−Demand SNP Genotyping Assay Mix(Applied Biosystems)が含まれている。プレートを95℃で10分間加熱し、その後、92℃で15秒の40回の変性サイクルと60℃で1分間の対合/伸長を行った。熱サイクルは7500 Real Time PCR System(Applied Biosystems)で行った。分析はSDSプログラムのバージョン1.3を用いて実施した。最終的な対立遺伝子の識別のための遺伝子型決定は、PCR後の蛍光読み取りに基づいて得られた変異JAK2の蛍光の曲線(Rn)に対する、WTプローブに由来するRnの目視による判定で行った。
【0144】
赤血球増加症の患者とサンプルの採集
何らかの治療を行う前に、診断時に、51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者を調べ、WHO基準およびPVSG基準の有無について検査した。51%という値はヘマトクリット値の正常域の上限である(Pearson TC et al.,A Polycythemia Vera Updated:Diagnosis,Pathobiology,and Treatment.Hematology(Am.Soc.Hematol.Educ.Program.)2000:51−68)。骨髄細胞をクローン化の測定のために採取し、過剰量の細胞をDNA抽出のために採取した。血清中のエリスロポエチン(Epo)をさまざまな研究所で測定し、その結果、該エリスロポエチンが各研究所の正常域の下限値より低いときには低いとの報告を、同様にして正常あるいは高いとの報告を受けた。同じ患者に由来する末梢顆粒球を先述のように精製し、各時間における血液サンプルを利用できるようにした。骨髄サンプルおよび血液サンプルをインフォームドコンセントを得た後に採取した。
【0145】
EECの分析
Epoに対する赤血球の応答特性のインビトロでの測定を、同一の研究所(Hotel Dieu、パリ)において、先述した凝固血漿培養法によって行った(Casadevall N,Dupuy E,Molho−Sabatier P,Tobelem G,Varet B,Mayeux P.Autoantibodies against erythropoietin in a patient with pure red−cell aplasia. N.Engl.J.Med.1996;334:630−633)。
【0146】
統計分析
マーカーの相関関係はスピアマンの順位相関係数(R)を用いて求めた。
【0147】
2.2 結果
JAK2 V617F変異を検出するためのPCRに基づく遺伝子型決定法の実行可能性と感度
JAK2 V617F変異を検出するためのシーケンシング、LightCycler(登録商標)法およびTaqman(登録商標)法の効率を評価するために、MPDの疑いのある患者に由来する119のサンプルにおいて、3つの方法を平行して利用して該変異の存在を調査した。JAK2 V617F変異は119サンプル中83サンプルで効果的に検出され、35サンプルは3つの方法のいずれによっても変異を示さなかった。1サンプルのみにおいて、シーケンシングではLightCycler(登録商標)とTaqman(登録商標)の二つの方法で明らかになった変異を検出できなかったことから、後者の方法がより感度が良いことが示唆される。
【0148】
方法の感度を評価するため、二つの異なった方法を用いた。つまり、変異のないTF−1細胞系のDNAにおける、ホモ接合性で変異したHEL細胞系のDNAの連続希釈液を試験し、また、正常DNAにおける、JAK2 V617F変異についてホモ接合の患者に由来するゲノムDNAの連続希釈液を試験した。シーケンシングでは、TF−1細胞系のDNAで希釈した5%未満のHEL細胞系のDNA、正常DNAで希釈した10%未満のホモ接合性の変異患者のDNAでは、変異した対立遺伝子を検出できなかった。LightCycler(登録商標)法およびTaqman(登録商標)法の感度は同等で、シーケンシングをわずかに上回っており、TF−1細胞系のDNAで希釈したHEL細胞系のDNAでは0.5〜1%(図6)、正常DNAで希釈したホモ接合性の変異患者のDNAでは2〜4%まで可能であった。
【0149】
診断時の赤血球増加症患者の特徴
診断時に51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者の主要な特徴を表1にまとめた。
【0150】
【表1】
【0151】
51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者をPVSG基準とWHO基準にしたがって診断し、真性赤血球増加症(PV)、突発性赤血球増加症、二次性赤血球増加症、および測定した赤血球量の増加していないときの「絶対的赤血球増加症ではない」(AEではない)という四つのグループに分けた。8人の患者は、いくつかの臨床データが入手不可能であったため、決定的な診断を得ることができなかった。Ht:ヘマトクリット、Hb:ヘモグロビン、WBC:白血球、EEC:内因性赤血球コロニー、Epo:エリスロポエチン、σ:標準偏差。患者は、WHO基準(Pierre R.et al.,editeurs.World Health Organization Classification of Tumours;Pathology and Genetics of tumours of hematopoietic and lymphoid tissues.Lyon:IARC Press;2001:32−34)とPVSG基準(Pearson TC,Messinezy M. The diagnostic criteria of polycythaemia rubra vera.Leuk Lymphoma 1996:22 Suppl 1:87−93)のそれぞれに応じて、PV診断を受けた61〜45人の患者、二次性赤血球増加症の5人、突発性赤血球増加症の11〜21人、そして絶対的赤血球増加症ではない3人(正常な赤血球量)の、4つの主要グループに分けることができた。臨床データは7人の患者について不完全であったが、それは、PVの診断がWHO基準でもPVSG基準でも確認できなかったということである。二つの分類におけるA1基準の間にある違いのために、赤血球量の測定を行っていない6人の患者はWHO分類に入れることはできるが、PVSG分類には入れることができない。一人の患者は低酸素血症とEECの形成を同時に示し、したがって診断が困難であった。細胞遺伝学的分析を35人の患者で行い、32人のPV患者(WHO基準による)のうち7人が細胞遺伝学的異常を有し、そのうち5人が9トリソミーを、1人が7qトリソミーを有しており、そして1人が18番染色体に付加的な物質を有していた。
【0152】
PVのPVSG基準とWHO基準に対応するJAK2 V617Fの存在
PVSG基準によりPVとして診断された45人の患者のうち43人(96%)でJAK2 V617Fが存在し、WHO基準で診断された61人の患者のうち57人(93%)で存在した(表1)。しかし、PVSG分類にしたがってPVでないとして分類された29人の患者のうち8人は変異を示したのに対し、WHO分類にしたがってPVでないとされた患者19人は変異を示さなかった。これら8人の患者はPVSG基準によればIEであると考えられ、WHO基準によればPVであると考えられる。SEと診断された患者も正常な赤血球量を有する患者(「AEではない」)も変異を有していなかった。したがって、JAK2 V617Fの有無は、WHO基準を用いた場合には80人中76人の患者で(95%、R=0.879、p<0.0001)、PVSG基準を用いた場合では74人中64人の患者で(86.5%、R=0.717、p<0.0001)、PVの陽性診断に対応する。さらに、WHO基準でPVでないと診断された患者はいずれも変異を有していなかったため、JAK2 V617Fの検出は絶対的赤血球増加症においては100%の予測値を有することになる。
【0153】
一部の著者(Mossuz P. et al.,Diagnostic value of serum erythropoietin level in patients with absolute erythrocytosis. Haematologica 2004;89:1194−1198)は血清Epoレベルの測定を、絶対的赤血球増加症の患者に対する一次診断試験と考えており、Epoレベルが正常域の下限値の下にあれば、PVの診断について97%の特異度と97.8%の予測値を有する。我々の研究において、EpoレベルとWHO基準およびPVSG基準によるPV診断との相関関係は、それぞれ61人中50人(82%、R=0.488、p=0.0002)および56人中39人(70%、R=0.358、p=0.0067)の患者で見られた。次に、我々はJAK2 V617Fの存在下または不在下で血清Epoレベルを比較し、68人の患者のうち52人(76%、R=0.416、p=0.0004)が適切な相関関係を有することを見出した。
【0154】
JAK2 V617F変異の存在はEECを形成する能力に対応する。
【0155】
異なる三つのチームにより、JAK2 V617FをトランスフェクトしたEpoに依存する細胞系が、増殖についてはEpoに依存しておらずEpoに対して過敏であり、PVにおいて説明されている赤血球前駆細胞の非依存性および過敏性と似た振る舞いを見せることが示されている。したがって我々は、JAK2 V617Fを有する患者がEECの形成も示すという仮説を立てた。EECの形成をまったく示さない20人の赤血球増加症患者のうち、一人は変異を示し、JAK2 V617Fの検出に関する陽性の予測値に疑問が生じた。しかし、この患者がEECも全く示さなくとも、該患者は多くの陽性のWHO基準およびPVSG基準を満たしており、該患者を両方の分類法においてPVとして分類することができる。したがって、この患者は「JAK2について偽陽性」というよりも「EECについて偽陰性」と捉えるべきである。EECを有する67人の患者のうち、62人はJAK2 V617Fを有しており、5人の患者は検出に感度のある方法を用いた際には変異していなかった。これら5人の患者のうち、5人中4人と5人中2人は、それぞれWHO基準とPVSG基準にしたがってPVグループに分類することができた。全体では、分析した87人の患者のうち、JAK2 V617F変異の有無が、87人中81人の患者(93.1%、R=0.824、p<0.0001)においてEECを形成する能力の有無に対応していた。
【0156】
骨髄の単核細胞(BMMC)におけるJAK2 V617F変異の存在は、末梢顆粒球における該変異の存在に対応している。
【0157】
診断時にJAK2 V617F変異を検出するために末梢血顆粒球を用いることで骨髄細胞の分析の実施を避けられるかどうかを検討するために、我々は、骨髄サンプルと末梢血サンプルが診断時に両方利用可能な50人の患者について(35人のPV患者、8人のSE患者および8人のMPDの疑いのある者を含む)、シーケンシング法、LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法のそれぞれで得られた結果を比較した。すべての場合(変異のある34人、変異のない16人)で、変異は同様に検出された。
【0158】
III−結論
このように、我々は、明白な二次的赤血球増加症の場合を除き、顆粒球におけるJAK2 V617Fを感度の良い方法で検出することが赤血球増加症の診断の最初のステップである(図7)、新規なPV診断カードを提案する。このアプローチにはいくつかの利点があり、常に実行可能というわけではなく結果を検討しなくてはならないことのある、アイソトープを有する赤血球量の測定を避けることができる。また、骨髄の吸引や、時間がかかり標準化されていないEEC分析の実行を避けることもできる。これによりPVの陽性診断のコストが大きく低下するのだが、それは、51%を超えるヘマトクリット値を有しJAK2 V617Fについて陰性の患者のみが、赤血球増加症を特徴づけるために実際に行う全ての調査を受けることになるからである。赤血球増加症におけるJAK2 V617Fの検出だけでPVの診断が支持されても、骨髄の生検の実施は依然として有効であるが、それは、該生検を行うことで骨髄線維症の兆候または芽球細胞の存在を明らかにすることができ、それによりPVの白血病性形質転換が確認されるからである。しかし、骨髄の生検は、細胞遺伝学的分析とともに、随意的な研究として行われるべきものであると考えられる。
【0159】
また、30%のET、50%のIMF、そして特徴が明らかにされていない、稀ないくつかのMPDにおいてもJAK2 V617Fが検出され、これにより、異なる臨床所見を伴うMPDの新しいグループを決定した。これらの違いの理由はまだ分かっておらず、共通の生理病理学的原因と異なる表現型とによってこれらの病気を一つの骨髄増殖群にまとめるにはまだ早い。今後の詳しい臨床研究によって、より特定的に、PV、ET、IMFおよびJAK2 V617Fを有するその他の稀なMPDの間で共通する兆候が、特に絶対的赤血球増加症、Epoレベル、骨髄線維症そして細胞遺伝学的異常の枠組みで、より的確に特徴づけられるであろう。したがって、慢性的白血球増加症、血小板増加症および赤血球増加症の診断における最初の手段としてJAK2 V617Fの検出を用いることも考えられる。JAK2 V617Fの存在はMPDグループの新たな定義を可能とするだけではなく、確実に、特異的ターゲッティング療法の開発の基礎となるものでもある。
【0160】
実施例3:JAK2 V617Fを阻害するがWT JAK2は阻害しない、JAK2 V617F変異に特異的なsiRNA。
【0161】
SEQ ID No25〜27に対応するsiRNA 1、3および4は、HEL系で発現するJAK2 V617F変異タンパク質を阻害するが、K562系で発現する野生型JAK2タンパク質は阻害しない。結果は図8、図9および図10に示している。
【0162】
参考文献
−Andersson, P., LeBlanc, K., Eriksson, B.A., and Samuelsson, J. (1997). No evidence for an altered mRNA expression or protein level of haematopoietic cell phosphatase in CD34+ bone marrow progenitor cells or mature peripheral blood cells in polycythaemia vera. Eur J Haematol 59, 310−7.
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−Le couedic, J.P., Mitjavila, M.T., Villeval, J.L., Feger, F., Gobert, S., Mayeux, P., Casadevall, N., and Vainchenker, W. (1996). Missense mutation of the erythropoietin receptor is a rare event in human erythroid malignancies. Blood 87, 1502−11.
−Lindauer, K., Loerting, T., Liedl, K.R., and Kroemer, R.T. (2001). Prediction of the structure of human Janus kinase 2 (JAK2) comprising the two carboxy−terminal domains reveals a mechanism for autoregulation. Protein Eng 14, 27−37.
−Means, R.T., Krantz, S.B., Sawyer, S., and Gilbert, H. (1989). Erythropoietin receptors in polycythemia vera. J Clin Invest 84, 1340.
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−Moliterno, A.R., and Spivak, J.L. (1999). Posttranslational processing of the thrombopoietin receptor is impaired in polycythemia vera. Blood 94, 2555−61.
−Pahl, H.L. (2000). Towards a molecular understanding of polycythemia rubra vera. Eur J Biochem 267, 3395−401.
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−Roder S, S. C., Meinhardt G, Pahl HL. (2001). STAT3 is constitutively active in some patients with Polycythemia rubra vera. Exp Hematol 29, 694−702.
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−Temerinac, S., Klippel, S., Strunck, E., Roder, S., Lubbert, M., Lange, W., Azemar, M., Meinhardt, G., Schaefer, H.E., and Pahl, H.L. (2000). Cloning of PRV−1, a novel member of the uPAR receptor superfamilly, which is overexpressed in polycythemia rubra vera. Blood 95, 2569−76.
