説明

真空蒸着用アライメント装置

【課題】作業効率の向上を図り得る真空蒸着用アライメント装置を提供する。
【解決手段】マスク保持体5により保持されたマスク体4と基板保持体7により保持されたガラス基板6との位置合わせを、蒸着用とは異なる位置合わせ用真空容器2内で行うとともに、各真空容器に対するこれらの搬入出を、マスク体4に基板6を載置し、さらにこの基板に押さえ板9を載置した状態で、搬送手段17にて行うようにした装置であって、搬送手段により支持されたマスク体をマスク保持体にて保持した際に、押さえ板だけを持ち上げ得る押さえ板支持棒72を当該マスク保持体の保持枠71に設けるとともに、マスク体に基板が載置された状態で昇降手段16にて基板保持体を上昇させた際に、当該基板保持体の保持枠74に、基板だけを持ち上げ得る基板支持棒75を設けたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着用アライメント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板などを製造する際に、真空容器内で半導体材料が蒸発されるとともに、基板表面に蒸着されて所定の導体パターンが形成されている。
この導体パターンを形成する場合、通常、基板の表面に導体パターンが形成されたマスクを配置し、その表面に塗布されたフォトレジストが露光されることにより行われている。
【特許文献1】特開平5−159997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、真空容器内において、基板に対してマスクを所定位置に配置する必要があり、この位置合わせのためのアライメント装置が設けられている。
このアライメント装置は真空容器内に配置されることになるが、位置合わせ精度が高いアライメント装置を真空容器内に配置する場合、ガス放出が少ない特種な材料からなる部品および潤滑剤を用いる必要があるとともに、放熱対策なども必要とするため、装置そのものが非常に高価なものとなる。
【0004】
一方、このような事態を回避するために、アライメント装置を真空容器の外部に配置することが考えられる。
アライメント装置を真空容器の外部に配置する場合には、アライメント装置におけるマスク保持体の真空容器内への挿入部分における真空維持機構が必要となり、したがって特殊なシール機構、または加工が必要となり、やはり装置が高価なものとなる。
【0005】
また、マスク保持体の真空容器内への挿入部分には、真空力により、言い換えれば、大気圧による大きい外力を受けて、歪が生じ位置合わせ精度が低下する惧れがあった。
さらに、基板とマスクとの位置合わせは、真空蒸着室内で行われているため、1回の蒸着が終了すると、その度に、基板を真空容器から搬出した後、次の基板を搬入し、そして基板とマスクとの位置合わせが行われているため、非常に、作業効率が悪いという問題もあった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、装置自体の製造コストが安価で且つ高精度な位置合わせを維持し得るとともに、作業効率の向上を図り得る真空蒸着用アライメント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の真空蒸着用アライメント装置は、
蒸着用真空容器内で基板表面に蒸着材料を蒸着させて所定の導体パターンを形成するためのマスク部を有するマスク体と上記基板との位置合わせを、上記蒸着用真空容器とは異なる位置合わせ用真空容器内で行い、かつ当該位置合わせ用真空容器に対する基板およびマスク体の搬入出を、マスク体のマスク部上面に基板を載置するとともに、この基板の上面に押さえ板を載置した状態で行うようにしたアライメント装置であって、
上記位置合わせ用真空容器の壁体部に形成された貫通穴を挿通された吊持部材の下端部に吊持されたマスク保持体と、上記位置合わせ用真空容器の外方に設けられるとともに上記吊持部材の上端部に連結された連結用板体と、この連結用板体を移動させてマスク保持体に保持されたマスク体の基板に対する位置を調整し得る位置調整手段と、上記吊持部材に外嵌されるとともに壁体部の貫通穴の外周と上記連結用板体との間に設けられて真空側と大気側とを遮断する伸縮式筒状遮断部材と、上記筒状遮断部材の内側が真空状態であることにより発生する連結用板体への押圧力と逆方向の付勢力を発生させる付勢手段と、上記位置合わせ用真空容器の壁体部側に設けられた昇降手段により昇降自在に設けられて当該位置合わせ用真空容器内に搬入されたマスク体に載置された基板を昇降させる基板保持体とを具備するとともに、
