説明

真空乾燥方法及び真空乾燥装置

【課題】真空ポンプを使用せずにチャンバー内を減圧することができる真空乾燥方法及び真空乾燥装置を提供する。
【解決手段】本発明の真空乾燥方法は、乾燥チャンバー4内に被乾燥物50を収納し、この乾燥チャンバー4内において被乾燥物50を加熱しながら減圧して真空乾燥させる。乾燥チャンバー4内のガスを水蒸気で置換する水蒸気置換工程と、この乾燥チャンバー4内を密閉した状態で、当該乾燥チャンバー4内の水分を冷却器10の表面に凝結させ、廃棄することによりこの乾燥チャンバー4内を減圧する減圧工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥チャンバー内に被乾燥物を収納し、この乾燥チャンバー内において被乾燥物を加熱しながら減圧して真空乾燥させる真空乾燥方法及び真空乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コーヒーやスープなどの粉末食品や乾燥野菜(ほうれん草やネギなど)などの被乾燥物から乾燥物を製造する際、それらの被乾燥物を真空乾燥する装置の一つとして、真空ポンプを備えた真空乾燥装置が提案されている(特許文献1参照)。このような真空ポンプを備えた真空乾燥装置を図3に示している。該真空乾燥装置100は、乾燥チャンバー104内部に被乾燥物150を収納した後、真空ポンプ106で乾燥チャンバー104内の空気を排出(図3白矢印)し、乾燥チャンバー104内を減圧する。
【0003】
そして、被乾燥物150が加熱源114(この加熱源114は、冷凍機102の放熱器にて構成されている)にて加熱されると、被乾燥物150が有する水分は低温蒸発する。即ち、真空ポンプ106にて乾燥チャンバー104内を真空にすると、水分は低温蒸発して水蒸気となる。乾燥チャンバー104と真空ポンプ106との間には、冷凍機102の冷却器にて極低温に冷却されたコールドトラップ108が設けられている。
【0004】
そして、被乾燥物150から蒸発した水蒸気は、このコールドトラップ108の表面に衝突して凝結し廃棄される。即ち、乾燥チャンバー104内の水蒸気は、所謂極低温のクライオポンプにより凝結させて廃棄される。これにより、乾燥チャンバー104内の湿気が取り除かれ、真空乾燥が行われる。このようにして、被乾燥物150は乾燥チャンバー104内で真空乾燥されていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−353969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、被乾燥物を真空乾燥する際、冷凍機以外に真空ポンプを設けてチャンバー内を減圧し真空にしていた。このため、真空乾燥装置がコストアップとなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、真空ポンプを使用せずに被乾燥物を真空乾燥することができる、真空乾燥装置の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、真空ポンプを使用せずにチャンバー内を減圧することができる真空乾燥方法及び真空乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の真空乾燥方法は、乾燥チャンバー内に被乾燥物を収納し、この乾燥チャンバー内において被乾燥物を加熱しながら減圧して真空乾燥させる方法であって、乾燥チャンバー内のガスを水蒸気で置換する水蒸気置換工程と、この乾燥チャンバー内を密閉した状態で、当該乾燥チャンバー内の水分を冷却器に凝結させ、廃棄することによりこの乾燥チャンバー内を減圧する減圧工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明の真空乾燥方法は、上記に加えて、乾燥チャンバー内と連通可能とされると共に、冷却器が設けられた補助チャンバーを設け、水蒸気置換工程では、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させ、両チャンバー内のガスを水蒸気で置換すると共に、減圧工程では、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させた状態で、両チャンバー内の水分を冷却器に凝結させ、廃棄することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明の真空乾燥方法は、請求項2に加えて、減圧工程の後、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを隔離した状態で当該補助チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、この水蒸気供給工程の後、補助チャンバー内の水分を冷却器に凝結させて廃棄し、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させて、乾燥チャンバー内を減圧する第2の減圧工程とを少なくとも一回以上実施することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4の発明の真空乾燥装置は、請求項2又は請求項3において、乾燥チャンバー内の被乾燥物を加熱する加熱源と、補助チャンバー及び乾燥チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置と、乾燥チャンバーと補助チャンバーとの連通、及び、両チャンバーと外部との連通を制御する弁装置と、冷却器を含んで冷媒回路が構成された冷凍機とを備えたことを特徴とする。
【0013】
更に、請求項5の発明の真空乾燥装置は、請求項4において、冷凍機は冷媒として二酸化炭素を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乾燥チャンバー内に被乾燥物を収納し、この乾燥チャンバー内において被乾燥物を加熱しながら減圧して真空乾燥させる方法であって、乾燥チャンバー内のガスを水蒸気で置換する水蒸気置換工程と、この乾燥チャンバー内を密閉した状態で、当該乾燥チャンバー内の水分を冷却器に凝結させ、廃棄することによりこの乾燥チャンバー内を減圧する減圧工程とを含むので、例えば、従来のように真空乾燥装置に真空ポンプを使用しなくても乾燥チャンバー内を減圧することができる。これにより、真空乾燥装置の簡素化を図ることが可能となる。従って、真空乾燥装置のコストを大幅に低減させることができるようになる。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、上記に加えて、乾燥チャンバー内と連通可能とされると共に、冷却器が設けられた補助チャンバーを設け、水蒸気置換工程では、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させ、両チャンバー内のガスを水蒸気で置換すると共に、減圧工程では、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させた状態で、両チャンバー内の水分を冷却器に凝結させ、廃棄するので、補助チャンバーを減圧することにより乾燥チャンバー内を減圧し除湿し乾燥することができる。これにより、乾燥チャンバー内に収納した被乾燥物の乾燥を行うことが可能となる。従って、例えば従来のようにクライオポンプまでの超低温を得なくても、乾燥チャンバー内に収納した被乾燥物の乾燥を大幅に向上させることができるようになるものである。
【0016】
また、請求項3の発明によれば、請求項2に加えて、減圧工程の後、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを隔離した状態で当該補助チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、該水蒸気供給工程の後、補助チャンバー内の水分を冷却器に凝結させて廃棄し、乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させて、乾燥チャンバー内を減圧する第2の減圧工程とを少なくとも一回以上実施するので、乾燥チャンバー内が減圧された状態で、被乾燥物から水分が蒸発して乾燥チャンバー内の圧力が上昇した場合でも、再度乾燥チャンバー内を減圧することができる。これにより、乾燥チャンバー内を所定の減圧状態に維持することが可能となる。従って、乾燥チャンバー内に収納した被乾燥物を極めて効果的に乾燥させることができるようになるものである。
【0017】
また、請求項4の発明によれば、請求項2又は請求項3に加え、乾燥チャンバー内の被乾燥物を加熱する加熱源と、補助チャンバー及び乾燥チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置と、乾燥チャンバーと補助チャンバーとの連通、及び、両チャンバーと外部との連通を制御する弁装置と、冷却器を含んで冷媒回路が構成された冷凍機とを備えたので、乾燥チャンバー内の減圧と加熱源とによって被乾燥物の乾燥を効果的に促進させることができる。これにより、乾燥チャンバー内に収納した被乾燥物を極めて迅速に乾燥させることができるようになる。