−Ugo, V., Marzac, C., Teyssandier, I., Larbret, F., Lecluse, Y., Debili, N., Vainchenker, W., and Casadevall, N. (2004). Multiple signaling pathways are involved in erythropoietin−independent differentiation of erythroid progenitors in Polycythemia Vera. Experimental Hematology 32, 179−187.
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】PVにおけるJAK2の主要な役割を示した図。
【図2】エリスロポエチンの不在下で分化できるPVのCD34+前駆細胞の培養モデルの設定を示した図。
【図3】JAK−STAT、Pi3−KおよびSrcキナーゼ経路の阻害による赤血球の自然発生的な分化の抑制を示した図。
【図4】PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の手順を示した図。
【図5】PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の結果を示した図。
【図6A】FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出を示したグラフ。
【図6B】FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出を示したグラフ。
【図6C】TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出を示したグラフ。
【図7】赤血球増加症(つまり51%を超えるクリマトクリット値)を診断するために提案する診断シートを示した図。
【図8】JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)を示した図。
【図9】JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)による処理により減少した、HEL細胞におけるJAK2 V617Fの発現を示した図。
【図10】JAK2 V617Fに特異的なsiRNAによる処理によって変化しない、K562細胞におけるWT JAK2の発現レベルを示した図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、真性赤血球増加症の原因となっている、JAK2チロシンキナーゼタンパク質のV617F変異体に関するものである。また、本発明は、赤血球増加症と血小板増加症を骨髄増殖症候群に関連付けることを可能にする、赤血球増加症および血小板増加症の一次診断方法、すなわち、赤血球増加症と血小板増加症を新たな疾病群に再分類することを可能にする、骨髄増殖症候群におけるJAK2 V617F変異体の検出にも関わるものであり、そして、特異的阻害剤とsiRNAの識別にも関わるものである。
【背景技術】
【0002】
真性赤血球増加症(Polycythemia VeraすなわちPV)は、慢性骨髄増殖症候群のひとつであり、該慢性骨髄増殖症候群は、真性赤血球増加症を、またしばしば血小板増加症および白血球増加症を伴う。それは、造血幹細胞のクローン性の後天性疾患である。PVの造血前駆細胞はエリスロポエチン(Epo)の不在下で、「自然発生コロニー」と呼ばれる赤芽球コロニーを形成する能力がある。インターロイキン3(IL−3)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、幹細胞因子(SCF)およびインスリン様成長因子(IGF−1)など、その他のいくつかの成長因子に対する、PVの造血前駆細胞の過敏性も証明されている。いくつかのチームがPVの生理病理学に関心を寄せているが、疾患の原因である分子異常は今日でも未知のままである(H.Pahl,2000)。
【0003】
いくつかのサイトカインに対するPVの前駆細胞の過敏性により、サイトカイン受容体に共通のシグナル伝達経路における異常を検査することができる。PVにおいては分子マーカーの存在はかつて証明されたことがないが、PVとその他の骨髄増殖症候群との間にある類似性、特にLMCとの間にある類似性を考慮すると、Bcr−Ablによって誘発されるものに近い分子メカニズムが、とりわけ悪性クローンの増殖とその最終分化の原因になっていると考えられる。この仮説は近年、二つの珍しい骨髄増殖症候群において確証が得られており、その一つは、FGF受容体の構成的活性化を誘発する8p11染色体領域における転座に関連する骨髄増殖症候群であり、もう一つは、潜在性の染色体の欠失によりキメラ遺伝子PDGFRα−FIP1L1が生じる好酸球増加症候群である。両方の場合において、分子異常により、構成的なチロシンキナーゼ活性を有する融合タンパク質が生じる。
【0004】
患者の10%〜15%で20qの欠失が検出され、約30%のケースで9pのヘテロ接合性の消失が検出されても、PVにおいて再発性の細胞遺伝学的異常が見られたことはない(Kralovics,2002)。しかし、これらの異常は当該疾患に特異的なものではない。
【0005】
PV細胞がEpoに依存していないため、Epo受容体(Epo−R)経路に対する研究が行われてきた。まず、受容体は構造レベルでも機能レベルでも正常である(Hess et al.,1994、Le Couedic et al.,1996、Means et al.,1989)。Epoによる刺激が止まるとEpo−RとJAK2を脱リン酸化するフォスファターゼSHP−1は、通常、RNAとタンパク質のレベルで発現する(Andersson et al.,1997、Asimakopoulos et al.,1997)。Epo−Rのシグナル伝達のさらに下流では、PVを示す患者の多核球(PNN)においてSTAT5の異常な活性化が研究されたが、異常は発見できていない。逆に、STAT3の構成的リン酸化が、研究された14例中4例のPVのPNNで明らかにされた(Roder,2001)。最後に、STAT5の転写標的である、抗アポトーシスタンパク質bcl−xlの発現が、免疫組織化学およびフローサイトメトリーで研究されている(Silva et al.,1998)。そして、bcl−xlがPVの赤芽球で高発現すること、とりわけ、通常このタンパク質が発現しなくなる、より成熟した段階で高発現することが示された。
【0006】
真性赤血球増加症において、主要な診断基準は現在、臨床的なものである(PVSG基準、Pearson,2001)。生物学的診断は、主としてEpoの不在下での、赤血球前駆細胞の培養の実施に基づいている(内因性コロニーの検出)。その良好な実施に専門技術が必要であることと、多くの「技術者の時間」が費やされることから、この試験はすべてのセンターで可能なわけではなく、経験を積んだ研究所によって実施されるときにだけ信頼できるものである。さらに、良好な感度を得るために、この試験は患者から採取した骨髄細胞に対して行う必要があり、これは患者にとって無害とは言えない。
【0007】
サブトラクティブハイブリダイゼーション法により、ドイツの研究グループが、PRV1(Polycythemia Rubra Vera 1)と呼ばれる、PVのPNNで高発現した遺伝子をクローニングしている(Temerinac et al.,2000)。PRV−1タンパク質は表面受容体uPARのスーパーファミリーに属している。PVの多核球においてPRV−1をコードしているmRNAの高発現はリアルタイムRT−PCRによって容易に検出可能であり、近年発見された疾患の、生理病理学的役割のないマーカーを構成する。しかし、最近公刊された研究では、それは特に感度が良いわけでも特異的でもないことが示されている。
【0008】
Spivak JL et al.,2003(「Chronic myeloproliferative disorders」;Hermatology;2003;200 24.)では、いくつかのPVマーカーが記載されている。好中球抗原NBI/CD177のmRNAはPV患者の顆粒球において過剰発現する。しかし、患者の中にはこの過剰発現を示さないものもおり、また、この過剰発現が真性赤血球増加症以外の骨髄増殖症候群の患者でも観察されうるため、このマーカーはPVを検出するための信頼できる手段とは考えられない。血小板上のトロンボポエチン受容体Mplの発現が少ないこともPVでは認められている。この異常はPVで支配的だが、その他の骨髄増殖症候群でも見られる。ほかにも、専門の研究所でしか実施できない、実現が難しい試験もある。
【0009】
このように、従来技術では、信頼できるPV診断を可能にする方法はない。また、利用可能な治療も特異的なものではない。正常範囲内にヘマトクリット値を維持するための瀉血、細胞毒性薬の使用あるいはIFNの使用が問題となる。
【特許文献1】国際公開第02/44321号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/44895号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の枠組みにおいて、我々は試験した患者の約90%においてJAK2遺伝子に変異を発見しただけではなく、この変異が、このチロシンキナーゼの構成的活性の原因であることも明らかにし、そして、該変異を阻害することによって、PV赤芽球の自然発生的な増殖と分化を妨げることが可能になることを証明した。
【0011】
JAK2はJanusキナーゼファミリー(JAK)に属し、該ファミリーは、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2という複数の細胞質内チロシンキナーゼからなる。JAKタンパク質は多くの膜受容体の細胞内シグナル伝達に関与するものであり、該膜受容体は、サイトカイン受容体スーパーファミリーのいくつかのメンバー、特にEpo受容体(Epo−R)のように、内在的なチロシンキナーゼ活性を有していない。JAK2タンパク質は23個のエクソンを含んだ遺伝子によってコードされている。相補的DNAは3500塩基対のサイズを有し、1132個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする(130kD)(図1)。我々はPCRとシーケンシングによって、PV患者の90%近くにおいてJAK2のエクソン12でクローン性の後天的な点変異を識別した。通常バリン(V)をコードしているコドン617「GTC」が、フェニルアラニン(F)をコードする「TTC」に変異している。この変異V617Fは、25人の対照または試験した二次性赤血球増加症患者では見られなかった。逆に、本態性血小板増加症の40%と骨髄線維症の50%では観察され、したがって、この変異は、Bcr−Ablが慢性骨髄性白血病を定義したように、骨髄増殖症候群の新たな枠を定義するものである。
【0012】
本発明によるJAK2 V617F変異体を、血液学における診断研究所で従来的に用いられている広く普及した手段で効果的に検出することができるかどうか調べるために、我々は骨髄増殖症の疑いのある患者に由来する119のサンプルを分析した。JAK2 V617FがLightCycler(登録商標)法とTaqMan(登録商標)法によって効果的に検出されることが示されたが、これらの技術はシーケンシングよりわずかに感度が良いものである。次に我々は、51%を超えるヘマクリット値を有する88人の患者において一次診断試験としてJAK2 V617Fの検出値を算定し、変異が、赤血球増加症において100%の陽性的中率で、WHO基準(R=0.879)とPVSG基準(R=0.717)にしたがったPV診断に対応することを示した。これらのデータに基づいて我々は、赤血球量の測定、骨髄の吸引および内因性赤血球コロニーの形成のインビトロでの分析の実施を避けるべく、顆粒球におけるJAK2 V617Fの検出を赤血球増加症患者の一次診断試験としてみなすべきであることを提案する。また、この検出は骨髄増殖症候群の全体あるいはそれらの疑いに対する一次診断にまで広げることができるものである。この検出は、骨髄増殖症候群を確認するための確実な生物学的試験が存在しない慢性血小板増加症においても特に重要となるものである。また、この検出は骨髄線維症の診断において重要な検査となるものであり、不確定な病因による血栓症に関連する臨床所見に適用することができるものである。
【0013】
このように、本発明は第一に診断手段をもたらし、PVとこの変異に関連する骨髄増殖症候群を対象とする治療に至る道筋を開くものである。より特定的には、我々はJAK2 V617F変異の検出を赤血球増加症の枠組みにおける一次診断試験として提案し、このことによって、大半の患者および慢性血小板増加症における、骨髄の吸引ならびに赤血球と内因性赤血球細胞(EEC)の量の測定を避けることが可能になり、このことによって長期の病因調査を避けることが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このように、第一の特徴として、本発明は単離したJAK2(Janusキナーゼ2)タンパク質、特にヒトJanusキナーゼ2タンパク質(NCBI寄託番号NM_004972、GI:13325062)に関するものであり、該タンパク質は、617番アミノ酸(cDNAの、ATGから数えて617番目のコドン)における変異、より特徴的にはV617F変異を含んでおり、以下ではJAK2 V617F変異体と称し、以下のSEQ ID No1で示される。
【0015】
SEQ ID No1(V617FヒトJanusキナーゼ2すなわちJAK2 V617F)
【0016】
また、本発明は他の哺乳動物の617位が変異したこのタンパク質の等価物、たとえば、ラット(NM_031514)、ブタ、マウス(NM_008413)などの他の哺乳動物のJAK2 V617Fも目的とし、また、変異体の活性および3D構造に影響を与えない一つまたは複数の修飾をさらに含んだ、SEQ ID No1の変異体も目的としている。
【0017】
また、本発明はSEQ ID No1をコードするヌクレオチド配列、好ましくはSEQ ID No2(コドン617においてGTCの代わりにコドンTTCを有する(以下G1849Tと称する、翻訳開始を示すATGから数えて1849位におけるg/t変異)ヒトJAK2遺伝子配列)も対象としている。
【0018】
この配列は、ウイルスベクターまたはプラスミドベクター、あるいは哺乳動物の細胞で有効なプロモーターの制御下にある裸DNAに存在しうるものである。したがって、本発明はJAK2 V617Fタンパク質を発現するベクターにも及ぶものである。本発明のベクターはクローニングベクターおよび/または発現ベクターとすることができ、また、宿主細胞、とりわけ哺乳動物の細胞、好ましくはヒトCD34+前駆細胞をトランスフェクトするために用いることができる。
【0019】
PVおよびその他の骨髄増殖症候群のトランスジェニック動物モデル
【0020】
本発明はまた、組換えJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物も対象とする。この動物は、好ましくはマウスまたはラットとすることができる。モデルとして用いられるトランスジェニックのラットまたはマウスは、当業者によって一般的に用いられているあらゆる方法、とりわけ、相同組換えまたはCre−LoxPもしくはFLP−FRTシステムでの部位特異的組換えによってES細胞にノックイン(標的位置への配列の挿入)することで得ることができる。本発明の好ましい実施態様によると、本発明によるトランスジェニック細胞は、宿主細胞のゲノムの一つまたは複数の配列でのJAK2 G1849T変異体の遺伝子ターゲッティングによって得られる。より詳細には、導入遺伝子は、宿主細胞のゲノムの相同配列の相同組換えにより安定した方法で挿入される。トランスジェニック動物を産生するためのトランスジェニック細胞を得ようとする場合、宿主細胞は好ましくは胚性幹細胞(ES細胞)である(Thompson et al.,1989)。遺伝子ターゲッティングは、標的とする内因性配列と配列の相同性を有している外来DNA配列での相同組換えによる、染色体座の部位特異的な修飾である。さまざまなタイプの遺伝子ターゲッティングがある。ここでは、遺伝子ターゲッティングは特に、野生型JAK2遺伝子をJAK2 G1849T変異体の遺伝子または遺伝的に類似した他のあらゆる変異体で置換するために用いることができる。この場合、遺伝子ターゲッティングは「ノックイン」(K−in)と呼ばれる。あるいは、遺伝子ターゲッティングは、野生型JAK2の発現を減らすかまたは消失させてJAK2変異体の遺伝子を導入するために用いることができる。このとき遺伝子ターゲッティングは「ノックアウト」(KO)と呼ばれる(Bolkey et al.,1989参照)。本発明による細胞は、導入遺伝子が安定してその細胞のゲノムに組み込まれることと、その発現が内因性遺伝子の調節エレメントによって制御されることを特徴としている。安定した組み込みとは、導入遺伝子を本発明による細胞のゲノムDNAに挿入することを意味する。このように挿入された導入遺伝子は、次に細胞の子孫に伝わる。導入遺伝子の組み込みは、標的である内因性JAK2遺伝子の上流、下流、または中心で行う。任意で、一つまたは複数の正の選択または負の選択の遺伝子を用いることができる。また、レポーター遺伝子部分の両側または挿入すべき完全配列の両側に位置している好ましくは二つの標的遺伝子座と相同的なDNA領域を用いることができる。「相同的なDNA領域」とは、最適なアラインメントの後および比較の後に、通常少なくともおよそ90%〜95%のヌクレオチドが同一であり、好ましくは、少なくともおよそ98%〜99.5%のヌクレオチドが同一である二つのDNA配列を意味する。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman(1981)による局所的相同性アルゴリズム、Neddleman and Wunsch(1970)による局所的相同性アルゴリズム、Pearson and Lipman(1988)による類似性検索法、これらのアルゴリズムを用いるソフトウェア(Wisconsin Genetics Software Packageの中のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTAおよびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)を用いて行うことができる。細菌および哺乳動物の細胞における相同組換えを行うためには14bpが100%相同であれば十分であるが、より長い相同配列の部分が好ましい(一般的にはこれらの部分は相同配列の各部分について少なくとも2000bpであり、好ましくは少なくとも5000bpである)。好適には、JAK変異体の配列は内因性型の調節を確実にするエレメントの一群、すなわち、少なくとも内因性JAK遺伝子のプロモーター、調節配列(エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター)、終結シグナルを含んだ一群に挿入される。