上記吊持部材を介して位置調整手段によりマスク保持体を上昇させてマスク体を保持した際に、当該マスク体を上昇させるよりも先に上記押さえ板を上昇させる突状支持部材をマスク保持体に設けたものである。
【0008】
また、上記アライメント装置における基板の上面に、当該基板の撓みを抑制するための撓み抑制板を配置したものである。
また、上記アライメント装置における位置合わせ用真空容器内に、マスク体を下方から支持して当該マスク体に載置された基板および押さえ板を、当該位置合わせ用真空容器外との間で搬送し得る搬送手段を配置したものである。
【0009】
また、上記アライメント装置における位置調整手段を、連結用板体に吊持部材およびマスク保持体を介して保持されたマスク体が基板表面と平行に移動し得るように構成したものである。
【0010】
また、上記アライメント装置における位置調整手段に、連結用板体を基板表面と直交する軸心方向で移動し得る機能を具備させたものである。
さらに、上記アライメント装置における付勢手段の付勢力を調整可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によると、所定の真空下で基板に対するマスク体の位置合わせを行う際に、位置合わせ用真空容器の外部に基板の位置調整手段を配置したので、真空下を考慮した材料等を用いる必要がないとともに、特殊なシール機構などについても必要とせず、したがって装置自体の製造コストが安価となる。
【0012】
また、真空下で大気圧による押圧力に対向し得る付勢力を付与し得る付勢手段が具備されているので、位置調整手段に余分な外力が作用するのを防止することができ、したがって基板に対するマスク体の位置合わせを高精度なものに維持することができる。
【0013】
さらに、蒸着用真空容器とは異なる位置合わせ用真空容器内で位置合わせを行うようにしたので、蒸着用真空容器内での蒸着を連続して行うことができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、位置合わせ用真空容器で位置合わせが行われた基板とマスク体とを、例えば蒸着用真空容器に搬送する際に、基板の上面に押さえ板を載置して基板をマスク体に押し付けるようにしたので、搬送時に、マスク体と基板とが互いにずれるのを防止することができる。
【0015】
さらに、上記基板の上面に撓み抑制板を載置するようにしたので、基板のマスク体に対する位置合わせ時、および位置合わせ後においても、互いにずれるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係る真空蒸着用アライメント装置を図面に基づき説明する。
この真空蒸着用アライメント装置は、例えば有機ELディスプレイの表示部を製造するための真空蒸着装置に設けられるもので、マスク体を用いてガラス基板の表面に有機材料(蒸着材料である)を蒸着させて所定の導体パターンを得る際に、マスク体を保持するとともにガラス基板に対する当該マスク体の位置合わせ(アライメント)を行うためのものであり、さらにこの真空蒸着装置においては、位置合わせと蒸着とを、異なる真空容器にて行うようにしたものである。
【0017】
すなわち、この真空蒸着装置には、ガラス基板に蒸着を行う蒸着用真空容器の他に、ガラス基板に対するマスク体の位置合わせを行うための位置合わせ用真空容器が具備されており、またこれら各真空容器に対するマスク体およびガラス基板の搬入および搬出時(搬送時である)に、マスク体の上面にガラス基板を載置するとともに、このガラス基板の上面に当該ガラス基板の撓みを抑制するための撓み抑制板を載置し、さらにこの撓み抑制板の上面にマスク体とガラス基板との相対移動を阻止して位置合わせ精度を維持するための押さえ板を載置するようにしたものである。なお、本実施の形態においては、ガラス基板は矩形状にされており、したがってマスク体、撓み抑制板および押さえ板も矩形状にされているものとして説明する。