【0018】
特に、補助チャンバー及び乾燥チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置を備えているので、補助チャンバー及び乾燥チャンバー内の水蒸気を冷却器で冷却して凝結させることにより、乾燥チャンバー内を減圧させることができる。これにより、例えば、従来の真空乾燥装置のように真空ポンプを使用しなくても乾燥チャンバー内を効果的に減圧させることができる。従って、真空乾燥装置の簡素化を図ることが可能となり、真空乾燥装置のコストを大幅に低減させることができるようになるものである。
【0019】
更に、請求項5の発明によれば、請求項4において、冷凍機は冷媒として二酸化炭素を使用するので、例えば、酸性雨や二酸化炭素による温暖化現象などの環境破壊を防止することが可能となる。これにより、地球の温暖化防止に寄与し、且つ、自然環境破壊防止を行うことができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、乾燥チャンバー内を減圧するという目的を、乾燥チャンバー内に水蒸気を供給し冷却器にて凝結させるだけの簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0021】
次に、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の実施例を示す真空乾燥装置1のブロック図、図2は本発明の真空乾燥装置1のタイムチャート図をそれぞれ示している。真空乾燥装置1は、図1に示すようにコーヒーやスープなどの粉末食品や乾燥野菜(ほうれん草やネギなど)などの被乾燥物50を収納する乾燥チャンバー4と、この乾燥チャンバー4内と連通する補助チャンバー14、及び、乾燥チャンバー4内に収納した被乾燥物50を加熱し、補助チャンバー14内を冷却する冷凍機8とから構成されている。
【0022】
乾燥チャンバー4と補助チャンバー14はそれぞれ弁装置24を備えた排気ダクト26に接続され、乾燥チャンバー4も弁装置24を備えた中ダクト28にて補助チャンバー14に接続されている。該弁装置24は、第1開閉弁24Aと第2開閉弁24Bと第3開閉弁24Cとから構成されている。該第1開閉弁24Aは、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14との間、第2開閉弁24Bは、補助チャンバー14と排気ダクト26との間、第3開閉弁24Cは、乾燥チャンバー4と排気ダクト26との間に配設されている。
【0023】
そして、る第1開閉弁24Aが開くと、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内が連通し、閉じると乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内との連通を遮断するように構成されている。また、第2開閉弁24Bが開くと補助チャンバー14内と排気ダクト26内は連通し、閉じると補助チャンバー14内と排気ダクト26内との連通を遮断するように構成されている。また、第3開閉弁24Cが開くと乾燥チャンバー4内と排気ダクト26内は連通し、閉じると乾燥チャンバー4内と排気ダクト26内との連通を遮断するように構成されている。
【0024】
一方、前記冷凍機8は図示しないが密閉容器内に電動要素(駆動要素)と、この電動要素にて駆動される第1及び第2の回転圧縮要素にて構成された内部中間圧型多段(2段)圧縮式ロータリコンプレッサを備えている。そして、ロータリコンプレッサの冷媒回路内には冷媒として二酸化炭素(CO2)が所定量封入されている。
【0025】
該ロータリコンプレッサは、図示しない吸入管から吸い込んだガス冷媒(CO2)を第1の回転圧縮要素で圧縮し、この圧縮したガス冷媒を一旦密閉容器内に吐出する。そして、この密閉容器内の中間圧のガス冷媒を第2の回転圧縮要素に吸い込んで圧縮し、吐出管より吐出するものである。
【0026】
係るロータリコンプレッサの吐出管には加熱源18(本発明の真空乾燥装置1を構成する冷凍機8の放熱器に相当)が配管接続され、加熱源18の出口側は膨張弁(図示せず)を介して、補助チャンバー14内に設けられた冷却器10に配管接続されている。冷却器10の出口側は、アキュムレータ(図示せず)を介してロータリコンプレッサの吸入管に配管接続され、これにより環状の冷媒回路が構成されている。
【0027】
そして、ロータリコンプレッサの第1及び第2の回転圧縮要素で前述した如く2段圧縮された高温高圧のガス冷媒は、加熱源18において乾燥チャンバー4内の空気(本発明のガスに相当)と熱交換し、放熱してその上に設けられた被乾燥物50を加熱する。加熱源18で放熱したガス冷媒は膨張弁で絞られる過程で液化していき、気液混合状態となって冷却器10に流入し、そこで蒸発して気化する。
