説明

真空レーザー溶接封止機

【課題】真空断熱材製造時のレーザー光による金属箔溶接封止を確実に行うことのできる真空レーザー溶接封止機を提供する。
【解決手段】真空レーザー溶接封止機は、チャンバ下部(2)と、このチャンバ下部と係合して密閉空間(8)を形成し、かつ開閉可能で、光透過窓(6)を備えたチャンバ蓋(1)と、前記空間内には、被封止物を金属外被材で包まれた状態で載置する支持体と、前記金属外被材どうしを密着させる押さえ機構(16)とを有する本体部(10)と、前記本体部の外部に設けられ、前記空間内の排気を行って真空にする真空化装置と、前記本体部の外部に設けられ、前記光透過窓を介してレーザーを前記密着された金属外被材に照射することにより前記金属外被材を溶接して封止するレーザー溶接機構(31−33)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空断熱材や電池等の被封止物をレーザー溶接により真空封止する真空レーザー溶接封止機に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、グラスウール等の芯材をガスバリア性を有する外被材で包装し、チャンバの内部を減圧して真空状態とし外被材を封止することで製造される。また、物品を真空封止する場合にも封止を行うチャンバとして真空チャンバが用いられ、外被材の封止部の接着には通常は樹脂系接着剤が用いられる。
【0003】
特許文献1には、外被材として金属を使用し、真空容器内で透明窓から照射するレーザー光による溶接封止を行う方法および装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−90060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、真空断熱材の製造においては真空包装機に投入する前に芯材、および外被材を十分に乾燥させる必要があり、乾燥に長時間を要する。また、封止封止剤として樹脂系接着剤を使用した場合の酸素透過率は0%ではない。
【0006】
特許文献1に記載の金属外被材をレーザー溶接して封止する封止方法はこの点では有効であるが、真空断熱材のような大型の被封止物を薄膜の金属箔で封止するためには、2枚の金属箔を長い距離平坦に固定し、被封止物に密着させる必要がある。
【0007】
そこで本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、真空断熱材製造時のレーザー光による金属箔溶接封止を確実に行うことのできる真空レーザー溶接封止機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、
チャンバ下部と、このチャンバ下部と係合して密閉空間を形成し、かつ開閉可能で、光透過窓を備えたチャンバ蓋と、前記空間内には、被封止物を金属外被材で包まれた状態で載置する支持体と、前記金属外被材どうしを密着させる押さえ機構とを有する本体部と、
前記本体部の外部に設けられ、前記空間内の排気を行って真空にする真空化装置と、
前記本体部の外部に設けられ、前記光透過窓を介してレーザーを前記密着された金属外被材に照射することにより前記金属外被材を溶接して封止するレーザー溶接機構と、
を備えた真空レーザー溶接封止機が提供される。
【0009】
前記押さえ機構は、押さえと同時に前記金属外被材を密着させるように押さえ部材が溶接位置を中心に前記金属外被材を両側に伸ばすようにスライドする機構であることが好ましい。
【0010】
前記レーザー溶接機構は、前記光透過窓に沿ってレーザー照射ヘッドを平行移動させる移動機構を備えると良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる真空レーザー溶接封止機では、被封止物を金属外被材で包まれた状態で載置する支持体と、前記金属外被材どうしを密着させる押さえ機構とヒータとをチャンバ内に備え、チャンバ外に真空化装置およびレーザー溶接機構を備えることにより、乾燥、真空引き、封止の一連の作業を1つの装置で行うことができるため、効率的な封止作業が可能となる。特にレーザーを用いた真空中の非接触溶接封止が可能となるため、きわめて低い酸素透過率を長期にわたって維持できる製品を製造できる。
【0012】
押さえ機構は、押さえと同時に前記金属外被材を密着させるように押さえ部材が溶接位置を中心に前記金属外被材を両側に伸ばすようにスライドする機構とすることにより、金属外被材のしわやたるみを除去し、金属外被材どうしを確実に密着させることができる。
【0013】
光透過窓に沿ってレーザー照射ヘッドを平行移動させる移動機構を備えることにより、連続的なシーム溶接が可能となり、封止性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかる真空レーザー溶接封止機の一実施例を示す概略平面図である。
【図2】図1の右側面から見た断面図である。
【図3】図1の正面から見た断面図である。
【図4】溶接封止のためにレーザー光が移動する様子を示す説明図である。
【図5】図1の外被材押さえ治具部の詳細図である。
