説明

眼に適用する疾患治療剤

エストロゲンまたはその代謝物などの性ステロイドホルモン、その誘導体、構造類似体、エストロゲン作用物質またはSERM又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)を含有する点眼剤または洗眼剤等の形態にある各種疾患の治療剤。優れた治療効果を有し、副作用の低減された、眼に適用する疾患治療剤を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)を含有する眼に適用する疾患治療剤、特に点眼剤/洗眼剤等の形態にある、眼に適用する疾患治療剤に関する。
【背景技術】
エストロゲン単独、またはエストロゲンとプロゲステロン併用の内服によるホルモン補充療法(HRT)により、老人性黄斑変性症(AMD)、黄斑円孔、緑内障、糖尿病性網膜症、老人性白内障などの各種眼疾患の症状の改善の可能性が報告されている。
しかし、HRTは、エストロゲン(またはエストロゲンとプロゲステロン)を全身投与するため、乳癌、子宮癌、女性化乳房、インポテンツなどの重篤な副作用を引き起こす場合がある。したがって、HRTは、治療の可能性があるにもかかわらず、各種の疾患、特に眼疾患の治療には容易に用いることができなかった。
眼疾患である緑内障の発症は、今まで、40才以上の30人に1人といわれていた。しかし、2002年の日本緑内障学会の調査報告では、40才以上の17人に1人という結果がでており、緑内障の患者が増加している。高齢化社会を向かえて、今後も緑内障をはじめとする眼疾患の患者の増大が予想される。
今までの緑内障等の眼疾患治療用点眼剤は、眼圧を低下させるが、視野狭窄の改善効果が不充分であり、また、眼の充血や角膜びらんを引き起こす場合があった。また、一日に何度も点眼する必要があり、煩わしかった。
本発明の目的は、HRTの問題点である副作用の問題を克服した、点眼等による疾患の治療剤を提供することである。
また、本発明の目的は、視野の改善、眼圧の低下等の治療効果の持続期間が長く、一日1回または2〜3日に1回の点眼回数ですむ、緑内障、白内障等の眼疾患の根本的な治療剤を提供することである。
【発明の開示】
本発明は、性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)を含有する、眼に適用する疾患治療剤である。
本発明の疾患治療剤に含有される性ステロイドホルモンは、おもに卵巣、精巣などの生殖腺や胎盤で合成、分泌されるホルモンであり、本発明においては、その作用を持つ合成物質や誘導体及び代謝物も含まれる。性ステロイドホルモンは、アンドロゲン、エストロゲン、ゲスターゲンに大別される。炭素数18〜21の性ステロイドホルモンが好ましい。
アンドロゲンとして、例えば、テストステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステロン、アンドロスタンジオン、メチルテストステロンおよびその誘導体又は構造類似体が例示され、テストステロンおよびその誘導体又は構造類似体が好ましい。
エストロゲンとして、17β−エストラジオール、エストロン、エストリオール、エキリン、エキレニン、エチニルエストラジオールおよび植物性エストロゲン等およびその誘導体、代謝物などが例示され、17β−エストラジオールおよびその誘導体、代謝物が好ましい。エストロゲン誘導体や代謝物の他には、エストロゲン作用を有する物質やエストロゲンの構造類似体も含まれ、以下の化合物を例示できる。
エストロゲン誘導体には、ノンフェミナイジングエストロゲンとその誘導体なども含まれる。例えば、USP第5,521,168に記載されている下式:

(式中、RはH,OH,OR又はRであり、Rは、C〜Cアルキルであり、Rは、OH,=O又はRであり、Rは、R,C≡CH又はC=CHである)の化合物、特に2−メトキシエストラジオール、2−ヒドロキシエストラジオール、4−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオール3−メチルエーテル、2−メトキシエストロン及び2−ヒドロキシエストロンなどが挙げられる。また、WO 02/40032 A2に記載されている下式:

(式中、炭素6と7、8と9、又は9と11の間で芳香環Aと共役する1以上の二重結合を有し得、その場合R及びRの一方又は両方は存在せず、nは、1〜4であり、R及びRは,存在する場合、水素又はアルキルであり、R13は、水素、置換又は非置換ヒドロカルビル、ハロゲン、アミド、スルフェート又はニトレートであり、R14は、水素又はアルキルであり、Rは、置換又は非置換のシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルエニルである)の化合物、特にZYC−1,2,4,9,10,11,12,13,27及び28等が挙げられる。また、Neurobiology of Disease 9,282−293(2002)に記載のZYC−5が挙げられる。
ゲスターゲンとして、プロゲステロンおよびその誘導体又は構造類似体が好ましい。
性ステロイドホルモンは、エストロゲン、テストステロン、プロゲステロンおよびアンドロゲン並びにこれらの誘導体、代謝物及び構造類似体からなる群から選択される1種以上が好ましい。
性ステロイドホルモンとして特に好ましいのは、17β−エストラジオールおよびその誘導体、代謝物、構造類似体である。
17β−エストラジオールなどの性ステロイドホルモンは、水に混合すると懸濁液となる。したがって、本発明の疾患治療剤においては、17β−エストラジオールなどの性ステロイドホルモンを水溶性化するか、あるいは、性ステロイドホルモンを界面活性剤により水に対して可溶化することが好ましく、特に効果の点から、17β−エストラジオールまたはその誘導体、代謝物を水溶性化することが好ましい。
17β−エストラジオールは、疎水性で水に対して溶解性が低いため、蒸留水で溶いても大小不同の凝集塊を作り、粒子径が大きくなり、保存安定性が悪く、目的とする濃度の設定が困難となる。したがって、17β−エストラジオール等の水に難溶性の物質から目的の濃度設定が出来て安定した点眼剤を作るには何らかの工夫が必要である。薬剤の安定性を確保して、角膜及び結膜の生理化学的及び生物学的特性を傷害しない安全で有益な方法が必要である。又、使用時に刺激や不快感を与えたりしない必要がある。
従来、難溶性の物質から点眼剤を作るには、添加物、油、アルコール等を加えたり、点眼剤の粘性を上げるなどの方法が試みられているが、点眼時に不快感が生じるなどの欠点があった。
これに対して、本発明においては、シクロデキストリンを用いて薬剤を包接化し、これを水溶化して用いる方法を取るのが好ましい。シクロデキストリンは、グルコースのオリゴサッカライドで、外側が親水性で内側(cavity)が疎水性であり、疎水性の薬剤たとえば17β−エストラジオールとの包接物を作ることにより水溶性化し安定化でき、使用時不快感がないものも得られるので、点眼剤を作るのに適している。シクロデキストリンには一般的にα、β、γの3種類があることが知られている。
シクロデキストリンの中で、β−シクロデキストリンは、溶血性の問題や水溶性の低さから腎毒性などの問題があるので、下記のようなβ−シクロデキストリンの誘導体を用いることが賢明である。
β−シクロデキストリン誘導体には、親水性シクロデキストリンと疎水性シクロデキストリンがあるが、点眼剤には親水性のものが適している。親水性シクロデキストリンには、メチル化シクロデキストリンとヒドロキシアルキル化シクロデキストリンがあるが、メチル化シクロデキストリンには、後述の動物及びヒトでの実験の結果から、目に対する刺激性、角膜や結膜に対する障害や溶血性の問題から適切ではないことが分かった。これに対して、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンは、安全性が高く、目に対する刺激性もなく角膜上皮障害もなく点眼剤作製に優れている。