【0028】
これにより、冷却作用を発揮して周囲の水蒸気を冷却器10の表面に凝結させて、これにより補助チャンバー14内を減圧する。尚、冷却器10の表面に水蒸気を凝結させることにより補助チャンバー14内を減圧する技術については後で詳しく説明する。そして、冷却器10を出たガス冷媒は、アキュムレータに流入し、そこで気液分離されてガス冷媒のみが吸入管からロータリコンプレッサに吸い込まれる遷臨界冷凍サイクルを繰り返す。尚、52は被乾燥物50を載置するための受け皿である。
【0029】
前記補助チャンバー14には水蒸気を生産する水蒸気供給装置22が接続されている。この水蒸気供給装置22は、水蒸気供給ダクト23にて補助チャンバー14に接続され、水蒸気供給装置22と補助チャンバー14内は水蒸気供給ダクト23を介して連通されている。該水蒸気供給装置22は、超音波により水を振動させて水蒸気を発生させる水蒸気発生装置、或いは、水を加熱し沸騰させて水蒸気を発生させる水蒸気発生装置にて構成されている。好ましくは、水蒸気供給装置22は水を加熱し沸騰させる水蒸気発生装置などにて構成されている。尚、水蒸気供給装置22は、水蒸気を発生させて水が少なくなったら自動的に水を供給できるように構成されている。また、水蒸気供給装置22は密閉され、補助チャンバー14内に連通しているものとする。
【0030】
以上の構成で、次に図2を参照して真空乾燥装置1の動作を説明する。尚、乾燥チャンバー4内には被乾燥物50が収納され、各弁装置24(第1開閉弁24A、第2開閉弁24B、第3開閉弁24C)は閉じているものとする。また、真空乾燥装置1は汎用マイクロコンピュータなどで構成された制御装置(図示せず)を備えており、真空乾燥装置1はこの制御装置にて冷凍機8、水蒸気供給装置22及び弁装置24などの制御が行われるものとする。
【0031】
図2は横軸に時間を示しており、左端から右に行くに従って時間が経過するようになっている。また、図では上下方向に6段の枠を示しており、上から順に第1開閉弁24A(図2では開閉弁A)、第2開閉弁24B(図2では開閉弁B)、第3開閉弁24C(図2では開閉弁C)の3段の枠を示し、これら各枠の上側は弁開、下側は弁閉を示している。また、4段目の枠は水蒸気供給装置22からの水蒸気の供給を示しており、この枠の上側は、水蒸気供給装置22から乾燥チャンバー4(補助チャンバー14)内に水蒸気の供給有りを、下側は水蒸気供給装置22から水蒸気の供給無しを示している。また、5段目の枠は乾燥チャンバー4(図2ではチャンバーA)、6段目の枠は補助チャンバー14(図2ではチャンバーB枠)を示しており、これら各枠の上側は高圧(大気圧)、下側は低圧を示している。
【0032】
そして、真空乾燥装置1の運転(冷凍機8の運転も含む)が開始されると、制御装置は各弁装置24(第1開閉弁24A、第2開閉弁24B、第3開閉弁24C)をスタート位置(1)から所定時間開く。これにより、水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内に水蒸気が供給される。補助チャンバー14内に水蒸気が供給されると補助チャンバー14内の一部の空気(本発明のガスに相当)は、第2開閉弁24Bを介して排気ダクト26から外部に排出され(図1白矢印)、残りの空気は第1開閉弁24Aを介して乾燥チャンバー4内に供給される。また、乾燥チャンバー4内の空気は、第1開閉弁24Aから流入した空気に押され、第3開閉弁24Cを介して排気ダクト26から外部に排出される(図1白矢印)。
【0033】
そして、更に水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内に水蒸気が供給されると、補助チャンバー14内は水蒸気で充満する。補助チャンバー14内が水蒸気で充満されると、水蒸気は補助チャンバー14内から第1開閉弁24Aを介して乾燥チャンバー4内に流入する。これによって、乾燥チャンバー4内の全ての空気は、第3開閉弁24Cを介して排気ダクト26内から外部に排出され、乾燥チャンバー4内は水蒸気で充満する。尚、補助チャンバー14内の水蒸気の充満は、予め実験によって補助チャンバー14内へ水蒸気が充満するまでの経過時間を求めておき、その経過時間によって補助チャンバー14内の水蒸気の充満を検知する。また、酸素量検出器、或いは、湿度検出器などを用いて補助チャンバー14内の水蒸気の量を換算して充満を検出しても良い。この場合、酸素量検出器、或いは、湿度検出器などは、補助チャンバー14内に複数箇所、特に複数箇所の隅部に設ければ、更に正確に補助チャンバー14内の水蒸気の充満を検出することができ便利である。
