眼用器具及び関連した方法及び組成物
視力を向上させ、眼の疾患、病気、または損傷を治療するための器具、方法及び組成物が記述される。角膜オンレイ、角膜インレイ, 及び十分な厚さの角膜埋込み片などの眼用器具は、器具を貫通したまたは器具上の神経成長を促進するのに効果のある材質で作られる。材質は、約10%(w/w)から約30%(w/w)の間というように、1%(w/w)より多い量のコラーゲンを含み得る。材質は、EDC/NHS化学反応を利用して架橋されたコラーゲン重合体及び/または第二の生体高分子または水溶性合成高分子を含み得る。材質はさらに、合成高分子を有し得る。器具は、個人の視力を補正するまたは向上させるため、または個人の眼の疾患、病気または損傷を治療するために、眼の中に装着される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年8月13日付申請の米国仮出願No. 60/601,270の利点を主張し、その全ての内容は、ここに、参照することにより本書に援用される。
【0002】
本発明は、個人の視力を向上させるための、あるいは個人の眼の外傷または眼疾患や眼病を治療するための器具、方法及び組成物に関係する。特に、本発明は、一つ以上の効用を個人にもたらす材質でできている角膜オンレイ、角膜インレイ、及び角膜埋込み片に関係する。
【背景技術】
【0003】
米国特許No. 5,713,957は、微生物で分解できない、非ヒドロゲルの、眼に対して生体適合性のある材質からなる角膜オンレイであり、10,000ダルトンより大きい分子液体重量をもつ組織液成分がオンレイを透過できるように十分な多孔性を有する角膜オンレイを開示している。
【0004】
米国特許No. 5,716,633は、上皮細胞の成長とストロマの再生を促進するためのコラーゲン/PHEMA−ヒドロゲル開示している。このコラーゲン−ヒドロゲルは、ボウマン膜に付着させる光学レンズとして提供可能であり、レンズの前面上の上皮細胞の成長または角膜上皮の付着を促進し、担持するのに効果がある。当該コラーゲン−ヒドロゲルは、コラーゲンを定着させるための三次元メッシュワークを形成するように、コラーゲンの水溶原液の存在下でゲル化し架橋された親水性単量体溶液の遊離基重合によって形成されたヒドロゲル重合体である。オンレイ中のコラーゲンの最終的な濃度は、約0.3%から約0.5%(wt/wt)である。
【0005】
米国特許No. 5,836,313は、埋込み可能な合成物の人工角膜を形成する方法を開示している。この方法は、角膜上皮細胞の成長に適するマトリックスとなるように設計された人工角膜を提供する。当該人工角膜は、角膜組織を角膜埋込み片の形状をもつ成形型の中に入れて、人工角膜を形成するように約50〜100ミクロンの間の厚さをもつ生体適合性のあるヒドロゲルを角膜組織に化学結合させるように高分子溶液を架橋することによって形成される。あるいは、高分子溶液を角膜組織と予成形されたヒドロゲルの間に入れ、高分子溶液がヒドロゲルと角膜組織の両方と結合するように重合させる。
【0006】
米国特許No. 6,454,800は、組織細胞の付着と成長を担持する複数のくぼみをもつ表面を有する角膜オンレイまたは角膜埋込み片を開示している。
【0007】
米国特許No. 6,689,165は、係留角膜エンハンサー物質を使用して角膜上皮細胞の接着と転移を増加する、角膜増大及び置換えのための人工器具を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存のコラーゲンを基にした材質に関わるある種の問題は、コラーゲンを基にした材質は光学的に透明ではないことであり、これは繊維質を基にした材質の形成または同材質への変換によるものとみられ、望ましくない光散乱を引き起こす。
したがって、個人の視力を向上させるために、生体適合性があり、眼用に許容でき、かつ眼の中に置いておくことに適する材質がまだ必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
眼用器具は、器具を個人の眼の中に装着したとき、器具本体を貫通したまたは本体上での神経の成長を促進するのに効果のある組成物を含む本体を有する。ある実施形態では、器具は視力を向上させる眼用器具である。代替の実施形態では、器具は治療用の眼用器具である。当該の視力を向上させる器具は、一つまたは複数の屈折誤差を補正するように構成されている器具であると理解することができる。言い換えれば、本器具は屈折誤差を補正する器具であると理解することができる。本器具の本体は、屈折力を有するように形成することができる。
【0010】
本発明の組成物は、光学的に透明であり、約1%(w/vまたはw/w)から約50%(w/vまたはw/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、コラーゲンの量は2.5%(w/wまたはw/v)より多い。本明細書において使用される限りでは、組成物及び器具のコラーゲン及び/またはその他の構成成分の量は、発明の精神から逸脱しない範囲でw/wまたはw/v パーセントのどちらかであると理解するものとする。さらなる実施形態では、コラーゲンの量は約5.0%より多い。例えば、当該材質は約10%から約30%の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、当該材質は約1%から約50%の間のある量の架橋コラーゲンを有し得る、この場合、コラーゲンは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC; CAS # 1892-57-5)及びN−ヒドロキシスクシンイミドを使用して架橋される。さらに別の実施形態では、架橋コラーゲンの量は約2.5%から約50%の間にある。当該材質は、第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有し得る。ある実施形態では、本明細書に開示された眼用器具は、グルタルアルデヒドを用いずに製造される。例えば、眼用器具は、その製造において架橋剤としてグルタルアルデヒドを利用しない。グルタルアルデヒド及び/または本組成物及び器具に対する取扱い及び安全要件によって、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用するのは望ましくないか、または好ましくないと判断され得る。ある実施形態では、眼用器具は、細胞毒性成分を用いずに製造される、すなわち、細胞毒性を減弱した成分を使用して製造される。
【0011】
上記の器具は、個人の生来の角膜に取って代わるように構成された器具等としての角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの角膜埋込み片であり得る。本器具は透明であり、組成物が器具に成形される前に透明である組成物から作ることができる。
上記器具の材質は、一つ以上の細胞成長エンハンサー物質または一つ以上の追加の生体高分子をも有し得る。
【0012】
本明細書での開示による、屈折誤差を補正する器具等としての眼用器具の製造方法は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミド(EDC及びNHS)を使用してコラーゲン重合体を架橋することを含んでなる。この架橋は、約5.0〜約5.5のpHほどの酸性pHで生じる。当該方法は、細胞成長エンハンサー物質を架橋組成物に添加する一つ以上のステップをさらに含んでなる。当該方法は、成形型中に組成物を入れることと、眼用器具を形成するように組成物を硬化させることを含んでなる。
【0013】
本明細書に記述されるいずれの特徴または特徴のいずれの組合せも、いずれかの同組合せに含まれた特徴が、文脈、本仕様書、及び当該技術分野における当業者の知識から明白になるように、互いに矛盾していない限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、いずれの特徴または特徴のいずれの組合せも、本発明のいずれかの実施形態から特に除外されることもあり得る。
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の詳細な説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
典型的な人の眼は水晶体と虹彩を有する。後房が虹彩の後ろに位置し、前房が虹彩の前に位置する。眼は、本明細書で論じるところの五つの層からなる角膜を有する。これらの層のうちの一つ、角膜上皮は角膜の前方の外表面の裏側を覆う。角膜上皮は、縁部まで横に拡がる層をなした扁平な上皮である。
【0015】
角膜の五つの層は、角膜上皮、ボウマン膜、ストロマ、デスメ膜、及び内皮を含む。角膜上皮は、通常、約5〜6細胞層の厚さ(約50マイクロメータの厚さ)があり、一般に、角膜が傷づくと再生する。角膜上皮は、比較的平滑な屈折面を形成し、眼の感染を防ぐのを助ける。角膜ストロマは、そこに分散した線維芽細胞や角膜ストロマ細胞などの細胞を含むコラーゲンの層状構成物である。ストロマが、角膜の厚さのおよそ90%を占める。上皮の下にあるストロマの前方の部分は無細胞であり、ボウマン膜として知られている。ボウマン膜は上皮とストロマの間に位置し、角膜を損傷から保護すると考えられている。角膜内皮は、通常、角膜から水分を取り除くことによって角膜を脱水する、低い立方形のまたはうろこ状の細胞の単分子層である。成人の角膜は、一般的に、約500 μm(0.5 mm)の厚さであり、通常、血管をもたない。
【0016】
視力の向上または改善を望む人や、眼の疾患、病気または外傷の治療を必要とする人などの個人に一つ以上の効用をもたらす眼用器具が発明された。本明細書で説明する器具は、角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの角膜埋込み片として構成することができる。本器具は、視力が減弱した個人の視力を向上させたり、視力のない個人に視力を与えたりすることができる。ここに説明する器具は、眼内レンズを特に除外する。
【0017】
本明細書で使用される「光学的に透明な」とは、少なくとも85%の白色光透過率を意味する。ある実施形態では、「光学的に透明な」とは、例えば、90%を超える白色光透過率と3%未満の散乱をもつような健全な角膜の透明度と同等の光学的透明度を意味している。
【0018】
本明細書で使用される「角膜オンレイ」は、人間の眼または動物の眼などの個人の眼の上皮または上皮細胞層とボウマン膜の間にはめられるように、サイズと形状を適合させて構成された眼用埋込み片または器具である。比較として、コンタクトレンズは、眼の上皮を覆う形ではめられるように構成される。角膜オンレイは、したがって、ボウマン膜を完全に覆うように置かれるか、またはボウマン膜内まで延びる一つ以上の部分を含むこともある。同部分は、例えば、器具の面積または体積の50%未満の器具の非主要部分をなす。
【0019】
本明細書で使用される「角膜インレイ」は、眼のストロマ内へ置かれるように構成された器具または埋込み片である。角膜インレイ は、フラップ(折りぶた)またはポケットをストロマ内に形成することによって取り付けることができる。角膜インレイは、眼のボウマン膜の下に取り付けられる。
【0020】
本明細書で使用される「十分な厚さの埋込み片」は、眼の房水の前に位置する眼の不健康な角膜の全部または一部に取って代わるように構成される器具を意味する。
【0021】
本眼用器具は、細胞毒性を減弱させているか、または細胞毒性はなく、器具を装着される個人に一つ以上の効用をもたらす。例えば、器具は次にあげることの一つ以上をもたらす。(i)所望の屈折率、(ii)所望の光学的透明度(例えば、同程度の厚さをもつ健康な人の角膜構成物質のそれと同等かそれ以上によい可視光、光透過率及び光散乱)、(iii)視力を向上させる屈折力などの所望の屈折力、(iv)心地よさの向上、(v)角膜及び上皮の健康の向上、及び(vi)例えば、眼の疾患、病気または外傷の治療における治癒効果。本眼用器具は透明であるか、または透明な材質で形成される。同器具のいくつかの例は、光学的に透明である器具を含む。
【0022】
上記の効用等は、(i)許容できる屈折力をもつマトリックスを形成するようにモールド成形などで成形できる、(ii)光学的に透明または視覚的に透明である、及び(iii)器具を貫通して及び/または器具上に神経が成長するのを促進するのに効果がある材質で器具を形成することにより得ることができる。器具が角膜オンレイである場合、器具の前面上での再上皮化を促進するのに器具は効果がある。
【0023】
器具は、縫合や装着後の磨耗や引き裂けを含み得る取扱いや移植に耐えるのに十分な機械的または構造的特性をもつ材質で形成される。器具は、健康な眼を促進するために十分な栄養素や気体の交換を提供するまたは許す。角膜オンレイなどのモールド中で製造される器具は、本明細書で論じるところのエッジ傾度や視力補正曲率を含む適切なサイズと形状にモールド成形できる材質で形成される。
【0024】
本発明の一つの実施形態では、視力を向上させる眼用器具は、器具を個人の眼の中に装着したとき、器具本体を貫通して神経が成長するのを促進するのに効果のある材質を含む本体を有する。本体を貫通した神経成長を促進することによって、器具を受け入れる個人の角膜はその接触感度を維持する。本体は屈折力をもつように形成される。したがって、本体はある種の水晶体として理解することができる。本明細書で論じるように、器具は、角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの埋込み片となるように、サイズと形状を適合させるなどして構成することができる。ある実施形態では、屈折誤差を補正する本器具は屈折力をもたなくてもよい。例えば、本開示による屈折誤差を補正する器具は、患者の角膜上皮とボウマン膜の間、または患者の角膜ストロマ内に装着することができるブランクであると理解してもよい。
【0025】
角膜オンレイの場合、オンレイを製造する材質は、十分に機能する生存上皮を維持するために、ボウマン膜と上皮の間での気体及びブドウ糖などの栄養素の交換を提供するか、また許容する。その他の栄養素は、上皮細胞などの細胞の生存、成長及び分化を促進または強化する因子または作用物質を含む。交換は、健康な人の角膜のそれと同等かそれ以上によいものとする。栄養素及び/または薬品に対する材質の浸透性は、従来の技術を用いてモニターすることができる。さらに、栄養素及び/または薬品の材質中の移動は、材質の光学的特性を変化させないものとする。オンレイまたは水晶体は、十分に生体適合性があり、オンレイへの迅速な上皮の接着を可能にするとともに、例えば、接触感度などの神経支配と感度の回復を許す。
【0026】
本眼用器具は、細胞外マトリックス(ECM)成分を有してもよい。ある器具では、本体の材質は主としてコラーゲンからなるか、またはコラーゲンからなる。器具の製造において、例えば、EDC/NHSを使用してコラーゲンを架橋してもよい。本ヒドロゲル器具で提供されるコラーゲンの量は、現在使用されているその他の眼用器具における量よりも多い。例えば、本器具で提供されるコラーゲンの量は、本明細書で論じるように、典型的に1%(w/w)または(w/v)より多い。ある実施形態では、コラーゲンの量は、2.5%より多い。例えば、コラーゲンの量を約5.0%以上とすることができる。ある実施形態では、コラーゲンの量は、2.5%から約50%の間というように、約1%(w/w)から約50%(w/w)の間にある。例えば、コラーゲンの量は、6%(w/w)よりも多い。あるいは、当該材質は、約10%(w/w)から約30%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有してもよい。当該技術分野における当業者には周知のことだが、水和した人の角膜のおよそ15 wt%はコラーゲンである(Maurice D M: The Cornea and Sclera, pp489-600. The Eye, Vol I, Second ed., Ed. H Davson. Academic Press, New York, 1969)。したがって、当器具は、既存の眼用器具よりも多い量で、しかも人の角膜に存在するコラーゲンの量にずっと近くなった同等のコラーゲンの量を含む。さらに、本器具で提供されるようなコラーゲンの量は、所望の屈折率、所望の光学的透明度、成形性を提供する上で、また器具を眼に装着する際の取扱い、移植、縫合と装着後の磨耗や引き裂きを許容する上でも効果的である。
【0027】
非コラーゲン系の部分など眼用器具の残りの部分は、水または生理塩水のような液体としてもよいし、または生体高分子などの一つ以上の追加の重合体を含んでもよい。例えば、本明細書で開示した約24%のコラーゲンを有する眼用器具は、水または生理塩水などの約76%(w/w)の液体を含み得る。言い換えれば、水和状態で、当該眼用器具は、水和した眼用器具の重量の24%のコラーゲン成分を有し得る。別の例として、眼用器具は、水和した器具の重量の24%を占めるコラーゲン成分と水和した器具の重量の6%を占める第二の重合体成分を有してもよく、重量の70%が液体である。
当業者には周知のことだが、未水和状態では、器具中のコラーゲンの量は水和状態よりも多いパーセント率となり得る。
【0028】
コラーゲンは、3個のポリペプチド鎖からなり、その構造はらせん状である。本明細書で使用される「コラーゲン重合体」という用語は、三重らせん状のコラーゲン分子を意味するものとする。コラーゲンは、長さと直径がそれぞれ約300 nmと約1.5 nmである棒状分子である。コラーゲン分子は、コラーゲンの抗原性の大部分を含むそのN末端とC末端の両方に「テロペプチド」と呼ばれるアミノ酸配列をもつ。アテロコラーゲンがペプシン消化によって得られるが [DeLustro et al., J Biomed Mater Res. 1986 Jan;20(1):109-20]、これはテロペプチドがなく、低免疫原性であることを示す[Stenzel et al., Annu Rev Biophys Bioeng. 1974;3(0):231-53]。
【0029】
上に特定した器具で使用されるコラーゲンは、動物、酵母、及びバクテリア源を含むいずれかの適当なコラーゲン源から取得または抽出することができる。例えば、コラーゲンは、特に、人のコラーゲン、 ウシ属のコラーゲン、豚のコラーゲン、鳥のコラーゲン、ネズミ科のコラーゲン、ウマ科のコラーゲンが利用可能である。またはコラーゲンは組み換えコラーゲンであってもよい。組み換えコラーゲンはバクテリア、酵母、植物または形質転換動物から得られるので、本器具における組み換えコラーゲンは、通常の動物源から得たコラーゲンには存在しない一つ以上の構造的または物理的特徴を含み得る。例えば、組み換えの人のコラーゲンは、動物から抽出し処理したコラーゲンには存在し得ない様々な糖鎖付加成分を含み得る。さらに、組み換えコラーゲンは、多様な組成物からなり得る動物由来のコラーゲンと比べて異なる程度の架橋を有し得る。動物由来のコラーゲンでは架橋の程度にばらつきがあり、その結果、整合性が取れなかったり、望ましくないコラーゲンの化学的物理的特性のばらつきが生じ得る。厳密に制御された純度はもちろんのこと、組み換えの人のコラーゲンは、動物由来のコラーゲンには関係することがあるウイルスによる及び/またはプリオンの汚染に関わることはない。本器具において有用なコラーゲンは公に入手可能であり、従来の技術を使用して合成することができる。 例えば、組み換えコラーゲンは、Fibrogen(多重遺伝子酵母バイオリアクター培養から)またはPharming(オランダ)(遺伝子組み換え乳牛またはウサギのミルクから)調達できる。コラーゲンは、PCT公報No. WO 93/07889またはWO 94/16570に開示された方法を用いて調製し、調達できる。ある器具では、コラーゲンはタイプIのコラーゲンである。同器具はまた、アテロコラーゲン(例えば、テロペプチドをもたないコラーゲン)で作られてもよい。ある実施形態では、コラーゲンは非変性型のコラーゲンである。アテロコラーゲンは、例えば、高研、日本(本明細書では供給者Aとする)といった会社から調達することができ、ここではウシ属のコラーゲンが中性組成で3.5%(w/v)、酸性組成で3.0%(w/v)、酸性組成で10%(w/v)として入手可能であり、また豚のコラーゲンが酸性組成で3.0%(w/v)として、または酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲン粉末として入手可能である。酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲン粉末はまた、日本ハム(日本)(本明細書では供給者Bとする)からも調達することがでる。Becton Dickinson(本明細書では供給者Cとする)は、0.3%の酸性の及び10%の酸性のコラーゲン組成物を提供する。
【0030】
数種類のコラーゲンのうち、アテロコラーゲンIは、溶解、取扱いのしやすさと最終的な器具での透明度を提供する。このコラーゲン(中性または酸性のどちらかの溶液中の、または酸性の凍結乾燥粉末としての、ウシ属、豚、または組み換えコラーゲン)は、上記した数社から入手可能である。凍結乾燥した酸性の豚のコラーゲンは容易に溶解し、4°Cで撹拌することにより、33%(w/v)の濃度までの均質な(非乳白色の)水溶液が得られる。溶液などのこれらの透明なコラーゲン組成物のpHは、およそ3(供給者B)またはおよそ5(供給者A)である。0.3%(w/v)ほどの低濃度の市販の酸性のコラーゲン組成物を0°C〜4°Cで撹拌しながら真空蒸発することにより、約10%(w/v)の最終コラーゲン濃度までの透明な溶液を得るように濃縮することができ、この濃縮溶液を本発明の製造に使用してもよい。