ヒドロキシアルキル化シクロデキストリンには、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンなどが含まれ、特に2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが、包接物の水溶性や薬剤安定性に優れ、刺激性や生体毒性も少ない点から、最も好ましい。
γ−シクロデキストリン及びその誘導体も好ましく使用できる。α−シクロデキストリンは、17β−エストラジオールの包接による水溶性化はあまり高くないので、γ−シクロデキストリンの方が好ましい。
ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、スルホニル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリンも用いる事が出来る。
17β−エストラジオールなどの性ステロイドホルモンの水溶性化は、例えば、常法により、性ステロイドホルモンをゲスト化合物として、α−、β−またはγ−シクロデキストリンなどの環状化合物またはその誘導体等のホスト化合物に包接することによって行なうことができる。水溶性化された性ステロイドホルモンは、水に対する溶解性が良好であり、点眼により眼内組織に薬剤を効果的に移行、浸透させるため、治療効果が高く、全身の血中濃度を低く抑えることができるので副作用が少なく、また、使用感がよく異物感がないので、特に点眼剤に適している。
水溶性化された17β−エストラジオールは、点眼により眼内の目的部位に移行し、細胞を活性化することを確認した(後述の実施例参照)。
本発明の疾患治療例に含有されるエストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)には、例えば、ラロキシフェン、アルゾキシフェンなどがある。
エストロゲンの構造類似体、エストロゲン作用を有する物質、セレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)も水溶性化することにより、水溶性化された17β−エストラジオールと同様に、眼内目的組織への移行を高め、治療目的部位の疾患治療に有効と考えられる。
本発明において治療可能な疾患は、特に限定されないが、例えば、緑内障、高眼圧の緑内障、正常眼圧緑内障、血管新生老人性黄斑変性症、老人性黄斑病変、中心性網脈絡膜炎、老人性黄斑変性症、黄斑円孔、白内障、老人性白内障、眼底出血、網膜中心動脈閉塞症、眼底動脈硬化症、光視症、糖尿病性網膜症、網脈絡膜萎縮、網膜および脈絡膜の血管新生病変、卵巣除去による白内障、TGFβによる白内障、黄斑線維増殖症(黄斑上膜)、網膜裂孔,網膜剥離、増殖性網膜症、網膜色素変性症、角膜炎、角膜混濁、角膜ビラン、角膜上皮剥離、角膜潰瘍、角膜内皮細胞変性や脱落、角膜変性症、流行性角結膜炎、霰粒腫、虹彩炎、ぶどう膜炎、自己免疫疾患、網脈絡膜炎、虹彩毛様体炎、眼精疲労、各種疾患による視野狭窄、視神経萎縮、視神経炎、(前部)虚血性視神経症、動体視力低下、色覚異常、老眼、近視、遠視、乱視などの屈折異常並びにアルツハイマー病、パーキンソン病、ALSなどの中枢神経疾患及び分裂病やそううつ病などの精神病、ヒステリー、脳下垂体異常およびホルモンのアンバランスによる疾患、遺伝子異常による疾患、免疫異常による疾患が含まれる。緑内障には、ポスナーシュロスマン症候群が含まれ、角膜変性症には、角膜内皮細胞変性及び脱落、角膜顆粒状変性症(グレノウタイプ1、グレノウタイプ2)、角膜帯状変性症が含まれる。
本発明の治療剤は、眼に直接適用するためのものであり、その形態は、例えば、点眼剤、洗眼剤、軟膏、結膜注射剤またはコンタクトレンズ吸着剤の形態であり得る。
本発明の眼疾患治療剤は、眼組織に性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)を直接投与するので、従来の循環系を通して治療するHRTで生じる全身の血液中の性ステロイドホルモン等の濃度が高まることによる副作用を起こす心配がなく、効果の持続期間が長いため、少ない点眼回数で疾患を効果的に治療できる。眼圧を低下させるとともに、特に顕著に視野狭窄を改善することができるので、高眼圧の緑内障の治療だけでなく、今まで治療法がなかった正常眼圧緑内障の治療も特に効果的に行なえる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1の点眼剤Aの写真である。
図2は、実施例1の点眼剤Bの写真である。
図3は、点眼剤A〜Cの点眼後の17β−エストラジオールの前房内移行濃度を経時的に示すグラフである。
図4は、実施例4のコントロール群(Control)、紫外線照射前投与群(Pre 0.01g/l及び0.1g/l)及び紫外線照射後投与群(Post 0.01g/l及び0.1g/l)のマウスの前眼部の写真である。
図5は、実施例5で蒸留水を点眼したマウスの網膜の顕微鏡写真である。
図6は、実施例5で水溶性の17β−エストラジオール含有点眼剤を点眼したマウスの網膜の顕微鏡写真である。
図7は、網膜におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図8は、水晶体におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図9は、角膜におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図10は、毛様体におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図11は、エストロゲン未添加、抗体未添加の場合の網膜外顆粒細胞における像である。
図12は、17β−エストラジオール未添加、抗体添加の場合の網膜外顆粒細胞におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図13は、17β−エストラジオール添加、抗体未添加の場合の網膜外顆粒細胞における像である。
図14は、17β−エストラジオール添加、抗体添加の場合の網膜外顆粒細胞におけるエストロゲン受容体抗体陽性像である。
図15は、点眼17β−エストラジオール濃度(0〜100μg/ml)とエストロゲン受容体の核移行細胞数を示す。
図16は、17β−エストラジオール点眼後のエストロゲン受容体の核移行細胞数の経時変化を示す。
図17は、実施例9の患者の治療前の右目の視野を示す図である。
図18は、実施例9の患者の治療前の左目の視野を示す図である。
図19は、実施例9の患者の治療後の右目の視野を示す図である。
図20は、実施例9の患者の治療後の左目の視野を示す図である。
図21は、実施例10の患者の治療前の右目の視野を示す図である。
図22は、実施例10の患者の治療前の左目の視野を示す図である。
図23は、実施例10の患者の治療後の右目の視野を示す図である。
図24は、実施例10の患者の治療後の左目の視野を示す図である。
図25は、実施例11の患者における点眼期間と視力の関係を示す図である。
図26は、実施例12の患者の点眼前後の近点の変化を示す図である。
図27は、実施例13の患者の治療前の右目の視野を示す図である。
図28は、実施例13の患者の治療前の左目の視野を示す図である。
図29は、実施例13の患者の治療後の右目の視野を示す図である。
図30は、実施例13の患者の治療後の左目の視野を示す図である。