【0018】
図1〜図3に示すように、アライメント装置1は、位置合わせ用真空室(以下、位置合わせ室という)3を有する位置合わせ用真空容器(以下、単に、真空容器という)2と、上記位置合わせ室3内に配置されてマスク体4を下方から保持するマスク保持体5と、同じく位置合わせ室3内で且つマスク保持体5よりも下方位置に配置されてマスク体4に載置されたガラス基板(以下、単に、基板という)6だけ(後述するが、正確には、基板と撓み抑制板である)を持ち上げ保持し得る基板保持体7と、上記マスク保持体5の前後左右4箇所に下端部が連結されるとともに上端部が真空容器2の上壁部として配置された取付板体(壁体部の一例)2aに形成された貫通穴2bを挿通されて真空容器2の外部に突出された4本の棒状の吊持部材11と、真空容器3の外部に設けられて上記4本の吊持部材11の上端部に連結された例えば平面視矩形状の連結用板体12と、上記取付板体2aの上面に配置されて連結用板体12を移動させてマスク保持体5に保持された位置合わせ室3内における基板6に対するマスク体4(後述するが正確にはマスク部である)の位置を調整し得る位置調整手段13と、上記各吊持部材11に外嵌されるとともに取付板体2aの貫通穴2bの外周と上記連結用板体12との間に設けられて真空側と大気側とを遮断する伸縮式筒状遮断部材(例えば、真空ベローズが用いられる)14と、この筒状遮断部材14の内側が真空状態であることにより発生する連結用板体12への押圧力(押付力)と逆方向の付勢力を発生させる(付与する)付勢手段15と、上記真空容器2の取付板体2aに設けられて位置合わせ室3内の基板保持体7を昇降させる昇降手段16と、上記位置合わせ室3内に配置されて、基板6、撓み抑制板8および押さえ板9が順番に載置されたマスク体4(以下、これらを纏めてワークWともいう)を所定の位置合わせ領域に搬送するための搬送手段17とが具備されている。
【0019】
そして、上記筒状遮断部材14と取付板体2a側および連結用板体12側とは、それぞれ所定内径の下環状取付座18および上環状取付座19を介して連結されており、したがって取付板体2a側に設けられる上環状取付座19への筒状遮断部材14における取付部開口面積(接触面積)には、真空による力(大気圧による押圧力)が作用することになる。
【0020】
上記位置調整手段13は、図3〜図5に示すように、連結用板体12を、基板6の表面と平行な平面内で平行移動、回転(板の中心を回転中心とした回転)および旋回(板の中心とは異なる位置を中心にした回転)させ得る平面内移動装置21と、基板6の表面と直交する鉛直方向で移動させ得る鉛直移動装置22とから構成されている。
【0021】
上記平面内移動装置21は、平面視が矩形状の支持板31と、この支持板31上の4隅の内、3箇所に配置された駆動用支持機構32および残りの1箇所に配置された案内用支持機構33と、これら各支持機構32,33に設けられた連結具34を介して支持された移動板35とから構成されており、またこの移動板35と連結用板体12とは昇降用案内機構36を介して鉛直方向での移動を許容するとともに水平面内での移動が連動(追従)するように構成されている。
【0022】
上記駆動用支持機構32は、公知の技術であり、図5に示すように、水平面内で、すなわちX−Y軸方向でリニアガイド機構37を介して移動し得るとともに、サーボモータ38により一方の軸方向(X軸またはY軸方向)に沿って強制移動を行い得るもので、また案内用支持機構33は、上記と同様のリニアガイド機構39を介してX−Y軸方向で自由に移動し得るようにされたものである。
【0023】
そして、3個の駆動用支持機構32の内、2個については、同一方向で強制移動し得るように配置されるとともに、残りの1個については、上記2個の強制移動方向と直交する方向で強制移動し得るように配置され、これら3個の内、所定(1個、2個または3個)の駆動用支持機構32におけるサーボモータ38を駆動することにより、移動板35を、X軸方向(図5(b)参照)、Y軸方向(図5(c)参照)、X軸およびY軸に対して斜め方向(図5(d)参照)、並びに移動板35の中心を回転軸とする回転方向でもって(図5(e)参照)、また任意の支持機構32側を中心として旋回させる旋回方向でもって(図5(f)参照)、移動板35を水平面内で任意の方向並びに任意の回転角または旋回角でもって移動させ得るものである。