【0031】
分離及び精製中に変性(すなわち、その三重らせん構成の全部または実質的な部分を損失してゼラチンになること)がなかったコラーゲン・タイプIを使用して、比較的強靭なまたはじょうぶな眼用器具得ることができる。
【0032】
示差走査熱量測定法(DSC)は、三重らせんの含有率に基づいて、供給者のコラーゲンの溶液の質を判定するために有効なツールである(表1)。完全に近い三重らせん含有率では、変性のDSCエンタルピー(ΔHdenature)は、65〜70 J/gの範囲にある(乾燥コラーゲン重量に基づく)。DSCデータ(ΔHdenature)から、結果は、市販の酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲンからの溶液と市販のウシ属のコラーゲン溶液のいくつかは、十分な三重らせん形態であることを示す。
【0033】
低い三重らせん含有率のコラーゲン溶液(ΔHdenature < 5 J/g、供給者C、表1)は、比較的低い粘性をもち、100%の三重らせん含有率に近いコラーゲンからの同濃度の組成物または溶液に比べて弱いゲルを示す。ΔHdenature > 60 J/gのコラーゲン組成物(溶液)は、許容できる眼用器具を製造することがわかった。
【0034】
【表1】
【0035】
前述のものを含むある実施形態では、本体の材質は架橋されるコラーゲン重合体を有してもよい。あるいは、別の言い方をすれば、本体の材質は二つ以上の架橋されたコラーゲン重合体を有してもよい。例えば、本体の材質は、第一のコラーゲン重合体、第二のコラーゲン重合体、及び第三のコラーゲン重合体を含み得る。その他の材質は、4個以上のコラーゲン重合体を含み得る。架橋された重合体は、眼用器具のコラーゲン成分であると理解することができる。
【0036】
したがって、本発明による視力を向上させる眼用器具は、屈折力を持つように形成された、約1%(w/w)から約50%(w/w)の間のある量のコラーゲンをもつコラーゲン成分を有する。本明細書で論じるように、ある実施形態では、少なくとも約5.0%というように、コラーゲンの量は2.5%より多い。例えば、ある実施形態では、コラーゲンは約6%(w/w)より多い。例えば、コラーゲンの量は、約10% (w/w)から約30%(w/w)の間にある。例えば、コラーゲンの量は、約10% (w/w)から約24%(w/w)の間としてもよい。ある器具では、コラーゲンは、器具の唯一の水膨潤性の(例えば、ヒドロゲル)重合体である。ほかの器具では、コラーゲンは唯一の器具または水晶体形成重合体としてもよい。例えば、器具は乾燥状態の100%のコラーゲンを有することもあり得る。前述したように、ある器具では、コラーゲンは、例えば、EDC/NHSを使用して架橋されてもよい、または少なくとも一部が架橋されてもよい。
【0037】
本発明の組成物及び器具を製造するのに使用されるコラーゲン重合体は、同じコラーゲン源または異なるコラーゲン源から得てもよい。あるいは、別の言い方をすれば、単一の種類のコラーゲン、例えば、アテロコラーゲン・タイプI(これは複数のコラーゲン重合体鎖を含む)は、コラーゲン重合体が互いに架橋するために効果的な方法で処理される。一つの実施形態では、コラーゲン重合体は組み換えコラーゲンである。ほかの実施形態では、両方のコラーゲン重合体は同じ動物源から得られる。単一の組成物中のそれぞれのコラーゲン重合体は異なる分子量をもつことができる。
【0038】
屈折誤差を補正する本器具は架橋された組み換えコラーゲンを有すると理解してよい。同器具に存在するコラーゲンの量は、これ以前に開示された他の、コラーゲンを基にした屈折誤差を補正する器具で見られた量よりも多い。屈折力をもつように同器具を形成することができる。
【0039】
本明細書に開示された器具は透明である。例えば、器具は光学的に透明であるものとする。例えば、器具を個人の眼の中に装着時に、器具は光散乱を最小に抑える(健康な人間の角膜組織と同等かそれ以上によい)ものとする。さらに、本明細書に開示された器具は屈折率をもつ。ある実施形態では、屈折率は約1.34から約1.37の間にある。例えば、屈折率は、1.341から1.349の間としてもよい。器具が角膜オンレイまたは角膜インレイとして構成される場合、角膜が損傷されたり、罹患したりして十分な厚さの埋込み片が必要になるような場合の眼に比べて、器具は個人の健康な眼の中に取り付けられるように構成される。ある実施形態では、器具は黄色の色合いまたは黄色そのものをもたない。例えば、器具は、ある種のコラーゲン含有組成物に関わりをもつ可能性がある黄色の色合いまたは黄色そのものを減少または除去するように設計されてもよい。
【0040】
本器具は前面と後面を有する。したがって、器具の本体またはコラーゲン成分は前面と後面を有し得る。前面と後面は、一般に、対抗する面である。器具の前面は、器具を眼に装着時に網膜から離れる方向に向く面をさし、後面は器具を眼に装着時に網膜側を向く。器具が角膜オンレイである場合、後面はボウマン膜に隣接することになり、接触する場合もある。前面は角膜上皮に隣接することなり、接触する場合もある。器具が角膜インレイである場合、前面はボウマン膜に隣接するか, ボウマン膜側を向き、後面は眼の網膜側を向きストロマの中にある。器具が十分な厚さの埋込み片である場合、前面は角膜上皮の側を向き、後面は角膜内皮に隣接しており、接触する場合もある。
【0041】
本器具は、付加的な表面改質を含まないこともあり、または前面と後面のいずれか一方または両方での細胞成長及び/または分化に影響する表面改質を含むこともある。例えば、角膜オンレイは、前面または後面上の細胞成長に影響する表面改質を含まなくてもよい。本明細書で使用される「細胞成長」は、細胞または細胞の集団の拡張を意味する。したがって、健康な人の角膜で見られるように、細胞成長は、表面面積、体積などの増加といった個別の細胞の物理的成長、細胞の分裂などの一つまたは複数の細胞の増殖、及び細胞の転移、ある場合には層をなす多層構造の形成を意味する。細胞成長は、器具上の、器具の下側のまたは器具を貫通した一つ以上の神経突起の拡張などの神経細胞の成長を意味し、さらに器具の表面上での上皮細胞または内皮細胞の成長または転移または増殖を意味する。本明細書で使用される「細胞分化」は、全能性の、多能性のまたは未熟の前駆細胞(幹細胞を含む)の単体または集団がその最終的な表現型を達成するために受ける形態学的、生化学的及び生理学的な変化を意味する。本器具のある実施形態では、上皮細胞は角膜オンレイ上で成長し、そこに密着結合される、例えば、オンレイに、特にオンレイの前面に直接付着される。
【0042】
ある角膜オンレイでは、本体またはコラーゲン成分は、器具を個人の眼の中に装着時に、オンレイの下側の上皮細胞の成長を減少させるのに効果がある後面表面改質を含む。さらに、または代替的に、角膜オンレイは、器具を個人の眼の中に装着時に、オンレイの前面上の転移を含む上皮細胞の成長を促進するのに効果がある前面表面改質を含む本体またはコラーゲン成分を含んでもよい。関連して、十分な厚さの角膜埋込み片は、埋込み片を眼に装着時に、十分な厚さの角膜埋込み片の後面上の内皮細胞成長を減少させるのに効果がある後面表面改質を含む本体またはコラーゲン成分を含んでもよい。十分な厚さの角膜埋込み片は、前面表面改質を含まなくてもよい。
【0043】
細胞成長を減少させ得る表面改質の例は、 前面及び後面の一方または両方にCF4またはC3F8などのプラズマ重合したフッ素化単量体膜を形成すること、これらの面の一方または両方に低い自由表面エネルギーを与えること、及び/またはこれらの面の一方または両方を親水性にすることを含む。これらの表面は、アルギン酸塩コーティングを表面上に施すことにより親水性にすることができる
【0044】
器具は、器具上のまたは器具を貫通した細胞成長を促進する一つ以上の細胞成長エンハンサー物質を含んでもよい。ある実施形態では、細胞成長エンハンサー物質はペプチドからなる。例えば、細胞成長エンハンサー物質は、RGD、YIGSR、またはIKVAVを含むアミノ酸配列をもつペプチドとしてもよい。コラーゲンI自体は、RGD配列の豊富な源である。ある実施形態では、細胞成長エンハンサー物質は、神経栄養因子またはその分子の生体活性または神経栄養部分である。例えば、神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、上皮細胞増殖因子(EGFまたはHB−EGF)または塩基性線維芽細胞成長因子(bFGFまたはFGF−2)であり得る。細胞成長エンハンサー物質は、器具のコラーゲン成分または本体と共に一体的に形成されてもよいし、または言い換えれば、細胞成長エンハンサー物質は実質的に器具の至るところで提供されてもよい。比較として、ある種の眼用器具は器具の一つの表面で提供されるペプチドのみを含む。
【0045】
ある実施形態では、コラーゲンを基にした眼用器具は、器具の製造中にある酸性pH値に処理されたコラーゲン成分を有する。酸性pHは、コラーゲン成分が第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有する場合、特に有効である。同器具の製造中に使用される酸性pH値は、典型的には、約6.0未満であり、例えば、pH値は約5.0から約5.5の間にしてもよい。酸性pH値を維持し、pHの調整中のpHサージを防止または低減することにより、コラーゲンの線維形成が減少される。さらに、pH値を約5.0以上に維持することにより、コラーゲンはpH値が5.0未満の場合ほど急速に分解することはない。
【0046】
コラーゲン重合体は、いずれかの小さいまたは重合の、コラーゲン反応物質または分子を使用して架橋されてもよい。架橋化学反応は、当業者には常法である従来の方法または新規の試薬を用いることができる。コラーゲン重合体を架橋することによって、器具はその光学的透明度を維持し、生分解に耐えることができる。
【0047】
ある実施形態では、コラーゲン重合体は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC; CAS # 1892-57-5)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用して架橋される。言い換えれば、器具の製造に使用される架橋剤はEDC/NHSである。コラーゲン重合体とEDC/NHS架橋剤は、pHのサージを防止しながら、ある酸性pH値においていっしょに混合される。十分な混合の後、混合組成物をモールドの中に入れて、眼用器具を形成するようにモールド中で硬化させる。コラーゲンとCSCを架橋するために水溶性のEDC/NHS化学反応を利用する一つの利点は、これがゼロ長の(アミド)結合を起こすことである。これは、移植された毒性物質が組織中へ浸出する可能性を低減する。さらに、未反応の試薬及びEDC/NHS反応からの副産物は水溶性なので、ゲル形成後に容易に除去できる。
【0048】
ある実施形態では、コラーゲン重合体は、細胞毒性を減弱させた架橋剤または架橋作用物質を使用して架橋される。同架橋剤は、好適には、眼用器具を個人の眼の中へ装着時に刺激したりせず、または否定的な反応を引き起こさない。いくつかの実施形態では、架橋剤はグルタルアルデヒド以外の架橋剤である。グルタルアルデヒドはある実施形態では有効な架橋剤になり得るが、取扱い及び安全性の要請によりグルタルアルデヒドが好ましくないこともある。
【0049】
さらなる実施形態では、処理は、コラーゲン組成物と混合することができる成分として、次にあげる成分のうちの少なくとも一つを使用することをさらに含んでなる。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、エラスチン、キトサン、N,O−カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸アルデヒド、及びアルギン酸塩。したがって、眼用器具は、架橋されたコラーゲン重合体のマトリックスなどのコラーゲン成分と、生体高分子を含む、一つ以上の非コラーゲン重合体を有することができる。架橋重合体のネットワークまたはマトリックスを形成するように、非コラーゲン重合体どうしが架橋してもよいし、及び/または非コラーゲン重合体がコラーゲン重合体に架橋してもよい。
【0050】
ある実施形態では、異なる組成物間で高いせん断を生じさせるように、組成物どうしが比較的狭いチャネルまたは通路を通じて混合される。一つの実施形態では、組成物は注射器を基にしたシステムを使用して混合される。混合は、粘性のあるコラーゲン溶液と試薬との間で高いせん断を生じさせるように、狭いチャネルを通じた注射器のポンピングに左右される。チャネルの直径は、注射器またはその他の同等の器具の粘性と破裂強度に適合するように選択される。高い粘性(例えば、20〜30%(w/v)のコラーゲン溶液)に対しては、より高い圧力が手により得られるので、小さい直径の注射器プランジャをもつ小さい容積の注射器が使用される。酸性pHは、例えば約5.0から5.5の間で、温度は、例えば約0°Cから約5°Cの間に低下させて、混合する。
【0051】
ほかの眼用器具と比べて、本器具は生きている細胞を使用せずに製造される。したがって、本発明者は、生きている角膜細胞を使用せずに、比較的高い、ほぼ生理学的濃度のコラーゲンを有する組成物と眼用器具を製造する新しい方法を発明した。さらに、ほかの器具ではコラーゲンの交差反応性を増加するために使用されていた合成デンドリマー成分が、本器具では実質的にまたは完全にない。
【0052】
本器具の製造には、神経に適合する材質をさらに使用してもよい。このような材質は、本明細書に開示した方法を使用して製造し、細胞培養システムなどの当業者には常法である従来の方法を使用して、神経の成長などの神経適合性を試験することができる。例えば、2003年8月11日に提出されたWO 2004/015090に開示された方法を使用して、材質を試験し、特定できる。
【0053】
本明細書に開示された器具は、眼の角膜領域近辺の眼の中に取り付けられるように、サイズと形状を適合させるなどして構成される。器具が角膜オンレイである場合、約6 mmというような、約4 mmから約12 mmまでの直径をオンレイは有し得る。オンレイはまた、例えば、約10 μmから約30 μm の間といった、約30 μm未満のエッジ厚さを有し得る。オンレイはまた、約70 μm の中央厚さを有し得る。
【0054】
オンレイの形状にしたモールドは、ポリプロピレンから製造することができ、4 mm、6 mm、 8 mm、または 12 mmの直径を有し得る。モールドは比較的堅固であり(例えば、密閉時にたわまない)、充填物が見えるように透明であるものとする。モールドは、オンレイが微小テーパ状の(例えば、約10 μm)エッジになるように、または少し急角度な(例えば、約30 μm)エッジなるように構成される。
【0055】
角膜埋込み片のモールド(十分な厚さのある、または部分的に厚みのある)は、約12 mmの直径を有し得る。移植用のモールドは、角膜の所望の曲率と厚さに合わせて成形される。必要な場合、眼用器具(例えば、ヒドロゲル)を移植手順での要求に応じてトレフィンで切削することができる。
【0056】
屈折誤差を補正する本器具の一つの一例を図8及び図8Aに示す。
【0057】
本明細書で開示した角膜オンレイは、個人の眼の一つ以上の波面収差を補正するようにも構成することができる。波面の技術及び波面収差の測定の説明は、米国特許No. 6,086,204 (Magnate)及びWO 2004/028356 (Altmann)に記載されている。角膜オンレイは、オンレイに補正形状をもたせる所望の形状にモールドを成形することによって、波面収差を補正するように成形することができる。角膜オンレイに波面収差測定を利用する方法は、2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に開示されている。また、波面収差を補正するように、オンレイを切除してもよい。例えば、レーザまたはレーザと同様の装置、旋盤、及びその他の水晶体成形装置を使用して、オンレイを切除することができる。
【0058】
本明細書に開示した角膜オンレイはまた、複数の異なるゾーンを含むことができる。例えば、角膜オンレイは光学ゾーンと周縁ゾーンを含むことができる。典型的には、光学ゾーンは周縁ゾーンによってその境界を限定される、または言い換えれば、光学ゾーンは、大体、中心光軸などのオンレイの光軸のまわりの中央に位置し、周縁ゾーンは光学ゾーンの外縁と角膜オンレイの周縁の間に配置される。ほかにも追加のゾーンとオンレイ構成が、患者が被っている特定の視覚欠陥に応じてオンレイに提供し得る。
【0059】
さらに、本角膜オンレイは、視覚的または光学的に検出できる継ぎ目をもたない二つ以上のゾーンなどの継ぎ目のないゾーンをもつことができる。オンレイのこれらのゾーンは滑らかに連続することができ、オンレイは屈折誤差のみではなく、眼及び/または光学器具のその他の光学収差も独立にまたは屈折誤差の補正と合わせて補正するように、光学的に最適化することができる。当業者には周知のことだが、角膜オンレイは、近視、遠視、乱視、及び老視を含むがこれらに限定されない視覚欠陥を補正するように構成することができる。オンレイは、眼のストロマに組み付けられた光学的手段または物理的手段のどちらかによって、またはこれらの組み合わせによって、視覚欠陥を向上または改善することができる。したがって、角膜オンレイは、単焦点水晶体、または二焦点水晶体を含むがこれに限定されない多焦点水晶体であり得る。
【0060】
付加的に、または代替的に、角膜オンレイは円環水晶体としてもよい。例えば、オンレイは、乱視の眼に装着時に乱視の影響を補正または低減するのに効果的な円環領域を含むことができる。オンレイの後面に位置した円環領域をオンレイは含んでもよく、または前面に位置した円環領域をオンレイは含んでもよい。有利には、オンレイが器具の上皮によって比較的固定した位置に保持され得るので、円環オンレイは、眼に装着時のオンレイの正しい向きを維持するためにバラスト(安定化素子)を必要とせずに使用され得る。しかし、望ましい場合にはバラストが設けられてもよい。ある実施形態は、オンレイは、プリズムなどのバラストを含んでもよい、または、一つ以上の下層薄化及び/または上層薄化ゾーンなどの一つ以上の薄化領域を含んでもよい。老視を補正するように構成されたオンレイの場合、同心、非球面(正の及び/または負の球面収差のいずれかをもつ)、回折、及び/または多ゾーン屈折などの一つ以上の設計をオンレイは含み得る。
【0061】
本発明はまた、合成の、つまり自然界には発生しない組成物を含む。同組成物は、完全に合成される場合も、または部分的に合成される場合もある。例えば、本発明は光学的に透明な組成物に関係する。同組成物は、本明細書で開示した一つ以上の眼用器具の製造に利用可能である。代替的に、組成物は、非眼用組成物として非眼用用途での使用も可能である、または屈折誤差補正をしない眼用用途での使用も可能である。別の実施形態では、本開示による組成物は、水和状態で約1%(w/w)より多い量の光学的に透明なコラーゲンを有する。本明細書で論じるように、コラーゲンの量は、少なくとも5.0%というように、2.5%よりも多くし得る。例えば、組成物は、水和状態で約1%(w/w)、または約2.5%、または約5%から約30%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、組成物は約6%(w/w)のコラーゲンを有し得る。ほかの実施形態では、組成物は約10%(w/w)から約24%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。組成物は、水和状態で約1%(w/w)より多い量の架橋コラーゲンを有し得る。この場合、コラーゲンはEDC/NHSを使用して架橋される。
【0062】
本組成物は、二つ以上のコラーゲン重合体を有し得る。ある実施形態では、組成物は、前述のように、第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有する。組成物には、グルタルアルデヒドなどの細胞毒性物質が実質的にないまたは完全にない。
本明細書で開示された眼用器具は、適当な方法または技術を用いて眼の中に装着することできる。
【0063】
例えば、ボウマン膜から上皮の一部を除去または分離することによって、角膜オンレイをボウマン膜上に装着できる。ある状況では、眼から上皮を薄化剥離するために、エタノールなどのある量のアルコールを角膜上皮に塗布してもよい。アルコールは、例えば、約20%または約50%というように、約10%から約60%までのある濃度にし得る。アルコールを約37°C(例えば、体温)まで暖めると、上皮除去を促進するのに効果的になり得る。この上皮剥離技術は、現在実践されているLASEK技術と同様である。
【0064】
ほかの状況では、上皮フラップ(折りぶた)または上皮ポケットの下にオンレイを装着することにより、角膜オンレイをボウマン膜上に装着してもよい。同フラップ及びポケットは、切削器具、鈍的切開ツール等を使用して作ることができる。角膜オンレイの眼の中への装着の例と方法は、2003年9月12日に提出された米国出願No. 10/661,400及び2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に開示されている。
【0065】
角膜インレイは、ストロマ内ポケットまたは角膜フラップを形成し、インレイをポケットの中またはフラップの下に装着することにより、眼の中に装着することができる。
