真空、乾燥・濃縮装置
【課題】 比較的簡素な構造を採用可能であるとともに、水分除去効率が高い水分蒸発タンク並びに該水分蒸発タンクを備える水分蒸発システムの提供。
【解決手段】 タンク外殻体と、タンク外殻体を気密に閉塞する蓋体からなるタンク本体と、液体が流入する流入口と、液体が排出される排出口と、タンク本体内の空気を排出する排気口と、タンク外殻体外周面に接続する導波管と、導波管を介してタンク外殻体外周面と接続する少なくとも1つのマグネトロンと、タンク本体内に配される反射板を備え、導波管とタンク外殻体外周面との接続位置は、タンク本体内の液体の液面より下方に位置し、反射板は、導波管とタンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、タンク本体内部の液体の液面に対して平行に広がる面を備えるとともに、液面に対して平行な面上に複数の開口部が形成されることを特徴とする水分蒸発タンクである。
【解決手段】 タンク外殻体と、タンク外殻体を気密に閉塞する蓋体からなるタンク本体と、液体が流入する流入口と、液体が排出される排出口と、タンク本体内の空気を排出する排気口と、タンク外殻体外周面に接続する導波管と、導波管を介してタンク外殻体外周面と接続する少なくとも1つのマグネトロンと、タンク本体内に配される反射板を備え、導波管とタンク外殻体外周面との接続位置は、タンク本体内の液体の液面より下方に位置し、反射板は、導波管とタンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、タンク本体内部の液体の液面に対して平行に広がる面を備えるとともに、液面に対して平行な面上に複数の開口部が形成されることを特徴とする水分蒸発タンクである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の水成分を蒸発させる真空、乾燥・濃縮装置に関し、より詳しくは、熱効率を最大限化し、効率よく液体中の水成分を除去可能な真空、乾燥・濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動植物から得た搾汁や海水などの水溶液の水成分を除去して濃縮した濃縮液は、調味料の製造等に好適に利用される。
特許文献1は、このような濃縮液を製造する装置を開示する。
図16は、特許文献1に提案される濃縮液製造装置を示す。
【0003】
特許文献1に提案される濃縮液製造装置は、上下方向に延設する複数の支持板(P)を備える。複数の支持板(P)はそれぞれ互いに平行に配される。各支持板(P)は、上端に液溜部(C)を備え、液溜部(C)に濃縮処理前の水溶液(S)が供給される。
支持板(P)の一方の面には、蒸発浸透膜(M)が配され、蒸発浸透膜(M)の上端は、液溜部(C)内に配される。また、蒸発浸透膜(M)の下方には、リザーバ(R)が配される。
【0004】
液溜部(C)内に配された水溶液(S)は、蒸発浸透膜(M)を通じて、下方へ流動する。支持板(P)並びに蒸発浸透膜(M)は加熱され、蒸発浸透膜(M)中を流動する水溶液(S)中の水成分は蒸発する。
そして、蒸発浸透膜(M)下端に達した水溶液(S)は、リザーバ(R)内に滴下し、リザーバ(R)内には濃縮液(E)が蓄えられる。
【0005】
このような方式によれば、大量の水溶液(S)に対して濃縮処理を行おうとすれば、多数の蒸発浸透膜(M)並びにこれを支持する支持板(P)を用意しなければならない。結果として、装置が大型化・複雑化することとなる。
【0006】
液体中の水成分を除去する処理を行う他の技術分野として、汚泥の脱水処理が挙げられる。汚泥処理の技術分野においては、汚泥の軽量化を図り、埋め立て等の汚泥最終処分を容易にするために水分除去を行っている。
特許文献2は、汚泥の脱水装置の一例を開示する。
図17は、特許文献2に開示される脱水装置の概略図である。
【0007】
特許文献2に開示される脱水装置(100)は、汚泥を収容するタンク(101)を備える。タンク(101)の上部には、汚泥投入管(102)が接続する。汚泥は、汚泥投入管(102)を通じて、タンク(101)内部に蓄えられる。
更に、タンク(101)天端には、マグネトロン(103)が配され、マグネトロン(103)はマイクロ波を照射する。マグネトロン(103)からのマイクロ波は、タンク(101)中の汚泥を加熱し、汚泥中の水成分を蒸発させる。
更に、排気管(104)がタンク(101)上部に接続する。排気管(104)は、タンク(101)内部を減圧し、汚泥中の水成分の蒸発を促進させる。
また、タンク(101)の底部には、排出管(105)が接続する。
【0008】
図17に示すような脱水装置(100)によれば、タンク(101)の容量並びにマグネトロン(103)の出力に応じて、大量の汚泥に対して脱水処理を施すことが可能である。また、脱水装置(100)自体の構造を非常に単純化することが可能となる。
尚、特許文献2に開示される技術を食品加工分野に適用した装置も従来技術に存在する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−288217号公報
【特許文献2】実開平6−11900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図17に示す脱水装置(100)は、上記の利点を備えるが、以下のような問題点を有する。
まず、マグネトロン(103)から照射されたマイクロ波がタンク(101)内に収容された汚泥液面で反射を生じる場合があり、汚泥液面で反射したマイクロ波のエネルギは、汚泥を加熱するために用いられることにはならず、マグネトロン(103)により作り出されたエネルギを十分活用するものとなっていない。
更なる問題点は、汚泥液面で反射したマイクロ波がマグネトロン(103)に逆戻りすることである。逆戻りしたマイクロ波は、マグネトロン(103)自身を加熱することとなるため、マグネトロン(103)の損傷を生じさせる。
【0011】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、比較的簡素な構造を採用可能であるとともに、脱水効率が高い真空、乾燥・濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、タンク本体を備える真空、乾燥・濃縮装置であって、前記タンク本体が、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、前記タンク外殻体に接続するとともに液体が流入する流入口と、前記タンク外殻体底部に接続するとともに液体が排出される排出口と、前記タンク外殻体上部周面に接続するとともに前記タンク本体内の空気を排出し、前記タンク本体内を真空にする排気口と、前記タンク外殻体外周面に接続する導波管と、該導波管を介して前記タンク外殻体外周面と接続する少なくとも1つのマグネトロンからなり、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記タンク本体内の液体の液面より下方に位置することを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項2記載の発明は、前記タンク本体が、該タンク本体内に配される反射板を更に備え、該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記タンク本体内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置である。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項4記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項2記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記マグネトロンが複数であり、該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項6記載の発明は、前記タンク本体内部に空気供給パイプが挿入され、該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項7記載の発明は、前記反射板が、前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記タンク本体内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項8記載の発明は、前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項7記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項9記載の発明は、前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、
該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【0015】
請求項10記載の発明は、前記タンク本体内部の液体の液位を計測する液位計と、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、前記液位計が、前記タンク本体内部の液体の液位の信号を前記制御部へ送信し、該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記タンク本体内部の液体の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項4記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項11記載の発明は、前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項10記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、液面によりマイクロ波が反射されることがなく、マグネトロンから生じたエネルギ全てをタンク本体内部の液体の加熱に用いることが可能となる。したがって、高いエネルギ効率でタンク本体内の液体の水分の蒸発を行うことが可能となる。
請求項2記載の発明によれば、反射板によりマイクロ波が反射されるので、反射板よりも上方にある液体を集中して加熱することが可能となる。したがって、一層高い効率で、水分の蒸発を行うことが可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、高濃縮率を達成するのに好適な真空、乾燥・濃縮装置となる。
請求項4記載の発明によれば、所望位置の液体の加熱を行うことが可能となる。したがって、液体の蒸発に伴う液位の変動に追従させて、液体の加熱を行うことが可能となる。
請求項5記載の発明によれば、短時間でタンク加熱部内の液体を一様に加熱することが可能となる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、タンク加熱部内の液体を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の液体全体の温度を一様にすることができる。
請求項7記載の発明によれば、タンク加熱部内の液体を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の液体全体の温度を一様にすることができる。
請求項8記載の発明によれば、反射板の回転による撹拌効率を高めることができる。
請求項9記載の発明によれば、反射板近傍の液体に振動を伝達することが可能となる。したがって、加熱対象位置にある液体の撹拌を促すことが可能となる。更には、反射板上への液体中の固体成分の堆積を防止することができる。
【0019】
請求項10記載の発明によれば、水分蒸発に伴うタンク内の液体の液位変動に追従して、加熱位置を調整可能となる。