【0021】
特徴的な実施態様によると、JAK G1849T導入遺伝子は、少なくともコード配列と、レコンビナーゼの作用に対して特異的な部位に挟まれた、または挟まれていない正の選択のカセット、たとえば、前記配列の5’位に存在することができるLox/Neo−TK/Loxまたはlox/Neo/loxまたはFRT/Neo−TK/FRTまたはFRT/Neo/FRTカセットを有しており、たとえば一つまたは複数のDTA遺伝子および/またはTK遺伝子を含む負の選択のカセットが導入遺伝子の末端の少なくとも一方に存在していることを特徴としている。本発明の導入遺伝子は、好ましくは動物細胞に天然に存在している外来のDNA配列に直接由来する。この天然の形態のDNA配列は、たとえばクローニングに必要な制限酵素認識部位を挿入すること、および/または、部位特異的組換えの部位(lox配列およびflp配列)を挿入することで修飾することができる。
【0022】
このために、JAK2 G1849T変異体は、宿主細胞内でのその増殖を確実にすることができるクローニングベクターに、および/または任意には、導入遺伝子の発現を確実にすることができる発現ベクターにクローニングすることができる。本発明によるクローニングベクターおよび/または発現ベクターを構築するために用いられるDNA組換え技術は当業者に知られているものである。標準的な技術がクローニング、DNAの単離、増幅、および精製に用いられ、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼに関わる酵素反応は製造者の推薦にしたがって実施される。これらの技術およびその他の技術はほとんどの場合Sambrook et al.,(1989)にしたがって行われる。ベクターは、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YAC、BAC、HACのような人工染色体、ならびにその他の類似のベクターを含んでいる。
【0023】
本発明によるトランスジェニック細胞を生成するための方法はGordon et al.,1989に記載されている。哺乳動物の細胞をトランスフェクトするためのさまざまな技術がKeon et al.,1990によって概説されている。線状化されたもしくはされていないベクター、またはベクター断片の形状のものに任意で含まれる、本発明による導入遺伝子は、たとえば核へのマイクロインジェクション(米国特許第4873191号明細書)、リン酸カルシウム沈殿によるトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション(Lo,1983)、熱ショック、陽イオンポリマー(PEG、ポリブレン、DEAE−デキストランなど)による形質転換あるいはウイルス感染(Van der Putten et al.,1985)といった標準的な方法によって宿主細胞に導入することができる。
【0024】
細胞が導入遺伝子によって形質転換されると、細胞はインビトロで培養することができ、あるいは、ヒトではないトランスジェニック動物を産生するために用いることができる。形質転換後、細胞を培養層および/または適切な培地に播種する。構築物を含んだ細胞は選択培地を用いて検出することができる。コロニーが生じるのに十分な時間の後、コロニーを回収し、相同組換えおよび/または当該構築物の組み込みが生じているかどうか判定するために分析する。相同組換えをしていると考えられるクローンのスクリーニングを行うために、選択遺伝子と呼ばれる陽性および陰性のマーカーを相同組換えベクターに挿入することができる。相同組換えが生じた細胞を選択するさまざまなシステムが説明されている(米国特許第5627059号明細書参照)。本発明による前記陽性選択遺伝子は、好ましくは抗生物質耐性遺伝子から選択される。抗生物質としては、網羅的ではないが、ネオマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、フレオマイシン、ブレオマイシン、ハイグロマイシン、クロラムフェニコール、カルベニシリン、ジェネティシン、ピューロマイシンを挙げることができる。これらの抗生物質に対応する耐性遺伝子は当業者には知られており、たとえばネオマイシン耐性遺伝子は、培養培地における抗生物質G418の存在に対する耐性を細胞に付与する。また、陽性の選択遺伝子はHisD遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はヒスチジノールである。また、陽性の選択遺伝子はグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GpT)遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はキサンチンである。また、陽性の選択遺伝子はヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子から選択することができ、対応する選択剤はヒポキサンチンである。相同組換えを同定することを可能にするために用いられる一つまたは複数の選択マーカーは、後に遺伝子発現に影響を与えることがあり、必要であれば、Lox部位に特異的なCreリコンビナーゼ(Sauer,1994、Rajewsky et al.,1996、Sauer,1998)またはFRT部位に特異的なFLPリコンビナーゼ(Kilby et al.,1993)といった部位に特異的なリコンビナーゼを利用することで除去することができる。
【0025】
陽性のコロニー、すなわち少なくとも一つの相同組換えが生じている細胞を含んだコロニーは、サザンブロット法および/またはPCR法による分析で識別する。単離細胞または本発明によるトランスジェニック動物の細胞における、導入遺伝子に対応するmRNAの発現レベルは、ノーザンブロット法による分析、in situハイブリダイゼーション法による分析、RT−PCR法による分析を含む技術によって判定することもできる。同様に、導入遺伝子を発現している動物細胞または動物組織は、レポータータンパク質に対する抗体を用いて識別することができる。次に、陽性細胞は、胚の操作、とりわけ修飾された細胞を相同組換えによって胚盤胞内へ注入するために用いることができる。
【0026】
マウスでは、胚盤胞は4〜6週齢の過剰排卵した雌から得る。細胞をトリプシン処理し、修飾された細胞を胚盤胞の胞胚腔に注入する。注入後、胚盤胞を偽妊娠した雌の子宮角に導入する。次に、雌が満期に達するまで待ち、構築物を有する変異細胞の存在を判定するために、得られた子を分析する。産まれた胎児の細胞と胚盤胞細胞あるいはES細胞との間での異なる表現型を分析することで、キメラの新生児を検出することが可能となる。そして、キメラの胎児を成体まで育てる。キメラまたはキメラ動物は、細胞の一つの亜集団のみに改変したゲノムが存在する動物である。一つまたは複数の修飾された遺伝子を有するキメラ動物は、一般的にはそれらの間でまたは野生型の動物と交配させることで、ヘテロ接合またはホモ接合の子を得ることができる。次に、ヘテロ接合の雄と雌を交配することで、ホモ接合動物を作成する。指示しない限り、本発明によるヒトではないトランスジェニック動物は生殖系列細胞のヌクレオチド配列の安定した変化を含んでいる。
【0027】
本発明のもう一つの実施態様によると、本発明によるヒトではないトランスジェニック細胞は核の移動すなわち核移植の枠組みにおける核のドナー細胞として利用することができる。核移植とは、脊椎動物の成体個体または胎児段階の個体の生きたドナー細胞の核を、同種または異種の除核したレシピエント細胞の細胞質に移すことを意味する。移植された核はクローン胚の成長を導くように再プログラムされ、続いて該クローン胚は胎児および新生児を産生するために受胚雌に移植することができ、あるいは、培養で内細胞塊の細胞を産生するために用いることができる。核クローニング用のさまざまな技術を用いることができ、該技術の中では、網羅的ではないが、特許出願の対象となっている国際公開第95/17500号パンフレット、国際公開第97/07668号パンフレット、国際公開第97/07669号パンフレット、国際公開第98/30683号パンフレット、国際公開第99/01163号パンフレットおよび国際公開第99/37143号パンフレットを挙げることができる。
【0028】
このように、本発明はJAK2 V617Fをコードする組換え配列を含んだ、ヒトではないトランスジェニック動物にまで及ぶものである。これらの動物はホモ接合体あるいはヘテロ接合体(JAK2 V617F/JAK2 V617FあるいはJAK2 V617F/JAK2)でありうる。これらの動物は、とりわけ真性赤血球増加症を再現するが、JAK2 V617Fによって誘発されるあらゆる骨髄増殖症候群も再現する。したがって、該動物によってチロシンキナーゼ阻害剤を機能的にスクリーニングすること、とりわけJAK2 V617Fに特異的な阻害剤のスクリーニングを行うことが可能になる。
【0029】
もう一つの変形例は、真性赤血球増加症またはその他の骨髄増殖症候群のモデルを実現させるために、JAK2 V617F変異体を発現する能力を有するウイルスベクター(レトロウイルスまたはレンチウイルスまたはその他)を造血細胞株、前駆細胞またはES細胞に注入することで構成することができる。
【0030】
診断手段
第三の特徴として、本発明は、骨髄増殖症候群に冒された、あるいは骨髄増殖症候群を示す可能性のある哺乳動物において、とりわけ赤血球増加症を示す患者または真性赤血球増加症、血小板増加症および/もしくは骨髄線維症の兆候を示している疑いのある患者において、JAK2 V617F変異の有無を検出することを可能にする診断手段を目的としている。
【0031】
そのため、本発明は、以下に記載した配列SEQ ID No2における変異の有無の検出を可能にするプライマーおよびプローブに関わるものである。より特徴的には、本発明は、エクソン12または以下の配列SEQ ID No3または4の連続した少なくとも10個、12個、15個、20個、30個、40個または50個のヌクレオチドの配列(たとえば10〜30個のヌクレオチドまたは10〜25個のヌクレオチド)を有し、また変異ヌクレオチドt1849を含む、たとえば10〜30個のヌクレオチドの単離された核酸にも関するものである。
【0032】
【0033】
下線を引いた配列は、1849位における変異に特異的なプローブまたはプライマーの設計を可能にする上流または下流の領域の一例を示している(SEQ ID No4)。
【0034】
本発明のさまざまな好ましいプライマーおよびプローブの例
【0035】
DNA、PCRプライマー:
JAK2エクソン12−PCRF センス 5’−GGGTTTCCTCAGAACGTTGA−3’(54804−54823)(SEQ ID No5)
JAK2エクソン12−PCRR アンチセンス 5’−TTGCTTTCCTTTTTCACAAGA−3’(55240−55260)(SEQ ID No6)
【0036】
DNA、シーケンシングプライマー:
JAK2エクソン12SEQF センス 5’CAGAACGTTGATGGCAGTTG−3’(54813−54832)(SEQ ID No7)
JAK2エクソン12SEQR アンチセンス 5’TGAATAGTCCTACAGTGTTTTCAGTTT−3’(55207−55233)(SEQ ID No8)
【0037】
cDNA、PCRプライマーおよびシーケンシングプライマー:
センス 5’−CAACCTCAGTGGGACAAAGAA−3’(1386−1407)(SEQ ID No9)
アンチセンス 5’−GCAGAATATTTTTGGCACATACA−3’(2019−2041)(SEQ ID No10)
【0038】
SNPSプローブ、変異検出プローブおよびsiRNAプローブ(1829−1870):
TTTTAAATTATGGAGTATGTGTCTGTGGAGACGAGAATATTC(SEQ ID No11)
【0039】
LightCyclerでの遺伝子型決定(PNNまたは骨髄のDNA)
オリゴ「S」(センス) GGCAGAGAGAATTTTCTGAAC(SEQ ID No15)
オリゴ「R」(アンチセンス) GCTTTCCTTTTTCACAAGATA(SEQ ID No16)
センサーwt GTCTCCACAGACACATACTCCATAA3’−FL(SEQ ID No17)
アンカーJAK2 5’−LC Red640AAAACCAAATGCTTGTGAGAAAGCT3’−PH(SEQ ID No18)
【0040】
LightCyclerでの遺伝子型決定(たとえば血小板のcDNA)
cJAK2F GCACACAGAAACTATTCAGAGTC(SEQ ID No19)
cJAK2S AGCAGCAAGTATGATGAGC(SEQ ID No20)
cJAK2A CTAGTGATCCAAATTTTACAAACT(SEQ ID No21)
cJAK2R GTTTAGCAACTTCAAGTTTCC(SEQ ID No22)
センサーwt GTCTCCACAGACACATACTCCATAA3’−FL(SEQ ID No23)
アンカーJAK2 5’−LC Red640AAAACCAAATGCTTGTGAGAAAGCT3’−PH(SEQ ID No24)
【0041】
Taqman法による遺伝子型決定(たとえば骨髄の単核細胞のDNAにおいて)
対立遺伝子に特異的な蛍光プローブおよび一本鎖DNAによる認識
PCR反応
センスプライマー配列:AAGCTTTCTCACAAGCATTTGGTTT(SEQ ID No25)
アンチセンスプライマー配列:AGAAAGGCATTAGAAAGCCTGTAGTT(SEQ ID No26)
リポーター1配列(VIC):TCTCCACAGACACATAC(SEQ ID No27)
リポーター2配列(FAM):TCCACAGAAACATAC(SEQ ID No28)
【0042】
その他の特徴として、本発明は、サンプルにおけるJAK2 V617F変異の有無を検出することを可能にするインビトロまたはエクスビボでの診断方法にも関するものである。
【0043】
本発明の核酸を用いた試験
【0044】
第一の実施態様において、G1849T変異体(JAK2 V617F変異に対応する)はJAK2遺伝子の核酸分子の分析によって検出することができる。本発明の範囲において、「核酸」とはmRNA、ゲノムDNAあるいはmRNAから派生したcDNAを意味する。
【0045】
G1849T変異体の核酸の有無は、シーケンシング、増幅ならびに/または、上述した特異的プローブおよび特異的プライマー、つまりSEQ ID No3または4、およびSEQ ID No5〜11、あるいはSEQ ID No15〜24に由来する配列とのハイブリダイゼーションによって、検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
したがって、本発明は、PV患者またはPVもしくは他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症を発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのエクスビボまたはインビトロでの方法を提案するものであり、該方法は、
a)患者の核酸のサンプルを得ること、
b)前記核酸のサンプルにおけるJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0047】