【0066】
十分な厚さの角膜埋込み片は、角膜の損傷部または罹患部を除去し、角膜の除去した部分の領域にまたは領域近辺に角膜埋込み片を装着することにより、眼の中に装着することができる。
【0067】
本明細書で開示した眼用器具は、2003年9月12日に提出された米国出願No. 10/661,400及び2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に記載された器具など、鉗子またはその他の適当な挿入器具を使用して眼の中に装着することができる。
【0068】
眼用器具の眼の中への装着を容易にするために、当該器具は視覚化コンポーネントを含んでもよい。視覚化コンポーネントは、器具を眼に挿入または装着しながら器具を容易に視覚確認できるようにする、適当な目を引く特徴的なものであれば何でもよい。例えば、視覚化コンポーネントは、器具の回転位置の確認に役立つ一つ以上のマーキングを含み得る、または視覚化コンポーネントは、生体適合性のあるまたは細胞毒性のない染料などの染料、または着色剤を含み得る。
【0069】
本眼用器具に関するさらなる詳細及び器具の製造及び使用の関連した方法については、実例として提示され、本発明を限定しない以下の実施例で説明することにする。
【実施例】
【0070】
実施例1
コラーゲンを基にした角膜オンレイの調製
通常、水性緩衝液に溶解した0.5 mL〜2.0 mLのコラーゲン溶液を水性緩衝液に溶解した0.01 mL〜0.50 mの架橋剤に約0°Cで気泡を閉じ込めないようにして混合した。ある組成物の場合には、コラーゲン以外の第二の生体高分子を組成物に添加した。
【0071】
組成物を混合するために、粘性のコラーゲン溶液の混合及び/またはpHのサージのない制御された中和を可能とする、極小の多岐連結管を形成するテフゼルT字型アダプタ(従来の接続具)に組成物を入れた注射器を接続した。pHサージは、不透明なマトリックスの原因となる不可逆的線維形成をしばしば生じさせた。
【0072】
より具体的には、第一のルアー・アダプタは、T字型アダプタのねじ穴に底までしっかりとはめこめるように所定のサイズにカットされた隔壁を保持するために使用された。隔壁は、Restek 社の「Ice Blue」17 mm 汎用22397隔壁を所定のサイズにカットしたものである。MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)緩衝液などの緩衝液を入れた第一の注射器を第二のルアー・アダプタに固定し、緩衝液で気泡をすべて押し出させた。3個のルアー・アダプタ(図2)を備えたテフゼルT字型アダプタ(図1に示す)の第三のルアー・アダプタに接続した第二の注射器にコラーゲン溶液を入れた。完全なアセンブリは、図3に示される。
【0073】
T字型アダプタの狭い内径の各チャネル(例えば、約0.5 mmから約0.25 mmの間)を通る流れが液体を強くせん断するように、第一と第二の注射器を交互に繰り返しポンピングすることにより、コラーゲン溶液をMES緩衝液と完全に混合した。pH値は、5.0〜5.5に調整された。コラーゲン/緩衝液混合物は、次に、別の注射器を用いて組成物を多岐連結管に送り込むことによって、EDCとNHSの溶液(EDC:NHSはモル当量比1:1)と0°C〜4°Cで混合させた。
【0074】
それぞれ実質的に均質な分割溶液量を即座にオンレイのモールドに分注し、まず室温で、5〜24時間(例えば15時間)、その後37°Cで15〜24時間、どちらの温度でも湿度100%の環境で硬化した。
【0075】
リン酸緩衝生理塩水(PBS)中に2時間浸漬後、各最終オンレイ試料をそのモールドから慎重に分離した。
【0076】
ある場合には、さらなる架橋を発生させ、新たな生物学的因子を付加するために、これらのゲルを第二の反応性生体高分子の水溶液に浸漬した。
【0077】
最後に、反応性の残留物をすべて終結し、反応副産物を抜き取るために、架橋されたオンレイ・ヒドロゲルをPBS溶液(1%のクロロフォルムを含むPBSの比率0.5%)に20°Cで浸漬した。これらの無菌の平衡水和したオンレイは、試験の前にPBS中で完全に洗浄された。
【0078】
あるコラーゲン/EDC−NHS化学反応から高いコラーゲン濃度(10%以上)で調製されたゲルについては、反応性の残留物をすべて終結し、反応物の十分な抜き取りを行うために、クロロフォルム飽和PBS中に保存する前にゲルをまずpH9.1の緩衝液に浸漬した。この基本段階での抜き取り処理は、これらの試料における上皮の毒性問題を排除した。多くの化学量論的量において、クロロフォルム飽和PBS中での浸漬とその後のクロロフォルム残留物除去により、無菌の細胞毒性のないゲルを得た。
【0079】
実施例2
細胞成長エンハンサー物質をもつ眼用器具
ペンタペプチド(YIGSR、ラミニン高分子中の活性ユニット)単体、または上皮の健康、EGF、NGF、FGFまたはこれらの分子の一部を促進する、IKVAV、相乗的なIGF、及び物質Pペプチドを含むものなど相乗作用をもつペプチドと結合したペンタペプチドなどの細胞成長エンハンサー物質は、第二のEDC−NHS反応性生体高分子をもつものも含めてコラーゲン/EDC−NHS、架橋された器具のどれにでも組み込むことが可能である。YIGSRについては、この細胞成長エンハンサー物質の結合は、当物質のチロシン残基の遊離アミン末端基の反応性を介して達成され得る。未結合の細胞成長エンハンサー物質を除去するために、ゲル化後に拡張的な抜き取り処理を行ってもよい。
眼用器具の具体的な製剤法の詳細については、以下の実施例3〜13及び表2で説明する。
【0080】
実施例3
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)+コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0081】
実施例4
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、COP + EDC-NHS + コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。[COP、共重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)を70°C、窒素下で1,4−ジオキサンと2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル開始剤中でNiPAAmとAAcの遊離基重合によって調製した]。
【0082】
実施例5
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、EDC-NHS + コンドロイチン硫酸C(ChS)+ コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0083】
実施例6
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + N,O−カルボキシメチルキトサン(CMC)を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0084】
実施例7
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + N,O−カルボキシメチルキトサン(CMC)を使用して、2時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、+ PBS中キトサン(1%水溶液、5000Da)にゲルを4時間浸漬時の第二の架橋を行い、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。最後に37°Cで15時間経過させた。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0085】
実施例8
コラーゲン + EDC-NHS + ヒアルロン酸(HA)を使用して、MES緩衝液中でpH5.5で、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0086】
実施例9
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + コンドロイチン硫酸(ChS)+ ヒアルロン酸(HA)を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cに上げて15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0087】
実施例10
MES緩衝液中でpH7〜8の状態で、コラーゲン + ヒアルロン酸アルデヒド(HA−CHO)+ 水酸化シアノホウ素ナトリウムを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。HA−CHOは、21°C2時間の過ヨウ素酸ナトリウム(0.05 g)との酸化的開裂によりHA(0.1 g)から調製した。水溶液を2日間、水に対して透析した。
【0088】
実施例11
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + アルギン酸塩を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cに上げて15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0089】
実施例12
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、グルタルアルデヒド(水にて1%に希釈した"Glut")+ コラーゲンを使用して、2時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、+ PBS中キトサン(1%水溶液、5000Da)にゲルを4時間浸漬時の第二の架橋を行い、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。モールド中のゲルは、PBS下で取り出す前に37°Cに上げて15時間に放置した。
【0090】
実施例13
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + キトサンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0091】
実施例14
MES緩衝液中でpH7〜8の状態で、EDC-NHS + コンドロイチン硫酸C(ChS)+ コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
実施例3〜14のすべての器具は、以下の表2に示した市販のコラーゲンと反応物質との比率のすべてで、丈夫で、透明で柔軟性のあるゲルであった。
オンレイ用途のヒドロゲルのいくつかは、DSC、光学的透明度及び屈折率、測定、張力特性(剛性、最大抗張力、破断点伸び、表2)及びin vivoの性能によって特徴付けられた。すべての試料についての反応後のゲルに対するDSC測定から、コラーゲンの架橋と相応して、変性温度の増加とΔHdenatureの減少が見られた。表2のすべての製剤の屈折率は、1.341〜1.349の範囲内であった。
【0092】
実施例15
in vitroのオンレイ性能(表2)
上皮細胞(人の不死化角膜上皮細胞、HCEC)がいかにヒドロゲル上で集合体まで成長するか(集合体へ成長するまでの日数)を評価するために、HCEC細胞がいかにヒドロゲル上に積層するかを評価するために、並びにヒドロゲル上での及びヒドロゲル内への幼い後根神経節の神経成長を評価するために(後者は、データが得られた場合、ミクロン/日として報告した)、Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示れた方法を使用した。
人の角膜は、完全な除去後3〜5日でその上皮を復元する。
【0093】
in vitroの試験期間は、通常、約6〜8日であるが、よりよい処方は3〜5日以内の再上皮化を可能にした。ゲルがより濃いほど(>5%コラーゲン)、For denser gels (>5% コラーゲン), 伸展する神経のゲル上の成長(300ミクロンの伸び)が多くの処方においてin vitroの試験で見られた。神経のゲル内の成長は、ゲルの剛性が増加するにつれて急速に遅くなるが、精密なマイクロスコピーにより確認された。
【0094】
【表2】
【表3】
【表4】
【0095】
†略語: Col コラーゲン; Glutグルタルアルデヒド; HA ヒアルロン酸; ChS コンドロイチン硫酸C; Col-NH2 コラーゲンの遊離アミン含有量; AFDP 酸性の凍結乾燥の豚; epi. 上皮の; ND 非確定
*別途指示ない限り、厚さ500 μm、直径12 mmの埋込み片。Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法からの応力、ひずみ及び剛性データ。
**ゲル上: DRGから神経突起がヒドロゲル上へ成長した。ゲル内:神経突起が6日間でヒドロゲル内へ明示された長さまで成長した。
【0096】
実施例16
in vivoのオンレイ性能
オンレイを実施例1に述べたとおりに調製した。第一の組のオンレイは、10%(w/v)の豚のコラーゲンとEDC/NHSから調製した。第二の組のオンレイは、3.5%(w/v)のウシ属のコラーゲンとコンドロイチン硫酸(CSC)及びEDC/NHSから調製した。各オンレイは、直径約6 mm、中央の厚さ約70 μm、及び 30 μmの傾斜エッジを有した。
オンレイを移植するために、ブタの上皮を、30〜45秒間、45%のエタノールで処理した。上皮に蝶形の切り込みをつけ、ポケットを形成した。視覚化のためにオンレイを細胞毒性のない染料(Gel-CodeTM)で青く染めた。予め染めたオンレイをポケットに挿入した。保護用コンタクト・レンズを目の上に縫合した。
【0097】
角膜の炎症、発赤、及び/または血管浸潤を評価するために、目視検査を行った。角膜の透明度を査定するために、細隙灯検査を適用した。トノペン眼圧計を使用して眼圧を測定した。Cochet-Bonne角膜知覚計を使用して角膜の接触感度を測定した。接触感度は、機能する神経の存在を評価するために有効となり得る。これは、採取された移植組織をもつ角膜のin vivo共焦点イメージング及び免疫組織化学により確証された。移植の直前と手術の3週間後に、PAR角膜トポグラフィー・システム(CTS)で角膜トポグラフィーを調べた。
【0098】
角膜トポグラフィーは、麻酔をかけたブタの眼をCTSに整合することにより行った。角膜表面を被覆するため、かつ標的グリッドの視覚化を可能にするために、蛍光色素フロオロシンの希釈溶液と人工涙液を眼に点眼した。前部角膜表面上の標的グリッドに焦点を合わせるように、装置の焦点面を調節した。標的グリッドのデジタル画像を撮像した。前部角膜表面の形状の測定値を得るために、デジタル画像を分析した。オンレイの装着による角膜の形状の変化を評価するために、オンレイの移植の前と後のデジタル画像の比較を利用することができる。
【0099】
in vivo共焦点マイクロスコピーは、生きているブタにおける角膜の異なる深さでの撮像を可能にし、したがって、眼用器具に対する眼の反応をモニターすることを可能にする。例えば、共焦点マイクロスコピーは、器具内の神経の存在をモニターするために使用できる。in vivo共焦点マイクロスコピーは、眼用器具の移植の前と手術の3週間後に、Nidek Confoscan 3 in vivo共焦点マイクロスコープで麻酔をかけたブタを観察することにより実施された。人工涙液を観察対象の眼に点眼した。眼球動作を低減するために、局部麻酔剤を2滴点眼した。屈折率整合のためにレンズの前表面にゲルの層を有する共焦点レンズ(ゲル浸漬)を角膜に接触させた。角膜内皮に焦点を合わせるように装置の焦点面を調節し、レンズの焦点面を角膜の厚さに等しい深さにわたり走査しながら角膜の画像を撮像した。
【0100】
角膜上皮のオンレイ上の復元と下にあるオンレイへの接着と相互作用の早期兆候の有無を判断するために、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した組織断面の組織病理学的観察に加えて免疫組織化学を利用した。免疫組織化学はまた、神経の存在の有無と免疫性及び炎症性の細胞の浸潤があるかどうかを確証するためにも利用された。従来の技術を使用して、浄化剤で浸透性を高めた後、移植されたオンレイを有するものと有しないもので二分した角膜に抗神経フィラメント染色を施した。結合抗体を視覚化するために、免疫蛍光を利用した。
【0101】
前述したような角膜オンレイを受け入れた角膜は、発赤または炎症は最小であるかまたは全くない状態で、よく治癒され、光学的に透明さを保っていた。血管浸潤の兆候はなかった。正常な眼圧が観測された。また手術後の角膜は、接触感度を示した。トポグラフ測定は、移植されたオンレイが角膜のトポグラフィーに変化をもたらし得ることを示した。オンレイは、中央の角膜の高い部分の厚さに約50 μmの変化を生じさせた。上皮はオンレイによく接着していた。in vivo角膜マイクログラフィーは、上皮下のストロマの神経を有し、上皮からの細胞は内皮にまで達している健全な全体的角膜構成を明らかにした。H&E染色低温断面は、オンレイが母体の角膜に統合されたことを示した。免疫組織化学は、E−カドヘリン用の染色を使用した未処理の角膜と比較して、オンレイを移植した角膜における細胞の接着力に変化はあるにせよほんのわずかであること実証した。ケラチン3及びE−カドヘリン用の染色は、対照と同程度であった。線維を基底膜複合体に係留するためのコラーゲン・タイプVII染色は、対照よりも識別しにくい染色を示した。a6インテグリン用の染色は、手術後の対照と未処理の対照のどちらでも、基底上皮細胞の局在性を示した。抗神経フィラメント200抗体染色は、オンレイを有する角膜において移植部位での神経の存在を示した。抗CD45抗体染色は、炎症性または免疫性反応がないことを明らかにした。
【0102】
実施例17
角膜オンレイの切除
VISX Star S4 エキシマー・レーザーを使用して、コラーゲン/EDC及びコラーゲン/キトサンのオンレイを切除した(表3)。PAR角膜トポグラフィー・システム(CTS)による処理の前後に表面トポグラフィー測定値を取得した。この処理のために、オンレイを保存溶液から取り出して、PMMAからなる球面の上に置いた。
光線治療角膜切除(PTK)手術は、均一の数のレーザーパルス(またはエネルギー)を切除ゾーン全域に照射する。光屈折角膜切除(PRK)手術は、所望の曲率変更を得るために切除ゾーン中でパルス密度を変動させる。AZDは、切除ゾーンの直径を意味する。深さは、レーザー製造者により報告された、人の角膜に対する処理の予測深さである。
【0103】
【表5】
【0104】
切除の影響を表示するために、コラーゲン/EDCのオンレイの手術前と手術後のトポグラフィーから差の分布図を作成した。
【0105】
PTK切除は、ほぼ一定の中央の直径 〜5 mmの青色領域(差の分布図において)を作り出すと予想された。オンレイは曲面であるので、除去される組織の量にはわずかな勾配があると予想された。近視の球面PRK切除は、中央で最大の組織深さを除去すると予想された。除去される組織の深さは、徐々に減少し、切除の終端ではゼロになると予想された。遠視の球面補正は、中央の直径1 mmを無処理で残し、処理ゾーンの終端で最大に組織を除去すると予想された。遠視の球面補正は、中央の直径1mmの部分を無処理で残し、処理ゾーンの終端で最大に組織を除去すると予想され、推移ゾーンも中心から9mm より外の周縁に形成されると予想された。遠視補正後の差の分布図は、中央の緑色のゾーンのまわりに青色の環を表示すると予想された。近視乱視の補正からの差の分布図は、その青色のパターンが楕円形になると予想された以外は、近視の球面補正からの分布図と同様に見えると予想された。
【0106】
切除したオンレイから得た差の分布図は、すべての差の分布図で上記予想された組織除去パターンを示した。除去された組織の最大深さは、人の角膜に対して予測されたそれよりも大きくなるようであった。例えば、角膜オンレイ材質の除去部分比率は、人の角膜の除去部分の比率の約1.7から約2倍の間であった。オンレイ材質と角膜との切除比率の違いは、試料の間で一様ではなかった。この比率の違いは、とりわけ、処理測定の深さ、材質の密度と表面の粗さ、及び材質の含水率によるものと考えられる。
【0107】
コラーゲン/キトサンのオンレイは、コラーゲン/EDCのオンレイよりも速い速度で切除することが観察された。この差は、水和作用の違いによるものと考えられる。例えば、手術後のコラーゲン/キトサンのオンレイは、コラーゲン/EDCのオンレイよりも低い含水率を呈し得る。
眼用器具はまた、ウレタンのような強度増強コンポーネントを有してもよい。
【0108】
実施例18
人の組み換えコラーゲン眼用器具
FibroGen(サンフランシスコ、CA)から入手した13.7 wt%の人の組み換えコラーゲン・タイプI、0.3 mlと 0.625 M モルホリノエタンスルホン酸(MES)、0.3 mlを本明細書で説明した注射器を基にしたシステムを使用して混合することにより、架橋されたコラーゲンのヒドロゲルを調製した。混合を氷水槽の中で行うことにより、混合は低下した温度で発生した。
【0109】
均質の溶液を得た後、57 μlのEDC/NHSをコラーゲン・フリー・アミノ(coll−NH2)基に対するモル当量比3:3:1で混合液に注入した。溶液のpHを約5に調整するために、NaOH(2N)を混合液に添加した。