【0024】
上記昇降用案内機構36は、図3および図4に示すように、移動板35の上面に一体に設けられた平面視矩形状の取付用板41と、この取付用板41の前後左右位置で連結用板体12の各穴部12aを挿通して立設された4本のリニアガイド軸42と、連結用板体12の各穴部12a側に設けられてこれら各リニアガイド軸42の側方に外嵌して上下方向で移動自在に案内される4個の移動部材43とから構成されている。なお、図面上では、手前(前部)に配置された左右のガイド軸42および移動部材43だけを示している。
【0025】
そして、鉛直移動装置22として、電動シリンダ(サーボモータにより駆動されるもの)が用いられ、この電動シリンダの出退用ロッド22aが上記取付用板41に連結されており、その出退用ロッド22aを出退させることにより、連結用板体12を介してマスク保持体5が昇降されて、基板6に対するマスク体4の間隔が調整される。
【0026】
上記付勢手段15は、貫通穴2bを介して位置合わせ室3に連通されて真空状態になる筒状遮断部材14内の端面側に作用する大気圧による押圧力を打ち消す(または、軽減する)ためのものである。
【0027】
すなわち、この付勢手段15は、図3に示すように、取付板体2a側に配置されて連結用板体12を下方から支持する複数(例えば、左右2箇所に配置される)の片ロッド式の空気圧シリンダ51と、これら各空気圧シリンダ51におけるシリンダ室52への空気供給口53に空気配管54を介して接続された空気供給ポンプ55と、上記空気配管54の途中に配置された圧力調整器56とから構成されている。なお、連結用板体12が少なくとも水平方向に移動し得るため、空気圧シリンダ51の下側であるシリンダ本体を取付板体2a側に固定するとともに、上側であるロッド部の先端に転動用ボール(ボール軸受)を配置して、単に、下側から連結用板体12を支持するようにされている。なお、空気圧シリンダ51の上下端部と取付板体2aおよび連結用板体12とをそれぞれ自在継手を介して接続するようにしてもよい。勿論、この空気圧シリンダ51の空気圧を調整することにより、付勢力を調整することができる。
【0028】
また、上記搬送手段17は、それぞれ上端部に水平軸心回りで回転自在な支持ローラ61が図示しない駆動手段により駆動制御が可能に取り付けられた棒状支持台62が、マスク体4の搬送経路の両側でかつ所定間隔おきに複数個(例えば、片側では4個、両側では8個)設けられたものである。
【0029】
次に、マスク保持体5について説明しておく。
このマスク保持体5は、図3および図6に示すように、マスク体4の周縁部を支持する矩形状の保持枠71と、この保持枠71の左右の各側辺部(長辺部でもある)に所定間隔を有して突設された一対の押さえ板支持棒(突状支持部材)72とから構成されている。勿論、この保持枠71の中央部分は開口部にされて、有機材料(蒸着材料)が通過し得るようにされている。
【0030】
そして、このマスク保持体5は、上記吊持部材11の下端部に設けられた支持片73を介して、吊持部材11側に支持されており、位置調整手段13にて水平面内および鉛直方向で移動されて、基板6に対してマスク体4の位置合わせが行われる。
【0031】
また、基板保持体7は、図3および図6に示すように、マスク保持体5の保持枠71と同様に中央に開口部が形成された矩形状の保持枠74と、この保持枠74の周辺部に所定間隔を有して上方に突設された複数(例えば、10本)の基板支持棒(基板の突状支持部材ともいえる)75とから構成されている。なお、この基板支持棒75は、マスク保持体5の保持枠71の開口部の内側に位置しており、マスク保持体5とは接触しないようにされている。
【0032】
また、マスク体4については、図6および図7に示すように、中央部分のマスク部77と、このマスク部77の周縁を保持する保持枠78とから構成されており、この保持枠78には、基板保持体7およびマスク保持体5の各支持棒72,75を挿通し得る複数の穴部79が形成されている。
【0033】