請求項11記載の発明によれば、タンク本体内の液体の液面と、反射板上面の間の加熱対象区画の厚さを一定にすることができ、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の主要構成を示す概略断面図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク外殻体(21)と蓋体(22)からなるタンク本体(2)を備える。
タンク外殻体(21)は、一端有底円筒形状であり、下方で閉塞し、上方で開口している。蓋体(22)は、タンク外殻体(21)の上部の開口部を気密に閉塞する。タンク外殻体(21)の形状は、円筒状に限らず、三角筒状、四角筒状或いは多角筒状などの形状を適宜採用可能である。
タンク外殻体(21)の底部(211)は、下方に狭まるテーパ形状をしており、テーパ状の底部(211)中央には排出口(212)が設けられる。排出口(212)からは、水分蒸発処理後の汚泥及び食品(原料)が排出される。
【0021】
タンク本体(2)内部には、反射板(3)が配される。反射板(3)は、円板状であり、反射板(3)の上面並びに下面は、タンク本体(2)内部に収容される液面に対して平行である。反射板(3)は例えば、パンチングメタルで形成され、上面から下面に向けて貫通する多数の貫通穴を備える。
反射板(3)上面から反射板支持棒(31)が上方に向けて延出し、反射板支持棒(31)の上端は、蓋体(22)の上面に載置固定されるモータ(222)の回転シャフトに接続する。
これにより、反射板(3)はタンク本体(2)内部で安定的に固定されることとなるとともに、タンク本体(2)内部で回転可能となる。
【0022】
タンク外殻体(21)の外周面には、複数のレール(23)が据付けられる。レール(23)は、タンク外殻体(21)上下方向に延びる。
導波管(41)が、レール(23)を介して、タンク外殻体(21)に上下移動可能に取付けられる。導波管(41)の他端部には、マグネトロン(4)が接続する。また、マグネトロン(4)は、マグネトロン(4)に電力を供給する電源(43)に電気的に接続する。
導波管(41)或いはマグネトロン(4)には、導波管(41)及びマグネトロン(4)を上下に移動させるためのアクチュエータが接続し、図1に示す例においては、アクチュエータとして油圧シリンダ(42)が用いられており、油圧シリンダ(42)は導波管(41)に接続する。
【0023】
図2は、導波管(41)とレール(23)との接続形態の一例を示す詳細図である。図2(a)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の展開斜視図であり、図2(b)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の部分断面図である。
レール(23)は、取付プレート(231)の面上に固定される。取付プレート(231)は、平板状の部材であり、レール(23)は直方体状の部材である。取付プレート(231)のレール(23)が取付けられた側の面には、Oリング用溝(232)が形成される。Oリング用溝(232)は、レール(23)の周囲を取り囲む。
取付プレート(231)のレール(23)が取付けられる面と反対側の面には、当て板(233)が配される。当て板(233)は正面視ロ字状に形成され、その外形輪郭は、取付プレート(231)と一致する。
導波管(41)の先端には、導波管フランジ(411)が取付けられる。導波管フランジ(411)は、レール(23)と噛合う。導波管フランジ(411)の面は、導波管(41)断面より大きく形成され、導波管(41)は導波管フランジ(411)の面の略中央に接続する。
【0024】
レール(23)が取付けられるタンク外殻体(21)の部分は開口し、レール(23)は、タンク外殻体(21)外周面に対して外方に突出する。また、タンク外殻体(21)のレール取付用の開口部周囲において、タンク外殻体(21)内壁面に凹部が形成され、タンク外殻体(21)の壁面肉厚は薄くなっている。
タンク外殻体(21)内壁面に形成された凹部には、取付プレート(231)が据付けられる。取付プレート(231)は、当て板(233)とともにボルト等の固定具で、タンク外殻体(21)内壁面側に固定される。
Oリング用溝(232)には、Oリング(234)が配され、Oリング(234)はタンク外殻体(21)内壁面と取付プレート(231)との間で圧縮される。
【0025】
図2に示す例において、取付プレート(231)及びレール(23)は、一体に形成されている。
取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波の照射を受けても、マイクロ波を透過させて、加熱せず、熱影響を受けない材質で構成される。このようなマイクロ波を透過させる材質として、石英、テフロン(登録商標)或いはポリスチレン等を例示可能である。
【0026】
図3は、マイクロ波漏れ防止カバーの取付形態を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、レール(23)外周面を被覆するように、マイクロ波漏れ防止カバー(235)が取付けられる。
マイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属材料からなる。尚、図3に示すマイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属板を折り曲げ加工して得られた形態であるが、直径3mm以下の開口部を複数備える多孔板や金網を用いて、マイクロ波漏れ防止カバー(235)を形成してもよい。
【0027】
図4及び図5は、電磁波シールドの取付形態の一例を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、マイクロ波の漏れを防止するために、マグネトロン(4)外側を囲むように電磁波シールド(236)が取り付けられてもよい(図4参照)。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)外側全体を取り囲むように電磁波シールド(236)が設けられてもよい(図5参照)。
電磁波シールド(236)は、多孔板或いは電磁波吸収体により形成される。電磁波シールド(236)が多孔板からなる場合、多孔板上の開口部の径は、使用されるマイクロ波の周波数により適宜定められ、多孔板がマイクロ波に対して壁となり、マイクロ波の漏れを防止可能にする。
【0028】
図6は、真空、乾燥・濃縮装置(1)の概略平面図である。尚、図1に示す断面図は、図6においてA−A線として示される断面を示している。
複数のマグネトロン(4)が上述の如くしてタンク外殻体(21)外周面にレール(23)を介して取付けられる。複数のマグネトロン(4)は、タンク外殻体(21)外周面周方向に等間隔に配されている。尚、マグネトロン(4)の配置は図示例に限られるものではなく、上下に千鳥状にマグネトロン(4)を配することも可能である。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)の設計に応じて、適宜マグネトロン(4)の配置形態を変更してもよい。
【0029】
蓋体(22)の上面には、リブ(221)が形成され、リブ(221)は蓋体(22)上面で格子状に配される。これにより、タンク本体(2)内部の負圧に対して、蓋体(22)が変形することを防止できる。或いは、蓋体(22)は鏡板を使用することによって、蓋体(22)の変形を防止できる。
【0030】
図7は、図6に示すB−B線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、流入口(213)が設けられ、流入口(213)には管路が取り付け可能である。流入口(213)から、液体が流入し、タンク本体(2)内部に液体が収容される。
タンク外殻体(21)周壁面下部を空気供給パイプ(5)が貫通する。空気供給パイプ(5)の先端開口部は上方に向き、空気供給パイプ(5)を通じてタンク本体(2)内部に供給された空気は、タンク外殻体(21)上方に向けて放出される。
空気供給パイプ(5)からの空気は、タンク外殻体(21)上方に放出されることで、タンク本体(2)内部の液体内に旋回流等を生じさせる。旋回流等によりタンク本体(2)内部の液体が撹拌され、液体濃度並びに液体温度を均一化させることができる。
【0031】
図8は、図6に示すC−C線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、排気口(214)が設けられる。排気口(214)は、真空ポンプに接続し、タンク本体(2)内部の空気を排気する。これにより、タンク本体(2)は負圧に保たれる。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、真空計(215)が取り付けられ、タンク本体(2)内部の圧力が測定される。
【0032】
図9は、真空、乾燥・濃縮装置(1)が備えるセンサの配置を示す。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、液位計(61)、温度計(62)及び濃度計(63)を更に備える。液位計(61)は、蓋体(22)上面に据付けられ、液位計(61)の検知部はタンク本体(2)内部の液体中に延設している。温度計(62)及び濃度計(63)は、タンク外殻体(21)内壁面に据付けられ、タンク本体(2)内部に収容されて液体の温度や、液体中の特定成分の濃度を計測する。
制御部(6)は、更に、モータ(222)、マグネトロン(4)と接続する電源(43)、マグネトロン(4)を上下させるアクチュエータ(42)に電気的に接続し、これらに作動信号を送信し、これらの作動を制御する。
以下に、これら制御について詳述する。
【0033】
図10は、真空、乾燥・濃縮装置(1)を用いた水分蒸発工程を行う間の信号の流れを示すブロック線図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、上述の如く、制御部(6)によって制御される。制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)に信号を送信し、液体供給ポンプ(69)を作動させる。液体供給ポンプ(69)は、流入口(213)に接続し、流入口(213)を介して、タンク本体(2)内部に液体を供給する。
【0034】
タンク本体(2)内部には、上述の如く、液位計(61)が配される。液位計(61)は、タンク本体(2)内部の液体の液位を測定するとともに測定された液位に応じた信号を制御部(6)へ送信する。
制御部(6)には、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に収容可能な液体の体積の最大値が入力されている。制御部(6)は、液位計(61)からの信号に基づき、タンク本体(2)内部に供給された液体の体積を算出し、入力された収容可能な液体の体積の最大値と比較する。液体体積の算出値が、入力された液体体積の最大値を超えたとき、制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)の作動を停止させる。
【0035】
制御部(6)には、反射板(3)のタンク本体(2)内部における高さ位置が入力されている。
制御部(6)は、マグネトロン(4)を上下動させるアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)の上縁がタンク本体(2)内部の液体の液面より下方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。また、導波管フランジ(411)の下縁が反射板(3)の上方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。
【0036】