図31は、実施例26の患者の動体視力を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の治療剤は、この種の一般の薬剤と同様にして、慣用の製造方法により製造することができる。点眼剤、洗眼剤の場合、例えば、水溶性化された性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはZYC−5、セレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)を滅菌蒸留水、BSSプラス、生理食塩水などに所定の濃度で溶解させることにより製造できる。
本発明の治療剤において、性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはZYC−5、セレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)は、治療に有効な量含まれる必要がある。治療に有効な量は、液剤の場合、例えば0.1μg〜100g/l、好ましくは0.5μg〜1g/l、特に好ましくは1μg〜500mg/lの濃度であり、固形剤の場合、例えば0.1μg〜100g/kg、好ましくは0.5μg〜10g/kg、特に好ましくは1μg〜5g/kgの濃度であり得る。
本発明の治療剤は、剤中の性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲン(ノンホルモナールエストロゲン)の濃度や薬剤の投与回数、投与量を変えることにより、あるいは、薬剤の投与方法(例えば、点眼液、洗眼液、軟膏か)を選択することにより、効果の現れる時間や効果の持続時間を調節することができる。
本発明の治療には、必要により、慣用の添加剤、たとえば、賦形剤、担体、pH調整剤、等張剤、保存剤、グルタチオン、グルコース、各種の塩、安定剤、清涼化剤、抗酸化剤、防腐剤などを添加してもよい。
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はそのナトリウム塩、ポリピロリドン、ポリビニルピロリドン(これを加え加熱する)等を加えても良い。
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
下記のようにして、17β−エストラジオール及びそれと各種シクロデキストリンの包接物から点眼剤を調製した。各種シクロデキストリンは、SIGMA社(MO,USA)製を用い、17β−エストラジオールは、CALBIOCHEM社(独)製を用いた。
点眼剤A:17β−エストラジオールの点眼剤
17β−エストラジオールを1mg/mlの濃度で蒸留水に溶かした。放置しておくと大小不同の凝集塊を作り懸濁液となった。粘性を上げたり、アルコールを加えたりせずにこれを点眼剤Aとした(図1)。
点眼剤B:2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと17β−エストラジオールとの包接物の点眼剤
13.3mMの2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンと3.67mM(1mg/ml)の17β−エストラジオールを包接して、これを蒸留水に溶解して透明で一様な水溶液を調製した(図2)。この水溶液を点眼剤Bとした(モル比(3.62:1))。
点眼剤C:α−+γ−シクロデキストリンと17β−エストラジオールとの包接物の点眼剤
α−シクロデキストリンと3.67mM(1mg/ml)の17β−エストラジオールを包接して、これを蒸留水に溶解したところ、懸濁性が残った。この懸濁液にγ−シクロデキストリンを加えると、透明な水溶液になった。この水溶液を点眼剤Cとした。α−+γ−シクロデキストリンの総量は24.6mMであった(モル比6.7:1)。
点眼剤D:メチル−β−シクロデキストリンと17β−エストラジオールとの包接物の点眼剤
15mMのメチル−β−シクロデキストリンと3.67mM(1mg/ml)の17β−エストラジオールを包接して、これを蒸留水に溶解し、透明で一様な水溶液を調製した。この水溶液を点眼剤D(モル比4.09:1)とした。
17β−エストラジオールを2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、α−+γ−シクロデキストリン又はメチル−β−シクロデキストリンで包接すると水溶性が高まり透明で安定な点眼剤が調製できた(点眼剤B〜D)。
実施例2 角結膜組織に対する影響
実施例1で調製した点眼剤B〜Dの目に対する作用を見るために、ウサギ、マウス及び人に対して点眼を行い評価した。
点眼剤B(2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接物)を家兎(ダッチウサギ)の目に50μl(1滴)を30分おきに4回点眼したところ、特に問題は起きなかった。また、1日1回(50μl)をマウスに8ヶ月、人に11ヶ月点眼しても問題は生じなかった。
点眼剤C(α−+γ−シクロデキストリン包接物)を人の目に点眼したところ、刺激はなかった。
点眼剤D(メチル−β−シクロデキストリン包接物)を家兎(ダッチウサギ)の目に50μl(1滴)を30分おきに4回点眼したところ:
30分後に角膜ビランの数が増加し、角膜周囲の血管が充血した;
1時間で眼脂が出現し、ビランの面積が拡大した;
1時間30分でビランの数が多く深くなった;そして
2時間目で充血が強くなり、角膜の周辺部の上皮に底辺2mm高さ3mmの3角形の領域に角膜上皮全剥離、角膜潰瘍がおきたので実験を中止した。
さらに、点眼剤Dを人に1滴(50μl)点眼したところ、強い刺激があり、流涙が起こり、違和感が5時間程、就寝時まで続いたが、翌朝には回復していた。
点眼剤B及びC、特に点眼剤Bは、点眼しても特に問題は起きず、点眼剤として最適であることが判明した。一方、点眼剤Dは、刺激が強く、角膜や結膜の生理化学的性質を変化させ、充血と角膜の病的な上皮剥離、角膜潰瘍を起こすため、点眼剤としては不適切であることが判明した。
実施例3 17β−エストラジオールの前房内移行濃度
実施例1で調製した点眼剤A〜Dの効果を見るため、点眼後の17β−エストラジオールの前房内移行濃度の測定を家兎眼(ダッチウサギ:メス)を用いてブラインドで実験を行った。
午前10時に各点眼剤を1滴(50μl)点眼し、5分後にさらに1滴点眼した。点眼後、30分、1時間、2時間、3時間目に27ゲージ注射針と1ml注射器を用いて角膜を穿刺し、前房水を0.1ml採取し検体とした。検体をC18カラム抽出後、DPCエストラジオール二抗体キット(Diagnostic Products Corporation,USA)を用いて17β−エストラジオール量を測定した。エストラジオール抗体とヨウ化エストラジオール125I試薬を用い、ガンマカウンターで放射能を測定する方法である。測定値はpg/mlに換算してある。結果を図3に示す。点眼直前の17β−エストラジオールの前房内濃度は、平均153pg/mlであった。
図3から分かるように、いずれの点眼剤も前房内の17β−エストラジオール濃度は、点眼後30分値が1番高く、以後減少している。2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで包接した点眼剤Bの17β−エストラジオール前房内濃度が一番高いことから、一番強く角膜、結膜を透過しているといえる。この結果から、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンが17β−エストラジオールの角膜、結膜透過に対するエンハンサーの働き、すなわち、角膜、結膜を透過しやすくする働きをしていると推定される。二番目に前房内の17β−エストラジオール濃度が高いのは、α−+γ−シクロデキストリン包接した点眼剤Cであった。α−デキストリンは17β−エストラジオールの溶解性が低く、γ−デキストリンの働きの方が強いと思われる。点眼剤A(懸濁液)は、前房内移行濃度が低く、透過性が悪かった。この結果となったのは、点眼剤Aにおいては、大小不同の凝集塊が出来、粒子径が大きくなったことが一つの要因と考えられる。メチル−β−シクロデキストリンの包接の点眼剤Dは、17β−エストラジオールの高い前房内移行濃度(点眼後30分値:36178pg/ml)を示したが、これは、メチル−β−シクロデキストリンにより角膜、結膜の生理化学的性質が変わり、病的な角膜、結膜からの透過であるからグラフからは除外した。