【0034】
即ち、制御装置は、弁装置24を駆動して第1開閉弁24A、第2開閉弁24B、第3開閉弁24Cを開き、水蒸気供給装置22から水蒸気を、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内の空気と置き換える水蒸気置換工程(図2※矢印)を実行する。尚、スタート(1)で制御装置は、第2開閉弁24Bを開かずに閉じたままで、第1開閉弁24Aと第3開閉弁24Cを所定時間開き、水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内と乾燥チャンバー4内に水蒸気を供給しても良い。この場合、前記第1開閉弁24A、第2開閉弁24B、第3開閉弁24Cを開いた状態で水蒸気置換工程を実行すると、補助チャンバー14に充満した水蒸気が第2開閉弁24Bから排気ダクト26に漏れる可能性がある。しかし、第2開閉弁24Bを開かずに閉じたままで、第1開閉弁24Aと第3開閉弁24Cを所定時間開して水蒸気置換工程を実行すれば、補助チャンバー14に充満した水蒸気が第2開閉弁24Bから排気ダクト26に漏れる可能性が無くなり、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内に効率的に水蒸気を充満させることができる。
【0035】
次に、制御装置は、所定時間経過後(水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内への水蒸気の供給が停止された後)に、第2開閉弁24Bと第3開閉弁24Cとを閉じる(以降第3開閉弁24Cは閉じたままとする)。第2開閉弁24Bと第3開閉弁24Cとが閉じられると、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内は密閉される。このとき、第1開閉弁24Aは開いたままで、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内は連通している。
【0036】
次に、冷凍機8の運転によって、補助チャンバー14内の冷却器10が冷却され、乾燥チャンバー4内の加熱源18は所定温度(この場合、被乾燥物50の色や風味などを損なうことのない温度)に加熱される。補助チャンバー14の冷却器10が冷却されると、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内の水蒸気は、冷却器10の表面に凝結する。
【0037】
ここで、前記した冷却器10の表面に水蒸気を凝結させることにより補助チャンバー14内を減圧する技術について説明する。水が水蒸気になると体積は約1700倍に増え、逆に、水蒸気が凝結して水(水滴を含む)になると体積は約1/1700倍となることは既に知られている。即ち、乾燥チャンバー4内、及び、補助チャンバー14内に充満した水蒸気が冷却器10の表面に凝結して水滴になると、水蒸気の体積が小さくなり、乾燥チャンバー4内、及び、補助チャンバー14内は減圧していって所定時間経過後に真空になる(図2(A1)、(B1))。
【0038】
また、本実施例では真空乾燥装置1の運転開始時に冷凍機8の運転を行っているが、冷却器10が冷却され表面に水蒸気が凝結する温度に低下するまで所定時間がかかるので、真空乾燥装置1と冷凍機8の運転を同時に行い、水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内へ水蒸気の供給を行っても、補助チャンバー14内の減圧に大きな支障はない。また、水蒸気供給装置22の水蒸気発生能力が小さい場合、水蒸気を補助チャンバー14内へ充満させるのに長時間かかり、冷却器10の表面に水蒸気が凝結してしまうと補助チャンバー14内の減圧に支障が発生する恐れがある。この場合、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内に水蒸気が充満した後、或いは、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内に水蒸気が充満する所定時間前に冷凍機8の運転を行うことが望ましい。これにより、補助チャンバー14内の減圧を支障なく好適に行うことができ便利である。
【0039】