核酸のサンプルはどのような細胞源または組織生検からも得ることができる。これらの細胞は造血性のものに由来する必要があり、循環血液、造血組織または血液細胞が入ったあらゆる液体から得ることができる。DNAは、Sambrook et al.(1989)に記載されている方法のような、従来技術で知られているあらゆる方法を用いて抽出することができる。またRNAも、たとえば生検時に得られる組織などから、グアニジウムチオフェネート−フェノール−クロロホルムによる抽出のような、当業者によく知られている標準的な方法を用いて単離することができる。
【0048】
JAK2遺伝子のG1849T変異体は、RNAまたはDNAのサンプルにおいて、好ましくは増幅後に検出可能である。たとえば、変異部位に特異的なオリゴヌクレオチド、あるいは、たとえばエクソン12またはSEQ ID No3もしくは4のような変異を含む領域を増幅することを可能にするオリゴヌクレオチドを用いるRT−PCR反応のように、単離されたRNAを逆転写にかけ、次に増幅することができる。「オリゴヌクレオチド」という表現は、ここでは少なくとも10個、好ましくは15〜25個のヌクレオチド、好ましくは100個未満のヌクレオチドからなる核酸を指すために用い、JAK2のゲノムDNA、cDNAまたはmRNAとハイブリダイズする能力がある。
【0049】
本発明のオリゴヌクレオチドは、放射性標識、蛍光標識または酵素標識などの当業者に知られたあらゆる技術によって標識することができる。標識されたオリゴヌクレオチドはJAK2遺伝子のV617F変異体の有無を検出するためのプローブとして用いることができる。
【0050】
このように、本発明で有効なプローブおよびプライマーは1849位(転写開始を示すATGからのナンバリング)のヌクレオチドの近くでJAK2遺伝子の領域と特異的にハイブリダイズするものである。
【0051】
上述した方法において、核酸は対立遺伝子の変異の検出前にPCRで増幅することができる。対立遺伝子の変異の検出方法は、たとえば「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」第二版、Sambrook、Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory,1989)、およびU.Landegren編、Laboratory Protocols for Mutation Detection,Oxford University Press,1996、およびNewton & GrahamによるPCR第2版、BIOS Scientific Publishers Limited,1997で説明されている。
【0052】
したがって、増幅過程の後に、目的の変異体の有無に応じてサンプルを選別することを可能にする検出過程を組み合わせることが可能である。
【0053】
このために採用されるさまざまな技術は欧州特許第1186672号明細書に示されており、該技術とはたとえば、DNAシーケンシング、SSCP、DGGE、TGGEのハイブリダイゼーションによるシーケンシング、ヘテロ二本鎖分析、CMC、酵素によるミスマッチの切断、「ハイブリダイゼーションベースの固相ハイブリダイゼーション」、DNAチップ、Taqman(登録商標)液相ハイブリダイゼーション(米国特許第5210015号明細書および米国特許第5487972号明細書)、ならびにRFLP法などである。
【0054】
検出は、FRET、蛍光消光、偏光蛍光、化学発光、電気化学発光、放射能および比色分析法といったその他のさまざまな方法を用いて行うことができる。
【0055】
本発明による方法は、サンプルを得ることおよびそのサンプルの核酸を抽出することからなる過程を含んでいてもいなくてもよい。
【0056】
上述したように、用いるサンプルは個体から得られた血液もしくは他のあらゆる体液または組織とすることができる。核酸の抽出過程および精製過程の後、上述したプライマーを用いたPCR増幅をシグナルの検出を向上させるために用いることができる。
【0057】
このように、本発明による方法は前記プライマーを用いた増幅過程と、その後に続く、ハイストリンジェンシーの条件の下で上述したG1849T変異領域に対応する配列とハイブリダイズする少なくとも一つのプローブ、好ましくは二つのプローブとのハイブリダイゼーション過程、そして前記プローブの標識によって生成したシグナルの検出を含むことができる。
【0058】
たとえば、本発明はより特徴的には、PV患者、またはPVもしくは他のあらゆる骨髄増殖症候群を発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのインビトロでの方法を目的とし、該方法は、JAK2遺伝子のG1849T変異に特異的な一つまたは複数のSNP(一塩基変異多型)、とりわけSEQ ID No17と18、あるいは、23と24を用いて、前記核酸のサンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出することを含むものであり、G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0059】
SNPを用いたこの検出は、対立遺伝子の識別を可能にするTaqman(登録商標)法によって実施することができる。基本的に、この方法は一本鎖DNAにおけるJAK2を1849対立遺伝子に特異的な蛍光プローブによって認識することで構成され、PCR反応(5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼによる)、ハイブリダイズしたSNPの対立遺伝子に特異的な蛍光発光の検出、最終的な蛍光を読み取ることによる遺伝子型の決定(ホモ接合変異DNA、ヘテロ接合変異DNAおよび正常DNAのクラスタを示す画像の取得)を含んでいる。
【0060】
JAK2 V617F変異タンパク質の検出
【0061】
もう一つの実施態様によると、変異体はJAK2タンパク質内で直接検出することができる。
【0062】
そのために、本発明は、PVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症に冒された、またはこれらを発症する可能性のある患者のサンプルにおいて、JAK2 V617F変異体の有無を検出するためのエクスビボあるいはインビトロでの方法を目的とし、該方法は、
a)患者のサンプルを得ること、
b)JAK2 V617F変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
前記変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴としている。
【0063】
前記JAK2 V617F変異体は従来技術で知られているあらゆる適切な方法で検出することができる。
【0064】
より特徴的には、個体から得られたサンプルは、タンパク質JAK2のV617F変異体に特異的な抗体、たとえばV617F変異体と変異していないJAK2タンパク質(およびその他のあらゆるタンパク質)とを区別する能力をもった抗体と接触させることができる。
【0065】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、一本鎖または二本鎖、キメラ抗体、ヒト化抗体、あるいは、抗原と結合する断片[ヒト断片、ヒトF(ab’)2およびF(v)]に対応することが従来技術で知られている部分を含む免疫グロブリン分子の部分とすることができる。
【0066】
これらの抗体は、たとえば毒素またはマーカーとの免疫複合体とすることができる。
【0067】
ポリクローナル抗体を得るための手順は当業者には良く知られている。典型的には、そのような抗体は、免疫前血清を得るために事前に用意したニュージーランドホワイトウサギにJAK2 V617F変異体を皮下注射で投与することで得ることができる。抗原は6箇所の異なった部位に部位あたり100μlまで注射することができる。ウサギは最初の注射の二週間前に用意し、続いて同一の抗原によって、6週間ごとにおよそ3回、定期的に刺激を与える。そして、血清サンプルを各注射の10日後に得る。次に、ポリクローナル抗体を、抗体を捕捉するためにJAK2 V617Fタンパク質を用いてアフィニティークロマトグラフィーにより血清から精製する。
【0068】
モノクローナル抗体は特異性が高いため、ポリクローナル抗体より好ましい。
【0069】
JAK2 V617F変異体が野生型JAK2タンパク質とは異なった3D構造を有しているため、このようなモノクローナル抗体を得ることは当業者にとって可能である。「モノクローナル抗体」という表現は、抗原のエピトープだけを認識することができる抗体を意味している。
【0070】
モノクローナル抗体は、哺乳動物、たとえばマウス、ラット、あるいは他の哺乳動物に、精製されたJAK2 V617F変異体で免疫付与することで得ることができる。抗体を産生する免疫付与した哺乳動物の細胞を単離し、雑種細胞(ハイブリドーマ)を産生するために骨髄腫または異種骨髄腫の細胞と融合させる。
【0071】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を抗体の産生源として用いる。免疫付与を必要としない抗体の生成技術も本発明の目的である。たとえば「ファージディスプレイ」法である。
【0072】
JAK2 V617F変異体に対する抗体は、ある種の場合には野生型JAK2タンパク質との交差反応を示すことがある。これに該当する場合、V617F変異体に特異的な抗体を選択することが必要となる。したがって、たとえば野生型JAK2との交差反応を示しうる抗体を捕捉するために、野生型JAK2タンパク質でのアフィニティークロマトグラフィーを用いることができる。
【0073】
このように、本発明はJAK2 V617F変異体を特異的に認識するモノクローナル抗体ならびに該抗体を産生するハイブリドーマ系を目的としている。
【0074】
また、本発明は、サンプルにおけるJAK2 V617F変異体の有無を検出するための前記抗体を用いたELISA法も対象とする。
【0075】
抗体の利用に代わる方法は、たとえば、特定の分子の認識を可能にする分子クラスであるハプタマーを調製し、識別することからなる。
【0076】
ハプタマーは、高い親和性と特異性で標的分子のいかなるクラスも実質的に認識することができるオリゴヌクレオチドまたはオリゴペプチドである。
【0077】
キット
【0078】
もう一つの特徴によると、本発明は、患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒されているかどうかを判定するためのキットに関するものである。
【0079】
本発明のキットは、JAK2遺伝子におけるG1849T変異の有無を特異的に検出するための、上記で定義した一つまたは複数のプローブまたはプライマーを含むことができる。
【0080】
またキットは、PCR増幅のための耐熱ポリメラーゼ、増幅および/またはハイブリダイゼーション過程のための一つまたは複数の溶液、ならびに、マーカーの検出を可能にするあらゆる試薬も含むことができる。
【0081】
もう一つの実施態様において、キットは上記で定義した抗体を含んでいる。
【0082】
さらに、本発明のキットは、固体担体上でのハイブリダイゼーションまたは免疫反応に適したあらゆる試薬を含むことができる。
【0083】
検出方法および検出キットは、好適には、51%を超えるヘマトクリット値を示す患者の亜集団に対して用いられる。また、検出方法および検出キットもまた、好適には、450000を超える血小板の割合を示す患者の亜集団に対して用いられる。
【0084】
本発明のsiRNA
【0085】
第四の特徴として、本発明はまた、617位が変異したJAK2、特にJAK2 V617Fの発現を50%以上、75%以上、90%以上または95%以上、あるいは99%以上減少させることを可能にするsiRNAも対象としている。これらのsiRNAは、リポフェクション、形質導入あるいはエレクトロポレーションによって細胞または組織内に注入することができる。このsiRNAによって、数多くの可能な治療法の適用とりわけ真性赤血球増加症の治療を必要とさせる、JAK2 V617FをコードするmRNAを特異的に破壊することが可能となる。
【0086】
siRNAは米国特許第60/068562号明細書(CARNEGIE)に記載されている。このRNAは、二本鎖(ds)構造の領域を有することを特徴とする。阻害は標的配列に特異的であり、RNAのds領域の一方の鎖のヌクレオチド配列は少なくとも25個の塩基を含み、標的遺伝子の部分と同一である。RNAのds領域の他方の鎖のヌクレオチド配列は前者の鎖および標的遺伝子の部分に対して相補的である。また、国際公開第02/44321号パンフレット(MIT/MAX PLANCK INSTITUTE)は二本鎖RNA(あるいは化学的に合成された同一の性質のオリゴヌクレオチド)を記載しており、該RNAの各鎖は19〜25個のヌクレオチド長を有し、RNA干渉プロセスによって標的遺伝子の転写後の発現を特異的に阻害することで、遺伝子の機能を判定し、細胞または個体におけるこの機能を変化させる能力をもっている。最後に、国際公開第00/44895号パンフレット(RIBOPHARMA)は真核細胞における所与の標的遺伝子の発現をインビトロで阻害する方法を対象としており、該方法において、別々の二つの一本鎖RNAで形成されたdsRNAが細胞内に導入され、dsRNAの一方の鎖は、標的遺伝子と相補的な、25対未満の連続したヌクレオチドを有する領域を有することを特徴としている。本発明のsiRNAを調製するために、当業者はこの文書に含まれる教示内容を参照することができる。
【0087】
より特徴的には、本発明は、G1849T変異を含むSEQ ID No3の配列に相補的(鎖1)な、および同一(鎖2)の、およそ15〜30個のヌクレオチド、19〜25個のヌクレオチド、好ましくは約19個のヌクレオチド長の二本鎖RNAを対象としている。本発明のこれらのsiRNAは、さらに3’末端にジヌクレオチドTTまたはUUを含むことができる。
【0088】
多くのプログラムが本発明のsiRNAを設計するために利用可能である。
−「siSearch Program」、http://sonnhammer.cgb.ki.se/siSearch/siSearch_1.6.html(「Improved and automated prediction of effective siRNA」,Chalk AM,Wahlesdelt C,and Sonnhammer ELL,Biochemical and Biophysical Research Communications,2004)。
−「SiDirect」、http://design.rnai.jp/sidirect/index.php(Direct:highly effective,target−specific siRNA design software for mammalian RNA interference,Yuki Naito et al,Nucleic Acids Res,Vol.32,No.Web Server issue,Oxford University Press(著作権),2004)。
−「siRNA Target Finder」、Ambion、http://www.ambion.com/techlib/misc/siRNA_tools.html。
−「siRNA design tool」、Whitehead Institute of Biomedical Research、MIT、http://jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/。
【0089】
その他のプログラムは以下にリストされている。
http://web.mit.edu/mmcmanus/www/home1.2files/siRNAs.htm、とりわけ、
http://athena.bioc.uvic.ca/cgi−bin/emboss.pl?_action=input&_app=sirna。
【0090】
たとえば、配列TATGGAGTATGTT1849TCTGTGGAGA(SEQ ID No12)に対しては、センスsiRNAはUGGAGUAUGUUUCUGUGGAdTdT(SEQ ID No13)であり、アンチセンスsiRNAはUCCACAGAAACAUACUCCAdTdT(SEQ ID No14)である。
【0091】
特定の実施態様によると、上記の本発明のsiRNAは、野生型JAK2の発現にできるだけ影響を与えずにJAK2 V617Fの発現を減少させる能力、ひいては特異的にブロックする能力について試験、選別されている。たとえば本発明は、JAK2 V617Fの発現を80%より多く、90%より多く、95%より多くまたは99%より多く減少させ、野生型JAK2についてはまったく減少させない、あるいは、50%未満、25%未満、15%未満、10%未満または5%未満、さらには1%未満の減少とすることが可能な、siRNAを目的とするものである。
【0092】
たとえば、本発明のsiRNAは、
−UGGAGUAUGUUUCUGUGGA(SEQ ID No29)、
−GGAGUAUGUUUCUGUGGAG(SEQ ID No30)、
−GAGUAUGUUUCUGUGGAGA(SEQ ID No31)、
から構成されるグループから選択することができる。
【0093】
