説明

眼粘膜適用製剤

【課題】 本発明は、眼粘膜適用製剤において優れた防腐作用を示すとともに細胞障害
性の低い安全な粘膜適用製剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 実質的に塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロ
ルヘキシジンを含まず、(A)クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩
から選択される1種又は2種以上、(B)ホウ酸又は/及びホウ砂を、これらの総量が組
成物全体に対して1.5(w/v)%以上、(C)アミノエチルスルホン酸、アスパラギ
ン酸及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上とを含有し、pHが7.3〜9.0
である点眼薬や洗眼薬の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼粘膜適用製剤に関する。より詳細には、本発明は、実質的に塩化ベンザルコ
ニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンを含むことなく、眼粘膜適
用製剤の腐敗を防止することができ、細胞障害性がなく安全性の高い眼粘膜適用製剤に関
する。
【背景技術】
【0002】
点眼薬や洗眼薬といった眼粘膜適用製剤は、使用時の微生物汚染等から製品の腐敗が防
止されていることが望まれる。点眼薬等の眼粘膜適用製剤は、その多くが、開封後一定期
間にわたり何度も使用する事が前提とされている。一旦開封した点眼薬は、空気中あるい
は接触した皮膚等から微生物汚染が引き起こされる可能性が高い。そのため、眼粘膜適用
製剤には、その腐敗を防止して眼粘膜適用製剤の保存安定性を図る目的で、防腐剤として
塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンが配合され
ていることが多い。防腐剤を配合しない点眼薬も存在するが、開封後は1回で使い切るタ
イプ(ユニットドーズ)の点眼薬などに限られていた。例えばマレイン酸クロルフェニラ
ミンを配合したユニットドーズ型点眼薬も知られている(特許文献1、2)。
【0003】
防腐剤として汎用されている塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン
酸クロルヘキシジンは、角膜細胞等に対する障害性が知られているほか、これらの防腐剤
を含有する点眼剤をコンタクトレンズ装用中に点眼すると、塩化ベンザルコニウム、塩化
ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンがコンタクトレンズに吸着してコンタク
トレンズそのものを変質させるなどの悪影響や、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニ
ウム又はグルコン酸クロルヘキシジンが吸着したコンタクトレンズを装用する事による眼
への悪影響が指摘されている。そのため、コンタクトレンズ装用中は塩化ベンザルコニウ
ム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンを含む点眼薬を点眼する事は通
常禁止されている。そこで、塩化ベンザルコニウムを配合せず、トロメタモールを含有す
ることによって優れた防腐力を維持することができるコンタクトレンズ用眼科用組成物が
報告されている(特許文献3)
【0004】
ところで、塩酸ジフェンヒドラミンやマレイン酸クロルフェニラミンは、抗ヒスタミン
薬として広く普及している安全性の高い成分の一つであり、塩酸ジフェンヒドラミンやマ
レイン酸クロルフェニラミンを含有する抗ヒスタミン点眼薬が一般用医薬品として多く上
市されている。マルチドーズ型(複数回の繰返し使用が予定されている)の塩酸ジフェン
ヒドラミン又はマレイン酸クロルフェニラミン配合点眼薬について、現在上市されている
製品は前述の理由により多くの点眼薬同様、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム
又はグルコン酸クロルヘキシジンが配合されていることが多い。
【0005】
これまでに、ジフェンヒドラミンまたはその塩自体にやや弱い防腐作用があることにつ
いては知られている(非特許文献1)が、抗菌力が十分ではなかった。一方、クロルフェ
ニラミンまたはその塩自体に防腐作用があることについては知られていない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−354592号公報
【特許文献2】特開2002−249445号公報
【特許文献3】特開2002−316926号公報
【非特許文献1】Knothe H, Beckmann I, Kiesel K, Oelschlager H.,Arzneimittelforschung. 1980;30(4):667-70.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製剤の腐敗が防止されているとともに、細胞障害性がなく安全な粘膜適用製
剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はこれまでに、ジフェンヒドラミンまたはその塩、クロルフェニラミンまたはその塩とともにホウ酸又は/及びホウ砂を併用することによって優れた防腐作用を発揮することを見出した(特願2004-128661号)。
本発明者はまた、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘ
キシジンを実質的に含まず、(A)クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれら
の塩から選択される1種又は2種以上、(B)ホウ酸又は/及びホウ砂を、これらの総量
で製剤全体に対して1.5(w/v)%以上、(C)アミノエチルスルホン酸、アスパラ
ギン酸及びそれらの塩から選択される1種又は2種以上とを含有するpHが7.3〜9.
