説明

眼科用剤

【課題】製剤の着色を抑制し、かつpHの安定化を図ったケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤の提供。
【解決手段】ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸二カリウム配合系に、ホウ酸及びマンニトール、ソルビトール又はキシリトールから選ばれる糖アルコールを眼科用剤全体の1.0w/v%〜5.0w/v%含有させた眼科用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科用剤の分野に関する。さらに詳しくは、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において生じる着色を抑制し、さらに緩衝能を改善して製剤安定化を図る技術である。
【背景技術】
【0002】
ケトチフェンフマル酸塩はヒスタミンなどの化学伝達物質の遊離抑制作用や抗ヒスタミン作用、好中球・好酸球などの炎症細胞の遊走・浸潤抑制作用、活性酸素生産抑制作用、ロイコトリエンの産生・遊離抑制作用及びロイコトリエン拮抗作用を有する抗アレルギー薬の一つである。ケトチフェンフマル酸塩は、上記作用機序に基づき、アレルギー症状を改善することから、アレルギー症状の予防・改善を目的とした点眼剤や点鼻剤等の有効成分として臨床的に広く用いられている(非特許文献1参照)。
【0003】
アレルギー症状では、好酸球などの組織障害性炎症細胞の局所への浸潤とそれに伴う組織障害が生じ、強い炎症を伴うことが知られている。そこで、ケトチフェンフマル酸塩単独では不十分な抗炎症作用を他の成分によって補うことが望ましい。そのような成分の1つとして、グリチルリチン酸二カリウムが挙げられる。グリチルリチン酸二カリウムは、生薬の1種である甘草から得られる化合物であり、抗炎症作用及び抗アレルギー作用を有することが知られている(非特許文献2参照)。また粘膜に対する刺激性も比較的弱く、点眼薬や洗眼薬等の眼科用組成物をはじめ、点鼻剤などの粘膜に対する外用剤の有効成分として繁用されている。
【0004】
本発明者らは、抗アレルギー成分としてケトチフェンフマル酸塩を配合し、抗炎症作用を補完する成分としてグリチルリチン酸二カリウムを配合した眼科用剤の開発を行っていた。しかしながら、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤は経時的に着色が生じることが分かった。さらにケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において、pHが変動した場合、これら成分の不安定化や析出、刺激発生等の問題が生じることが予想される。ここで、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合した眼科用剤において、着色を抑制する公知の技術はない。また、従来製剤のpH低下を抑制する方法として、リン酸塩緩衝剤(例えば、リン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム等)、ホウ酸緩衝剤(ホウ酸−ホウ砂)などを添加する方法が知られているが、その抑制効果は十分なものではなかった(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「医薬品インタビューフォーム、ザジテン点眼液(登録商標)0.05%」
【非特許文献2】「医薬品インタビューフォーム、ノイボルミチン点眼液(登録商標)1%」
【非特許文献3】「緩衝液の選択と応用」D.D.ペリン著 講談社サイエンティフィック
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において製剤の着色を抑制し、かつpHの安定化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、ホウ酸と糖アルコールの配合によりケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において生じる着色を抑制できることを見出した。さらに、ホウ酸と糖アルコールの配合により、優れた緩衝能が得られ、眼科用剤のpH安定化を図れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、ホウ酸及び糖アルコールを含有し、糖アルコールが眼科用剤全体の1.0w/v%〜5.0w/v%である眼科用剤、
(2)糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールから選ばれる1種以上である、(1)記載の眼科用剤、及び
(3)ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸二カリウム含有眼科用剤に、ホウ酸及び糖アルコールを添加することにより、眼科用剤の着色を抑制し、緩衝能を改善する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において生じる着色を抑制でき、さらに緩衝能の高い眼科用剤を提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の眼科用剤におけるケトチフェンフマル酸塩の配合濃度は適用する疾病の症状に応じて適宜増減することができるが、眼科用剤全体の0.005〜0.5w/v%であることが好ましく、治療効果の点から0.01〜0.1w/v%であることが更に好ましい。0.005w/v%未満であると治療効果の点から不十分になる恐れがあり、0.5w/v%を超えて配合すると、刺激が生じる恐れがあるからである。
【0010】
また、本発明のグリチルリチン酸二カリウムの配合濃度は必要に応じて適宜増減することができるが、眼科用剤全体の0.001〜0.5w/v%であることが好ましく、治療効果の点から0.01〜0.5w/v%であることが更に好ましい。
【0011】
さらに、本発明のホウ酸の配合濃度は、pH低下抑制効果の点から、眼科用剤全体の0.01〜2.0w/v%であることが好ましく、0.1〜2.0w/v%であることが更に好ましい。
【0012】
本発明における好ましい糖アルコールは、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールである。本発明で用いる糖アルコールは、眼科用剤において本来等張化剤として用いられる成分であるが、ホウ酸と組み合わせて使用することで、ケトチフェンフマル酸塩及びグリチルリチン酸二カリウムを含有する眼科用剤の着色を抑制すること、また眼科用剤の緩衝能を改善することが可能である。他の等張化成分ではホウ酸と組み合わせて使用しても眼科用剤の着色抑制効果と緩衝能の改善によるpHの安定化効果の両方は得られず、糖アルコールに特異的な効果であった。
【0013】
さらに、本発明の糖アルコールの配合濃度は、眼科用剤全体の1.0〜5.0w/v%であることが好ましい。1.0w/v%未満であると着色抑制効果及び緩衝能が不十分になる恐れがあるからである。
【0014】
本発明の眼科用剤には、さらにホウ酸以外の緩衝剤、糖アルコール以外の等張化剤、溶解補助剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤のような各種の添加剤を適宜添加してもよい。
【0015】
緩衝剤としては、例えばリン酸塩緩衝剤(リン酸二水素ナトリウム−リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム−水酸化カリウム等)、酒石酸塩緩衝剤(酒石酸−酒石酸ナトリウム)、アミノ酸(グルタミン酸ナトリウム、イプシロンアミノカプロン酸)、トロメタモール等が挙げられる。
【0016】
等張化剤としては、グルコース等の糖類、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類が挙げられる。
【0017】
溶解補助剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0018】
防腐剤としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物等の第四級アンモニウム塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ソルビン酸及びそれらの塩、チメロサール、デヒドロ酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0019】
粘稠剤としては、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの塩等が挙げられる。
【0020】
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、酢酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
本発明の眼科用剤を点眼剤とした場合、1日1回〜数回、1回1滴〜数滴を投与することができる。
【0022】
以下に、実施例、比較例及び試験例を示し、本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0024】
(実施例2)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 1200mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0025】
(実施例3)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 1400mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0026】
(実施例4)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 1600mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0027】
(実施例5)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 1800mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0028】
(実施例6)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 2000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0029】
(実施例7)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 2000mg
マンニトール 4000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0030】
(実施例8)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 800mg
ソルビトール 200mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0031】
(実施例9)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 1000mg
ソルビトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0032】
(実施例10)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 1000mg
キシリトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0033】
(比較例1)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0034】
(比較例2)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0035】
(比較例3)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
マンニトール 500mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0036】
(比較例4)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
塩化ナトリウム 900mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0037】
(比較例5)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 400mg
ホウ砂 400mg
塩酸 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、塩酸を適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0038】
(比較例6)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 2000mg
グリセリン 2000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0039】
(比較例7)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
マンニトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0040】
(比較例8)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ソルビトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0041】
(比較例9)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
キシリトール 1000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0042】
(試験例1)
実施例及び比較例で得た点眼剤を65℃で14日間保存した時の波長400nmの吸光度を測定した。評価基準として、着色の認められない0.05未満を○とし、微黄色に着色する0.05以上を×とした。また、製剤の緩衝能を評価する為、実施例及び比較例で得た点眼剤5mLを攪拌しながら、0.05N HClを500μL滴下し、攪拌を止めてpHの値を確認した。評価基準として、pHの低下が1.0未満を○とし、pHの低下が1.0以上を×とした。結果を表1−1から1−4に示した。処方の数値は「mg/100mL」で示した。