もう一つの実施態様では、本発明は、国際公開第01/70949号パンフレット(Benitec)に包括的に記載されているddRNAi分子に関するものであるが、JAK2 V617Fを特異的に標的としている。本発明のddRNAiは、JAK2 V617Fをコードしている配列を消失させることを可能にするものであり、該ddRNAiは、(i)SEQ ID No3、4または11と同一の配列、(ii)(i)で定義した配列に相補的な配列、(iii)前記配列(i)および(ii)を隔てるイントロン、そしてJAK V617Fの発現を変化させる能力をもったRNAを産生する細胞または組織にこの構築物を導入することを含んでいる。
【0094】
また、本発明は、JAK2 V617Fの発現をブロックし、遅らせ、または減少させる能力を持った遺伝子構築物を含む一つまたは複数の細胞を有する、遺伝的に修飾された、ヒトではない動物も対象としている。このような遺伝的に修飾された動物を産生する方法は国際公開第04/022748号パンフレット(Benitec)に示されている。
【0095】
スクリーニング方法
【0096】
第五の特徴として、本発明はJAK2 V617Fの特異的阻害剤のスクリーニング方法を目的としている。
【0097】
「特異的阻害剤」とは、JAK2 V617FのIC50に対するJAK2のIC50の比率が5、10、25あるいは50を超える化合物を意味する。たとえば、この化合物はJAK2 V617FのIC50が1μM未満、好ましくは100nM未満であるのに対し、JAK2のIC50は5μMまたは10μMを超える。
【0098】
この方法は、本発明のタンパク質、前記タンパク質を含んだ膜画分、前記タンパク質を発現する細胞、あるいは上述したヒトではないトランスジェニック動物を用いて実施することができる。
【0099】
このように、本発明は、JAK2 V617Fの特異的阻害を一つまたは複数の化合物によって判定することを可能にする試験を対象とし、該試験は、一つまたは複数の化合物を、固定、特異的な固定の検出および/またはJAK2 V617Fの阻害の検出に適した条件下で、上記のJAK2 V617Fタンパク質、JAK2 V617Fを含む膜画分、あるいは上記のJAK2 V617Fを発現する細胞と接触させることからなる過程を含んでいる。
【0100】
この方法はさらに野生型JAK2への固定の測定を含むことができる。
【0101】
また、この方法は複数の分子に対する一連の試験で構成することができ、JAK2 V617Fに対して1μM未満、好ましくは100nM未満のIC50を示す分子を選択する過程を含むことができる。
【0102】
さらにこの方法は、JAK2に対して5μMまたは1μM未満のIC50を示す前述した分子の負の選択を行う過程を含むことができる。
【0103】
本発明は、JAK2 V617Fのリン酸化の阻害を免疫沈降によって判定する、上述したインビトロでのスクリーニングを対象とする。
【0104】
また、本発明は、エリスロポエチン(Epo)の不在下で分化する能力があるCD34+JAK2 V617F前駆細胞に対する、インビボでのスクリーニングも対象としている。このような細胞は真性赤血球増加症の患者から単離する。CD34+JAK2 V617F細胞はSCFおよびIL−3を含んだ培地で培養することができる。化合物を培養培地に加え、細胞の増殖能力および36+/GPA−細胞に分化する能力を判定する。36+/GPA−クローンの数の減少が観察される化合物を選択する。このように、本発明は、エリスロポエチン(Epo)の不在下で、またはJAK2 V617F変異体の導入によって独立因子となった細胞系上で分化する能力がある、CD34+JAK2 V617Fの初代前駆細胞を用いた上記スクリーニング方法を対象としている。同様のタイプの分析を半流動培地におけるCFU−E型の骨髄培養物に対して行うことができ、コロニーの自然発生的な増加の阻害について化合物を直接試験することができる。
【0105】
また、組換えJAK V617Fを発現する上記の哺乳動物のあらゆる細胞系を利用することもできる。
【0106】
また、本発明は医薬品の候補を識別するための方法も対象としており、該方法は、真性赤血球増加症を再現し、および/または、JAK2 V617Fの存在に関連する骨髄増殖症候群に冒されている、上述したJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物に化合物を投与することと、化合物の効果を判定し、真性赤血球増加症における赤芽球の増殖および自然発生的な分化の減少もしくはブロックまたはJAK2 V617Fの存在に関連する細胞増殖の減少が観察される医薬品候補を選択することとからなる過程を含んでいる。
【0107】
より特徴的には、この方法は、上述したJAK2 V617F K−inマウスまたはJAK2 V617F K−inラットで実施する。
【0108】
これらの化合物のうち、たとえば前述したJAK2の変異したエクソン12を標的とするsiRNA、特に、変異ヌクレオチドt1849を含んだ配列SEQ ID No3、4または配列SEQ ID No11を標的とするsiRNAを挙げることができる。
【0109】
もう一つの特徴として、本発明は、医薬品の製造のために、前記siRNAまたは上記のddRNAiおよびJAK2 V617Fを特異的に阻害する化合物を利用することを対象としている。前記医薬品はとりわけ、血液の癌、特に真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、骨髄性脾腫つまり原発性骨髄線維症、および慢性骨髄性白血病(LMC)を含む骨髄増殖症候群の治療を目的としている。また、前記医薬品は、JAK2 V617F変異に関連するその他の悪性血液疾患、場合によってはJAK2 V617Fを発現する充実性腫瘍、癌腫、黒色腫および神経芽腫の治療も目的としている。
【0110】
明細書の以下の部分および実施例については、以下に説明した図面を参照するものとする。
【0111】
図面の説明
【0112】
図1:PVにおけるJAK2の主要な役割の発見
平常時では、JAK2はリン酸化していない状態でボックス1に固定されている。Epoとの結合によって受容体の立体構造が変化し、JAK2のリン酸転移が可能となり、それを受けてJAK2はEpo−Rの細胞質内残基をリン酸化し、シグナル伝達のさまざまな正のエフェクター(→)または負のエフェクター(┤)を動員する。
【0113】
図2:エリスロポエチンの不在下で分化できるPVのCD34+前駆細胞の培養モデルの設定
2A:Epo、SCFおよびIL−3を用いた培養。
2B:Epoの不在下での培養。
【0114】
図3:JAK−STAT、Pi3−KおよびSrcキナーゼ経路の阻害による赤血球の自然発生的な分化の抑制。
【0115】
図4:PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の手順。
【0116】
図5:PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の結果
5A:36+/gpa−のクローニング能力の減少。1〜6日目にSCF−IL3において培養し、5日目にエレクトロポレーションを行い、6日目に選別する(形態/36+/gpa−)。
メチルSCFのみ。13日目(選別後7日目)に計数を行う。
5B:V617F変異を有するJAK2の構造(エクソン12)。
【0117】
図6:LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法による、ゲノムDNAにおけるJAK2 V617F変異を検出するためのSNPの遺伝子型決定分析。
AおよびB:FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出。A:TF−1のDNAにおけるさまざまな希釈度のHELのDNAを用いた実験の結果が示されている。JAK2 V617Fのピーク(57℃)は1%の希釈度でも依然として検出可能である。B:代表的な患者のサンプルの結果を示している(#1:ホモ接合体、#2:ヘテロ接合体、#3:弱い、#4:変異なし)。
C:TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出。HELのDNAの希釈物での実験(100〜1%のHEL:白抜きの四角、TF−1細胞:白抜きの丸)と代表的な患者のいくつかのサンプル(黒の十字)を示している。#a:ホモ接合体の患者、#b:ヘテロ接合体の患者、#c:弱い患者、#d:変異のない患者。
【0118】
図7:赤血球増加症(つまり51%を超えるクリマトクリット値)を診断するために提案する診断シート。
シートの各段階についての患者の数は各欄の端に記載されており(n)、ここではすべての臨床データを示す患者のみをリストしている(n=81)。一次診断試験であるJAK2 V617Fの検出の結果、81人中58人の患者において、PV型の骨髄増殖症候群を診断するためのその他の調査を避けた。
【0119】
図8および図9:HEL細胞におけるJAK2 V617Fの発現が、JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)による処理の24時間後に減少する。
0〜6:JAK2 V617FのsiRNAで処理した(1〜6)または処理していない(0)HEL細胞。
C+:JAK2 V617F RVベクターでトランスフェクトした293HEK細胞。
C−:293HEK。
【0120】
図10:K562細胞におけるWT JAK2の発現レベルは、JAK2 V617Fに特異的なsiRNAによる処理の24時間後にも変化しなかった。
Je:WT JAK2のsiRNAで処理したK562細胞。
0〜6:JAK2 V617FのsiRNAで処理したK562細胞。
C−:293HEK(JAK2の発現なし)。
【実施例1】
【0121】
43人中39人の患者におけるJAK2 V617F変異の識別
【0122】
疾病状態にある前駆細胞の培養モデルの設定と生化学的阻害剤の利用によって、JAK2−STAT5、PI3キナーゼおよびSrcキナーゼの経路がPV前駆細胞のEpoに依存しない分化に必要であることが明らかになった(Ugo et al,2004)。これらの結果は、PVが原因である原発性の分子異常が、シグナル伝達経路に構成的活性を与えるチロシンキナーゼの変異のような、シグナル伝達経路の脱制御につながる主要タンパク質の異常であるという、我々の仮説を裏付けている。とはいえ、JAK2タンパク質の主要な役割は真性赤血球増加症に冒された43人の患者に対する検査により特定することができたのであり、該タンパク質はこれらのさまざまなシグナル伝達経路の最も上流に位置するタンパク質で、サイトカイン受容体のシグナル伝達経路に共通しているものであり、該受容体に対する応答の異常はPVにおいて説明されてきている。我々は、
−機能的アプローチ(RNA干渉によるPV細胞におけるJAK2の阻害)、
−ゲノム的アプローチ(遺伝子の23個のエクソンのシーケンシング)、および、
−構成的活性化の原因となるJAK2のリン酸化の異常を発見するための生化学的アプローチ
という3つの補足的なアプローチによって、PVの病理におけるJAK2プロテインキナーゼの関与を研究した。
【0123】
用いた生物材料は、赤血球増加症に冒されている、承諾を得た患者に由来するものであり、診断目的で採取され、Hotel DieuのLaboratoire Central d’Hematologieに送られたサンプルの残りと、治療のための瀉血に対応するものである。
【0124】
1.1 機能的研究
真性赤血球増加症に冒された患者の赤芽球におけるJAK2の機能の研究は、JAK2のmRNAのエクソン15に位置する配列を標的として認識する、JAK2配列に特異的なsiRNA(AMBION、Huntingdon、イギリス)を、エレクトロポレーションによってPVの赤芽球に形質導入することで行った。我々は、JAK2の阻害によって、Epoの不在下でのPV前駆細胞のクローニング能力と「自然発生的な」分化がかなり減少することを示した。JAK2のsiRNAをトランスフェクトした正常な赤芽球前駆細胞は、コントロールsiRNAと比較してクローン化能力が70%減少しており、このことは、JAK2のsiRNAによるトランスフェクションが有効であることを確証している。PVでは、赤芽球前駆細胞においてJAK2を阻害する効果がEpo不在の培養モデルにおいて研究されており、これによって悪性クローン細胞の研究が可能となっている。我々は、JAK2のsiRNAによるトランスフェクション後のPVの赤芽球前駆細胞のクローン化能力、アポトーシスおよび分化を、コントロールsiRNAの場合と比較した。Epoの不在下で培養したPV前駆細胞のクローン化能力の研究により、コントロールsiRNAの場合と比較して、JAK2のsiRNAをトランスフェクトした後にコロニーの数が明らかに減少したことが示された。これらの細胞のアポトーシスについてのフローサイトメトリー分析は、JAK2のsiRNAをトランスフェクトした細胞では、関連のないsiRNAの場合と比較してアポトーシスが顕著に増加したことを示している(70%対53%)。分化に対するJAK2のsiRNAの効果に関する研究(フローサイトメトリーで検出されたグリコフォリンAの回収)では、コントロールsiRNAとJAK2のsiRNAをトランスフェクトした前駆細胞の間ではわずかな違いを示しただけである。
【0125】
したがって、細胞研究の結果は、PVの赤芽球前駆細胞がEpoに依存せずに分化するにはJAK2が必要であることを示している。生化学的研究(免疫沈降)の第一の結果は、PVの赤血球前駆細胞をサイトカインから遮断すると、正常細胞と比較して、JAK2のより長いリン酸化が起こることを示している。
【0126】
1.2 JAK2のゲノム的研究
23個のエクソンに対するPCRをゲノムDNAに基づいて正常な被験者に対して行った。そして、細胞培養後にインビトロで得られた赤血球細胞のゲノムDNAを抽出した後に、3人のPV患者について研究した。
【0127】
我々は、JAK2のエクソン12に位置し、試験した3人の患者のうち2人に存在した点変異を識別した。この変異はコード配列の1849番塩基([ATGから開始したナンバリング]、GenBank NM_004972)に関与し、JAK2タンパク質のコドン617を変化させる(V617F)。
・通常のコドン617:バリン(V)をコードするgtc。
・変異したコドン617:フェニルアラニン(F)をコードするttc。
【0128】
インターネット上に公開されているデータベースにより、我々はそれが既知の多型ではないことを確認した。
【0129】
次に、我々は被験者群を広げた。現在、変異は試験した43ケースのうち39人のPV患者で見つかっている。対照(試験した15ケース)あるいは二次性赤血球増加症の患者(試験した18ケース)では変異を有する者は見つかっていない。
【0130】
患者におけるシーケンシングの結果
・試験した43のPV中39の変異(90%)。
・2/3のヘテロ接合体。
・13/39、つまり30%のケースが「ホモ接合体」(9pでのヘテロ接合性の喪失と同じ割合)。
【0131】
コントロール
・試験した33人の対照中0例の変異。
−うち、15人は正常な被験者。
−18人は二次性赤血球増加症(自然発生的なコロニーなし)。
【0132】
JAK2のこの異常の発見は、PVに関わる多くの成長因子(Epo、TPO、IL−3、IL−6、GM−CSF、インスリン)に対する過敏性を説明している。実際、JAK2はこれらサイトカインの受容体のシグナル伝達経路に関与するタンパク質である。
【0133】
さらに、JAK2とEpo−Rとの連関は、JAK2が構成的にEpo−Rに固定されるという点で特徴的である。つまり、ゴルジ装置内で開始されるJAK2/Epo−Rの連関は、赤芽球の膜でのEpo−Rのプロセッシングに必要である。したがって、JAK2とR−Epoとの連関の変化の原因となっているJAK2の異常は、赤芽球系での骨髄の過形成の優位性を説明しうるが、一方、このタンパク質は多くのシグナル伝達経路に関与するものである。また、Moliterno et coll(Moliterno et al.,1998、Moliterno et Spivak,1999)は、グリコシル化の欠如に関連するmplの膜発現の欠如を立証している。Epo−Rから類推して、JAK2がc−mplのプロセッシングに必要である可能性がある。JAK2の異常は、PVで見られるc−mplの膜発現の欠如を説明するものであろう。
【0134】
JAK2は、その近位ドメインにおいて、Epo−Rの、よく保存されたドメインであるBox2に結合する。Epoによる刺激がないとき、JAK2は構成的にEpo−Rに固定されるが、リン酸化していない形態であり、したがって非活性的である。Epoによる受容体の刺激後、二つのJAK2分子はリン酸化し、そしてEpo−Rをリン酸化するのだが、このことによって、STAT5、Grb2、PI3Kタンパク質のようなシグナル伝達に関与するその他のタンパク質を動員し、リン酸化することが可能になる。JAK2タンパク質はすべてのJAKと同様、機能的なキナーゼ領域(JH1)、チロシンキナーゼ活性のない偽キナーゼ領域(JH2)および、JAKファミリーのメンバーに特徴的な複数の保存ドメイン(JH3〜JH7)を有している。JH2ドメインはJAK2のチロシンキナーゼ活性の調整に関与すると考えられる。JAK2タンパク質のマッピングに関する入手可能なデータ(Lindauer,2001)によると、617番アミノ酸はこのJH2ドメインに位置し、モデル化の研究によると、キナーゼ活性の調節に特に重要な領域に位置している。
【0135】