そして、乾燥チャンバー4内を密閉した状態で、乾燥チャンバー4内の水分(水蒸気)を冷却器10の表面に凝結させて廃棄することにより、この乾燥チャンバー4内を減圧する最初の減圧工程(第1の減圧工程)が行れる(図2※※印)。尚、冷却器10の表面に凝結させた水分は図示しないポンプで補助チャンバー14内から外部に廃棄、或いは、再度水蒸気供給装置22にて水蒸気として使用できるようになっている。
【0040】
この減圧によって、乾燥チャンバー4内に収納した被乾燥物50の水分は沸騰温度が低くなり、被乾燥物50から水分が蒸発して、所謂被乾燥物50の真空乾燥が行われる。即ち、乾燥チャンバー4内及び補助チャンバー14の水蒸気を補助チャンバー14内に設けた冷却器10に凝結させることにより、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14とを減圧しているので、摂氏100℃以下で水分を沸騰・蒸発をさせることができる。これにより、被乾燥物50の色や風味などを損なうことなく真空乾燥を行うことができる。また、被乾燥物50は下方に設けた加熱源18により加熱しているので、この加熱と減圧によって被乾燥物50に含まれる水分が蒸発して乾燥すると共に、乾燥チャンバー4内、及び、補助チャンバー14内は時間の経過に伴って徐々に圧力が上昇していく(図2(B1)→(B2))。
【0041】
そして、乾燥チャンバー4内の被乾燥物50を所定時間乾燥させたならば、制御装置は、再度弁装置24を駆動し、開いていた第1開閉弁24Aを閉じ、閉じていた第2開閉弁24Bを開いて、冷凍機8の駆動を停止する(図2の(2))。第2開閉弁24Bが開くと補助チャンバー14内は、排気ダクト26と連通し、圧力が上昇(大気圧力)する(図2の(B2))。この場合、前述した如き第3開閉弁24Cは閉じたままとしているので、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14はそれぞれ隔離した状態(独立した状態)で密閉される。
【0042】
次に、制御装置は水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内に所定時間水蒸気を供給する。即ち、水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内に水蒸気を供給する水蒸気供給工程が実施される。そして、水蒸気供給工程では、補助チャンバー14内に水蒸気が供給されると補助チャンバー14内の空気は、第2開閉弁24Bを介して排気ダクト26から外部に排出され、補助チャンバー14内は水蒸気で充満する。即ち、ここでは補助チャンバー14内の空気と水蒸気とを置換している(図2◆矢印)尚、図2の各◆矢印は水蒸気供給工程を示している。
【0043】
次に、制御装置は所定時間経過後に水蒸気供給装置22から補助チャンバー14内への水蒸気の供給を停止して第2開閉弁24Bを閉じ、冷凍機8の運転を開始する。これにより、前述同様補助チャンバー14内の冷却器10が冷却される。冷却器10が冷却されると、補助チャンバー14内の水蒸気は、冷却器10の表面に凝結し、補助チャンバー14内は減圧する。この場合、第1開閉弁24Aは閉じられているので、補助チャンバー14内だけが減圧される。
【0044】
そして、所定時間経過すると、補助チャンバー14内の圧力は、乾燥チャンバー4内の圧力よりも減圧される。即ち、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14はそれぞれ独立して密閉されており、乾燥チャンバー4内は加熱源18により加熱される。これにより、被乾燥物50に含まれる水分が蒸発して徐々に圧力が上昇していくこととなるので、補助チャンバー14内は、乾燥チャンバー4内よりも減圧されることとなる。
【0045】
そして、補助チャンバー14内が所定の圧力まで低下すると制御装置は、第1開閉弁24Aを開き、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内とを連通する。これにより、乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内の圧力は同じ圧力に減圧される(図2の(A2)(B3))。即ち、第1の減圧工程の後、再度乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内とを連通し密閉した状態で、乾燥チャンバー4内の水分を冷却器10の表面に凝結させて廃棄することにより、乾燥チャンバー4内を減圧する第2の減圧工程を行う(図2◎印)。
【0046】
この減圧によって、更に被乾燥物50から水分が蒸発し、真空乾燥が行われる。また、被乾燥物50は下方に設けた加熱源18により加熱しているので、被乾燥物50に含まれる水分が蒸発し、乾燥チャンバー4内、及び、補助チャンバー14内は時間の経過に伴って徐々に圧力が上昇していく(図2(B3)→(B4))。
