説明

真空ポンプ

【解決手段】本発明は、ポンプ室(12)に複数のポンプ要素(14)を備えた真空ポンプに関する。ポンプ要素(14)の内の1つが電動機(24)により駆動される。周波数インバータ(30)が、電動機(24)の回転速度を変更するために設けられている。周波数インバータ(30)は、ポンプハウジング(10)に隣接した周波数インバータハウジング(32)内に配置されている。空気冷却器(34)及び液体冷却器(36)が、周波数インバータ(30)を冷却するために周波数インバータハウジング(32)内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関し、特にはスクリュー式真空ポンプ、ルーツ式真空ポンプ又は回転翼真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、ポンプハウジングによって形成されたポンプ室に配置され、流体、特には空気のような気体を運ぶためのポンプ要素を備えている。ポンプ要素は、通常電動機によって駆動される。真空ポンプの回転速度を簡単に変えるために、電動機の速度を簡単に変更可能とすべく周波数インバータを使用することが知られている。周波数インバータは高感度な電子部品である。周波数インバータの適切な冷却及び防振性配置を可能とするために、周波数インバータを、真空ポンプとは無関係に真空ポンプから離れた制御キャビネットに設けることが知られている。しかしながら、これは、制御キャビネットと真空ポンプの電動機との間に必要な配線のため特に手間がかかる。従って、周波数インバータを真空ポンプに直接配置することが一般的に好まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1936198 号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周波数インバータを真空ポンプに直接配置するために、周波数インバータを冷却すべく空気を冷却することが知られている。この場合、冷却は、送風器によって吸い込まれ、周波数インバータに向かって吹き付けられる周囲空気を使用して行われる。従って、冷却は強制対流によって達成される。しかしながら、このような空冷手段は、高い保護等級を達成することができないか、又は多大な労力をかけてやっと達成され得るという不利点を有する。より低い保護等級でさえ、複雑なハウジングが必要である。特に汚れた環境では、頻繁な清掃及びフィルタの交換が必要であるので、保守の手間が大いにかかる。更に、自然対流を使用して周波数インバータを冷却することが知られており、この場合には、冷却リブがハウジングに直接設けられている。しかしながら、この設計は、周囲温度が対応して低く、周波数インバータがあまり加熱されない性能範囲で真空ポンプが作動される場合にのみ可能である。空気の自由な流入を保証する必要があるので、この設計では汚染の高いリスクが同様に存在する。
【0005】
更に、周波数インバータを直接水冷することが知られている。この場合、周波数インバータは真空ポンプの冷却された面に接続される。しかしながら、このために、周波数インバータが真空ポンプの振動にさらされるという問題点がある。更に、真空ポンプの冷却条件及び周波数インバータの冷却条件は互いに対応する必要がある。このように使用される周波数インバータは、対応する条件に適合させられる必要がある。更に、周波数インバータ用の別個の冷却板を設けることが知られており、冷却板は別個の冷却回路に接続される。これは、非常に複雑な解決策である。周波数インバータのための水冷の一般的な欠点は、高い空気湿度で周波数インバータ内に凝縮物を形成し得るということである。
【0006】
本発明は、周波数インバータを備えた真空ポンプを提供し、前記周波数インバータの確実な冷却を保証することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
該目的は、請求項1の特徴を備えた本発明によって達成される。
【0008】
本発明の真空ポンプでは、ポンプ室に配置された少なくとも1つのポンプ要素が電動機によって駆動される。電動機は、電動機の速度が変更できるように周波数インバータに接続されている。周波数インバータは、以下FIハウジングと呼ばれる周波数インバータハウジング内に配置されており、FIハウジングは、ポンプハウジングに隣接している。本発明によれば、FIハウジングは、周波数インバータを冷却するための空気冷却器及び液体冷却器の両方を収容している。本発明により提供されているように、空気冷却器と液体冷却器との組み合わせにより、周波数インバータが高い熱応力を受けた場合であっても周波数インバータの確実な冷却を保証することが可能になり、同時に、凝縮物の発生が回避され得る。
【0009】
好ましくは、FIハウジングとポンプハウジングとは一体的に形成されており、言うまでもなく、両方のFIハウジング及びポンプハウジングは複数の部品から構成されることが可能である。この点に関して、FIハウジングがポンプハウジングに隣接しており、従って小型の構造が得られることが好ましい。
【0010】
空気冷却器は、冷却気流をFIハウジング内に発生させる送風器を備えていることが好ましい。本発明によれば、気流は液体冷却器によって冷却される。このため、周波数インバータが、冷却板等に直接接続されていないが、周波数インバータの冷却は、液体冷却器によって冷却された気流によって行われることが有利である。従って、特には周波数インバータ内での凝縮物の発生の危険性が著しく低減される。
【0011】
FIハウジングは、空気が循環するように閉じられてもよい。汚染されている可能性がある周囲空気を吸い込む必要がない。
【0012】
液体冷却器は、FIハウジング内に、又はFIハウジングに配置された冷却要素を備えていることが好ましい。空気は、好ましくは表面を増大させるために冷却リブを有する冷却要素に沿って流れる。空気が流れる冷却リブ又は冷却要素の表面は、周波数インバータの方に向いていることが好ましい。好ましい実施形態では、液体冷却器は、少なくとも1つの冷却コイルが配置されている冷却板を備えている。対応する冷却板は、FIハウジングの一部を形成してもよい。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態では、液体冷却器は真空ポンプの冷却回路に一体化されている。従って、1つの冷却回路のみが設けられている。このため、周波数インバータを冷却すべく追加の冷却回路を接続する必要がないので、真空ポンプの冷却回路への接続が容易になる。