その後、制御部(6)は、マグネトロン(4)を作動させ、マイクロ波をタンク本体(2)内部の液体に照射する。マイクロ波は、タンク本体(2)内部の液体中を進行し、マイクロ波のエネルギ全部が液体に吸収される。この結果、液体が効率よく加熱されることとなる。
液体中を進行するマイクロ波の一部は、反射板(3)によって上方に向けて反射される。この反射されたマイクロ波は更に液体中を進行し、液体を加熱する。
このようにして、反射板(3)上面と液面との間の空間として定義される加熱対象区画にある液体が集中して加熱されることとなる。結果として、液面付近の液体が短時間で昇温されるので、高い効率で水分を蒸発させることが可能である。
【0037】
液体の蒸発に伴い、液面が下降する。この液面の下降は、液位計(61)により検知される。導波管フランジ(411)の上縁が液面位置より上に位置する前に、制御部(6)はアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。そして、アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)を液面より下方に移動させ、マイクロ波の照射位置を調整する。
【0038】
図11は、反射板支持棒(31)途中部に組み込まれる伸縮部材(310)の一例を示す。
伸縮部材(310)は、円筒状の第1筒(311)と、第1筒(311)下端に接続する蛇腹状のベローズ(312)と、ベローズ(312)下端に接続する第2筒(313)を備える。
第1筒(311)内壁面には、環状の第1仕切板(314)が固定され、第2筒(313)内壁面には、環状の第2仕切板(315)が固定される。第1仕切板(314)と第2仕切板(315)の間にはシリンダ(316)が配される。シリンダ(316)の本体部は第2仕切板(315)上面に固定され、シリンダ(316)のロッドは第1仕切板(314)下面に固定される。
シリンダ(316)のロッドを伸縮させることで、伸縮部材(310)の軸長が変化する。
このような伸縮部材(310)を反射板支持棒(31)途中部に組み込むことで、反射板支持棒(31)の軸長が増減し、反射板(3)のタンク本体(2)内部での高さ位置を変化させることができる。
【0039】
液位計(61)が計測する液位に応じて、制御部(6)がシリンダ(316)に信号を送り、シリンダ(316)がロッドをシリンダ本体内に収容する。これにより、反射板(3)が下方に移動することとなる。したがって、反射板(3)の上面位置を常に導波管フランジ(411)下縁よりも下方に位置させることが可能となる。
このような構成を採用すると、例えば、液面から反射板(3)上面までの距離を常に一定にすることができ、水分蒸発工程を安定化させることが可能となる。
【0040】
より簡便な機構を望むならば、マグネトロン(4)や反射板(3)を適当な位置に固定或いは反射板(3)を用いず、マグネトロン(4)のみを適当な位置に固定する構成を採用しても良い。
例えば、制御部(6)が液位計(61)からの信号に応じて、蒸発した水分量を算出し、液体供給ポンプ(69)を作動させ、蒸発した水分量と等しい体積の液体をタンク本体内部に供給しても良い。或いは、液体供給ポンプ(69)と真空、乾燥・濃縮装置(1)の間の管路に配されるバルブの開閉を制御部(6)が操作し、蒸発した水分量と等しい体積の液体をタンク本体(2)内部に供給しても良い。
このような構成を採用するならば、タンク本体(2)内部の液体の液位を常に一定に保つことができ、連続的な水分蒸発工程を行い、所望する濃度と体積を得ることが可能となる。
【0041】
図12は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体の温度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
上述の如く、本発明においては、反射板(3)上面と液面との間の加熱対象区画が集中的に加熱されることとなるため、高い水分蒸発効率を得ることができる。その一方で、水分蒸発処理を施される液体が、例えば、動植物の搾汁等であり、食品用の濃縮液を得ようとしている場合には、過度の高温が望ましくない場合もある。
タンク本体(2)内部には複数の温度計(62)が配される。複数の温度計(62)は、タンク内部上下方向に整列して配される。これにより、液面の変位にかかわらず、加熱対象区画の温度を測定可能となる。温度計(62)は、制御部(6)へ測定した液体の温度を送信する。
【0042】
制御部(6)には、水分蒸発処理を施される液体に対して定められる許容最大温度が入力されている。制御部(6)は、温度計(62)から送信される信号に基づき、液体温度を算出するとともに算出された液体温度と入力された許容最大温度を比較する。
そして、液体温度が許容最大温度を超える前に、制御部(6)は、空気供給パイプ(5)に設けられたバルブ(51)に信号を送信し、バルブ(51)を開く。バルブ(51)が開くと、圧縮空気を貯蔵する空気貯蔵タンクに接続する空気供給パイプ(5)から空気がタンク本体(2)内部に流入し、上述の如く、タンク本体(2)内部の液体に旋回流等を生じせしめる。これにより、タンク本体(2)底部付近にある比較的低い温度の液体と、液面付近の高い温度の液体とが混合し、液面付近の液体温度が低減する。
【0043】
尚、空気供給パイプ(5)の代わりに、蓋体(22)上面のモータ(222)を作動させてもよい。制御部(6)がバルブ(51)へ信号を送る代わりに、モータ(222)へ作動信号を送信することにより、反射板(3)が回転し、タンク本体(2)内部の液体に旋回流を生じせしめ、上述のような上層と下層の液体間の混合作用を得ることができる。尚、この場合には、反射板(3)の上面及び/又は下面に突条、隆起部或いは溝部などを形成することが好ましい。反射板(3)の上面及び/又は下面にこのような三次元形状の凸部或いは凹部を設けることにより、反射板(3)の回転動作により得られる撹拌効果を高めることができる。尚、反射板(3)上面及び/又は下面の突起部や突条の形成は、反射板(3)と一体的に形成して行われてもよく、突起片や突条片を反射板(3)と別体に形成し、ボルト等の固定手段で突起片や突条片を反射板(3)に取付ける形態を採用してもよい。
【0044】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて、制御部(6)がマグネトロン(4)に接続する電源(43)へ信号を送り、マグネトロン(4)の出力を増減させる構成を採用してもよい。
例えば、加熱対象区画内の液温の昇温速度が高い場合には、マグネトロン(4)の出力を下げ、昇温速度の低減を図ることができる。これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能となる。
【0045】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて制御部(6)がタンク本体(2)内部を減圧する真空ポンプ(74)へ信号を送り、真空ポンプの回転数を上げることによって、タンク本体(2)内部の圧力を更に減圧させる構成を採用してもよい。例えば、加熱対象区画内の昇温温度が高い場合には、タンク(2)内部を減圧し、沸点を下げることによって昇温速度の低減を図ることができる。
これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能となる。
【0046】
上述のように空気供給パイプ(5)から空気を供給すると、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧が増加する。
真空計(215)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を測定し、制御部(6)へ測定した気圧に応じた信号を送信する。真空計(215)からの信号に応じて、制御部(6)は、排気口(214)に取付けられた排気用バルブ(216)を開き、真空、乾燥・濃縮装置(1)と真空ポンプ間の経路を開く。真空ポンプは真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の空気を吸引し、真空、乾燥・濃縮装置(1)の負圧を一定に保つ。
【0047】
温度計(62)が液面付近の液温が十分に降下したことを示す信号を制御部(6)に送信すると、制御部(6)は空気供給用バルブ(51)を閉じる。これにより、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の気圧を元の状態に戻すことができる。
このようにして真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を一定にすることで、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【0048】
図13は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体内に含まれる成分の濃度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
濃度計(63)は、加熱対象区画内部の液体内に含まれる成分の濃度を測定する第1濃度計と、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体の下層の成分濃度を測定する第2濃度計からなる。真空、乾燥・濃縮装置(1)内部へ供給される液体の体積は、液体供給ポンプ(69)の回転数並びに容量から算出され、蒸発した水分体積は液位計(61)から算出されるので、制御部(6)は真空、乾燥・濃縮装置(1)で水分蒸発処理を施された後の液体内に含まれる成分の濃度を理論的には算出可能である。
しかしながら、精度のよい濃度が求められる場合には、算出される液体内の成分濃度の理論値ではなく、実際の水分蒸発処理後の液体内の成分濃度の測定が必要である。
【0049】
図13に示す例においては、水分蒸発処理後の液体内の成分濃度が所望の濃度となっているか否かを確認することが可能である。
液位計(61)からの信号に基づき、制御部(6)は、所定の水分量を蒸発させたことを認識する。その後、制御部(6)は、空気供給バルブ(51)を開き、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の液体を撹拌する。
第1濃度計と第2濃度計は、液体の上層と下層の液体内に含まれる成分の濃度を測定するとともに、濃度に応じた信号を制御部(6)へ送信する。第1濃度計と第2濃度計からの信号が等しくなったとき、制御部(6)は空気供給バルブ(51)を閉じる。
【0050】
制御部(6)には、所望の成分濃度の値が入力されている。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも低い場合には、制御部(6)はマグネトロン(4)へ作動信号を送り、マグネトロン(4)を作動させ、水分蒸発工程を続行させる。そして、所望の成分濃度が得られるまで、水分蒸発工程を続ける。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも高い場合には、制御部(6)は液体供給ポンプ(69)を作動させ、水分蒸発処理後の液体よりも低い成分濃度の液体を真空、乾燥・濃縮装置(1)内に供給し、液体の成分濃度を所望の成分濃度と等しくさせる。
尚、上述と同様に、空気供給バルブ(51)の開閉動作の代わりに、モータ(222)の作動のオン・オフ制御によって、図13に示す制御を行ってもよい。
【0051】
上記のように、水分蒸発処理の後、成分濃度確認のために液体を撹拌することは、液体内の成分濃度に応じて液体の粘度が変化するような液体に対して好ましい結果をもたらす。
液体の粘度が高すぎると、排出口(212)からの液体排出に不具合を生ずることがある。上述のように、水分蒸発処理後、液体排出前に液体の撹拌を行うことで、液体中において局所的に粘度の高い部分を生ずることがなくなり、円滑な液体排出工程を実行可能となる。
【0052】