【0110】
混合液をガラス製またはプラスチック製モールドに流し込み、100%の湿度の室温で16時間放置した。その後、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。
【0111】
コラーゲン・coll−NH2基に対するEDC/NHSの比を1:1:1と6:6:1にして、人の組み換えコラーゲン・タイプIを有するその他のヒドロゲルをこの方法で同様に調製した。
【0112】
VEE GEE屈折計で屈折率(RI)を測定した。白色光、450 nm、500 nm、550 nm、600 nm、及び650 nmの各波長での光透過率を測定した。応力、破断ひずみ、弾性係数などの直接的な張力特性測定をInstronエレクトロメカニカル・テスター(モデル3340)で測定した。試料のサイズは5 mm x 5 mm x 0.5 mm であった。ヒドロゲルの含水率は、下の式により計算された。
【0113】
(W − W0)/W%
ここで、W0及びWは、乾燥した試料と膨張した試料のそれぞれの重量を示す。
【0114】
EDC/NHS/Coll−NH2の比1/1/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F1と指定した)は、屈折率 1.3457±0.0013を有した。EDC/NHS/Coll−NH2の比3/3/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F3と指定した)は、屈折率1.3451±0.0002を有した。EDC/NHS/Coll−NH2の比6/6/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F6と指定した)は、屈折率 1.3465±0.0001を有した。
【0115】
表4は、これらの異なるヒドロゲルの光透過率をまとめて示す。
【0116】
【表6】
F3と指定したヒドロゲル材質は、最も受容できる光特性を示すと見られた。 視覚的に、または肉眼的に、F3はほかの人の組み換えヒドロゲルに比べて最大の透明度をもつと見られた。
【0117】
表5は、当該の人の組み換えヒドロゲルの機械的特性を示す。
【0118】
【表7】
ヒドロゲルF3は、比較的低い弾性係数をもつが、ほかの機械的特性は受容できると見られる。
【0119】
表6は、各ヒドロゲル材質の含水率を示す。
【0120】
【表8】
これらのヒドロゲルは水和性が高いことが明白である。
本実施例では、pH変化をモニターする助けに、pH指示薬をMES緩衝液に添加した。本実施例で使用された特定の指示薬は、アリザリン・レッドS(Sigma Aldrich)である。
【0121】
図4は、人の組み換えコラーゲン試料F1上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。図5は、人の組み換えコラーゲン試料F3上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。図6は、人の組み換えコラーゲン試料F6上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。
【0122】
これらの人の組み換えヒドロゲル材質で観察された細胞成長は、対照実験で観察された細胞成長よりも大きかった。
【0123】
図7は、ヒドロゲル材質F3がin vivoで少なくとも30日間存続したことを証明する写真である。
【0124】
実施例19
コラーゲン−ポリ(NIPAAm−co−AAC)組成物
本明細書で説明したEDC/NHS架橋方法(実施例4)により、組成物を調製した。開始時のコラーゲン濃度は15%であった。最終コラーゲン濃度は11%であった。最終ポリ(NIPAAm−co−AaC)濃度は3%であった。ゲル中の総固体濃度は14%であった。
【0125】
この材質は、屈折率1.3542、抗張力11重量グラム、伸張3.3 mm、及び弾性係数3.8重量グラムを有した(Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法から)。
【0126】
変性温度は、架橋前の40°Cから架橋後は50°Cへ増加した。材質は、人の角膜またはウサギの角膜よりも高い光透過率と低い後方散乱を呈した。例えば、白色光に対するパーセント光透過率は、当ヒドロゲル材質では約102%、人の角膜では役93%、ウサギの角膜では78%であった。当ヒドロゲルは、450 nm、500 nm、550 nm、600 nm、及び650 nmの各波長に対して、それぞれ約90%、96%、100%、101%、及び103%のパーセント透過率を呈した。人の角膜及びウサギの角膜は、すべての試験波長において100%を下回るパーセント透過率を示し、各波長でヒドロゲル材質よりも常に低いパーセント透過率を示した。
当ヒドロゲル材質は、種付け後7日で角膜上皮細胞が合流することを実証した。
【0127】
実施例20
コラーゲン/コンドロイチン硫酸組成物
コラーゲンIとプロテオグリカン相当物としてコンドロイチン硫酸(CSC)を使用して、高い光学的透明度と抗張力をもつ生合成マトリックスを開発した。光学的透明度を失わせる可能性がある凝固またはコラーゲン線維形成を伴わずに、コラーゲンに対する乾燥重量比30%(wt/wt)までのCSCを有するヒドロゲルを制御された条件の下で調製した。当ヒドロゲルを物理的に及び生化学的に特性を明らかにした。in vivoの試験は、人の角膜上皮細胞(HCECs)がゲルの表面でよく成長し、うまく積層されたことを示した。当マトリックスは、健全な神経成長を担持した。同様の結果もin vivoで得られた。
【0128】
本明細書で説明した実施例14と同様に組成物を調製した。CSCは、EDC及びNHS化学反応を利用するコラーゲンに共有結合された。
【0129】
異なるコラーゲンに対するCSCの乾燥重量比、並びに異なるEDC対コラーゲン−NH2モル当量比で、コラーゲン (3.5 w/v%)とCSCのゲルを本明細書で論じたEDC/NHS(モル当量1:1)架橋技術を使用することにより調製した。すべてのゲルは、視覚的に透明であった。当組成物は、表7に示すように、人の角膜(約87%の透過率及び3%の後方散乱)に比較してより高い光透過率と低い光散乱を呈した。
【0130】
【表9】
【0131】
屈折率は1.34〜1.35の間であったが、これは人の角膜の屈折率(1.376)に近い。
【0132】
異なるEDC対コラーゲン−NH2モル比の適用により製造されたゲルの膨潤率を測定し、下の式により計算した。
膨潤率=(WW − Wd)/Wd
ここで、WWは水和したゲルの重量であり、Wdは乾燥ゲルの重量である。
【0133】
EDC/NHSを使用したコラーゲン−CSC架橋は、カルボン酸とアミン基間の架橋の形成を生じさせる。その結果(図9)は、EDC対コラーゲン−NH2比が増加すると、より凝縮したネットワークを発生させるので、コラーゲン−CSCゲルの膨潤率は低下することを示した。
【0134】
Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法によって、埋込み片の機械的特性の測定を行った。埋込み片をPBS中で完全に水和させて、10mm/minの速度で抜き出した。埋込み片(厚さ500μm、直径12mm)の破断点で抗張力をモニターした。EDC対NH2モル比を増加させることにより、ゲルの抗張力が増強された(図10)。しかし、EDCの量が相当に増加されると材質はもろくなるので、EDC対コラーゲン−NH2モル比が2以上になると抗張力は少し減少した。
【0135】
ゲルの抗張力は、図11に示すように(参照、3.5%ではなく10%のコラーゲンを使用)、コラーゲンの増加した濃度によっても増強させることができる。抗張力は、2.65から10.02重量グラムに増加し、膨潤率は21.5から12.1に減少した。
【0136】
架橋の効率を示差走査熱量測定(DSC)により評価した。コラーゲンまたは架橋コラーゲンのヒドロゲルを加熱すると、元来の三重らせん構成の構造的遷移(変化)が、架橋の性質と程度により異なるある温度で生じる。コラーゲン溶液及び架橋された、十分に水和したコラーゲン・ヒドロゲルを密封パンの中で特性を調べた。試料の温度は2°C/min.の一定の率で上げられた。最大限のピークの温度を変性温度として記録した。EDC対NH2比を増加すると、変性温度は42.4°Cから56.6°Cに増加した(図12A)。これは共有架橋の導入が三重らせんの安定性を高めたことにより、変性温度を上昇させたことを示唆する。コラーゲン−CSCゲルの変性温度は、コラーゲンのみのゲルよりも高くなった(図12B)。しかし、コラーゲン−CSCゲルにおけるCSC対コラーゲンモル比を変えても、変性温度に影響を及ぼさなかった。
【0137】
確立された細胞系からの人の角膜上皮細胞のin vitroの成長を観察した。ゲル中に移植した後根神経節を使用して、in vitroで神経成長をさせた。神経突起は7日間生育され、神経フィラメントを対象にゲルを染色し、神経突起の伸びを測定した。すべてのコラーゲン−CSCゲルで神経突起はよく成長した(図13)。
【0138】
CSCの濃度の5%から20%への増加は、ゲル内の神経突起の伸びの長さを大幅に向上させた。30%CSCを含むゲルではさらなる利点は見られなかった(図13)。優れた上皮の被覆率と移植統合が観察された。
【0139】
実施例21
タイプIIIコラーゲン組成物
材質。人の組み換えタイプIIIコラーゲン(5.1% w/w FibroGen Inc)、0.625 M モルホリノエタンスルホン酸[MES、アリザリン・レッドS、pH指示薬(6.5 mg/100ml水)を含む]、1−エチル−3−(3−ジメチル・アミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)、N−ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)。
【0140】
18.3%(w/w)のタイプIIIコラーゲン溶液からヒドロゲルを製造した。18.2 wt%の人の組み換えタイプIIIコラーゲン、0.3 ml(5.1% w/w人の組み換えタイプIIIコラーゲンFibroGen Incから濃縮した)とMES(0.625 M)0.3 mlを氷水槽中で、プラスチック製T字アダプタに接続した2本の気泡を抜いた注射器中で混合した。均質な溶液が形成された後、33.5 mgのEDCと20.1 mgのNHSを0.125 mlのMES中に溶解し、そのうちの57 mlを取り出して、EDC:NHS:コラーゲン−NH2をモル比3:3:1で上記の注射器に注入した。混合液は5あたりのpHを示すピンク色を発色したので、NaOH溶液は添加しなかった。混合液を完全に混合し、ガラス製モールド(厚さ434 μm)へ流し込み、湿度100%、室温で16時間放置した。次に、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。これにより得られた平板のヒドロゲルを取り出して、新鮮な緩衝液を8時間おきに交換して新しくしながら、10 mMのPBS中に浸漬した。こうして得たヒドロゲルを1%のクロロフォルムを含む10 mMのPBS中に浸漬し、4°Cの冷蔵庫の中に保存した。
【0141】
EDC:NHS:コラーゲン−NH2の比を2:2:1と1:1:1にした、追加のタイプIIIコラーゲンのヒドロゲルも上記の方法で調製した。すべての得られたゲルは透明であった。
【0142】
5.1%(w/w)のタイプIIIコラーゲン溶液からもヒドロゲルを製造した。5.1 wt%の人の組み換えタイプIIIコラーゲン、0.3 mlとMES(0.625 M)50mlを氷水槽中で、プラスチック製T字アダプタに接続した2本の気泡を抜いた注射器中で混合した。均質な溶液が形成された後、9.3 mgのEDCと5.6 mgのNHSを0.125 mlのMES中に溶解し、そのうちの57 mlを取り出して、EDC:NHS:コラーゲン−NH2をモル比3:3:1で上記の注射器に注入した。混合液は5付近のpHを示すピンク色を発色したので、NaOH溶液は添加しなかった。混合液を完全に混合し、ガラス製モールド(厚さ434 μm)へ流し込み、湿度100%、室温で16時間放置した。次に、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。これにより得られた平板のヒドロゲルを取り出して、新鮮な緩衝液を8時間おきに交換して新しくしながら、10 mMのPBS中に浸漬した。こうして得たヒドロゲルを1%のクロロフォルムを含む10 mMのPBS中に浸漬し、4°Cの冷蔵庫の中に保存した。こうして得たゲルは光学的に透明であった。
【0143】
開始時の濃度が18.3% w/w であったコラーゲンの最終的なコラーゲン含有量は、8.36% (w/v)(すべての成分を添加後の希釈係数に基づいて計算された)または約10%(w/v)(測定された値)であった。
【0144】
開始時の濃度が5.1% w/w であったコラーゲンの最終的なコラーゲン含有量は、3.76% (w/v)(すべての成分を添加後の希釈係数に基づいて計算された)または約4%(w/v)(測定された値)であった。
【0145】
様々な具体的な実施例と実施形態に関して本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されず、その他の実施形態が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0146】
多くの刊行物、特許、及び特許出願を上記の説明で引用した。引用された刊行物、特許、及び特許出願は、参照することにより本書にその全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本組成物及び器具を製造するためのシステムのT字型アダプタの断面図を示す図である。
【図2】本組成物及び器具を製造するための雌ルアー・アダプタの断面図を示す図である。
【図3】本組成物及び器具を製造するための図1のT字型アダプタの平面図であり、隔壁を有し、そこに二つの注射器が連結された状態を示す。
【図4】F1と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図5】F3と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図6】F6と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図7】ラット中に検出された、F3と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質の写真である。
【図8】屈折誤差を補正する本眼用器具の一つの実施形態を示す図である。
【図8A】本オンレイの一つの実施形態の水晶体エッジ形状を示す図である。
【図9】EDC対NH2モル比の関数としての膨潤率のグラフである。
【図10】EDC対NH2モル比の関数としての抗張力のグラフである。
【図11】コラーゲン濃度の関数としての抗張力のグラフ(左側のパネル)とコラーゲン濃度の関数としての膨潤率のグラフ(右側のパネル)を示す。
【図12】異なるEDC対NH2モル比をもつ複数の組成物についての温度の関数としての熱流量のグラフ(左側のパネル)と異なるCSC濃度をもつ複数の組成物についての温度の関数としての熱流量のグラフ(右側のパネル)を示す。
【図13】コラーゲンに対するコンドロイチン硫酸の乾燥重量比の関数としての神経突起長のグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年8月13日付申請の米国仮出願No. 60/601,270の利点を主張し、その全ての内容は、ここに、参照することにより本書に援用される。
【0002】
本発明は、個人の視力を向上させるための、あるいは個人の眼の外傷または眼疾患や眼病を治療するための器具、方法及び組成物に関係する。特に、本発明は、一つ以上の効用を個人にもたらす材質でできている角膜オンレイ、角膜インレイ、及び角膜埋込み片に関係する。
【背景技術】
【0003】
米国特許No. 5,713,957は、微生物で分解できない、非ヒドロゲルの、眼に対して生体適合性のある材質からなる角膜オンレイであり、10,000ダルトンより大きい分子液体重量をもつ組織液成分がオンレイを透過できるように十分な多孔性を有する角膜オンレイを開示している。
【0004】
米国特許No. 5,716,633は、上皮細胞の成長とストロマの再生を促進するためのコラーゲン/PHEMA−ヒドロゲル開示している。このコラーゲン−ヒドロゲルは、ボウマン膜に付着させる光学レンズとして提供可能であり、レンズの前面上の上皮細胞の成長または角膜上皮の付着を促進し、担持するのに効果がある。当該コラーゲン−ヒドロゲルは、コラーゲンを定着させるための三次元メッシュワークを形成するように、コラーゲンの水溶原液の存在下でゲル化し架橋された親水性単量体溶液の遊離基重合によって形成されたヒドロゲル重合体である。オンレイ中のコラーゲンの最終的な濃度は、約0.3%から約0.5%(wt/wt)である。
【0005】
米国特許No. 5,836,313は、埋込み可能な合成物の人工角膜を形成する方法を開示している。この方法は、角膜上皮細胞の成長に適するマトリックスとなるように設計された人工角膜を提供する。当該人工角膜は、角膜組織を角膜埋込み片の形状をもつ成形型の中に入れて、人工角膜を形成するように約50〜100ミクロンの間の厚さをもつ生体適合性のあるヒドロゲルを角膜組織に化学結合させるように高分子溶液を架橋することによって形成される。あるいは、高分子溶液を角膜組織と予成形されたヒドロゲルの間に入れ、高分子溶液がヒドロゲルと角膜組織の両方と結合するように重合させる。
【0006】
米国特許No. 6,454,800は、組織細胞の付着と成長を担持する複数のくぼみをもつ表面を有する角膜オンレイまたは角膜埋込み片を開示している。
【0007】
米国特許No. 6,689,165は、係留角膜エンハンサー物質を使用して角膜上皮細胞の接着と転移を増加する、角膜増大及び置換えのための人工器具を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存のコラーゲンを基にした材質に関わるある種の問題は、コラーゲンを基にした材質は光学的に透明ではないことであり、これは繊維質を基にした材質の形成または同材質への変換によるものとみられ、望ましくない光散乱を引き起こす。
したがって、個人の視力を向上させるために、生体適合性があり、眼用に許容でき、かつ眼の中に置いておくことに適する材質がまだ必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
眼用器具は、器具を個人の眼の中に装着したとき、器具本体を貫通したまたは本体上での神経の成長を促進するのに効果のある組成物を含む本体を有する。ある実施形態では、器具は視力を向上させる眼用器具である。代替の実施形態では、器具は治療用の眼用器具である。当該の視力を向上させる器具は、一つまたは複数の屈折誤差を補正するように構成されている器具であると理解することができる。言い換えれば、本器具は屈折誤差を補正する器具であると理解することができる。本器具の本体は、屈折力を有するように形成することができる。
【0010】
本発明の組成物は、光学的に透明であり、約1%(w/vまたはw/w)から約50%(w/vまたはw/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、コラーゲンの量は2.5%(w/wまたはw/v)より多い。本明細書において使用される限りでは、組成物及び器具のコラーゲン及び/またはその他の構成成分の量は、発明の精神から逸脱しない範囲でw/wまたはw/v パーセントのどちらかであると理解するものとする。さらなる実施形態では、コラーゲンの量は約5.0%より多い。例えば、当該材質は約10%から約30%の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、当該材質は約1%から約50%の間のある量の架橋コラーゲンを有し得る、この場合、コラーゲンは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC; CAS # 1892-57-5)及びN−ヒドロキシスクシンイミドを使用して架橋される。さらに別の実施形態では、架橋コラーゲンの量は約2.5%から約50%の間にある。当該材質は、第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有し得る。ある実施形態では、本明細書に開示された眼用器具は、グルタルアルデヒドを用いずに製造される。例えば、眼用器具は、その製造において架橋剤としてグルタルアルデヒドを利用しない。グルタルアルデヒド及び/または本組成物及び器具に対する取扱い及び安全要件によって、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用するのは望ましくないか、または好ましくないと判断され得る。ある実施形態では、眼用器具は、細胞毒性成分を用いずに製造される、すなわち、細胞毒性を減弱した成分を使用して製造される。
【0011】
上記の器具は、個人の生来の角膜に取って代わるように構成された器具等としての角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの角膜埋込み片であり得る。本器具は透明であり、組成物が器具に成形される前に透明である組成物から作ることができる。