【0047】
そして、乾燥チャンバー4内の被乾燥物50を所定時間乾燥させたならば、制御装置は、前述同様再度弁装置24を駆動し、開いていた第1開閉弁24Aを閉じ、閉じていた第2開閉弁24Bを開いて、冷凍機8の駆動を停止する(図2の(3))。第2開閉弁24Bが開くと補助チャンバー14内は、排気ダクト26と連通し、圧力が上昇(大気圧力)する(図2の(B4))。
【0048】
係る制御装置は、再度第1の減圧工程の後、再度乾燥チャンバー4内と補助チャンバー14内とを連通し、密閉した状態で、乾燥チャンバー4内の水分を冷却器10の表面に凝結させて廃棄し、乾燥チャンバー4内を減圧して被乾燥物50の真空乾燥を(A3)→(A4)、(B5)→(B6)→(B7)と繰り返し行う。即ち、本発明の真空乾燥方法は、乾燥チャンバー4内に被乾燥物50を収納し、この乾燥チャンバー4内において被乾燥物50を加熱しながら減圧して真空乾燥させる方法であり、少なくとも、第1の減圧工程から第2の減圧工程を一回以上実施することにより、被乾燥物50の真空乾燥を行っている。
【0049】
このように、真空乾燥装置1は、乾燥チャンバー4内の空気を水蒸気で置換する水蒸気置換工程と、この乾燥チャンバー4内を密閉した状態で、当該乾燥チャンバー4内の水分を冷却器10の表面に凝結させ、廃棄することによりこの乾燥チャンバー4内を減圧する減圧工程とを含むので、例えば、従来のように真空乾燥装置に真空ポンプを使用しなくても乾燥チャンバー4内を確実に減圧することができる。これにより、真空乾燥装置1の簡素化を図ることが可能となり、真空乾燥装置1のコストを大幅に低減させることができるようになる。
【0050】
また、真空乾燥装置1は、乾燥チャンバー4内と連通可能とされると共に、冷却器10が設けられた補助チャンバー14を設けている。そして、水蒸気置換工程では、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14とを連通させて両チャンバー4、14内のガスを水蒸気で置換している。また、第1の減圧工程では、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14とを連通させた状態で、両チャンバー4、14内の水蒸気を冷却器10の表面に凝結させ、廃棄するようにしているので、補助チャンバー14を減圧することにより乾燥チャンバー4内を減圧し除湿を行って被乾燥物50の真空乾燥を行うことができる。これにより、乾燥チャンバー4内に収納した被乾燥物50の乾燥を大幅に向上させることができる。
【0051】
また、第1の減圧工程の後、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14とを隔離した状態で当該補助チャンバー14内に水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、この水蒸気供給工程の後、補助チャンバー14内の水分を冷却器10の表面に凝結させて廃棄し、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14とを連通させて、乾燥チャンバー4内を減圧する第2の減圧工程とを少なくとも一回以上実施するようにしている。これにより、被乾燥物50から水分が蒸発して乾燥チャンバー4内の圧力が上昇した場合でも、再度乾燥チャンバー4内の減圧を行うことができる。従って、乾燥チャンバー4内を所定の減圧状態に維持することが可能となり、乾燥チャンバー4内に収納した被乾燥物50を極めて効果的に乾燥させることができるようになる。
【0052】
また、真空乾燥装置1は、乾燥チャンバー4内の被乾燥物50を加熱する加熱源18(放熱器)と、補助チャンバー14及び乾燥チャンバー4内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置22と、乾燥チャンバー4と補助チャンバー14との連通、及び、両チャンバー4、14と外部との連通を制御する弁装置24と、冷却器10を含んで冷媒回路が構成された冷凍機8とを備えている。これにより、乾燥チャンバー4内の減圧と加熱源18とによって被乾燥物50の乾燥を効果的に促進させることができると共に、被乾燥物50を極めて迅速に真空乾燥させることができる。
【0053】