さらに、図2および図7に示すように、基板保持体7に保持された基板6に対してマスク体4の位置合わせを行うために、マスク体4の対角線上の隅部寄りに設けられた円形のマスク側マークM1内に、基板6側に設けられた点状(黒丸印)の基板側マークM2を案内するためのCCDカメラ装置57が連結用板体12側に焦点調整具58を介して設けられている。勿論、取付板体2a側には、覗き窓59が設けられている。
【0034】
この焦点調整具58は、図8に示すように、連結用板体12の縁部に立設された取付板81に取り付けられた支持板82と、この支持板82の上下に設けられた両フランジ83,83に鉛直方向で回転自在に支持されたねじ軸84と、このねじ軸84に螺嵌されるとともに上記カメラ装置57が取り付けられたナット部材85と、上記上フランジ83に支持されてねじ軸84を回転させるモータ86とから構成されている。
【0035】
すなわち、このモータ86を回転させることにより、カメラ装置57のピントを合わせることができるので、基板6とマスク体4との位置合わせを精度良く行うことができる。
なお、押さえ板9および撓み抑制板8にも、覗き窓59に対応する位置で、それぞれ覗き用の開口部9aおよび8aが形成されている。
【0036】
上記昇降手段16は、図1に示すように、真空容器2の取付板体2aの両側部に形成された各貫通穴2cの上方に取付座91を介してそれぞれ配置された昇降用空気圧シリンダ92と、上記各貫通穴2cに対応する位置合わせ室3内に鉛直方向で配置され且つ上端部が貫通穴2cを挿通されて上記空気圧シリンダ92のロッド部92aに連結されるとともに下端部に基板保持体7の下面を保持し得る保持片93が設けられた鉛直支持棒94とから構成されている。なお、95は空気圧シリンダ92のロッド部92aと取付座91との間に介装された真空遮断用のO−リングである。
【0037】
したがって、ワークWが搬送手段17の支持ローラ61上に移動された状態で、位置調整手段13の鉛直移動装置22によりマスク保持体5が上昇されると、その保持枠71に設けられた押さえ板支持棒72により押さえ板9が先に持ち上げられ、続いてマスク体4が支持ローラ61の上方へ持ち上げられることになり、さらに昇降手段16の昇降用空気圧シリンダ92により基板保持体7が上昇されると、その保持枠74に設けられた基板支持棒75により基板6とともに撓み抑制板8が持ち上げられる。
【0038】
上記構成において、基板6に対するマスク体4の位置合わせ作業について説明する。
まず、図9に示すように、基板保持体7とマスク保持体5とを、ワークWの搬送面(支持ローラ61の上面)より各支持棒72,75の先端部が下方に位置する退避位置に下降させておく。
【0039】
次に、真空容器2の側壁部2dに形成された搬入出用開口部(図2参照)2eから搬送手段17の支持ローラ61上に、マスク体4、基板6、撓み抑制板8および押さえ板9が順次重ねられてなるワークWを搬入して、所定位置で停止させる。
【0040】
この搬送時においては、押さえ板9により、撓み抑制板8と、基板6と、マスク体4とが強固に密着されることになるため、搬送途中で発生する振動により、基板6とマスク体4とが相対的にずれるのが防止されている。
【0041】
次に、図10に示すように、鉛直移動装置22を操作してマスク保持体5を上昇させると、マスク保持体5に取り付けられた押さえ板支持棒72により押さえ板9だけが持ち上げられて、基板6から、正確には、撓み抑制板8から分離される。勿論、このとき、押さえ板支持棒72は、マスク体4の保持枠78に設けられた穴部79を挿通される。続いて、マスク体4も、保持枠71により支持ローラ61の上方へ持ち上げられる。
【0042】
次に、図11に示すように、昇降手段16を駆動して、基板保持体7を上昇させると、基板保持体7に設けられた基板支持棒75により基板6および撓み抑制板8が持ち上げられて、マスク体4から分離される。勿論、基板支持棒75はマスク体4の保持枠78に設けられた穴部79を挿通される。
【0043】
そして、この状態で、位置調整手段13により基板6に対するマスク体4の位置合わせが行われる。
以下、この位置合わせ作業について説明する。
【0044】
すなわち、この基板6に対するマスク体4の位置合わせには、対角線上に配置された2台のCCDカメラ装置57が用いられる。