【0043】
【表1−1】


【0044】
【表1−2】

【0045】
【表1−3】


【0046】
【表1−4】

【0047】
本発明にかかる実施例1〜10の眼科用剤は、比較例の眼科用剤と比較して着色が抑制され、さらにpHの低下が抑制された。本発明で用いる糖アルコールは、等張化剤として用いられる成分であるが、他の等張化成分(グリセリン、塩化ナトリウム)では着色抑制効果及びpHの安定化効果は得られず、糖アルコールに特異的な効果であった。また、本発明の眼科用剤は、一般的な緩衝剤であるホウ酸緩衝剤(ホウ酸−ホウ砂)と比較してpHを安定化する効果が高かった。
【0048】
(実施例11)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
ホウ酸 2000mg
マンニトール 5000mg
水酸化ナトリウム 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、水酸化ナトリウムを適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0049】
(試験例2)
試験例1と同様に実施例11で得た点眼剤を65℃で14日間保存した時の波長400nmの吸光度を測定した。また、製剤の緩衝能を評価する為、実施例11で得た点眼剤5mLを攪拌しながら、0.05N HClを500μL滴下し、攪拌を止めてpHの値を確認した。いずれの評価基準も試験例1と同一であり、結果を表2に示した。処方の数値は「mg/100mL」で示した。
【0050】
【表2】

【0051】
(実施例12)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
トロメタモール 500mg
ホウ酸 500mg
ソルビトール 1000mg
塩酸 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、塩酸を適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0052】
(実施例13)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
トロメタモール 500mg
ホウ酸 500mg
キシリトール 1000mg
塩酸 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、塩酸を適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【0053】
(実施例14)
処方 100mL中
ケトチフェンフマル酸塩 69mg
グリチルリチン酸二カリウム 250mg
トロメタモール 500mg
ホウ酸 500mg
マンニトール 1000mg
塩酸 適量
精製水 全100mL
精製水(約80mL)に各成分を溶解後、塩酸を適量添加しpHを5.3に調整後、精製水で全量を正確に100mLとした。その後ろ過滅菌を行い、無菌の点眼剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により、ケトチフェンフマル酸塩とグリチルリチン酸二カリウムを配合する眼科用剤において生じる着色を抑制でき、緩衝能が高くpHの安定化を図ることができる極めて有用な眼科用剤を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、ホウ酸及び糖アルコールを含有し、糖アルコールが眼科用剤全体の1.0w/v%〜5.0w/v%である眼科用剤。
【請求項2】
糖アルコールが、マンニトール、ソルビトール又はキシリトールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の眼科用剤。
【請求項3】
ケトチフェンフマル酸塩、グリチルリチン酸二カリウム含有眼科用剤に、ホウ酸及び糖アルコールを添加することにより、眼科用剤の着色を抑制し、緩衝能を改善する方法。

【公開番号】特開2011−105707(P2011−105707A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235314(P2010−235314)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】