【図6】図5の外被材押さえ治具部の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明にかかる真空レーザー溶接封止機の一実施例を説明する概略平面図であり、図2は図1の右側面から見た断面図、図3は図1の正面から見た断面図である。
【0017】
真空レーザー溶接封止機は、チャンバ下部をなす底板2と、この底板の全周縁部に各辺の先端部が搭載されることにより、空間であるチャンバ8が形成されるチャンバ蓋1を有している。この底板とチャンバ蓋との接触部にはOリングが介装され、底板とチャンバ蓋とを圧力をかけながら密着させあるいは開放する開閉機構(図示せず)を備えることにより、閉じたときには底板とチャンバ蓋2によってチャンバ8は機密性を備え、封止対象物の交換等の場合には、チャンバ蓋1を開閉機構で開放させることができる。
【0018】
底版2の一部に、外部に設けられた真空ポンプ(図示せず)との接続用の孔部9(波線で表現)が設けられ、ここに真空ポンプからのホースが接続され、真空ポンプを駆動させて真空引きすることによって機密性を備えたチャンバは真空度が1Pa以下の高真空チャンバとなる。
【0019】
さらにチャンバ8内には乾燥工程の短縮と、より高真空封止による高断熱性達成と、品質保持のために熱乾燥および真空乾燥用の加熱ヒータ(図示せず)が備えられており、高真空を保ったままチャンバ内を200℃まで加熱することができる。このヒータは底版2内に埋め込まれ絶縁シーズヒータ、チャンバ蓋1の内面壁に取り付けられたフィルム状ヒータなど、種々の形態をとることができる。この加熱により水分の沸点に達しない温度域では熱乾燥が、沸点に達すると真空乾燥が真空引きと平行して行われる。
【0020】
なお、被封止物への悪影響がない限り、加熱温度は高いほど乾燥効率も良好である。
【0021】
一方、チャンバ蓋1にはチャンバ8内に配置される外被材の溶接位置に対応した位置に透過窓6が開けられ、この位置に対応してレーザー光透過ガラス5がチャンバ蓋1の内側に設けられている。図1の実施例の場合、長い断熱材等の外被材をシーム溶接できるよう、真空レーザー溶接封止機の一辺に直線状に形成される。
【0022】
この透過窓は、溶接対象物に応じて複数箇所に設けることができる。
【0023】
チャンバ8の外に備えられたレーザー溶接器で発せられたレーザー光は透過窓6に対して垂直に照射されるが、透過窓に沿って移動させるため、図2および図3に示されるように、チャンバ蓋1上には透過窓に平行なレール31に係合して水平方向に摺動する移動部材32より成るロボット機構30が設けられ、移動部材32に取り付けられたレーザー照射ヘッド33を移動させるようにしている。
【0024】
次に、溶接対象物を取り扱う機構につき、図2と図5を参照して説明する。
【0025】
チャンバ8の内部には定盤4とシール台3と押さえ治具16が備えられている。
【0026】
一方、チャンバ8の外のチャンバ蓋1の上面には、照射窓の中央の両側にエアーシリンダ11がチャンバ蓋1に対して垂直な方向をなすように設けられ、このエアーシリンダ11のそれぞれには連結バー13が取り付けられている。この連結バー13はシリンダ取り付け部を中心として対称的な長さを有しており、その両端部にはスライドシャフト14がエアーシリンダ11のシリンダロッドと平行に、すなわちチャンバ蓋1の上面に対して垂直に配置されている。これらのスライドシャフト14はチャンバ蓋1を貫通してチャンバ蓋1に取り付けられたリニア軸受12によってそれぞれガイドされている。このリニア軸受け12のチャンバ蓋1上の径が大きい部分12aはフランジであり、チャンバ蓋上でリニア軸受け12を安定的に取り付けるためのものである。
【0027】
チャンバ蓋1を貫通した、チャンバ8内のスライドシャフト14の先端にはブラケット15が取り付けられている。ブラケット15にはこれとほぼ直角をなして押さえ治具16が固着され、両者の固着部は、透過窓の方向に垂直な方向に設けられた軸17により、両者一体としてこの軸17の回りを回動する。
【0028】
次にこの真空レーザー溶接封止機の動作について図2を参照して説明する。
【0029】
まず、封止対象物の支持体としての定盤4上に外被材20が載置され、その上に被封止物21が載置される。さらにその上にもう1枚の外被材20が重ねて載置される。ここで封止対象物が例えば真空断熱材の場合、外被材20としてはステンレス材のSUS304の厚さ50μ〜80μの箔が代表的なものではあるが、他の耐環境性の良好な種々の材料を使用することができる。
【0030】
外被材に金属箔、特にステンレス鋼SUS304を使用することで厚さ50μの素材を溶接面最小1mmのピンポイントで溶接することができるようになり、酸素透過率0%を長期間保つことができる。
【0031】
また、被封止物21は真空断熱材の場合、グラスファイバやセラミック粉末等多孔質のものが好適である。
【0032】
真空断熱材の製造には、被封止物と外被材がともに十分に乾燥していることが必要であるので、チャンバ蓋1を閉じて真空引きを行って真空度1Pa以下とし、同時にヒータにより、200℃の加熱を行う。これにより、チャンバ8内部では高い真空度での真空乾燥と高温乾燥が同時に行われるため、短時間で乾燥工程が終了する。
【0033】