0である眼粘膜適用製剤において、顕著な防腐作用を奏しながらも細胞障害性が低減され
ることを見出した。
即ち、本発明は、下記に掲げる発明である:
(1)実質的に塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシ
ジンを含まず、
(A)クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩から選択される1種又は
2種以上、
(B)ホウ酸又は/及びホウ砂を、これらの総量で製剤全体に対して1.5(w/v)%
以上、
(C)アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩から選択される1種又は
2種以上とを含有するpHが7.3〜9.0である眼粘膜適用製剤、
(2)点眼薬又は洗眼薬である(1)に記載の眼粘膜適用製剤、
(3)マルチドーズ型の点眼薬又は洗眼薬である請求項1又は2に記載の眼粘膜適用製剤

なお、本発明でいう「防腐」とは、微生物の繁殖を防止し、腐敗を防ぐことを意味する
。該「微生物」には、細菌、真菌等が含まれる。また、本明細書中、特に言及しない限り
、「%」はw/v%(g/100mL)を意味するものとする。また、コンタクトレンズ
という語句は、特記しない限り、ハード、酸素透過性ハード、ソフト等のあらゆるタイプ
のコンタクトレンズを包含する意味で用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の眼粘膜適用製剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン
酸クロルヘキシジンを実質的に含まないにもかかわらず、優れた防腐効果を有し微生物の
繁殖が抑制され腐敗が防止されている。通常、防腐剤にアミノ酸などの細胞賦活成分を併
用した場合には防腐力が低下する傾向にあるが、本発明の眼粘膜適用製剤では、優れた防
腐効果が維持されて製剤の腐敗が防止されているとともに、細胞障害性がなく安全な粘膜
適用製剤が提供される。また、本発明の眼粘膜適用製剤は、ソフトコンタクトレンズ装用
者、ドライアイ患者、アレルギー等眼疾患、眼手術後の患者、角膜細胞障害を有する患者
の眼などに特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の眼粘膜適用製剤には、実質的に防腐効果を奏する量の塩化ベンザルコニウム、
塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジンを含まない。
また、本発明の眼粘膜適用製剤は、他の防腐剤が配合されているものを除外するもので
はないが、本発明の眼粘膜適用製剤には優れた防腐作用が付与されるため、他の防腐剤を
含有しなくてもよい。しかしながら、防腐剤のなかには、パラオキシ安息香酸エチル、パ
ラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、ソルビン酸或はその塩またはア
ルキルポリアミノエチルグリシンのように、製剤設計においても不都合な防腐剤があるた
め、このような防腐剤を含有する場合には、その含有量を少量に制限することが好ましく
、実質的に含有しないのがより好ましい。
【0011】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(A)ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン及びこれ
らの塩から選択される1種又は2種以上の化合物を必須成分とするものである。これらは
、1種単独(ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジフェンヒドラミンラウリル硫酸塩及びジフェ
ンヒドラミン塩酸塩の組み合わせ、ジフェンヒドラミン及びジフェンヒドラミン塩酸塩の
組み合わせ、マレイン酸クロルフェニラミン、クロルフェニラミン及びマレイン酸クロル
フェニラミンの組み合わせなど)で使用してもよいし、2種以上(ジフェンヒドラミン塩
酸塩とマレイン酸クロルフェニラミンの組み合わせなど)を任意に組み合わせて使用して
もよい。
【0012】
本発明において、ジフェンヒドラミンは公知の化合物であり、ジフェンヒドラミンの塩
としては、薬学的に許容されるものであれば特に制限されないが、なかでも塩酸塩が好ま
しい。本発明において、ジフェンヒドラミン又はその塩は、水和物の形態でも使用できる
。クロルフェニラミンは公知の化合物であり、クロルフェニラミンの塩としては、薬学的
に許容されるものであれば特に制限されないが、なかでもマレイン酸塩が好ましい。クロ
ルフェニラミン又はその塩は、水和物の形態でも使用できる。
【0013】
本発明の眼粘膜適用製剤において、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン及びこれ
らの塩から選択される1種又は2種以上の化合物の製剤中の含有量は、特に制限されない
が、眼粘膜適用製剤に対する割合として、たとえば、クロルフェニラミン又はその塩が、
0.0001〜0.1%、好ましくは0.0006〜0.05%、更に好ましくは0.0
03〜0.03%となる割合が挙げられる。ジフェンヒドラミン又はその塩が、0.00
01〜0.1%、好ましくは0.001〜0.07%、更に好ましくは0.005〜0.