この発見(サイトカインに依存しないメカニズムの理解、さまざまなSMPの分類)の生理病理学的利点を越えて、患者における変異の実証は、診断の確認を可能にする試験を初めて提供するものである。医療診断のアプローチにおいて、JAK2の変異の検査は、悪性クローンに属する血液多核球に対して行うことができるものである。
【0136】
また、本発明は、変異タンパク質に特異的なキナーゼを阻害するタイプの特異的な処理、あるいは遺伝子治療の開発を提供するものでもある。
【実施例2】
【0137】
赤血球増加症の一次診断のためのJAK2 V617F変異体の検出
【0138】
2.1 患者、材料および方法
JAK2 V617Fを検出するための、シーケンシングと二つのSNP遺伝子型決定法の比較。
【0139】
患者の細胞
MPD(すなわち赤血球増加症、血小板増加症、白血球増加症)の疑いがある119のサンプルを分析した。58の血液サンプルをこのために採取し、骨髄バンクの61のサンプルを遡及的に分析した。
【0140】
製造者(Eurobio、フランス)の指示にしたがって密度勾配を用いて末梢顆粒球を単離した。Ficollを用いた勾配遠心法を利用して骨髄の単核細胞を単離した。標準的な手順でゲノムDNAを抽出した。LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法の感度を知るために、最少残基の野生型対立遺伝子とのホモ接合のサンプルに由来するDNAを、正常DNAで連続希釈した。
【0141】
細胞系
標準的なポジティブコントロールであるTF−1細胞系(変異なし)のDNAにおける、ホモ接合性で変異した(JAK2 V617F)ヒト赤白血病細胞系(HEL)のDNAの連続希釈物(1、0.5、0.1、0.05、0.01)を用いた。この細胞系を、ウシ胎児血清を加えたMEM−α培地(Invitrogen)中で成長させた。
【0142】
FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出
JAK2のエクソン12の標的配列の増幅および該配列とのハイブリダイゼーションのために、プライマーとプローブを設計した。変異部位の位置(1849G/T)を、3’をフルオレセインで標識したドナーキャプチャープローブと、5’末端をLightCycler(登録商標)Red640(LCRed640)で標識した、隣接するアクセプターアンカープローブで覆い、該アンカープローブの3’末端は伸長を避けるためにリン酸化した。増幅および融解曲線分析はLightCycler(登録商標)の機器(Roche Diagnostics、Meylan、フランス)で実施した。最終的な反応体積は20μlであり、10ngのDNA、14μlのLightCycler FastStart DNA Master混合物、3mMのMgCl2、0.2μMのプライマー、0.075μMの各プローブが含まれている。簡単に説明すると、サンプルを95℃で10分間加熱し、45サイクル(95℃で10秒、53℃で10秒、72℃で15秒)のPCR増幅の後、95℃で10秒間の変性過程と、それぞれ30秒にわたる63℃と45℃での二回のハイブリダイゼーション過程を行い、そして融解曲線は45℃と70℃(0.1℃/秒)の間に含まれる領域にあった。LightCycler(登録商標)プログラム上での分析は、温度に対する蛍光産物の曲線[Tに対する2(dFl2/Fl1)/dT)]をプロットすることで行った。変異体およびWTのピークはそれぞれ57℃と63℃で見られた。
【0143】
TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出
1849位でのSNPを含む92bpの産物を増幅するために二つのプライマーを設計した。二つのMGB蛍光プローブを、異なる色で蛍光標識して、一つはWT対立遺伝子を標的とし、もう一つは変異対立遺伝子を標的とするよう設計した。96ウェルプレート上で、TaqMan(登録商標)PCRに基づく方法を用いて遺伝子型決定を行った。最終的な反応体積は12.5μlであり、10ngのゲノムDNA、6.25μlのTaqMan(登録商標)Universal Master Mixおよび0.31μlの40×Assays−on−Demand SNP Genotyping Assay Mix(Applied Biosystems)が含まれている。プレートを95℃で10分間加熱し、その後、92℃で15秒の40回の変性サイクルと60℃で1分間の対合/伸長を行った。熱サイクルは7500 Real Time PCR System(Applied Biosystems)で行った。分析はSDSプログラムのバージョン1.3を用いて実施した。最終的な対立遺伝子の識別のための遺伝子型決定は、PCR後の蛍光読み取りに基づいて得られた変異JAK2の蛍光の曲線(Rn)に対する、WTプローブに由来するRnの目視による判定で行った。
【0144】
赤血球増加症の患者とサンプルの採集
何らかの治療を行う前に、診断時に、51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者を調べ、WHO基準およびPVSG基準の有無について検査した。51%という値はヘマトクリット値の正常域の上限である(Pearson TC et al.,A Polycythemia Vera Updated:Diagnosis,Pathobiology,and Treatment.Hematology(Am.Soc.Hematol.Educ.Program.)2000:51−68)。骨髄細胞をクローン化の測定のために採取し、過剰量の細胞をDNA抽出のために採取した。血清中のエリスロポエチン(Epo)をさまざまな研究所で測定し、その結果、該エリスロポエチンが各研究所の正常域の下限値より低いときには低いとの報告を、同様にして正常あるいは高いとの報告を受けた。同じ患者に由来する末梢顆粒球を先述のように精製し、各時間における血液サンプルを利用できるようにした。骨髄サンプルおよび血液サンプルをインフォームドコンセントを得た後に採取した。
【0145】
EECの分析
Epoに対する赤血球の応答特性のインビトロでの測定を、同一の研究所(Hotel Dieu、パリ)において、先述した凝固血漿培養法によって行った(Casadevall N,Dupuy E,Molho−Sabatier P,Tobelem G,Varet B,Mayeux P.Autoantibodies against erythropoietin in a patient with pure red−cell aplasia. N.Engl.J.Med.1996;334:630−633)。
【0146】
統計分析
マーカーの相関関係はスピアマンの順位相関係数(R)を用いて求めた。
【0147】
2.2 結果
JAK2 V617F変異を検出するためのPCRに基づく遺伝子型決定法の実行可能性と感度
JAK2 V617F変異を検出するためのシーケンシング、LightCycler(登録商標)法およびTaqman(登録商標)法の効率を評価するために、MPDの疑いのある患者に由来する119のサンプルにおいて、3つの方法を平行して利用して該変異の存在を調査した。JAK2 V617F変異は119サンプル中83サンプルで効果的に検出され、35サンプルは3つの方法のいずれによっても変異を示さなかった。1サンプルのみにおいて、シーケンシングではLightCycler(登録商標)とTaqman(登録商標)の二つの方法で明らかになった変異を検出できなかったことから、後者の方法がより感度が良いことが示唆される。
【0148】
方法の感度を評価するため、二つの異なった方法を用いた。つまり、変異のないTF−1細胞系のDNAにおける、ホモ接合性で変異したHEL細胞系のDNAの連続希釈液を試験し、また、正常DNAにおける、JAK2 V617F変異についてホモ接合の患者に由来するゲノムDNAの連続希釈液を試験した。シーケンシングでは、TF−1細胞系のDNAで希釈した5%未満のHEL細胞系のDNA、正常DNAで希釈した10%未満のホモ接合性の変異患者のDNAでは、変異した対立遺伝子を検出できなかった。LightCycler(登録商標)法およびTaqman(登録商標)法の感度は同等で、シーケンシングをわずかに上回っており、TF−1細胞系のDNAで希釈したHEL細胞系のDNAでは0.5〜1%(図6)、正常DNAで希釈したホモ接合性の変異患者のDNAでは2〜4%まで可能であった。
【0149】
診断時の赤血球増加症患者の特徴
診断時に51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者の主要な特徴を表1にまとめた。
【0150】
【表1】
【0151】
51%を超えるヘマトクリット値を有する88人の患者をPVSG基準とWHO基準にしたがって診断し、真性赤血球増加症(PV)、突発性赤血球増加症、二次性赤血球増加症、および測定した赤血球量の増加していないときの「絶対的赤血球増加症ではない」(AEではない)という四つのグループに分けた。8人の患者は、いくつかの臨床データが入手不可能であったため、決定的な診断を得ることができなかった。Ht:ヘマトクリット、Hb:ヘモグロビン、WBC:白血球、EEC:内因性赤血球コロニー、Epo:エリスロポエチン、σ:標準偏差。患者は、WHO基準(Pierre R.et al.,editeurs.World Health Organization Classification of Tumours;Pathology and Genetics of tumours of hematopoietic and lymphoid tissues.Lyon:IARC Press;2001:32−34)とPVSG基準(Pearson TC,Messinezy M. The diagnostic criteria of polycythaemia rubra vera.Leuk Lymphoma 1996:22 Suppl 1:87−93)のそれぞれに応じて、PV診断を受けた61〜45人の患者、二次性赤血球増加症の5人、突発性赤血球増加症の11〜21人、そして絶対的赤血球増加症ではない3人(正常な赤血球量)の、4つの主要グループに分けることができた。臨床データは7人の患者について不完全であったが、それは、PVの診断がWHO基準でもPVSG基準でも確認できなかったということである。二つの分類におけるA1基準の間にある違いのために、赤血球量の測定を行っていない6人の患者はWHO分類に入れることはできるが、PVSG分類には入れることができない。一人の患者は低酸素血症とEECの形成を同時に示し、したがって診断が困難であった。細胞遺伝学的分析を35人の患者で行い、32人のPV患者(WHO基準による)のうち7人が細胞遺伝学的異常を有し、そのうち5人が9トリソミーを、1人が7qトリソミーを有しており、そして1人が18番染色体に付加的な物質を有していた。
【0152】
PVのPVSG基準とWHO基準に対応するJAK2 V617Fの存在
PVSG基準によりPVとして診断された45人の患者のうち43人(96%)でJAK2 V617Fが存在し、WHO基準で診断された61人の患者のうち57人(93%)で存在した(表1)。しかし、PVSG分類にしたがってPVでないとして分類された29人の患者のうち8人は変異を示したのに対し、WHO分類にしたがってPVでないとされた患者19人は変異を示さなかった。これら8人の患者はPVSG基準によればIEであると考えられ、WHO基準によればPVであると考えられる。SEと診断された患者も正常な赤血球量を有する患者(「AEではない」)も変異を有していなかった。したがって、JAK2 V617Fの有無は、WHO基準を用いた場合には80人中76人の患者で(95%、R=0.879、p<0.0001)、PVSG基準を用いた場合では74人中64人の患者で(86.5%、R=0.717、p<0.0001)、PVの陽性診断に対応する。さらに、WHO基準でPVでないと診断された患者はいずれも変異を有していなかったため、JAK2 V617Fの検出は絶対的赤血球増加症においては100%の予測値を有することになる。
【0153】
一部の著者(Mossuz P. et al.,Diagnostic value of serum erythropoietin level in patients with absolute erythrocytosis. Haematologica 2004;89:1194−1198)は血清Epoレベルの測定を、絶対的赤血球増加症の患者に対する一次診断試験と考えており、Epoレベルが正常域の下限値の下にあれば、PVの診断について97%の特異度と97.8%の予測値を有する。我々の研究において、EpoレベルとWHO基準およびPVSG基準によるPV診断との相関関係は、それぞれ61人中50人(82%、R=0.488、p=0.0002)および56人中39人(70%、R=0.358、p=0.0067)の患者で見られた。次に、我々はJAK2 V617Fの存在下または不在下で血清Epoレベルを比較し、68人の患者のうち52人(76%、R=0.416、p=0.0004)が適切な相関関係を有することを見出した。
【0154】
JAK2 V617F変異の存在はEECを形成する能力に対応する。
【0155】
異なる三つのチームにより、JAK2 V617FをトランスフェクトしたEpoに依存する細胞系が、増殖についてはEpoに依存しておらずEpoに対して過敏であり、PVにおいて説明されている赤血球前駆細胞の非依存性および過敏性と似た振る舞いを見せることが示されている。したがって我々は、JAK2 V617Fを有する患者がEECの形成も示すという仮説を立てた。EECの形成をまったく示さない20人の赤血球増加症患者のうち、一人は変異を示し、JAK2 V617Fの検出に関する陽性の予測値に疑問が生じた。しかし、この患者がEECも全く示さなくとも、該患者は多くの陽性のWHO基準およびPVSG基準を満たしており、該患者を両方の分類法においてPVとして分類することができる。したがって、この患者は「JAK2について偽陽性」というよりも「EECについて偽陰性」と捉えるべきである。EECを有する67人の患者のうち、62人はJAK2 V617Fを有しており、5人の患者は検出に感度のある方法を用いた際には変異していなかった。これら5人の患者のうち、5人中4人と5人中2人は、それぞれWHO基準とPVSG基準にしたがってPVグループに分類することができた。全体では、分析した87人の患者のうち、JAK2 V617F変異の有無が、87人中81人の患者(93.1%、R=0.824、p<0.0001)においてEECを形成する能力の有無に対応していた。
【0156】
骨髄の単核細胞(BMMC)におけるJAK2 V617F変異の存在は、末梢顆粒球における該変異の存在に対応している。
【0157】
診断時にJAK2 V617F変異を検出するために末梢血顆粒球を用いることで骨髄細胞の分析の実施を避けられるかどうかを検討するために、我々は、骨髄サンプルと末梢血サンプルが診断時に両方利用可能な50人の患者について(35人のPV患者、8人のSE患者および8人のMPDの疑いのある者を含む)、シーケンシング法、LightCycler(登録商標)法およびTaqMan(登録商標)法のそれぞれで得られた結果を比較した。すべての場合(変異のある34人、変異のない16人)で、変異は同様に検出された。
【0158】
III−結論
このように、我々は、明白な二次的赤血球増加症の場合を除き、顆粒球におけるJAK2 V617Fを感度の良い方法で検出することが赤血球増加症の診断の最初のステップである(図7)、新規なPV診断カードを提案する。このアプローチにはいくつかの利点があり、常に実行可能というわけではなく結果を検討しなくてはならないことのある、アイソトープを有する赤血球量の測定を避けることができる。また、骨髄の吸引や、時間がかかり標準化されていないEEC分析の実行を避けることもできる。これによりPVの陽性診断のコストが大きく低下するのだが、それは、51%を超えるヘマトクリット値を有しJAK2 V617Fについて陰性の患者のみが、赤血球増加症を特徴づけるために実際に行う全ての調査を受けることになるからである。赤血球増加症におけるJAK2 V617Fの検出だけでPVの診断が支持されても、骨髄の生検の実施は依然として有効であるが、それは、該生検を行うことで骨髄線維症の兆候または芽球細胞の存在を明らかにすることができ、それによりPVの白血病性形質転換が確認されるからである。しかし、骨髄の生検は、細胞遺伝学的分析とともに、随意的な研究として行われるべきものであると考えられる。
【0159】
また、30%のET、50%のIMF、そして特徴が明らかにされていない、稀ないくつかのMPDにおいてもJAK2 V617Fが検出され、これにより、異なる臨床所見を伴うMPDの新しいグループを決定した。これらの違いの理由はまだ分かっておらず、共通の生理病理学的原因と異なる表現型とによってこれらの病気を一つの骨髄増殖群にまとめるにはまだ早い。今後の詳しい臨床研究によって、より特定的に、PV、ET、IMFおよびJAK2 V617Fを有するその他の稀なMPDの間で共通する兆候が、特に絶対的赤血球増加症、Epoレベル、骨髄線維症そして細胞遺伝学的異常の枠組みで、より的確に特徴づけられるであろう。したがって、慢性的白血球増加症、血小板増加症および赤血球増加症の診断における最初の手段としてJAK2 V617Fの検出を用いることも考えられる。JAK2 V617Fの存在はMPDグループの新たな定義を可能とするだけではなく、確実に、特異的ターゲッティング療法の開発の基礎となるものでもある。
【0160】