すなわち、図7に示すように、マスク体4側に設けられた円形のマスク側マークM1内に、基板6側に設けられた点状の基板側マークM2が入るように、位置調整手段13の平面内移動装置21が駆動された後、鉛直移動装置22により、基板6の表面に、殆ど接触するようにマスク体4が移動される。なお、各マークの形状は、画像認識が容易なものであれば、十字形状など、どのようなものであってもよい。
【0045】
基板6に対するマスク体4の位置合わせが完了すると、鉛直移動装置22により、基板6とマスク体4との隙間分だけマスク保持体5を上昇させて、両者を密着させる。
次に、昇降手段16により、基板保持体7をその退避位置に向けて下降させた後、鉛直移動装置22によりマスク保持体5を下降させてマスク体4を支持ローラ61上に支持させ、そしてさらにマスク保持体5をその退避位置に向けて下降させると、押さえ板9が撓み抑制板8上に載置される。
【0046】
すなわち、マスク体4の上面に、基板6、撓み抑制板8、および押さえ板9が一体化された状態になっており、一体化されて支持ローラ61上に支持されたワークWを当該支持ローラ61を駆動することにり真空容器2外に搬出した後、この真空容器2に隣接して配置された蒸着用真空容器(図示せず)内に搬入し、そして基板6への有機材料の導体パターンが蒸着される。なお、容器同士間でのマスク体4、基板6、撓み抑制板8、および押さえ板9の搬送についても、ローラを有する搬送手段が用いられる。
【0047】
また、真空容器2内にワークWを搬入または搬出する際には、少なくとも搬入出用開口部2eについては、真空容器2内と同じ真空度に保たれた状態にされている。
ここで、図12に基づき、基板6に撓み抑制板8が載置された場合の効果について説明する。
【0048】
基板6に撓み抑制板8がない場合、図12(b)で示されるように基板6は、端部だけが基板支持棒75によって支持されるため中央部は下方に撓むことになる。
ところで、基板6に対するマスク体4の位置合わせは、基板6とマスク体4とが接触しない隙間でもって行われるため、位置合わせ後には、その隙間分を、マスク体4を鉛直移動装置22によって上昇させて密着させるが、装置のバックラッシや直進精度によって上昇時にずれが生じる。このずれは、上昇量が大きくなると顕著に現れるため、高精度な位置合わせ(数μm)が要求される場合、極力少ない上昇量であることが望ましい。
【0049】
そこで、図12(a)に示されるように、基板6に撓み抑制板8を重ねると、基板6の端部は基板支持棒75により支持され(自由端による支持)かつ撓み抑制板8により固定されることになり、中央部の撓みは単に支持される場合の約1/2に軽減される。これにより、マスク体4を基板6に位置合わせた後、密着させる際の鉛直移動装置22による上昇量を少なくできるため、より高精度な位置合わせを行うことができる。
【0050】
また、マスク体4と基板6とを密着させた後、さらに押さえ板9を重ねる際にもずれが発生するが、撓み抑制板8が在ることで、マスク体4と基板6との密着性がよくなり、ずれが軽減されるという効果も有する。
【0051】
また、押さえ板9にはマスク体4と基板6との密着性をよくするため、内部に磁石が配置されている場合があるが、位置合わせ時には、マスク体4が磁力で引き上げられて基板6に接触しないように距離を大目にとる必要がある。
【0052】
さらに、撓み抑制板8には、基板6に比べて撓みが十分に小さくなるような厚み(基板の数倍以上の厚み)を有するアルミやステンレス製の平板が用いられるが、あまり厚くならないように、すなわち軽量化が図られて、基板6における基板支持棒75との接触部に傷が生じないように考慮されている。
【0053】
なお、上記説明においては、撓み抑制板8を設けることにより、位置合わせ精度の向上を図るようにしたが、撓み抑制板8を省くこともできる。
上述したように、所定の真空下で、基板6に対するマスク体4の位置合わせを行う際に、真空容器2の外部にマスク体4の位置調整手段13を配置したので、装置自体の構成を安価なものにすることができる。
【0054】