また、液体が例えば汚泥である場合には、汚泥中の固体成分が時間経過とともに真空、乾燥・濃縮装置(1)の底部(211)上に堆積することとなる。この堆積した固体成分が排出口(212)を閉塞し、汚泥の排出を妨げることとなる。
上述の如く、汚泥排出前に撹拌を行うことで、汚泥中の固体成分による排出口(212)の閉塞を防止可能となる。
【0053】
尚、汚泥のような固体成分が堆積するような液体に対して水分蒸発処理を行う場合には、反射板(3)に高振動発生装置を接続することが好ましい。反射板(3)に高振動を生じさせることにより、反射板(3)上に堆積した固体成分を、反射板(3)に多数形成された開口部を介して下方に落下させることが可能となるためである。
【0054】
尚、制御部(6)に対して、液体上層の濃度と液体下層の濃度の差異に対する閾値が入力され、第1濃度計が測定する成分濃度と第2濃度計が測定する成分濃度の差異を、第1濃度計及び第2濃度計から送信される信号に基づき、制御部(6)が算出し、算出された成分濃度の差異が入力された閾値を超えるときに、上記の撹拌作用を生じさせる形態を採用してもよい。
【0055】
尚、上記に示す例は、単に本発明を説明するためのものにすぎず、何ら本発明を限定するものではない。
また、上記において、反射板(3)を用いて、液面と反射板(3)上面との間の加熱対象区画を集中して加熱する例を示したが、タンク本体(2)内の液体全体を加熱したい場合には、反射板(3)なしで、マグネトロン(4)をタンク本体(2)の下端部の適当な位置に固定して加熱を行ってもよい。例えば、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)下端縁より僅かに上方に固定し、タンク本体(2)内部底部領域を加熱するといった形態である。或いは、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)の底部(211)に固定し、底部(211)からマイクロ波を出力してもよい。
【0056】
図14は、上記の真空、乾燥・濃縮装置(1)を示す概略図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク本体(2)と、タンク本体(2)の排気口(214)と接続するサイクロン(71)と、サイクロン(71)に接続する凝集器(72)と、凝集器(72)に冷却水を供給するとともに内部の冷却水を冷却する貯水タンク・冷却塔(73)と、凝集器(72)、サイクロン(71)並びにタンク本体(2)の空気を吸引する真空ポンプ(74)からなる。
【0057】
タンク本体(2)内の空気層には、上述の水分蒸発処理によって生ずる水蒸気が多量に含まれることとなる。真空ポンプ(74)からの空気吸引によって、タンク本体(2)内の水蒸気を多量に含んだ空気はサイクロン(71)に流れることとなる。
水蒸気中には、タンク本体(2)内に供給された液体が含有する微細な固体成分も含まれている。サイクロン(71)は、この微細な固体成分を水蒸気から分離する。分離された固体成分はサイクロン(71)下部に配される貯蔵部(711)に蓄積される。
【0058】
サイクロン(71)により微細な固体成分を除去された水蒸気を含有する空気は、凝集器(72)に至る。凝集器(72)には、貯水タンク・冷却塔(73)に蓄えられた冷却水がポンプ(731)を通じて供給される。凝集器(72)内には多数のプレート(721)が配され、パイプ(722)がプレート(721)を横切って蛇行する。パイプ(722)内には、貯水タンク・冷却塔(73)から供給される冷却水が流れ、これによりプレート(721)が冷却される。
プレート(721)に接触した空気は、冷却され、空気が含有する水成分がプレート(721)上で結露する。プレート(721)上で結露した水成分は滴下し、凝集器(72)下部に配される貯水部(723)に蓄えられる。
【0059】
凝集器(72)によって、水成分を除去された空気は更に真空ポンプ(74)により吸引され、真空ポンプ(74)下流側へと排出される。
真空ポンプ(74)下流側において、排出された空気に対して脱臭処理などの後処理を施してもよい。
また、貯水部(723)に蓄えられた水成分に対してPh処理などを施してもよい。
このような後処理を施した後、環境内に空気や水を放出することで、環境に負荷をかけない処理システムが構築可能となる。
尚、真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク本体(2)、サイクロン(71)、凝集器(72)、貯水タンク(73)及び真空ポンプ(74)が1つの基板上に配され、該基板ごと車載可能とされることが好ましい。
【0060】
(試験例)
図15は、反射板(3)の効果に対する試験結果を示すグラフである。図15のグラフの横軸は、マグネトロン(4)による加熱時間を示す。図15のグラフの縦軸は、反射板(3)をタンク本体(2)内に配した時と、反射板(3)をタンク本体(2)から取り除いたときのタンク本体(2)内の無次元化された液温である。タンク本体(2)へ供給された液体の初期の液温が異なったため、補正するために試験結果の温度を、液体の初期の液温で無次元化したものである。
【0061】
図15に示すグラフから明らかなように、タンク本体(2)内に反射板(3)を配したほうが、液面と反射板(3)で区切られた領域と反射板(3)を取り除いて同領域を昇温させた場合と比較すると効率よく昇温できることがわかる。10%程度昇温効率を向上させる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、汚泥重量の軽減工程や動植物の搾汁の濃縮工程に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の主要部を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の導波管とタンク外殻体との接続構造を示す詳細図である。
【図3】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置のマイクロ波漏れ防止カバーの取り付け例を示す図である。
【図4】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図6】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の概略平面図である。
【図7】図6に示すB−B線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図8】図6に示すC−C線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図9】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置が備える液位計、温度計並びに濃度計の配置を概略的に示す図である。
【図10】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の液位に基づく制御を示すブロック線図である。
【図11】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の反射板支持棒に組み込まれる伸縮部材の縦断面図である。
【図12】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の温度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図13】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の成分濃度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図14】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の概略構成図である。
【図15】反射板の有無による昇温効果の差異を示すグラフである。
【図16】従来の濃縮液製造装置を示す図である。
【図17】従来の汚泥用の脱水装置を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・・・・真空、乾燥・濃縮装置
2・・・・・・タンク本体
21・・・・・タンク外殻体
22・・・・・蓋体
3・・・・・・反射板
4・・・・・・マグネトロン
41・・・・・導波管
5・・・・・・空気供給パイプ
6・・・・・・制御部
61・・・・・液位計
62・・・・・温度計
63・・・・・濃度計
71・・・・・サイクロン
72・・・・・凝集器
73・・・・・貯水タンク
74・・・・・真空ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の水成分を蒸発させる真空、乾燥・濃縮装置に関し、より詳しくは、熱効率を最大限化し、効率よく液体中の水成分を除去可能な真空、乾燥・濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動植物から得た搾汁や海水などの水溶液の水成分を除去して濃縮した濃縮液は、調味料の製造等に好適に利用される。
特許文献1は、このような濃縮液を製造する装置を開示する。
図16は、特許文献1に提案される濃縮液製造装置を示す。
【0003】
特許文献1に提案される濃縮液製造装置は、上下方向に延設する複数の支持板(P)を備える。複数の支持板(P)はそれぞれ互いに平行に配される。各支持板(P)は、上端に液溜部(C)を備え、液溜部(C)に濃縮処理前の水溶液(S)が供給される。
支持板(P)の一方の面には、蒸発浸透膜(M)が配され、蒸発浸透膜(M)の上端は、液溜部(C)内に配される。また、蒸発浸透膜(M)の下方には、リザーバ(R)が配される。
【0004】
液溜部(C)内に配された水溶液(S)は、蒸発浸透膜(M)を通じて、下方へ流動する。支持板(P)並びに蒸発浸透膜(M)は加熱され、蒸発浸透膜(M)中を流動する水溶液(S)中の水成分は蒸発する。
そして、蒸発浸透膜(M)下端に達した水溶液(S)は、リザーバ(R)内に滴下し、リザーバ(R)内には濃縮液(E)が蓄えられる。
【0005】
このような方式によれば、大量の水溶液(S)に対して濃縮処理を行おうとすれば、多数の蒸発浸透膜(M)並びにこれを支持する支持板(P)を用意しなければならない。結果として、装置が大型化・複雑化することとなる。
【0006】
液体中の水成分を除去する処理を行う他の技術分野として、汚泥の脱水処理が挙げられる。汚泥処理の技術分野においては、汚泥の軽量化を図り、埋め立て等の汚泥最終処分を容易にするために水分除去を行っている。
特許文献2は、汚泥の脱水装置の一例を開示する。
図17は、特許文献2に開示される脱水装置の概略図である。
【0007】
特許文献2に開示される脱水装置(100)は、汚泥を収容するタンク(101)を備える。タンク(101)の上部には、汚泥投入管(102)が接続する。汚泥は、汚泥投入管(102)を通じて、タンク(101)内部に蓄えられる。
更に、タンク(101)天端には、マグネトロン(103)が配され、マグネトロン(103)はマイクロ波を照射する。マグネトロン(103)からのマイクロ波は、タンク(101)中の汚泥を加熱し、汚泥中の水成分を蒸発させる。
更に、排気管(104)がタンク(101)上部に接続する。排気管(104)は、タンク(101)内部を減圧し、汚泥中の水成分の蒸発を促進させる。
また、タンク(101)の底部には、排出管(105)が接続する。
【0008】
図17に示すような脱水装置(100)によれば、タンク(101)の容量並びにマグネトロン(103)の出力に応じて、大量の汚泥に対して脱水処理を施すことが可能である。また、脱水装置(100)自体の構造を非常に単純化することが可能となる。
尚、特許文献2に開示される技術を食品加工分野に適用した装置も従来技術に存在する。
【0009】
【特許文献1】特開2005−288217号公報
【特許文献2】実開平6−11900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図17に示す脱水装置(100)は、上記の利点を備えるが、以下のような問題点を有する。