実施例3:JAK2 V617Fを阻害するがWT JAK2は阻害しない、JAK2 V617F変異に特異的なsiRNA。
【0161】
SEQ ID No25〜27に対応するsiRNA 1、3および4は、HEL系で発現するJAK2 V617F変異タンパク質を阻害するが、K562系で発現する野生型JAK2タンパク質は阻害しない。結果は図8、図9および図10に示している。
【0162】
参考文献
−Andersson, P., LeBlanc, K., Eriksson, B.A., and Samuelsson, J. (1997). No evidence for an altered mRNA expression or protein level of haematopoietic cell phosphatase in CD34+ bone marrow progenitor cells or mature peripheral blood cells in polycythaemia vera. Eur J Haematol 59, 310−7.
−Asimakopoulos, F.A., Hinshelwood, S., Gilbert, J.G., Delibrias, C.C., Gottgens, B., Fearon, D.T., and Green, A.R. (1997). The gene encoding hematopoietic cell phosphatase (SHP−1) is structurally and transcriptionally intact in polycythemia vera. Oncogene 14, 1215−22.
−Casadevall, N., Vainchenker, W., Lacombe, C., Vinci, J., Chapman, J., Breton−Gorius, J., and Varet, B. (1982). Erythroid progenitors in Polycythemia Vera. demonstration of their hypersensitivity to erythropoietin using serum−free cultures. Blood 59, 447−451.
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−Kralovics, R., Guan, Y., and Prchal, J.T. (2002). Acquired uniparental disomy of chromosome 9p is a frequent stem cell defect in polycythemia vera. Exp Hematol 30, 229−36.
−Le couedic, J.P., Mitjavila, M.T., Villeval, J.L., Feger, F., Gobert, S., Mayeux, P., Casadevall, N., and Vainchenker, W. (1996). Missense mutation of the erythropoietin receptor is a rare event in human erythroid malignancies. Blood 87, 1502−11.
−Lindauer, K., Loerting, T., Liedl, K.R., and Kroemer, R.T. (2001). Prediction of the structure of human Janus kinase 2 (JAK2) comprising the two carboxy−terminal domains reveals a mechanism for autoregulation. Protein Eng 14, 27−37.
−Means, R.T., Krantz, S.B., Sawyer, S., and Gilbert, H. (1989). Erythropoietin receptors in polycythemia vera. J Clin Invest 84, 1340.
−Moliterno, A.R., Hankins, W.D., and Spivak, J.L. (1998). Impaired expression of the thrombopoietin receptor by platelets from patients with Polycythemia Vera. N Engl J Med 338, 572−580.
−Moliterno, A.R., and Spivak, J.L. (1999). Posttranslational processing of the thrombopoietin receptor is impaired in polycythemia vera. Blood 94, 2555−61.
−Pahl, H.L. (2000). Towards a molecular understanding of polycythemia rubra vera. Eur J Biochem 267, 3395−401.
−Pearson (2001). Evaluation of diagnostic criteria in polycythemia vera. Semin Hematol. 38, 21−4.
−Roder S, S. C., Meinhardt G, Pahl HL. (2001). STAT3 is constitutively active in some patients with Polycythemia rubra vera. Exp Hematol 29, 694−702.
−Silva, M., Richard, C., Benito, A., Sanz, C., Olalla, I., and Fernandez−Luna, J.L. (1998). Expression of Bcl−x in erythroid precursors from patients with polycythemia vera. N Engl J Med 338, 564−71.
−Temerinac, S., Klippel, S., Strunck, E., Roder, S., Lubbert, M., Lange, W., Azemar, M., Meinhardt, G., Schaefer, H.E., and Pahl, H.L. (2000). Cloning of PRV−1, a novel member of the uPAR receptor superfamilly, which is overexpressed in polycythemia rubra vera. Blood 95, 2569−76.
−Ugo, V., Marzac, C., Teyssandier, I., Larbret, F., Lecluse, Y., Debili, N., Vainchenker, W., and Casadevall, N. (2004). Multiple signaling pathways are involved in erythropoietin−independent differentiation of erythroid progenitors in Polycythemia Vera. Experimental Hematology 32, 179−187.
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】PVにおけるJAK2の主要な役割を示した図。
【図2】エリスロポエチンの不在下で分化できるPVのCD34+前駆細胞の培養モデルの設定を示した図。
【図3】JAK−STAT、Pi3−KおよびSrcキナーゼ経路の阻害による赤血球の自然発生的な分化の抑制を示した図。
【図4】PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の手順を示した図。
【図5】PV前駆細胞におけるJAK2の阻害の結果を示した図。
【図6A】FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出を示したグラフ。
【図6B】FRETハイブリダイゼーションプローブを用いたLightCycler(登録商標)の融解曲線分析による変異の検出を示したグラフ。
【図6C】TaqMan(登録商標)を用いた対立遺伝子に特異的な増幅による変異の検出を示したグラフ。
【図7】赤血球増加症(つまり51%を超えるクリマトクリット値)を診断するために提案する診断シートを示した図。
【図8】JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)を示した図。
【図9】JAK2 V617Fに特異的なsiRNA(siRNA#1、#3および#4)による処理により減少した、HEL細胞におけるJAK2 V617Fの発現を示した図。
【図10】JAK2 V617Fに特異的なsiRNAによる処理によって変化しない、K562細胞におけるWT JAK2の発現レベルを示した図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下で「JAK2 V617F変異体」と称する、617番アミノ酸に変異を含む、より特徴的にはV617F変異を含むことを特徴とする、単離されたJAK2(Janusキナーゼ2)タンパク質であり、該タンパク質の配列がSEQ ID No1で表されるか、またはその他の哺乳動物における類似配列であるタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のJAK2 V617F変異体をコードするヌクレオチド配列であり、とりわけ、転写開始を示すATGから数えて1849位でt/g変異を有する配列SEQ ID No2。
【請求項3】
ウイルス、プラスミド、または裸DNA型のクローニングベクターおよび/または発現ベクターであり、哺乳動物の細胞で有効なプロモータの制御下で請求項2に記載の配列を含むことを特徴とするベクター。
【請求項4】
請求項1に記載の組換えJAK2 V617F変異体を発現する哺乳動物の細胞。
【請求項5】
請求項1に記載の組換えJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項6】
相同組換えまたは部位特異的組換えにより、ゲノム中に少なくともJAK2 V617Fをコードする配列を組み込んだマウスまたはラットであることを特徴とする、請求項5に記載のヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項7】
JAK2 V617F/JAK2 V617Fホモ接合体またはJAK2 V617F/JAK2ヘテロ接合体であり、真性赤血球増加症および/またはJAK2 V617Fによって誘発される骨髄増殖症候群を再現することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項8】
配列SEQ ID No3または4の連続する10〜30個のヌクレオチドを含み、変異ヌクレオチドt1849を含むプローブまたはプライマー。
【請求項9】
配列SEQ ID No5〜11および15〜28から選択される、請求項8に記載のプローブまたはプライマー。
【請求項10】
PV患者またはPVもしくはその他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症を発症する恐れのある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのエクスビボまたはインビトロでの方法であり、
a)患者の核酸サンプルを得ること、
b)前記核酸サンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出すること
を含み、
G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の少なくとも一つのプローブとのハイブリダイゼーションの過程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載の少なくとも一つのプライマー対を用いたPCR反応による増幅の過程を含むことを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
個体のmRNAについて実施され、RT−PCR反応を含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記プライマーを用いた増幅過程と、それに続く、ハイストリンジェンシーの条件の下でG1849T変異領域に対応する配列とハイブリダイズする少なくとも一つのプローブ、好ましくは二つのプローブとのハイブリダイゼーションの過程、そして前記プローブのマーカーが生成するシグナルの検出を含み、プローブとプライマーが請求項8または請求項9で定義されたものであることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
JAK2遺伝子のG1849T変異に特異的な一つまたは複数のSNP(一塩基変異多型)、とりわけSEQ ID No17と18、23と24、あるいは、27と28を用いて、前記核酸サンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
PVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒された、あるいはこれらを発症する恐れのある患者のサンプルにおいてJAK2 V617F変異体の有無を検出するためのエクスビボまたはインビトロでの方法であり、
a)患者のサンプルを得ること、
b)JAK2 V617F変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
前記変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴とする方法。
【請求項17】
サンプルを、JAK2タンパク質のV617F変異体に特異的な抗体、好ましくはV617F変異体と変異していないJAK2タンパク質を区別する能力を有する抗体と接触させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、一本鎖または二本鎖、キメラ抗体、ヒト化抗体、あるいは抗体に結合する断片である抗体F(ab’)2およびF(v)であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ELISA試験であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
51%を超えるヘマトクリット値を有する患者の亜集団に対して実施されることを特徴とする、請求項10〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
450000を超える血小板の割合を有する患者の亜集団に対して実施されることを特徴とする、請求項10〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
JAK2 V617F変異体を特異的に認識するモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項22に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項24】
JAK2遺伝子のG1849T変異の有無を特異的に検出するための、請求項8または9で定義した一つまたは複数のプライマーあるいはプローブを含む、ガンにおけるJAK2 V617F変異体を検出するためのキット。
【請求項25】
患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症に冒されているかどうか判定するためのキットであり、JAK2遺伝子におけるG1849T変異の有無を特異的に検出するための、請求項8または9で定義した一つまたは複数のプローブまたはプライマーを含むキット。
【請求項26】
さらに、PCR増幅のための耐熱ポリメラーゼ、増幅および/またはハイブリダイゼーション過程のための一つまたは複数の溶液、ならびに、マーカーの検出を可能にするあらゆる試薬から選択される少なくとも一つの要素を含む、請求項24または25に記載のキット。
【請求項27】
請求項22に記載の抗体を含む、患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒されているかどうかを判定するためのキット。
【請求項28】
請求項1に記載のJAK2 V617F変異体の発現を50%以上あるいは95%以上減少させる能力を有するsiRNA。
【請求項29】
19〜25個のヌクレオチド、好ましくは19個のヌクレオチド長を有し、第一の鎖の配列が、t1849変異ヌクレオチドを含む配列SEQ ID No3、SEQ ID No4またはSEQ ID No11に同一であり、第二の鎖の配列がそれらの配列に相補的であることを特徴とする、請求項28に記載のsiRNA。
【請求項30】
JAK2 V617Fの発現を80%より多く、あるいは90%より多く減少させ、野生型JAK2の発現を25%より少なく、あるいは5%より少なく減少させることを特徴とする、請求項28または29に記載のsiRNA。