上記器具の材質は、一つ以上の細胞成長エンハンサー物質または一つ以上の追加の生体高分子をも有し得る。
【0012】
本明細書での開示による、屈折誤差を補正する器具等としての眼用器具の製造方法は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミド(EDC及びNHS)を使用してコラーゲン重合体を架橋することを含んでなる。この架橋は、約5.0〜約5.5のpHほどの酸性pHで生じる。当該方法は、細胞成長エンハンサー物質を架橋組成物に添加する一つ以上のステップをさらに含んでなる。当該方法は、成形型中に組成物を入れることと、眼用器具を形成するように組成物を硬化させることを含んでなる。
【0013】
本明細書に記述されるいずれの特徴または特徴のいずれの組合せも、いずれかの同組合せに含まれた特徴が、文脈、本仕様書、及び当該技術分野における当業者の知識から明白になるように、互いに矛盾していない限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、いずれの特徴または特徴のいずれの組合せも、本発明のいずれかの実施形態から特に除外されることもあり得る。
本発明のさらなる利点及び態様は、以下の詳細な説明、図面、実施例、及び特許請求の範囲から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
典型的な人の眼は水晶体と虹彩を有する。後房が虹彩の後ろに位置し、前房が虹彩の前に位置する。眼は、本明細書で論じるところの五つの層からなる角膜を有する。これらの層のうちの一つ、角膜上皮は角膜の前方の外表面の裏側を覆う。角膜上皮は、縁部まで横に拡がる層をなした扁平な上皮である。
【0015】
角膜の五つの層は、角膜上皮、ボウマン膜、ストロマ、デスメ膜、及び内皮を含む。角膜上皮は、通常、約5〜6細胞層の厚さ(約50マイクロメータの厚さ)があり、一般に、角膜が傷づくと再生する。角膜上皮は、比較的平滑な屈折面を形成し、眼の感染を防ぐのを助ける。角膜ストロマは、そこに分散した線維芽細胞や角膜ストロマ細胞などの細胞を含むコラーゲンの層状構成物である。ストロマが、角膜の厚さのおよそ90%を占める。上皮の下にあるストロマの前方の部分は無細胞であり、ボウマン膜として知られている。ボウマン膜は上皮とストロマの間に位置し、角膜を損傷から保護すると考えられている。角膜内皮は、通常、角膜から水分を取り除くことによって角膜を脱水する、低い立方形のまたはうろこ状の細胞の単分子層である。成人の角膜は、一般的に、約500 μm(0.5 mm)の厚さであり、通常、血管をもたない。
【0016】
視力の向上または改善を望む人や、眼の疾患、病気または外傷の治療を必要とする人などの個人に一つ以上の効用をもたらす眼用器具が発明された。本明細書で説明する器具は、角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの角膜埋込み片として構成することができる。本器具は、視力が減弱した個人の視力を向上させたり、視力のない個人に視力を与えたりすることができる。ここに説明する器具は、眼内レンズを特に除外する。
【0017】
本明細書で使用される「光学的に透明な」とは、少なくとも85%の白色光透過率を意味する。ある実施形態では、「光学的に透明な」とは、例えば、90%を超える白色光透過率と3%未満の散乱をもつような健全な角膜の透明度と同等の光学的透明度を意味している。
【0018】
本明細書で使用される「角膜オンレイ」は、人間の眼または動物の眼などの個人の眼の上皮または上皮細胞層とボウマン膜の間にはめられるように、サイズと形状を適合させて構成された眼用埋込み片または器具である。比較として、コンタクトレンズは、眼の上皮を覆う形ではめられるように構成される。角膜オンレイは、したがって、ボウマン膜を完全に覆うように置かれるか、またはボウマン膜内まで延びる一つ以上の部分を含むこともある。同部分は、例えば、器具の面積または体積の50%未満の器具の非主要部分をなす。
【0019】
本明細書で使用される「角膜インレイ」は、眼のストロマ内へ置かれるように構成された器具または埋込み片である。角膜インレイ は、フラップ(折りぶた)またはポケットをストロマ内に形成することによって取り付けることができる。角膜インレイは、眼のボウマン膜の下に取り付けられる。
【0020】
本明細書で使用される「十分な厚さの埋込み片」は、眼の房水の前に位置する眼の不健康な角膜の全部または一部に取って代わるように構成される器具を意味する。
【0021】
本眼用器具は、細胞毒性を減弱させているか、または細胞毒性はなく、器具を装着される個人に一つ以上の効用をもたらす。例えば、器具は次にあげることの一つ以上をもたらす。(i)所望の屈折率、(ii)所望の光学的透明度(例えば、同程度の厚さをもつ健康な人の角膜構成物質のそれと同等かそれ以上によい可視光、光透過率及び光散乱)、(iii)視力を向上させる屈折力などの所望の屈折力、(iv)心地よさの向上、(v)角膜及び上皮の健康の向上、及び(vi)例えば、眼の疾患、病気または外傷の治療における治癒効果。本眼用器具は透明であるか、または透明な材質で形成される。同器具のいくつかの例は、光学的に透明である器具を含む。
【0022】
上記の効用等は、(i)許容できる屈折力をもつマトリックスを形成するようにモールド成形などで成形できる、(ii)光学的に透明または視覚的に透明である、及び(iii)器具を貫通して及び/または器具上に神経が成長するのを促進するのに効果がある材質で器具を形成することにより得ることができる。器具が角膜オンレイである場合、器具の前面上での再上皮化を促進するのに器具は効果がある。
【0023】
器具は、縫合や装着後の磨耗や引き裂けを含み得る取扱いや移植に耐えるのに十分な機械的または構造的特性をもつ材質で形成される。器具は、健康な眼を促進するために十分な栄養素や気体の交換を提供するまたは許す。角膜オンレイなどのモールド中で製造される器具は、本明細書で論じるところのエッジ傾度や視力補正曲率を含む適切なサイズと形状にモールド成形できる材質で形成される。
【0024】
本発明の一つの実施形態では、視力を向上させる眼用器具は、器具を個人の眼の中に装着したとき、器具本体を貫通して神経が成長するのを促進するのに効果のある材質を含む本体を有する。本体を貫通した神経成長を促進することによって、器具を受け入れる個人の角膜はその接触感度を維持する。本体は屈折力をもつように形成される。したがって、本体はある種の水晶体として理解することができる。本明細書で論じるように、器具は、角膜オンレイ、角膜インレイ、または十分な厚さの埋込み片となるように、サイズと形状を適合させるなどして構成することができる。ある実施形態では、屈折誤差を補正する本器具は屈折力をもたなくてもよい。例えば、本開示による屈折誤差を補正する器具は、患者の角膜上皮とボウマン膜の間、または患者の角膜ストロマ内に装着することができるブランクであると理解してもよい。
【0025】
角膜オンレイの場合、オンレイを製造する材質は、十分に機能する生存上皮を維持するために、ボウマン膜と上皮の間での気体及びブドウ糖などの栄養素の交換を提供するか、また許容する。その他の栄養素は、上皮細胞などの細胞の生存、成長及び分化を促進または強化する因子または作用物質を含む。交換は、健康な人の角膜のそれと同等かそれ以上によいものとする。栄養素及び/または薬品に対する材質の浸透性は、従来の技術を用いてモニターすることができる。さらに、栄養素及び/または薬品の材質中の移動は、材質の光学的特性を変化させないものとする。オンレイまたは水晶体は、十分に生体適合性があり、オンレイへの迅速な上皮の接着を可能にするとともに、例えば、接触感度などの神経支配と感度の回復を許す。
【0026】
本眼用器具は、細胞外マトリックス(ECM)成分を有してもよい。ある器具では、本体の材質は主としてコラーゲンからなるか、またはコラーゲンからなる。器具の製造において、例えば、EDC/NHSを使用してコラーゲンを架橋してもよい。本ヒドロゲル器具で提供されるコラーゲンの量は、現在使用されているその他の眼用器具における量よりも多い。例えば、本器具で提供されるコラーゲンの量は、本明細書で論じるように、典型的に1%(w/w)または(w/v)より多い。ある実施形態では、コラーゲンの量は、2.5%より多い。例えば、コラーゲンの量を約5.0%以上とすることができる。ある実施形態では、コラーゲンの量は、2.5%から約50%の間というように、約1%(w/w)から約50%(w/w)の間にある。例えば、コラーゲンの量は、6%(w/w)よりも多い。あるいは、当該材質は、約10%(w/w)から約30%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有してもよい。当該技術分野における当業者には周知のことだが、水和した人の角膜のおよそ15 wt%はコラーゲンである(Maurice D M: The Cornea and Sclera, pp489-600. The Eye, Vol I, Second ed., Ed. H Davson. Academic Press, New York, 1969)。したがって、当器具は、既存の眼用器具よりも多い量で、しかも人の角膜に存在するコラーゲンの量にずっと近くなった同等のコラーゲンの量を含む。さらに、本器具で提供されるようなコラーゲンの量は、所望の屈折率、所望の光学的透明度、成形性を提供する上で、また器具を眼に装着する際の取扱い、移植、縫合と装着後の磨耗や引き裂きを許容する上でも効果的である。
【0027】
非コラーゲン系の部分など眼用器具の残りの部分は、水または生理塩水のような液体としてもよいし、または生体高分子などの一つ以上の追加の重合体を含んでもよい。例えば、本明細書で開示した約24%のコラーゲンを有する眼用器具は、水または生理塩水などの約76%(w/w)の液体を含み得る。言い換えれば、水和状態で、当該眼用器具は、水和した眼用器具の重量の24%のコラーゲン成分を有し得る。別の例として、眼用器具は、水和した器具の重量の24%を占めるコラーゲン成分と水和した器具の重量の6%を占める第二の重合体成分を有してもよく、重量の70%が液体である。
当業者には周知のことだが、未水和状態では、器具中のコラーゲンの量は水和状態よりも多いパーセント率となり得る。
【0028】
コラーゲンは、3個のポリペプチド鎖からなり、その構造はらせん状である。本明細書で使用される「コラーゲン重合体」という用語は、三重らせん状のコラーゲン分子を意味するものとする。コラーゲンは、長さと直径がそれぞれ約300 nmと約1.5 nmである棒状分子である。コラーゲン分子は、コラーゲンの抗原性の大部分を含むそのN末端とC末端の両方に「テロペプチド」と呼ばれるアミノ酸配列をもつ。アテロコラーゲンがペプシン消化によって得られるが [DeLustro et al., J Biomed Mater Res. 1986 Jan;20(1):109-20]、これはテロペプチドがなく、低免疫原性であることを示す[Stenzel et al., Annu Rev Biophys Bioeng. 1974;3(0):231-53]。
【0029】
上に特定した器具で使用されるコラーゲンは、動物、酵母、及びバクテリア源を含むいずれかの適当なコラーゲン源から取得または抽出することができる。例えば、コラーゲンは、特に、人のコラーゲン、 ウシ属のコラーゲン、豚のコラーゲン、鳥のコラーゲン、ネズミ科のコラーゲン、ウマ科のコラーゲンが利用可能である。またはコラーゲンは組み換えコラーゲンであってもよい。組み換えコラーゲンはバクテリア、酵母、植物または形質転換動物から得られるので、本器具における組み換えコラーゲンは、通常の動物源から得たコラーゲンには存在しない一つ以上の構造的または物理的特徴を含み得る。例えば、組み換えの人のコラーゲンは、動物から抽出し処理したコラーゲンには存在し得ない様々な糖鎖付加成分を含み得る。さらに、組み換えコラーゲンは、多様な組成物からなり得る動物由来のコラーゲンと比べて異なる程度の架橋を有し得る。動物由来のコラーゲンでは架橋の程度にばらつきがあり、その結果、整合性が取れなかったり、望ましくないコラーゲンの化学的物理的特性のばらつきが生じ得る。厳密に制御された純度はもちろんのこと、組み換えの人のコラーゲンは、動物由来のコラーゲンには関係することがあるウイルスによる及び/またはプリオンの汚染に関わることはない。本器具において有用なコラーゲンは公に入手可能であり、従来の技術を使用して合成することができる。 例えば、組み換えコラーゲンは、Fibrogen(多重遺伝子酵母バイオリアクター培養から)またはPharming(オランダ)(遺伝子組み換え乳牛またはウサギのミルクから)調達できる。コラーゲンは、PCT公報No. WO 93/07889またはWO 94/16570に開示された方法を用いて調製し、調達できる。ある器具では、コラーゲンはタイプIのコラーゲンである。同器具はまた、アテロコラーゲン(例えば、テロペプチドをもたないコラーゲン)で作られてもよい。ある実施形態では、コラーゲンは非変性型のコラーゲンである。アテロコラーゲンは、例えば、高研、日本(本明細書では供給者Aとする)といった会社から調達することができ、ここではウシ属のコラーゲンが中性組成で3.5%(w/v)、酸性組成で3.0%(w/v)、酸性組成で10%(w/v)として入手可能であり、また豚のコラーゲンが酸性組成で3.0%(w/v)として、または酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲン粉末として入手可能である。酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲン粉末はまた、日本ハム(日本)(本明細書では供給者Bとする)からも調達することがでる。Becton Dickinson(本明細書では供給者Cとする)は、0.3%の酸性の及び10%の酸性のコラーゲン組成物を提供する。
【0030】
数種類のコラーゲンのうち、アテロコラーゲンIは、溶解、取扱いのしやすさと最終的な器具での透明度を提供する。このコラーゲン(中性または酸性のどちらかの溶液中の、または酸性の凍結乾燥粉末としての、ウシ属、豚、または組み換えコラーゲン)は、上記した数社から入手可能である。凍結乾燥した酸性の豚のコラーゲンは容易に溶解し、4°Cで撹拌することにより、33%(w/v)の濃度までの均質な(非乳白色の)水溶液が得られる。溶液などのこれらの透明なコラーゲン組成物のpHは、およそ3(供給者B)またはおよそ5(供給者A)である。0.3%(w/v)ほどの低濃度の市販の酸性のコラーゲン組成物を0°C〜4°Cで撹拌しながら真空蒸発することにより、約10%(w/v)の最終コラーゲン濃度までの透明な溶液を得るように濃縮することができ、この濃縮溶液を本発明の製造に使用してもよい。
【0031】
分離及び精製中に変性(すなわち、その三重らせん構成の全部または実質的な部分を損失してゼラチンになること)がなかったコラーゲン・タイプIを使用して、比較的強靭なまたはじょうぶな眼用器具得ることができる。
【0032】
示差走査熱量測定法(DSC)は、三重らせんの含有率に基づいて、供給者のコラーゲンの溶液の質を判定するために有効なツールである(表1)。完全に近い三重らせん含有率では、変性のDSCエンタルピー(ΔHdenature)は、65〜70 J/gの範囲にある(乾燥コラーゲン重量に基づく)。DSCデータ(ΔHdenature)から、結果は、市販の酸性の凍結乾燥した豚のコラーゲンからの溶液と市販のウシ属のコラーゲン溶液のいくつかは、十分な三重らせん形態であることを示す。
【0033】
低い三重らせん含有率のコラーゲン溶液(ΔHdenature < 5 J/g、供給者C、表1)は、比較的低い粘性をもち、100%の三重らせん含有率に近いコラーゲンからの同濃度の組成物または溶液に比べて弱いゲルを示す。ΔHdenature > 60 J/gのコラーゲン組成物(溶液)は、許容できる眼用器具を製造することがわかった。
【0034】
【表1】
【0035】
前述のものを含むある実施形態では、本体の材質は架橋されるコラーゲン重合体を有してもよい。あるいは、別の言い方をすれば、本体の材質は二つ以上の架橋されたコラーゲン重合体を有してもよい。例えば、本体の材質は、第一のコラーゲン重合体、第二のコラーゲン重合体、及び第三のコラーゲン重合体を含み得る。その他の材質は、4個以上のコラーゲン重合体を含み得る。架橋された重合体は、眼用器具のコラーゲン成分であると理解することができる。
【0036】
したがって、本発明による視力を向上させる眼用器具は、屈折力を持つように形成された、約1%(w/w)から約50%(w/w)の間のある量のコラーゲンをもつコラーゲン成分を有する。本明細書で論じるように、ある実施形態では、少なくとも約5.0%というように、コラーゲンの量は2.5%より多い。例えば、ある実施形態では、コラーゲンは約6%(w/w)より多い。例えば、コラーゲンの量は、約10% (w/w)から約30%(w/w)の間にある。例えば、コラーゲンの量は、約10% (w/w)から約24%(w/w)の間としてもよい。ある器具では、コラーゲンは、器具の唯一の水膨潤性の(例えば、ヒドロゲル)重合体である。ほかの器具では、コラーゲンは唯一の器具または水晶体形成重合体としてもよい。例えば、器具は乾燥状態の100%のコラーゲンを有することもあり得る。前述したように、ある器具では、コラーゲンは、例えば、EDC/NHSを使用して架橋されてもよい、または少なくとも一部が架橋されてもよい。
【0037】
本発明の組成物及び器具を製造するのに使用されるコラーゲン重合体は、同じコラーゲン源または異なるコラーゲン源から得てもよい。あるいは、別の言い方をすれば、単一の種類のコラーゲン、例えば、アテロコラーゲン・タイプI(これは複数のコラーゲン重合体鎖を含む)は、コラーゲン重合体が互いに架橋するために効果的な方法で処理される。一つの実施形態では、コラーゲン重合体は組み換えコラーゲンである。ほかの実施形態では、両方のコラーゲン重合体は同じ動物源から得られる。単一の組成物中のそれぞれのコラーゲン重合体は異なる分子量をもつことができる。
【0038】
屈折誤差を補正する本器具は架橋された組み換えコラーゲンを有すると理解してよい。同器具に存在するコラーゲンの量は、これ以前に開示された他の、コラーゲンを基にした屈折誤差を補正する器具で見られた量よりも多い。屈折力をもつように同器具を形成することができる。
【0039】
本明細書に開示された器具は透明である。例えば、器具は光学的に透明であるものとする。例えば、器具を個人の眼の中に装着時に、器具は光散乱を最小に抑える(健康な人間の角膜組織と同等かそれ以上によい)ものとする。さらに、本明細書に開示された器具は屈折率をもつ。ある実施形態では、屈折率は約1.34から約1.37の間にある。例えば、屈折率は、1.341から1.349の間としてもよい。器具が角膜オンレイまたは角膜インレイとして構成される場合、角膜が損傷されたり、罹患したりして十分な厚さの埋込み片が必要になるような場合の眼に比べて、器具は個人の健康な眼の中に取り付けられるように構成される。ある実施形態では、器具は黄色の色合いまたは黄色そのものをもたない。例えば、器具は、ある種のコラーゲン含有組成物に関わりをもつ可能性がある黄色の色合いまたは黄色そのものを減少または除去するように設計されてもよい。
【0040】
本器具は前面と後面を有する。したがって、器具の本体またはコラーゲン成分は前面と後面を有し得る。前面と後面は、一般に、対抗する面である。器具の前面は、器具を眼に装着時に網膜から離れる方向に向く面をさし、後面は器具を眼に装着時に網膜側を向く。器具が角膜オンレイである場合、後面はボウマン膜に隣接することになり、接触する場合もある。前面は角膜上皮に隣接することなり、接触する場合もある。器具が角膜インレイである場合、前面はボウマン膜に隣接するか, ボウマン膜側を向き、後面は眼の網膜側を向きストロマの中にある。器具が十分な厚さの埋込み片である場合、前面は角膜上皮の側を向き、後面は角膜内皮に隣接しており、接触する場合もある。
【0041】
本器具は、付加的な表面改質を含まないこともあり、または前面と後面のいずれか一方または両方での細胞成長及び/または分化に影響する表面改質を含むこともある。例えば、角膜オンレイは、前面または後面上の細胞成長に影響する表面改質を含まなくてもよい。本明細書で使用される「細胞成長」は、細胞または細胞の集団の拡張を意味する。したがって、健康な人の角膜で見られるように、細胞成長は、表面面積、体積などの増加といった個別の細胞の物理的成長、細胞の分裂などの一つまたは複数の細胞の増殖、及び細胞の転移、ある場合には層をなす多層構造の形成を意味する。細胞成長は、器具上の、器具の下側のまたは器具を貫通した一つ以上の神経突起の拡張などの神経細胞の成長を意味し、さらに器具の表面上での上皮細胞または内皮細胞の成長または転移または増殖を意味する。本明細書で使用される「細胞分化」は、全能性の、多能性のまたは未熟の前駆細胞(幹細胞を含む)の単体または集団がその最終的な表現型を達成するために受ける形態学的、生化学的及び生理学的な変化を意味する。本器具のある実施形態では、上皮細胞は角膜オンレイ上で成長し、そこに密着結合される、例えば、オンレイに、特にオンレイの前面に直接付着される。
【0042】