まず、マグネトロン(103)から照射されたマイクロ波がタンク(101)内に収容された汚泥液面で反射を生じる場合があり、汚泥液面で反射したマイクロ波のエネルギは、汚泥を加熱するために用いられることにはならず、マグネトロン(103)により作り出されたエネルギを十分活用するものとなっていない。
更なる問題点は、汚泥液面で反射したマイクロ波がマグネトロン(103)に逆戻りすることである。逆戻りしたマイクロ波は、マグネトロン(103)自身を加熱することとなるため、マグネトロン(103)の損傷を生じさせる。
【0011】
本発明は上記実情を鑑みてなされたものであって、比較的簡素な構造を採用可能であるとともに、脱水効率が高い真空、乾燥・濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、タンク本体を備える真空、乾燥・濃縮装置であって、前記タンク本体が、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、前記タンク外殻体に接続するとともに液体が流入する流入口と、前記タンク外殻体底部に接続するとともに液体が排出される排出口と、前記タンク外殻体上部周面に接続するとともに前記タンク本体内の空気を排出し、前記タンク本体内を真空にする排気口と、前記タンク外殻体外周面に接続する導波管と、該導波管を介して前記タンク外殻体外周面と接続する少なくとも1つのマグネトロンからなり、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記タンク本体内の液体の液面より下方に位置することを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項2記載の発明は、前記タンク本体が、該タンク本体内に配される反射板を更に備え、該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記タンク本体内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置である。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項4記載の発明は、前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項2記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記マグネトロンが複数であり、該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項6記載の発明は、前記タンク本体内部に空気供給パイプが挿入され、該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項7記載の発明は、前記反射板が、前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記タンク本体内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項8記載の発明は、前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項7記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項9記載の発明は、前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、
該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【0015】
請求項10記載の発明は、前記タンク本体内部の液体の液位を計測する液位計と、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、前記液位計が、前記タンク本体内部の液体の液位の信号を前記制御部へ送信し、該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記タンク本体内部の液体の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項4記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
請求項11記載の発明は、前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項10記載の真空、乾燥・濃縮装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、液面によりマイクロ波が反射されることがなく、マグネトロンから生じたエネルギ全てをタンク本体内部の液体の加熱に用いることが可能となる。したがって、高いエネルギ効率でタンク本体内の液体の水分の蒸発を行うことが可能となる。
請求項2記載の発明によれば、反射板によりマイクロ波が反射されるので、反射板よりも上方にある液体を集中して加熱することが可能となる。したがって、一層高い効率で、水分の蒸発を行うことが可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、高濃縮率を達成するのに好適な真空、乾燥・濃縮装置となる。
請求項4記載の発明によれば、所望位置の液体の加熱を行うことが可能となる。したがって、液体の蒸発に伴う液位の変動に追従させて、液体の加熱を行うことが可能となる。
請求項5記載の発明によれば、短時間でタンク加熱部内の液体を一様に加熱することが可能となる。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、タンク加熱部内の液体を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の液体全体の温度を一様にすることができる。
請求項7記載の発明によれば、タンク加熱部内の液体を撹拌することが可能となり、タンク加熱部内の液体全体の温度を一様にすることができる。
請求項8記載の発明によれば、反射板の回転による撹拌効率を高めることができる。
請求項9記載の発明によれば、反射板近傍の液体に振動を伝達することが可能となる。したがって、加熱対象位置にある液体の撹拌を促すことが可能となる。更には、反射板上への液体中の固体成分の堆積を防止することができる。
【0019】
請求項10記載の発明によれば、水分蒸発に伴うタンク内の液体の液位変動に追従して、加熱位置を調整可能となる。
請求項11記載の発明によれば、タンク本体内の液体の液面と、反射板上面の間の加熱対象区画の厚さを一定にすることができ、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の主要構成を示す概略断面図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク外殻体(21)と蓋体(22)からなるタンク本体(2)を備える。
タンク外殻体(21)は、一端有底円筒形状であり、下方で閉塞し、上方で開口している。蓋体(22)は、タンク外殻体(21)の上部の開口部を気密に閉塞する。タンク外殻体(21)の形状は、円筒状に限らず、三角筒状、四角筒状或いは多角筒状などの形状を適宜採用可能である。
タンク外殻体(21)の底部(211)は、下方に狭まるテーパ形状をしており、テーパ状の底部(211)中央には排出口(212)が設けられる。排出口(212)からは、水分蒸発処理後の汚泥及び食品(原料)が排出される。
【0021】
タンク本体(2)内部には、反射板(3)が配される。反射板(3)は、円板状であり、反射板(3)の上面並びに下面は、タンク本体(2)内部に収容される液面に対して平行である。反射板(3)は例えば、パンチングメタルで形成され、上面から下面に向けて貫通する多数の貫通穴を備える。
反射板(3)上面から反射板支持棒(31)が上方に向けて延出し、反射板支持棒(31)の上端は、蓋体(22)の上面に載置固定されるモータ(222)の回転シャフトに接続する。
これにより、反射板(3)はタンク本体(2)内部で安定的に固定されることとなるとともに、タンク本体(2)内部で回転可能となる。
【0022】
タンク外殻体(21)の外周面には、複数のレール(23)が据付けられる。レール(23)は、タンク外殻体(21)上下方向に延びる。
導波管(41)が、レール(23)を介して、タンク外殻体(21)に上下移動可能に取付けられる。導波管(41)の他端部には、マグネトロン(4)が接続する。また、マグネトロン(4)は、マグネトロン(4)に電力を供給する電源(43)に電気的に接続する。
導波管(41)或いはマグネトロン(4)には、導波管(41)及びマグネトロン(4)を上下に移動させるためのアクチュエータが接続し、図1に示す例においては、アクチュエータとして油圧シリンダ(42)が用いられており、油圧シリンダ(42)は導波管(41)に接続する。
【0023】
図2は、導波管(41)とレール(23)との接続形態の一例を示す詳細図である。図2(a)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の展開斜視図であり、図2(b)は、導波管(41)とレール(23)の組立部分の部分断面図である。
レール(23)は、取付プレート(231)の面上に固定される。取付プレート(231)は、平板状の部材であり、レール(23)は直方体状の部材である。取付プレート(231)のレール(23)が取付けられた側の面には、Oリング用溝(232)が形成される。Oリング用溝(232)は、レール(23)の周囲を取り囲む。
取付プレート(231)のレール(23)が取付けられる面と反対側の面には、当て板(233)が配される。当て板(233)は正面視ロ字状に形成され、その外形輪郭は、取付プレート(231)と一致する。
導波管(41)の先端には、導波管フランジ(411)が取付けられる。導波管フランジ(411)は、レール(23)と噛合う。導波管フランジ(411)の面は、導波管(41)断面より大きく形成され、導波管(41)は導波管フランジ(411)の面の略中央に接続する。
【0024】
レール(23)が取付けられるタンク外殻体(21)の部分は開口し、レール(23)は、タンク外殻体(21)外周面に対して外方に突出する。また、タンク外殻体(21)のレール取付用の開口部周囲において、タンク外殻体(21)内壁面に凹部が形成され、タンク外殻体(21)の壁面肉厚は薄くなっている。
タンク外殻体(21)内壁面に形成された凹部には、取付プレート(231)が据付けられる。取付プレート(231)は、当て板(233)とともにボルト等の固定具で、タンク外殻体(21)内壁面側に固定される。
Oリング用溝(232)には、Oリング(234)が配され、Oリング(234)はタンク外殻体(21)内壁面と取付プレート(231)との間で圧縮される。
【0025】
図2に示す例において、取付プレート(231)及びレール(23)は、一体に形成されている。
取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波の照射を受けても、マイクロ波を透過させて、加熱せず、熱影響を受けない材質で構成される。このようなマイクロ波を透過させる材質として、石英、テフロン(登録商標)或いはポリスチレン等を例示可能である。
【0026】
図3は、マイクロ波漏れ防止カバーの取付形態を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、レール(23)外周面を被覆するように、マイクロ波漏れ防止カバー(235)が取付けられる。
マイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属材料からなる。尚、図3に示すマイクロ波漏れ防止カバー(235)は、金属板を折り曲げ加工して得られた形態であるが、直径3mm以下の開口部を複数備える多孔板や金網を用いて、マイクロ波漏れ防止カバー(235)を形成してもよい。