【請求項31】
−UGGAGUAUGUUUCUGUGGA(SEQ ID No29)、
−GGAGUAUGUUUCUGUGGAG(SEQ ID No30)、
−GAGUAUGUUUCUGUGGAGA(SEQ ID No31)、
から構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項28に記載のsiRNA。
【請求項32】
一つまたは複数の化合物によるJAK2 V617Fに特異的な阻害を判定することを可能にする方法であり、
a)一つまたは複数の化合物を、固定および/または阻害に適した条件下で、請求項1に記載のJAK2 V617Fタンパク質、JAK2 V617Fを含む膜画分、あるいは、請求項4に記載のJAK2 V617Fを発現する細胞と接触させること、および
b)JAK2 V617Fの特異的な固定および/または阻害を検出することから成る過程を含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の複数の分子に対する一連の試験と、JAK2 V617Fに対して1μM未満、好ましくは100nM未満のIC50を有する分子を選択する過程とを含むスクリーニング方法。
【請求項34】
さらに、JAK2に対して5μM未満あるいは1μM未満のIC50を有する分子の負の選択を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
JAK2 V617Fのリン酸化の阻害を免疫沈降によって判定する、請求項32〜34のいずれか一つに記載のインビトロでのスクリーニング方法。
【請求項36】
エリスロポエチン(Epo)の不在下で分化する能力を有する初代前駆細胞CD34+JAK2 V617Fに対する、あるいは、JAK2 V617F変異体の導入によって独立因子となった細胞系に対する、請求項32〜35のいずれか一つに記載のインビボでのスクリーニング方法。
【請求項37】
請求項4に記載の細胞を用いた、請求項32〜36のいずれか一つに記載のインビボでのスクリーニング方法。
【請求項38】
医薬品の候補を識別するための方法であり、
a)真性赤血球増加症を再現している、および/または、JAK2 V617Fの存在に関連する骨髄増殖症候群に冒されている、請求項5〜7のいずれか一つで定義したJAK2 V617Fを発現するヒトではないトランスジェニック動物に、化合物を投与すること、
b)化合物の効果を判定し、真性赤血球増加症の赤芽球の増殖および自然発生的な分化の減少もしくはブロック、またはJAK2 V617Fの存在に関連する細胞増殖の減少が観察される医薬品の候補を選択すること
からなる過程を含む方法。
【請求項39】
医薬品製造のための、請求項28〜31のいずれか一つに記載のsiRNAの利用方法。
【請求項40】
悪性血液疾患、特に、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、骨髄性脾腫あるいは原発性骨髄線維症を含む骨髄増殖症候群の治療を目的とする医薬品を調製するための、請求項39に記載の利用方法。
【請求項41】
JAK2 V617F変異に関連する骨髄増殖症候群、その他の悪性血液疾患、およびJAK2 V617Fを発現する癌腫、黒色腫および神経芽腫のような充実性腫瘍の治療を目的とする医薬品を調製するための、請求項39に記載の利用方法。
【請求項42】
請求項28〜31のいずれか一つに記載のsiRNAと薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物。
【請求項1】
以下で「JAK2 V617F変異体」と称する、617番アミノ酸に変異を含む、より特徴的にはV617F変異を含むことを特徴とする、単離されたJAK2(Janusキナーゼ2)タンパク質であり、該タンパク質の配列がSEQ ID No1で表されるか、またはその他の哺乳動物における類似配列であるタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のJAK2 V617F変異体をコードするヌクレオチド配列であり、とりわけ、転写開始を示すATGから数えて1849位でt/g変異を有する配列SEQ ID No2。
【請求項3】
ウイルス、プラスミド、または裸DNA型のクローニングベクターおよび/または発現ベクターであり、哺乳動物の細胞で有効なプロモータの制御下で請求項2に記載の配列を含むことを特徴とするベクター。
【請求項4】
請求項1に記載の組換えJAK2 V617F変異体を発現する哺乳動物の細胞。
【請求項5】
請求項1に記載の組換えJAK2 V617Fを発現する、ヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項6】
相同組換えまたは部位特異的組換えにより、ゲノム中に少なくともJAK2 V617Fをコードする配列を組み込んだマウスまたはラットであることを特徴とする、請求項5に記載のヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項7】
JAK2 V617F/JAK2 V617Fホモ接合体またはJAK2 V617F/JAK2ヘテロ接合体であり、真性赤血球増加症および/またはJAK2 V617Fによって誘発される骨髄増殖症候群を再現することを特徴とする、請求項5または請求項6に記載のヒトではないトランスジェニック動物。
【請求項8】
配列SEQ ID No3または4の連続する10〜30個のヌクレオチドを含み、変異ヌクレオチドt1849を含むプローブまたはプライマー。
【請求項9】
配列SEQ ID No5〜11および15〜28から選択される、請求項8に記載のプローブまたはプライマー。
【請求項10】
PV患者またはPVもしくはその他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症を発症する恐れのある患者のサンプルにおいて、JAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を判定するためのエクスビボまたはインビトロでの方法であり、
a)患者の核酸サンプルを得ること、
b)前記核酸サンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出すること
を含み、
G1849T変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の少なくとも一つのプローブとのハイブリダイゼーションの過程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載の少なくとも一つのプライマー対を用いたPCR反応による増幅の過程を含むことを特徴とする、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
個体のmRNAについて実施され、RT−PCR反応を含むことを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記プライマーを用いた増幅過程と、それに続く、ハイストリンジェンシーの条件の下でG1849T変異領域に対応する配列とハイブリダイズする少なくとも一つのプローブ、好ましくは二つのプローブとのハイブリダイゼーションの過程、そして前記プローブのマーカーが生成するシグナルの検出を含み、プローブとプライマーが請求項8または請求項9で定義されたものであることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
JAK2遺伝子のG1849T変異に特異的な一つまたは複数のSNP(一塩基変異多型)、とりわけSEQ ID No17と18、23と24、あるいは、27と28を用いて、前記核酸サンプルにおいてJAK2遺伝子のG1849T変異体の有無を検出することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
PVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒された、あるいはこれらを発症する恐れのある患者のサンプルにおいてJAK2 V617F変異体の有無を検出するためのエクスビボまたはインビトロでの方法であり、
a)患者のサンプルを得ること、
b)JAK2 V617F変異体の有無を検出すること
を含んでおり、
前記変異体の存在がPVまたは他のあらゆる骨髄増殖症候群の指標となることを特徴とする方法。
【請求項17】
サンプルを、JAK2タンパク質のV617F変異体に特異的な抗体、好ましくはV617F変異体と変異していないJAK2タンパク質を区別する能力を有する抗体と接触させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抗体がモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、一本鎖または二本鎖、キメラ抗体、ヒト化抗体、あるいは抗体に結合する断片である抗体F(ab’)2およびF(v)であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ELISA試験であることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
51%を超えるヘマトクリット値を有する患者の亜集団に対して実施されることを特徴とする、請求項10〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項21】
450000を超える血小板の割合を有する患者の亜集団に対して実施されることを特徴とする、請求項10〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
JAK2 V617F変異体を特異的に認識するモノクローナル抗体。
【請求項23】
請求項22に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項24】
JAK2遺伝子のG1849T変異の有無を特異的に検出するための、請求項8または9で定義した一つまたは複数のプライマーあるいはプローブを含む、ガンにおけるJAK2 V617F変異体を検出するためのキット。
【請求項25】
患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群、とりわけ赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症および骨髄線維症に冒されているかどうか判定するためのキットであり、JAK2遺伝子におけるG1849T変異の有無を特異的に検出するための、請求項8または9で定義した一つまたは複数のプローブまたはプライマーを含むキット。
【請求項26】
さらに、PCR増幅のための耐熱ポリメラーゼ、増幅および/またはハイブリダイゼーション過程のための一つまたは複数の溶液、ならびに、マーカーの検出を可能にするあらゆる試薬から選択される少なくとも一つの要素を含む、請求項24または25に記載のキット。
【請求項27】
請求項22に記載の抗体を含む、患者が真性赤血球増加症またはJAK2 V617F変異体が関与する他のあらゆる骨髄増殖症候群に冒されているかどうかを判定するためのキット。
【請求項28】
請求項1に記載のJAK2 V617F変異体の発現を50%以上あるいは95%以上減少させる能力を有するsiRNA。
【請求項29】
19〜25個のヌクレオチド、好ましくは19個のヌクレオチド長を有し、第一の鎖の配列が、t1849変異ヌクレオチドを含む配列SEQ ID No3、SEQ ID No4またはSEQ ID No11に同一であり、第二の鎖の配列がそれらの配列に相補的であることを特徴とする、請求項28に記載のsiRNA。
【請求項30】
JAK2 V617Fの発現を80%より多く、あるいは90%より多く減少させ、野生型JAK2の発現を25%より少なく、あるいは5%より少なく減少させることを特徴とする、請求項28または29に記載のsiRNA。
【請求項31】
−UGGAGUAUGUUUCUGUGGA(SEQ ID No29)、
−GGAGUAUGUUUCUGUGGAG(SEQ ID No30)、
−GAGUAUGUUUCUGUGGAGA(SEQ ID No31)、
から構成されるグループから選択されることを特徴とする、請求項28に記載のsiRNA。
【請求項32】
一つまたは複数の化合物によるJAK2 V617Fに特異的な阻害を判定することを可能にする方法であり、
a)一つまたは複数の化合物を、固定および/または阻害に適した条件下で、請求項1に記載のJAK2 V617Fタンパク質、JAK2 V617Fを含む膜画分、あるいは、請求項4に記載のJAK2 V617Fを発現する細胞と接触させること、および
b)JAK2 V617Fの特異的な固定および/または阻害を検出することから成る過程を含む方法。
【請求項33】
請求項32に記載の複数の分子に対する一連の試験と、JAK2 V617Fに対して1μM未満、好ましくは100nM未満のIC50を有する分子を選択する過程とを含むスクリーニング方法。
【請求項34】
さらに、JAK2に対して5μM未満あるいは1μM未満のIC50を有する分子の負の選択を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
JAK2 V617Fのリン酸化の阻害を免疫沈降によって判定する、請求項32〜34のいずれか一つに記載のインビトロでのスクリーニング方法。
【請求項36】
エリスロポエチン(Epo)の不在下で分化する能力を有する初代前駆細胞CD34+JAK2 V617Fに対する、あるいは、JAK2 V617F変異体の導入によって独立因子となった細胞系に対する、請求項32〜35のいずれか一つに記載のインビボでのスクリーニング方法。
【請求項37】
請求項4に記載の細胞を用いた、請求項32〜36のいずれか一つに記載のインビボでのスクリーニング方法。
【請求項38】
医薬品の候補を識別するための方法であり、
a)真性赤血球増加症を再現している、および/または、JAK2 V617Fの存在に関連する骨髄増殖症候群に冒されている、請求項5〜7のいずれか一つで定義したJAK2 V617Fを発現するヒトではないトランスジェニック動物に、化合物を投与すること、
b)化合物の効果を判定し、真性赤血球増加症の赤芽球の増殖および自然発生的な分化の減少もしくはブロック、またはJAK2 V617Fの存在に関連する細胞増殖の減少が観察される医薬品の候補を選択すること
からなる過程を含む方法。
【請求項39】
医薬品製造のための、請求項28〜31のいずれか一つに記載のsiRNAの利用方法。
【請求項40】
悪性血液疾患、特に、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、骨髄性脾腫あるいは原発性骨髄線維症を含む骨髄増殖症候群の治療を目的とする医薬品を調製するための、請求項39に記載の利用方法。
【請求項41】
JAK2 V617F変異に関連する骨髄増殖症候群、その他の悪性血液疾患、およびJAK2 V617Fを発現する癌腫、黒色腫および神経芽腫のような充実性腫瘍の治療を目的とする医薬品を調製するための、請求項39に記載の利用方法。
【請求項42】
請求項28〜31のいずれか一つに記載のsiRNAと薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2008−517613(P2008−517613A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538421(P2007−538421)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055586
【国際公開番号】WO2006/045827
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507139834)
【出願人】(507138930)アンスティテュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル(インセルム) (4)
【出願人】(507138941)
【出願人】(507138952)ユニヴェルシテ ドゥ ヴェルサイユ−サン クァンタン アン イヴェリーヌ (2)
【出願人】(507139845)ユニヴェルシテ パリ−シュド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055586
【国際公開番号】WO2006/045827
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507139834)
【出願人】(507138930)アンスティテュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル(インセルム) (4)
【出願人】(507138941)
【出願人】(507138952)ユニヴェルシテ ドゥ ヴェルサイユ−サン クァンタン アン イヴェリーヌ (2)
【出願人】(507139845)ユニヴェルシテ パリ−シュド (2)
【Fターム(参考)】
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