05%となる割合が挙げられる。
【0014】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(B)ホウ酸及び/またはホウ砂を必須成分とするもので
ある。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい
。ホウ酸及び/又はホウ砂は、眼粘膜適用製剤に対する割合として、これらの総量を1.
5%以上含有することを特徴とする。好ましくは1.8%以上、さらに好ましくは2.0
%以上である。上限としては、眼刺激性の観点から5.0%以下、好ましくは4.0%以
下、より好ましくは3.0%以下である。
【0015】
本発明の眼粘膜適用製剤において、ジフェンヒドラミン又はその塩にホウ酸及び/また
はホウ砂を組み合わせる配合比としては、例えば、ジフェンヒドラミン又はその塩の総量
1重量部に対して、ホウ酸及び/またはホウ砂の総量を好ましくは0.5〜10000重
量部、より好ましくは、1〜5000重量部、さらに好ましくは1〜1000重量部、特
に好ましくは2〜600重量部である。例えば、クロルフェニラミン又はその塩にホウ酸
及び/またはホウ砂を組み合わせる配合比としては、クロルフェニラミン又はその塩の総
量1重量部に対して、ホウ酸及び/またはホウ砂の総量を好ましくは0.5〜10000
重量部、より好ましくは、1〜7000重量部、さらに好ましくは2〜5000重量部、
特に好ましくは2〜1000重量部である。
【0016】
本発明の眼粘膜適用製剤は、(C)アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれ
らの塩から選択される1種又は2種以上の化合物を必須成分とするものである。アスパラ
ギン酸の塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に制限されないが、なかでも、
アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マグネシウム・
カリウム混合物が好ましい。
【0017】
本発明の眼粘膜適用製剤において、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれ
らの塩から選択される1種又は2種以上の化合物の製剤中の含有量は特に制限されないが
、眼粘膜適用製剤に対する割合として、化合物の総量が、通常0.03〜5.0%程度、
より好ましくは0.03〜3.0%、さらに好ましくは0.1〜2.0%で含有する。
【0018】
本発明の眼粘膜適用製剤はpHが7.3〜9.0であることを特徴とする。さらに好ま
しくは、7.3〜8.0である。かかる範囲内であれば、眼粘膜適用製剤により優れた防
腐作用を付与するとともに細胞障害性が低い安全な製剤を提供することができる。pHの
調節は、緩衝剤、pH調節剤等を用いて行うことができる。
【0019】
本発明の眼粘膜適用製剤は特に制限されない。眼粘膜適用製剤の一例として、点眼薬(
剤)(コンタクトレンズ装用中に使用できる点眼薬(剤)を含む)、洗眼薬(剤)(コン
タクトレンズ装用中に使用できる洗眼薬(剤)を含む)、眼軟膏薬、コンタクトレンズ装
着液等を挙げることができる。これらの中で、好ましくは点眼薬(剤)、洗眼薬(剤)で
ある。本発明の眼粘膜適用製剤は、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを
含めたあらゆるコンタクトレンズに使用される眼粘膜適用製剤としても使用できる点でも
優れている。また、本発明の眼粘膜適用製剤は優れた防腐作用を有するため、マルチドー
ズ型の眼粘膜適用製剤、即ち製品を一旦開封した後、数回以上に亘り使用される眼粘膜適
用製剤に対して好適に用いられ、該眼粘膜適用製剤を数日、あるいは数週間以上、安定し
て保存することができる。
【0020】
本発明の眼粘膜適用製剤の形態は特に制限されず、例えば、液剤、ゲル剤、軟膏剤など
の形態を挙げることができる。特に水性の液剤は、微生物が繁殖しやすい製剤形態である
が本発明の眼粘膜適用製剤においては、水性液剤においても防腐効果が高く腐敗が防止さ
れる。
【0021】
本発明の眼粘膜適用製剤の必須成分であるジフェンヒドラミン又はその塩、クロルフェ
ニラミン又はその塩は、それ自体抗ヒスタミン成分としても作用するので、本発明の眼粘
膜適用製剤は、抗ヒスタミン作用を発揮し得る。さらに、他の薬効成分を含有することが
できる。例えば、充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒス
タミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、スルファ剤、糖類、多
糖類またはその塩、セルロース誘導体又はその塩、前述以外の水溶性高分子、局所麻酔薬
成分、ステロイド成分、緑内障治療薬などが例示できる。本発明において好適な成分とし
ては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0022】
充血除去成分:例えば、α−アドレナリン作動薬、具体的にはエピネフリン、塩酸エピ
ネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナ
ファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、
硝酸ナファゾリンなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0023】