また、このアライメント装置1における吊持部材12を真空容器2の外部に導くための貫通穴2bを形成した際に、この貫通穴2bを大気側と遮断するための筒状遮断部材14を連結用板体12に取り付けるとともに、この連結用板体12と取付板体2aとの間に空気圧シリンダ51を配置して、連結用板体12を下方から上方に付勢するように構成したので、すなわち真空下で大気圧による押圧力に対向し得る付勢手段15を具備したので、アライメント装置1に余分な外力が作用するのを防止することができ、したがって装置に歪みが発生することがないので、基板に対するマスク体の位置合わせを高精度でもって行うことができる。
【0055】
詳しく説明すると、下記のような効果が得られる。
1.マスク体4を水平面内で移動させる平面内移動装置21および鉛直方向で移動させる鉛直移動装置22を真空容器2の外部(大気圧下)に配置したので、特殊な真空用機械要素や、モータの冷却装置などを必要としないので、安価で且つ高精度なアライメント装置を提供することができる。
2.各移動装置21,22を真空容器2の外部(大気圧下)に配置するとともに、真空下で作用する押圧力に対向する付勢力を付与し得る付勢手段15を具備したので、真空により生じる各移動装置21,22に作用する力を軽減することができ、したがって移動装置におけるモータなどの駆動機器として容量の小さいものを用いることができるので、より安価な構成にし得る。
3.また、各移動装置21,22を真空容器2の外部(大気圧下)に配置するとともに、真空下で作用する押圧力に対向し得る付勢力を付与し得る付勢手段15を具備したので、装置自体に歪が発生するのを抑制し得るとともに、マスク体4の位置合わせ用のカメラ装置57における視野ずれを防止でき、したがって高精度な位置合わせを行うことができる。
4.さらに、カメラ装置57の焦点調整具58を具備したので、基板6に対するマスク体4の位置合わせをマークM1,M2を介して行う際に、両マークの位置を正確に把握でき、したがってより高精度な位置合わせを行うことができる。
5.アライメント装置一式全てを、真空容器2の上面に配置しているため、大気圧による真空容器の変形の影響がなく、また基板6やマスク体4を上方から吊り下げるように支持するため、各駆動部分でのバックラッシや弾性変形の影響が少なくなるとともに自ら安定するという効果が得られる(振り子のように自動調心性を有する)ため、基板6に対するマスク体4の位置合わせを高精度に行うことができる。
6.支持ローラ61を介して搬送されたワークWを基板保持体7およびマスク保持体5により持ち上げて、押さえ板9、基板6およびマスク体4をそれぞれ分離した後、基板6に対するマスク体4の位置合わせを行い、その後、再びこれらを一体化させて支持ローラ61を介して次の工程へ搬送するようにしているため、基板6に対するマスク体4の位置合わせを高精度に維持したまま、高い生産性を確保することができる。
7.さらに、基板6の上面に配置された撓み抑制板8を設けなくてもよく、この場合でも、上述した1〜6項の効果は得られるが、この撓み抑制板8を設けることにより、基板6の撓みを抑制して、基板6をマスク体4に一体化させる際に発生するずれを防止することができるので、基板6に対するマスク体4の位置合わせを高精度でもって行うことができる。
【0056】
ところで、上記実施の形態における平面内移動装置21を、3箇所に配置された駆動用支持機構32と、1箇所に配置された案内用支持機構33とから構成したが、全てを駆動用支持機構32にて構成してもよい。
【0057】
なお、上記実施の形態においては、容器同士間でのマスク体4、基板6、撓み抑制板8、および押さえ板9の搬送についても、ローラを有する搬送手段を用いるものとして説明したが、例えばロボットハンドなどを用いて搬送することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るアライメント装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】同アライメント装置の構成を示す断面図である。
【図4】同アライメント装置の要部を示す斜視図である。
【図5】同アライメント装置における平面内移動装置の平面図で、(a)は平面内移動装置の構成を示すもので、(b)〜(f)はその動作を説明するものである。
【図6】同真空蒸着装置における、マスク体、基板およびそれらの保持体を示す斜視図である。
【図7】同アライメント装置による基板とマスク体との位置合わせ動作を説明する平面図である。
【図8】同アライメント装置における焦点調整具を示す要部断面図である。