この実験結果から、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接物の点眼剤Bが最良であることが判明した。
実施例4 白内障治療(動物実験)
SIGMA社(USA)製の水溶性17β−エストラジオールの2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接物から調製した17β−エストラジオール点眼剤(17β−エストラジオール濃度0.1g/l及び0.01g/l)による白内障の治療効果を見る動物実験をブラインドで行った。
コントロール群(Control):マウスの目(4眼)に紫外線UV−A+UV−B(各0.36J:100μW×1時間)を第1日、第3日、第5日の22時〜23時にかけてそれぞれ1回、合計3回照射した。ただし、各紫外線照射の1分前と1分後にPBS(リン酸バッファー生理的食塩水)を1滴(50μl)点眼し、第2日、第4日、第6日、第7日、第8日、第9日及び第10日にそれぞれ1回PBSを1滴点眼した。
紫外線照射前投与群(Pre 0.1g/l及びPre 0.01g/l):マウスの目に紫外線UV−A+UV−B(各0.36J:100μW×1時間)を第1日、第3日、第5日の22時〜23時にかけてそれぞれ1回、合計3回照射した。ただし、各紫外線照射の1分前に17β−エストラジオール濃度0.1g/l(4眼)又は0.01g/l(4眼)の点眼剤1滴(50μl)を点眼し、かつ紫外線照射1分後にPBSを1滴点眼し、第2日、第4日、第6日、第7日、第8日、第9日及び第10日にそれぞれ1回、17β−エストラジオール濃度0.1g/l又は0.01g/lの点眼剤1滴(50μl)を点眼した。
紫外線照射後投与群(Post 0.1g/l及びPost 0.01g/l):マウスの目に紫外線UV−A+UV−B(各0.36J:100μW×1時間)を第1日、第3日、第5日の22時〜23時にかけてそれぞれ1回、合計3回照射した。ただし、各紫外線照射の1分前にPBSを1滴点眼し、かつ紫外線照射1分後に17β−エストラジオール濃度0.1g/l(4眼)又は0.01g/l(4眼)の点眼剤1滴(50μl)を点眼し、第2日、第4日、第6日、第7日、第8日、第9日及び第10日にそれぞれ1回、17β−エストラジオール濃度0.1g/l又は0.01g/lの点眼剤1滴(50μl)を点眼した。
第10日の22時に、前眼部の写真を撮影した(図4)。
図4から分かるように、マウスの目に紫外線UV−A+UV−Bを3日間照射すると、第10日に、PBSのみを投与したコントロール群には白内障が現れて来たが、これに対して、17β−エストラジオール含有点眼剤の照射前投与群及び照射後投与群には白内障の発生がほとんどないことが確認された。17β−エストラジオールが高濃度の点眼剤の投与群の方が低濃度の点眼剤の投与群よりも白内障の出現がより少なく、薬理効果がより高かった。また、紫外線照射前投与群の方が照射後投与群より白内障の出現がより少なく、薬理効果がより強く現れていた。2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17βエストラジオールには、点眼による白内障の予防効果と治療効果の両方があることが確認された。
マウスの目に2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール(17β−エストラジオール濃度10mg/l)点眼剤を点眼して水晶体皮質の核をエストロゲンレセプターの抗体で免疫染色したところ、後述の通り、核周囲及び核内が染色され、17β−エストラジオールが水晶体皮質細胞内に届いていることが確認された。
実施例5 エストロゲンレセプターの網膜外顆粒層細胞の核内への移行(動物実験)
月齢3ヶ月のオスのマウス(体重約20g)に、後述の実施例7のようにして調製した17β−エストラジオール濃度100mg/lの点眼剤1滴(50μl)を第1日目に朝1回、第2日目に朝夕2回、第3日目に朝1回点眼した。3日間の点眼後のマウスの網膜の外顆粒層の細胞(視細胞)を試料とした。コントロールとして蒸留水を同様に点眼したマウスからの試料を用いた。
後述の実験方法により、試料を抗エストロゲンレセプタークローンAER311(マウスモノクロナールIgG2aK)(200μg/200μl)を用いて免疫染色し、顕微鏡(×100)で観察した。その結果を図5および6に示す。
コントロールではマウス網膜の外顆粒層の細胞(視細胞)の核にエストロゲンレセプターの移行が少ないことが確認されたが(図5参照)、水溶性17β−エストラジオール含有点眼剤を点眼したマウスの網膜の外顆粒層の細胞(視細胞)では、レセプターは細胞の核内にコントロールにくらべより多く移行していることが確認された(図6参照)。この水溶化された点眼剤により、17β−エストラジオールが眼内深層(網膜)にまで移行することが確認され、目的の細胞が活性化されることが証明された。
実施例6 分子生物学的実験(動物実験)
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンで包接することにより、17β−エストラジオールは、点眼により眼内に充分に移行することが判ったので、分子生物学的により詳細な実験を行った。
(実験材料と方法)
<実験材料>
マウスはC57BL/6(埼玉実験動物から購入)を使用した。解剖時の麻酔にはエーテルを使用した。
点眼剤は、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17−βエストラジオール(SIGMA社MO,USA)から調製し、17−βエストラジオール濃度0.01〜100μg/mlで用いた。
抗エストロゲン受容体モノクローナル抗体クローンAER311は、Upstate社(NY,USA)より購入した。二次抗体を含む免疫染色に必要な試薬は、VENTANA社(AZ,USA)より購入した。
<凍結切片作製法>
点眼して所定時間経過後にエーテルにて麻酔、安楽死後に一部視神経を含む眼球を摘出、2%パラホルムアルデヒドを含むPBS(リン酸バッファー生理的食塩水)で氷冷しながら1時間固定した。次いで、ドライアイスで冷却したイソペンタン上でTISSU MOUNT(白井松器械)を用いて包埋した。薄切はクリオシュタット(LEICA CM1900,GERMANY)を用い、後固定の為に5分間HE固定液(79%エタノール、20%ホルマリン、1%酢酸)に浸した。PBSで洗浄後に染色走査に供した。
<免疫染色によるエストロゲン受容体の検出>
薄切切片はVENTANA社のHXシステムを用いて免疫染色した。染色プロトコールはDAB Non−Paraffinプロトコールを選択、conditioner CClで抗原賦活化処理し、一次抗体としての抗体希釈液で4μg/mlの濃度に希釈した抗エストロゲン受容体抗体で32分間反応した。二次抗体とdiaminobenzidine(DAB)による発色はVentana Amplification Kitを使用した。また、post−counterstainにBLUING REAGENTを用いた。染色終了後エタノールとキシレンを用いて透徹し、ソフトマウント(和光純薬)を用いてマウントした。
<染色切片の観察>
免疫染色した切片の観察には正立顕微鏡を用い、画像をデジタル・カメラ(Nikon CoolPix 900)で撮影、画像処理ソフト Photoshopでパソコン上に表示して解析した。