眼筋調節薬成分:例えば、アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラ
ーゼ阻害剤、具体的にはメチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン硫酸アト
ロピンなど。
【0024】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシ
ロン−アミノカプロン酸、インドメタシン、塩化リゾチーム、硝酸銀、プラノプロフェン
、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、ジクロフェナクナトリ
ウム、ブロムフェナクナトリウム、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリンなど。
【0025】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、アシタザノラスト、アンレキサ
ノクス、イブジラスト、トラニラスト、塩酸レボカバスチン、クロモグリク酸ナトリウム
、フマル酸ケトチフェン、ペミロラストカリウムなど。
【0026】
ビタミン類:例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、
フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン
、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、
酢酸トコフェロールなど。
【0027】
アミノ酸類:例えば、グルタミン酸、クレアチニン、グルタミン酸ナトリウムなど。こ
れらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
【0028】
スルファ剤:例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルファメト
キサゾールナトリウムなど。
【0029】
糖類:例えば単糖類、二糖類、具体的にはグルコース、トレハロースなど。
【0030】
多糖類又はその塩:例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム
など。
【0031】
セルロース誘導体又はその塩:例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど

【0032】
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニ
ルピロリドン、デキストランなど。
【0033】
局所麻酔薬成分:例えば、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン
、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエ
チル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン
、塩酸リドカイン、クロロブタノールなど。
【0034】
ステロイド成分:例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、プ
レドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロキシメステロン(hydroxymesterone)、カ
プロン酸ヒドロコルチゾン、カプロン酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸ヒドロコ
ルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホベンゾエートナトリウム、デ
キサメタゾン硫酸ナトリウム、デキサメタゾンリン酸ナトリウム、トリアムシノロンアセ
トニド、ベタメタゾンリン酸ナトリウム、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム
、メチルプレドニゾロンなど。
【0035】
緑内障治療成分:例えば、イソプロピルウノプロストン、エピネフリン、塩酸アプラク
ロニジン、塩酸カルテオロール、塩酸ジピベフリン、塩酸ドルゾラミド、塩酸ピロカルピ
ン、塩酸ブナゾシン、塩酸ブプラノロール、塩酸ベタキソロール、塩酸ベフノロール、カ
ルバコール、塩酸レボブノロール、ジピバル酸エピネフリン、臭化ジスチグミン、ニプラ
ジロール、マレイン酸チモロール、ラタノプロストなど。
【0036】
眼粘膜適用製剤中のこれらの成分の配合量は製剤の種類、活性成分の種類などに応じて
適宜選択され、例えば、製剤全体に対して0.0001〜30%、好ましくは、0.00
1〜10%程度の範囲から選択できる。
【0037】
また、本発明の眼粘膜適用製剤には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途
や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を
組み合わせて含有していてもよい。該成分または添加物の配合割合については、当業界に
おいて通常採用されている範囲に基づいて、適宜設定すればよい。該成分または添加物と
して、例えば、半固形剤や液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水
性または油性基剤など)、増粘剤、pH調整剤、等張化剤、香料または清涼化剤、キレー
ト剤、緩衝剤などの各種添加剤を挙げることができる。以下に、本発明の防腐剤が適用さ