【0027】
図4及び図5は、電磁波シールドの取付形態の一例を示す。
上述の如く、取付プレート(231)及びレール(23)は、マイクロ波を透過させる材料からなるので、マイクロ波の漏れを防止するために、マグネトロン(4)外側を囲むように電磁波シールド(236)が取り付けられてもよい(図4参照)。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)外側全体を取り囲むように電磁波シールド(236)が設けられてもよい(図5参照)。
電磁波シールド(236)は、多孔板或いは電磁波吸収体により形成される。電磁波シールド(236)が多孔板からなる場合、多孔板上の開口部の径は、使用されるマイクロ波の周波数により適宜定められ、多孔板がマイクロ波に対して壁となり、マイクロ波の漏れを防止可能にする。
【0028】
図6は、真空、乾燥・濃縮装置(1)の概略平面図である。尚、図1に示す断面図は、図6においてA−A線として示される断面を示している。
複数のマグネトロン(4)が上述の如くしてタンク外殻体(21)外周面にレール(23)を介して取付けられる。複数のマグネトロン(4)は、タンク外殻体(21)外周面周方向に等間隔に配されている。尚、マグネトロン(4)の配置は図示例に限られるものではなく、上下に千鳥状にマグネトロン(4)を配することも可能である。或いは、真空、乾燥・濃縮装置(1)の設計に応じて、適宜マグネトロン(4)の配置形態を変更してもよい。
【0029】
蓋体(22)の上面には、リブ(221)が形成され、リブ(221)は蓋体(22)上面で格子状に配される。これにより、タンク本体(2)内部の負圧に対して、蓋体(22)が変形することを防止できる。或いは、蓋体(22)は鏡板を使用することによって、蓋体(22)の変形を防止できる。
【0030】
図7は、図6に示すB−B線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、流入口(213)が設けられ、流入口(213)には管路が取り付け可能である。流入口(213)から、液体が流入し、タンク本体(2)内部に液体が収容される。
タンク外殻体(21)周壁面下部を空気供給パイプ(5)が貫通する。空気供給パイプ(5)の先端開口部は上方に向き、空気供給パイプ(5)を通じてタンク本体(2)内部に供給された空気は、タンク外殻体(21)上方に向けて放出される。
空気供給パイプ(5)からの空気は、タンク外殻体(21)上方に放出されることで、タンク本体(2)内部の液体内に旋回流等を生じさせる。旋回流等によりタンク本体(2)内部の液体が撹拌され、液体濃度並びに液体温度を均一化させることができる。
【0031】
図8は、図6に示すC−C線における概略断面図である。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、排気口(214)が設けられる。排気口(214)は、真空ポンプに接続し、タンク本体(2)内部の空気を排気する。これにより、タンク本体(2)は負圧に保たれる。
タンク外殻体(21)周壁面上部には、真空計(215)が取り付けられ、タンク本体(2)内部の圧力が測定される。
【0032】
図9は、真空、乾燥・濃縮装置(1)が備えるセンサの配置を示す。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、液位計(61)、温度計(62)及び濃度計(63)を更に備える。液位計(61)は、蓋体(22)上面に据付けられ、液位計(61)の検知部はタンク本体(2)内部の液体中に延設している。温度計(62)及び濃度計(63)は、タンク外殻体(21)内壁面に据付けられ、タンク本体(2)内部に収容されて液体の温度や、液体中の特定成分の濃度を計測する。
制御部(6)は、更に、モータ(222)、マグネトロン(4)と接続する電源(43)、マグネトロン(4)を上下させるアクチュエータ(42)に電気的に接続し、これらに作動信号を送信し、これらの作動を制御する。
以下に、これら制御について詳述する。
【0033】
図10は、真空、乾燥・濃縮装置(1)を用いた水分蒸発工程を行う間の信号の流れを示すブロック線図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、上述の如く、制御部(6)によって制御される。制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)に信号を送信し、液体供給ポンプ(69)を作動させる。液体供給ポンプ(69)は、流入口(213)に接続し、流入口(213)を介して、タンク本体(2)内部に液体を供給する。
【0034】
タンク本体(2)内部には、上述の如く、液位計(61)が配される。液位計(61)は、タンク本体(2)内部の液体の液位を測定するとともに測定された液位に応じた信号を制御部(6)へ送信する。
制御部(6)には、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部に収容可能な液体の体積の最大値が入力されている。制御部(6)は、液位計(61)からの信号に基づき、タンク本体(2)内部に供給された液体の体積を算出し、入力された収容可能な液体の体積の最大値と比較する。液体体積の算出値が、入力された液体体積の最大値を超えたとき、制御部(6)は、液体供給ポンプ(69)の作動を停止させる。
【0035】
制御部(6)には、反射板(3)のタンク本体(2)内部における高さ位置が入力されている。
制御部(6)は、マグネトロン(4)を上下動させるアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)の上縁がタンク本体(2)内部の液体の液面より下方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。また、導波管フランジ(411)の下縁が反射板(3)の上方に位置するようにマグネトロン(4)の位置を調整する。
【0036】
その後、制御部(6)は、マグネトロン(4)を作動させ、マイクロ波をタンク本体(2)内部の液体に照射する。マイクロ波は、タンク本体(2)内部の液体中を進行し、マイクロ波のエネルギ全部が液体に吸収される。この結果、液体が効率よく加熱されることとなる。
液体中を進行するマイクロ波の一部は、反射板(3)によって上方に向けて反射される。この反射されたマイクロ波は更に液体中を進行し、液体を加熱する。
このようにして、反射板(3)上面と液面との間の空間として定義される加熱対象区画にある液体が集中して加熱されることとなる。結果として、液面付近の液体が短時間で昇温されるので、高い効率で水分を蒸発させることが可能である。
【0037】
液体の蒸発に伴い、液面が下降する。この液面の下降は、液位計(61)により検知される。導波管フランジ(411)の上縁が液面位置より上に位置する前に、制御部(6)はアクチュエータ(42)に信号を送信し、アクチュエータ(42)を作動させる。そして、アクチュエータ(42)は、導波管フランジ(411)を液面より下方に移動させ、マイクロ波の照射位置を調整する。
【0038】
図11は、反射板支持棒(31)途中部に組み込まれる伸縮部材(310)の一例を示す。
伸縮部材(310)は、円筒状の第1筒(311)と、第1筒(311)下端に接続する蛇腹状のベローズ(312)と、ベローズ(312)下端に接続する第2筒(313)を備える。
第1筒(311)内壁面には、環状の第1仕切板(314)が固定され、第2筒(313)内壁面には、環状の第2仕切板(315)が固定される。第1仕切板(314)と第2仕切板(315)の間にはシリンダ(316)が配される。シリンダ(316)の本体部は第2仕切板(315)上面に固定され、シリンダ(316)のロッドは第1仕切板(314)下面に固定される。
シリンダ(316)のロッドを伸縮させることで、伸縮部材(310)の軸長が変化する。
このような伸縮部材(310)を反射板支持棒(31)途中部に組み込むことで、反射板支持棒(31)の軸長が増減し、反射板(3)のタンク本体(2)内部での高さ位置を変化させることができる。
【0039】
液位計(61)が計測する液位に応じて、制御部(6)がシリンダ(316)に信号を送り、シリンダ(316)がロッドをシリンダ本体内に収容する。これにより、反射板(3)が下方に移動することとなる。したがって、反射板(3)の上面位置を常に導波管フランジ(411)下縁よりも下方に位置させることが可能となる。
このような構成を採用すると、例えば、液面から反射板(3)上面までの距離を常に一定にすることができ、水分蒸発工程を安定化させることが可能となる。
【0040】
より簡便な機構を望むならば、マグネトロン(4)や反射板(3)を適当な位置に固定或いは反射板(3)を用いず、マグネトロン(4)のみを適当な位置に固定する構成を採用しても良い。
例えば、制御部(6)が液位計(61)からの信号に応じて、蒸発した水分量を算出し、液体供給ポンプ(69)を作動させ、蒸発した水分量と等しい体積の液体をタンク本体内部に供給しても良い。或いは、液体供給ポンプ(69)と真空、乾燥・濃縮装置(1)の間の管路に配されるバルブの開閉を制御部(6)が操作し、蒸発した水分量と等しい体積の液体をタンク本体(2)内部に供給しても良い。
このような構成を採用するならば、タンク本体(2)内部の液体の液位を常に一定に保つことができ、連続的な水分蒸発工程を行い、所望する濃度と体積を得ることが可能となる。
【0041】
図12は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体の温度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
上述の如く、本発明においては、反射板(3)上面と液面との間の加熱対象区画が集中的に加熱されることとなるため、高い水分蒸発効率を得ることができる。その一方で、水分蒸発処理を施される液体が、例えば、動植物の搾汁等であり、食品用の濃縮液を得ようとしている場合には、過度の高温が望ましくない場合もある。
タンク本体(2)内部には複数の温度計(62)が配される。複数の温度計(62)は、タンク内部上下方向に整列して配される。これにより、液面の変位にかかわらず、加熱対象区画の温度を測定可能となる。温度計(62)は、制御部(6)へ測定した液体の温度を送信する。
【0042】
制御部(6)には、水分蒸発処理を施される液体に対して定められる許容最大温度が入力されている。制御部(6)は、温度計(62)から送信される信号に基づき、液体温度を算出するとともに算出された液体温度と入力された許容最大温度を比較する。
そして、液体温度が許容最大温度を超える前に、制御部(6)は、空気供給パイプ(5)に設けられたバルブ(51)に信号を送信し、バルブ(51)を開く。バルブ(51)が開くと、圧縮空気を貯蔵する空気貯蔵タンクに接続する空気供給パイプ(5)から空気がタンク本体(2)内部に流入し、上述の如く、タンク本体(2)内部の液体に旋回流等を生じせしめる。これにより、タンク本体(2)底部付近にある比較的低い温度の液体と、液面付近の高い温度の液体とが混合し、液面付近の液体温度が低減する。
【0043】
尚、空気供給パイプ(5)の代わりに、蓋体(22)上面のモータ(222)を作動させてもよい。制御部(6)がバルブ(51)へ信号を送る代わりに、モータ(222)へ作動信号を送信することにより、反射板(3)が回転し、タンク本体(2)内部の液体に旋回流を生じせしめ、上述のような上層と下層の液体間の混合作用を得ることができる。尚、この場合には、反射板(3)の上面及び/又は下面に突条、隆起部或いは溝部などを形成することが好ましい。反射板(3)の上面及び/又は下面にこのような三次元形状の凸部或いは凹部を設けることにより、反射板(3)の回転動作により得られる撹拌効果を高めることができる。尚、反射板(3)上面及び/又は下面の突起部や突条の形成は、反射板(3)と一体的に形成して行われてもよく、突起片や突条片を反射板(3)と別体に形成し、ボルト等の固定手段で突起片や突条片を反射板(3)に取付ける形態を採用してもよい。