特に、補助チャンバー14及び乾燥チャンバー4内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置22を備えているので、補助チャンバー14及び乾燥チャンバー4内の水蒸気を冷却器10で冷却して凝結させることにより、乾燥チャンバー4内を減圧させることができる。これにより、例えば、従来の真空乾燥装置のように真空ポンプを使用しなくても乾燥チャンバー4内を効果的に減圧させることができるので、真空乾燥装置1の簡素化を図ることが可能となり、真空乾燥装置1のコストを大幅に低減させることができるようになる。
【0054】
また、冷凍機8は冷媒として二酸化炭素を使用するので、例えば、酸性雨や二酸化炭素による温暖化現象などの環境破壊を防止することが可能となる。これにより、地球の温暖化防止に寄与することができ、且つ、自然環境破壊の防止を行うことができるようになる。
【0055】
尚、実施例では乾燥チャンバー4内の被乾燥物50を加熱する加熱源18を冷凍機8の放熱器で説明したが、加熱源18は放熱器に限らず、電機ヒータであっても差し支えない。この場合、電機ヒータは温度制御を容易に行えるので、被乾燥物50の色や風味などを好適に抑えられ便利である。
【0056】
また、真空乾燥装置1は上記実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例を示す真空乾燥装置のブロック図である。
【図2】本発明の真空乾燥装置のタイムチャート図である。
【図3】従来の真空乾燥装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
1 真空乾燥装置
4 乾燥チャンバー
8 冷凍機
10 冷却器
14 補助チャンバー
18 加熱源(放熱器)
22 水蒸気供給装置
23 水蒸気供給ダクト
24 弁装置
24A 第1開閉弁
24B 第2開閉弁
24C 第3開閉弁
26 排気ダクト
50 被乾燥物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥チャンバー内に被乾燥物を収納し、該乾燥チャンバー内において前記被乾燥物を加熱しながら減圧して真空乾燥させる方法であって、
前記乾燥チャンバー内のガスを水蒸気で置換する水蒸気置換工程と、
該乾燥チャンバー内を密閉した状態で、当該乾燥チャンバー内の水分を冷却器に凝結させ、廃棄することにより該乾燥チャンバー内を減圧する減圧工程とを含むことを特徴とする真空乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥チャンバー内と連通可能とされると共に、前記冷却器が設けられた補助チャンバーを設け、
前記水蒸気置換工程では、前記乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させ、両チャンバー内のガスを水蒸気で置換すると共に、
前記減圧工程では、前記乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させた状態で、両チャンバー内の水分を前記冷却器に凝結させ、廃棄することを特徴とする請求項1に記載の真空乾燥方法。
【請求項3】
前記減圧工程の後、前記乾燥チャンバーと補助チャンバーとを隔離した状態で当該補助チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給工程と、
該水蒸気供給工程の後、前記補助チャンバー内の水分を前記冷却器に凝結させて廃棄し、前記乾燥チャンバーと補助チャンバーとを連通させて、前記乾燥チャンバー内を減圧する第2の減圧工程とを少なくとも一回以上実施することを特徴とする請求項2に記載の真空乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥チャンバー内の被乾燥物を加熱する加熱源と、
前記補助チャンバー及び乾燥チャンバー内に水蒸気を供給する水蒸気供給装置と、
前記乾燥チャンバーと補助チャンバーとの連通、及び、両チャンバーと外部との連通を制御する弁装置と、
前記冷却器を含んで冷媒回路が構成された冷凍機とを備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の真空乾燥方法を実施するための真空乾燥装置。
【請求項5】
前記冷凍機は冷媒として二酸化炭素を使用することを特徴とする請求項4に記載の真空乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−93077(P2007−93077A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281682(P2005−281682)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】