れる眼粘膜適用製剤に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0038】
なお、本発明の眼粘膜適用製剤では、前述のように防腐剤は少量に制限することが好ま
しく、実質的に含まないことがより好ましい。また、本発明の眼粘膜適用製剤では、細胞
障害性の低減を重視する観点から、ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)−ポリオ
キシプロピレン(以下、POPと略す)ブロックコポリマー (具体的には、ポロクサマー
407など) 、エチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物(具体的には、
ポロキサミンなど)、モノオレイン酸POEソルビタン (具体的には、ポリソルベート80
など) 、POE硬化ヒマシ油(具体的には、POE(60)硬化ヒマシ油など)、ステアリン
酸ポリオキシルなどの非イオン界面活性剤の含有量は少量に限定するのが望ましく、非イ
オン性界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0039】
水性担体:例えば、水、メタノール、含水メタノール、エタノール、含水エタノールな
ど。
【0040】
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸またはその塩、ポリビニル
アルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、カルボ
キシメチルセルロースナトリウム、デキストラン、グリセリンなど。
【0041】
pH調節剤:例えば、塩酸、イプシロン−アミノカプロン酸、酢酸、水酸化ナトリウム
、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン
など。
【0042】
等張化剤:例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カ
ルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水
素ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二
ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリセリン、プロピレ
ングリコールなど。
【0043】
香料又は清涼化剤:例えば、カンフル、ゲラニオール、ボルネオール、メントール、リ
ュウノウ、ウイキョウ油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパ
ーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など。これらはd体、l体又はdl
体のいずれでもよい。
【0044】
キレート剤:例えば、アスコルビン酸、エデト酸四ナトリウム、エデト酸ナトリウム、
クエン酸など。
【0045】
緩衝剤:クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、
クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリ
ウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水
素カリウムなど。
【0046】
安定剤:ジブチルヒドロキシトルエン、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒド
スルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタ
ノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、グリセリン、プロピレングリコール、シ
クロデキストリン、デキストランなど。
【0047】
溶解剤、基剤:オクチルドデカノール、オリーブ油、ゴマ油、酸化チタン、臭化カリウ
ム、ダイズ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パラフィン、ヒマシ油、プラスチ
ベース、ラッカセイ油、ラノリン、ワセリン、グリセリン、プロピレングリコール、シク
ロデキストリン、マクロゴールなど。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例、試験例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによ
って限定されるものではない。
【0049】
試験例1 保存効力試験
表1に記載の処方に従い、各成分を精製水に溶解して全量を100mLとして試験液(
実施例及び比較例)を調製し、これを濾過滅菌しポリエチレンテレフタレート製点眼容器
に充填して点眼薬を製造した。これらの濾過滅菌後の試験液について、第十四改正日本薬
局方参考情報 保存効力試験方法に従って、防腐効果を評価した。具体的には、グラム陰
性細菌(Escherichia coli)を用いて、菌液を調製した。菌液を、105〜106CFU/mLになるよう試験液に接種し、23℃で保管した。接種14日後の試験液をサンプリングし、メンブランフィルター法にて試験液中の菌数を測定し、下記式に従って生存率を求めた。また、測定した試験液中の菌数から、下記評価基準に基づいて、試験液の防腐効果を評価した。結果は表1に示す。
【0050】
<式>