【0014】
別の好ましい実施形態では、電動機もFIハウジング内に配置されている。本実施形態では、液体冷却器は電動機を少なくとも部分的に囲んでいることが好ましい。従って、液体冷却器は、電動機を冷却する機能と、周波数インバータを冷却する気流を冷却する機能とを有する。特には、本実施形態の液体冷却器は、冷却コイルの方法で電動機を完全に囲んでいる。
【0015】
FIハウジングは、電動機の液体冷却器、又は電動機の対応する液冷ハウジングに熱的に接していることが好ましい。従って、良好な放熱が保証され得る。
【0016】
本発明によれば、周波数インバータが気流によって冷却されるので、周波数インバータを冷却板に直接接続する必要がない。本発明によって提供されているように、このような装置は、周波数インバータが振動減衰要素に支持され得るという利点がある。
【0017】
周波数インバータへの振動障害の発生が、構成要素の接着又は封入に加えて、耐振動性電子部品の使用によって更に防止され得る。更に、振動が遮断された構成要素が、取付箇所として使用され得る。
【0018】
本発明の本質的な利点は、周波数インバータが水系回路に直接接続されないので、周波数インバータの電子部品への凝縮障害の発生が回避されることである。従って、最も冷えた構成要素で生じる凝縮は、周波数インバータが作業中に余熱を発生させるので、周波数インバータ自体ではなく空気冷却器又は液体冷却器で生じる。更に真空ポンプが停止されると、周波数インバータが冷却されないので、凝縮が回避される。このために、空気冷却器の送風器は、好ましくは周波数インバータに操作上接続されている。凝縮物の排出口がFIハウジングに設けられていることが好ましい。
【0019】
周波数インバータが、温度に最も反応する構成要素であるので、通常の冷却回路では、まず周波数インバータを冷却し、次に電動機を冷却し、その後真空ポンプを冷却するために冷却媒体を使用することが好ましい。更に、水冷の更なる制御が行われてもよい。
【0020】
本発明によって提供されているように、ポンプハウジング又はFIハウジングへの周波数インバータの一体化は、少量の空気を運べばよいという点で制御キャビネット内に周波数インバータを配置するよりも有利である。特に、FIハウジング内で空気を非常に効率的に導くことが可能である。
【0021】
本発明に従って実現された冷却を含めて、本発明によって提供されているような周波数インバータの配置のため、例えば、IP54の高い保護等級が達成され得る。
【0022】
本発明を、好ましい実施形態及び添付図面を参照して更に詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の好ましい実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2は、一例としてスクリュー式真空ポンプを非常に概略的に夫々示している。ハウジング10がポンプ室12を画定しており、ポンプ室12には、2つのポンプスクリュー14が反対方向に回転するポンプ要素として配置されている。通常、ポンプ要素の反対方向への回転は、2つのスクリューロータ14間に配置され、概略図に図示されていない伝動装置によって行われる。2つのポンプ要素の回転により、矢印16の方向への入口開口部18を介した媒体の取込みと、矢印22の方向への出口開口部20を介した媒体の放出とが引き起こされる。
【0025】
図1に図示された本発明の第1の好ましい実施形態によれば、電動機24がハウジング10の一部26に配置されている。電動機24は、電動機24の出力軸28を介して2つのポンプスクリュー14の内の一方に接続されている。
【0026】
電動機24の回転速度を制御するために、周波数インバータ30が設けられており、電動機24に電気的に接続されている。周波数インバータ30は、周波数インバータハウジング32(FIハウジング)内に配置されている。FIハウジング32は、ポンプハウジング10に隣接しているか、又はポンプハウジング10と一体的に形成されている。
【0027】
空気冷却器34及び液体冷却器36が、周波数インバータ30を冷却するために設けられている。図示された実施形態では、空気冷却器34は送風器38を備えている。送風器38は、FIハウジング32内に配置されており、FIハウジング32内の空気を循環させる機能を有する。送風器38によって発生させられた気流が、液体冷却器36に沿って流れるように導かれる。図示された実施形態では、空気が液体冷却器36の冷却リブ40に沿って流れる。冷却リブ40は、FIハウジング32の内部又は周波数インバータ30の方に向いている。
【0028】
液体冷却器36は、冷却板42のような冷却要素を備えており、冷却板42は、図示された実施形態では、同時にFIハウジング32の側壁を形成している。冷却リブ40は、内側で冷却板42に接続されている。冷却コイル44が、冷却板40内に特には蛇行状に設けられている。冷却コイル44は複数の冷却ライン46に接続されている。図1では、冷却ライン46は、明瞭化のために切り残しとして図示されている。好ましい実施形態では、冷却ライン46は、電動機24の液体冷却システムと真空ポンプ自体の液体冷却システムとの両方に接続されている。冷却ライン46は、ハウジング内に、又はハウジングの外壁に沿って直接接して延びていることが好ましい。
【0029】
周波数インバータ30は、振動ダンパ48によってFIハウジング32のハウジング壁の内の1つに支持されている。
【0030】
第2の好ましい実施形態(図2)では、同一又は同様の構成要素が同一の参照番号で特定されている。第1の実施形態(図1)との本質的な差異は、電動機24がFIハウジング32内に配置されていることである。従って、周波数インバータ30用の液体冷却器を形成すべく設けられた別個の冷却要素が省略され得る。電動機24は液体冷却器50に囲まれている。液体冷却器50は、電動機24を完全に囲んでおり、外側に向いた冷却リブ52を有していることが好ましい。液体冷却器50内に、電動機24を囲んで冷却コイル54が螺旋状に配置されている。この冷却コイル54は、ここでも冷却ライン46に接続されている。