ある角膜オンレイでは、本体またはコラーゲン成分は、器具を個人の眼の中に装着時に、オンレイの下側の上皮細胞の成長を減少させるのに効果がある後面表面改質を含む。さらに、または代替的に、角膜オンレイは、器具を個人の眼の中に装着時に、オンレイの前面上の転移を含む上皮細胞の成長を促進するのに効果がある前面表面改質を含む本体またはコラーゲン成分を含んでもよい。関連して、十分な厚さの角膜埋込み片は、埋込み片を眼に装着時に、十分な厚さの角膜埋込み片の後面上の内皮細胞成長を減少させるのに効果がある後面表面改質を含む本体またはコラーゲン成分を含んでもよい。十分な厚さの角膜埋込み片は、前面表面改質を含まなくてもよい。
【0043】
細胞成長を減少させ得る表面改質の例は、 前面及び後面の一方または両方にCF4またはC3F8などのプラズマ重合したフッ素化単量体膜を形成すること、これらの面の一方または両方に低い自由表面エネルギーを与えること、及び/またはこれらの面の一方または両方を親水性にすることを含む。これらの表面は、アルギン酸塩コーティングを表面上に施すことにより親水性にすることができる
【0044】
器具は、器具上のまたは器具を貫通した細胞成長を促進する一つ以上の細胞成長エンハンサー物質を含んでもよい。ある実施形態では、細胞成長エンハンサー物質はペプチドからなる。例えば、細胞成長エンハンサー物質は、RGD、YIGSR、またはIKVAVを含むアミノ酸配列をもつペプチドとしてもよい。コラーゲンI自体は、RGD配列の豊富な源である。ある実施形態では、細胞成長エンハンサー物質は、神経栄養因子またはその分子の生体活性または神経栄養部分である。例えば、神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)、上皮細胞増殖因子(EGFまたはHB−EGF)または塩基性線維芽細胞成長因子(bFGFまたはFGF−2)であり得る。細胞成長エンハンサー物質は、器具のコラーゲン成分または本体と共に一体的に形成されてもよいし、または言い換えれば、細胞成長エンハンサー物質は実質的に器具の至るところで提供されてもよい。比較として、ある種の眼用器具は器具の一つの表面で提供されるペプチドのみを含む。
【0045】
ある実施形態では、コラーゲンを基にした眼用器具は、器具の製造中にある酸性pH値に処理されたコラーゲン成分を有する。酸性pHは、コラーゲン成分が第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有する場合、特に有効である。同器具の製造中に使用される酸性pH値は、典型的には、約6.0未満であり、例えば、pH値は約5.0から約5.5の間にしてもよい。酸性pH値を維持し、pHの調整中のpHサージを防止または低減することにより、コラーゲンの線維形成が減少される。さらに、pH値を約5.0以上に維持することにより、コラーゲンはpH値が5.0未満の場合ほど急速に分解することはない。
【0046】
コラーゲン重合体は、いずれかの小さいまたは重合の、コラーゲン反応物質または分子を使用して架橋されてもよい。架橋化学反応は、当業者には常法である従来の方法または新規の試薬を用いることができる。コラーゲン重合体を架橋することによって、器具はその光学的透明度を維持し、生分解に耐えることができる。
【0047】
ある実施形態では、コラーゲン重合体は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC; CAS # 1892-57-5)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用して架橋される。言い換えれば、器具の製造に使用される架橋剤はEDC/NHSである。コラーゲン重合体とEDC/NHS架橋剤は、pHのサージを防止しながら、ある酸性pH値においていっしょに混合される。十分な混合の後、混合組成物をモールドの中に入れて、眼用器具を形成するようにモールド中で硬化させる。コラーゲンとCSCを架橋するために水溶性のEDC/NHS化学反応を利用する一つの利点は、これがゼロ長の(アミド)結合を起こすことである。これは、移植された毒性物質が組織中へ浸出する可能性を低減する。さらに、未反応の試薬及びEDC/NHS反応からの副産物は水溶性なので、ゲル形成後に容易に除去できる。
【0048】
ある実施形態では、コラーゲン重合体は、細胞毒性を減弱させた架橋剤または架橋作用物質を使用して架橋される。同架橋剤は、好適には、眼用器具を個人の眼の中へ装着時に刺激したりせず、または否定的な反応を引き起こさない。いくつかの実施形態では、架橋剤はグルタルアルデヒド以外の架橋剤である。グルタルアルデヒドはある実施形態では有効な架橋剤になり得るが、取扱い及び安全性の要請によりグルタルアルデヒドが好ましくないこともある。
【0049】
さらなる実施形態では、処理は、コラーゲン組成物と混合することができる成分として、次にあげる成分のうちの少なくとも一つを使用することをさらに含んでなる。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、エラスチン、キトサン、N,O−カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸アルデヒド、及びアルギン酸塩。したがって、眼用器具は、架橋されたコラーゲン重合体のマトリックスなどのコラーゲン成分と、生体高分子を含む、一つ以上の非コラーゲン重合体を有することができる。架橋重合体のネットワークまたはマトリックスを形成するように、非コラーゲン重合体どうしが架橋してもよいし、及び/または非コラーゲン重合体がコラーゲン重合体に架橋してもよい。
【0050】
ある実施形態では、異なる組成物間で高いせん断を生じさせるように、組成物どうしが比較的狭いチャネルまたは通路を通じて混合される。一つの実施形態では、組成物は注射器を基にしたシステムを使用して混合される。混合は、粘性のあるコラーゲン溶液と試薬との間で高いせん断を生じさせるように、狭いチャネルを通じた注射器のポンピングに左右される。チャネルの直径は、注射器またはその他の同等の器具の粘性と破裂強度に適合するように選択される。高い粘性(例えば、20〜30%(w/v)のコラーゲン溶液)に対しては、より高い圧力が手により得られるので、小さい直径の注射器プランジャをもつ小さい容積の注射器が使用される。酸性pHは、例えば約5.0から5.5の間で、温度は、例えば約0°Cから約5°Cの間に低下させて、混合する。
【0051】
ほかの眼用器具と比べて、本器具は生きている細胞を使用せずに製造される。したがって、本発明者は、生きている角膜細胞を使用せずに、比較的高い、ほぼ生理学的濃度のコラーゲンを有する組成物と眼用器具を製造する新しい方法を発明した。さらに、ほかの器具ではコラーゲンの交差反応性を増加するために使用されていた合成デンドリマー成分が、本器具では実質的にまたは完全にない。
【0052】
本器具の製造には、神経に適合する材質をさらに使用してもよい。このような材質は、本明細書に開示した方法を使用して製造し、細胞培養システムなどの当業者には常法である従来の方法を使用して、神経の成長などの神経適合性を試験することができる。例えば、2003年8月11日に提出されたWO 2004/015090に開示された方法を使用して、材質を試験し、特定できる。
【0053】
本明細書に開示された器具は、眼の角膜領域近辺の眼の中に取り付けられるように、サイズと形状を適合させるなどして構成される。器具が角膜オンレイである場合、約6 mmというような、約4 mmから約12 mmまでの直径をオンレイは有し得る。オンレイはまた、例えば、約10 μmから約30 μm の間といった、約30 μm未満のエッジ厚さを有し得る。オンレイはまた、約70 μm の中央厚さを有し得る。
【0054】
オンレイの形状にしたモールドは、ポリプロピレンから製造することができ、4 mm、6 mm、 8 mm、または 12 mmの直径を有し得る。モールドは比較的堅固であり(例えば、密閉時にたわまない)、充填物が見えるように透明であるものとする。モールドは、オンレイが微小テーパ状の(例えば、約10 μm)エッジになるように、または少し急角度な(例えば、約30 μm)エッジなるように構成される。
【0055】
角膜埋込み片のモールド(十分な厚さのある、または部分的に厚みのある)は、約12 mmの直径を有し得る。移植用のモールドは、角膜の所望の曲率と厚さに合わせて成形される。必要な場合、眼用器具(例えば、ヒドロゲル)を移植手順での要求に応じてトレフィンで切削することができる。
【0056】
屈折誤差を補正する本器具の一つの一例を図8及び図8Aに示す。
【0057】
本明細書で開示した角膜オンレイは、個人の眼の一つ以上の波面収差を補正するようにも構成することができる。波面の技術及び波面収差の測定の説明は、米国特許No. 6,086,204 (Magnate)及びWO 2004/028356 (Altmann)に記載されている。角膜オンレイは、オンレイに補正形状をもたせる所望の形状にモールドを成形することによって、波面収差を補正するように成形することができる。角膜オンレイに波面収差測定を利用する方法は、2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に開示されている。また、波面収差を補正するように、オンレイを切除してもよい。例えば、レーザまたはレーザと同様の装置、旋盤、及びその他の水晶体成形装置を使用して、オンレイを切除することができる。
【0058】
本明細書に開示した角膜オンレイはまた、複数の異なるゾーンを含むことができる。例えば、角膜オンレイは光学ゾーンと周縁ゾーンを含むことができる。典型的には、光学ゾーンは周縁ゾーンによってその境界を限定される、または言い換えれば、光学ゾーンは、大体、中心光軸などのオンレイの光軸のまわりの中央に位置し、周縁ゾーンは光学ゾーンの外縁と角膜オンレイの周縁の間に配置される。ほかにも追加のゾーンとオンレイ構成が、患者が被っている特定の視覚欠陥に応じてオンレイに提供し得る。
【0059】
さらに、本角膜オンレイは、視覚的または光学的に検出できる継ぎ目をもたない二つ以上のゾーンなどの継ぎ目のないゾーンをもつことができる。オンレイのこれらのゾーンは滑らかに連続することができ、オンレイは屈折誤差のみではなく、眼及び/または光学器具のその他の光学収差も独立にまたは屈折誤差の補正と合わせて補正するように、光学的に最適化することができる。当業者には周知のことだが、角膜オンレイは、近視、遠視、乱視、及び老視を含むがこれらに限定されない視覚欠陥を補正するように構成することができる。オンレイは、眼のストロマに組み付けられた光学的手段または物理的手段のどちらかによって、またはこれらの組み合わせによって、視覚欠陥を向上または改善することができる。したがって、角膜オンレイは、単焦点水晶体、または二焦点水晶体を含むがこれに限定されない多焦点水晶体であり得る。
【0060】
付加的に、または代替的に、角膜オンレイは円環水晶体としてもよい。例えば、オンレイは、乱視の眼に装着時に乱視の影響を補正または低減するのに効果的な円環領域を含むことができる。オンレイの後面に位置した円環領域をオンレイは含んでもよく、または前面に位置した円環領域をオンレイは含んでもよい。有利には、オンレイが器具の上皮によって比較的固定した位置に保持され得るので、円環オンレイは、眼に装着時のオンレイの正しい向きを維持するためにバラスト(安定化素子)を必要とせずに使用され得る。しかし、望ましい場合にはバラストが設けられてもよい。ある実施形態は、オンレイは、プリズムなどのバラストを含んでもよい、または、一つ以上の下層薄化及び/または上層薄化ゾーンなどの一つ以上の薄化領域を含んでもよい。老視を補正するように構成されたオンレイの場合、同心、非球面(正の及び/または負の球面収差のいずれかをもつ)、回折、及び/または多ゾーン屈折などの一つ以上の設計をオンレイは含み得る。
【0061】
本発明はまた、合成の、つまり自然界には発生しない組成物を含む。同組成物は、完全に合成される場合も、または部分的に合成される場合もある。例えば、本発明は光学的に透明な組成物に関係する。同組成物は、本明細書で開示した一つ以上の眼用器具の製造に利用可能である。代替的に、組成物は、非眼用組成物として非眼用用途での使用も可能である、または屈折誤差補正をしない眼用用途での使用も可能である。別の実施形態では、本開示による組成物は、水和状態で約1%(w/w)より多い量の光学的に透明なコラーゲンを有する。本明細書で論じるように、コラーゲンの量は、少なくとも5.0%というように、2.5%よりも多くし得る。例えば、組成物は、水和状態で約1%(w/w)、または約2.5%、または約5%から約30%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。ある実施形態では、組成物は約6%(w/w)のコラーゲンを有し得る。ほかの実施形態では、組成物は約10%(w/w)から約24%(w/w)の間のある量のコラーゲンを有し得る。組成物は、水和状態で約1%(w/w)より多い量の架橋コラーゲンを有し得る。この場合、コラーゲンはEDC/NHSを使用して架橋される。
【0062】
本組成物は、二つ以上のコラーゲン重合体を有し得る。ある実施形態では、組成物は、前述のように、第二のコラーゲン重合体に架橋された第一のコラーゲン重合体を有する。組成物には、グルタルアルデヒドなどの細胞毒性物質が実質的にないまたは完全にない。
本明細書で開示された眼用器具は、適当な方法または技術を用いて眼の中に装着することできる。
【0063】
例えば、ボウマン膜から上皮の一部を除去または分離することによって、角膜オンレイをボウマン膜上に装着できる。ある状況では、眼から上皮を薄化剥離するために、エタノールなどのある量のアルコールを角膜上皮に塗布してもよい。アルコールは、例えば、約20%または約50%というように、約10%から約60%までのある濃度にし得る。アルコールを約37°C(例えば、体温)まで暖めると、上皮除去を促進するのに効果的になり得る。この上皮剥離技術は、現在実践されているLASEK技術と同様である。
【0064】
ほかの状況では、上皮フラップ(折りぶた)または上皮ポケットの下にオンレイを装着することにより、角膜オンレイをボウマン膜上に装着してもよい。同フラップ及びポケットは、切削器具、鈍的切開ツール等を使用して作ることができる。角膜オンレイの眼の中への装着の例と方法は、2003年9月12日に提出された米国出願No. 10/661,400及び2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に開示されている。
【0065】
角膜インレイは、ストロマ内ポケットまたは角膜フラップを形成し、インレイをポケットの中またはフラップの下に装着することにより、眼の中に装着することができる。
【0066】
十分な厚さの角膜埋込み片は、角膜の損傷部または罹患部を除去し、角膜の除去した部分の領域にまたは領域近辺に角膜埋込み片を装着することにより、眼の中に装着することができる。
【0067】
本明細書で開示した眼用器具は、2003年9月12日に提出された米国出願No. 10/661,400及び2004年5月20日に提出された米国出願No. 60/573,657に記載された器具など、鉗子またはその他の適当な挿入器具を使用して眼の中に装着することができる。
【0068】
眼用器具の眼の中への装着を容易にするために、当該器具は視覚化コンポーネントを含んでもよい。視覚化コンポーネントは、器具を眼に挿入または装着しながら器具を容易に視覚確認できるようにする、適当な目を引く特徴的なものであれば何でもよい。例えば、視覚化コンポーネントは、器具の回転位置の確認に役立つ一つ以上のマーキングを含み得る、または視覚化コンポーネントは、生体適合性のあるまたは細胞毒性のない染料などの染料、または着色剤を含み得る。
【0069】
本眼用器具に関するさらなる詳細及び器具の製造及び使用の関連した方法については、実例として提示され、本発明を限定しない以下の実施例で説明することにする。
【実施例】
【0070】
実施例1
コラーゲンを基にした角膜オンレイの調製
通常、水性緩衝液に溶解した0.5 mL〜2.0 mLのコラーゲン溶液を水性緩衝液に溶解した0.01 mL〜0.50 mの架橋剤に約0°Cで気泡を閉じ込めないようにして混合した。ある組成物の場合には、コラーゲン以外の第二の生体高分子を組成物に添加した。
【0071】
組成物を混合するために、粘性のコラーゲン溶液の混合及び/またはpHのサージのない制御された中和を可能とする、極小の多岐連結管を形成するテフゼルT字型アダプタ(従来の接続具)に組成物を入れた注射器を接続した。pHサージは、不透明なマトリックスの原因となる不可逆的線維形成をしばしば生じさせた。
【0072】
より具体的には、第一のルアー・アダプタは、T字型アダプタのねじ穴に底までしっかりとはめこめるように所定のサイズにカットされた隔壁を保持するために使用された。隔壁は、Restek 社の「Ice Blue」17 mm 汎用22397隔壁を所定のサイズにカットしたものである。MES(2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸)緩衝液などの緩衝液を入れた第一の注射器を第二のルアー・アダプタに固定し、緩衝液で気泡をすべて押し出させた。3個のルアー・アダプタ(図2)を備えたテフゼルT字型アダプタ(図1に示す)の第三のルアー・アダプタに接続した第二の注射器にコラーゲン溶液を入れた。完全なアセンブリは、図3に示される。
【0073】
T字型アダプタの狭い内径の各チャネル(例えば、約0.5 mmから約0.25 mmの間)を通る流れが液体を強くせん断するように、第一と第二の注射器を交互に繰り返しポンピングすることにより、コラーゲン溶液をMES緩衝液と完全に混合した。pH値は、5.0〜5.5に調整された。コラーゲン/緩衝液混合物は、次に、別の注射器を用いて組成物を多岐連結管に送り込むことによって、EDCとNHSの溶液(EDC:NHSはモル当量比1:1)と0°C〜4°Cで混合させた。
【0074】
それぞれ実質的に均質な分割溶液量を即座にオンレイのモールドに分注し、まず室温で、5〜24時間(例えば15時間)、その後37°Cで15〜24時間、どちらの温度でも湿度100%の環境で硬化した。
【0075】
リン酸緩衝生理塩水(PBS)中に2時間浸漬後、各最終オンレイ試料をそのモールドから慎重に分離した。
【0076】
ある場合には、さらなる架橋を発生させ、新たな生物学的因子を付加するために、これらのゲルを第二の反応性生体高分子の水溶液に浸漬した。
【0077】
最後に、反応性の残留物をすべて終結し、反応副産物を抜き取るために、架橋されたオンレイ・ヒドロゲルをPBS溶液(1%のクロロフォルムを含むPBSの比率0.5%)に20°Cで浸漬した。これらの無菌の平衡水和したオンレイは、試験の前にPBS中で完全に洗浄された。
【0078】
あるコラーゲン/EDC−NHS化学反応から高いコラーゲン濃度(10%以上)で調製されたゲルについては、反応性の残留物をすべて終結し、反応物の十分な抜き取りを行うために、クロロフォルム飽和PBS中に保存する前にゲルをまずpH9.1の緩衝液に浸漬した。この基本段階での抜き取り処理は、これらの試料における上皮の毒性問題を排除した。多くの化学量論的量において、クロロフォルム飽和PBS中での浸漬とその後のクロロフォルム残留物除去により、無菌の細胞毒性のないゲルを得た。
【0079】
実施例2
細胞成長エンハンサー物質をもつ眼用器具
ペンタペプチド(YIGSR、ラミニン高分子中の活性ユニット)単体、または上皮の健康、EGF、NGF、FGFまたはこれらの分子の一部を促進する、IKVAV、相乗的なIGF、及び物質Pペプチドを含むものなど相乗作用をもつペプチドと結合したペンタペプチドなどの細胞成長エンハンサー物質は、第二のEDC−NHS反応性生体高分子をもつものも含めてコラーゲン/EDC−NHS、架橋された器具のどれにでも組み込むことが可能である。YIGSRについては、この細胞成長エンハンサー物質の結合は、当物質のチロシン残基の遊離アミン末端基の反応性を介して達成され得る。未結合の細胞成長エンハンサー物質を除去するために、ゲル化後に拡張的な抜き取り処理を行ってもよい。
眼用器具の具体的な製剤法の詳細については、以下の実施例3〜13及び表2で説明する。
【0080】
実施例3
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)+コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0081】
実施例4
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、COP + EDC-NHS + コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。[COP、共重合体、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)を70°C、窒素下で1,4−ジオキサンと2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル開始剤中でNiPAAmとAAcの遊離基重合によって調製した]。
【0082】
実施例5
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、EDC-NHS + コンドロイチン硫酸C(ChS)+ コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0083】
実施例6
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + N,O−カルボキシメチルキトサン(CMC)を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0084】