乾燥と真空引き工程が終了するとシール台3に載せている外被材20を押さえ治具16によって固定し、レーザー溶接機からレーザー透過ガラスを介して溶接箇所にレーザーを導き、シール台3に設置された外被材20に照射され溶接が行われる。
【0034】
押さえ治具16の動作をシール台3と外被材押さえ部の詳細図である図6を参照して説明する。
【0035】
外被材押さえ機構の動作は、エアーシリンダ11のシリンダロッドが収縮することにより、取り付けられた連結バー13、スライドシャフト14、ブラケット15が下降する。押さえ治具16は軸17により吊り下げられた状態であり軸17を中心に自由に回動することができる。
【0036】
押さえ治具16は外被材押さえ面(下面)の溶接位置の反対方向である後端部に突起16aが設けられている。押さえ治具16が下降すると、破線で示されるように、シール台3上の外被材を押さえ治具16後端部の突起16aで押さえた状態になる。このとき先端部16bは浮いており外被材20を押さえていない。さらにブラケット15が下降すると、軸17は左右に移動できないため、押さえ治具16は軸17を軸に回動し、実線で示すように、後端部16aは後方に移動し、先端部16bは外被材20を押さえることができる。
【0037】
このように、押さえ治具16は後端部で外被材20を押さえたまま後方に移動することによって、外被材20は溶接位置から外側の方向に引っ張られ、しわやたるみを無くすことができると同時に、押さえ治具の先端で確実に押さえることができ、2枚の外被材20を密着させることができる。
【0038】
この真空レーザー溶接封止機を用いることにより、外被材にSUS304を使用することで厚さ50μの素材を溶接面最小1mmのピンポイントで溶接することができる。
【0039】
そして、真空断熱材の外被材に金属箔を使用し金属箔を直接レーザー溶接して封止することにより、酸素透過率0%を永年保つことができる。
【0040】
以上の実施例では、外被材の片側だけを封止しているが、通常は反対側も封止が必要であるので、一旦チャンバ蓋をあけ、反対側の溶接位置をセットして同様の方法を行うことにより封じが行われる。なお、全周にわたって封止を行うときはさらに同じ工程を2回繰り返せばよい。
【0041】
なお、2枚の金属箔の間に封止対象物を置く代わりに1枚の大きな金属箔で包むようにしたり、予め2枚の金属箔の3辺を溶接して袋状に形成したものの中に封止対象物を入れて残りの1辺を本発明にかかる真空レーザー溶接封止機により溶接を行って封止するようにすることもできる。
以上の実施例では、押さえ治具を動作させる駆動手段としてエアーシリンダ11を用いているが、エアーシリンダに限られることなく、油圧を用いたもの、電磁アクチュエータ等往復動作するものであればどのようなものでも使用可能である。
【0042】
また、押さえ機構としては実施例に示した機構だけでなく、外被材の押さえつけと外方への引っ張りを同時にできるようなものであれば、どのような構成のものでも良く、例えば本実施例のような1つのブラケットが両方の機能を持つようなものの他、押さえつけ部材と引っ張り部材を別の部材とすることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1 チャンバ蓋
2 下ケース
3 シール台
4 定盤
5 透過ガラス
6 透過窓
7 Oリング
8 チャンバ
9 孔部
10 本体部
11 エアーシリンダ
12 スライド軸受
12a フランジ
13 連結バー
14 スライドシャフト
15 ブラケット
16 押さえ治具
17 軸
20 外被材
21 被封止物
30 ロボット
31 レール
32 移動部材
33 レーザー照射ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ下部と、このチャンバ下部と係合して密閉空間を形成し、かつ開閉可能で、光透過窓を備えたチャンバ蓋と、前記空間内には、被封止物を金属外被材で包まれた状態で載置する支持体と、前記金属外被材どうしを密着させる押さえ機構とを有する本体部と、
前記本体部の外部に設けられ、前記空間内の排気を行って真空にする真空化装置と、
前記本体部の外部に設けられ、前記光透過窓を介してレーザーを前記密着された金属外被材に照射することにより前記金属外被材を溶接して封止するレーザー溶接機構と、
を備えた真空レーザー溶接封止機。
【請求項2】
前記押さえ機構は、押さえと同時に前記金属外被材を密着させるように押さえ部材が溶接位置を中心に前記金属外被材を両側に伸ばすようにスライドする機構であることを特徴とする、請求項1に記載の真空レーザー溶接封止機。
【請求項3】
前記押さえ機構は、前記光透過窓の中心線に対して両側に2組設けられたことを特徴とする請求項2に記載の真空レーザー溶接封止機。
【請求項4】
前記レーザー溶接機構は、前記光透過窓に沿ってレーザー照射ヘッドを平行移動させる移動機構を備えたことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の真空レーザー溶接封止機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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