(結果)
<エストロゲン受容体の眼球内分布>
エストロゲンの明確となっている作用機序としては、細胞内エストロゲン受容体のエストロゲンとの結合とによる活性化、核への移行、エンハンサーへの結合による特定遺伝子群の転写活性の増加が知られている。そこで、エストロゲンが作用するのに必要な受容体が眼球内のどこに存在するかを調べた。その結果、DABによる発色で観察した所、外顆粒層を含む網膜(図7)、水晶体の一部(図8)、角膜(図9)、毛様体(図10)で抗エストロゲン受容体抗体陽性像が得られた。毛様体では、バックグラウンドが強く、判別が難しかった。
点眼により17β−エストラジオールが眼内深くまで移行し、各種眼底疾患、緑内障などの視神経疾患治療に有効であるか確認を行った。
<17β−エストラジオールの点眼による網膜エストロゲン受容体の核移行>
前述のように網膜でエストロゲン受容体の存在が認められた。しかし、図7に示したようにその局在は細胞質であり、この状態は不活性型である。エストロゲンが結合すれば核への移行が起こることは培養細胞などでは多数報告されている。しかし、in vivoにおいてエストロゲンがこの受容体の核移行を誘導し、これを組織切片の免疫染色で確認できるかはまったく不明である。そこで、まず、エストロゲンの点眼でこの網膜の受容体の核移行が認められるか調べた。
(1) 網膜にあるエストロゲン受容体の核移行
マウスに、エストロゲン(2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール 10μg/ml)の点眼剤を1滴(50μl)1日目昼、2日目朝と夕、3日目朝の4回点眼し、最後の点眼1時間後に眼球を摘出して凍結、薄切後に抗エストロゲン受容体抗体で染色した。その結果、網膜外顆粒細胞では、一定の割合で核に移行した像を確認できた(図11〜図14)。この結果を基に以下、点眼17β−エストラジオール濃度変化と添加後時間による変化を解析することにした。
(2) 点眼17β−エストラジオール濃度による変化
網膜外顆粒細胞のエストロゲン受容体を核に移行させることが可能な点眼17β−エストラジオール濃度を調べるために、(1)と同様に各濃度の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオールを1日目昼、2日目朝と夕、3日目朝の4回点眼し、最後の点眼1時間後に眼球を摘出して凍結、薄切後に抗エストロゲン受容体抗体で染色した。図15にその結果を示す。17β−エストラジオール濃度0.01μg/ml以上の点眼剤を点眼した場合には、PBS(リン酸バッファー生理的食塩水)のみの点眼剤(17β−エストラジオール0μg/ml)に比べて有意に受容体の核移行が認められた。核移行は、17β−エストラジオール濃度100μg/mlまで用量依存的に増加した。
(3) 17β−エストラジオール点眼後の変化
点眼した2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオールによるエストロゲン受容体の核移行がいつまで持続するかを調べる目的で10μg/mlの濃度の17β−エストラジオールを10分おきに3回点眼し、最初の点眼から2,8,24,48時間後にそれぞれ眼球を摘出して凍結、薄切後に抗エストロゲン受容体抗体で染色した。図16にその結果を示す。この図から分かるとおり、点眼2時間後には36%の網膜外顆粒細胞で核移行が見られたが、24時間後及び48時間後には22%及び19%となり、17β−エストラジオール0μg/ml添加のコントロール18%をやや上回るまで、移行した細胞数の低下が見られた。
17β−エストラジオールの点眼により、用量依存的に網膜外顆粒細胞でその受容体が核に移行することが確認できた。この結果は、点眼により直接17β−エストラジオールが眼内深層に作用することを明確に示している。しかし、その効果は1〜2日後には低下する。また核移行後のエストロゲン受容体は蛋白分解される。
(まとめ)
2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオールの点眼による眼球への作用をモデル動物を用いて分子生物学的に確認することができた。これは、臨床応用でこの方法により、眼に対して17β−エストラジオール等のエストロゲンを点眼により容易に作用させることが可能なことをデータとして示したものである。
0.01μg/ml以上の17β−エストラジオールを点眼した場合、PBS点眼のコントロールに比べて、網膜外顆粒細胞のエストロゲン受容体の核内移行が有意に認められ、核内移行は、0.1μg/ml〜100μg/mlまでの濃度で用量依存的であり、0.1μg/ml〜100μg/mlの濃度又はそれ以上が17β−エストラジオール含有点眼剤の好適濃度であることが判明した。
また、核内移行の時間的経過から長時間(24時間以上)効果が続くので1〜2日に1回〜2回の投与で良く、点眼剤の投与回数が少なくて良い事が判った。
この実験から、点眼による各種眼底疾患、緑内障などによる視神経疾患治療が可能であることが想定され、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール含有点眼剤は、各種疾患治療に対して優れた点眼治療薬であるといえる。
実施例7 点眼剤/洗眼剤の調製
水溶性の17β−エストラジオール包接物(SIGMA社(USA)製のCyclodextrin−encapsulated 17β−estradiol;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンによる包接物で、包接物1g当たり17β−エストラジオール45mgを含む)を滅菌蒸留水に2.2g/l(17β−エストラジオールを100mg/l)の濃度で溶解して、点眼剤/洗眼剤を調製した。
実施例8 眼圧に対する効果(動物実験)
実験には、生後8ヶ月から10ヶ月の有色家兎(体重1.8〜2kg)を5匹(10眼)用いた。
(1)眼圧の日内変動
家兎の眼圧の日内変動を測定した。平均値は、午前9時に14mmHg、午後1時に12mmHg、午後3時に12mmHg、午後6時に16mmHgであった。
平均眼圧は14±2mmHgであった。
(2)点眼剤/洗眼剤の効果1
家兎の眼圧の日内変動に見られるように眼圧は夕方に上昇することから、午後1時に点眼剤/洗眼剤を投与してその効果を見た。点眼剤/洗眼剤で処理する前の家兎の眼圧は午後1時で14mmHgであった。
この家兎に対して、午後1時に実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤を1眼当たり25μl(1滴)点眼した。点眼3時間半後の午後4時半に点眼家兎の眼圧を測定したところ、10mmHgまで下がっており、また、この効果は少なくとも点眼5時間後の午後6時までは持続した。
別途、点眼していない家兎を午後1時に実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤により洗眼した。最大の眼圧低下は、洗眼50分後に現れた。眼圧の低下効果は、少なくとも洗眼5時間後まで持続した。
(3)点眼剤/洗眼剤の効果2
1眼のみが高眼圧の家兎を用いて実験した。(このデータは、平均の計算には使用しなかった。)
この家兎の点眼前の午後5時における眼圧は24mmHgであった。午後5時に家兎を実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤で洗眼したところ、洗眼15分後に眼圧が15mmHgまで下がった。この家兎を直ちに同じ点眼剤/洗眼剤で再度洗眼したところ、45分後に眼圧が13mmHgまで下がった。