実施例7
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + N,O−カルボキシメチルキトサン(CMC)を使用して、2時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、+ PBS中キトサン(1%水溶液、5000Da)にゲルを4時間浸漬時の第二の架橋を行い、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。最後に37°Cで15時間経過させた。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0085】
実施例8
コラーゲン + EDC-NHS + ヒアルロン酸(HA)を使用して、MES緩衝液中でpH5.5で、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0086】
実施例9
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + コンドロイチン硫酸(ChS)+ ヒアルロン酸(HA)を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cに上げて15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0087】
実施例10
MES緩衝液中でpH7〜8の状態で、コラーゲン + ヒアルロン酸アルデヒド(HA−CHO)+ 水酸化シアノホウ素ナトリウムを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。HA−CHOは、21°C2時間の過ヨウ素酸ナトリウム(0.05 g)との酸化的開裂によりHA(0.1 g)から調製した。水溶液を2日間、水に対して透析した。
【0088】
実施例11
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + アルギン酸塩を使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cに上げて15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0089】
実施例12
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、グルタルアルデヒド(水にて1%に希釈した"Glut")+ コラーゲンを使用して、2時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、+ PBS中キトサン(1%水溶液、5000Da)にゲルを4時間浸漬時の第二の架橋を行い、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。モールド中のゲルは、PBS下で取り出す前に37°Cに上げて15時間に放置した。
【0090】
実施例13
MES緩衝液中でpH5.5の状態で、コラーゲン + EDC-NHS + キトサンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
【0091】
実施例14
MES緩衝液中でpH7〜8の状態で、EDC-NHS + コンドロイチン硫酸C(ChS)+ コラーゲンを使用して、15時間かけて0°C〜4°Cから21°Cに上げて、その後37°Cで15時間かけて、眼用器具を実施例1に述べたとおりに製造した。EDC:NHS=モル当量比1:1。
実施例3〜14のすべての器具は、以下の表2に示した市販のコラーゲンと反応物質との比率のすべてで、丈夫で、透明で柔軟性のあるゲルであった。
オンレイ用途のヒドロゲルのいくつかは、DSC、光学的透明度及び屈折率、測定、張力特性(剛性、最大抗張力、破断点伸び、表2)及びin vivoの性能によって特徴付けられた。すべての試料についての反応後のゲルに対するDSC測定から、コラーゲンの架橋と相応して、変性温度の増加とΔHdenatureの減少が見られた。表2のすべての製剤の屈折率は、1.341〜1.349の範囲内であった。
【0092】
実施例15
in vitroのオンレイ性能(表2)
上皮細胞(人の不死化角膜上皮細胞、HCEC)がいかにヒドロゲル上で集合体まで成長するか(集合体へ成長するまでの日数)を評価するために、HCEC細胞がいかにヒドロゲル上に積層するかを評価するために、並びにヒドロゲル上での及びヒドロゲル内への幼い後根神経節の神経成長を評価するために(後者は、データが得られた場合、ミクロン/日として報告した)、Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示れた方法を使用した。
人の角膜は、完全な除去後3〜5日でその上皮を復元する。
【0093】
in vitroの試験期間は、通常、約6〜8日であるが、よりよい処方は3〜5日以内の再上皮化を可能にした。ゲルがより濃いほど(>5%コラーゲン)、For denser gels (>5% コラーゲン), 伸展する神経のゲル上の成長(300ミクロンの伸び)が多くの処方においてin vitroの試験で見られた。神経のゲル内の成長は、ゲルの剛性が増加するにつれて急速に遅くなるが、精密なマイクロスコピーにより確認された。
【0094】
【表2】
【表3】
【表4】
【0095】
†略語: Col コラーゲン; Glutグルタルアルデヒド; HA ヒアルロン酸; ChS コンドロイチン硫酸C; Col-NH2 コラーゲンの遊離アミン含有量; AFDP 酸性の凍結乾燥の豚; epi. 上皮の; ND 非確定
*別途指示ない限り、厚さ500 μm、直径12 mmの埋込み片。Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法からの応力、ひずみ及び剛性データ。
**ゲル上: DRGから神経突起がヒドロゲル上へ成長した。ゲル内:神経突起が6日間でヒドロゲル内へ明示された長さまで成長した。
【0096】
実施例16
in vivoのオンレイ性能
オンレイを実施例1に述べたとおりに調製した。第一の組のオンレイは、10%(w/v)の豚のコラーゲンとEDC/NHSから調製した。第二の組のオンレイは、3.5%(w/v)のウシ属のコラーゲンとコンドロイチン硫酸(CSC)及びEDC/NHSから調製した。各オンレイは、直径約6 mm、中央の厚さ約70 μm、及び 30 μmの傾斜エッジを有した。
オンレイを移植するために、ブタの上皮を、30〜45秒間、45%のエタノールで処理した。上皮に蝶形の切り込みをつけ、ポケットを形成した。視覚化のためにオンレイを細胞毒性のない染料(Gel-CodeTM)で青く染めた。予め染めたオンレイをポケットに挿入した。保護用コンタクト・レンズを目の上に縫合した。
【0097】
角膜の炎症、発赤、及び/または血管浸潤を評価するために、目視検査を行った。角膜の透明度を査定するために、細隙灯検査を適用した。トノペン眼圧計を使用して眼圧を測定した。Cochet-Bonne角膜知覚計を使用して角膜の接触感度を測定した。接触感度は、機能する神経の存在を評価するために有効となり得る。これは、採取された移植組織をもつ角膜のin vivo共焦点イメージング及び免疫組織化学により確証された。移植の直前と手術の3週間後に、PAR角膜トポグラフィー・システム(CTS)で角膜トポグラフィーを調べた。
【0098】
角膜トポグラフィーは、麻酔をかけたブタの眼をCTSに整合することにより行った。角膜表面を被覆するため、かつ標的グリッドの視覚化を可能にするために、蛍光色素フロオロシンの希釈溶液と人工涙液を眼に点眼した。前部角膜表面上の標的グリッドに焦点を合わせるように、装置の焦点面を調節した。標的グリッドのデジタル画像を撮像した。前部角膜表面の形状の測定値を得るために、デジタル画像を分析した。オンレイの装着による角膜の形状の変化を評価するために、オンレイの移植の前と後のデジタル画像の比較を利用することができる。
【0099】
in vivo共焦点マイクロスコピーは、生きているブタにおける角膜の異なる深さでの撮像を可能にし、したがって、眼用器具に対する眼の反応をモニターすることを可能にする。例えば、共焦点マイクロスコピーは、器具内の神経の存在をモニターするために使用できる。in vivo共焦点マイクロスコピーは、眼用器具の移植の前と手術の3週間後に、Nidek Confoscan 3 in vivo共焦点マイクロスコープで麻酔をかけたブタを観察することにより実施された。人工涙液を観察対象の眼に点眼した。眼球動作を低減するために、局部麻酔剤を2滴点眼した。屈折率整合のためにレンズの前表面にゲルの層を有する共焦点レンズ(ゲル浸漬)を角膜に接触させた。角膜内皮に焦点を合わせるように装置の焦点面を調節し、レンズの焦点面を角膜の厚さに等しい深さにわたり走査しながら角膜の画像を撮像した。
【0100】
角膜上皮のオンレイ上の復元と下にあるオンレイへの接着と相互作用の早期兆候の有無を判断するために、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した組織断面の組織病理学的観察に加えて免疫組織化学を利用した。免疫組織化学はまた、神経の存在の有無と免疫性及び炎症性の細胞の浸潤があるかどうかを確証するためにも利用された。従来の技術を使用して、浄化剤で浸透性を高めた後、移植されたオンレイを有するものと有しないもので二分した角膜に抗神経フィラメント染色を施した。結合抗体を視覚化するために、免疫蛍光を利用した。
【0101】
前述したような角膜オンレイを受け入れた角膜は、発赤または炎症は最小であるかまたは全くない状態で、よく治癒され、光学的に透明さを保っていた。血管浸潤の兆候はなかった。正常な眼圧が観測された。また手術後の角膜は、接触感度を示した。トポグラフ測定は、移植されたオンレイが角膜のトポグラフィーに変化をもたらし得ることを示した。オンレイは、中央の角膜の高い部分の厚さに約50 μmの変化を生じさせた。上皮はオンレイによく接着していた。in vivo角膜マイクログラフィーは、上皮下のストロマの神経を有し、上皮からの細胞は内皮にまで達している健全な全体的角膜構成を明らかにした。H&E染色低温断面は、オンレイが母体の角膜に統合されたことを示した。免疫組織化学は、E−カドヘリン用の染色を使用した未処理の角膜と比較して、オンレイを移植した角膜における細胞の接着力に変化はあるにせよほんのわずかであること実証した。ケラチン3及びE−カドヘリン用の染色は、対照と同程度であった。線維を基底膜複合体に係留するためのコラーゲン・タイプVII染色は、対照よりも識別しにくい染色を示した。a6インテグリン用の染色は、手術後の対照と未処理の対照のどちらでも、基底上皮細胞の局在性を示した。抗神経フィラメント200抗体染色は、オンレイを有する角膜において移植部位での神経の存在を示した。抗CD45抗体染色は、炎症性または免疫性反応がないことを明らかにした。
【0102】
実施例17
角膜オンレイの切除
VISX Star S4 エキシマー・レーザーを使用して、コラーゲン/EDC及びコラーゲン/キトサンのオンレイを切除した(表3)。PAR角膜トポグラフィー・システム(CTS)による処理の前後に表面トポグラフィー測定値を取得した。この処理のために、オンレイを保存溶液から取り出して、PMMAからなる球面の上に置いた。
光線治療角膜切除(PTK)手術は、均一の数のレーザーパルス(またはエネルギー)を切除ゾーン全域に照射する。光屈折角膜切除(PRK)手術は、所望の曲率変更を得るために切除ゾーン中でパルス密度を変動させる。AZDは、切除ゾーンの直径を意味する。深さは、レーザー製造者により報告された、人の角膜に対する処理の予測深さである。
【0103】
【表5】
【0104】
切除の影響を表示するために、コラーゲン/EDCのオンレイの手術前と手術後のトポグラフィーから差の分布図を作成した。
【0105】
PTK切除は、ほぼ一定の中央の直径 〜5 mmの青色領域(差の分布図において)を作り出すと予想された。オンレイは曲面であるので、除去される組織の量にはわずかな勾配があると予想された。近視の球面PRK切除は、中央で最大の組織深さを除去すると予想された。除去される組織の深さは、徐々に減少し、切除の終端ではゼロになると予想された。遠視の球面補正は、中央の直径1 mmを無処理で残し、処理ゾーンの終端で最大に組織を除去すると予想された。遠視の球面補正は、中央の直径1mmの部分を無処理で残し、処理ゾーンの終端で最大に組織を除去すると予想され、推移ゾーンも中心から9mm より外の周縁に形成されると予想された。遠視補正後の差の分布図は、中央の緑色のゾーンのまわりに青色の環を表示すると予想された。近視乱視の補正からの差の分布図は、その青色のパターンが楕円形になると予想された以外は、近視の球面補正からの分布図と同様に見えると予想された。
【0106】
切除したオンレイから得た差の分布図は、すべての差の分布図で上記予想された組織除去パターンを示した。除去された組織の最大深さは、人の角膜に対して予測されたそれよりも大きくなるようであった。例えば、角膜オンレイ材質の除去部分比率は、人の角膜の除去部分の比率の約1.7から約2倍の間であった。オンレイ材質と角膜との切除比率の違いは、試料の間で一様ではなかった。この比率の違いは、とりわけ、処理測定の深さ、材質の密度と表面の粗さ、及び材質の含水率によるものと考えられる。
【0107】
コラーゲン/キトサンのオンレイは、コラーゲン/EDCのオンレイよりも速い速度で切除することが観察された。この差は、水和作用の違いによるものと考えられる。例えば、手術後のコラーゲン/キトサンのオンレイは、コラーゲン/EDCのオンレイよりも低い含水率を呈し得る。
眼用器具はまた、ウレタンのような強度増強コンポーネントを有してもよい。
【0108】
実施例18
人の組み換えコラーゲン眼用器具
FibroGen(サンフランシスコ、CA)から入手した13.7 wt%の人の組み換えコラーゲン・タイプI、0.3 mlと 0.625 M モルホリノエタンスルホン酸(MES)、0.3 mlを本明細書で説明した注射器を基にしたシステムを使用して混合することにより、架橋されたコラーゲンのヒドロゲルを調製した。混合を氷水槽の中で行うことにより、混合は低下した温度で発生した。
【0109】
均質の溶液を得た後、57 μlのEDC/NHSをコラーゲン・フリー・アミノ(coll−NH2)基に対するモル当量比3:3:1で混合液に注入した。溶液のpHを約5に調整するために、NaOH(2N)を混合液に添加した。
【0110】
混合液をガラス製またはプラスチック製モールドに流し込み、100%の湿度の室温で16時間放置した。その後、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。
【0111】
コラーゲン・coll−NH2基に対するEDC/NHSの比を1:1:1と6:6:1にして、人の組み換えコラーゲン・タイプIを有するその他のヒドロゲルをこの方法で同様に調製した。
【0112】
VEE GEE屈折計で屈折率(RI)を測定した。白色光、450 nm、500 nm、550 nm、600 nm、及び650 nmの各波長での光透過率を測定した。応力、破断ひずみ、弾性係数などの直接的な張力特性測定をInstronエレクトロメカニカル・テスター(モデル3340)で測定した。試料のサイズは5 mm x 5 mm x 0.5 mm であった。ヒドロゲルの含水率は、下の式により計算された。
【0113】
(W − W0)/W%
ここで、W0及びWは、乾燥した試料と膨張した試料のそれぞれの重量を示す。
【0114】
EDC/NHS/Coll−NH2の比1/1/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F1と指定した)は、屈折率 1.3457±0.0013を有した。EDC/NHS/Coll−NH2の比3/3/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F3と指定した)は、屈折率1.3451±0.0002を有した。EDC/NHS/Coll−NH2の比6/6/1(モル当量)の人の組み換えコラーゲンのヒドロゲル(F6と指定した)は、屈折率 1.3465±0.0001を有した。
【0115】
表4は、これらの異なるヒドロゲルの光透過率をまとめて示す。
【0116】
【表6】
F3と指定したヒドロゲル材質は、最も受容できる光特性を示すと見られた。 視覚的に、または肉眼的に、F3はほかの人の組み換えヒドロゲルに比べて最大の透明度をもつと見られた。
【0117】
表5は、当該の人の組み換えヒドロゲルの機械的特性を示す。
【0118】
【表7】
ヒドロゲルF3は、比較的低い弾性係数をもつが、ほかの機械的特性は受容できると見られる。
【0119】
表6は、各ヒドロゲル材質の含水率を示す。
【0120】
【表8】
これらのヒドロゲルは水和性が高いことが明白である。
本実施例では、pH変化をモニターする助けに、pH指示薬をMES緩衝液に添加した。本実施例で使用された特定の指示薬は、アリザリン・レッドS(Sigma Aldrich)である。
【0121】
図4は、人の組み換えコラーゲン試料F1上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。図5は、人の組み換えコラーゲン試料F3上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。図6は、人の組み換えコラーゲン試料F6上での7日間の期間における人の角膜上皮の細胞成長のグラフである。
【0122】
これらの人の組み換えヒドロゲル材質で観察された細胞成長は、対照実験で観察された細胞成長よりも大きかった。
【0123】
図7は、ヒドロゲル材質F3がin vivoで少なくとも30日間存続したことを証明する写真である。
【0124】
実施例19
コラーゲン−ポリ(NIPAAm−co−AAC)組成物
本明細書で説明したEDC/NHS架橋方法(実施例4)により、組成物を調製した。開始時のコラーゲン濃度は15%であった。最終コラーゲン濃度は11%であった。最終ポリ(NIPAAm−co−AaC)濃度は3%であった。ゲル中の総固体濃度は14%であった。
【0125】
この材質は、屈折率1.3542、抗張力11重量グラム、伸張3.3 mm、及び弾性係数3.8重量グラムを有した(Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法から)。
【0126】
変性温度は、架橋前の40°Cから架橋後は50°Cへ増加した。材質は、人の角膜またはウサギの角膜よりも高い光透過率と低い後方散乱を呈した。例えば、白色光に対するパーセント光透過率は、当ヒドロゲル材質では約102%、人の角膜では役93%、ウサギの角膜では78%であった。当ヒドロゲルは、450 nm、500 nm、550 nm、600 nm、及び650 nmの各波長に対して、それぞれ約90%、96%、100%、101%、及び103%のパーセント透過率を呈した。人の角膜及びウサギの角膜は、すべての試験波長において100%を下回るパーセント透過率を示し、各波長でヒドロゲル材質よりも常に低いパーセント透過率を示した。
当ヒドロゲル材質は、種付け後7日で角膜上皮細胞が合流することを実証した。
【0127】
実施例20
コラーゲン/コンドロイチン硫酸組成物
コラーゲンIとプロテオグリカン相当物としてコンドロイチン硫酸(CSC)を使用して、高い光学的透明度と抗張力をもつ生合成マトリックスを開発した。光学的透明度を失わせる可能性がある凝固またはコラーゲン線維形成を伴わずに、コラーゲンに対する乾燥重量比30%(wt/wt)までのCSCを有するヒドロゲルを制御された条件の下で調製した。当ヒドロゲルを物理的に及び生化学的に特性を明らかにした。in vivoの試験は、人の角膜上皮細胞(HCECs)がゲルの表面でよく成長し、うまく積層されたことを示した。当マトリックスは、健全な神経成長を担持した。同様の結果もin vivoで得られた。
【0128】
本明細書で説明した実施例14と同様に組成物を調製した。CSCは、EDC及びNHS化学反応を利用するコラーゲンに共有結合された。
【0129】
異なるコラーゲンに対するCSCの乾燥重量比、並びに異なるEDC対コラーゲン−NH2モル当量比で、コラーゲン (3.5 w/v%)とCSCのゲルを本明細書で論じたEDC/NHS(モル当量1:1)架橋技術を使用することにより調製した。すべてのゲルは、視覚的に透明であった。当組成物は、表7に示すように、人の角膜(約87%の透過率及び3%の後方散乱)に比較してより高い光透過率と低い光散乱を呈した。
【0130】
【表9】
【0131】
屈折率は1.34〜1.35の間であったが、これは人の角膜の屈折率(1.376)に近い。
【0132】
異なるEDC対コラーゲン−NH2モル比の適用により製造されたゲルの膨潤率を測定し、下の式により計算した。
膨潤率=(WW − Wd)/Wd
ここで、WWは水和したゲルの重量であり、Wdは乾燥ゲルの重量である。
【0133】
EDC/NHSを使用したコラーゲン−CSC架橋は、カルボン酸とアミン基間の架橋の形成を生じさせる。その結果(図9)は、EDC対コラーゲン−NH2比が増加すると、より凝縮したネットワークを発生させるので、コラーゲン−CSCゲルの膨潤率は低下することを示した。
【0134】