【図9】同アライメント装置における位置合わせ作業を説明する断面図である。
【図10】同アライメント装置における位置合わせ作業を説明する断面図である。
【図11】同アライメント装置における位置合わせ作業を説明する断面図である。
【図12】同アライメント装置における撓み抑制板の作用を説明する要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 アライメント装置
2 位置合わせ用真空容器
2a 取付板体
2b 貫通穴
2c 貫通穴
3 位置合わせ用真空室
4 マスク体
5 マスク保持体
6 ガラス基板
7 基板保持体
8 撓み抑制板
9 押さえ板
11 吊持部材
12 連結用板体
13 位置調整手段
14 筒状遮断部材
15 付勢手段
16 昇降手段
17 搬送手段
21 平面内移動装置
22 鉛直移動装置
61 支持ローラ
62 棒状支持台
71 保持枠
72 押さえ板支持棒
73 支持片
74 保持枠
75 基板支持棒
77 マスク部
78 保持枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着用真空容器内で基板表面に蒸着材料を蒸着させて所定の導体パターンを形成するためのマスク部を有するマスク体と上記基板との位置合わせを、上記蒸着用真空容器とは異なる位置合わせ用真空容器内で行い、かつ当該位置合わせ用真空容器に対する基板およびマスク体の搬入出を、マスク体のマスク部上面に基板を載置するとともに、この基板の上面に押さえ板を載置した状態で行うようにしたアライメント装置であって、
上記位置合わせ用真空容器の壁体部に形成された貫通穴を挿通された吊持部材の下端部に吊持されたマスク保持体と、
上記位置合わせ用真空容器の外方に設けられるとともに上記吊持部材の上端部に連結された連結用板体と、
この連結用板体を移動させてマスク保持体に保持されたマスク体の基板に対する位置を調整し得る位置調整手段と、
上記吊持部材に外嵌されるとともに壁体部の貫通穴の外周と上記連結用板体との間に設けられて真空側と大気側とを遮断する伸縮式筒状遮断部材と、
上記筒状遮断部材の内側が真空状態であることにより発生する連結用板体への押圧力と逆方向の付勢力を発生させる付勢手段と、
上記位置合わせ用真空容器の壁体部側に設けられた昇降手段により昇降自在に設けられて当該位置合わせ用真空容器内に搬入されたマスク体に載置された基板を昇降させる基板保持体とを具備するとともに、
上記吊持部材を介して位置調整手段によりマスク保持体を上昇させてマスク体を保持した際に、当該マスク体を上昇させるよりも先に上記押さえ板を上昇させる突状支持部材をマスク保持体に設けた
ことを特徴とする真空蒸着用アライメント装置。
【請求項2】
基板の上面に、当該基板の撓みを抑制するための撓み抑制板を配置したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着用アライメント装置。
【請求項3】
位置合わせ用真空容器内に、マスク体を下方から支持して当該マスク体に載置された基板および押さえ板を、当該位置合わせ用真空容器外との間で搬送し得る搬送手段を配置したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着用アライメント装置。
【請求項4】
位置調整手段を、連結用板体に吊持部材およびマスク保持体を介して保持されたマスク体が基板表面と平行に移動し得るように構成したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着用アライメント装置。
【請求項5】
位置調整手段に、連結用板体を基板表面と直交する軸心方向で移動し得る機能を具備させたことを特徴とする請求項1または4に記載の真空蒸着用アライメント装置。
【請求項6】
付勢手段の付勢力を調整可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着用アライメント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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