点眼剤/洗眼剤処理した家兎をそのまま放置して、翌日午前9時に眼圧を測定したところ18mmHgであり、前日の点眼剤/洗眼剤の効果が残っていた。この家兎に実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤25μl(1滴)を点眼したところ、点眼3時間15分後に13mmHgまで眼圧が下がっていた。この時点で実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤25μlを再度点眼したところ、再点眼3時間15分後の眼圧は13mmHgであった。その後さらに同じ点眼剤/洗眼剤を25μl点眼したところ、点眼1時間50分後に眼圧は12mmHgであった。
その翌日(第3日目)の点眼前の眼圧は、午前9時で10mmHgであり、その時点で実施例7で調製した17β−エストラジオール点眼剤/洗眼剤25μlを1回のみ点眼したところ、午後0時(点眼3時間後)の眼圧は9mmHgであり、午後3時15分の眼圧は12mmHgであり、午後6時の眼圧は11mmHgであった。点眼の効果は長時間持続することが分かった。
投与の翌日にも効果が残っていることから、エストロゲンの受容体が関与し、DNAのレベルの働きが関係しているのかもしれない。NOの発生による可能性もある。これ以外のメカニズムも考えられる。
実施例9 正常眼圧緑内障患者の治療効果
患者は、正常眼圧緑内障と診断された75才の女性である。
水溶性の17β−エストラジオール包接物(SIGMA社(USA)製のCyclodextrin−encapsulated 17β−estradiol;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンによる包接物で、包接物1g当たり17β−エストラジオール45mgを含む)を滅菌蒸留水に2.2g/l(17β−エストラジオールを100mg/l)の濃度で溶解して、点眼剤を調製した。
上記の患者に対して、10日間毎日朝1回、点眼剤を1眼当たり1滴(25μl)点眼した。
患者の眼圧は、点眼前に右14mmHg、左12mmHgであったが、10日間の点眼後に右12mmHg、左9mmHgであった。
患者の点眼前のOctopus1−2−3による視野計測で視野欠損が確認されたが(図17および18)、10日間の点眼により両眼とも非常によく改善された(図19および20)。臨床的に、点眼による正常眼圧緑内障の治療効果が確認された。
実施例10 高眼圧の開放隅角緑内障の治療効果
患者は、高眼圧の開放隅角緑内障と診断された54才の女性である。
水溶性の17β−エストラジオール包接物(SIGMA社(USA)製のCyclodextrin−encapsulated 17β−estradiol;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンによる包接物で、包接物1g当たり17β−エストラジオール45mgを含む)を滅菌蒸留水に2.2mg/l(17β−エストラジオールを100μg/l)の濃度で溶解して、点眼剤を調製した。
患者に、1週間毎日朝1回、点眼剤を1滴(25μl)点眼した。
患者の眼圧は、点眼前に右23mmHg、左24mmHgであったが、1週間の点眼後に右16mmHg、左18mmHgであった。
視野は、暗点があったが、右眼では軽度の欠損(図21)がほぼ正常に回復し(図23)、左眼では進行した欠損(図22)が軽度改善した(図24)。
点眼をさらに継続したところ、3週間目に、患者の眼圧は、点眼前に右20mmHg、左19mmHgに上昇した。100μg/lの17β−エストラジオール濃度は、効果を表わす濃度の下限値に近いと考えられる。より高濃度にするか、または1日当たりの点眼回数を増加することにより効果的な治療が可能である。
臨床的に、点眼による高眼圧の開放隅角緑内障の治療効果が確認された。
実施例11 白内障治療(臨床的治療効果)
白内障の患者に、実施例7で用いた水溶性の17β−エストラジオール包接物を滅菌蒸留水に溶解して、17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を調製し、この1滴(50μl)を毎日朝8時に1日1回点眼した所、視力の改善が得られた(図25参照)。又、眼科診察用の細顕灯顕微鏡でも白内障の混濁が軽減するのが観察された。
実施例12 老眼の治療効果
患者は、−2.5ジオプトリの軽度近視と−1.0Dの乱視のある老眼の59才の男性である。
左眼にレンズによる矯正を行なわずに患者の近点を計測したところ29cmであった。
水溶性の17β−エストラジオール包接物(SIGMA社(USA)製Cyclodextrin−encapsulated 17β−estradiol;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンによる包接物で、包接物1g当たり17β−エストラジオール45mgを含む)を滅菌蒸留水に2.2g/l(17β−エストラジオールを100mg/l)の濃度で溶解して、点眼剤を調製した。
患者に、朝9時に点眼剤を1眼当たり1滴(25μl)点眼した。点眼前に29cmであった患者の近点は、点眼1時間後に27cmとなり、3時間後には24cmとなり、最大5cmの屈折改善がみられた(図26)。なお、遠点は、平均41±2cmであった。
臨床的に、点眼による老眼の治療効果が立証された。
実施例13 網膜色素変性症治療
患者は86才の女性で、すでに白内障の手術を受け人工水晶体挿入眼である。網膜色素変性症のために視野狭窄がおきている。この患者に実施例7で調製した17β−エストラジオールを100mg/lの濃度で含む点眼剤1滴(50μl)を毎日1回(朝8時)に点眼投与を行った所、視野が徐々に改善した。点眼開始から77日後に視力と視野が両方とも改善しているのが確認された。
点眼前の視力は Vd=0.4×IOL(矯正視力0.6)
Vs=0.8×IOL(矯正視力0.8)
であったが77日後には
Vd=0.4×IOL(矯正視力0.8)
Vs=0.5×IOL(矯正視力1.0)
と視力の改善が確認された。
又、OCTOPUS 1−2−3静的視野計で計測した視野も点眼前と点眼開始から77日後を比較すると改善しているのが確認された。(図27〜30参照)
実施例14 霰粒腫の治療
8才女児の右)霰粒腫に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/l濃度の点眼剤1滴(50μl)を朝1回点眼した所、12日後に腫瘤は消失していた。
実施例15 近視治療
1.13才男児〔視力:Vd=0.7(1.5×−0.5D)
Vs=0.6(1.5×−0.5D)〕に
実施例7で用いた水溶性の17β−エストラジオール包接物を蒸留水で溶解して調製した17β−エストラジオール100μg/lの濃度の点眼液1滴(50μ1)を1日1回(朝8時)に点眼した所、9日後に視力が
Vd=1.0(1.5×−0.25D)
Vs=1.0(1.5×−0.25D)
に改善した。
2.13才男児〔視力:Vd=0.4(1.5×−0.75D)
Vs=0.3(1.5×−1.25D)〕に
実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を1滴(50μl)を毎朝1回点眼した所、点眼45日後に下記の様に視力改善が見られた。
Vd=1.0(1.5×−0.5D)
Vs=0.5(1.5×−1.0D)
実施例16 老眼治療
治療前の矯正の近方視力(近方の矯正視力)
Vd=0.6/30cm×NJB
Vs=0.4/30cm×NJB
の老眼の49才の男性に実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤1滴(50μl)を1日1回朝点眼した所、14日間の点眼後、近方矯正視力は以下の様に改善した。
Vd=1.0/30cm×NJB
Vs=0.7/30cm×NJB
実施例17 眼底出血治療