Li et al. PNAS 100:15346-15351 (2003)により開示された縫合引き抜き方法によって、埋込み片の機械的特性の測定を行った。埋込み片をPBS中で完全に水和させて、10mm/minの速度で抜き出した。埋込み片(厚さ500μm、直径12mm)の破断点で抗張力をモニターした。EDC対NH2モル比を増加させることにより、ゲルの抗張力が増強された(図10)。しかし、EDCの量が相当に増加されると材質はもろくなるので、EDC対コラーゲン−NH2モル比が2以上になると抗張力は少し減少した。
【0135】
ゲルの抗張力は、図11に示すように(参照、3.5%ではなく10%のコラーゲンを使用)、コラーゲンの増加した濃度によっても増強させることができる。抗張力は、2.65から10.02重量グラムに増加し、膨潤率は21.5から12.1に減少した。
【0136】
架橋の効率を示差走査熱量測定(DSC)により評価した。コラーゲンまたは架橋コラーゲンのヒドロゲルを加熱すると、元来の三重らせん構成の構造的遷移(変化)が、架橋の性質と程度により異なるある温度で生じる。コラーゲン溶液及び架橋された、十分に水和したコラーゲン・ヒドロゲルを密封パンの中で特性を調べた。試料の温度は2°C/min.の一定の率で上げられた。最大限のピークの温度を変性温度として記録した。EDC対NH2比を増加すると、変性温度は42.4°Cから56.6°Cに増加した(図12A)。これは共有架橋の導入が三重らせんの安定性を高めたことにより、変性温度を上昇させたことを示唆する。コラーゲン−CSCゲルの変性温度は、コラーゲンのみのゲルよりも高くなった(図12B)。しかし、コラーゲン−CSCゲルにおけるCSC対コラーゲンモル比を変えても、変性温度に影響を及ぼさなかった。
【0137】
確立された細胞系からの人の角膜上皮細胞のin vitroの成長を観察した。ゲル中に移植した後根神経節を使用して、in vitroで神経成長をさせた。神経突起は7日間生育され、神経フィラメントを対象にゲルを染色し、神経突起の伸びを測定した。すべてのコラーゲン−CSCゲルで神経突起はよく成長した(図13)。
【0138】
CSCの濃度の5%から20%への増加は、ゲル内の神経突起の伸びの長さを大幅に向上させた。30%CSCを含むゲルではさらなる利点は見られなかった(図13)。優れた上皮の被覆率と移植統合が観察された。
【0139】
実施例21
タイプIIIコラーゲン組成物
材質。人の組み換えタイプIIIコラーゲン(5.1% w/w FibroGen Inc)、0.625 M モルホリノエタンスルホン酸[MES、アリザリン・レッドS、pH指示薬(6.5 mg/100ml水)を含む]、1−エチル−3−(3−ジメチル・アミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)、N−ヒドロキシ・スクシンイミド(NHS)。
【0140】
18.3%(w/w)のタイプIIIコラーゲン溶液からヒドロゲルを製造した。18.2 wt%の人の組み換えタイプIIIコラーゲン、0.3 ml(5.1% w/w人の組み換えタイプIIIコラーゲンFibroGen Incから濃縮した)とMES(0.625 M)0.3 mlを氷水槽中で、プラスチック製T字アダプタに接続した2本の気泡を抜いた注射器中で混合した。均質な溶液が形成された後、33.5 mgのEDCと20.1 mgのNHSを0.125 mlのMES中に溶解し、そのうちの57 mlを取り出して、EDC:NHS:コラーゲン−NH2をモル比3:3:1で上記の注射器に注入した。混合液は5あたりのpHを示すピンク色を発色したので、NaOH溶液は添加しなかった。混合液を完全に混合し、ガラス製モールド(厚さ434 μm)へ流し込み、湿度100%、室温で16時間放置した。次に、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。これにより得られた平板のヒドロゲルを取り出して、新鮮な緩衝液を8時間おきに交換して新しくしながら、10 mMのPBS中に浸漬した。こうして得たヒドロゲルを1%のクロロフォルムを含む10 mMのPBS中に浸漬し、4°Cの冷蔵庫の中に保存した。
【0141】
EDC:NHS:コラーゲン−NH2の比を2:2:1と1:1:1にした、追加のタイプIIIコラーゲンのヒドロゲルも上記の方法で調製した。すべての得られたゲルは透明であった。
【0142】
5.1%(w/w)のタイプIIIコラーゲン溶液からもヒドロゲルを製造した。5.1 wt%の人の組み換えタイプIIIコラーゲン、0.3 mlとMES(0.625 M)50mlを氷水槽中で、プラスチック製T字アダプタに接続した2本の気泡を抜いた注射器中で混合した。均質な溶液が形成された後、9.3 mgのEDCと5.6 mgのNHSを0.125 mlのMES中に溶解し、そのうちの57 mlを取り出して、EDC:NHS:コラーゲン−NH2をモル比3:3:1で上記の注射器に注入した。混合液は5付近のpHを示すピンク色を発色したので、NaOH溶液は添加しなかった。混合液を完全に混合し、ガラス製モールド(厚さ434 μm)へ流し込み、湿度100%、室温で16時間放置した。次に、モールドをインキュベータへ移し、37°Cで5時間、後硬化した。これにより得られた平板のヒドロゲルを取り出して、新鮮な緩衝液を8時間おきに交換して新しくしながら、10 mMのPBS中に浸漬した。こうして得たヒドロゲルを1%のクロロフォルムを含む10 mMのPBS中に浸漬し、4°Cの冷蔵庫の中に保存した。こうして得たゲルは光学的に透明であった。
【0143】
開始時の濃度が18.3% w/w であったコラーゲンの最終的なコラーゲン含有量は、8.36% (w/v)(すべての成分を添加後の希釈係数に基づいて計算された)または約10%(w/v)(測定された値)であった。
【0144】
開始時の濃度が5.1% w/w であったコラーゲンの最終的なコラーゲン含有量は、3.76% (w/v)(すべての成分を添加後の希釈係数に基づいて計算された)または約4%(w/v)(測定された値)であった。
【0145】
様々な具体的な実施例と実施形態に関して本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されず、その他の実施形態が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0146】
多くの刊行物、特許、及び特許出願を上記の説明で引用した。引用された刊行物、特許、及び特許出願は、参照することにより本書にその全体が援用される。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本組成物及び器具を製造するためのシステムのT字型アダプタの断面図を示す図である。
【図2】本組成物及び器具を製造するための雌ルアー・アダプタの断面図を示す図である。
【図3】本組成物及び器具を製造するための図1のT字型アダプタの平面図であり、隔壁を有し、そこに二つの注射器が連結された状態を示す。
【図4】F1と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図5】F3と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図6】F6と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質についての時間の関数としての細胞数のグラフである。
【図7】ラット中に検出された、F3と指定した、人の組み換えヒドロゲル物質の写真である。
【図8】屈折誤差を補正する本眼用器具の一つの実施形態を示す図である。
【図8A】本オンレイの一つの実施形態の水晶体エッジ形状を示す図である。
【図9】EDC対NH2モル比の関数としての膨潤率のグラフである。
【図10】EDC対NH2モル比の関数としての抗張力のグラフである。
【図11】コラーゲン濃度の関数としての抗張力のグラフ(左側のパネル)とコラーゲン濃度の関数としての膨潤率のグラフ(右側のパネル)を示す。
【図12】異なるEDC対NH2モル比をもつ複数の組成物についての温度の関数としての熱流量のグラフ(左側のパネル)と異なるCSC濃度をもつ複数の組成物についての温度の関数としての熱流量のグラフ(右側のパネル)を示す。
【図13】コラーゲンに対するコンドロイチン硫酸の乾燥重量比の関数としての神経突起長のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋コラーゲンを含んでなる光学的に透明な生合成組成物であり、当該組成物は重量または体積で約5%から約50%の間のある量のコラーゲンを含む組成物。
【請求項2】
コラーゲンの量は重量または体積で少なくとも6%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コラーゲンの量は重量または体積で少なくとも10%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
コラーゲンの量は、重量または体積で約10%から約30%の間にある、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
コラーゲンの量は、重量または体積で約10%から約24%の間にある、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
架橋コラーゲンは一つのタイプのコラーゲンを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
架橋コラーゲンは二つ以上のタイプのコラーゲンを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
細胞成長エンハンサー物質をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
細胞成長エンハンサー物質はペプチドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ペプチドは、RGD、YIGSR、またはIKVAVのアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
細胞成長エンハンサー物質は、神経栄養因子、神経成長因子、及び上皮成長因子からなるグループから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
細胞成長エンハンサー物質は組成物中に十分に分布される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
コラーゲンは器具の唯一の水膨潤性の重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
コラーゲンは酸性pHで架橋された、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
酸性pHは約5.0から約5.5の間にある、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
架橋コラーゲンは、アテロコラーゲン、タイプIコラーゲン、タイプIIIコラーゲン、またはこれらの組合せを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
架橋コラーゲンは組み換えコラーゲンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
架橋コラーゲンは動物から分離されたコラーゲンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
架橋コラーゲンは、グルタルアルデヒド以外の架橋剤を使用してコラーゲン重合体を架橋するプロセスによって製造される、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
架橋コラーゲンは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミドを使用して、コラーゲン重合体を架橋するプロセスによって製造される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、コンドロイチン硫酸、N,O−カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸アルデヒド、またはアルギン酸塩をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
組成物上の及び/または組成物内への神経成長を促進するのに効果がある、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であり、
コラーゲン重合体を酸性pHで架橋剤と混合するステップと、
前記混合物を硬化して、架橋コラーゲンを含んでなる組成物を形成するステップと
を含んでなる方法。
【請求項24】
上記混合ステップは、上記混合物にかかる高いせん断力を生み出すように構成されたシステムの中で、コラーゲン重合体と架橋剤を混合することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記混合は約0°Cから約5°Cの間のある温度で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
細胞成長エンハンサー物質を上記化合物に添加するステップをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項27】
眼の疾患、病気、または損傷を治療する方法であり、
前記眼の疾患、病気または損傷をもつ患者の眼を、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物から製造された眼用器具に接触させることを含んでなる方法。
【請求項28】
治療を必要とする患者の眼の疾患、病気、または損傷を治療するための眼用器具を製造するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
治療を必要とする患者の眼の疾患、病気、または損傷を治療するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項1】
架橋コラーゲンを含んでなる光学的に透明な生合成組成物であり、当該組成物は重量または体積で約5%から約50%の間のある量のコラーゲンを含む組成物。
【請求項2】
コラーゲンの量は重量または体積で少なくとも6%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
コラーゲンの量は重量または体積で少なくとも10%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
コラーゲンの量は、重量または体積で約10%から約30%の間にある、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
コラーゲンの量は、重量または体積で約10%から約24%の間にある、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
架橋コラーゲンは一つのタイプのコラーゲンを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
架橋コラーゲンは二つ以上のタイプのコラーゲンを含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
細胞成長エンハンサー物質をさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
細胞成長エンハンサー物質はペプチドである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
ペプチドは、RGD、YIGSR、またはIKVAVのアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
細胞成長エンハンサー物質は、神経栄養因子、神経成長因子、及び上皮成長因子からなるグループから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
細胞成長エンハンサー物質は組成物中に十分に分布される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
コラーゲンは器具の唯一の水膨潤性の重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
コラーゲンは酸性pHで架橋された、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
酸性pHは約5.0から約5.5の間にある、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
架橋コラーゲンは、アテロコラーゲン、タイプIコラーゲン、タイプIIIコラーゲン、またはこれらの組合せを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
架橋コラーゲンは組み換えコラーゲンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
架橋コラーゲンは動物から分離されたコラーゲンを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
架橋コラーゲンは、グルタルアルデヒド以外の架橋剤を使用してコラーゲン重合体を架橋するプロセスによって製造される、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
架橋コラーゲンは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド及びN−ヒドロキシスクシンイミドを使用して、コラーゲン重合体を架橋するプロセスによって製造される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−co−アクリル酸)、コンドロイチン硫酸、N,O−カルボキシメチルキトサン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸アルデヒド、またはアルギン酸塩をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
組成物上の及び/または組成物内への神経成長を促進するのに効果がある、請求項1から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であり、
コラーゲン重合体を酸性pHで架橋剤と混合するステップと、
前記混合物を硬化して、架橋コラーゲンを含んでなる組成物を形成するステップと
を含んでなる方法。
【請求項24】
上記混合ステップは、上記混合物にかかる高いせん断力を生み出すように構成されたシステムの中で、コラーゲン重合体と架橋剤を混合することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
上記混合は約0°Cから約5°Cの間のある温度で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
細胞成長エンハンサー物質を上記化合物に添加するステップをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項27】
眼の疾患、病気、または損傷を治療する方法であり、
前記眼の疾患、病気または損傷をもつ患者の眼を、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物から製造された眼用器具に接触させることを含んでなる方法。
【請求項28】
治療を必要とする患者の眼の疾患、病気、または損傷を治療するための眼用器具を製造するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
治療を必要とする患者の眼の疾患、病気、または損傷を治療するための、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−508959(P2008−508959A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525138(P2007−525138)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001240
【国際公開番号】WO2006/015490
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505050555)オタワ ヘルス リサーチ インスティテュート (11)
【出願人】(506175792)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001240
【国際公開番号】WO2006/015490
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505050555)オタワ ヘルス リサーチ インスティテュート (11)
【出願人】(506175792)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (9)
【Fターム(参考)】
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