【0044】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて、制御部(6)がマグネトロン(4)に接続する電源(43)へ信号を送り、マグネトロン(4)の出力を増減させる構成を採用してもよい。
例えば、加熱対象区画内の液温の昇温速度が高い場合には、マグネトロン(4)の出力を下げ、昇温速度の低減を図ることができる。これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能となる。
【0045】
尚、加熱対象区画内の液温を測定する温度計(62)の温度に応じて制御部(6)がタンク本体(2)内部を減圧する真空ポンプ(74)へ信号を送り、真空ポンプの回転数を上げることによって、タンク本体(2)内部の圧力を更に減圧させる構成を採用してもよい。例えば、加熱対象区画内の昇温温度が高い場合には、タンク(2)内部を減圧し、沸点を下げることによって昇温速度の低減を図ることができる。
これにより、加熱対象区画内の液温調整を精度よく行うことが可能となる。
【0046】
上述のように空気供給パイプ(5)から空気を供給すると、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧が増加する。
真空計(215)は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を測定し、制御部(6)へ測定した気圧に応じた信号を送信する。真空計(215)からの信号に応じて、制御部(6)は、排気口(214)に取付けられた排気用バルブ(216)を開き、真空、乾燥・濃縮装置(1)と真空ポンプ間の経路を開く。真空ポンプは真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の空気を吸引し、真空、乾燥・濃縮装置(1)の負圧を一定に保つ。
【0047】
温度計(62)が液面付近の液温が十分に降下したことを示す信号を制御部(6)に送信すると、制御部(6)は空気供給用バルブ(51)を閉じる。これにより、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の気圧を元の状態に戻すことができる。
このようにして真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の気圧を一定にすることで、水分蒸発工程の安定化を図ることが可能となる。
【0048】
図13は、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体内に含まれる成分の濃度に基づく制御の一例を示すブロック線図である。
濃度計(63)は、加熱対象区画内部の液体内に含まれる成分の濃度を測定する第1濃度計と、真空、乾燥・濃縮装置(1)内部の液体の下層の成分濃度を測定する第2濃度計からなる。真空、乾燥・濃縮装置(1)内部へ供給される液体の体積は、液体供給ポンプ(69)の回転数並びに容量から算出され、蒸発した水分体積は液位計(61)から算出されるので、制御部(6)は真空、乾燥・濃縮装置(1)で水分蒸発処理を施された後の液体内に含まれる成分の濃度を理論的には算出可能である。
しかしながら、精度のよい濃度が求められる場合には、算出される液体内の成分濃度の理論値ではなく、実際の水分蒸発処理後の液体内の成分濃度の測定が必要である。
【0049】
図13に示す例においては、水分蒸発処理後の液体内の成分濃度が所望の濃度となっているか否かを確認することが可能である。
液位計(61)からの信号に基づき、制御部(6)は、所定の水分量を蒸発させたことを認識する。その後、制御部(6)は、空気供給バルブ(51)を開き、真空、乾燥・濃縮装置(1)内の液体を撹拌する。
第1濃度計と第2濃度計は、液体の上層と下層の液体内に含まれる成分の濃度を測定するとともに、濃度に応じた信号を制御部(6)へ送信する。第1濃度計と第2濃度計からの信号が等しくなったとき、制御部(6)は空気供給バルブ(51)を閉じる。
【0050】
制御部(6)には、所望の成分濃度の値が入力されている。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも低い場合には、制御部(6)はマグネトロン(4)へ作動信号を送り、マグネトロン(4)を作動させ、水分蒸発工程を続行させる。そして、所望の成分濃度が得られるまで、水分蒸発工程を続ける。
第1濃度計と第2濃度計により示される成分濃度の値が、制御部(6)に入力された所望の成分濃度の値よりも高い場合には、制御部(6)は液体供給ポンプ(69)を作動させ、水分蒸発処理後の液体よりも低い成分濃度の液体を真空、乾燥・濃縮装置(1)内に供給し、液体の成分濃度を所望の成分濃度と等しくさせる。
尚、上述と同様に、空気供給バルブ(51)の開閉動作の代わりに、モータ(222)の作動のオン・オフ制御によって、図13に示す制御を行ってもよい。
【0051】
上記のように、水分蒸発処理の後、成分濃度確認のために液体を撹拌することは、液体内の成分濃度に応じて液体の粘度が変化するような液体に対して好ましい結果をもたらす。
液体の粘度が高すぎると、排出口(212)からの液体排出に不具合を生ずることがある。上述のように、水分蒸発処理後、液体排出前に液体の撹拌を行うことで、液体中において局所的に粘度の高い部分を生ずることがなくなり、円滑な液体排出工程を実行可能となる。
【0052】
また、液体が例えば汚泥である場合には、汚泥中の固体成分が時間経過とともに真空、乾燥・濃縮装置(1)の底部(211)上に堆積することとなる。この堆積した固体成分が排出口(212)を閉塞し、汚泥の排出を妨げることとなる。
上述の如く、汚泥排出前に撹拌を行うことで、汚泥中の固体成分による排出口(212)の閉塞を防止可能となる。
【0053】
尚、汚泥のような固体成分が堆積するような液体に対して水分蒸発処理を行う場合には、反射板(3)に高振動発生装置を接続することが好ましい。反射板(3)に高振動を生じさせることにより、反射板(3)上に堆積した固体成分を、反射板(3)に多数形成された開口部を介して下方に落下させることが可能となるためである。
【0054】
尚、制御部(6)に対して、液体上層の濃度と液体下層の濃度の差異に対する閾値が入力され、第1濃度計が測定する成分濃度と第2濃度計が測定する成分濃度の差異を、第1濃度計及び第2濃度計から送信される信号に基づき、制御部(6)が算出し、算出された成分濃度の差異が入力された閾値を超えるときに、上記の撹拌作用を生じさせる形態を採用してもよい。
【0055】
尚、上記に示す例は、単に本発明を説明するためのものにすぎず、何ら本発明を限定するものではない。
また、上記において、反射板(3)を用いて、液面と反射板(3)上面との間の加熱対象区画を集中して加熱する例を示したが、タンク本体(2)内の液体全体を加熱したい場合には、反射板(3)なしで、マグネトロン(4)をタンク本体(2)の下端部の適当な位置に固定して加熱を行ってもよい。例えば、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)下端縁より僅かに上方に固定し、タンク本体(2)内部底部領域を加熱するといった形態である。或いは、マグネトロン(4)をタンク外殻体(21)の底部(211)に固定し、底部(211)からマイクロ波を出力してもよい。
【0056】
図14は、上記の真空、乾燥・濃縮装置(1)を示す概略図である。
真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク本体(2)と、タンク本体(2)の排気口(214)と接続するサイクロン(71)と、サイクロン(71)に接続する凝集器(72)と、凝集器(72)に冷却水を供給するとともに内部の冷却水を冷却する貯水タンク・冷却塔(73)と、凝集器(72)、サイクロン(71)並びにタンク本体(2)の空気を吸引する真空ポンプ(74)からなる。
【0057】
タンク本体(2)内の空気層には、上述の水分蒸発処理によって生ずる水蒸気が多量に含まれることとなる。真空ポンプ(74)からの空気吸引によって、タンク本体(2)内の水蒸気を多量に含んだ空気はサイクロン(71)に流れることとなる。
水蒸気中には、タンク本体(2)内に供給された液体が含有する微細な固体成分も含まれている。サイクロン(71)は、この微細な固体成分を水蒸気から分離する。分離された固体成分はサイクロン(71)下部に配される貯蔵部(711)に蓄積される。
【0058】
サイクロン(71)により微細な固体成分を除去された水蒸気を含有する空気は、凝集器(72)に至る。凝集器(72)には、貯水タンク・冷却塔(73)に蓄えられた冷却水がポンプ(731)を通じて供給される。凝集器(72)内には多数のプレート(721)が配され、パイプ(722)がプレート(721)を横切って蛇行する。パイプ(722)内には、貯水タンク・冷却塔(73)から供給される冷却水が流れ、これによりプレート(721)が冷却される。
プレート(721)に接触した空気は、冷却され、空気が含有する水成分がプレート(721)上で結露する。プレート(721)上で結露した水成分は滴下し、凝集器(72)下部に配される貯水部(723)に蓄えられる。
【0059】
凝集器(72)によって、水成分を除去された空気は更に真空ポンプ(74)により吸引され、真空ポンプ(74)下流側へと排出される。
真空ポンプ(74)下流側において、排出された空気に対して脱臭処理などの後処理を施してもよい。
また、貯水部(723)に蓄えられた水成分に対してPh処理などを施してもよい。
このような後処理を施した後、環境内に空気や水を放出することで、環境に負荷をかけない処理システムが構築可能となる。
尚、真空、乾燥・濃縮装置(1)は、タンク本体(2)、サイクロン(71)、凝集器(72)、貯水タンク(73)及び真空ポンプ(74)が1つの基板上に配され、該基板ごと車載可能とされることが好ましい。
【0060】
(試験例)
図15は、反射板(3)の効果に対する試験結果を示すグラフである。図15のグラフの横軸は、マグネトロン(4)による加熱時間を示す。図15のグラフの縦軸は、反射板(3)をタンク本体(2)内に配した時と、反射板(3)をタンク本体(2)から取り除いたときのタンク本体(2)内の無次元化された液温である。タンク本体(2)へ供給された液体の初期の液温が異なったため、補正するために試験結果の温度を、液体の初期の液温で無次元化したものである。
【0061】
図15に示すグラフから明らかなように、タンク本体(2)内に反射板(3)を配したほうが、液面と反射板(3)で区切られた領域と反射板(3)を取り除いて同領域を昇温させた場合と比較すると効率よく昇温できることがわかる。10%程度昇温効率を向上させる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、汚泥重量の軽減工程や動植物の搾汁の濃縮工程に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の主要部を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の導波管とタンク外殻体との接続構造を示す詳細図である。
【図3】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置のマイクロ波漏れ防止カバーの取り付け例を示す図である。
【図4】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図5】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の電磁波シールドの取り付け例を示す図である。
【図6】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の概略平面図である。