右眼に眼底出血が見られる80才の男性に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を1滴(50μl)1日1回朝8時に点眼し、同時にアドナ(商標)30mgを1日3回で内服させた所、45日後には出血は消えていた。
実施例18 角膜潰瘍治療
76才の女性で、両眼に交互に再発をくりかえす角膜潰瘍があり、モーレンズ角膜潰瘍と診断された患者の右眼に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤1滴(50μl)を1日2回朝8時と17時に点眼した所、3週間で軽快した。自己免疫疾患の治療が可能と考えられる。
実施例19 角膜変性症治療
1.顆粒状角膜変性症と診断された63才の女性の左眼に、実施例11で調製した1mg/lの濃度の17β−エストラジオール点眼剤を1滴(50μl)1日2回(8時と15時)点眼した所、視力が2週間で改善した。
Vs=0.6(n・c)→Vs=0.4(0.8)
2.顆粒状角膜変性症と診断された68才の女性に、同上の点眼液を1滴(50μl)朝1回右眼に点眼した所、1週間で
Vd=0.3(0.9)→Vd=0.3(1.0)と視力改善が現れ、
2ヶ月後にVd=0.5(1.2)とかなり改善した。( )内は矯正視力を示す。
実施例20 虹彩毛様体炎の治療
85才の女性で、右眼に虹彩毛様体炎が見られた患者に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を50μl 1滴朝8時に点眼した所、1週間後に軽快した(前房内の炎症細胞が消失した)。
実施例21 ポスナーシュロスマン症候群の治療
36才の女性で、左眼に虹彩炎と眼圧上昇(Tos=36mmHg)が見られポスナーシュロスマン症候群と診断された患者に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を50μl 1回1滴朝8時に1週間点眼した所、虹彩炎がなくなり、眼圧も正常化(Tos=17mmHg)した。
実施例22 中枢神経疾患治療
精神分裂病(統合失調症)と診断された80才の女性に、実施例7で用いた水溶性の17β−エストラジオール包接物を滅菌蒸留水に溶解して、17β−エストラジオール1mg/lの濃度の点眼剤を調製し、これを1日朝1回1滴(50μl)点眼した所、下記のように、視力改善と精神状態の改善が得られた。
開始時 Vd=0.1×IOL(0.3)
Vs=0.09×IOL(0.1)
↓ 1mg/l 朝1回1滴(50μl)点眼
14日後 Vd=0.1×IOL(0.4)
Vs=0.1×IOL(0.1)
よく見える様になったと本人が言った。
↓ 1mg/l 朝1回1滴(50μl)
42日後 Vd=0.15×IOL(0.4)
Vs=0.09×IOL(0.1)
元気が出て来たと本人が言った。
↓ 1mg/l 朝1回(50μl)
77日後 Vd=0.3×IOL(0.6)
Vs=0.1×IOL(0.15)
↓ 1mg/l 2回(50μl)
115日後 Vd=0.2×IOL(0.4)
Vs=0.09×IOL(0.2)
( )内は矯正視力を示す。
精神分裂症の患者治療に有効である事が確認された。他の中枢神経疾患治療、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、精神病、精神分裂症、精神統合失調症、そううつ病等の治療にも有効であると考えられる。
実施例23 網脈絡膜萎縮の治療
65才の男性の右眼に実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの点眼剤を1日1回50μlを1ヶ月投与したところ、視力(矯正不能)0.08(n・c)が矯正視力0.2に改善し、70才の女性の左眼に上記点眼剤を1日1回1滴(50μl)を1ヶ月投与したところ、矯正視力0.1が矯正視力0.3に改善した。
実施例24 糖尿病性網膜症の治療
糖尿病性網膜症を有する74才の女性患者に、実施例11で調製した17β−エストラジオール1mg/lの点眼剤を毎日1日1回1滴(50μl)を点眼投与した。投与開始から約2ヶ月後に眼底写真により眼底の斑状出血を観察したところ、やや改善されていた。投与開始から約100日後には、眼底の斑状出血が治った。
実施例25 黄斑円孔の治療
黄斑円孔をおこしかけており、視力が0.7の76才の女性の左眼に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール含有点眼剤(10mg/l)の1滴(50μl)を1日2回、1ヶ月間点眼し続けたところ、黄斑円孔が治癒し、視力が1.2に回復した。
実施例26 動体視力の改善効果

の60才の男性の左眼に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール点眼剤(10μg/mlの17β−エストラジオール濃度)50μl(1滴)を1回点眼し、動体視力の測定をニデック動体視力計KV−100を用い行った。30分から1時間15分の間で動体視力が急激に改善した。(図31)
実施例27 角膜内皮細胞の再生保護
コンタクトレンズ装用のため、内皮細胞が脱落減少した30才の女性患者に実施例11で調製した17β−エストラジオール(1mg/l)点眼剤1滴(50μl)を点眼した所10日間(1日1回点眼)で改善した。
右眼内皮細胞数(mm当り)2801→3412
左眼内皮細胞数(mm当り)2906→3496
測定器はNONCON ROBO(KONAN INC)スペキュラーマイクロスコープを用いた。
実施例28 光視症の改善
光視症を訴えた62才の女性に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール点眼剤(17β−エストラジオール濃度10mg/l(10μg/ml))を1日1回1滴(50μl)を3週間点眼した所症状が改善した。
実施例29 流行性角結膜炎の治療
流行性角結膜炎に罹患した26才の女性に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール点眼剤(17β−エストラジオール濃度1mg/l)を1日1回1滴(50μl)投与した所、眼脂は増加したがビラン性表層角膜炎は4日目に治癒した。
実施例30 眼精疲労の治療
コンピューター入力で目の疲労を訴えていた30才の男性に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール点眼剤(17β−エストラジオール濃度10mg/l)を1日1回(50μl)投与した所、3週間で眼精疲労が改善した。
実施例31 中心性網脈絡膜炎の治療
左眼に視力低下があり中心性網脈絡膜炎がある18才の男性患者に、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン包接17β−エストラジオール(10mg/l)の点眼液の1滴(50μl)を1日2回点眼したところ、1週間で視力が改善し、黄斑の浮腫も軽減した。

【産業上の利用可能性】
本発明によれば、HRTの問題点である副作用の問題を克服し、治療効果の高い緑内障や白内障等の眼疾患や中枢神経疾患又は精神病の治療剤の提供が可能となる。
また、本発明によれば、効果の持続期間が長く、一日1回または2〜3日に1回の点眼回数ですむ、緑内障、白内障、眼底疾患等の眼疾患の治療剤が提供できる。眼圧を低下させるとともに、特に顕著に視野狭窄を改善することができるので、高眼圧の緑内障だけでなく、今まで治療法がなかった正常眼圧緑内障の治療も特に効果的に行える。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】

【図28】

【図29】

【図30】

【図31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲンを含有する、眼に適用する疾患治療剤。