【0031】
第1の実施形態(図1)と同様に、送風器38がFIハウジング32内に配置されている。送風器38は、FIハウジング32内の空気を循環させ、空気は、冷却すべく冷却リブ52に沿って流れるように導かれる。
【0032】
本発明は特定の具体的な実施形態に関して説明され図示されているが、本発明をこれらの具体的な実施形態に限定することを意図していない。当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の真の範囲から逸脱せずに変更及び調整がなされ得ることを認識する。従って、このような全ての変更及び調整を、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に含むように本発明の範囲内に含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室(12)を形成するポンプハウジング(10)と、
前記ポンプ室(12)に配置された少なくとも1つのポンプ要素(14)と、
該少なくとも1つのポンプ要素(14)を駆動するための電動機(24)と、
該電動機(24)に接続されており、該電動機の回転速度を変更するための周波数インバータ(30)と
を備えており、
前記周波数インバータ(30)は、前記ポンプハウジング(10)に隣接した周波数インバータハウジング(32)内に配置されており、
空気冷却器(34)及び液体冷却器(36,50) が、前記周波数インバータ(30)を冷却するために前記周波数インバータハウジング(32)内に配置されていることを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記周波数インバータハウジング(32)及び前記ポンプハウジング(10)は一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記空気冷却器(34)は、前記周波数インバータ(30)を冷却する気流を発生させる送風器(38)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記液体冷却器(36,50) は、前記周波数インバータハウジング(32)に配置された冷却要素(40,42,44;52,54) を備えており、前記気流は、冷却すべく前記冷却要素に沿って流れることを特徴とする請求項3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記冷却要素(40,42,44; 52,54) は、表面を増大させるべく冷却リブ(40,52)を有しており、該冷却リブは、好ましくは前記周波数インバータ(30)の方に向いていることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記液体冷却器(36)は、好ましくは冷却媒体が流れる冷却コイル(44)に接続された冷却板(42)を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記冷却リブ(40)は、前記冷却板(42)に直接接続されていることを特徴とする請求項6に記載の真空ポンプ。
【請求項8】
前記冷却板(42)は、前記周波数インバータハウジング(32)の側壁の少なくとも一部を形成していることを特徴とする請求項6又は7に記載の真空ポンプ。
【請求項9】
前記電動機(24)は、前記周波数インバータハウジング(32)内に配置されており、前記電動機(24)は、好ましくは冷却すべく液体冷却器(50)を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項10】
前記液体冷却器(50)は、前記電動機(24)を少なくとも部分的に、特には完全に囲んでいることを特徴とする請求項9に記載の真空ポンプ。
【請求項11】
冷却コイル(54)が、前記液体冷却器(50)に配置されており、特には前記電動機(24)を囲んで螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の真空ポンプ。
【請求項12】
前記液体冷却器(50)は冷却リブ(52)を有しており、該冷却リブ(52)は、特には外側に向いていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項13】
前記液体冷却器(36)は、前記真空ポンプの冷却回路に一体化されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項14】
前記周波数インバータ(30)及び/又は前記周波数インバータハウジング(32)は振動減衰要素(48)に支持されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項15】
前記液体冷却器(50)は、前記電動機(24)を少なくとも部分的に囲んでいることを特徴とする請求項1乃至5及び請求項9乃至14のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項16】
前記電動機(24)は、前記周波数インバータハウジング(32)内に配置されていることを特徴とする請求項1乃至5及び請求項9乃至15のいずれかに記載の真空ポンプ。
【請求項17】
前記周波数インバータハウジング(32)は、前記電動機の液冷ハウジングに熱的に結合されるように接していることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529590(P2012−529590A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514436(P2012−514436)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057899
【国際公開番号】WO2010/142631
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(508206070)オーリコン レイボルド バキューム ゲーエムベーハー (43)
【Fターム(参考)】