生存率(%)=(14日後の菌数/初期菌数)×100
<評価基準>
○:14日後の生存率が0.1%以下である
×:14日後の生存率が0.1%より多い
【0051】
ウサギ角膜上皮細胞を用いたニュートラルレッドアッセイ法
試験は、コルネパックキット(クラボウ株式会社)におけるウサギ角膜上皮細胞を用い
たニュートラルレッドアッセイ法に準じて行った。ウサギ角膜上皮細胞の懸濁液を96穴マ
イクロプレートの各ウエルに100μlずつ2500 cells/wellで播種し、3日間CO2インキュベ
ーター(37.0℃、5%CO2、加湿)で培養した。
培養した角膜上皮細胞にコントロールウエルには培地(組織培養用無血清培地RCGM
2培地)を100μlずつ添加し、試験ウエルには表1に記載の処方の試験液をRCGM2培
地で10倍希釈した試験培地を100μlずつ添加し、2日間CO2インキュベーター(37.0℃、
5%CO2、加湿)で培養した。ニュートラルレッド溶液(150μg/ml)を各ウエルに100μlず
つ添加し、さらに2時間インキュベートし生細胞のリソソームにニュートラルレッドを取
り込ませた。次に、上清を捨て、1%塩化カルシウムを含む1%ホルマリン溶液200μlで細胞
を1分間固定し、取り込まれなかったニュートラルレッドを洗浄した。続いて上清を捨て
、1%酢酸を含む50%エタノール溶液100μlを添加することで生細胞に取り込まれたニュー
トラルレッドを抽出した。さらにマイクロプレートリーダーを用いて540nmの吸光度を測
定した。角膜上皮細胞生存率(%)=(試験薬液の540nmの吸光度/コントロールの540nm
の吸光度)×100として、各ウエルの角膜上皮細胞生存率(%)を算出した。比較例1の
角膜上皮細胞生存率(%)を1としたときの各比較例及び実施例の角膜上皮細胞生存率(
%)の割合を表1に示す。
【0052】
試験の結果、本発明の実施例では、塩化ベンザルコニウムを含有する比較例1と同等の
十分な防腐効果を有し、塩化ベンザルコニウムを含有する比較例1に比較して角膜上皮細
胞生存率が約20倍に増加した。ホウ酸及びホウ砂を含有する比較例3では、アスパラギ
ン酸カリウム、アミノエチルスルホン酸を含有することにより防腐効果が低下し日本薬局
方保存効力試験 カテゴリーIA製剤の基準を満たすことができなかったが、本発明の実
施例では、ホウ酸及び/又はホウ砂に、マレイン酸クロルフェニラミン又はジフェンヒド
ラミン塩酸塩を配合しpHを7.3〜9.0に調整することで、アスパラギン酸カリウム
、アミノエチルスルホン酸を含有するも十分な防腐効果を奏することが確認された。さら
に、各実施例について調整した点眼薬(15mLずつ充填)を、40℃75%の条件下、6ヶ月間
保存後に同様の保存効力試験を実施したところ、防腐効果は安定的に維持されていた。
【0053】
また、データには示していないが、各実施例につき、その他の菌種(細菌:Pseudomona
s aeruginosa、Staphylococcus aureus、真菌:Candida albicans、Aspergillus nig
er)についても、第十四改正日本薬局方参考情報 保存効力試験方法に従い保存効力試験
を行ったところ、日本薬局方保存効力試験 カテゴリーIA製剤の基準に適合する結果が
得られた。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例6
ホウ酸 1.3g
ホウ砂 0.5g
マレイン酸クロルフェニラミン 0.03g
L−アスパラギン酸カリウム 0.2g
アミノエチルスルホン酸 1.0g
塩酸ピリドキシン 0.05g
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解してpHを7.5に調整し、精製水で全量を
100mlとした後、無菌環境下でろ過滅菌し、容器に充填して点眼剤を得た。
【0056】
実施例7
ホウ酸 1.8g
ホウ砂 0.35g
マレイン酸クロルフェニラミン 0.003g
L−アスパラギン酸カリウム 0.05g
アミノエチルスルホン酸 0.1g
塩酸ピリドキシン 0.01g
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
上記の各成分を秤量し適当量の精製水に溶解してpHを7.3に調整し、精製水で全量を
100mlとした後、無菌環境下でろ過滅菌し、容器に充填して洗眼剤を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム又はグルコン酸クロルヘキシジン
を含まず、
(A)クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン及びそれらの塩から選択される1種又は
2種以上、
(B)ホウ酸及び/又はホウ砂を、これらの総量で製剤全体に対して1.5(w/v)%
以上、
(C)アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸及びそれらの塩から選択される1種又は
2種以上とを含有するpHが7.3〜9.0である眼粘膜適用製剤。
【請求項2】
点眼薬又は洗眼薬である請求項1に記載の眼粘膜適用製剤。
【請求項3】
マルチドーズ型の点眼薬又は洗眼薬である請求項1又は2に記載の眼粘膜適用製剤。

【公開番号】特開2007−23020(P2007−23020A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107113(P2006−107113)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】