【図7】図6に示すB−B線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図8】図6に示すC−C線における真空、乾燥・濃縮装置の概略縦断面図である。
【図9】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置が備える液位計、温度計並びに濃度計の配置を概略的に示す図である。
【図10】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の液位に基づく制御を示すブロック線図である。
【図11】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の反射板支持棒に組み込まれる伸縮部材の縦断面図である。
【図12】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の温度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図13】真空、乾燥・濃縮装置内の液体の成分濃度に基づく制御を示すブロック線図である。
【図14】本発明に係る真空、乾燥・濃縮装置の概略構成図である。
【図15】反射板の有無による昇温効果の差異を示すグラフである。
【図16】従来の濃縮液製造装置を示す図である。
【図17】従来の汚泥用の脱水装置を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・・・・真空、乾燥・濃縮装置
2・・・・・・タンク本体
21・・・・・タンク外殻体
22・・・・・蓋体
3・・・・・・反射板
4・・・・・・マグネトロン
41・・・・・導波管
5・・・・・・空気供給パイプ
6・・・・・・制御部
61・・・・・液位計
62・・・・・温度計
63・・・・・濃度計
71・・・・・サイクロン
72・・・・・凝集器
73・・・・・貯水タンク
74・・・・・真空ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体を備える真空、乾燥・濃縮装置であって、
前記タンク本体が、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、
該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、
前記タンク外殻体に接続するとともに液体が流入する流入口と、
前記タンク外殻体底部に接続するとともに液体が排出される排出口と、
前記タンク外殻体上部周面に接続するとともに前記タンク本体内の空気を排出し、前記タンク本体内を真空にする排気口と、
前記タンク外殻体に接続する導波管と、
該導波管を介して前記タンク外殻体と接続する少なくとも1つのマグネトロンからなり、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記タンク本体内の液体の液面より下方に位置することを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項2】
前記タンク本体が、該タンク本体内に配される反射板を更に備え、
該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記タンク本体内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項3】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項4】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項2記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項5】
前記マグネトロンが複数であり、
該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項6】
前記タンク本体内部に空気供給パイプが挿入され、
該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項7】
前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、
前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記タンク本体内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項8】
前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項7記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項9】
前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、
該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項10】
前記タンク本体内部の液体の液位を計測する液位計と、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、
前記液位計が、前記タンク本体内部の液体の液位の信号を前記制御部へ送信し、
該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記タンク本体内部の液体の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項4記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項11】
前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、
前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、
前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項10記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項1】
タンク本体を備える真空、乾燥・濃縮装置であって、
前記タンク本体が、一端有底筒状に形成されたタンク外殻体と、
該タンク外殻体上端開口部を気密に閉塞する蓋体と、
前記タンク外殻体に接続するとともに液体が流入する流入口と、
前記タンク外殻体底部に接続するとともに液体が排出される排出口と、
前記タンク外殻体上部周面に接続するとともに前記タンク本体内の空気を排出し、前記タンク本体内を真空にする排気口と、
前記タンク外殻体に接続する導波管と、
該導波管を介して前記タンク外殻体と接続する少なくとも1つのマグネトロンからなり、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置は、前記タンク本体内の液体の液面より下方に位置することを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項2】
前記タンク本体が、該タンク本体内に配される反射板を更に備え、
該反射板は、前記導波管と前記タンク外周面との接続位置よりも下方に位置し、前記タンク本体内部の液中に広がる面を備えるとともに、複数の開口部が形成されることを特徴とする真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項3】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体底部若しくは底部近傍に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項4】
前記マグネトロンが、前記導波管を介して、前記タンク外殻体外周面に接続し、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項2記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項5】
前記マグネトロンが複数であり、
該マグネトロンが前記タンク外殻体周方向に等間隔に固定されることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項6】
前記タンク本体内部に空気供給パイプが挿入され、
該空気供給パイプから、前記タンク外殻体上方に向けて空気が供給可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項7】
前記蓋体上面に載置固定されるモータを更に備え、
前記反射板が前記蓋体上面に載置固定されるモータと接続し、前記タンク本体内部で回転可能であることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項8】
前記反射板の上面若しくは下面に凸部若しくは凹部が形成されることを特徴とする請求項7記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項9】
前記反射板が、高周波振動発生装置に接続し、
該高周波振動発生装置が前記反射板を振動させることを特徴とする請求項1記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項10】
前記タンク本体内部の液体の液位を計測する液位計と、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置の上下動作を制御する制御部を更に備え、
前記液位計が、前記タンク本体内部の液体の液位の信号を前記制御部へ送信し、
該制御部は、前記液位計からの信号に基づき、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下に移動させるアクチュエータに作動信号を送信し、該アクチュエータを作動させ、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置を上下動させ、
前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置が前記タンク本体内部の液体の液面よりも下方に位置することを特徴とする請求項4記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【請求項11】
前記反射板を上下動させるアクチュエータを更に備え、
前記制御部が、前記液位計からの信号に基づき、前記アクチュエータを動作させ、
前記反射板が、前記導波管と前記タンク外殻体外周面との接続位置よりも下方に位置することを特徴とする請求項10記載の真空、乾燥・濃縮装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−12451(P2008−12451A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187171(P2006−187171)
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【特許番号】特許第3955923号(P3955923)
【特許公報発行日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【特許番号】特許第3955923号(P3955923)
【特許公報発行日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【出願人】(000165343)兼松エンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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