【請求項2】
性ステロイドホルモンがエストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、アンドロゲン並びにそれらの誘導体及び代謝物からなる群から選択される請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
性ステロイドホルモンが17β−エストラジオールまたはその誘導体若しくは代謝物である請求項1または2に記載の治療剤。
【請求項4】
性ステロイドホルモンが水可溶化された性ステロイドホルモンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項5】
性ステロイドホルモンが環状デキストリンにより包接された性ステロイドホルモンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項6】
性ステロイドホルモンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホニル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、により包接された性ステロイドホルモンである請求項1〜5のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項7】
性ステロイドホルモンが2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンにより包接された性ステロイドホルモンである請求項1〜6のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項8】
エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホニル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンにより包接されて水可溶化されている請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
点眼剤、洗眼剤、軟膏、結膜注射剤またはコンタクトレンズ吸着剤の形態にある請求項1〜8のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項10】
疾患が緑内障、高眼圧緑内障、正常眼圧緑内障、中心性網脈絡膜炎、老人性黄斑変性症、黄斑円孔、白内障、老人性白内障、眼底出血、網膜中心動脈閉塞症、眼底動脈硬化症、光視症、糖尿病性網膜症、網脈絡膜萎縮、網脈絡膜血管新生病変、卵巣除去による白内障、TGFβによる白内障、黄斑線維増殖症、黄斑上膜、網膜裂孔,網膜剥離、増殖性網膜症、網膜色素変性症、角膜炎、角膜混濁、角膜ビラン、角膜上皮剥離、角膜潰瘍、角膜内皮細胞変性や脱落、角膜変性症、流行性角結膜炎、霰粒腫、虹彩炎、ぶどう膜炎、自己免疫疾患、網脈絡膜炎、虹彩毛様体炎、眼精疲労、各種疾患による視野狭窄、視神経萎縮、視神経炎、(前部)虚血性視神経症、動体視力低下、色覚異常、老眼、近視、遠視および乱視並びに中枢神経疾患、精神病、ヒステリー、脳下垂体異常およびホルモンのアンバランスによる疾患、遺伝子異常による疾患並びに免疫異常による疾患からなる群から選択される請求項1〜9のいずれか1項に記載の治療剤。
【請求項11】
眼に適用する疾患治療剤の製造における、有効成分としての性ステロイドホルモン、エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲンの使用。
【請求項12】
性ステロイドホルモンがエストロゲン、テストステロン、プロゲステロン、アンドロゲン並びにそれらの誘導体及び代謝物からなる群から選択される請求項11に記載の使用。
【請求項13】
性ステロイドホルモンが、17β−エストラジオールまたはその誘導体若しくは代謝物である請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
性ステロイドホルモンが水可溶化された性ステロイドホルモンである請求項11〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
性ステロイドホルモンが環状デキストリンにより包接された性ステロイドホルモンである請求項11〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
性ステロイドホルモンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホニル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリンにより包接された性ステロイドホルモンである請求項11〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
性ステロイドホルモンが2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンにより包接された性ステロイドホルモンである請求項11〜16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
エストロゲン作用を有する物質またはセレクティブエストロゲンレセプターモジュレーター又はノンフェミナイジングエストロゲンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシエチル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホニル−β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、δ−シクロデキストリン、又はヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンにより包接されて水可溶化されている請求項11に記載の使用。
【請求項19】
疾患が緑内障、高眼圧緑内障、正常眼圧緑内障、中心性網脈絡膜炎、老人性黄斑変性症、黄斑円孔、白内障、老人性白内障、眼底出血、網膜中心動脈閉塞症、眼底動脈硬化症、光視症、糖尿病性網膜症、網脈絡膜萎縮、網脈絡膜血管新生病変、卵巣除去による白内障、TGFβによる白内障、黄斑線維増殖症、黄斑上膜、網膜裂孔,網膜剥離、増殖性網膜症、網膜色素変性症、角膜炎、角膜混濁、角膜ビラン、角膜上皮剥離、角膜潰瘍、角膜内皮細胞変性や脱落、角膜変性症、流行性角結膜炎、霰粒腫、虹彩炎、ぶどう膜炎、自己免疫疾患、網脈絡膜炎、虹彩毛様体炎、眼精疲労、各種疾患による視野狭窄、視神経萎縮、視神経炎、(前部)虚血性視神経症、動体視力低下、色覚異常、老眼、近視、遠視および乱視並びに中枢神経疾患、精神病、ヒステリー、脳下垂体異常およびホルモンのアンバランスによる疾患、遺伝子異常による疾患並びに免疫異常による疾患からなる群から選択される請求項11〜18のいずれか1項に記載の使用。

【国際公開番号】WO2004/091630
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【発行日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505476(P2005−505476)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005479
【国際出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【出願人】(599081820)株式会社最先端医学研究所 (6)
【Fターム(参考)】